JP2005350968A - 落石抑制工法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 岩塊20と、該岩塊20の上方斜面との間を吊りロープ30で連結し、前記吊りロープ30の上端を斜面に固定し、岩塊20の周囲に這わせた吊りロープ30の下端を岩塊20の下半部の一部に固定した。
【選択図】図1
Description
この工法は、岩塊aから斜面bに貫通させて複数のグラウンドアンカーcを設置し、各グラウンドアンカーcを岩塊aの表面側から緊張し、コンクリート製の支圧板dと公知の定着具eとを介して定着する工法で、岩塊aと斜面b間の摩擦抵抗で以って岩塊aの滑落を防止するものである。
また、その他の落石防止工として、岩塊aと斜面bの間に接着材を注入する接着方法も知られている。
<1>岩塊aと斜面b間の摩擦抵抗を増大するには、グラウンドアンカーcの設置数を増すことと、各グラウンドアンカーcの緊張力を高める必要がある。
しかしながら、グラウンドアンカーcの施工には、斜面に大きな作業構台を構築しなければならないこと、ボーリングと緊張に夫々大型機器を必要とすること、グラウンドアンカーcが長尺物となること等の理由から、一本のグラウンドアンカーcを施工するだけで多くの労力と時間とコストがかかる大規模工事となる。
上記した理由により従来の落石防止工は、岩塊aの落下防止コストが非常に高くつくうえに、施工に長期間を要する問題がある。
<2>斜面に複数の岩塊aが点在する場合は、岩塊a毎に構築した作業構台を解体して移設する必要があり、施工効率が悪い問題がある。
<3>長時間経過すると、岩塊aの周辺地山や背面地山の一部が、風雨に晒されて侵食、流出、崩落等により欠落したり、グラウンドアンカーcが伸び変形を起こす。
この現象を放置しておくと、岩塊aと斜面b間の摩擦抵抗力が低下して、岩塊aの落下の危険度が増す。
殊に、岩塊aと斜面b間の摩擦抵抗力が低下すると、グラウンドアンカーcに直接せん断力が作用して破断する危険がある。グラウンドアンカーに接着工を併用しても、落下の危険度を著しく低減するまでには至らない。
またこのような事態を回避するために、グラウンドアンカーcの張力変化や地山の状態を管理すると、維持管理コストが別途発生する。
<4>作業者は、岩塊aの下流側に設けた作業構台上や、岩塊aの上に直接乗って作業を行っているが、作業中に何らかの原因で岩塊aが動いたり、落下した場合には大事故に繋がる。
このように作業員は危険度の高い状況下で作業を強いられることになり、作業員の安全性確保の面でも改善技術の提案が切望されている。
また本発明の目的は、作業員の安全性を確保できる、落石防止技術を提供することにある。
本発明は、これらの目的の少なくとも一つを達成するものである。
本発明の落石防止工法は、岩塊の回転と滑落を防止する工法であって、岩塊と、該岩塊の上方斜面との間に吊りロープを配置し、前記吊りロープの上端を斜面に固定し、岩塊の周面に這わせた吊りロープの下端を岩塊の下半部の一部に固定したことを特徴とするものである。
さらに本発明は前記した何れかの落石防止工法において、斜面にロープ製の引張材を定着して定着アンカーを構築し、吊りロープの上端を前記定着アンカーのロープ製の引張材に接続して固定したことを特徴とするものである。
さらに本発明は前記した落石防止工法において、定着アンカーが拡底アンカーであることを特徴とするものである。
さらに本発明は前記した何れかの落石防止工法において、前記吊りロープに対して交差方向に向けて追加して配置し、前記補助ロープの両端部を斜面に固定したことを特徴とするものである。
さらに本発明は前記した何れかの落石防止工法において、前記吊りロープまたは前記補助ロープの何れか一方に、補助網状物を追加して設けたことを特徴とするものである。
さらに本発明は前記した何れかの落石防止工法において、岩塊と斜面との間の隙間に固結材を注入して、岩塊との接地面積を増大させたことを特徴とするものである。
さらに本発明は前記した何れかの落石防止工法において、岩塊と斜面との間に接続する複数の吊りロープに予め均等な張力を付与させておくことを特徴とするものである。
さらに本発明は前記した何れかの落石防止工法において、吊りロープの上端を斜面に固定することに代えて、吊りロープの上端を上位の岩塊に固定したことを特徴とするものである。
<1>岩塊と上部斜面との間を吊りロープで接続する簡易な手法で以って、岩塊の回転落下と滑落を確実に防止することができる。
<2>岩塊の下流側での施工作業や岩塊上での施工作業を極力少なくしたので、従来と比べて作業の安全性を著しく改善できる。
<3>本発明の施工には、小型の機材で以ってアンカー工に対処でき、また大型の支持構台も要しないので、数箇所に点在した岩塊に対しても簡単に対処することができる。
<4>補助ロープや補助網状物を追加することで、岩塊の回転防止効果と滑落防止効果が高まるだけでなく、岩塊に縦方向にひび割れが生じている場合に、断片の剥離落石や小さな断片落下を効果的に防止できる。
<5>定着アンカーに拡底アンカーを採用した場合は、運搬や取り扱いに便利な小型機材を使用できる。
<6>岩塊と斜面との間に接続する複数の吊りロープに予め均等な張力を付与しておくだけで、岩塊の挙動時に全ての吊りロープに均等に荷重負担をさせることが可能となり、一部の吊りロープや一部の定着アンカーに過大荷重が作用することを回避できて、吊りロープの破断や定着アンカーの破損を未然に防止することができる。
図1,2に、斜面10上にある岩塊20の落下防止工のモデル図を示す。
既述したように従来はグラウンドアンカーの緊張力で以って岩塊を地山へ強制的に押し付けていたが、本発明では岩塊20に外力を加えて強制的に押し付けないで、岩塊20の回転(転倒)落下と滑落を防止するものである。
また岩塊の全体をネットやロープ材で覆って岩塊の挙動を拘束する方法も提案されているが、この落石防止技術は、ネットやロープ材と岩塊表面との間の摩擦抵抗により岩塊の挙動を拘束しようとするものであるため、大きな拘束効果を得難い。
これに対して本発明は、岩塊20を吊りロープ30で吊り、岩塊20の自重を利用した岩塊20と斜面10間の摩擦抵抗力と、吊りロープ30の張力で以って岩塊20の挙動を拘束するものであり、従来技術と比べて落石防止原理が本質的に異なるものである。
換言すれば、本発明は岩塊20の周面に這わせたロープ30の下端を岩塊20の下部に固定することによって、岩塊20の回転(転倒)を防止するだけでなく、岩塊20の自重を利用して岩塊20を斜面10側へ押さえ込む拘束固定作用をも同時に働かせて、落石を防止するものである。
本工法では、岩塊20と斜面10とを連結する吊りロープ30と、吊りロープ30の上端を斜面10に係留するための定着アンカー40と、吊りロープ30の下端31を岩塊20に固定するための掛止手段50とを使用する。以下に各機材について詳述する。
岩塊20と斜面10上方とを連結する吊りロープ30としては、引張耐力に優れた例えば公知のワイヤーロープ、PC鋼より線、PC鋼線、高強度繊維製ロープ等が使用可能である。
また吊りロープ30にチューブ状の保護材を被覆しておく場合もある。
吊りロープ30の上端を接続する定着アンカー40は、引張材41と固結材42の組み合わせよりなるアンカーである。
図3に例示した定着アンカー40は、引張材41が可撓性を有するワイヤーロープ製で、吊りロープ30と接続するためのリング形を呈するアンカー頭部43も引張材41と同一ロープで構成し、定着部が中心の操作索44を牽引操作することで、複数のロープ単体45が提灯形に拡張可能に構成されている。
アンカー頭部43を含む引張材41の自由長部に可撓性が付与してある。
定着アンカー40の引張り材41に可撓性を付与したのは、吊りアンカー30と接続したときに、引張り材41にせん断の発生を極力少なくして引張のみを作用させるためである。
尚、図中符号46はシース管、47は頭部補強パイプである。
拡底したアンカー孔は、形成火薬等の爆発力を利用して形成してもよいが、削孔径を可変可能な機械的削孔手段により形成してもよい。爆発力を利用して形成する手段を採用すると、簡単な削孔機器で対処することができる。
さらに定着アンカー40の施工に大型の作業構台を準備する必要もない。
掛止手段50は、吊りロープ30の下端31を岩塊20に固定する固定部材である。
掛止手段50には大きなせん断力が作用することが予想されるため、せん断補強したロックボルト工(例えばRCロックアンカー)等を使用できる。
図4に拡大して示すように掛止手段50であるRCロックアンカーは、先端に先端キャップ52を有するRCロッド51と、このRCロッド51に外装し、孔入口側に設置した補強パイプ53を具備し、RCロッド51をグラウト54を充填したアンカー孔55に配置したもので、地表面に突出するRCロッド51の基端部に設けたUボルト取付締付治具56に、Uボルト57を介して吊りロープ30の下端31と接続可能になっている。
つぎに落石の防止工法について説明する。
まず図1,2に示すように、岩塊20の位置から上方の斜面10に上記した定着アンカー40を設ける。定着アンカー40は、岩塊20から一定の距離だけ離隔して構築する。定着アンカー40のロープ製のアンカー頭部43は地表に露出しておく。
また定着アンカー40の形成数は、岩塊20の大きさや重量等を考慮して適宜決定する。
各定着アンカー40のロープ製のアンカー頭部43に、吊りロープ30の上端を接続する。単数または複数の吊りロープ30が岩塊20の周面を這うように、下方へ垂らしておく。
吊りロープ30の下端31を、高いせん断強度の掛止手段50を介して岩塊20の下半部に固定する。
岩塊20に対する吊りロープ30の下端31の固定位置は、図1に示すように吊りロープ30の一部が岩塊20の外周面に巻き掛けるように這わせて、岩塊20の下半部の一部に固定してあればよい。固定作業性とモーメント性を考慮すると、岩塊20の最下部(最下流側)に固定することが好適である。
また岩塊20の表面側から回り込んでその背面側に吊りロープ30の下端31を固定する場合もある。要は岩塊20のA方向への回転と、B方向への回転を抑制可能な位置に吊りロープ30の下端31が接続してあればよい。
また定着アンカー40と岩塊20の間を複数の各吊りロープ30で接続する場合には、各吊りロープ30の張力が均等になるようにする。各吊りロープ30に導入する緊張力は、例えば1kN程度でよい。
吊りロープ30に所要の緊張力を導入して施工を完了する。
また掛止手段50介した吊りロープ30の下端31の接続作業は、吊りロープ30を作業用ロープに兼用して使用して行ってもよい。
また吊りロープ30の下端31の接続位置は、岩塊20の下部であるため、作業台となる支持構台を省略して、或いは小規模の支持構台を用いて速やかに行うことができる。
図1に示すように、岩塊20に外力が作用しない通常時においては、岩塊20の自重に起因した岩塊20と、斜面10の斜線で示す背面地山間の摩擦抵抗により、岩塊20の崩落(滑落)と回転(転倒)が防止されている。
図5に示すように、地震等により、岩塊20の下流部と、これに接地する接地部11を中心に、岩塊20が矢印A方向に向けて回転(転倒)しようとした場合の作用について説明する。
吊りロープ30の上下端は定着アンカー40と岩塊20に夫々固定されている。
したがって、岩塊20が矢印A方向に向けて回転(転倒)しようとすると、吊りロープ30の張力が増していき、岩塊20が張りつめた吊りロープ30に当接することで、岩塊20の矢印A方向へ向けた回転挙動を阻止することができる。
また岩塊20と接地部11間の摩擦抵抗が高まるので、岩塊20の崩落(滑落)も併せて効果的に防止することができる。
このように引張材41に可撓性を持たせたことで、引張耐力に優れた定着アンカー40の設計に際して、引張力のみの計算でよいため、定着アンカー40が設計し易くなるとともに、落石防止荷重の定量化を容易に行うことができる。
また、吊りロープ30の下端31の固定に用いた掛止手段50は、予想されるせん断力に対抗可能な高いせん断強度を有しているため、吊りロープ30の下端31が岩塊20から切り離される心配はない。
図6に示すように、岩塊20の背面土砂の一部が徐々に流出する場合がある。
このような場合、岩塊20には矢印A方向に向けた回転(転倒)力や、矢印B方向に向けたて回転(転倒)力が働こうとするが、自重により岩塊20は斜面10の貫通方向へ向けて変位すると共に、岩塊20が張り詰めた吊りロープ30に当接することで、岩塊20の矢印A方向へ向けた回転が防止される。
また岩塊20と斜面10との接地部の摩擦抵抗により、岩塊20の矢印B方向へ向けた回転と滑落も併せて防止することができる。
尚、図6では岩塊20の背面土砂が大量に流出した極端な例を示すが、このような極端に流出した場合でも、岩塊20の矢印A、B方向へ向けた回転と、滑落を効果的に防止することが可能となる。
以上は、岩塊20を斜面10上方から吊りロープ30で吊りこむ構造であるが、図7に示すようにこれに横方向へ張設する補助ロープ60を追加して設けることもできる。
補助ロープ60は岩塊20の外周面に掛け渡して張設する。
この定着アンカー70には、先の定着アンカー40と同様のものを使用することができる。
補助網状物80をロープ30又は60へ固定するには、らせん状のコイルや公知の結束具や固定具を用いて行う。
図8に示すように、斜面10の傾斜方向に沿って複数の岩塊20a,20bが存在する場合は、各岩塊20a,20bに接続した吊りロープ30a,30bの上端を定着アンカー40に接続してから斜面10側から反力を得るようにしてもよい。
吊りロープ30a,30bを重複して配置した上位の岩塊20aは斜面10側へ押し付ける拘束固定作用が増すので働くと同時に、岩塊の回転と滑落の両方を防止することができる。
岩塊20と斜面10との間に発生した隙間を放置すると、岩塊20が不安定な状態のままとなる。
そこで図9に示すように、岩塊20と斜面10の隙間に接着性が強い、耐圧縮特性に優れた固結材80を注入して空隙処理を施す。
本例のように固結材80を注入して岩塊20と斜面10との接地面積が増えることで、岩塊20の摩擦抵抗面積が増大し、これにより岩塊20の回転防止効果と滑落防止効果が高まることに役立つ。また斜面10の風雨による崩落も防止できる。
20・・・岩塊
30・・・吊りロープ
40・・・定着アンカー
50・・・掛止手段
60・・・補助ロープ
Claims (9)
- 岩塊の回転と滑落を防止する工法であって、
岩塊と、該岩塊の上方斜面との間を吊りロープで連結し、
前記吊りロープの下端を、岩塊の回転および滑落を抑制可能な位置に固定したことを特徴とする、
落石防止工法。 - 岩塊の回転と滑落を防止する工法であって、
岩塊と、該岩塊の上方斜面との間に吊りロープを配置し、
前記吊りロープの上端を斜面に固定し、
岩塊の周面に這わせた吊りロープの下端を岩塊の下半部の一部に固定したことを特徴とする、
落石防止工法。 - 請求項1又は請求項2において、斜面にロープ製の引張材を定着して定着アンカーを構築し、吊りロープの上端を前記定着アンカーのロープ製の引張材に接続して固定したことを特徴とする、落石防止工法。
- 請求項3において、前記定着アンカーが拡底アンカーであることを特徴とする、落石防止工法。
- 請求項1乃至請求項4の何れかにおいて、前記吊りロープに対して交差方向に向けて追加して配置し、前記補助ロープの両端部を斜面に固定したことを特徴とする、落石防止工法。
- 請求項1乃至請求項5の何れかにおいて、前記吊りロープまたは前記補助ロープの何れか一方に、補助網状物を追加して設けたことを特徴とする、落石防止工法。
- 請求項1乃至請求項6の何れかにおいて、岩塊と斜面との間の隙間に固結材を注入して、岩塊との接地面積を増大させたことを特徴とする、落石防止工法。
- 請求項1乃至請求項7の何れかにおいて、岩塊と斜面との間に接続する複数の吊りロープに予め均等な張力を付与させておくことを特徴とする、落石防止工法。
- 請求項1乃至請求項8の何れかにおいて、吊りロープの上端を斜面に固定することに代えて、吊りロープの上端を上位の岩塊に固定したことを特徴とする、落石防止工法。
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