JP2005506293A - サイモシンβ4(Tβ4)、類似体、アイソホーム、および他の誘導体を用いて眼および周辺組織の疾患を治療するための方法 - Google Patents

サイモシンβ4(Tβ4)、類似体、アイソホーム、および他の誘導体を用いて眼および周辺組織の疾患を治療するための方法 Download PDF

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Abstract

ドライアイ症候群に関連し得るような眼の変性は、サイモシンβ4、サイモシンβ4のアイソホーム、または酸化サイモシンβ4等のアクチン重合抑制ペプチドを投与することによって、抑制または反転される。

Description

【技術分野】
【0001】
発明の背景
関連出願の相互参照
本出願は、2001年3月15日に提出された米国仮出願第60/275,645号の利益を主張する。
1.発明の分野
この発明は、「ドライアイ症候群」等の眼の疾患の治療分野に関する。
【背景技術】
【0002】
2.背景技術の説明
「ドライアイ症候群」と呼ばれる現象は、加齢に伴なう眼の腺の通常の老化のみにより起こるわけではなく、他の変性変化および環境的な要因によっても起こる可能性があり、すべての年齢で起こるおそれがある。ドライアイ症候群は、眼の生理学的特性、生化学的特性、および免疫学的特性の悪化により結果として生じる。
【0003】
ある患者は、涙の質または量の低下によって引き起こされる眼の炎症のために、絶え間ない痛みを経験する。このような患者は、ざらざらするような、または砂が入ったような感覚を経験し、これを放置しておくと、角膜の傷または潰瘍化につながるおそれがあり、したがって、視力を失うことにもなり得る。多くの場合、ドライアイは、通常の涙液を生成するためにともに働くさまざまな腺の疾患により、結果として生じる。涙液自体は、眼の上の3つの層を形成する物質の複雑な組合せである。非常に薄い外側の層は、眼瞼の中のマイボーム腺からの脂質を含み、蒸発を減らす。涙腺によって、涙液の塩分および酸性度を適切なレベルに保つ、真中の水を多く含んだ層が作られる。この真中の層はまた、抗体および他の免疫防御物質を含んで眼を感染から守る。内側の粘液層は、涙液膜が角膜に「くっつき」、そのままとどまることの助けとなる。
【0004】
ドライアイ症候群には、多くの原因が存在し得る。涙腺の通常の老化、特定の病気、および疾患が、生成される涙液の量および状態を変化させ得る。たとえば、シェーグレン症候群は、口、眼、および他の粘膜の炎症および乾燥によって特徴づけられる免疫系疾患であり、涙腺を損傷し、この損傷が涙液の生成に影響を及ぼす。角膜感度の劣化も、不十分な涙液生成につながり得る。この感度の劣化は、「神経栄養性角膜炎」として公知の疾病およびある種のコンタクトレンズの装着によって引き起こされ得る。涙液が過度に蒸発することも、ドライアイ症候群を引き起こし得る。このような蒸発は、眼瞼内のマイボーム腺の感染および炎症から結果として生じる「マイボーム腺炎」によって引き起こされ得る。非常に大きな眼のヒトおよび甲状腺疾患に罹患したヒトも、過剰な蒸発によって引き起こされるドライアイ症候群を経験するおそれがある。ドライアイはまた、独特な顔面の解剖学的構造または角膜内の凹凸から結果として生じるおそれがあり、結果として、眼が不均一または不適切に涙液で覆われることになる。粘膜を乾燥させるおそれのある抗生物質、抗ヒスタミン剤、利尿薬、および下痢止め薬等の薬物処理の結果としてドライアイに罹患する患者も存在する。更年期および加齢に関連し得るようなホルモンの変化も、涙腺からのTβ4の分泌に影響を及ぼすおそれがあり、結果として、ドライアイおよび眼の炎症を引き起こし得る。
【0005】
このような眼の疾患を遅らせ、および/または、緩和するためのいくつかのアプローチが報告されてきた。ドライアイは、通例、人工の涙および軟膏剤を適用することによって治療される。これらによって一時的には緩和されるが、これらは、通例、眼に対するダメージを阻止または反転させることはない。涙液の電解質バランスの回復および角膜の治癒の促進を目標とした点眼液が、開発されつつある。ホルモン療法または抗体によってドライアイが治療され得るという証拠も存在する。加えて、眼から涙液を排出する管に小さな栓をすることから利益を得るドライアイも存在する。重症のドライアイに対しては、「湿室眼鏡」と呼ばれる特別な保護眼鏡が装着され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ドライアイ疾患の治療のための改善された方法および組成物が、現在の技術では必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
この発明によると、ドライアイ症候群に関連し得るような眼の変性の反転を促進するか、またはドライアイ症候群に関連し得るような眼の変性を抑制するための治療方法は、このような治療を必要とする被験体に対して、アミノ酸配列LKKTETまたは、その、眼の変性を抑制する活性を有する保存的な変異型を含む、眼の変性を抑制するポリペプチドを含有する有効な量の組成物を投与するステップを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
発明の詳細な説明
この発明は、サイモシンβ4(Tβ4)等のアクチン重合抑制ペプチドと、アミノ酸配列LKKTETまたはその保存的な変異型を含む他のアクチン重合抑制ペプチドとによって、ドライアイ症候群に関連し得るような、またはドライアイ症候群から結果として生じ得るような眼の変性の反転が促進され、または眼の変性が抑制されるという発見に基づく。可能性のある臨床上の適用例は、炎症状態による疾患、たとえば、ドライアイ、ブドウ膜炎、虹彩炎、術後白内障手術、LASIKまたはPRK、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、モーレン潰瘍、シェーグレン症候群等による角膜融解を含み得る。他の適用例は、細菌性病原体、ウィルス性病原体、マイコバクテリア病原体、または真菌性病原体による角膜炎であり得る。さらなる他の適用例は、糖尿病によって引き起こされるような眼の代謝性疾患(角膜症および網膜症)によるものか、または、化学的傷害、損傷、および酸蝕症の結果として生じるものであり得る。
【0009】
サイモシンβ4は、内皮細胞の遊走およびインビトロでの分化の最中にアップレギュレートされるタンパク質として、当初は確認された。サイモシンβ4は、元々、胸腺から単離されており、43アミノ酸であり、さまざまな組織内で確認される4.9kDaの遍在的なポリペプチドである。内皮細胞分化および遊走、T細胞分化、アクチン重合抑制、および血管新生の役割を含む、いくつかの役割は、このタンパク質によるものとされた。
【0010】
1つの実施形態に従うと、この発明は、ドライアイ症候群の反転を促進するか、またはドライアイ症候群を抑制するための治療方法であって、この治療方法は、このような治療を必要とする被験体に対して、アミノ酸配列LKKTETまたは、その、眼の変性を抑制する活性を有する保存的な変異型を含む、眼の変性を抑制するポリペプチド、好ましくは、サイモシンβ4、サイモシンβ4のアイソホーム、酸化サイモシンβ4、またはサイモシンβ4のアンタゴニストの生成を刺激する製剤を含有する有効な量の組成物を投与するステップを含む。
【0011】
この発明は、眼および周辺組織の炎症性疾患、変性疾患、免疫疾患、および他の疾患の治癒および反転を促す。
【0012】
この発明に従って用いられ得る組成物は、サイモシンβ4(Tβ4)と、Tβ4アイソホームと、酸化Tβ4と、アミノ酸配列LKKTETまたは、その、眼の変性を抑制する活性を有する保存的な変異型を含むポリペプチドとを含む。ここで引用により援用される国際出願PCT/US99/17282号は、この発明に従うと有用であり得るTβ4のアイソホーム、アミノ酸配列LKKTET、および、その、眼の変性を抑制する活性を有する保存的な変異型を開示しており、これらは、この発明において用いられ得る。ここで引用により援用される国際出願PCT/GB99/00833(WO 99/49883)号は、この発明に従って用いられ得る酸化サイモシンβ4を開示している。この発明は主に、Tβ4およびTβ4アイソホームに関して以下で説明されているが、以下の説明は、アミノ酸配列LKKTET、その、眼の変性を抑制する活性を有する保存的な変異型、および酸化サイモシンβ4にも同様に適用可能であることが意図されることが理解されるべきである。
【0013】
1つの実施形態では、この発明は、ドライアイ症候群に関連し得るような眼の変性の反転を促進するか、または眼の変性を抑制するための治療方法を提供し、この治療方法は、このような治療を必要とする被験体に対して、アミノ酸配列LKKTETまたは、その、眼の変性を抑制する活性を有する保存的な変異型を含む、眼の変性を抑制するポリペプチドを含有する有効な量の組成物を投与するステップを含む。接触は、局所的であり得るか、または全身にわたり得る。局所的投与の実施例は、たとえば、Tβ4を含有する溶液、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、泥膏、スプレー、懸濁液、分散液、ヒドロゲル、軟膏剤、または油剤に眼を接触させることを含む。全身投与は、たとえば、Tβ4またはTβ4アイソホームを含有する組成物の静脈内注射、腹腔内注射、筋肉内注射を含む。被験体は、いずれかの哺乳類、好ましくは、ヒトであり得る。
【0014】
この発明に従った組成物は、毎日、1日おきなどに投与され、投与日につき1回しか使用されなくてもよく、または複数回使用されてもよく、たとえば、投与日につき2回、3回、4回、またはそれよりも多く使用され得る。
【0015】
Tβ4アイソホームは、公知のTβ4のアミノ酸配列に対して約70%、または約75%、または約80%、またはそれを超える相同性を有することが確認された。このようなアイソホームは、たとえば、Tβ4a1a、Tβ9、Tβ10、Tβ11、Tβ12、Tβ13、Tβ14、およびTβ15を含む。Tβ4と同様に、Tβ10およびTβ15アイソホームは、アクチンを重合抑制することが明らかにされた。Tβ4、Tβ10、Tβ15、およびこれらの他のアイソホームは、アクチン重合抑制または結合の媒介にかかわっていると思われるアミノ酸配列LKKTETを共有する。特定のいずれかの理論に結び付けられることが望まれるわけではないが、Tβ4アイソホームの活性は、ある程度は、アクチンを重合する能力によるものであり得る。たとえば、Tβ4は、眼の中のアクチンの重合を調節し得る(たとえば、β−サイモシンが、遊離G−アクチンを重合抑制することによって、F−アクチンを脱重合させると思われる)。したがって、アクチンの重合を調節するTβ4の能力は、完全に、またはある程度までは、LKKTET配列を介してアクチンに結合する、またはアクチンを重合抑制するというその能力によるものであり得る。したがって、Tβ4のように、アミノ酸配列LKKTETを有するTβ4アイソホームを含む、アクチンを結合または重合抑制する、またはアクチン重合を調節する他のタンパク質が、ここで説明されるように、単独で、またはTβ4と組合されて、ドライアイ症候群を緩和できる可能性がある。
【0016】
したがって、Tβ4a1a、Tβ9、Tβ10、Tβ11、Tβ12、Tβ13、Tβ14、およびTβ15等の公知のTβ4アイソホーム、ならびに、まだ確認されていないTβ4が、この発明の方法において有用であることが特に企図される。このようなTβ4アイソホームが、被験体において実施される方法を含む、この発明の方法において有用である。したがって、この発明はさらに、Tβ4、および、Tβ4アイソホーム、Tβ4a1a、Tβ9、Tβ10、Tβ11、Tβ12、Tβ13、Tβ14、およびTβ15を含む医薬組成物、および医薬的に許容し得る担体を提供する。
【0017】
加えて、適切な重合抑制、結合、可動化、または重合検定で示されるような、または、たとえば、LKKTET等の、アクチン結合を媒介するアミノ酸配列の存在によって確認されるような、アクチン重合抑制または結合能力を有し、またはアクチンを移動させるか、またはアクチン重合を調節できる他のタンパク質が、この発明の方法で同様に用いられ得る。このようなタンパク質は、たとえば、ゲルソリン、ビタミンD結合タンパク質(DBP)、プロフィリン、コフィリン、デパクチン、DnアーゼI、ビリン、フラグミン、セベリン、キャッピングタンパク質、β−アクチニン、アクトビンジン、およびアクメンチンを含む。このような方法は、被験体に実施される方法を含むため、この発明はさらに、ここで述べられるようなゲルソリン、ビタミンD結合タンパク質(DBP)、プロフィリン、コフィリン、デパクチン、DnアーゼI、ビリン、フラグミン、セベリン、キャッピングタンパク質、β−アクチニン、アクトビンジン、およびアクメンチンを含む医薬組成物を提供する。したがって、この発明は、アミノ酸配列LKKTETおよびその保存的な変異型を含む、ドライアイ症候群を緩和するポリペプチドの使用を含む。
【0018】
ここで用いられるような用語「保存的な変異型」またはその文法的な変形は、アミノ酸残基を別の生物学的に同様の残基に置換することを意味する。保存的な変異例は、イソロイシン、バリン、ロイシン、またはメチオニン等の疎水性残基を別のものに置換すること、極性残基を別のものに置換すること、たとえば、アルギニンをリシンに、グルタミン酸をアスパラギン酸に、またはグルタミンをアスパラギンに置換すること等を含む。
【0019】
Tβ4は、いくつかの組織および細胞タイプに局在したため、Tβ4の生成を刺激する製剤は、組織および/または細胞からのTβ4の生成を引き起す組成物に加えられ得るか、または組織および/または細胞からのTβ4の生成を引き起す組成物を含み得る。このような製剤は、インスリン様成長因子(IGF−1)、血小板由来成長因子(PDGF)、表皮成長因子(EGF)、β型トランスフォーミング成長因子(TGF−β)、基本的な線維芽細胞成長因子(bFGF)、サイモシンα1(Tα1)、および血管内皮成長因子(VEGF)等の成長因子のファミリーのメンバーを含む。より好ましくは、製剤は、β型トランスフォーミング成長因子(TGF−β)またはTGF−βスーパーファミリーの他のメンバーである。この発明のTβ4組成物は、細胞外基質沈着、細胞遊走、および炎症性サイトカインのダウンレギュレーションを通して結合組織の成長を実現することによって、ドライアイ症候群を緩和し得る。
【0020】
加えて、ドライアイ症候群の緩和の助けとなるか、またはドライアイ症候群の緩和を促す製剤が、Tβ4またはTβ4アイソホームとともに、組成物に加えられ得る。このような製剤は、脈管形成剤、成長因子、細胞の分化を促す製剤、細胞の遊走を促進する製剤、および眼の中の細胞外基質材料の提供を促す製剤を含む。たとえば、限定ではないが、Tβ4またはTβ4アイソホームが単独で、または組合わさって、以下の製剤のうちのいずれか1つ以上と組合わせて加えられ得る。以下の製剤とは、すなわち、有効な量のVEGF、KGF、FGF、PDGF、TGFβ、IGF−1、IGF−2、IL−1、プロサイモシンα、およびサイモシンα1である。
【0021】
この発明は、医薬的に許容し得る担体中に治療上有効な量のTβ4またはTβ4アイソホームを含有する医薬組成物も含む。このような担体は、非経口投与に関して上に列挙されたものを含む。
【0022】
ドライアイ症候群を抑制する、またはドライアイ症候群の反転を促進する、実際の用量または試薬、製剤または組成物は、被験体の大きさおよび健康状態を含む多くの要因に左右され得る。しかしながら、当業者は、上述のPCT/US99/17282号およびそこで引用される参考文献で開示されているような、臨床的な用量を決定するための方法および技術を説明する教示を用いて、使用されるべき適切な用量を決定することができる。Tβ4またはその類似体、アイソホームまたは誘導体は、ドライアイまたは同様の疾患の治療に有効である、いずれかの好適な量で投与され得る。たとえば、Tβ4は、約0.1−50マイクログラムのTβ4の範囲内の用量で、より好ましくは、約1−25マイクログラムのTβ4の量で、投与され得る。Tβ4は、1回の治療として投与されてもよく、または、所望の結果が得られるまで、毎日、1日に2回、1日に3回など、または1日おきなどに、投与されてもよい。
【0023】
好適な局所的製剤は、約0.001−10重量%の範囲内の濃度の、より好ましくは、約0.01−0.1重量%の範囲内の濃度の、最も好ましくは、約0.05重量%の濃度のTβ4またはTβ4アイソホームを含む。
【0024】
ここで説明される治療的なアプローチは、この発明のTβ4または他の化合物を含有する試薬または組成物の投与または送達のためのさまざまなやり方を含み、これらは、被験体に対する従来のいずれかの投与技術(たとえば、これらに限定されているわけではないが、局所的投与、局部的投与、または全身投与)を含む。この発明のTβ4または他の化合物を用いる、または含有する、方法および組成物は、医薬的に許容し得る非毒性賦形剤または担体との混合によって、調合されて医薬組成物になり得る。
【0025】
この発明は、Tβ4ペプチドまたはその機能フラグメントと相互作用する抗体の使用を含む。異なるエピトープの特異性を備える、貯留されたモノクローナル抗体から本質的に構成される抗体および別のモノクローナル抗体製剤が提供される。モノクローナル抗体は、上述のPCT/US99/17282号に開示されているような、当業者には周知の方法によって、タンパク質フラグメントを含む抗原から形成される。この発明で用いられるような用語「抗体」は、モノクローナル抗体および多クローン性抗体を含むことを意味する。
【0026】
さらなる別の実施形態では、この発明は、Tβ4遺伝子発現を調節する有効な量の製剤を投与することによって、被験体を治療するための方法を提供する。用語「調節」は、Tβ4が過度に発現している場合のTβ4発現の抑制または抑圧、および、Tβ4が十分に発現していない場合の発現の誘導を意味する。用語「有効な量」は、Tβ4遺伝子発現を調節して、結果として、Tβ4関連のドライアイ症候群の症状を緩和するのに有効なTβ4製剤の量を意味する。Tβ4またはTβ4アイソホーム遺伝子発現を調節する製剤は、たとえば、ポリヌクレオチドであり得る。ポリヌクレオチドは、アンチセンス、三重らせん物質、またはリボザイムであり得る。たとえば、構造遺伝子領域またはTβ4のプロモータ領域に向けられたアンチセンスが用いられ得る。
【0027】
別の実施形態では、この発明は、Tβ4活性を調節する化合物を用いるための方法を提供する。Tβ4活性に影響を与える化合物(たとえば、アンタゴニストおよびアゴニスト)は、ペプチド、ペプチドミメティック、ポリペプチド、化学的化合物、亜鉛等の鉱物、および生物学的製剤を含む。
【0028】
特定のいずれかの理論に結び付けられるわけではないが、この発明は、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(鋳型非依存性DNAポリメラーゼ)を誘導して、1つ以上の炎症性サイトカインのレベルを減じ、内皮細胞のための走化性因子として作用することによって、ドライアイ症候群に関連した眼の変性の反転を促進し、または眼の変性を抑制することができ、したがって、加齢または他の変性要因もしくは環境的要因によって引起された眼の変性変化を抑制し、または眼の変性変化の反転を促進すると考えられる。
【実施例1】
【0029】
年齢40歳未満の健康で若い人々の涙液および年齢40歳以上のより高齢の人々の涙液が、Tβ4のレベルについて検査された。Tβ4は、健康で若い人々の涙液中に最も高いレベルで存在し、涙液中のTβ4は、加齢および更年期に伴って著しく減少することが確認された。したがって、ドライアイ症候群および眼の炎症は、涙液中のTβ4の欠乏によるものであり得る。したがって、Tβ4の投与は、涙液の生成を担当する眼の腺を治癒させることによって、炎症を緩和し、炎症を起こした眼および粘膜の治癒を促進し、涙液の生成を促し得る。
【実施例2】
【0030】
ワットマン(Whatman)(登録商標)濾紙のディスク(サイズ50)が、2mm直径のトレフィンで切断された。ディスクは、1.0N NaOH中に浸漬され、イソフルランによって麻酔をかけられたマウスの中央角膜に30秒間適用された。次に、眼は、10mlのPBSで洗浄され、後に、局所的に、毎日2回、7日間、Tβ4(5mg−5ml)または(対象として)同様の量のPBSのいずれかを用いて処置された。7日後、PBSで処置された眼と、Tβ4で処置された眼との間には、著しい違いが認められた。PBSで処置された眼は、明らかな浮腫状および炎症性の角膜を示し、前房は、著しい前房出血および強度の炎症細胞浸潤を含んだ。対照的に、Tβ4で処置された角膜は、間質浮腫の減少およびより規則正しく構成された間質層を示した。PBSで処置された眼と比較して、Tβ4で処置された眼の前眼部の全体的な解剖学的完全性は、外観上は、明らかにより正常であった。
【0031】
PBSおよびTβ4を用いた処置の7日後に、透過型電子顕微鏡による分析も行なわれた。Tβ4で処置された角膜は、より規則正しい上皮細胞間結合配列、および細胞層間の空胞化の減少を示した。同様に、PBSで処置された角膜は、間質性消化および浮腫の部分において著しい炎症浸潤を示し、一方、Tβ4で処置された角膜の間質は、より規則正しく間隔をあけられたコラーゲン層を備えたまま、無傷に見えた。

Claims (17)

  1. 眼の変性の反転を促進するか、または眼の変性を抑制するための治療方法であって、
    このような治療を必要とする被験体に対して、アミノ酸配列LKKTETまたは、その、眼の変性を抑制する活性を有する保存的な変異型を含む、眼の変性を抑制するポリペプチドを含有する有効な量の組成物を投与するステップを含む、方法。
  2. 前記眼の変性は、ドライアイ症候群に関連する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ポリペプチドは、サイモシンβ4(Tβ4)、Tβ4のアイソホーム、または酸化Tβ4を含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記組成物は、全身投与される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記組成物は、局所的に投与される、請求項1に記載の方法。
  6. 前記組成物は、溶液、ゲル、クリーム、泥膏、ローション、スプレー、懸濁液、分散液、軟膏、ヒドロゲル、または軟膏剤の製剤の形である、請求項5に記載の方法。
  7. 前記ポリペプチドは、組換えまたは合成である、請求項1に記載の方法。
  8. 前記ポリペプチドは、抗体である、請求項1に記載の方法。
  9. 前記抗体は、多クローン性またはモノクローナルである、請求項8に記載の方法。
  10. 眼の変性の反転を促進するか、または眼の変性を抑制するための治療方法であって、
    このような治療を必要とする被験体に対して、アミノ酸配列LKKTETまたは、その、眼の変性を抑制する活性を有する保存的な変異型を含む、眼の変性を抑制するポリペプチドの生成を刺激する製剤を含有する有効な量の組成物を投与するステップを含む、方法。
  11. 前記眼の変性は、ドライアイ症候群に関連する、請求項10に記載の方法。
  12. 前記ポリペプチドは、サイモシンβ4である、請求項10に記載の方法。
  13. 前記製剤は、サイモシンβ4のアンタゴニストである、請求項10に記載の方法。
  14. 眼の変性の反転を促進するか、または眼の変性を抑制するための組成物であって、
    アミノ酸配列LKKTETまたは、その、眼の変性を抑制する活性を有する保存的な変異型を含む、眼の変性を抑制するポリペプチドを含有する有効な量の組成物を含む、組成物。
  15. 前記眼の変性は、ドライアイ症候群に関連する、請求項14に記載の組成物。
  16. 前記ポリペプチドは、Tβ4、Tβ4のアイソホーム、または酸化Tβ4を含む、請求項14に記載の組成物。
  17. 溶液、ゲル、クリーム、泥膏、ローション、スプレー、懸濁液、分散液、軟膏、ヒドロゲル、または軟膏剤の製剤を含む、請求項14に記載の組成物。
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