JP2005506279A - 血管新生を促進する方法及び組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
発明の背景
本出願は、その内容を引用をもってここに援用することとする2001年1月26日提出の米国暫定特許出願第60/264,457号に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
発明の背景
血液供給の閉塞又は不足を原因とする酸素供給の枯渇は、心筋虚血、虚血性腸疾患、及び末梢虚血を含め、多種の組織虚血に関連する共通の病的状態である。組織虚血を軽減できるかは、新しい毛細血管が既存の血管構造及び組織から生まれるプロセスである血管新生に大きく左右される。新しい血管の自発的な成長により、虚血域の内部及び周囲に側副血行が生じ、血流が向上し、虚血により引き起こされた症状が軽減される。手術又は血管新生術を行えば、場合によっては虚血領域の再血管新生が促されるであろうが、閉塞を起こす動脈の病変の程度、複雑さ及び位置によっては、このような治療ができないことがしばしばある。
【0003】
慢性虚血の治療の代替的方法は、20種を越えるものが公知である血管成長因子の送達に焦点を当ててきた。今日までのところ、外因性因子の動物モデルへの(局所注射などによる)投与後に、適度の、しかし有意な血管新生に成功が収められている。例えば、精製組換えVEGF-Aを、慢性四肢虚血のウサギモデルの虚血骨格筋組織に注射した後で、ある程度の、しかし有意な血管新生が惹起されたことが実証されている [Takeshita et al., Circulation 90, 228:1994]。加えて、VEGF-AをコードするcDNAを含有するベクタを直接注射しても、虚血動物モデルの骨格筋及び心筋の両方で血管新生刺激がある程度は誘導されたことも示された [Takeshita et al., Biochemical and Biophysical Research Communications 227, 628:1996; and MacGovern et al., Human Gene Therapy 8, 215: 1997]。しかしながら、このような局所投与の結果、所望の部位から当該因子が拡散してしまい、血管新生作用が減衰してしまうことがしばしばある。さらに、血管新生因子のこのような大量送達の結果、新しい血管が局部的に、かつ無秩序に形成されてしまい、(あるとしても)そのうちの一部しか、閉塞の改善に寄与しないことが多々ある。
【0004】
血管新生を促進し、効果的な虚血治療を行うための現在のアプローチに伴う更なる限界は、公知の技術を用いて単純な作用物質を投与しただけでは、安定な血管を形成できないことである。過去の研究では、虚血動物モデルの治療後数ヶ月間、血管を追跡したところ、新しい血管の大半は投与した成長因子が枯渇した後に退行することが観察されている。このように、虚血治療のための現在のアプローチでは、新たに形成された血管構造を維持するためには、因子を繰り返し投与することが必要である。
【0005】
他の関連する治療法は、血管新生タンパク質を持続的なレベルで生成できる自己由来もしくは非自己由来細胞の移植に依拠することにより、複数回投与する必要をなくそうという試みである。このようなアプローチの一つでは、対象の内因性細胞を分離し、培養し、血管新生タンパク質をコードする発現ベクタをトランスフェクトする。in vitroでの操作後、これらの細胞を、患者の虚血組織部位に注射して戻す。しかしながら、このアプローチの欠点には、各個々の患者由来の標的細胞を分離、培養及びトランスフェクトするために必要な時間及び労力や、血管新生タンパク質を確実に持続的に発現させることの難しさがある。加えて、注射後の細胞の生存及び分化状態は至適以下になることも、このアプローチの効果の制約である。
【0006】
これらの問題を回避するために、細胞を患者以外(例えば同種)や、ヒト以外の種さえからも採取して、上述のような操作が行われてきた。しかしながら、改変された非患者もしくは非ヒト細胞は、しばしば患者自身の免疫系の拒絶に遭うため、このアプローチも実用的ではない。
【0007】
従って、組織血管新生を促進し、安全で信頼性があり、かつ非観血的な態様で安定な血管構造を生成させる、より優れた治療法が、組織虚血及び他の関連する状態の治療に求められている。
【0008】
発明の概要
本発明は、末梢及び心筋虚血を含む多種の組織虚血を治療するために血管新生を促進する新規な方法及び組成物を提供するものである。選択された血管新生因子又は複数の因子の相乗作用的組合せ、このような因子もしくは複数の因子の組合せの機能的類似体、又は、このような因子又は複数の因子の組合せをコードする核酸、が、組織の局所域に、この組織域内で血管新生を誘導するのに有効量、送達される。さらに本発明は、このような因子又は複数の因子の組合せ、このような因子もしくは複数の因子の組合せの機能的類似体、及び、このような因子又は複数の因子の組合せをコードする核酸、を、送達するための、より優れた方法及び媒体も包含する。
【0009】
ある一つの実施態様では、本発明は、PDGF-BBを組織の局所域に、この組織域内で血管新生を誘導するのに有効量、送達するステップを含む、血管新生を促進する方法を提供する。前記PDGF-BBは単独で送達することも、又は、別の血管新生促進因子、特にbFGF及び/又はVEGF-A、と組み合わせて送達することもできる。本血管新生促進因子又は複数の因子の組み合わせは、タンパク質組成物の形でも、又は、該タンパク質をコードする発現プラスミドの形でも、投与することができる。さらに本血管新生促進因子又は複数の因子の組合せは、当該因子又は複数の因子の組合せの機能的類似体の形でも、投与することができる。例えば、PDGF-BB、VEGF-A 及び/又は bFGFの抗イディオタイプ抗体を本発明に従って投与することができる。
【0010】
本発明の血管新生促進因子を発現プラスミドの形で投与する場合、適したベクタには、限定はしないが、アデノウィルスベクタ、レトロウィルスベクタ、アデノ随伴ウィルスベクタ、RNAベクタ、リポソーム、陽イオン性リピド、レンチウィルスベクタ及びトランスポゾンがある。
【0011】
別の実施態様では、本発明は、上述のものなどの血管新生因子を、組織の局所域内で血管新生を誘導するのに有効量、ヘパリンセファロース含有マイクロカプセルを用いて前記組織域に送達することにより、血管新生を促進する方法を提供するものである。本血管新生因子、又は、当該因子をコードする発現プラスミドは、組織の局所域への遅延性、持続性放出に関して以下に提供する実施例で解説するように、本マイクロカプセル内に導入される。
【0012】
ある具体的な実施態様では、本マイクロカプセルは、非被覆ヘパリンセファロースビーズ、アルギン酸塩高分子の単層で被覆されたヘパリンセファロースビーズ、ポリエチレングリコール(PEG)高分子で被覆されたヘパリンセファロースビーズ、又は、アルギン酸塩層及びPEG層で交互に被覆されたヘパリンセファロースビーズから、構成される。典型的には、本マイクロカプセルの大きさは1乃至200ミクロンの範囲である。
【0013】
本マイクロカプセル内に導入するのに適した血管新生因子には、例えば、M-CSF、GM-CSF、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E、ニューロピリン、FGF-1 、FGF-2(bFGF)、FGF-3、FGF-4、FGF-5、FGF-6、PDGF-BB、PDGF-AA、アンジオポエチン 1、アンジオポエチン 2、エリスロポエチン、BMP-2、BMP-4、BMP-7、TGF-ベータ、IGF-1、オステオポンチン、プレイオトロピン(原語:Pleiotropin)、アクチビン、エンドセリン-1、及びこれらの組合せ、又は、このような血管新生因子をコードする発現ベクタ、がある。本血管新生因子は、それらの天然源から精製することも、又は、組換え発現によって作製することもできる。
【0014】
本マイクロカプセルは、組織の局所域に、一般的には注射又は外科的移植法によって接触させる。例えば注射は、NOGA技術など、カテーテルベースの経心筋注入術を用いて行うことができる。
【0015】
さらに別の実施態様では、本発明は、ある勾配にした一種以上の血管新生因子、又は、一種以上の血管新生因子をコードする核酸に、組織の局所域を接触させることで、前記勾配に沿って指向性の血管成長が起きるようにする、血管新生を促進する方法を提供するものである。このような指向性の血管成長を用いると、血管同士の連結、及び/又は、血管内の連結(例えば血流に血管内の閉塞を迂回させるためなど)を行うことができる。
【0016】
ある具体的な実施態様では、本血管新生因子又は核酸を、組織の局所域に接触させる(例えば内部に移植する)生体適合性材料を用いて、ある勾配で放出させる。本血管新生因子は、周囲組織に放出されるように、該生体適合性材料に結び付けられる(例えば該生体適合性材料に吸収させる)。これは、該生体適合性材料を、所定の組織域に接触させる(例えば移植する)前に、本血管新生因子で処理しておくことで、実施できる。こうして本血管新生因子は、該生体適合性材料から周囲組織へ、該生体適合性高分子の配置で決定される指向性の勾配で、放出される。
【0017】
適した生体適合性材料には、例えば、本血管新生因子を導入するような高分子又は糸材がある。ある好適な実施態様では、該生体適合性材料は、例えばポリグリコネート(原語:polyglyconate)・モノフィラメント、ポリグルカプロン(原語:poliglecaprone)25-(モノクリル)、ポリジアキソノン(原語:polydiaxonone)(PDS II)、ポリグラクチン910、ポリグリコール酸、ビオディン(原語:Biodyn)グリコマー631、クローミック手術用腸又は平織手術用腸などの吸収性糸材である。
【0018】
本発明のこれら及び他の実施態様を以下の詳細な説明、実施例及び図面で解説する。
【0019】
発明の詳細な説明
成長促進因子は血管新生性の作用物質であると解説されてはきたが、このようなタンパク質が末梢虚血及び/又は心筋虚血の治療用の治療薬であるとして、その効果が実証されたことはなかった。本発明は、PDGF-BBなどの特定の血管新生因子や、複数の因子の特定の組合せ(例えばPDGF-BBを含む組合せなど)を用いて、血管新生を促進すると共にこのような虚血を治療する方法を、初めて提供するものである。さらに本発明は、血管新生因子の周囲組織(例えば虚血性心筋)への指向性及び/又は制御放出を可能とするなどにより、該因子を送達するそれらの効果を高める優れた方法も提供するものである。
【0020】
血管新生因子
ここで用いる用語「血管新生因子」とは、既存の脈管構造からの新しい血管の成長を促進することのできるあらゆる公知のタンパク質因子を言う。本発明で用いるのに適した血管新生因子には、例えば、PDGF-BB、PDGF-AA、M-CSF、GM-CSF、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E、ニューロピリン、 FGF-1 、FGF-2(bFGF)、FGF-3、FGF-4、FGF-5、FGF-6、アンジオポエチン 1、アンジオポエチン 2、エリスロポエチン、BMP-2、BMP-4、BMP-7、TGF-ベータ、IGF-1、オステオポンチン、プレイオトロピン(原語:Pleiotropin)、アクチビン、エンドセリン-1 及びこれらの組合せ、がある。
【0021】
用語「血管新生因子」とはまた、上記の因子の機能的類似体も言う。このような機能的類似体には、例えば、前記因子の機能ペプチド又は部分がある。機能的類似体には、さらに、前記因子の受容体に結合することで、血管新生を促進する上での前記因子の活性を模倣するような 抗イディオタイプ抗体も含まれる。このような抗イディオタイプ抗体を作製する方法は当業で公知であり、例えばその内容を引用をもってここに援用するWO 97/23510に、その解説がある。
【0022】
抗原は、特定の抗体が結合する先である特異的な抗原決定基を有する。抗体のうち、抗原の抗原決定基と特異的に相互作用する領域は抗原結合部と呼ばれる。抗原結合部は、抗原の抗原決定基と特異的に相互作用する、抗体上の固有の配列であるイディオトープの集団から成る。抗原上の抗原決定基と相互作用するイディオトープのこのような特定の集団は、抗体の「イディオタイプ」と定義されている。従って、抗イディオタイプ抗体とは、第一の抗体の抗原結合部に対する抗体である。抗イディオタイプ抗体はこれらの特異配列に結合するため、第一の抗体が反応する先の抗原決定基と似ていたり、又は、この抗原決定基として作用することがある。例えば、ある人が、bFGF上の特異的抗原決定基に結合する抗体を有しているかも知れない。こうしてこの人は、この第一の抗体の抗原結合部と特異的に相互作用する第二抗体(抗イディオタイプ抗体)を産生するかも知れない。こうしてこの抗イディオタイプ抗体は、bFGF受容体に結合してこの受容体を活性化することで、bFGF自体の生物活性を模倣することになるであろう。
【0023】
数多くの成長因子の半減期は大変短く、従って患者に投与された因子の大半は利用されないため、抗イディオタイプ抗体を(成長因子類似体として)本発明の方法で用いると、有利であろう。対照的に、抗体の半減期は遙かに長いため、その効力は、in vivoでより長期間維持される。その上、生物学的効果を得るのに必要な成長因子のレベルは、往々にして、毒性及び低血圧などの有害反応を生むことがある。同じ生物学的効果を生むのに必要な抗イディオタイプ抗体のレベルはそれより低くてすむため、これらの有害な副作用を避けることができるであろう。
【0024】
本発明で用いる血管新生因子は、それらの天然源から精製することも、又は、組換え発現により作製することも可能であり、その後患者にタンパク質組成物として投与することができる。代替的には、下にさらに詳述するように、本因子をコードする発現プラスミドの形で、本因子を投与することができる。適した発現プラスミドの作製は当業で公知である。本発明で用いる具体的な血管新生発現プラスミドを図14に示し、実施例1で解説する。発現プラスミドを作製するために適したベクタには、例えば、アデノウィルスベクタ、レトロウィルスベクタ、アデノ随伴ウィルスベクタ、RNAベクタ、リポソーム、陽イオンリピド、レンチウィルスベクタ及びトランスポゾンがある。
【0025】
従って、ある実施態様では、本発明は、血管新生を促進すると共に多種の組織虚血を治療するために血管新生を促進する新規な方法及び組成物を提供するものである。所定の血管新生因子もしくは複数の因子の相乗的組合せ、このような因子もしくは複数の因子の機能的類似体、又は、このような因子もしくは複数の因子の組合せをコードする核酸、を、組織の局所域に、前記組織域内で血管新生を誘導するのに有効量、送達する。
【0026】
ある好適な実施態様では、本発明は、組織の局所域に、前記組織域内で血管新生を誘導するのに有効量のPDGF-BBを送達するステップを含む、血管新生を促進する方法を提供する。該PDGF-BBは、単独で送達することも、又は、別の血管新生促進因子と組み合わせて送達することもできる。特に好適な組合せには、bFGF及び/又はVEGF-Aと組み合わされたPDGF-BBがある。
【0027】
血管新生因子のための送達媒体
I. 別の実施態様では、本発明は、制御された持続性の態様で、組織の局所域に血管新生因子を送達する手段を提供する。心筋組織及び末梢組織の虚血を治療するために血管新生を刺激する上で精製(例えば組換え)血管新生性タンパク質を用いることの問題の一つは、このようなタンパク質をin vivoに注射すると半減期が短いことであろう。本発明は、持続放出性のヘパリンセファロース含有マイクロカプセルを、組織域内で血管新生を誘導するのに有効量、用いることで、この問題に対処する。
【0028】
多くの血管新生因子に共通の性質の一つは、in vivoで抗凝固作用の役割を担う、硫酸基が数多く付いたグリコサミノグリカンであるヘパリンへの結合能である。血管新生因子に結合すると共に、局所組織に接触(例えば移植)させたときに、該因子を遅延放出する本発明のヘパリンセファロース含有マイクロ粒子を作製する際に、この性質を利用する。本マイクロカプセルを作製する実験的プロセスを実施例3で詳述し、図7に図解する。
【0029】
実施態様の一つでは、本マイクロカプセルを、組織の局所域に注射するか、又は、外科的に移植する。別の実施態様では、本マイクロカプセルを、NOGAシステム(バイオセンス社製)を用いて組織の局所域に送達する。NOGAは三次元カテーテルベースの経心筋注入システムである。カテーテルを主静脈/動脈に挿入し、心臓のどちらかの心室に伝わせる。このカテーテルの末端は、治療薬を挿入した後に心筋を介して心筋の損傷域に注射することができる針及び空間を内包している。この送達方法は、冠動脈内注射や心臓壁面への治療薬の配置を含め、他の送達法よりも遙かに簡単、かつ患者にとって安全であり、また、遙かに効果的である。このシステムの性質のために、25乃至27番針で物理的に送達できる治療薬しか、用いることができない。このように、先行技術で解説されたマクロカプセルは、このようなシステムで使用できないが、本発明のマイクロカプセルは、このシステムで使用が可能である。
【0030】
本マイクロカプセルは、単一ヘパリンセファロースビーズから成るが、選択的には、該ビーズを、アルギン酸塩高分子の薄層で被覆することもできる。本発明のある具体的な実施態様では、本マイクロカプセルを、非被覆のヘパリンセファロースビーズ、アルギン酸塩高分子の単層で被覆したヘパリンセファロースビーズ、ポリエチレングリコール(PEG)高分子で被覆したヘパリンセファロースビーズ、又は、アルギン酸塩層及びPEG層で交互に被覆したヘパリンセファロースビーズ、から構成する。
【0031】
例えば図7に示し、実施例1で解説する同軸気流技術を用いると、NOGA送達システムで用いるのに充分小さなサイズに、本マイクロカプセルを作製することもできる。例えば、本マイクロカプセルは典型的に、1乃至200ミクロンの範囲の大きさである。さらに、これらはFGF-2、VEGF-A及びPDGF-BBなどの血管新生因子を大量に吸収して、これら因子を、in vivoで新しい血管の成長を刺激することのできるレベルで長時間、ゆっくりと放出することができる。
【0032】
II. 別の実施態様では、本発明は、ある勾配にした一種以上の血管新生因子、又は、一種以上の血管新生因子をコードする核酸を用いて、組織の局所域に血管新生因子を送達することで、前記勾配に沿った指向性の血管成長を起こさせるようにする手段を提供するものである。前出の例で解説したものなどの血管新生因子は、ある勾配で血管新生因子を提供することにより、内皮細胞やそれらの支持細胞の、当該因子の源に向かった遊走及び増殖を刺激することで、作用する。動脈の損傷を効果的にバイパスするような新しい血管を、既存の脈管構造から成長(血管新生)させる際にその調節を行うには、厳密な空間的及び時間的制御が必要である。従って、本発明に基づき、血管新生因子の指向性ある勾配を形成することで、(例えば血流に、血管内の閉塞を迂回させるためなどに)血管同士の連結及び/又は血管内の連結を行うことができる。
【0033】
ある具体的な実施態様では、血管新生因子(又は当該因子をコードする核酸)を、該因子を含有する、生体適合性材料を用いて、ある勾配で放出させ、但しこの場合、前記生体適合性材料を周辺組織と接触(例えば移植)させたときに、当該因子がこの組織に放出されるようにする。これは、生体適合性材料から当該因子がin vivoで放出されるような態様で、所定の組織域に接触(例えば移植)させる前の血管新生因子を該材料で処理しておくことで、実施できる。次に、血管新生因子が材料から放出されるや、該因子の指向性ある勾配が提供されるような配置で、この生体適合性材料を組織の局所域に接触(例えば移植)させる。
【0034】
本発明で用いるのに適した生体適合性材料には、例えば、血管新生因子を導入した高分子又は糸材がある。ある好適な実施態様では、当該生体適合性材料は、例えばポリグリコネート(原語:polyglyconate)・モノフィラメント、ポリグルカプロン(原語:poliglecaprone)25-(モノクリル)、ポリジアキソノン(原語:polydiaxonone)(PDS II)、ポリグラクチン910、ポリグリコール酸、ビオディン(原語:Biodyn)グリコマー631、クローミック手術用腸又は平織手術用腸などの吸収可能な糸材である。当該生体適合性材料を、最適な血管新生性刺激を提供するような成長因子又は成長因子の組合せを送達できるように、一種又は複数の血管新生因子で被覆することができる。また、天然の血管新生プロセスをよりそっくりに模倣するのに役立つであろう特定の速度及び特定の時点で特定の成長因子を放出するように、生体適合性材料を加工することもできる。
【0035】
以下の実施例では、本発明をさらに解説するが、以下の実施例を限定的なものと捉えられてはならない。
【0036】
同等物
以上、本発明をその好適な実施態様を参照しながら解説してきたが、他の実施態様も同じ結果を達成することができる。当業者であれば、日常的な実験によって、ここに解説した具体的な実施態様の同等物を数多く、認識し、又は確認できることであろう。このような同等物は本発明の範囲内にあるとみなされ、以下の請求の範囲の包含するところである。
【0037】
引用による援用
ここに引用した全参考文献及び特許の内容の全文を、引用をもってここに援用することとする。
【0038】
実施例
以下の実施例を、PDGF-BB単独の場合と、他の血管新生因子と組み合わせた場合の血管新生能を実証及び定量するために行った。すべて以下に詳述するように、ストリンジェント・マトリゲル検定、マウス角膜検定、及び虚血ラット心臓検定を含め、多種の検定を用いた。
【0039】
実施例1 − 血管新生cDNAを含有するレトロウィルスベクタの作製、ウィルス力価の分析及び安定な遺伝子移入の評価
PDGF-BBをマトリゲル・モデルに安定かつ高レベルで送達するために、C57B1/10マウスの始原筋原細胞に、ヒトPDGF-BBをコードするレトロウィルスベクタを導入した。PDGF-BBの血管新生能を、他の公知の血管新生性物質と比較するために、ヒトVEGF-A165、VEGF-C、VEGF-A、VEGF-D、PDGF-BB、又はbFGF をコードするレトロウィルスベクタも、作製し、テストした。すべてのベクタを図14に概略的に示す。VEGF-C、VEGF-D及びPDGF-BBの cDNAは、プロセッシング前の形の不活性な(又はPDGF-BBの場合は活性の低い)タンパク質をコードしているため、成熟型の前述のタンパク質をコードするcDNAを、マウスIgGカッパ免疫グロブリン遺伝子由来の強力な分泌シグナルに連結した状態で含有するベクタを作製した。
【0040】
すべてのベクタは、導入の起きた標的細胞を、蛍光発色セルソーティング(FACS)により、高速で効率的かつ毒性を与えずに選抜できるよう、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子も含有した。FACSソーティングを用いると、GFP陽性のレトロウィルス導入細胞のうちの最も明るい10%が分離される。GFP及び血管新生cDNAの両者とも、同じmRNA分子から翻訳されるため、これにより、ソーティング後の細胞は、高レベルの血管新生タンパク質も確実に発現することになる。GFPを最も強力に発現する細胞集団と、ソーティング後の細胞により分泌される血管新生タンパク質の量の間には、強い相関関係が存在する。この結果は、ソーティング後のGFP陽性細胞中に一ゲノム当たり3乃至6個のプロウィルスコピーがあることを示した、導入の起きた細胞のサザンブロット解析のデータと組み合わせると、血管新生タンパク質の産生及び分泌レベルは、この系を用いたそれらの最大レベルにあることを示している。
【0041】
すべてのベクタを、遺伝子移入の安定性及びウィルス力価についてテストした。ベクタは、1ml当たりほぼ5×105乃至1.2×106個の感染性ウィルス粒子の範囲のウィルス力価を示し、すべてのベクタは、C57B1/10マウス由来の始原骨格筋筋原細胞を標的とする血管新生性cDNAの安定な移入を示した。in vivoでの注射後の導入のあった筋原細胞の位置確認及び定量を容易に行えるよう、全ての筋原細胞試料を、β-ガラクトシダーゼ/ネオマイシン(β-GEO)耐性融合遺伝子をコードするレトロウィルスベクタに感染させて、標識した。
【0042】
I. レトロウィルスによる導入の起きた C57B1/10 筋原細胞のタンパク質発現及び分泌特性の特徴付け
コードされた血管新生タンパク質の、導入の起きた筋原細胞からの高レベルの発現及び分泌を、ウィルスによる導入の起きた筋原細胞から採った上清のウェスタン・ブロット又はELISA解析により、実証した。
【0043】
実施例2 − ストリンジェント・マトリゲル検定を用いた、導入の起きた筋原細胞による血管新生刺激の定量
実施例1で解説した、導入の起きた筋原細胞から分泌された血管新生タンパク質の効力を、ストリンジェント・マトリゲル検定を用いてin vivoで評価した。簡単に説明すると、3×105乃至2×106個の導入の起きた筋原細胞を、マトリゲル中に懸濁させ、C57B1/10マウスの背側腹部領域に皮下注射した。このマトリゲル・ペレットを、マトリゲル・ペレットに隣接する腹筋の一部と一緒に、注射後13日後に回収した。注射から13日後にマトリゲルのペレット及び隣接腹筋を回収した後、マトリゲル・ペレットをX-galで染色し、青色の、レトロウィルスによる導入の起きた筋原細胞の存在について分析した。加えて、隣接する腹筋中の微小血管の数を、視覚検査で定量した。
【0044】
有意な(p<0.05)血管新生応答が、VEGF-A、VEGF-C、PDGF-BB、及びbFGFで観察された(図1及び2を参照されたい)。前述の成長因子を分泌する、導入のあった筋原細胞を移植した結果、微小血管の数がほぼ4乃至5倍へ増加したことが観察された。最も強力な血管新生応答は、PDGF-BBで観察され、それにVEGF-A 及びbFGF が続いた(図1及び2)。
【0045】
実施例3 − マウス角膜モデルを用いた、PDGF-BBの血管新生能の評価
PDGF-BBなどの因子の、血管新生作用薬としての能力を、マウス角膜モデルを用いても調べた。8週齢のC57B1/6マウスの眼の角膜に線状刀で微小なポケットを作製した。このポケット内に、160ngの組換えヒトPDGF-BB、160ngのヒトVEGF-A、又は80ngのヒトbFGFを含有するハイドロン高分子で被覆した0.34mm×0.34mmのショ糖硫酸アルミニウムペレットを移植し、マウスを毎日観察した。コントロール・ペレットを移植したマウスでは、血管新生の証拠は何ら見られなかったが、PDGF-BB で被覆したペレットを投与したすべてのマウスで、強力な血管新生の証拠が見られた(図3を参照されたい)。このように、組換えPDGF-BBタンパク質は、マウス・マトリゲル及び角膜検定の両方で、新しい血管の成長を強力に刺激することができる。マトリゲル検定を用いて得られた結果とは対照的に、PDGF-BB単独では、明確かつ強力な血管新生応答を誘導はしたが、VEGF-A又はbFGFのいずれよりも、効力は劣った(図3)。マトリゲル及びマウス角膜モデル間で観察された違いは、VEGF-Aと比較して、PDGF-BBとより容易に相乗作用する、導入の起きた筋原細胞によって付加的な内因性血管新生因子が産生されたことで説明がつくかも知れない。あるいは、in vivoで産生される組換えVEGF-A及びPDGF-BBのレベルは、in vitroで産生されるレベルとは異なるのかも知れない。
【0046】
意外にも、bFGF及びPDGF-BBの組合せは、断然最も強力な組合せであることが判明し(図5)、どの因子の単独の場合(図3)や、bFGF及びVEGF-Aを組み合わせた場合(図4)よりも、数倍大きな血管新生効果を生んだ。さらに、この相乗効果のレベルは、PDGF-BB及びbFGFに特異的であると思われた。なぜなら、PDGF-BBをVEGF-Aと組み合わせた場合では、さほどの効果は惹起されなかったからである(図6を参照されたい)。従って、観察した中で最も強力な血管新生因子の組合せは、PDGF-BB及びbFGFだった。
【0047】
実施例4 − 心筋虚血の治療のための遅延放出性マイクロカプセルを通じて送達されるPDGF-BBの治療効果
以下の研究を行って、PDGF-BBが、ストリンジェント・マトリゲルモデルにおいて血管新生をin vivoで促進する能力、及び、心筋梗塞を有する虚血ラットモデルにおいて心機能を向上させる能力を、ヘパリンセファロース/アルギン酸塩マイクロカプセルを利用した遅延放出送達系を用いて評価した。この送達法は、bFGF及びPDGF-BBなどの特定の因子の、ヘパリン分子に対するin vitro及びin vivoの両方での強力な結合能に基づいていた。
【0048】
ヘパリン(大きさでほぼ50乃至150μm)で被覆したセファロースビーズをファルマシア社から購入した。これらのビーズを紫外線照射で滅菌し、アルギン酸塩高分子の1.6%溶液と混合した。この高分子は、カルシウムなどの多価陽イオンとの化学的架橋を通じてゲルを形成することができる。図7に示した、ヘパリン−セファロース/アルギン酸塩カプセルを作製する手法は、以下の通りである。滅菌したヘパリン−セファロースビーズを、1.6%アルギン酸塩溶液と混合し、この混合液を、5ml入りシリンジ内に充填した。次にこの混合液を針を通して押し出し、同軸気流系を用いて生ずるヘパリンセファロース/アルギン酸塩のミストを、1.5%塩化カルシウム溶液の水槽内に滴下させた。アルギン酸塩がこのカルシウム溶液に接触すると、アルギン酸塩は架橋し、球形の固形のゲルカプセルを形成した。形成したカプセルを250μmのふるいにかけ、無菌水で2回、洗浄し、0.9%塩化ナトリウム及び1mM塩化カルシウムから成る緩衝液中で保存した。このカプセルを顕微鏡下で視覚的に分析すると、マイクロカプセルの大半が、アルギン酸塩の薄層で被覆された個々のヘパリンセファロースビーズから成っていたことが判明した。
【0049】
ヘパリン-セファロース/アルギン酸塩マイクロカプセルを、0.9%の塩化ナトリウム、1mMの塩化カルシウム、0.05%のゼラチン及び10μgの組換えPDGF-BBから成る結合緩衝液中で、4℃で一晩、16時間インキュベートした。翌日、この結合緩衝液をマイクロカプセルから取り除き、ELISAで分析してカプセルが吸収したPDGF-BBの量を定量した。典型的な実験では、PDGF-BBタンパク質のほぼ75乃至90%がマイクロカプセルに吸収される(図8を参照されたい)。次に、ヘパリン-セファロース/アルギン酸塩マイクロカプセルを2回、新鮮な結合緩衝液中で洗浄し、放出動態の評価に向けてin vitroに配置するか、又は、外科的に誘発した心筋梗塞を起こしたラットの心筋に注射した。
【0050】
結合したPDGF-BBの放出動態をin vitroで評価するために、9μgの結合PDGF-BBを含有する3000個のヘパリン-セファロース/アルギン酸塩マイクロカプセル又は3000個のアルギン酸塩未被覆ヘパリンセファロースビーズを、無血清培地に置き、37℃でインキュベートした。24時間毎に培地を取り替え、培地中に存在するPDGF-BBの量を、ELISAで定量した。その結果から、分析した中で最も長い時間ではあるが最低でも14日間、総結合PDGF-BBのほぼ0.5乃至3%の遅延性、持続性放出があったことが分かった(図9を参照されたい)。重要なことに、1日当たりで放出されたPDGF-BBのこの比率は、実施例1で解説したマトリゲル実験でPDGF-BBレトロウィルスを導入した筋細胞により分泌されると我々が推定したPDGF-BB量と同等であった。
【0051】
当該ヘパリン-セファロース/アルギン酸塩マイクロカプセルがin vivoで血管新生を刺激する能力を、ストリンジェント・マトリゲル検定を用いて評価した。1μg又は10μgのPDGF-BBを装薬した3000個のマイクロカプセルを、400μlのマトリゲルと混合し、C57B1/10マウスの腹部領域に皮下注射した。13日後にマウスをと殺し、ペレット及び隣接する腹筋の一部を取り出し、固定し、切片にし、この切片を顕微鏡で視覚検査して微小血管の数を、定量した。図10に示すように、10μgのPDGF-BBを装薬したマイクロカプセルを投与したマウスの微小血管の数は、コントロールマウスのそれの2.5倍であった。
【0052】
加えて、図13に示すように、遅延放出性マイクロカプセルで送達されるPDGF-BB及びbFGFは、ストリンジェント・マトリゲルモデルにおいてin vivoで血管新生を刺激する上で相乗作用する。1μgのbFGFを装薬した3000個のマイクロカプセルを400μlのマトリゲルと混合し、C57B1/10マウスの腹部領域に皮下注射した。13日後にマウスをと殺し、ペレット及び隣接する腹筋の一部を取り出し、固定し、切片にし、この切片を顕微鏡で視覚検査して微小血管の数を、定量した。図13は、bFGF+PDGF-BBマイクロカプセルを投与したマウスの微小血管の数が、いずれかの成長因子を単独で移植したマウスのそれの4倍であったことを示す。
【0053】
さらに、PDGF-BBマイクロカプセルを、梗塞ラットの心臓において血管新生を刺激するそれらの能力について、注射後3週間目にテストした。梗塞ラットの心臓に、μg(コントロール)又は18μgのPDGF-BBを容量20μl含有する1600個のマイクロカプセルを注射した。注射後3週間目にラットをと殺し、心臓を取り出し、固定し、切片にし、顕微鏡で視覚検査して、この梗塞領域内の微小血管の数を定量した(即ち、コントロール及びPDGF-BBマイクロカプセルのレシピエントの強拡大の5視野当たりの微小血管の数)。図11に示すように、PDGF-BB微小血管を注射したラットは、コントロールラットに比較して、微小血管の数がほぼ2倍に増加していることを示した。
【0054】
また、ヘパリン-セファロース/アルギン酸塩マイクロカプセルが、in vivoで血管新生を刺激する能力を、以下のように虚血ラット心臓モデルを用いても評価した。成体オスラットを麻酔し、挿管し、ハーバード人工呼吸器で換気した。無菌条件下で左外側開胸術を行った。心臓を露出させ、左下行冠状動脈を8-0プロレン縫合糸で結紮した。梗塞後すぐに、9μgの組換えヒトPDGF-BBタンパク質を吸収した約800個のヘパリンセファロース/アルギン酸塩マイクロカプセルを含有する10μlの緩衝懸濁液を、各心臓に2回、心筋内注射した。このように、18μgのヒトPDGF-BBタンパク質を含有する合計1600個のマイクロカプセルを各ラット心臓に注射した。次に肺を膨張させ、開創を層状にして閉じた。
【0055】
3週間後、左心室圧(LVP)、dP/dT(心臓収縮の測定値)、負のdP/dT(心筋の弛緩の測定値)及びタウ(弛緩定数)を含む多種のパラメータを用いて心機能を評価した(図12を参照されたい)。PDGF-BBマイクロカプセルを注射したラットでは、左心室圧に25%の上昇が検出された(図12を参照されたい)。さらに、心臓収縮/弛緩は2.5乃至3倍に上昇していたが、弛緩定数タウは、ほぼ3分の1に低下していた(図12)。このように、すべてのパラメータで有意な向上が、PDGF-BBマイクロカプセルを注射したラットで検出された。
【0056】
実施例5 生体適合性糸材を用いた血管新生因子の指向性送達
既存の脈管構造から新しい血管を、動脈損傷を効果的に迂回しながら成長させる(血管新生)際にそれを調節するには、厳密な空間的及び時間的制御が必要である前述の実施例で解説したものなどの血管新生因子は、ある勾配で血管新生因子を提供することにより、内皮細胞やそれらの支援細胞の、当該因子の源に向かった遊走及び増殖を刺激することで、作用する。
【0057】
今日では、新しい血管の成長を刺激する努力の大半は、罹患域内又は罹患域近傍へのタンパク質の注射を含む。このような注射を行うと、血管新生因子が広い面積に渡って拡散し、それらの効果が大きく低下し、血管新生性刺激が広い領域に渡って希釈され、新しい血管が無秩序に混ざり合って生成しまい、治療上の利益につながらない可能性がある。
【0058】
この問題を解決するため、血管新生因子を含有する生体適合性吸収性糸材を用いると、適切かつ重要な区域に、小幅で、高度に局在化し、かつ秩序ある血管新生因子の勾配を提供することができる。これにより、動脈閉塞部位周囲からの、新しい血管の成長を指向させて、閉塞の下方又は下流にある地点で再度接合させる「分子道路地図」の作製が可能となる。これを達成するために、吸収可能な外科用糸材を、適した血管新生因子(例えばPDGF-BB、FGF-2、VEGF-A及びPDGF-B)で被覆することができる。次にこのような糸材を、新しい血管の生成を閉塞の周囲に指向させるような血管新生因子の明確な空間的方向及び勾配を提供するよう、動脈閉塞部位に外科的に配置することができる。
【0059】
該生体適合性糸材を、最適な血管新生性刺激を提供する成長因子又は成長因子の組合せを送達できるよう、一種又は複数の血管新生因子で被覆することができる。さらに、天然の血管新生プロセスをよりそっくりに模倣するのに役立つであろう特定の速度及び特定の時点で特定の成長因子を放出するように、このような糸材を加工することもできる。
【0060】
実施例6 血管新生発現プラスミドを用いた虚血の治療
図14は、組織の局所域に直接投与して血管新生を促進することができる血管新生因子をコードする多種の発現プラスミドを示す。
【0061】
生物活性PDGF-BBタンパク質をコードするプラスミドを示すために、PDGF-BB発現プラスミドを一過性にトランスフェクトした293T細胞の上清を、無血清条件下で成長中のNIH 3T3細胞に加えた。72時間後に細胞をトリプシン処理し、遠心して沈殿させ、血球計数器で計数した。その結果は、このPDGF-BB上清は特異的かつ強力にNIH3T3細胞の増殖を誘導したことを示していた。
【0062】
発現プラスミドのin vivo投与後の心機能を分析するために、心筋梗塞後のテスト動物(例えばラット)にコントロール対血管新生プラスミド(例えばPDGF-BB発現プラスミド)を注射できる。これを行うには、テスト動物を麻酔及び挿管することができる。胸壁を開放し、前下行動脈を結紮して心筋梗塞を作る。180μgのコントロール又はテスト発現プラスミドを、容量にして20μl、心壁に注射する。心機能を注射後3週間目に評価する。動物をと殺し、心臓を摘出し、プラスミド取り込みの効率をX-gal染色で評価する。梗塞の大きさ及び血管新生の程度を定量する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、GFPのみ(コントロール)、VEGF-A、VEGF-C、VEGF-D bFGF 又はPDGF-BBをコードした導入の起きた細胞を低用量用いたマトリゲル・モデルにおける血管新生のレベルを比較したグラフである。各C57Bl/10 マウスの腹部に低用量の3×105個のレトロウィルスにより導入した自己由来筋原細胞を、0.4mlのマトリゲルに懸濁させて皮下注射した。13日後にマウスをと殺し、マトリゲル・ペレットと、このペレットに隣接する腹筋の一部を取り出した。試料を切片にし、腹筋中の微小血管の数を、切片を顕微鏡で視覚検査して定量した。強拡大の10視野当たりで計数された微小血管の数を図示する。VEGF-A、PDGF-BB及びbFGFで最も強力な血管新生作用が観察された。PDGF-BB 及びVEGF-Aを導入された細胞の用量応答曲線の解析の結果、PDGF-BBはより低用量でもVEGF-Aよりも効力があることが示された。
【図2】図2は、bFGF、VEGF-A及びPDGF-BBを発現するよう導入された高用量の細胞を用いたマトリゲル・モデルで血管新生のレベルを比較したグラフである。各C57Bl/10マウスに、高細胞用量の2×105個のレトロウィルスにより導入した自己由来筋原細胞を、0.4mlのマトリゲルに懸濁させて注射した。13日後にマウスをと殺し、ペレットを回収し、切片にし、微小血管の数を視覚検査で計数した。強拡大の10視野当たりの微小血管の数を図示する。この細胞用量では、PDGF-BBは、bFGF 又はVEGF-Aと、血管新生を刺激する上で同程度に効力があった。
【図3】図3は、コントロールである生理食塩水(A)、PDGF-BB(B)、VEGF-A (C)又はbFGF(D)のみで被覆したペレットを移植してから6日後のマウス角膜の写真である。下側のパネル:各因子により惹起された血管新生効果の定量。血管の長さ(E)、時計時間(F)及び面積(G)を示す。
【図4】図4(A)は、VEGF-A単独(左側パネル)で、bFGF (中央のパネル)で又は両因子を組み合わせて(右側パネル)被覆したペレットを移植してから6日後のマウス角膜の写真である。(B)は、各成長因子により惹起された血管新生効果を、時計時間(左側パネル)、血管の長さ(中央のパネル)及び面積(右側パネル)の点で定量して示す。
【図5】図5(上側パネル)は、bFGF単独(左側パネル)又は、bFGFをPDGF-BBと組み合わせて(中央及び右側パネル)被覆したペレットを移植してから6日後のマウス角膜の写真である。下側パネルは、VEGF-A単独(左側パネル)又は、VEGF-AをPDGF-BBと組み合わせて(右側パネル)被覆したペレットを移植してから6日後のマウス角膜の写真である。
【図6】図6は、PDGF-BB、VEGF-A又はbFGFを単独又は組み合わせて用いたマウス角膜モデルにおける血管新生の定量を比較したグラフである。角膜の微小ポケットを、8週齢のC57B1/6マウスの眼に線状刀で作製した。このポケット内に、80ng乃至160ngの組換えヒトPDGF-BB、VEGF-A、bFGF又はこれらの組合せで被覆した硫酸アルミニウムペレットを移植し、マウスを毎日観察した。1グループ当たり合計5匹のマウスが移植を受けた。新たに成長した血管の面積を、移植後5日目に評価した。コントロール・ペレットを移植したマウスでは、血管新生の証拠は何ら見られなかった。単独でテストした場合、bFGFは最も高いレベルの血管新生を刺激し、それにVEGF-A及びPDGF-BBが続いた。VEGF-AをPDGF-BBと組み合わせた場合に刺激された血管新生のレベルは、bFGF単独のときに観察されたそれと同等であった。意外にも、最も強力な組合せは、PDGF-BB及び bFGFだった。テストした全ての組合せのうち、PDGF-BB 及びbFGF を一緒にした場合が、VEGF-A及びbFGFで観察されたそれよりも有意に高い、最も高いレベルの血管新生を刺激した。
【図7】図7は、ヘパリンセファロース/アルギン酸塩マイクロカプセルを作製するための実験的戦略の概略図である。ヘパリンセファロースビーズ(ファルマシア社製:大きさ50乃至150μm)を、アルギン酸ナトリウム溶液と混合して、最終濃度を200mg/mlにする。次にこのヘパリンセファロース/アルギン酸塩溶液を5mlのシリンジに充填して、ジェネティックス社で作製された同軸気流システム内にゆっくりと注射する。この同軸気流は、ヘパリンセファロース/アルギン酸溶液のミストを生み、このミストが1.5%塩化カルシウム槽に滴下する。アルギン酸塩がこのカルシウム溶液に接触すると、アルギン酸塩は架橋し、ほぼ球形の固形のゲルカプセルを形成する。マイクロカプセルの大きさは、50乃至400μmの範囲の大きな幅があることがある。大型のマイクロカプセル(大きさで200μmを越えるもの)をカプセル混合液から200μmのふるいを用いて取り出す。形成されたカプセルは、無菌水で2回、洗浄し、0.9%塩化ナトリウム及び1mM塩化カルシウムから成る緩衝液中に保存する。カプセルを結合緩衝液(0.9% NaCl、1mMCaCl2及び0.05%のゼラチン)中で4℃で一晩(最長16時間)、ゆるやかに振とうしながらインキュベートすることで、組換えヒトPDGF-BBを装薬する。翌日にカプセルを取り出し、結合緩衝液中で2回、洗浄し、PDGF-BBの放出動態を調べるためにin vitroで培養するか、又は、血管新生を評価するためにin vivoに注射する。カプセルを取り出した後、PDGF-BB取り込みの効率を結合緩衝液のELISAで定量する。
【図8】図8は、ヘパリンセファロース/アルギン酸塩カプセルは大量の組換えヒトPDGF-BBに結合することを示すグラフである。様々な量の成長因子と一緒にインキュベートした後の3000個のカプセルが吸収したPDGF-BBの量を示す。カプセルと一緒にインキュベートした後の結合緩衝液中に残留しているPDGF-BBの量をELISAで定量した。3000個のカプセルが、1カプセル当たり13ngのPDGF-BBに相当する、少なくとも35μgのPDGF-BBを吸収することができた。
【図9】図9は、ヘパリンセファロース/アルギン酸塩マイクロカプセルが、遅延性の、高レベルかつ長期間の結合PDGF-BBの放出をin vitroで行うことを示すグラフである。10μgの組換えヒトPDGF-BBを三種類の異なるテスト試料と一緒にインキュベートした。1番目のテスト試料は、非被覆のヘパリンセファロースビーズから成り、2番目及び3番目のグループは、1.2%もしくは1.6%のアルギン酸塩溶液を用いて作製された、アルギン酸塩で被覆されたヘパリンセファロースビーズから成った。3000個のビーズ/マイクロカプセルをPDGF-BBと一緒に4℃で一晩、ゆるやかに振とうさせながらインキュベートした。翌日、結合緩衝液をELISA解析したところ、PDGFの90%(9μg)がカプセルに吸収されていることが分かった。これらビーズ/マイクロカプセルを、PDGF-BBと一緒にインキュベートした後に洗浄し、5mlの無血清培地中に再懸濁させ、37℃でインキュベートした。24時間毎に培地を取り替え、培地中のPDGF-BBの量をELISAで定量した。総結合PDGF-BB(125乃至250ng)のうちのほぼ0.5乃至3%の遅延性持続性の放出があることが、最低でも、テストされた最も長い時間枠である14日間、毎日検出された。重要なことに、1日当たりで放出されるPDGF-BBの比率は、前出のマトリゲル実験でPDGF-BBレトロウィルスを導入した筋細胞が分泌するだろうと予測したPDGF-BB量と同等である。被覆していないヘパリンセファロースビーズの放出動態は、アルギン酸塩で被覆したヘパリンセファロースで観察されるそれよりも良好だった。
【図10】図10は、PDGF-BBマイクロカプセルが、ストリンジェント・マトリゲルモデルにおいてin vivoで血管新生を強力に刺激することを示すグラフである。1μg又は10μgのPDGF-BBを装薬した3000個のマイクロカプセルを、400μlのマトリゲルと混合し、C57B1/10マウスの腹部領域に皮下注射した。13日後にマウスをと殺し、ペレットと、隣接する腹筋の一部を取り出し、固定し、切片にして、微小血管の数を、切片を顕微鏡で視覚検査することで定量した。その結果、10μgのPDGF-BBを装薬したマイクロカプセルを投与したマウスの微小血管数は、コントロールマウスのそれの2.5倍であることが分かった。
【図11】図11は、PDGF-BBマイクロカプセルが梗塞ラット心臓において血管新生を刺激することを注射後3週間目で示すグラフである。梗塞ラット心臓に、μg(コントロール)又は18μgのPDGF-BBを容量にして20μl含有するマイクロカプセルを1600個、にして注射した。注射から3週間後にラットをと殺し、心臓を取り出し、固定し、切片にし、梗塞領域内の微小血管の数を、顕微鏡で視覚検査して定量した。コントロール及びPDGF-BBマイクロカプセルのレシピエントの強拡大の5視野当たりの微小血管の数を図示する。PDGF-BB微小血管を注射したラットは、コントロールラットに比較して微小血管数のほぼ2倍に増加した。
【図12】図12は、心筋拘束後にコントロール対PDGF-BBマイクロカプセルを注射したラットにおける心機能の分析を示す。左心室圧(LVP)、dP/dT、neg dP/dT 及びタウを、注射後3週間目にと殺する前に測定した。左心室圧(LVP)は、収縮中の左心室における最大圧である。dP/dT 変数は、圧力波の一次微分であり、アップストローク(dP/dT)及びダウンストローク(負のdP/dT)と別々に考えられる。アップストローク(dP/dT)は収縮の測定値であり、圧力から独立の、筋肉の状態を反映する。負のdP/dTは筋肉の弛緩を反映し、弛緩定数であるタウと共に、梗塞後の心室壁の硬直に関する情報となる。PDGF-BBマイクロカプセルを注射したラットでは、すべてのパラメータについて有意な向上が検出された。PDGF-BBマイクロカプセルを注射したラットでは、左心室圧が25%上昇し、心臓修飾/弛緩では2乃至3倍上昇し、そして弛緩定数タウについては2.5乃至3分の1に低下したことが示された。
【図13】図13は、ストリンジェント・マトリゲルモデルにおいて、遅延放出性マイクロカプセルから送達されたPDGE-BB及びbFGFが、血管新生をin vivoで刺激するのに強力に相乗作用することを示すグラフである。1μgのbFGFを装薬した3000個のマイクロカプセルを、400μlのマトリゲルと混合し、C57B1/10マウスの腹部領域に皮下注射した。13日後にマウスをと殺し、ペレットと、隣接する腹筋の一部を取り出し、固定し、切片にし、顕微鏡で切片を視覚検査して微小血管の数を定量した。その結果から、bFGF+PDGF-BBマイクロカプセルを投与したマウスの微小血管数は、いずれかの成長因子を単独で移植されたマウスのそれの4倍多かったことが分かった。
【図14】図14は、多様な血管新生発現プラスミドの構造の概略図である。ベクタは全て、プロメガ社製のpCIベクタバックボーンを用いて作製した。すべてのベクタは、サイトメガロウィルス前初期エンハンサ/プロモータ領域、キメライントロン、及びSV40由来の後期ポリアデニレーションシグナルを含有していた。ヒトPDGF-BB、VEGF-A又はbFGFのいずれかをコードするcDNAをこのベクタのキメライントロンの下流に挿入した。成熟型PDGF-BBタンパク質をコードするcDNAを、マウスIgGカッパ免疫グロブリン軽鎖遺伝子から取った分泌シグナルにcis連結し、他方VEGF-A cDNAはその内因性分泌シグナルを用いた。内因性bFGFは通常のゴルジ経路では分泌されず、また前の研究グループでも、bFGF cDNAを導入した細胞からの高レベルのbFGF分泌を得るのに困難があったために、このbFGF cDNAを、ヒトインターロイキン-2 cDNAから取った分泌シグナルにcis連結した。ELISAで評価したときの、一過性にトランスフェクトした293T細胞から分泌された血管新生タンパク質のレベルを右側に示す。心筋梗塞後にコントロール対PDGF-BB発現プラスミドを注射したラットにおける心機能を分析するためには、テスト動物を麻酔し、挿管する。胸壁を開放し、前下行動脈を結紮して心筋梗塞を作る。180μgのコントロール又はテスト発現プラスミドを、容量にして20μl、心臓壁に注射する。注射後3週間目に心機能を評価する。動物をと殺し、心臓を取り出し、プラスミド取り込みの効率をX-galで染色して評価する。梗塞の大きさと、血管新生の程度を定量する。
Claims (36)
- PDGF-BBを組織の局所域に、前記組織域内で血管新生を誘導するのに有効量、送達するステップを含む、血管新生を促進する方法。
- 前記PDGF-BBが、一種以上の他の血管新生促進因子と組み合わせて送達される、請求項1に記載の方法。
- 前記一種以上の他の血管新生促進因子が、PDGF-AA、M-CSF、GM-CSF、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E、ニューロピリン、FGF-1 、FGF-2(bFGF)、FGF-3、FGF-4、FGF-5、FGF-6、アンジオポエチン 1、アンジオポエチン 2、エリスロポエチン、BMP-2、BMP-4、BMP-7、TGF-ベータ、IGF-1、オステオポンチン、プレイオトロピン(原語:Pleiotropin)、アクチビン、エンドセリン-1、及びこれらの組合せ、からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
- 前記血管新生促進因子が、タンパク質組成物の形で局所投与される、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記血管新生促進因子が高分子と結び付けられて送達される、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記高分子がマトリックスを含んで成る、請求項5に記載の方法。
- 前記マトリックスがヘパリンセファロース/アルギン酸塩、キトサン/リン酸三カルシウムスポンジ、ポリ-ラクチド-グリコリドスポンジ、ポリラクチドグリコール酸のメッシュ、メチルセルロース、ポリスルホン、押し出し成形可能なエチレン酢酸ビニル、アルギン酸塩/ポリ-L-リシン/アルギン酸塩及びアガロース/ポリ-L-リシン-/アルギン酸塩、からなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
- 前記血管新生促進因子が、前記因子をコードする単離されたDNAが組織の局所域へ送達された後に、前記DNAからの発現により送達される、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記単離されたDNAがベクタ内に含まれている、請求項8に記載の方法。
- 前記DNAが、アデノウィルスベクタ、レトロウィルスベクタ、アデノ随伴ウィルスベクタ、RNAベクタ、リポソーム、陽イオン性リピド、レンチウィルスベクタ、AAV又はトランスポゾンで送達される、請求項8に記載の方法。
- 血管新生の誘導が、虚血を治療するために用いられる、請求項1乃至10のいずれかに記載の方法。
- ある組織の局所域内で血管新生を誘導するのに有効な量のヘパリンセファロース含有マイクロカプセルに、前記組織域を接触させるステップを含む、血管新生を促進する方法。
- 前記マイクロカプセルが、ヘパリンセファロースビーズ、アルギン酸塩高分子の単層で被覆されたヘパリンセファロースビーズ、ポリエチレングリコール(PEG)高分子で被覆されたヘパリンセファロース、及び、アルギン酸塩層及びPEG層で交互に被覆されたヘパリンセファロースビーズ、からなる群より選択される形のヘパリンセファロースを含んで成る、請求項12に記載の方法。
- 前記マイクロカプセルの大きさが1乃至250ミクロンの範囲内である、請求項12に記載の方法。
- 前記ヘパリンセファロースビーズが、M-CSF、GM-CSF、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E、ニューロピリン、 FGF-1 、FGF-2(bFGF)、FGF-3、FGF-4、FGF-5、FGF-6、PDGF-BB、PDGF-AA、アンジオポエチン 1、アンジオポエチン 2、エリスロポエチン、BMP-2、BMP-4、BMP-7、TGF-ベータ、IGF-1、オステオポンチン、プレイオトロピン(原語:Pleiotropin)、アクチビン、エンドセリン-1 、及び、これらの組合せからなる群より選択される血管新生因子、あるいは、前記血管新生因子をコードする発現ベクタを被覆している、請求項13に記載の方法。
- 前記血管新生因子が、その天然源から精製されるか、又は、組換え発現により作製される、請求項15に記載の方法、
- 前記マイクロカプセルを、注射又は外科的移植によって組織の局所域に接触させる、請求項12乃至16のいずれかに記載の方法。
- 前記注射が、カテーテルベースの経心筋注入術(即ちNOGA)を用いて行われる、請求項17に記載の方法。
- 前記血管新生因子が、前記マイクロカプセルから組織の局所域に制御放出される、請求項15に記載の方法。
- 前記血管新生の誘導が、虚血を治療するために用いられる、請求項12乃至19のいずれかに記載の方法。
- ある勾配にした一種以上の血管新生因子、又は、一種以上の血管新生因子をコードする核酸に、組織の局所域を接触させることで、前記勾配に沿って指向性の血管成長が起きるようにする、血管新生を促進する方法。
- 前記指向性の血管成長の結果、血管同士の連結が起きる、請求項21に記載の方法。
- 前記指向性の血管成長の結果、血管内の連結が起きる、請求項21に記載の方法。
- 前記指向性の血管成長が、血流に血管内の閉塞を迂回させる、請求項21に記載の方法。
- 前記血管新生因子又は核酸が、組織の局所域に接触した生体適合性材料からある勾配で放出される、請求項21に記載の方法。
- 前記生体適合性材料が、前記血管新生因子を導入した高分子又は糸材である、請求項25に記載の方法。
- 前記生体適合性材料が吸収可能な糸材を含んで成る、請求項26に記載の方法。
- 前記糸材が、ポリグリコネート(原語:polyglyconate)・モノフィラメント、ポリグルカプロン(原語:poliglecaprone)25-(モノクリル)、ポリジアキソノン(原語:polydiaxonone)(PDS II)、ポリグラクチン910、ポリグリコール酸、ビオディン(原語:Biodyn)グリコマー631、クローミック手術用腸又は平織手術用腸からなる群より選択される材料を含んで成る、請求項27に記載の方法。
- 前記生体適合性材料が、組織の局所域に移植される、請求項25に記載の方法。
- 前記核酸が、アデノウィルスベクタ、レトロウィルスベクタ、アデノ随伴ウィルスベクタ、RNAベクタ、リポソーム、陽イオン性リピド、レンチウィルスベクタ、AAV又はトランスポゾン内に含有されている、請求項21に記載の方法。
- 前記一種以上の血管新生因子が、M-CSF、GM-CSF、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E、ニューロピリン、 FGF-1、FGF-2(bFGF)、FGF-3、FGF-4、FGF-5、FGF-6、PDGF-BB、PDGF-AA、アンジオポエチン 1、アンジオポエチン 2、エリスロポエチン、BMP-2、BMP-4、BMP-7、TGF-ベータ、IGF-1、オステオポンチン、プレイオトロピン(原語:Pleiotropin)、アクチビン、エンドセリン-1 及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項21に記載の方法。
- 前記血管新生の誘導が、虚血を治療するために用いられる、請求項21乃至31のいずれかに記載の方法。
- 一種以上の血管新生因子、又は一種以上の血管新生因子をコードする核酸を、生体適合性材料に付着させて、処理済み材料を形成するステップと、
前記血管新生因子又は核酸が、周囲組織に、指向性のある勾配で放出されるよう、前記処理済み材料を組織の局所域に接触させるステップと
を含む、血管新生を促進する方法。 - 前記生体適合性材料が吸収可能な糸材である、請求項33に記載の方法。
- 前記糸材が、組織の局所域に外科的に移植される、請求項34に記載の方法。
- 前記一種以上の血管新生因子に、PDGF-BBが含まれる、請求項33に記載の方法。
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