以下、本発明による取材支援システム及び携帯端末の実施形態を図を用いて説明する。なお、以下の記載で「取材」という用語は「情報収集」の意味で用いる。
図1は、本発明による取材支援システムを利用する電子新聞システムのシステムブロック図である。電子新聞システムの中枢には電子新聞サーバ1000がある。電子新聞サーバ1000は、コンピュータ1010と記憶装置1020、図示しないネットワークインタフェースにより構成されており、記憶装置1020には、取材した情報や、ニュースとして配布する情報が記憶されている。そして記憶装置の制御及びネットワーク1040との接続の管理を行うのがコンピュータ1010である。ネットワーク1040にはPHS(Personal Handy phone System)基地局1050、セルラー基地局1060等が接続されており、ここにはニュースを閲覧する機器を接続することが出来る。
1051は無線通信機能を有する携帯端末であり、携帯端末1051に接続した図示しないPHS電話により、PHS基地局1050を経由してネットワーク1040に接続する。そしてネットワーク1040を介して電子新聞サーバ1000から、最新のニュース情報を取得し、携帯端末1051の液晶ディスプレイに表示する。1061は携帯電話であり、携帯電話1061は携帯端末1051のようなディスプレイを持たないが、音声出力装置を有しているので、これを用いて音声としてニュース情報を出力することが出来る。さらに、ネットワーク1040は電話回線1080を経由して各家庭1090に接続される。各家庭では、家庭内に設置したTVを出力装置として用いた端末装置1091により、電子新聞サーバ1000から最新のニュース情報を取得し、表示する。
本発明による取材支援システムは、PHS基地局1070を介してネットワーク1040に接続された取材端末1071によりサポートされる。取材端末1071は内蔵した電子カメラやディジタルビデオで取材対象1072、この場合は火災を起こした家を撮影する。そして内蔵したマイクにより取材者がペンやキーボード等を用いることなく、記事を作成し、さらに内蔵した取材端末の位置検出手段により取得した位置情報をまとめて、電子新聞サーバ1000に送信する。
電子新聞サーバ1000は送信された取材データを受信し、記憶装置1020に記憶する。この取材データは、編集会議室1030内で、取材データの検討が行われ、その検討結果によっては、さらなる取材への細かい指示や、近隣にいる他の取材者に対して、配備や応援取材の手配等を行う。このようにして得られた取材データは編集会議室1030で新聞記事として編集され、電子新聞サーバ1000によって、リアルタイムで配布され、ニュースの即時報道を可能とする。
なお、携帯端末1051や無線電話1061、自宅の端末装置1091は通常は端末側から電子新聞サーバ1000に対してニュースの送信を要求するが、この要求は従来の新聞やTVニュースのように、すべてのニュースを一括要求するだけでなく、必要な事項(例えば株価など)を選択して要求したり、リアルタイムだけでなく過去のニュースも受けることが出来る。また、リアルタイムのニュースの内容によっては、電子新聞サーバ1000は号外として、端末側からのリクエストとは関係なく、端末に対して緊急のニュースを送付し、端末側は緊急に送られるニュースに対して自動的にニュース受信を行うような構成をとることにより、緊急のニュース(例えば避難勧告等)を確実にすべての端末所持者が受けることが出来る。
図2は、本発明による取材支援システムの情報取得手段となる取材端末の内部構成の例を示したブロック図である。取材端末は、基本的にCPU2000とバス2001を核として、周辺機器が接続されている構成をとる。CPUの動作を制御するプログラムはROM2080に書込まれており、CPUはこれを逐次読み出して実行する。また必要に応じてROM2080や記憶装置2020からRAM2030にロードして実行する。
取材端末を使用する取材者が取材端末を操作する方法は、図3で後述するタッチパネル2050と液晶等で構成されたディスプレイ2040を一体化したタッチパネルディスプレイを用いて行う。即ちディスプレイ2040に操作に必要なボタンが表示され、それを指やペンで触れ、その接触をタッチパネル2050が検出することで取材者の意思を取材端末に伝える。操作方法はこの他、図示しない通常のスイッチがあり、電子カメラのシャッターやディジタルビデオのスタート/ストップ、電源のオン/オフ等の操作を行うことが出来る。
本取材端末の画像撮影部の説明を行う。画像を検出する撮像素子2010は、取材対象からの映像をレンズ2011を通して受け、これを画像信号に変換する。画像信号は図示しないA/D変換器によりディジタル信号に変換され、例えば横640画素×縦480画素、各画素8ビットの画像データとしてフレームメモリ2012に記憶される。取材者はこのフレームメモリの画像を小型の液晶ディスプレイやブラウン管等で構成されたファインダー2013によりモニターし、電子カメラの場合はシャッターを押し、ディジタルビデオの場合は、録画スタート/ストップのボタンを押す。また、フレームメモリの画像は必要に応じてV−RAM2041(ビデオRAM)の指定された領域にもロードされ、ファインダー2013に比べて大型のディスプレイ2040上でも観察することが出来る。
フレームメモリ2012に書込まれた画像は、静止画像の場合は、静止画像圧縮方式であるJPEG方式を用いて処理を行うJPEG処理回路2015(以下、JPEGと呼ぶ)により、画像圧縮処理を受けて、記憶装置2020に記憶される。また、ディジタルビデオの動画像の場合は、動画像圧縮方式であるMPEG方式を用いて処理を行うMPEG処理回路2014(以下、MPEGと呼ぶ)により、画像圧縮処理を受けて、同じく記憶装置2020に記憶される。記憶装置2020に記憶された画像データは、必要に応じて、JPEG2014又はMPEG2015により復元されフレームメモリ2012にロード、そしてV−RAM2041に転送され、ディスプレイで確認することが出来る。
この構成例ではフレームメモリ2012とV−RAM2041を全く別なメモリとして扱い、画像データの転送を行ったが、これは同一のメモリでもよく、この場合撮像素子から入力された画像データをディスプレイに表示するかどうかは、V−RAMへのアクセスアドレスを変えることで切換えることが出来る。
また、取材端末の現在位置は、GPS2060により算出された座標データを、画像の撮影と同時に取得し、画像データの記憶装置2020への記憶時に同時に記憶する。また、図示しないマイクにより取得した取材者自身の声による記事も音声データとして画像データと共に記憶する。記憶された取材データは、記憶装置2020内のデータが更新された時点、且つ後述するPHS2072により、転送先との接続が確保された時点で、シリアルI/F2070によりシリアル信号に変換され、変調・復調回路2071を通して一定の変調をかけた後に、PHS2072を用いて送信する。
また逆に図1に於ける編集会議室からの指示は、PHS2072を用いて受信し、変調・復調回路2071により復調してシリアルI/Fを経由してCPU2000が取り込み、ディスプレイ2040に表示する。以上の取材端末の操作は、ディスプレイ2040上に貼り合わせたタッチパネル2050を指やペンでタッチすることで行い、指やペンの接触信号はタッチパネルI/F2051を通してCPU2000が認識し、取材者の意図を理解し、実行する。
図3は本発明による取材端末の例を示した三面図である。取材端末3000は本実施例では一般に市販されているビデオカメラと同様の形態となっている。3020は撮影レンズで、被写体の光を受けて内蔵した撮像素子3021に焦点を結ぶ。3030は第1のマイクであり、被写体の方向に向けられており現場の音を記録する。3040はファインダーであり、撮像素子が出力する被写体の映像を内蔵された小型の液晶やブラウン管等の表示装置3041に映し出す。取材者はこれを用いて、撮影中の被写体の映像を視認する。
3010はタッチパネル一体の液晶ディスプレイであり、取材端末の操作はここでメニュー等を表示して、それを指もしくはペン3060でタッチすることにより選択して操作を行う。また、撮影した映像を確認のために再生するとき、映像を表示することも出来る。さらに内蔵された図示しないGPS等の位置検出手段により検出された取材端末の現在位置を、地図上にマークの形で表示することも出来る。ペンは使用しないときは3060のように本体の中に格納することが出来る。3050は第2のマイクであり、これは取材者自身の声を記録するため、取材者が取材端末3000を構えたときに、取材者の口に向く位置に設置している。これを用いて取材者は撮影しながら、口頭で記事を作成し、音声メールに乗せてサーバに送信する。3080は撮影スイッチであり、静止画像を撮影するときはシャッターボタン、動画像を撮影するときは録画スタート/ストップボタンとして機能する。また3070はストラップを取り付ける金具である。
図4は、本発明による取材支援システムを用いて、実際に火災現場を取材する時の具体的な動作を示す説明図である。本図は、火災が発生して、火災現場4080に於いて取材端末4070が活動している状態である。取材端末が取得した取材データは無線電話の一種であるPHS基地局4050を通して無線で電子新聞サーバに転送される。転送された取材データは4010の現場付近の地図上に表示される取材端末4070自身の位置、火災現場4080の映像4020、そして映像4020に付随して、取材者自身が声により現場の説明を行った音声メール4040である。図1で説明した編集会議室では、これらの映像と音声、場所情報を見て、必要な記事を作成し新聞に載せる。
また、4030は現地付近の地図であるが、そこには現地近辺の、やはり取材端末を持った取材者の現在位置を示している。編集会議室では、火災現場の状態により取材の応援や、別な方向からの取材が必要と判断した場合、その取材に最も有利な位置にいる取材者に、応援取材の指示を送る。これはPHS基地局4060を通じ、取材端末4071、4072に送られる。また、取材端末を持たないがPHSハンドセット4073を持っている記者に電話連絡により応援の指示を送り、この記者は自身が有する通常のカメラでの情報収集や記事の作成を行い
、オフラインで新聞社に送る。そして取材端末4074は地理的に不利な位置にいるため、今回の取材には参加しないため、応援の指示は来ない。また、取材端末4071、4072には応援取材の依頼と同時に、現地付近の地図や図示したような火災現場の映像を送って参考とする。
なお、4030における現地付近の地図に表示された各取材端末の位置は、取材端末4070の情報と同様に、電子新聞サーバ4000からのPHS基地局4060経由で送られたリクエストで、各取材端末が自身の位置を示すデータを電子新聞サーバ4000に転送した結果表示されたものである。また、取材応援の判断を編集会議室や取材者自身が行うだけでなく、近辺にいる他の取材者自身が行うこともある。このために取材端末4070が撮影した画像等の情報を電子新聞サーバ4000に転送すると同時に、他の取材端末に情報転送することで、他の取材者は現場の様子を編集会議室と同様に知ることが出来、各自の判断で取材支援を行うことが出来る。この際の取材した情報の転送ルートは、電子新聞サーバ4000を一度経由してから同報通信する方法と、取材端末4070が直接他の取材端末に転送する方法がある。
図5は、本発明による取材支援システムの情報取得手段となる取材端末の内部構成の第2の例を示したブロック図である。CPU5000と、バス5001を核として、周辺機器が接続されている構成をとり、CPUの動作を制御するプログラムはROM5070に書込まれており、CPUはこれを逐次読み出して実行する。また必要に応じてROM5080や記憶装置5020からRAM5090にロードして実行する。またタッチパネル5040と液晶等で構成されたディスプレイ503を一体化したタッチパネルディスプレイを用いて取材端末の操作を行う点を含めて、上記の構成は図2で説明したブロック図と同一である。
本実施例に於ける取材端末の画像撮影部の説明を行う。画像を検出する撮像素子5010は、取材対象からの映像をレンズ5011を通して受け、これを画像信号に変換する。画像信号は図示しないA/D変換器によりディジタル信号に変換され、例えば横640画素×縦480画素、各画素8ビットの画像データとしてフレームメモリ5012に記憶される。取材者はこのフレームメモリの画像を小型の液晶ディスプレイやブラウン管等で構成されたファインダー5013によりモニターし、電子カメラの場合はシャッターを押し、ディジタルビデオの場合は、録画スタート/ストップのボタンを押す。また、フレームメモリの画像は必要に応じてバス5001を経由してV−RAM(ビデオRAM)5041の指定された領域にもロードされ、ファインダー5013に比べて大型のディスプレイ5030上でも観察することが出来る。
フレームメモリ5012に書込まれた画像は、静止画像の場合は、静止画像圧縮方式であるJPEG方式を用いて処理を行うJPEG処理回路5060(以下、JPEGと呼ぶ)にバス5001経由で転送され、画像圧縮処理を受けた後、再びバス5001を通って記憶装置5020に記憶される。また、ディジタルビデオの動画像の場合は、動画像圧縮方式であるMPEG方式を用いて処理を行うMPEG処理回路2014(以下、MPEGと呼ぶ)にバス5001経由で転送され、画像圧縮処理を受けた後、再びバス5001を通って記憶装置5020に記憶される。
また記憶装置5020に記憶された画像データは、必要に応じて、再びバス5001経由で転送され、JPEG5060又はMPEG5050により復元されフレームメモリ5012にロード、そしてV−RAM5031に転送され、ディスプレイで確認することが出来る。この構成例ではフレームメモリ5012とV−RAM5031を全く別なメモリとして扱い、画像データの転送を行ったが、これは同一のメモリでもよく、この場合撮像素子から入力された画像データをディスプレイに表示するかどうかは、V−RAMへのアクセスアドレスを変えることで切換えることが出来る。GPS5100による位置検出と、PHS5092によるデータの転送、タッチパネルによる取材端末の操作の説明は、図2と同一のためここでは省略する。
図6は、本発明による取材端末の位置検出を行う第1の実施例の説明図である。本実施例に於いて取材端末6000にはGPS(Gloval Positioning System)6010が組み込まれており、地球の軌道上を周回している20数個のGPS用人工衛星のうち、少なくとも3つの人工衛星からの電波を受けて測量を行い、取材端末の現在位置を算出する。算出された現在位置は、取材端末6000に設けたディスプレイ6020に、内蔵された地図データと共に、マーク6030で表示することが出来る。これにより取材者は自身の現在位置を知ることが出来る。本発明による取材端末は、算出した現在位置座標をPHS6040を用いてサーバ6050に伝達する機能を有する。
図7は、本発明による取材端末の位置検出を行う第2の実施例の説明図である。本実施例に於いて、取材端末7000には、特別な位置検出手段は設けていない。ここでPHS(Personal Handy phone System)について説明すると、PHSは、比較的小さなエリア(直径数100m程度)を一つの領域として、該当地域をカバーするように基地局を設け、これを用いて携帯電話の無線通信を行うものである。メリットは一つの電話の電波の転送範囲を数100m程度に絞ることになるため、携帯電話のパワーを抑えることが出来、さらに電波の帯域を有効に利用することが可能になる。欠点は数100mおきに基地局を設ける必要があるが、その基地局もセルラー無線の基地局に比べてはるかに低コストで設置することが出来るため、将来の都市型携帯電話システムとして有望視されている。本発明では、このPHSを用いて取材端末の現在位置を把握する手段を示す。
図7(a)に於いて、この地域には数100mの間隔で、PHSの基地局が並んでいる。具体的には基地局A(7010)、基地局B(7020)、基地局C(7030)、基地局D(7040)が数100mの間隔で並んでいる。そしてそれぞれの守備範囲は直径数100mの円径であり、それぞれエリアA(7011)、エリアB(7021)、エリアC(7031)、エリアD(7041)となる。ここで取材端末7000は、エリアD(7041)の範囲内におり、基地局D(7040)と無線接続することで通信を行っている。このとき、基地局D(7040)とつながっていることから、取材端末7000はエリアD(7041)内にいると判断することが出来る。
図7(b)に、この情報に基づいて、取材端末の現在位置を地図上に表示した例を示す。7050は地図を表示した画面であり、7051に図7(a)で示したエリアD(7041)を示す領域7051が表示されている。この領域が取材端末が存在し得る場所であり、数100mという比較的大きな誤差を持ち、且つ地上高さ等の3次元座標情報を入手することは出来ないが、屋根の下等の人工衛星の信号を受信できない場所でも座標を検出することが出来、何よりGPSのようなシステムを登載することなく、標準装備のPHSだけでおよその座標を判別することが可能になる。
図8は、加速度センサを用いて取材端末の相対位置座標を検出するためのデバイスの基本構成を示した説明図である。図8(a)に、デバイスの構造図を示す。X、Y、Zの3次元方向に、3つの加速度センサX(8010)、Y(8020)、Z(8030)がそれぞれ直交して設置されている。加速度センサは、センサに加わった加速度をひずみゲージ等で加速度を表わす電気信号に変換するデバイスである。これを用いて、図8(b)に示すような3次元の加速度ベクトルを得ることが出来る。加速度は一度積分すれば速度になり、さらにもう一度積分すれば変位になる。これを利用して、取材端末のある特定の位置から出発した相対座標を算出することが出来る。
図9は、図8に示した加速度センサを用いて、取材端末の絶対座標を算出する回路のブロック図の例である。9010は加速度センサX、9040は加速度センサY、9070は加速度センサZであり、図8で説明した加速度センサである。ここでは加速度センサX(9010)からの出力信号を処理して、X方向の絶対座標を算出する方法を示す。ここでY方向、Z方向の算出はX方向の算出と全く同一である。加速度センサX(9010)から出力された加速度データ9011は、積分回路9020を通って、速度データ9012に変換される。速度データ9012は、さらに積分回路9030を通って、変位データ9031に変換され、データ9111と加算されて、メモリX(9110)に記憶される。
メモリX(9110)には、初期値として絶対座標取得手段9000から、取材端末が確実に把握し得る絶対座標値を得て、ロードされている。ここを出発点として、出発点からの相対位置を加速度センサが検出した加速度を積分処理して、変位として加算することで、絶対座標+相対座標の形で取材端末の絶対座標を算出する。具体的には新たな変位変化が発生したときに、メモリX(9110)に記憶されていた、その時点での絶対座標9111と、算出された変位9031を加算器9100で加算することで、新たな絶対座標9101を算出し、再びメモリX(9110)に記憶する。これによりメモリX(9110)には、常に更新された取材端末の絶対座標が入っており、これを読み出すことで、絶対座標の算出を行うことが出来る。
この方式は相対座標の蓄積により絶対座標を算出するものであり、長時間使用していると誤差が蓄積され、出力する絶対座標値が徐々に正確さを欠いたものになってくる。従って必要に応じて絶対座標取得手段9000により得られた絶対座標で、メモリX(9110)の値をリセットする必要がある。絶対座標取得手段9000は、図8で示したGPSを用いた人工衛星による座標取得や、図9で示したPHSによる座標取得、特に取材端末が移動してエリアを切換えたときに、そのエリアの境界位置を正確な絶対座標として得ることが出来るので、このような機会を見つけてはメモリX(9110)の内容をリセットする。また、図13で後述するが、地図の上で確実に取材端末がいる位置が分かっているときは、そこをペンなどのポインティングデバイスで指定し、そこを絶対座標として使用することも出来る。
図10は、本発明による取材支援システムに於いて、取材端末が電子新聞サーバに送信する静止画像データのフォーマットの例を示した説明図である。本実施例に於いて画像データフォーマット10000は、大きく3つの部分に大別される。即ちこのデータが画像であることを示すヘッダ10010、この画像を撮影したときの日時、場所、気温、音声メモなどの付加情報10020、そして画像情報10030である。ここで、このデータの転送は転送順序10040に添って行われる。即ちまずヘッダ10010を送信し、次に付加情報10020を、最後に画像情報10030を送信する。
ここで本実施例に於いて、画像情報10030を大きく二つに大別する。即ち粗画像データ10031と、精細画像データ10032である。例えばJPEG等の一般的な静止画像圧縮手段は、DCT(離散コサイン変換)というアルゴリズムを用いている。これは、例えば640×480画素で構成された一枚の画像を、例えば8×8画素の小さなブロックに分解し、それぞれを縦横2次元方向の周波数成分に変換する。これは画像の周波数特性、具体的にはピントが甘いとかシャープな画像であるとかいう要素を数値に表現したものであり、例えばピントの甘い画像では、その情報成分は低周波に集中するため、高周波部分のデータを圧縮することが出来る。
また、低周波部分のデータと高周波部分のデータを分離することが出来るため、本実施例では元の画像データを低周波成分と高周波成分に分け、それぞれを粗画像データ10031、精細画像データ10032として、まず粗画像データ10031を転送、ついで精細画像の全データのうちの、先に転送した粗画像データ11031を差し引いた残りの部分の精細画像データ10032を転送する手順とした。この方法によれば、特に緊急の報道を要求される場合に、時間をかけて全部のデータを転送する前に、短時間でおよその現場のイメージが分かるような粗画像を転送することが出来、その後改めて全部の画像データを送るという順序にすれば、全部の画像データを転送終了する前に現場のイメージを見ることが出来る。
また、転送途中で例えば無線電話の回線が妨害やノイズ等で切断されても、転送手順の早いうちに粗画像を送ってしまうので、再送処理を行う前に取りあえず現場のイメージを見ることが可能になる。ここで、通常の画像圧縮では、周波数成分に変換した画像データを、ハフマン符号化して転送する。これは頻度の多いデータのパターン(例えば低周波)に短いビット長の符合を、頻度の少ないデータのパターン(例えば高周波)に長いビット長の符合を与えるもので、この符合をハフマン符合と呼ぶ。
この符合テーブルは当然、完全に最適化した場合には、各画像データによって異なる符合を持つことになるが、通常は例えばビデオ入力画像の場合の統計的に略最適化された符合テーブルを使用している。本発明による転送方式では、従って粗画像データ10031を転送するためのハフマン符合テーブルと、精細画像データ10032を転送するためのハフマン符合テーブルの内容は異なる。
図11は、本発明による取材支援システムに於いて、取材端末が電子新聞サーバに送信する動画像データのフォーマットの例を示した説明図である。図11(a)は、取材端末のセンサが撮影した撮影データ11000であり、時間t1の長さの動画像情報がリアルタイムで出力される。図11(b)は、この撮影データ11000を図10と同様の方法で粗画像データ11010と精細画像データ11020に分けて、まず時間t1という実時間と同じ時間で粗画像データ11010を転送する。
それに引き続いて、精細画像データ11020を時間t2(>t1)をかけて転送する。図11(c)は、図11(b)で転送された画像データを再生する手順である。粗画像データの再生11030は、図11(b)において時間t1で粗画像データ11010を転送されると、それと同時に再生が行われ、再生は撮影時間と同じ時間t1で終了する。次に時間t2をかけて精細画像データ11020が転送されると、その後精細画像の再生11040が開始され、実時間と同じt1で再生が終了する。
ここで、一般に利用されているMPEGのような動画像圧縮方式のアルゴリズムを説明する。動画像は静止画像の集合体であり、具体的には例えば毎秒30枚の静止画像を切換えることで動画像の表示を行っている。従って動画像を構成する各静止画像をJPEG等の静止画像圧縮アルゴリズムを用いて圧縮を行うことが基本になる。この場合図11(b)に於ける粗画像データ11010と精細画像データ11020は、図10に於ける粗画像データ10031及び精細画像データ10032と全く同一となる。即ち図11(b)に於ける粗画像データ11010は、図10に於ける粗画像データ11031を時間t1分だけ並べたものであり、図11(b)に於ける精細画像データは、図10に於ける精細画像データ11032を時間t1分だけ並べたものになる。
しかし、動画像の場合には、動画像を構成する各静止画像の中だけでそのデータの冗長を判断して圧縮するだけではなく、時間軸方向に並んだ各静止画像同士の相関を判定することでさらなる圧縮が可能になる。具体的には全く動かない映像が10枚並んだときは、静止画像10枚を送る代わりに、一枚の静止画像と画面数だけ送れば済むことになる。実際の時間軸方向圧縮は、連続した静止画像間の変化部分、即ち動き部分の検出を行い、動き成分だけを転送することで次の静止画像のすべてを送る必要をなくしている。
本実施例に於いても、この方法を取ることが出来、図11(b)に於ける粗画像データ11010は、粗画像に於ける各静止画像とその画面間の動き成分を送る。そして精細画像データ11020は、精細画像に於ける各静止画像とその画面間の動き成分を送ればよい。但し、精細画像データ11020における静止画像成分は、図10と同様に、画像情報全体のうちの粗画像データを差し引いた残りの部分であるが、時間軸方向の画面間の動き部分は、粗画像間の動き部分と精細画像間の動き部分とは異なるので、このデータは粗画像データを差し引いた残りの部分ではなく完全に送り直すことになる。
図11(d)は、図11(b)と同様に粗画像データ11050と精細画像データ11070を送信する手順であるが、ここでは粗画像データ11050と精細画像データ11070の間に、精細画像データ長11060を転送することを特徴とする。精細画像データ長11060を送ることで、精細画像データ11070の転送が終了する時刻を知ることが出来、精細画像データ11070の転送終了時刻に、図11(e)に於ける精細画像再生11090の終了時刻を合わせることが出来る。これにより、図11(e)に於いて、まず粗画像再生11080を行い、精細画像再生11090を始めるまでの時間は、「t2−t1+精細画像データ長転送時間(データ本体に比べて無視できるほど小さい)」となり、図11(c)の「t2」に比べて早く精細画像の再生を行うことが出来る。
図12は、本発明による取材支援システムにより、取材者の足跡を記録する方法を示した説明図である。本実施例では、地図12020上で、第1の取材者12000の足跡及び第2の取材者12010の足跡を記録、図1に於ける編集会議室のモニタで表示する方法を示している。第1の取材者12000は、地図12020上を右から左に移動しながら取材を行っている。途中焼け落ちた家12040を撮影して、その情報を転送しているが、これは画面上のウィンドウ12041上で再生される。
第1の取材者12000は、事件の発生中心(例えば震源等)に向かって、地図の右から左に進んでいるが、地図上には第1の取材者の通過点がプロットされ、第1の取材者の進行ルートが常に表示されるようにしている。また、12030に現時点での第1の取材者の環境状態を表示する。即ち地震や危険な場所で足場が崩れた等の様子を取材者が携行する取材端末の加速度センサが検出、同様に環境温度等も検出して、取材者の現在位置と共に環境データもサーバに転送する。
第2の取材者12010も同様に、足跡の表示と、途中で炎上中の建物12060を撮影した映像を、12061で自由に再生することが出来る。また、第2の取材者12010の環境情報も12050で知ることが出来る。この場合、振動と温度の高さから、足場の悪い火災現場に近づいていると判断することが出来る。必要に応じて撤退命令を指示することも可能である。
図13は、人工衛星を利用したGPSや、加速度センサを用いた位置検出手段に加えて、取材端末のベースとなる取材基地に相当するものの絶対位置を確実に把握することで、取材端末の位置検出手段の精度を上げる手段を示した実施例の説明図である。取材端末13000や、取材基地となる取材車両13010に登載する位置検出手段は、通常は人工衛星13020からの電波を利用して、地球上の座標を算出するGPSシステムを利用することが多い。しかし、GPSシステムは米国が有する軍事用人工衛星の電波を流用しているもので、電波のフォーマットの詳細は軍事機密のため、そのデータのすべてを利用することは出来ず、位置計算に於いて最大200m程度の誤差が発生することがある。
自動車で移動する場合は200m程度の誤差はそれほど問題にはならないが、記者が歩行で移動する場合にはこの誤差は大きな問題となる可能性がある。本実施例ではGPSのような位置検出手段に加えて、地図上で取材者自身が自分の所在地を直接地図で確認することで、その誤差の補正を行う。図13(a)は、取材基地となる取材車両13010と人工衛星13020、そして取材端末13010の関係を示した図である。取材車両13010と、取材端末13000はそれぞれGPSを登載しており、人工衛星13020から電波を受信している。しかし先に述べたようにGPSによる位置検出は最大200m程度の誤差が生じることがある。
ここで、取材車両13010と取材端末13000の距離がそれほど離れていない場合は、同じ電波を受けている両者に生じる位置検出の誤差は、その方向及び距離共にほぼ同じである。ここで取材車両13010の位置を、別な方法で確実に規定してしまえば、GPSの検出誤差を正確に知ることが出来る。同時に取材端末13000の位置の誤差も補正され、確実な取材端末13000の位置を検出することが出来る。また、取材端末13000の位置検出手段がGPSではなく、図9で説明した加速度センサによる相対位置検出方式である場合にも、取材端末13000が取材車両13010を出発するときに、取材車両13010の正確な位置を取材端末13000にロードしておけば、後は図のような取材車両13010と取材端末の距離Lと、方向を取材端末13000自身が有する加速度センサで算出して、取材端末13000の正確な位置を常に算出することが出来る。
図13(b)に、取材車両13010の正確な位置を規定する方法の一例を示す。取材車両に登載されたディスプレイ上には、GPSにより取材車両の現在位置13040を表示した地図13030が表示されている。この現在位置13040はGPSにより得られるために、最大200mの誤差が生じる。ここで取材車両の停車位置は、取材車両を運転した者や搭乗しているものが把握できるので、地図上での取材車両の正確な位置をマウスカーソル13050で指示する。
13060は取材端末の現在位置であるが、取材車両と取材端末の相対位置は、両者が有するGPSの誤差が同じように出ているとすれば、その相対位置を正確に把握することが出来る。また、取材端末がGPSを有さず、図9で説明した加速度センサによる位置検出を行っている場合でも、取材端末が取材車両を出発するときに、取材端末の現在位置の初期値をリセットすることで、取材車両と取材端末の相対位置を正確に把握することが出来る。13070に取材車両と取材端末の相対位置を表示している。これは地図上の右、即ち東方向を0度として、左周りに360度/周の角度表示による方向表示、そして直線距離の表示を行っている。取材車両の地図上の直接定義による正確な位置の規定、そして取材車両と取材端末の相対位置の正確な把握により、取材端末の現在位置を正確に算出することが出来る。
図14は、本発明による取材端末の形態の実施例を示した斜視図である。ここではカメラと携帯端末が一体となったときの取材端末の形態例を示している。図14(a)は、板状の取材端末を水平に構える形で映像の撮影を行う。14002は撮影レンズであり、14001はシャッターもしくは動画像撮影スタート/ストップボタンである。図では隠れて見えないが、取材端末の撮影レンズ14002の反対側にファインダーがあり、ここを覗くことで撮影のフレーミングを行うことが出来る。14003は取材端末に設置されたタッチパネル兼液晶ディスプレイであり、ここで取材端末のコントロール、撮影画像の確認、原稿の執筆等を行うことが出来る。
図14(b)は、板状の取材端末14010を、一般のスチルカメラのように構えるような形態の例である。撮影レンズ14012、シャッターボタン14013の存在は図14(a)と同様であるが、ここでは被写体に向ける方向の取材端末の奥行き14015が小さいため、ファインダーを光学ファインダー14011で構成することが出来る。即ち被写体の情景を光学ファインダーで受けて、ファインダー14014で観察することで、図2で説明した小型ブラウン管のようなファインダーを必要とせず、低コストのみならず、軽量化、省電力化を図ることが出来る。図14(c)は、一般のビデオカメラと同様の形態で、特に動画像を撮影するときにカメラのホールディングのバランスに優れている。
図15は、取材端末を画像入力手段と別体に構成し、画像入力手段から画像情報を転送する方法を示した説明図である。本実施例において取材端末15000は、画像入力手段を内蔵せず、別体の電子カメラ15010やビデオカメラ15020から画像情報を受け取る。取材者は電子カメラ15010やビデオカメラ15020で現場の撮影を行い、取材端末15000は取材者のかばんやポケットに入れた状態で使用する。取材端末15000と、電子カメラ15010やビデオカメラ15020の接続は色々な方法があり、本実施例では3種類の方法を挙げた。
第1の方法はワイヤレス送信であり、電子カメラ15010からのディジタル情報の出力15011は、トランスミッタ15030により電波15031に変換され、ワイヤレスで取材端末15000に転送される。画像入力手段がビデオカメラ15020の時は、アナログ信号であるビデオ出力15022を、ビデオ用のトランスミッタ15050を用いて、例えばTV信号のUHF帯等の搬送波に乗せて取材端末に送信する。取材端末はこの電波を受信可能な検波器により映像情報を受信する。
電子カメラの出力15011は、上述したディジタル信号ではなくビデオカメラの出力信号と同じくビデオフォーマット等のアナログ画像信号でも良く、逆にビデオカメラがディジタル出力を有する場合は、電子カメラの出力と同様のトランスミッタで送信してもよい。第2の方法は有線による接続であり、電子カメラ15010のディジタル出力15012は、セントロニクスやSCSIなどのディジタルI/Fにより取材端末に接続され、撮影した画像情報が転送される。また、ビデオカメラ15020のビデオ出力等のアナログ出力15021は、アナログ信号として取材端末に有線で入力される。電子カメラがアナログ信号を出力した場合や、ビデオカメラがディジタル信号を出力した場合も第1の方法と同様である。
また、取材端末15000がアナログ信号を受信した場合は、取材端末内に設置したA/D変換器によりアナログの映像信号はディジタル信号に変換され、取材端末内のメモリに記憶、電子新聞サーバに転送される。第3の方法は、別体の記憶媒体を経由したオフライン転送である。本実施例においては電子カメラ15010はICカードインタフェースを有し、このインタフェースに取り付けたICカード15040に画像情報を記憶する。
そして撮影した後に、このICカード15040を取り出して、取材端末15000に取り付けることで、取材端末はICカード15040より画像情報を読み出して、電子新聞サーバに転送する。図示しないがビデオカメラ15020の画像情報がディジタルの場合は、同様にICカードを使っても良く、またビデオカメラが映像情報を通常のビデオテープに記録しても、例えば取材端末15000がビデオテープの再生機能を有していれば、ICカードと同様にビデオテープを介して映像情報を送っても良い。この時取材端末はビデオテープを自身の大容量記憶媒体として映像情報以外の情報も含めて記憶する媒体として使用することも出来る。
また、図示しないがカメラ部分がヘルメットや頭に直接取り付けられるような形状になっていると、取材者は両手が自由なままで撮影と言葉による取材を行うことが出来、その内容は取材者の場所や環境等のデータも含めて自動的に電子新聞サーバに転送される。