JP2005346929A - 直接型燃料電池の膜電極接合体、システム及びシステム使用方法 - Google Patents

直接型燃料電池の膜電極接合体、システム及びシステム使用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】直接型燃料電池システムにおいて、燃料の透過抑制による燃料の利用率向上と、出力向上とを同時に実現する。
【解決手段】本発明の直接メタノール型燃料電池用膜電極接合体10は、電解質層11と、電解質層11の一面に接合されたカソード極13と、電解質層11の他面に接合されたアノード極12とを有している。カソード極13には、磁気作用をもつ磁力体30が担持されている。
【選択図】図13

Description

本発明は、直接型燃料電池の膜電極接合体、システム及びシステムの使用方法に関する。
従来、直接型燃料電池の一種である直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:DMFC)のシステムが特許文献1に開示されている。このDMFCシステムは、DMFC用膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を備えている。この膜電極接合体は、電解質層と、この電解質層の一面に接合され、空気が供給されるカソード極と、電解質層の他面に接合され、メタノール水溶液が供給されるアノード極とを有している。カソード極及びアノード極には触媒作用を奏する白金(Pt)等の触媒が担持されている。
そして、この膜電極接合体を図示しないセパレータで挟むことにより最小発電単位である燃料電池のセルが構成され、このセルが多数積層されて燃料電池スタックが構成される。アノード極にはメタノール水溶液供給手段によってメタノールが水とともに供給され、カソード極には空気供給手段によって空気が供給されるようになっている。こうしてDMFCシステムが構成される。
この膜電極接合体では、アノード極における化1に示すにより、燃料のメタノールから水素イオン、電子及び二酸化炭素が生成される。
(化1)
CH3OH+H2O→CO2+6H++6e-
そして、水素イオンはプロトン(H3+)の形で電解質層内をカソード極に向かって移動する。また、電子は、DMFCシステムに接続された負荷を通り、カソード極に流れる。
一方、カソード極においては、化2に示す反応により、空気中に含まれる酸素と水素イオンと電子とから水が生成される。
(化2)
3/2O2+6H++6e-→3H2
このような反応が連続して起こることにより、DMFCシステムは起電力を連続して発生することができる。また、このDMFCシステムは、燃料を水素とする固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)のシステムと、メタノールを燃料としつつ、予めメタノールを改質して水素に変換してPEFCに供給する改質型PEFCのシステムとは異なり、燃料の取り扱いが容易であるとともに、改質器を不要として全体の小型化及び軽量化を実現可能であるという長所を有している。
特開2003−346836号公報
しかし、従来のDMFCシステムでは、アノード極の触媒上で反応しなかったメタノールが電解質層を透過してカソード極に至り(クロスオーバー現象)、メタノールが空気中に捨てられてしまうため、燃料の消費量が多くなるという問題がある。
また、従来のDMFCシステムでは、クロスオーバー現象によってカソード極に至ったメタノールがカソード極において酸化される現象を生じる。このため、カソード極でも電子を生じ、この電子によってカソード極に形成されたプラスの電荷が相殺されてしまう。その結果、このDMFCシステムでは、出力が低下してしまう。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、直接型燃料電池システムにおいて、燃料の透過抑制による燃料の利用率向上と、出力向上とを同時に実現することを解決すべき課題としている。
本発明の直接型燃料電池用膜電極接合体は、電解質層と、該電解質層の一面に接合され、空気が供給されるカソード極と、該電解質層の他面に接合され、燃料水溶液が供給されるアノード極とを有する直接型燃料電池用膜電極接合体において、前記カソード極には、磁気作用をもつ磁力体が担持されていることを特徴とする。
発明者の知見によれば、本発明の膜電極接合体の作用効果は以下のとおりである。すなわち、この膜電極接合体では、未反応の燃料は、カソード極に担持された磁力体の磁気作用により、反磁性体として、大きな排斥力を受ける。このため、未反応の燃料は電解質層との界面付近から電解質層側に戻され、クロスオーバー現象が抑制される。電解質層側に戻された燃料は、電解質層における骨格間の隙間を通過してアノード極に至り、上記化1等の反応により、水素イオン、電子及び二酸化炭素を生成する。
また、本発明の膜電極接合体では、燃料がカソード極の触媒に近づくことができず、燃料がカソード極において酸化されない。このため、カソード極で電子を生じることがなく、カソード極に形成されたプラスの電荷が有効に出力に現れることとなる。
したがって、本発明の膜電極接合体によれば、直接型燃料電池システムにおいて、燃料の透過抑制による燃料の利用率向上と、出力向上とを同時に実現することができる。
また、この膜電極接合体では、カソード極に酸素を常磁性体として吸引することもできる。また、電解質層からカソード極に移動しようとする自由水やカソード極において触媒表面に生じる生成水も、反磁性体として、排斥することができる。さらに、燃料がカソード極における触媒の活性点上の障害物とならない。このため、そこに酸素を速やかに供給することができるとともに、フラッディングが抑制される。この点においても、直接型燃料電池システムの出力が上昇する。
本発明に係る直接型燃料電池は、燃料として、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールを用いる直接アルコール型燃料電池の他、ジメチルエーテル(DME)を燃料に用いる直接ジメチルエーテル型燃料電池等であり得る。
本発明の膜電極接合体は、電解質層、カソード極及びアノード極を有する。電解質としては、ナフィオン(登録商標)等のイオン交換樹脂を採用することができる。カソード極は、カーボンクロス、カーボンペーパー、カーボンフェルト等の導電性のある基材と、この基材に固定した少なくとも触媒及び電解質とからなり得る。基材は撥水性及びガス透過性を有するものであり得る。撥水性を有するものとするためには、カーボンクロス等の基材に撥水材を塗布しておくことができる。アノード極は、基材と、この基材に固定した少なくとも触媒及び電解質とからなり得る。
磁力体は磁気作用をもつものである。この磁力体としては、ネオジウム−鉄−ホウ素磁石、サマリウム−コバルト磁石、フェライト磁石等の永久磁石を採用することができる。
磁力体は、触媒作用及び磁気作用を併せもつ磁性触媒であることが好ましい。永久磁石を磁力体とした場合、永久磁石がカソード極において単に分散、配置されているに過ぎないこととなる。この場合、酸素を吸引し、燃料や水を排斥する永久磁石と、触媒作用を行う触媒とが必ずしも近くにないものとなるため、出力向上を必ずしも実現し得ないと思われる。
この点、触媒作用及び磁気作用を併せもつ磁性触媒を磁力体とした場合には、図1に示すように、磁性触媒33の磁気作用により、酸素を常磁性体として吸引しつつ燃料及び水を反磁性体として排斥することができる。この際、磁性触媒33自体が酸素を吸引し、燃料及び水を排斥するとともに、カソード極で還元反応を促進して電気化学的反応の触媒作用を行う。このため、直接型燃料電池システムの出力向上をより確実に実現できる。
発明者らの試験結果によれば、磁性触媒33としてはfct構造を主相とするPt合金を採用することができる。fct構造のPt合金は、図2に示すように、PtとFe、Co等の他の合金金属とが層構造をなすPt合金である。図3に示すように、Ptと他の合金金属とが層構造をなさない立方晶系面心立方格子(fcc)構造のPt合金を高温下の熱処理に供することにより、fct構造のPt合金が得られる。一般的に、合金化直後のPt合金は、準安定相である不規則なfcc構造をとり、これは軟磁気特性を示す。しかし、これを高温下の熱処理に供することにより、安定相である規則的なfct構造が形成され、Ku〜7×107erg/ccの高い一軸結晶磁気異方性を示す高い保磁気力を有するものとなる。
より具体的には、磁性触媒33としては、Pt−Fe合金を採用することができる。Pt−Fe合金の状態図を図4に示す。図4に示されるように、熱処理温度を900°Cとすると、Pt/Fe=35/65〜54/46(at%)の範囲で磁気作用を奏するfct構造を主相とするPt−Fe合金が得られる。発明者らの試験によれば、熱処理温度を1300°Cとすることにより、Pt/Fe=41/59〜74/26(at%)の範囲で磁気作用を奏するfct構造を主相とするPt−Fe合金が得られた。Pt/Fe=38.5/61.5(at%)のPt−Fe合金を1046°Cで100時間熱処理し、水で急冷したfct構造を主相とするPt−Fe合金の磁化曲線図を図5に示す。図5より、このfct構造を主相とするPt−Fe合金は、−3.8〜3.8kOeの高い保磁気力を有することがわかる。発明者らの推察によれば、Pt/Fe=40/60〜75/25(at%)の組成を有するPt−Fe合金を採用することが好ましい。また、保磁気力が絶対値で2kOe以上のPt−Fe合金を採用することが好ましい。さらに、粒径が1〜10nmのPt−Fe合金を採用することが好ましい。この種のPt−Fe合金は水溶液反応を基礎とする逆ミセル法、有機金属を用いる合成法等によって得られる。
また、磁性触媒33としては、Pt−Co合金を採用することもできる。Pt−Co合金の状態図を図6に示す。図6に示されるように、Pt/Co=40/60〜73/27(at%)の範囲で磁気作用を奏するfct構造を主相とするPt−Co合金が得られる。発明者らの推察によれば、Pt/Co=40/60〜75/25(at%)の組成を有するPt−Co合金を採用することが好ましい。また、保磁気力が絶対値で2kOe以上のPt−Co合金を採用することが好ましい。さらに、粒径が1〜10nmのPt−Co合金を採用することが好ましい。この種のPt−Co合金も水溶液反応を基礎とする逆ミセル法、有機金属を用いる合成法等によって得られる。
カソード極に磁力体を担持した膜電極接合体は以下のように製造され得る。まず、導電性磁性体32、磁力体等を用意する。導電性磁性体32としては、カーボン等を採用することができる。磁力体としては、永久磁石や磁性触媒33を採用することができる。そして、導電性磁性体32と磁力体と電解質溶液とを混合してペーストを作製し、このペーストを基材に塗布した後、乾燥させてカソード極を形成する。また、基材に少なくとも触媒及び電解質溶液を混合したペーストを塗布した後、乾燥させてアノード極を製造する。得られたカソード極、アノード極及び電解質層を接合する。こうして膜電極接合体を得る。
磁力体は、磁性体からなる電極用磁性担体と、電極用磁性担体の外周面に担持され、触媒作用及び磁気作用を併せもつ磁性触媒であることがさらに好ましい。図7に示すように、永久磁石や磁性触媒33をカソード極において単に分散、配置しただけでは、永久磁石や磁性触媒33自体の磁気力しか生じず、磁気力が不足するおそれがある。また、その場合には、永久磁石や磁性触媒33がカソード極から脱落するおそれもある。このため、その直接型燃料電池システムでは、磁気力に基づく吸引力及び排斥力が不十分になるおそれがあり、やはり出力向上を必ずしも実現し得ないと思われる。
この点、図8(A)〜(C)に示すように、磁性体からなる電極用磁性担体31と、この電極用磁性担体31の外周面に担持された磁性触媒33とからなる電極用磁性担持触媒30を磁力体として採用した場合には、磁性触媒33及び電極用磁性担体31の合計の体積による十分な磁気力を生じる。また、磁性触媒33が電極用磁性担体31に磁着して脱落し難い。なお、この場合、触媒作用を発揮していない磁性触媒33であっても、その磁気作用を有効に利用することができる。
電極用磁性担体31としては、鉄、コバルト、ニッケル、鉄−コバルト合金、鉄−ニッケル合金、アルニコ等、一元系金属又は二元系以上の多元系合金を採用することができる。電極用磁性担体31は、上記磁性触媒33と同様、電極用磁性担体31が触媒作用及び磁気作用を併せもつものであることもできる。例えば、電極用磁性担体31として、Pt−Fe合金、Pt−Co合金、Pt−Fe−Co合金等の触媒作用及び磁気作用を併せもつ多元系合金を採用することができる。粒径が20〜100nmの電極用磁性担体31を採用することが好ましい。
電極用磁性担体31としては、図9(A)に示すように、強磁性体ではあるが、保磁力が小さく、磁石のように保持力がないためにそれ自体で磁気力を有さないものの他、図9(B)に示すように、既に弱い磁気力を有するもの、図9(C)に示すように、既に強い磁気力を有するものを採用することができる。また、既に磁気力を有するものをさらに磁気化することもできる。
図8(A)〜(C)及び図9(A)〜(C)に示すように、磁性触媒33は導電性磁性体32によって電極用磁性担体31の外周面に担持されていることができる。厚みが数nmの導電性磁性体32を採用することが好ましい。例えば、アーク放電によってカーボンと電極用磁性担体31を構成する磁性体の金属とを同時に高温化して飛散させ、それらが凝固する過程で金属がカーボンに内包されたカーボンナノカプセルを析出する。そして、そのカーボンナノカプセルへ磁性触媒33を担持する。こうして、磁性触媒33を導電性磁性体32によって外周面に担持した電極用磁性担持触媒30が得られる。
電極用磁性担持触媒30を磁力体とした膜電極接合体は以下のように製造され得る。まず、電極用磁性担体31、導電性磁性体32、電極用磁性担持触媒30等を用意する。そして、基材に少なくとも電極用磁性担持触媒30及び電解質溶液を混合したペーストを塗布した後、乾燥させてカソード極を製造する。また、基材に少なくとも触媒及び電解質溶液を混合したペーストを塗布した後、乾燥させてアノード極を製造する。既に磁気力を有する電極用磁性担体30を用いる場合には、こうして得られるカソード極は既に十分な磁気力を有する。この後、少なくともカソード極を磁場におくことにより、磁性触媒33や電極用磁性担体31を磁化し、カソード極を得ることもできる。得られたカソード極、アノード極及び電解質層を接合する。こうして膜電極接合体を得る。
また、この膜電極接合体は以下のようにも製造され得る。まず、上記のように、カソード極を構成した後、カソード極、アノード極及び電解質層を接合し、膜電極接合体を得る。そして、この膜電極接合体を磁場におくことにより、磁性触媒33や電極用磁性担体31を磁化し、膜電極接合体を得ることができる。
磁力体は、電解質層側で強い磁気力を奏するように構成されていることが好ましい。仮に非電解質層側での磁気力が強い場合には、未反応の燃料やプロトンの伝導とは無関係な自由水が電解質層側からカソード極側に移動しやすい。また、仮に非電解質層側での磁気力が強い場合には、水素と酸素との反応による生成水もカソード極内に留まり易い。これらのため、燃料や自由水や生成水が邪魔になって酸素がカソード極に供給され難くなると考えられる。また、非電解質層側の磁気力が強い場合には、空気はカソード極の表面側に留まり易い。このため、出力向上を必ずしも実現し得ないと思われる。
この点、磁力体が電解質層側で強い磁気力を奏するように構成されている場合には、未反応の燃料や自由水が電解質層側からカソード極に移動し難くなっている。また、カソード極の電解質層側での磁気力が強いため、生成水は速やかにカソード極の電解質層側から移動する。これらのため、燃料や自由水や生成水が邪魔になり難く、酸素がカソード極に供給され易くなる。また、電解質層側の磁気力が強いため、空気はカソード極の表面側に留まらず、電解質層側の奥深くまで移動し易い。このため、出力向上をより実現できると思われる。
図9(A)に示すように、強磁性体ではあるが、それ自体で磁気力を有さない電極用磁性担体31を用いる場合、図8(A)に示すように、各磁性触媒33のS極同士及びN極同士は整列せず、互い違いでS極とN極とが整列することにより、極めて弱い磁気力が生じる。
図9(B)に示すように、弱い磁気力を有する電極用磁性担体31を用いる場合、図8(B)に示すように、電極用磁性担体31及び各磁性触媒33のS極及びN極が整列して弱い磁気力を生じる。
図9(C)に示すように、強い磁気力を有する電極用磁性担体31を用いる場合、図8(C)に示すように、電極用磁性担体31のN極に各磁性触媒33のS極が配向し、電極用磁性担体31のS極に各磁性触媒33のN極が配向し、電極用磁性担体31及び各磁性触媒33のS極及びN極が整列してより強い磁気力を生じる。また、電極用磁性担体31の磁気化により各磁性触媒33の磁化を継続することができる。
磁性触媒33によってカソード極に磁気力の勾配をつける場合、磁気力の異なる磁性触媒33を用いることができる。磁気力のない触媒は最も非電解質層側に設けられ得る。磁気力の強い磁性触媒33としては、上記Pt−Fe合金、Pt−Co合金等を採用することができる。磁気力の弱い磁性触媒33としては、これらPt−Fe合金、Pt−Co合金等の劣悪品を採用することができる。また、磁性触媒33によってカソード極に磁気力の勾配をつける場合、磁性触媒の密度を変えることも可能である。
電極用磁性担持触媒30によってカソード極に磁気力の勾配をつける場合、磁気力の異なる電極用磁性担持触媒30を用いることができる。磁気力のない電極用磁性担持触媒30は最も非電解質層側に設けられ得る。また、電極用磁性担持触媒30によってカソード極に磁気力の勾配をつける場合、電極用磁性担持触媒30の密度を変えることも可能である。
電解質層側で強い磁気力を奏する膜電極接合体は以下のように製造され得る。まず、電極用磁性担体31、導電性磁性体32、電極用磁性担持触媒30等を用意する。そして、基材に少なくとも電極用磁性担持触媒30及び電解質溶液を混合したペーストを塗布して磁場に入れた後、乾燥させてカソード極を製造する。この際、既に磁気力を有する電極用磁性担持触媒30を用い、電解質層側に強い磁気力を有する電極用磁性担持触媒30、中間に弱い磁気力を有する電極用磁性担持触媒30、空気拡散層側に磁気力を有さない電極用磁性担持触媒30を順次多層に形成する。また、磁気力のない電極用磁性担持触媒30を用い、電解質層側が強い磁気力を有し、非電解質層側が弱い磁気力を有するように磁場を与えることもできる。また、基材に少なくとも触媒及び電解質溶液を混合したペーストを塗布した後、乾燥させてアノード極を製造する。得られたカソード極、アノード極及び電解質層を接合する。こうして膜電極接合体を得る。
本発明の膜電極接合体を燃料水溶液供給手段、空気供給手段等とともに組み付けることにより、本発明の直接型燃料電池システムとなる。すなわち、本発明の直接型燃料電池システムは、上記膜電極接合体と、前記アノード極に燃料水溶液を供給する燃料水溶液供給手段と、前記カソード極に空気を供給する空気供給手段とを備えたことを特徴とする。
燃料水溶液供給手段はアノード極に燃料を水とともに供給するものである。燃料カートリッジ、セパレータの燃料水溶液室等を燃料水溶液供給手段とすることができる。空気供給手段は、カソード極に空気を供給するものである。ブロア、セパレータの空気室等を空気供給手段とすることができる。本発明の直接型燃料電池システムは出力がより確実に向上する。
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。実施例では、直接アルコール型燃料電池として、燃料としてのアルコールにメタノールを用いた直接メタノール型燃料電池(DMFC)のシステムを形成した。
このDMFCシステムでは、図10に示す複数のセル1が用いられている。各セル1は膜電極接合体(MEA)10と一対のセパレータ20とを備えている。
膜電極接合体10は、ナフィオン117のイオン交換膜からなる電解質層11と、この電解質層11の一面に一体に接合されたアノード極12と、電解質層11の他面に一体に接合されたカソード極13とを有している。
各セパレータ20は、一面側にアノード極12にメタノール水溶液を供給するためのメタノール水溶液室21が形成され、他面側にカソード極13に空気を供給するための空気室22が形成されたものである。
各セル1は、アノード極12側にメタノール水溶液室21が対面し、カソード極13側に空気室22が対面するように膜電極接合体10と一対のセパレータ20とが積層されたものである。そして、膜電極接合体10とセパレータ20とを順次積層することによりスタックが構成される。また、アノード極12側とカソード極13側とで共通する上記セパレータ20を採用している。なお、スタックの両端のセパレータ20にはメタノール水溶液室21又は空気室22だけが形成されている。
スタックには、各セル1のメタノール水溶液室21に図示しないバルブを介して連通するメタノールカートリッジ2と、各セル1の空気室22に連通するブロア3とが接続されている。メタノールカートリッジ2及びセパレータ20のメタノール水溶液室21がアノード極12にメタノールを供給するメタノール水溶液供給手段である。また、ブロア3及びセパレータ20の空気室22がカソード極13に空気を供給する空気供給手段である。
実施例のDMFCシステムの特徴的な構成として、カソード極13には、図11及び図12に示すように、無数の電極用磁性担持触媒30が磁力体として担持されている。各電極用磁性担持触媒30は、電極用磁性担体31と、電極用磁性担体31の外周面にカーボン32を介して担持された磁性触媒33とからなる。
電極用磁性担体31は、平均粒径が50nm、Pt/Fe=50/50(at%)のPt−Fe合金を熱処理し、水で急冷したfct構造を主相とするPt−Fe合金である。また、磁性触媒33は、平均粒径が5nm、Pt/Fe=50/50(at%)のPt−Fe合金を熱処理し、水で急冷したfct構造を主相とするPt−Fe合金である。
各電極用磁性担持触媒30は各磁性触媒33及び/又は電極用磁性担体31が磁化されている。電極用磁性担持触媒30は、磁気力が電解質層11側で強くなっている。
(評価1)
このDMFCシステムにおいて、カソード極13近傍における室温での磁気力をシミュレーションする。磁気力はF=X/2μ0×∇(B)2によって計算される。μ0は4π×10-7(H/m)、Xは体積磁化率(酸素は1.93×10-6、メタノールは−0.528×10-6、水は−9.05×10-6)である。このため、酸素のX/2μ0は0.77、メタノールのX/2μ0は−2.10、水のX/2μ0は−3.60である。結果を図13に示す。なお、この結果は、図中に示すように、電極用磁性担持触媒30がカソード極13で列を作っていると仮定し、列と列との中間位置における磁気力を計算したものである。
図13より、この膜電極接合体10のカソード極13には、メタノールを電解質層11との界面から電解質層11内に排除する磁気力と、自由水を電解質層11との界面から電解質層11内に排除する磁気力と、その界面から生成水を非電解質層側に排出するとともに、非電解質層側から酸素をその界面に吸引する磁気力とが作用していることがわかる。特に、反磁性体であるメタノールは、電極用磁性担持触媒30を担持したカソード極により、電解質膜11−カソード極13の境界付近にて強力な反発力を受けていることがわかる。その反発力は、電極用磁性担持触媒30と電極用磁性担持触媒30との空隙部分の最も弱いところでも、メタノール1m3が重力から受ける約8000Nに対して10倍以上の105N/m3の磁気的な排斥力であり、メタノールがカソード極13へ侵入することを防止する。
すなわち、この膜電極接合体10では、図12にも示すように、カソード極13の電解質層11側で磁気力が強いため、メタノール及び自由水が電解質層11側からカソード極13に移動し難くなっている。また、この膜電極接合体10では、カソード極13の電解質層11側での磁気力が強いため、生成水は速やかにカソード極13の電解質層11側から非電解質層側に移動する。これらのため、メタノールや自由水や生成水が邪魔になり難く、酸素がカソード極13に供給され易いのである。また、この膜電極接合体10では、電解質層11側の磁気力が強いため、空気はカソード極13の表面側に留まらず、奥深くまで移動し易いのである。
したがって、この膜電極接合体10によれば、DMFCシステムの出力をより確実に向上できることがわかる。
(評価2)
また、磁気力の勾配のない電極用磁性担持触媒30を磁力体とした膜電極接合体10において、各電極用磁性担持触媒33近傍におけるメタノールへ作用する室温での磁気力をシミュレーションする。この結果を図14の実線で示す。
図14より、電極用磁性担体触媒30がメタノールに大きな排斥力を作用していることがわかる。特に、磁性触媒33の近傍では、さらに強力な磁気的な排斥力を作用していることがわかる。この排斥力は、重力の1000倍に相当する約107N/m3である。このため、メタノールは、磁性触媒33へ近づくことが難しく、反応しづらいことがわかる。
(評価3)
カソード極13に図5の磁化特性を有する電極用磁性担持触媒30をカーボンに担持した実施例1の膜電極接合体10と、カソード極13に同じ磁化特性を有する電極用磁性担持触媒30を図9の電極用磁性担体31に担持した実施例2の膜電極接合体10と、カソード極13に磁力体を担持していない比較例の膜電極接合体10とを用意する。これら実施例1、2及び比較例の膜電極接合体10の他の構成は上記の膜電極接合体10と同様である。
実施例1、2及び比較例の膜電極接合体10について、室温におけるメタノールの濃度(Mol)とメタノールの透過レイト(mMol/cm2・h)との関係を求めた。電流密度を0mA/cm2とした場合の結果を図15に示し、電流密度を100mA/cm2とした場合の結果を図16に示す。
図15及び図16より、メタノールの透過量は、膜電極接合体の電流密度(負荷)が大きくなる程、多くなる傾向があることがわかる。しかし、実施例1、2の膜電極接合体10は、比較例の膜電極接合体と比べ、電流密度が大きくなっても、磁気力によってメタノールの透過量を抑えていることがわかる。
(評価4)
実施例2及び比較例の膜電極接合体について、電流密度(mA/cm2)と電圧(V)との関係を求めた。結果を図17に示す。
図17より、実施例2の膜電極接合体では、磁気力によってメタノールがカソード極13から排除され、酸素の活性化過電圧が低減することにより、その分電位が上昇していることがわかる。このため、実施例2の膜電極接合体は、比較例の膜電極接合体に比して、同じ電流密度でも電圧が向上し、性能が上がることが理解される。
(評価5)
実施例2及び比較例の膜電極接合体について、電流密度(mA/cm2)とカソード電位(V)との関係を求めた。結果を図18に示す。
図18より、実施例2の巻く電極接合体では、カソード極13の電位が上昇したため、全体においてもIV特性が向上していることがわかる。つまり、実施例2の膜電極接合体は、比較例の膜電極接合体に比して、電位が向上していることが理解される。これは図17の結果と一致する。この理由として、図14の結果に示すように、磁気的な排斥力により触媒へメタノールが到達しずらいためと推察される。
(評価6)
実施例1、2及び比較例の膜電極接合体10について、室温におけるメタノールの濃度(Mol)と燃料利用率(%)との関係を求めた。電流密度は100mA/cm2である。結果を図19に示す。
図19より、いずれのメタノール濃度においても、燃料利用率の向上が認められる。特に、8Molの高濃度のメタノール水溶液を用いた場合には、いずれの膜電極接合体も2倍以上の燃料利用率の向上が認められた。しかし、実施例1の膜電極接合体の方が比較例の膜電極接合体より燃料利用率が優れ、実施例2の膜電極接合体の方が実施例1の膜電極接合体より燃料利用率が優れている。
本発明は電気自動車等の移動用電源、あるいは据え置き用電源に利用可能である。
磁性触媒の構成並びに酸素及び水への磁気力を示す概念図である。 fct構造のPt合金の模式構造図である。 fcc構造のPt合金の模式構造図である。 Pt−Fe合金の状態図である。 fct構造を主相とするPt−Fe合金の磁化曲線図である。 Pt−Co合金の状態図である。 分散された複数の磁性触媒の構成を示す概念図である。 電極用磁性担持触媒の構成を示す概念図である。 電極用磁性担体等の構成を示す概念図である。 実施例のDMFCシステムに係り、セルの要部模式断面図である。 実施例の膜電極接合体の要部拡大模式図である。 実施例の膜電極接合体の要部拡大模式図である。 カソード極近傍の磁気力を示すグラフである。 実施例のDMFCシステムにおいて、メタノールの排斥力を示すグラフである。 実施例1、2及び比較例の膜電極接合体において、電流密度を0mA/cm2とした場合におけるメタノールの濃度とメタノールの透過レイトとの関係を示すグラフである。 実施例1、2及び比較例の膜電極接合体において、電流密度を100mA/cm2とした場合におけるメタノールの濃度とメタノールの透過レイトとの関係を示すグラフである。 実施例2及び比較例の膜電極接合体において、電流密度と電圧との関係を示すグラフである。 実施例2及び比較例の膜電極接合体において、電流密度とカソード電位との関係を示すグラフである。 実施例1、2及び比較例の膜電極接合体において、メタノールの濃度と燃料利用率との関係を示すグラフである。
符号の説明
11…電解質層
13…カソード極
12…アノード極
10…膜電極接合体
30…磁力体(33…磁性触媒、31…電極用磁性担体、32…カーボン(導電性磁性体)、30…電極用磁性担持触媒)
2、21…メタノール水溶液供給手段(2…メタノールカートリッジ、21…メタノール水溶液室)
3、22…空気供給手段(3…ブロア、21…空気室)

Claims (9)

  1. 電解質層と、該電解質層の一面に接合され、空気が供給されるカソード極と、該電解質層の他面に接合され、燃料水溶液が供給されるアノード極とを有する直接型燃料電池用膜電極接合体において、
    前記カソード極には、磁気作用をもつ磁力体が担持されていることを特徴とする直接型燃料電池用膜電極接合体。
  2. 前記磁力体は、触媒作用及び磁気作用を併せもつ磁性触媒であることを特徴とする請求項1記載の直接型燃料電池用膜電極接合体。
  3. 前記磁力体は、磁性体からなる電極用磁性担体と、該電極用磁性担体の外周面に担持され、触媒作用及び磁気作用を併せもつ磁性触媒であることを特徴とする請求項1記載の直接型燃料電池用膜電極接合体。
  4. 前記磁性触媒はfct構造を主相とするPt合金であることを特徴とする請求項2又は3記載の直接型燃料電池用膜電極接合体。
  5. 前記磁性触媒はPt−Fe合金であることを特徴とする請求項4記載の直接型燃料電池用膜電極接合体。
  6. 前記磁性触媒はPt−Co合金であることを特徴とする請求項4記載の直接型燃料電池用膜電極接合体。
  7. 前記磁力体は、前記電解質層側で強い磁気力を奏するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の直接型燃料電池用膜電極接合体。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項記載の膜電極接合体と、前記アノード極に前記燃料水溶液を供給する燃料水溶液供給手段と、前記カソード極に空気を供給する空気供給手段とを備えたことを特徴とする直接型燃料電池システム。
  9. 電解質層と、該電解質層の一面に接合され、空気が供給されるカソード極と、該電解質層の他面に接合され、燃料水溶液が供給されるアノード極とを有する膜電極接合体と、
    該アノード極に該燃料水溶液を供給する燃料水溶液供給手段と、
    該カソード極に空気を供給する空気供給手段とを備えた直接型燃料電池システムの使用方法であって、
    前記カソード極に磁気作用をもつ磁力体を担持し、該磁力体により酸素を常磁性体として吸引しつつ該燃料を反磁性体として排斥することを特徴とする直接型燃料電池システムの使用方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006210193A (ja) * 2005-01-28 2006-08-10 Cataler Corp 燃料電池用担持触媒
JP2008288084A (ja) * 2007-05-18 2008-11-27 Toyota Motor Corp アルカリ型燃料電池用の電極触媒、アルカリ型燃料電池、及び、アルカリ型燃料電池用電極触媒の形成方法
JP2012174655A (ja) * 2011-02-24 2012-09-10 Toyota Motor Corp 空気電池用空気極及びその製造方法、並びに空気電池

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