本発明は、紙葉類識別装置および方法に関し、特に、挿入された紙葉類の挿入初期段階で紙葉類の一部を撮像して紙葉類の表裏、正逆の挿入方向及び種類を判定し、判定結果に基づいて、紙葉類に形成された特徴画像の領域を特定して撮像するように紙葉類の搬送または撮像を制御する紙葉類識別装置および方法に関する。
一般に、紙幣、小切手または商品券等の紙葉類の種類および真偽を識別する紙葉類識別装置においては、装置に挿入された紙葉類を磁気センサ若しくは光センサ等を用いて装置に挿入された紙葉類の特徴を磁気的または光学的に検出し、検出した紙葉類の特徴と真券の特徴とを照合することにより紙葉類の種類および真偽を識別する。
例えば、紙葉類の特徴を検出する手段として光学的手段を用いる場合には、透過型光センサ若しくは反射型光センサを用いて紙葉類の図柄等の特徴画像を光学的に検出し、検出した特徴画像と予め登録された紙葉類の特徴画像に対応した標準画像とを照合することにより、紙葉類の種類および真偽を識別する。
しかしながら、装置に挿入された紙葉類の挿入方向は、表裏、正逆の4方向あり、これら4方向のうちの何れの方向で紙葉類が挿入された場合であっても紙葉類に形成された特徴画像を確実に検出するためには、挿入された紙葉類を4方向に対応した特徴画像の位置でそれぞれ検出する必要がある。
また、挿入された紙葉類の種類及び真偽を識別するためには、挿入された紙葉類の特徴画像を紙葉類の種類毎に表裏、正逆の4方向の標準画像と照合する必要があるため識別処理に要する時間が長くなるとともに紙葉類毎に表裏、正逆の4方向の標準画像を記憶管理するためのメモリ容量が必要となる。
したがって、検出した特徴画像と予め登録された紙葉類の特徴画像に対応した標準画像とを照合処理するに先立ち、挿入された紙葉類の表裏、正逆の挿入方向及び種類が特定されることで紙葉類の種類及び真偽の識別処理がより高速で確実なものとなる。
このようなことから、例えば、特許文献1には、紙幣の金種文字を認識することにより紙幣の金種および搬送方向を高速で判別することを可能とした紙幣判別装置が提案されている。
また、特許文献2には、挿入された紙幣のデータを読み取り、検出しはじめたら初期段階で紙幣等の種類と挿入方向を判定し、判定結果に対応した標準パターンのみを比較対象とすることで比較判定時間を短縮する識別装置が提案されている。
また、特許文献3には、紙幣の識別対象を特定して小型化を図るとともに、人工網膜センサを利用して装置全体の処理速度を高速化した紙幣鑑別装置が提案されている。
特開平01−281591号公報
特開平10−188073号公報
特開2000−113269号公報
ところで、上記提案の特許文献1は、紙幣の金種文字を含む領域に対応する基準データと密度分布基準データと外形データとを予め設定しておき、これら各データと搬送紙幣の一方側全面の画像データおよび搬送紙幣の他方側全面の画像データとに基づき紙幣の金種、表裏、搬送方向を判別するように構成したものである。
また、特許文献2は、予め設定した光センサまたは磁気センサの各センサの固定ゾーン中から設定ルールが得られるデータと、該データの組み合せデータを標準データとして記憶し、識別対象紙幣等からの読み取りデータを同様に演算して標準データと比較し、識別対象紙幣等の読み取り開始初期段階に紙幣等の種別と方向を特定し、その後は特定した標準パターンだけを比較対象として比較判定し紙幣等の真偽を判定するように構成したものである。
また、特許文献3は、紙幣と対向し、紙幣の透かし模様を撮像して映像信号を出力する撮像処理回路、映像信号のエッジ検出を行って透かし模様のエッジ画像を出力する画像変換処理回路とを設けた人工網膜チップと、エッジ画像を解析して画像データを出力する知識処理回路と、画像データを照合して紙幣の真偽を判別する判別回路とを備えるように構成したものである。
しかし、上記特許文献1乃至特許文献3には、紙幣等の挿入方向、表裏、金種の判定結果に基づいて、紙幣の所望する箇所を撮像するように紙幣の搬送手段または撮像手段を制御する技術に関しては開示も示唆もされていない。
そこで、本発明は、挿入された紙葉類の挿入初期段階で紙葉類の一部を撮像して紙葉類の表裏、正逆の挿入方向及び種類を判定し、判定結果に基づいて、紙葉類に形成された特徴画像の領域を特定して撮像するように紙葉類の搬送または撮像を制御する紙葉類識別装置および方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、紙葉類の特定位置の特徴画像を撮像し、該撮像により得られた特徴画像に基づき該紙葉類の識別を行う紙葉類識別装置において、前記紙葉類の画像を撮像する撮像手段と、前記紙葉類の特定領域の所定の特徴部を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づき前記撮像手段による前記特徴画像の撮像位置を制御する制御手段とを具備することを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記制御手段は、前記検出手段の検出結果に基づき前記紙葉類の挿入方向を判別する挿入方向判別手段と、前記挿入方向判別手段の判別結果に基づき前記特徴画像の撮像位置を特定する撮像位置特定手段とを具備することを特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記紙葉類の種別を判定する種別判定手段を更に具備し、前記制御手段は、前記検出手段の検出結果および前記種別判定手段の判定結果に基づき前記撮像手段による前記特徴画像の撮像位置を制御することを特徴とする。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記特徴部は、前記紙葉類の一方の端部にすき入れされた透かしバーであることを特徴とする。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記特徴部は、前記紙葉類の一面の端部のパールインキ印刷部であることを特徴とする。
また、請求項6の発明は、請求項4の発明において、前記種別判定手段は、前記透かしバーの数に基づき前記紙葉類の種別を判定することを特徴とする。
また、請求項7の発明は、挿入された紙葉類の特定位置の特徴画像を撮像し、該撮像により得られた特徴画像に基づき該紙葉類の識別を行う紙葉類識別方法において、前記挿入された紙葉類の特定領域を撮像して特定領域画像を取得し、該撮像により取得された前記特定領域画像から前記挿入された紙葉類の所定の特徴部を検出手段で検出し、前記検出手段の検出結果に基づき前記挿入された紙葉類の特徴画像を撮像する撮像位置を制御手段で制御し、前記制御手段で制御された撮像位置で撮像して得られた前記挿入された紙葉類の特徴画像に基づき該紙葉類の識別を行うことを特徴とする。
また、請求項8の発明は、請求項7の発明において、前記制御手段は、前記検出手段の検出結果に基づき前記挿入された紙葉類の挿入方向を挿入方向判別手段で判別し、前記挿入方向判別手段による判別結果に基づき前記挿入された紙葉類の特徴画像の撮像位置を撮像位置特定手段で特定し、前記撮像位置特定手段により特定された撮像位置で撮像して得られた前記挿入された紙葉類の特徴画像に基づき該紙葉類の識別を行うことを特徴とする。
また、請求項9の発明は、請求項7または8の発明において、前記挿入された紙葉類の種別を種別判定手段で更に判定し、前記制御手段は、前記検出手段の検出結果および前記種別判定手段の判定結果に基づき前記挿入された紙葉類の特徴画像を撮像する撮像位置を制御し、前記制御手段で制御された撮像位置で撮像して得られた前記挿入された紙葉類の特徴画像に基づき該紙葉類の識別を行うことを特徴とする。
また、請求項10の発明は、請求項7乃至9のいずれかの発明において、前記特徴部は、前記挿入された紙葉類の一方の端部にすき入れされた透かしバーであることを特徴とする。
また、請求項11の発明は、請求項7乃至9のいずれかの発明において、前記特徴部は、前記挿入された紙葉類の一面の端部のパールインキ印刷部であることを特徴とする。
また、請求項12の発明は、請求項10の発明において、前記種別判定手段は、前記透かしバーの数に基づき前記挿入された紙葉類の種別を判定することを特徴とする。
この発明の紙葉類識別装置および方法によれば、挿入された紙葉類の真偽の識別に先立ち、挿入された紙葉類の透かしバーやパールインキ等の検出結果に基づき紙葉類の表裏、正逆の挿入面、挿入方向及び種類が容易に判定されるので紙葉類の特徴画像と予め登録された紙葉類の特徴画像に対応した標準画像との照合処理が短縮でき、紙葉類の真偽識別処理の高速化が図れる。
また、挿入された紙葉類の挿入面、挿入方向及び種類の判定結果に基づき紙葉類に形成された特徴画像の領域を特定して撮像するので、紙葉類の特徴画像を取得する際の特徴画像領域以外の不要な画像データを記憶するメモリ領域の無駄を抑えコスト削減を図ることができるという効果を奏する。
本発明に係わる紙葉類識別装置および方法は、例えば、紙葉類の種類に対応して一方の端部に透かしバー等のパターンの特徴部を有する紙葉類が装置に挿入され、挿入された紙葉類の真偽の識別に先立って、挿入された紙葉類の透かしバー等のパターンに基づき紙葉類の表裏、正逆の挿入方向及び種類を判定し、判定結果に基づいて挿入された紙葉類の真偽の識別対象となる特徴画像の領域を特定して撮像することで挿入された紙葉類の種類および真偽をより高速に処理するとともにメモリ容量の小型化と製造コスト及び運用コストを削減する紙葉類識別装置として用いられるものである。
紙葉類は、具体的には、紙幣や有価証券等であり、以降の実施例においては、紙葉類を紙幣とし、紙葉類の特定領域の所定の特徴部を紙幣の一方の端部に形成された縦棒の透かしバーのパターンが金種に応じて形成されているものとして説明する。
また、透かしバーのパターンを単数もしくは複数の並列した縦棒状の透かし部から形成されているパターンまたは透かし部内に単数もしくは複数の並列した縦棒状のパターンとして説明する。
更に、紙幣の真偽を識別可能とする特徴画像は、各紙幣に形成された透かし模様を含む透かし領域とし、この透かし領域が形成されている位置が紙幣の中央ではなく、金種毎に異なる場合を想定して説明する。
本発明に係わる紙葉類識別装置および方法の一実施例について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係わる紙葉類識別装置の構成例を示した概略的な構成図である。
図1に示すように、紙葉類識別装置1は、紙葉類識別装置1全体を統括制御する制御部3と、図示せぬ紙幣挿入口から挿入された紙幣2を搬送する紙幣搬送機構8(破線で囲まれた部分)と、紙幣搬送機構8によって搬送されている紙幣2を撮像して撮像画像を取得する撮像部7(一点鎖線で囲まれた部分)と、撮像部7で取得した撮像画像や真券の紙幣の金種毎の標準画像、各種データ及び処理プログラム等を記憶管理するメモリ6と、挿入された紙幣2の真偽の識別判定に先立ち、挿入された紙幣2の表裏、正逆の挿入方向及び金種を判定する方向金種判定部4と、紙幣2の特徴画像の領域を撮像して取得した撮像画像(以下、「特徴画像」という。)とメモリ6に予め設定登録された金種毎の標準画像とを照合して紙幣2の真偽を判定する真偽判定部5を備えており、各部間のデータや制御信号の授受がバス11を介して行われるように構成されている。
紙幣搬送機構8は、紙幣挿入口から挿入された紙幣2を所望の搬送速度で所望の方向へ搬送するように制御する搬送制御部10と、搬送制御部10の制御によって紙幣2を搬送する例えば搬送ベルト81と搬送ベルト81を支持するローラ82、83を備えている。 また、ローラ82または83は、図示せぬモータにより駆動され、搬送制御部10の制御により所望の回転方向、回転速度及び回転数等でローラ82または83が回転して搬送ベルト81を所望の方向へ所望の搬送速度で所望の搬送距離だけ移動させる。
撮像部7は、発光手段72と、受光手段71と、A/D変換部73を備えており、発光手段72と受光手段71とは紙幣搬送機構8の搬送ベルト81によって搬送されている紙幣2の搬送経路80(図中の実線矢印80)を挟んで互いに対向して配置されている。
受光手段71は、例えばCCD(=Charge Coupled Device)で構成されたエリアセンサ等の撮像素子であり、発光手段72によって発せられた光が搬送されている紙幣2を透過した透過光を受光して受光量に応じた電気信号を出力する。
また、受光手段71から出力された電気信号は、A/D変換部73へ入力されてデジタル信号へ変換され出力される。
なお、受光手段71には、赤外、紫外、可視光のいずれの波長も適用可能であり、発光手段72は、受光手段71に適用される各波長に対応して当該各波長が送出可能な装置に置き換えた構成とする。
また、受光手段71としてラインセンサ等を用いるような構成としてもよい。
このように構成された紙葉類識別装置1が挿入された紙幣2の挿入初期段階で紙幣2の一部を撮像して撮像画像を取得し、取得した撮像画像に基づき挿入された紙幣2の表裏、正逆の挿入方向及び金種を判定し、判定結果に基づき紙幣2の特徴画像を取得し、取得した特徴画像と予め登録された標準画像とを照合して紙幣2の真偽を判定処理する動作について図2に示すフローチャートを参照しながら説明する。
紙葉類識別装置1の図示せぬ紙幣挿入口から紙幣2が挿入されると(ステップS201)、紙幣2は、紙幣搬送機構8の搬送ベルト81によって所定の搬送速度で撮像部7へ搬送される。
なお、紙葉類識別装置1の紙幣挿入口には、図示せぬ検知センサが配置され、紙幣等が挿入されると検知センサが検知して紙幣等が挿入された旨の信号を制御部3へ出力するように構成されている。
制御部3は、先ず紙幣2の一方の端面部(紙幣2の搬送方向に対して最前の端面部)を撮像部7で撮像可能なように紙幣搬送機構8の搬送制御部10へ指令する。
搬送制御部10は、制御部3の指令に基づき紙幣2の端面部が撮像部7の撮像範囲30に入る位置まで紙幣2を搬送制御し、撮像部7は、紙幣2の端面部が撮像部7の撮像範囲30に入った位置で紙幣2の一方の端面部を撮像して撮像画像を取得する(ステップ202)。
紙幣2の端面部の撮像画像の取得は、制御部3の指令に基づき撮像部7の発光手段72を発光させて紙幣2に光を照射し、照射された光が紙幣2を透過する透過光を受光手段71で検出して行う。
受光手段71で検出された紙幣2の透過光は、透過光の量に応じた電気信号に変換されてA/D変換部73へ入力され、A/D変換部73が入力された電気信号をデジタル化された撮像画像に変換し、変換した撮像画像を制御部3の指令に基づきバス11を介して方向金種判定部4へ入力する。
なお、紙幣2の搬送位置は、紙幣搬送機構8に配設された図示せぬ位置検知センサやローラ82、83の回転方向、回転数等の情報に基づいて検知され算出される。
また、紙幣2を所望の位置へ搬送する場合は、搬送速度を高速にすることで挿入された紙幣2の搬送時間を短縮し、紙幣2の真偽識別されるまでの全体の処理時間を短縮する。
方向金種判定部4は、入力された撮像画像に基づいて紙幣2の挿入方向及び金種を判定し、方向金種判定部4による判定結果がバス11を介して紙幣搬送機構8の搬送制御部10へ入力される。
具体的には、方向金種判定部4は、入力された紙幣2の端面部の撮像画像中に透かしバーのパターンの有無を判別し(ステップS203)、透かしバーのパターンが存在する場合は(ステップS203でYES)、紙幣2の挿入方向を「正の方向」と判定するとともに(ステップS204)、透かしバーのパターンの数を判別して透かしバーの数に対応した金種を判定する(ステップS206)。
透かしバーのパターンが存在しない場合は(ステップS203でNO)、紙幣2の挿入方向を「逆の方向」と判定する(ステップS205)。
搬送制御部10は、入力された紙幣2の挿入方向及び金種の情報に基づいて紙幣2に形成されている特徴画像の領域、例えば紙幣2に形成されている透かし領域の位置を特定し、特定した透かし領域の中心位置に基づいて紙幣2の透かし領域が撮像部7の撮像範囲30に収まるように紙幣搬送機構8の搬送制御を行う。
撮像部7は、紙幣搬送機構8によって搬送された紙幣2の透かし領域を含む所定の大きさの領域(撮像範囲30)を撮像して紙幣2の特徴画像を取得する(ステップS207)。
紙幣2に形成されている透かし領域の位置の特定は、具体的には、搬送制御部10がメモリ6に記憶管理された金種毎の挿入方向に対応した透かし領域の中心位置情報を参照し、紙幣2の挿入方向及び金種の情報に基づいて特定する。
なお、搬送制御部10が紙幣2を紙幣2に形成された透かし領域が撮像部7の撮像範囲30に入る位置まで搬送制御する場合は、搬送速度を高速に制御することで紙幣2の搬送時間を短縮し、紙幣2の真偽識別までの全体の処理時間を高速化させる。
撮像部7で取得された透かし領域の特徴画像は、真偽判定部5に入力され、真偽判定部5が入力された特徴画像とメモリ6に記憶管理された紙幣2の特徴画像に対応する標準画像とを照合して紙幣2の真偽を判定する(ステップS208)。
制御部3は、真偽判定部5の判定結果に基づいて、例えば紙幣2が真券の場合は(ステップS209でYES)、紙幣2を図示せぬ紙幣収納部へ搬送して収納するように搬送制御部10へ指令し、紙幣2が偽券の場合は(ステップS209でNO)、紙幣2を紙幣挿入口へ搬送して返却するように指令する。
搬送制御部10は、制御部3の指令に基づき、紙幣2を所定の方向へ所定の搬送速度で搬送するように紙幣搬送機構8を搬送制御する(ステップS210、ステップS211)。
このように、本発明に係わる紙葉類識別装置1は、先ず最初に、挿入された紙幣の一方の端面部を撮像して端面部に形成された透かしバーのパターンの有無と数を確認して金種と挿入方向を判定し、判定した挿入方向及び金種に基づいて挿入された紙幣の透かし領域を撮像するように紙幣の搬送制御を行うように構成されている。
さて、ここで本発明に係わる紙葉類識別装置1で用いられる紙幣2の構成について説明する。
図3は、紙葉類識別装置1に挿入される金種毎の紙幣の一例を示す図である。
図3(a)は、正の方向で挿入された表面の千円紙幣20の概略の平面図、図3(b)は、正の方向で挿入された表面の壱万円紙幣21の概略の平面図である。
図3(a)に示すように、千円紙幣20には、一方(右手)の短辺A側の端面部に一本の透かしバー201が形成され、短辺Aに平行で短辺Aからの長さがa(1)、他方(左手)の短辺Bからの長さがa(2)の位置にある破線202上に透かし領域の中心203が位置するような透かし模様204を含む透かし領域205が形成されている。
また、図3(b)に示すように、壱万円紙幣21には、一方(右手)の短辺C側の端面部に三本の透かしバー211(破線で囲まれた部分)が形成され、短辺Cに平行で短辺Cからの長さがb(1)、他方(左手)の短辺Dからの長さがb(2)の位置にある破線212上に透かし領域の中心213が位置するような透かし模様214を含む透かし領域215が形成されている。
これらの各金種毎の右手及び左手の各短辺からの長さa(1)、a(2)、b(1)、b(2)等の位置にある透かし領域の中心位置情報は、後述する透かし位置情報参照表に記憶管理されている。
なお、破線202、212及び透かし領域の中心203、213は、説明の便宜上示したものであり、千円紙幣20及び壱万円紙幣21上に画像もしくは模様として形成されているものではない。
このように金種毎に透かしバーの本数と透かし領域の位置が異なる紙幣20、21が紙葉類識別装置1に挿入された場合において、紙幣20、21が挿入された初期段階で紙幣の一方の端面部を撮像し、撮像画像中の透かしバーのパターンの有無と数に基づいて紙幣の挿入方向及び金種を判定する方法について説明する。
図4は、挿入された紙幣の一方の端面部を撮像するタイミングと撮像して取得した撮像画像を示す図である。
図4においては、説明の便宜上、図3(a)で示した千円紙幣20を挿入した場合を例に説明する。
図4(a)は、紙幣搬送機構8によって紙幣20の一方の端面部が撮像部7の撮像範囲30(一点鎖線で囲まれた部分)に入る位置まで紙幣20を搬送制御した状態を示す側面図であり、図4(b)乃至(e)は、図4(a)で示した搬送位置における紙幣20の正逆、表裏の各挿入方向に対応した紙幣20の平面図及び撮像画像を示す図である。
なお、図4(b)は、紙幣20を表面にして正方向で挿入した場合の平面図及び撮像画像を示す図であり、図4(c)は、紙幣20を裏面にして正方向で挿入した場合の平面図及び撮像画像を示す図、図4(d)は、紙幣20を表面にして逆方向で挿入した場合の平面図及び撮像画像を示す図、図4(e)は、紙幣20を裏面にして逆方向で挿入した場合の平面図及び撮像画像を示す図である。
図4(b)及び(c)に示すように、紙幣20が正の挿入方向で挿入された場合は、紙幣20の短辺Aの端面部が撮像されて撮像画像31、32が取得され、撮像画像31、32には、紙幣20が表裏の何れの面であっても透かしバーのパターン201が一本存在する。
また、図4(d)及び(e)に示すように、紙幣20が逆の挿入方向で挿入された場合は、紙幣20の短辺Bの端面部が撮像されて撮像画像33、34が取得され、撮像画像33、34には、紙幣20の表裏の何れの面であっても透かしバーのパターン201は存在しない。
このことから、先ず最初に、紙幣20が挿入された初期段階で紙幣20の一方の端面部を撮像して取得した撮像画像31乃至34の中に透かしバーのパターン201が存在するか否か判別することで挿入された紙幣20の挿入方向が正逆の何れかであるかを判定することができる。
具体的には、撮像して取得した撮像画像が撮影画像31、32のように透かしバーのパターン201が存在する場合を「正の挿入方向」と判定し、撮像画像33、34のように透かしバーのパターン201が存在しない場合を「逆の挿入方向」と判定する。
また、撮像画像中に透かしバーのパターンを認識し、更に透かしバーのパターンの数を検知することで、挿入された紙幣の金種を判定することができる。
具体的には、撮像画像30、31のように透かしバーのパターン201の画像の存在を認識し、更に透かしバーのパターン201の本数を一本と検知した場合は、挿入された紙幣20が千円紙幣であると判定する。
また、例えば紙幣が挿入された初期段階で紙幣の一方の端面部を撮像して取得した撮像画像中に透かしバーのパターンの数を三本と検知した場合は、挿入された紙幣が壱万円紙幣21であると判定する。
このように、紙幣が挿入された初期段階で挿入された紙幣の一方の端面部を撮像して取得した撮像画像中の透かしバーのパターンの有無と、透かしバーのパターンの数を検知することで挿入された紙幣の正逆の挿入方向及び金種を判定することができる。
次に、紙幣が挿入された初期段階で挿入された紙幣の一方の端面部を撮像するように紙幣を搬送制御し、撮像した紙幣の一方の端面部の撮像画像から挿入された紙幣の挿入方向及び金種を判定した結果に基づいて紙幣の透かし領域を撮像するように紙幣を搬送制御する方法について紙幣20が表で正の方向で挿入された場合を例として説明する。
図5は、挿入された紙幣20の透かし領域を撮像するための搬送制御を示す図である。
図5(a)は、紙幣20が挿入された初期段階で挿入された紙幣20の一方の端面部を撮像した時の紙幣20と撮像範囲との位置関係を示した側面図であり、図5(b)は、図5(a)で示した紙幣20と撮像範囲との位置関係を示した平面図、図5(c)は、紙幣20の一方の端面部を撮像した時の撮像画像、図5(d)は、紙幣20の透かし領域を撮像するために搬送制御された紙幣20と撮像範囲との位置関係を示した側面図、図5(e)は、図5(d)で示した紙幣20と撮像範囲との位置関係を示した平面図、図5(f)は、透かし領域を撮像して取得された特徴画像を示す図である。
図5(a)及び(b)に示すように、挿入された紙幣20は、紙幣20の金種及び挿入方向を判定するために紙幣の一方の端面部を撮像可能とするように紙幣20の短辺Aが撮像部7の撮像範囲30の端fAに達するように搬送制御し、紙幣20の短辺Aと撮像範囲30の端fAとが重なるような位置に紙幣20が搬送された時に紙幣20を撮像して紙幣20の端面部の撮像画像を取得する。
紙幣20の端面部の撮像画像から紙幣20の金種及び挿入方向が判定されると、紙幣20の金種及び挿入方向に基づき図6に示すような透かし位置情報参照表50を参照して紙幣20に形成されている透かし領域の中心位置を特定する。
透かし位置情報参照表50は、図6に示すように、紙幣の種類(金種)欄501と、紙幣の各金種毎の透かし領域の中心位置情報欄から構成され、透かし領域の中心位置情報欄は、紙幣が挿入された方向、正の挿入方向欄502と逆の挿入方向欄503とで構成されている。
この透かし位置情報参照表50によれば、例えば、挿入された紙幣の金種が千円紙幣で挿入された紙幣の挿入方向が正の挿入方向の場合は、透かし位置情報参照表50の金種欄501の「千円紙幣」と、透かし領域の中心位置情報の「正の挿入方向」欄502に対応した「a(1)」を参照することで、挿入された紙幣(千円紙幣)の透かし領域の中心位置が紙幣の短辺Aからa(1)の位置にあることが特定される。
また、例えば、挿入された紙幣が壱万円紙幣で挿入された紙幣の挿入方向が逆の挿入方向の場合は、透かし位置情報参照表50の金種欄501の「壱万円紙幣」と、透かし領域の中心位置情報の「逆の挿入方向」欄503に対応した「b(2)」を参照することで、挿入された紙幣(壱万円紙幣)の透かし領域の中心位置が短辺Dからb(2)の位置にあることが特定される。
図5(c)に示すように、紙幣20の端面部の撮像画像41から紙幣20の金種が「千円紙幣」、挿入方向が「正の挿入方向」と判定され、透かし位置情報参照表50を参照して紙幣20の透かし領域の中心位置が紙幣20の短辺Aからa(1)の位置にあることが特定されると、図5(d)及び(e)に示すように撮像範囲30の中心301が紙幣20の短辺Aからa(1)の位置になるように紙幣20を搬送制御し、撮像範囲30の中心301が紙幣20の短辺Aからa(1)の位置になった時に紙幣20を撮像して紙幣20の透かし領域の特徴画像を取得する。
このように搬送制御することにより図5(f)に示すような特徴画像42が取得される。
撮像部7によって紙幣20の透かし領域が撮像されて特徴画像42が取得されると、特徴画像42は、制御部3の指令に基づきバス11を介して真偽判定部5へ入力され、真偽判定部5が入力された特徴画像42と、メモリ6に記憶管理された紙幣20の特徴画像42に対応した標準画像とを照合して紙幣20の真偽識別処理を行う。
真偽判定部5による紙幣20の真偽識別処理は、例えば、特徴画像42と標準画像とのパターンマッチングによる類似度に基づいて真偽を判定するような公知技術を用いて紙幣20の真偽識別処理を行ってもよい。
以上説明したように、本発明に係わる紙葉類識別装置1は、真偽判定部5で特徴画像42と標準画像とを照合して紙幣20の真偽識別処理に先立って、方向金種判定部4によって特徴画像を取得した紙幣20の金種、正逆の挿入方向が判定されているので、真偽判定部5による特徴画像42と標準画像とのパターンマッチングによる類似度を算出する際の参照とする各金種毎の標準画像及び正逆の挿入方向に対応した標準画像と特徴画像42との照合を行う処理時間を短縮することができる。
図7は、実施例1で示した紙葉類識別装置1とは他の本発明に係わる紙葉類識別方法を適用した紙葉類識別装置100の一例を示す図である。
実施例1においては、装置に挿入された紙幣の一方の端面部を撮像して取得した撮像画像中の透かしバーのパターンの有無及び透かしバーのパターンの数から挿入された紙幣の挿入方向及び金種を判定し、判定結果に基づいて挿入された紙幣の真偽の識別対象となる特徴画像の領域を特定して撮像する例を示した。
実施例2においては、装置に挿入された紙幣の一方の端面部を撮像して取得した撮像画像中の透かしバーのパターンの有無及び透かしバーのパターンの数から挿入された紙幣の挿入方向及び金種を判定するとともに、紙幣の片面(例えば紙幣の表面の一方の端面部)に形成された、例えば、紙幣を傾けるとパール光沢のある半透明な模様が浮かび上がるようなパールインキを検出することで挿入された紙幣の表裏の何れかを判定し、挿入された紙幣の表裏、正逆の挿入方向及び金種の判定結果に基づいて紙幣の特徴画像の領域を特定して撮像する例について説明する。
なお、図7に示した紙葉類識別装置100において、実施例1で示した紙葉類識別装置1と同様な動作及び機能を有する各部については、説明の便宜上、図1に示した紙葉類識別装置1の各部と同一の符号を付す。
図7に示すように、紙葉類識別装置100は、紙葉類識別装置100全体を統括制御する制御部30と、図示せぬ紙幣挿入口から挿入された紙幣22を搬送する紙幣搬送機構8(破線で囲まれた部分)と、紙幣搬送機構8によって搬送されている紙幣22を撮像して撮像画像を取得する撮像部70(一点鎖線で囲まれた部分)と、撮像部70で取得した撮像画像や真券の紙幣の金種毎の標準画像、各種データ及び処理プログラム等を記憶管理するメモリ6と、挿入された紙幣22の真偽の識別判定に先立ち、挿入された紙幣22の表裏、正逆の挿入方向及び金種を判定する方向金種判定部40と、紙幣22の特徴画像の領域を撮像して取得した特徴画像とメモリ6に予め設定登録された金種毎の標準画像とを照合して紙幣22の真偽を判定する真偽判定部5を備えており、各部間のデータや制御信号の授受がバス11を介して行われるように構成されている。
紙幣搬送機構8は、紙幣挿入口から挿入された紙幣22を所望の搬送速度で所望の方向へ搬送するように制御する搬送制御部10と、搬送制御部10の制御によって紙幣22を搬送する例えば搬送ベルト81と搬送ベルト81を支持するローラ82、83を備えている。
また、ローラ82または83は、図示せぬモータにより駆動され、搬送制御部10の制御により所望の回転方向、回転速度及び回転数等でローラ82または83が回転して搬送ベルト81を所望の方向へ所望の搬送速度で所望の搬送距離だけ移動させる。
撮像部70は、発光手段72、76と、受光手段71、74と、A/D変換部73を備えており、発光手段72と受光手段71とは紙葉類識別装置1と同様に、紙幣22を透過した透過光を検出するように紙幣搬送機構8の搬送ベルト81によって搬送されている紙幣22の搬送経路80(図中の実線矢印80)を挟んで互いに対向して配置されている。
また、発光手段76と受光手段74とは、紙幣22に形成されたパールインキを検出するように搬送ベルト81によって搬送されている紙幣22に対して所定の角度で発光手段76から光が紙幣22へ照射され、照射された光が紙幣22の表面で反射する反射光を受光手段74で検出可能なように発光手段76と受光手段74とが互いに所定の角度を保持するように配置されている。
受光手段71は、例えばCCD(=Charge Coupled Device)で構成されたエリアセンサ等の撮像素子であり、受光手段74は、例えばフォトダイオード等である。
発光手段72によって発せられた光が搬送されている紙幣22を透過する透過光、もしくは発光手段76によって発せられた光が搬送されている紙幣22で反射する反射光は、各受光手段71、74で受光され、各受光手段71、74が受光量または、受光した所定波長域における光学的特徴量に応じた電気信号を出力する。
受光手段71、74から出力された電気信号は、A/D変換部73へ入力されて各電気信号に対応したデジタル信号へ変換され出力される。
このように構成された紙葉類識別装置100が挿入された紙幣22の正逆、表裏の挿入方向及び金種を判定し、判定結果に基づいて紙幣22の特徴画像を撮像して取得した紙幣22の特徴画像と予め登録された標準画像とを照合して紙幣22の真偽を判定処理する動作について図8に示したフローチャートを参照しながら説明する。
紙葉類識別装置100の図示せぬ紙幣挿入口から紙幣22が挿入されると(ステップS801)、紙幣22は、紙幣搬送機構8の搬送ベルト81によって所定の搬送速度で撮像部70へ搬送される。
なお、紙葉類識別装置100の紙幣挿入口には、図示せぬ検知センサが配置され、紙幣等が挿入されると検知センサが検知して紙幣等が挿入された旨の信号を制御部30へ出力するように構成されている。
制御部30は、先ず、挿入された紙幣22の挿入初期段階で紙幣22の一方の端面部(紙幣22の搬送方向に対して最前の端面部)を撮像部70の発光手段76及び受光手段74で撮像可能なように紙幣搬送機構8の搬送制御部10へ指令する。
搬送制御部10は、制御部30の指令に基づき紙幣22の端面部が撮像部70の後述する第一撮像範囲78に入る位置まで紙幣22を搬送制御し、撮像部70は、紙幣22の端面部が撮像部70の第一撮像範囲78に入った位置で発光手段76を発光させて紙幣22に対して所定の角度で光を投光し、投光された光が紙幣22で反射した反射光を受光手段74で受光して紙幣22の一方の端面部の所定波長域における光学的特徴を検出する(ステップS802)。
受光手段74で検出された紙幣22の反射光は、反射光の特徴量に応じた電気信号に変換されてA/D変換部73へ入力され、A/D変換部73が入力された電気信号をデジタル値に変換し、変換したデジタル値を制御部30の指令に基づきバス11を介して方向金種判定部40へ入力する。
なお、紙幣22の搬送位置は、紙幣搬送機構8に配設された図示せぬ位置検知センサやローラ82、83の回転方向、回転数等の情報に基づいて検知され算出される。
また、紙幣22を所望の位置へ搬送する場合は、搬送速度を高速にすることで挿入された紙幣22の搬送時間を短縮する。
方向金種判定部40は、入力されたデジタル値に基づいて紙幣22の正逆、表裏の挿入方向及び金種を判定し、方向金種判定部40による判定結果がバス11を介して紙幣搬送機構8の搬送制御部10へ入力される。
具体的には、方向金種判定部40は、入力されたデジタル値から紙幣22の端面部のパールインキの有無を判別し(ステップS803)、パールインキが存在する場合は(ステップS803でYES)、挿入された紙幣22が「表面」で挿入されたと判定する(ステップS804)。
また、撮像画像中にパールインキが存在しない場合は(ステップS803でNO)、挿入された紙幣22が「裏面」で挿入されたと判定する(ステップS805)。
更に紙幣22の端面部の撮像画像中に透かしバーのパターンの有無を判別し(ステップS806)、透かしバーのパターンが存在する場合は(ステップS806でYES)、紙幣22の挿入方向を「正の方向」と判定するとともに(ステップS807)、透かしバーのパターンの数を検知して透かしバーのパターンの数に対応した金種を判定する(ステップS809)。
紙幣22の端面部の撮像画像中に透かしバーのパターンが存在しない場合は(ステップS806でNO)、紙幣22の挿入方向を「逆の方向」と判定する(ステップS808)。
搬送制御部10は、入力された紙幣22の正逆、表裏の挿入方向及び金種の情報に基づいて紙幣22に形成されている透かし領域の位置を特定し、特定した位置に基づいて紙幣22の透かし領域が撮像部70の後述する第二撮像範囲79に収まるように紙幣搬送機構8の搬送制御を行う。
撮像部70は、紙幣搬送機構8によって搬送制御された紙幣22を撮像して紙幣22の透かし領域を含む所定の大きさの特徴画像を取得する(ステップS810)。
なお、紙幣22の透かし領域の撮像は、撮像部70の発光手段72を発光させて紙幣22へ光を投光し、投光した光が紙幣22を透過する透過光を受光手段71で受光して紙幣22の透かし領域の特徴画像を取得する。
受光手段71で検出された紙幣22の透過光は、透過光の量に応じた電気信号に変換されてA/D変換部73へ入力され、A/D変換部73が入力された電気信号をデジタル化された特徴画像に変換し、変換した特徴画像を制御部30の指令に基づきバス11を介して真偽判定部5へ入力する。
紙幣22に形成されている透かし領域の位置の特定は、具体的には、搬送制御部10が紙幣22の挿入方向及び金種の情報に基づいてメモリ6に記憶管理された金種毎の挿入方向に対応した透かし領域の中心位置が記憶管理された透かし位置情報を参照し特定する。
なお、搬送制御部10が紙幣22を紙幣22に形成された透かし領域が撮像部70の第二撮像範囲79に入る位置まで搬送制御する場合は、搬送速度を高速に制御することで紙幣22の搬送時間を短縮し、紙幣22の真偽識別までの全体の処理時間の高速化を図る。
撮像部70で取得された特徴画像は、真偽判定部5に入力され、真偽判定部5が入力された特徴画像とメモリ6に記憶管理された紙幣2の特徴画像に対応する標準画像とを照合して紙幣22の真偽を判定する(ステップS811)。
制御部30は、真偽判定部5の判定結果に基づいて、例えば紙幣22が真券の場合は(ステップS812でYES)、紙幣22を図示せぬ紙幣収納部へ搬送して収納するように搬送制御部10へ指令し、紙幣22が偽券の場合は(ステップS812でNO)、紙幣22を紙幣挿入口へ搬送して返却するように指令する。
搬送制御部10は、制御部30の指令に基づき、紙幣22を所定の方向へ所定の搬送速度で搬送するように紙幣搬送機構8を搬送制御する(ステップS813、ステップS814)。
このように、本発明に係わる紙葉類識別装置100は、紙幣が挿入された初期段階で挿入された紙幣の一方の端面部を撮像して端面部に形成されたパールインキ及び透かしバーのパターンの有無と透かしバーのパターンの数を検知して挿入された紙幣の正逆、表裏の挿入方向及び金種を判定し、判定結果に基づいて挿入された紙幣の透かし領域を撮像するように紙幣の搬送制御を行うように構成されている。
ここで本発明に係わる紙葉類識別装置100で用いられる紙幣の構成について説明する。
図9は、紙葉類識別装置100に挿入される金種毎の紙幣の一例を示す図である。
図9(a)は、正の方向で挿入された表面の千円紙幣の概略の平面図、図9(b)は、正の方向で挿入された裏面の千円紙幣の概略の平面図である。
図9(a)及び(b)に示すように、紙幣22には、一方(右手)の短辺E側の端面部に一本の透かしバー221が形成され、紙幣22の表面の左右の端部には紙幣22を傾けるとパール光沢のある半透明な模様が浮かび上がるようなパールインキ222及び226が形成されている。
また、紙幣22の短辺Eに平行で短辺Eからの長さがc(1)、他方(左手)の短辺Fからの長さがc(2)の位置にある破線227上に透かし領域の中心223が位置するような透かし模様224を含む透かし領域225が形成されている。
紙幣22の右手及び左手の各短辺E、Fからの長さc(1)、c(2)等の位置にある透かし領域の中心位置情報は、実施例1で示した場合と同様に透かし位置情報参照表60(図12参照)に記憶管理されている。
なお、破線227及び透かし領域の中心223は、説明の便宜上示したものであり、紙幣22上に画像もしくは模様として形成されているものではない。
このように紙幣の表面にパールインキが形成され、金種毎に透かしバーの本数と透かし領域の位置が異なる紙幣が紙葉類識別装置100に挿入された場合において、挿入された紙幣の一方の端面部を撮像して端面部に形成されたパールインキ及び透かしバーの有無と透かしバーの数に基づいて紙幣の正逆、表裏の挿入方向及び金種を判定する方法について説明する。
なお、図9において、説明の便宜上、千円紙幣の例を示したが、例えば、千円、壱万円等の紙幣の種類に応じてそれぞれ異なる数の透かしバーが各紙幣の一方の端面部に形成され、各紙幣の表面の左右の端部には紙幣を傾けるとパール光沢のある半透明な模様が浮かび上がるようなパールインキが形成されているものとする。
このように金種毎に透かしバーの本数と透かし領域の位置が異なり、紙幣の表面の端部にパールインキが形成された紙幣が紙葉類識別装置100に挿入された場合において、挿入された紙幣の一方の端面部を撮像して端面部に形成されたパールインキ及び透かしバーの有無と数に基づいて紙幣の挿入方向、表裏及び金種を判定する方法について説明する。
図10は、挿入された紙幣の一方の端面部を撮像するタイミングと撮像して取得した撮像画像を示す図である。
図10においては、説明の便宜上、図9で示した千円紙幣22を挿入した場合を例に説明する。
図10(a)は、紙幣搬送機構8によって紙幣22の一方の端面部が撮像部70の発光手段76及び受光手段74で構成される第一撮像範囲78に入る位置まで紙幣22を搬送制御した状態を示す側面図であり、図10(b)乃至(e)は、図10(a)で示した搬送位置における紙幣22の正逆、表裏の各挿入方向に対応した紙幣22の平面図及び撮像画像を示す図である。
なお、図10(b)は、紙幣22を表面にして正方向で挿入した場合の平面図及び撮像画像を示す図であり、図10(c)は、紙幣22を裏面にして正方向で挿入した場合の平面図及び撮像画像を示す図、図10(d)は、紙幣22を表面にして逆方向で挿入した場合の平面図及び撮像画像を示す図、図10(e)は、紙幣22を裏面にして逆方向で挿入した場合の平面図及び撮像画像を示す図である。
図10(b)及び(c)に示すように、紙幣22が正の挿入方向で挿入された場合は、紙幣22の短辺Eの端面部が撮像されて撮像画像35、36が取得され、撮像画像35、36には、紙幣22が表裏の何れの面であっても透かしバーのパターン221が一本存在する。
更に、紙幣22が表面で正の挿入方向で挿入された場合の撮像画像は、図10(b)に示した撮像画像35のようにパール光沢のある半透明な模様に対応したパールインキ222が存在する。
また、図10(d)及び(e)に示すように、紙幣22が逆の挿入方向で挿入された場合は、紙幣22の短辺Fの端面部が撮像されて撮像画像37、38が取得され、撮像画像37、38には、紙幣22の表裏の何れの面であっても透かしバーのパターン201は存在しない。
更に、紙幣22が表面で逆の挿入方向で挿入された場合の撮像画像は、図10(d)に示した撮像画像37のようにパール光沢のある半透明な模様に対応したパールインキ222が存在する。
このことから、紙幣が挿入された初期段階で、挿入された紙幣22の一方の端面部を撮像して取得した撮像画像35乃至38の中にパールインキ222及び透かしバーのパターン221が存在するか否か判別することで挿入された紙幣22の正逆及び表裏の挿入方向を判定することができる。
具体的には、撮像して取得した撮像画像が撮影画像35のように透かしバーのパターン221とパールインキ222とが存在する場合を「表面」で「正の挿入方向」で挿入された紙幣22と判定し、撮影画像36のように透かしバーのパターン221は存在するがパールインキ222が存在しない場合を「裏面」で「正の挿入方向」で挿入された紙幣22と判定する。
また、撮影画像37のように透かしバーのパターン221は存在しないがパールインキ222が存在する場合を「表面」で「逆の挿入方向」で挿入された紙幣22と判定し、撮影画像38のように透かしバーのパターン221もパールインキ222も存在しない場合を「裏面」で「逆の挿入方向」で挿入された紙幣22と判定する。
撮像画像中に透かしバーのパターンを検知し、更に透かしバーのパターンの数を検知することで、挿入された紙幣22の金種を判定することができる。
具体的には、撮像画像35、36のように透かしバーのパターン221の存在を検知し、更に透かしバーのパターン221の本数を一本と検知した場合は、挿入された紙幣22が千円紙幣であると判定する。
このように、挿入された紙幣の一方の端面部を撮像して取得した撮像画像中のパールインキ及び透かしバーのパターンの有無と、透かしバーのパターンの数を検知することで挿入された紙幣の正逆、表裏の挿入方向及び金種を判定することができる。
次に、紙幣が挿入された初期段階で挿入された紙幣の一方の端面部を撮像するように紙幣を搬送し、撮像した紙幣の一方の端面部の撮像画像から挿入された紙幣の挿入方向及び金種を判定した結果に基づいて挿入された紙幣の透かし領域を撮像するように紙幣を搬送制御する方法について説明する。
図11は、挿入された紙幣の透かし領域を撮像するための搬送制御を示す図である。
図11(a)は、紙幣の一方の端面部を撮像した時の紙幣と第一撮像範囲78との位置関係を示した側面図であり、図11(b)は、図11(a)で示した紙幣と第一撮像範囲78との位置関係を示した平面図、図11(c)は、紙幣の一方の端面部を撮像した時の撮像画像、図11(d)は、紙幣の透かし領域を撮像するために搬送制御された紙幣と第二撮像範囲79との位置関係を示した側面図、図11(e)は、図11(d)で示した紙幣と第二撮像範囲79との位置関係を示した平面図、図11(f)は、透かし領域を撮像して取得された特徴画像を示す図である。
なお、図11においては、紙幣22が表で正の方向で挿入された場合を例として示してある。
図11(a)及び(b)に示すように、紙幣搬送機構8は、挿入された紙幣22の正逆、表裏の挿入方向及び金種を判定するために紙幣22の一方の端面部を発光手段76と受光手段74とで撮像可能とするように紙幣22の短辺Eが撮像部70の第一撮像範囲78の端fEに達するように搬送制御し、撮像部70は、紙幣22の短辺Eと第一撮像範囲78の端fEとが重なるような位置に紙幣22が搬送された時に発光手段76を発光させて所定の角度で紙幣22へ光を投光し、投光された光が紙幣22の表面で反射した反射光を受光手段74で受光して図11(c)に示すような紙幣22の端面部の撮像画像43を取得する。
紙幣22の端面部の撮像画像43から紙幣22の正逆、表裏の挿入方向及び金種が判定されると、紙幣22の金種及び挿入方向に基づき図12に示すような透かし位置情報参照表60を参照して紙幣22に形成されている透かし領域の中心位置を特定する。
透かし位置情報参照表60は、図12に示すように、紙幣の種類(金種)欄601と、紙幣の各金種毎の透かし領域の中心位置情報欄から構成され、透かし領域の中心位置情報欄は、紙幣が挿入された方向、正の挿入方向欄602と逆の挿入方向欄603とで構成されている。
この透かし位置情報参照表60によれば、例えば、挿入された紙幣の金種が千円紙幣で、挿入された紙幣の挿入方向が正の挿入方向の場合は、透かし位置情報参照表60の金種欄601の「千円紙幣」と、透かし領域の中心位置情報の「正の挿入方向」欄602に対応した「c(1)」を参照することで、挿入された紙幣22(千円紙幣)の透かし領域の中心位置が紙幣の短辺Eからc(1)の位置にあることが特定される。
また、例えば、挿入された紙幣の金種が千円紙幣で、挿入された紙幣の挿入方向が逆の挿入方向の場合は、透かし位置情報参照表60の金種欄601の「千円紙幣」と、透かし領域の中心位置情報の「逆の挿入方向」欄603に対応した「c(2)」を参照することで、挿入された紙幣22(千円紙幣)の透かし領域の中心位置が紙幣の短辺Fからc(2)の位置にあることが特定される。
図11(c)に示すように、紙幣22の端面部の撮像画像43から紙幣22の金種が「千円紙幣」、挿入方向が「正の挿入方向」と判定され、透かし位置情報参照表60を参照して紙幣22の透かし領域の中心位置が紙幣22の短辺Eからc(1)の位置にあることが特定されると、図11(d)及び(e)に示すように第二撮像範囲79の中心223が紙幣22の短辺Eからc(1)の位置になるように紙幣22を搬送制御し、第二撮像範囲79の中心223が紙幣22の短辺Eからc(1)の位置になった時に紙幣22を撮像して紙幣22の透かし領域の特徴画像を取得する。
このように搬送制御することにより図11(f)に示すような紙幣22の特徴画像44が取得される。
撮像部70によって紙幣22の特徴画像44が取得されると、特徴画像44は、制御部30の指令に基づきバス11を介して真偽判定部5へ入力され、真偽判定部5が入力された特徴画像44と、メモリ6に記憶管理された紙幣22の特徴画像44に対応した標準画像とを照合して紙幣22の真偽識別処理を行う。
以上説明したように、本発明に係わる紙葉類識別装置100は、真偽判定部5で特徴画像44と標準画像とを照合して紙幣22の真偽識別処理に先立って、方向金種判定部40によって特徴画像を取得した紙幣22の表裏、正逆の挿入方向及び金種が判定されているので、真偽判定部5による特徴画像44と標準画像とのパターンマッチングによる類似度を算出する際の参照とする各金種毎の標準画像及び表裏、正逆の挿入方向に対応した標準画像と特徴画像44との照合を行う処理時間を短縮することができる。
図13は、実施例2で示した紙葉類識別装置100とは他の本発明に係わる紙葉類識別方法を適用した紙葉類識別装置101の一例を示す図である。
紙葉類識別装置101は、図13に示すように、紙幣22に形成された、例えば、紙幣22を傾けるとパール光沢のある半透明な模様が浮かび上がるようなパールインキの検出を紙幣22の搬送経路80(図中の実線矢印80)を挟んで両側で検出できるように構成したものであり、実施例2で示した紙葉類識別装置100の構成に発光手段761と受光手段741とを付加した構成としたものである。
具体的には、紙葉類識別装置101の撮像部700が発光手段72、76、761と、受光手段71、74、741と、A/D変換部73を備えており、発光手段72と受光手段71とは紙葉類識別装置100と同様に、紙幣22を透過した透過光を検出するように紙幣搬送機構8の搬送ベルト81によって搬送されている紙幣22の搬送経路80(図中の実線矢印80)を挟んで互いに対向して配置されている。
また、発光手段76と受光手段74とは紙葉類識別装置100と同様に、紙幣搬送機構8の搬送ベルト81によって搬送されている紙幣22の搬送経路80(図中の実線矢印80)を挟んで紙幣22の上面(搬送経路80上の紙幣22の上側の面)に対して所定の角度で発光手段76により投光された光が紙幣22上面で反射した反射光を受光手段74で検出できるように配置され、発光手段761と受光手段741とは紙幣22の下面(搬送経路80上の紙幣22の下側の面)に対して所定の角度で発光手段761により投光された光が紙幣22下面で反射した反射光を受光手段741で検出できるように配置されている。
なお、図中の受光手段741で受光した所定波長域における光学的特徴量に応じた電気信号は、A/D変換部73へ入力される。
このような構成することで、紙葉類識別装置101は、紙幣22に形成されたパールインキの検出を紙幣22の搬送経路80を挟んで両側で検出できるので、挿入された紙幣22が表裏の何れの面で挿入されたかを正確に検出することができる。
図14は、実施例3で示した紙葉類識別装置101とは他の本発明に係わる紙葉類識別方法を適用した紙葉類識別装置102の一例を示す図である。
紙葉類識別装置102は、図14に示すように、紙幣22に形成された透かしバーと、パールインキと、透かし領域をひとつの受光手段71で検出するように構成したものである。
具体的には、紙葉類識別装置102の撮像部701が発光手段72、762と、受光手段71と、A/D変換部73を備えており、発光手段72と受光手段71とは紙葉類識別装置101と同様に、紙幣22を透過した透過光を検出するように紙幣搬送機構8の搬送ベルト81によって搬送されている紙幣22の搬送経路80(図中の実線矢印80)を挟んで互いに対向して配置されている。
また、発光手段762と受光手段71とは紙幣搬送機構8の搬送ベルト81によって搬送されている紙幣22に対して所定の角度で発光手段762により投光された光が紙幣22で反射した反射光を受光手段71で検出できるように配置されている。
図14に示すように、紙葉類識別装置102で紙幣22に形成されたパールインキを検出する場合は、発光手段762の投光による紙幣22の反射光を受光手段71で受光し、紙幣22に形成された透かし領域等を検出する場合は、発光手段72の投光による紙幣22の透過光を受光手段71で受光するように各発光手段72、722を切り替えることでひとつの受光手段71で紙幣22を透過した透過光または紙幣22で反射した反射光を検出することができる。
このような構成することで、紙幣22に形成された透かしバーと、パールインキと、透かし領域をひとつの受光手段71で検出でき、紙葉類識別装置102の小型化が図れるとともに製造コストを抑えることが可能となる。
なお、以上説明した実施例1乃至実施例4においては、紙幣の特徴画像を紙幣に形成された透かし模様を含む透かし領域の画像とし、特徴画像を透過型光センサで撮像するような例を示したが、特徴画像は、紙幣の真偽識別が可能で紙幣に形成されている画像であればよく、反射型光センサを用いて紙幣に形成された特徴画像を取得するような構成としてもよい。
また、挿入された紙幣の表裏、正逆の挿入方向及び金種を判定する方法として紙幣端部に形成された透かしバーを挿入初期段階で撮像し、透かしバーのパターンの有無、数等に基づいて判定するような例を示したが、紙幣の挿入方向及び金種が判定可能な紙幣に形成された画像であれば、当該画像を紙幣の挿入初期段階で撮像して取得し、紙幣の挿入方向及び金種を判定するような構成としてもよい。
また、実施例2乃至実施例4において、紙幣の表裏の判定を紙幣の一面の端部に形成され、紙幣を傾けると模様が浮かび上がるようなパールインキとしたが、紙幣の表裏の判定が可能な画像であれば当該画像を紙幣挿入初期段階で取得し、紙幣の表裏を判定するような構成としてもよい。
また、挿入された紙幣の挿入初期段階で紙幣の金種及び挿入方向を判定する他の例として挿入された紙幣の縦、横等の幅を検出して金種を判定し、紙幣の特定箇所の光の透過率または反射率等に基づいて紙幣の表裏、正逆の挿入方向を判定するような構成としてもよい。
また、実際の紙幣の識別処理にあたっては、本発明に係わる紙葉類識別方法のみで紙幣の種類および真偽を識別するのではなく、多の識別要因との組み合わせで最終的な識別結論を下しても良い。
本発明に係わる紙葉類識別装置1の構成例を示した概略的な構成図
紙葉類識別装置1の処理動作を示すフローチャート
紙葉類識別装置1に挿入される金種毎の紙幣の一例を示す図
紙幣の端面部を撮像するタイミングと撮像して取得した撮像画像を示す図
紙幣の透かし領域を撮像するために紙葉類識別装置1が紙幣を搬送制御する方法を示す図
透かし位置情報参照表50の構成図
紙葉類識別装置1とは他の構成例の紙葉類識別装置100の概略的な構成図
紙葉類識別装置100の処理動作を示すフローチャート
紙葉類識別装置100に挿入される紙幣の一例を示す図
紙幣の端面部を撮像するタイミングと撮像して取得した撮像画像を示す図
紙幣の透かし領域を撮像するために紙葉類識別装置100が紙幣を搬送制御する方法を示す図
透かし位置情報参照表60の構成図
紙葉類識別装置100とは他の構成例の紙葉類識別装置101の概略的な構成図
紙葉類識別装置101とは他の構成例の紙葉類識別装置102の概略的な構成図
符号の説明
1、100、101、102 紙葉類識別装置
2、20、21、22 紙幣
3、30 制御部
4、40 方向金種判定部
5 真偽判定部
6 メモリ
7、70 撮像部
8 紙幣搬送機構
10 搬送制御部
11 バス
71、74、741 受光手段
72、76、761、762 発光手段
73 A/D変換部
81 搬送ベルト
82、83 ローラ