JP2005345308A - クリープひずみ速度を利用した金属材料の余寿命評価方法 - Google Patents

クリープひずみ速度を利用した金属材料の余寿命評価方法 Download PDF

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【課題】クリープひずみ速度を利用した金属材料の余寿命評価方法において、クリープひずみ速度を正確に算出し、余寿命評価精度を向上させること。
【解決手段】クリープひずみ速度を利用した金属材料の余寿命評価方法において、クリープひずみ速度は、転位の易動度と有効応力と運動転位密度との積により算出されるものであり、転位の易動度は、クリープ試験中に応力を急変させる応力急変試験において応力の急減時に生じる負の伸び挙動から予め求め、有効応力は、応力急変試験における応力急増前後のクリープひずみ速度の変化と急変応力との関係から予め求め、運動転位密度は、応力急変試験における応力急増前後のクリープひずみ速度の変化と急変応力との関係及び応力の急減時に生じる負の伸び挙動から求めた転位の易動度から求め、さらにこの運動転位密度をその時点の析出物分布と定量的に予め関連付け、評価部の析出物分布から求める。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属材料のクリープ余寿命評価方法に関し、より詳しくは、クリープひずみ速度を利用した金属材料の余寿命評価方法に関する。
従来より、クリープ余寿命評価方法としては、組織変化や硬さ変化等をもとにした評価方法が提案され、実用化されているが、これらの評価因子は寿命消費率の前半に大きく変化するが、寿命消費率の後半に達した場合、変化が少なく寿命消費率後半の余寿命評価精度が低いという問題点がある(入門講座「発電設備の予防保全と余寿命診断」:火力原子力発電Vol.51 No.523 P104)。
また、クリープひずみはクリープ現象そのものであり、特に寿命消費率の後半に変化が著しいため余寿命評価精度を向上させる指標として有効であるが、クリープひずみの測定では初期寸法データが必要であるのに対し、初期寸法データが得られない等の問題がある。
さらに、クリープ余寿命評価方法としては、クリープ破断試験による余寿命評価が最も精度の高い手法と考えられているが、試験には数千時間を要し、余寿命の評価結果を出すのに時間がかかる。また、クリープ破断試験は実機温度、応力条件を加速した条件で実施されるため、試験応力、温度の実機応力、温度への外挿や、温度−時間パラメータによる実機温度へのクリープ破断時間の換算において、外挿の仕方や換算係数の値が実機破断時間の推定に及ぼす影響が大きく、推定値の信頼性に問題があった。
これに対して、本願出願人は、特許文献1において、クリープひずみ速度に着目し、寿命消費率の後半においても余寿命評価精度の高い、金属材料の余寿命評価方法を提案した。
この特許文献1で提案した金属材料の余寿命評価方法は、予め、寿命消費率φとクリープひずみεの関係を求め、寿命消費率φと寿命消費率φの変化に対するクリープひずみεの変化率(dε/dφ)との関係のマスターカーブを求めておき、評価材の評価時点でのクリープひずみ速度(dε/dt)を、評価材の使用温度、使用応力、組織及び硬さの情報から算出し、この算出したクリープひずみ速度(dε/dt)から、前記マスターカーブに載るような全寿命を求め、評価時点での余寿命を求めることを特徴とするものである。
特開2003−4626号公報
本発明は、上記特許文献1の金属材料の余寿命評価方法を発展させたもので、その課題は、クリープひずみ速度を正確に算出し、余寿命評価精度を向上させることにある。
本発明は、予め、評価材のクリープ試験により寿命消費率φとクリープひずみεの関係を求め、寿命消費率φと寿命消費率φの変化に対するクリープひずみεの変化率(dε/dφ)との関係のマスターカーブを求めておき、評価材の評価時点でのクリープひずみ速度(dε/dt)から、前記マスターカーブに載るような全寿命を求め、評価時点での余寿命を求めるクリープひずみ速度を利用した金属材料の余寿命評価方法において、クリープひずみ速度は、転位の易動度と有効応力と運動転位密度との積により算出されるものであり、転位の易動度は、クリープ試験中に応力を急変させる応力急変試験において応力の急減時に生じる負の伸び挙動から予め求め、有効応力は、応力急変試験における応力急増前後のクリープひずみ速度の変化と急変応力との関係から予め求め、運動転位密度は、応力急変試験における応力急増前後のクリープひずみ速度の変化と急変応力との関係及び応力の急減時に生じる負の伸び挙動から求めた転位の易動度から求め、さらにこの運動転位密度をその時点の析出物分布と定量的に予め関連付け、評価部の析出物分布から求めることを特徴とする。
ここで、寿命消費率φの変化に対するクリープひずみεの変化率dε/dφは、dε/dφ=dε/ (dt /t) =t(dε/dt ) となり、全寿命(t)とクリープひずみ速度(dε/dt )の積である。
本発明では、評価時点でのクリープひずみ速度dε/dtを算出し、その評価時点までの使用時間tがわかれば、寿命消費率φと寿命消費率の変化に対するクリープひずみの変化率dε/dφとの関係のマスターカーブを利用し、そのマスターカーブに載る評価材の全寿命を求め、評価時点での寿命消費率と余寿命を得ることができる。
また、本発明では、クリープひずみ速度を応力急変試験により得られたデータに基づき算出するので、クリープひずみ速度を正確に算出することができ、余寿命評価精度を向上させることができる。
まず、寿命消費率φとクリープひずみεの関係を求める。この関係は、例えば、改良型9Cr-1Mo鋼(ASME SA213 T91)の単軸引張りクリープ試験を実機で使用され得る応力10kg/mm以下の応力の範囲で行った結果、応力、温度に関わらず一致することから、予め寿命消費率φとクリープひずみεの関係を求めておく。この関係の一例を図1に示す。
なお、実機では評価材が内圧の負荷された筒状であることが多いため、この場合、単軸クリープ試験より得られた寿命消費率−クリープひずみの曲線を公知の理論式(例えば、平、大谷:材料の高温強度論 第142頁1980年オーム社発行)を用いて寿命消費率と外径の変化の関係に変換したものを用いるか、実際に内圧クリープ試験を行い寿命消費率φとクリープひずみεの関係を求めることもできる。
次に、上述の寿命消費率φとクリープひずみεの関係を用いて、寿命消費率φと寿命消費率φの変化に対するクリープひずみεの変化率dε/dφの関係を求める。この関係は、例えば、改良型9Cr-1Mo鋼(ASME SA213 T91)の単軸引張りクリープ試験を実機で使用され得る応力10kg/mm以下の応力の範囲で行った結果、応力、温度に係らず一致することから、予め寿命消費率φと寿命消費率φの変化に対するクリープひずみεの変化率dε/dφとの関係のマスターカーブ(以下「φ−dε/dφマスターカーブ」と呼ぶ。)を求めておく。このφ−dε/dφマスターカーブの一例を図2に示す。
ここで、寿命消費率φの変化に対するクリープひずみεの変化率dε/dφは、上述の通り、dε/dφ=dε/ (dt /t) =t (dε/dt )となり、全寿命tとクリープひずみ速度dε/dt の積で表される。
φ−dε/dφマスターカーブを予め求めておくことにより、クリープひずみ速度dε/dtがわかれば、このクリープひずみ速度dε/dtとそのクリープひずみ速度dε/dtと全寿命tの積(t×dε/dt)が、φ−dε/dφマスターカーブ(図2)に載るような全寿命tをトライアンドエラーで求めることができる。例えば、評価時点tを10万時間、クリープひずみ速度を10-6/hとすると、φ−dε/dφマスターカーブに載る全寿命tが例えば20万時間となった。すなわち、t(10万時間)時点での寿命消費率はt/t (=10万時間/20万時間=0.5)となり、t時点での余寿命はそれぞれt‐t(=20万時間−10万時間=10万時間)となる。
このように、クリープひずみ速度dε/dtがわかれば、φ−dε/dφマスターカーブにより、余寿命を求めることができる。
本発明では、クリープひずみ速度dε/dtを応力急変試験により得られたデータに基づき算出する。ここで、クリープひずみ速度dε/dtは、(1)転位の易動度と(2)有効応力(負荷応力−内部応力)と(3)運動転位密度との積により算出されるので、以下、それぞれの求め方を説明する。
(1)転位の易動度
クリープ試験中に応力を急変させる応力急変試験において、例えば応力を5%急増させ、そのときの時間と伸びを0.1μmの精度で計測し、時間に対する伸びの変化が一定となった時点で、急増させた5%応力を取り除く。その急減時に生じる負の伸び挙動(図3参照)から転位の易動度を推定する。これは金属材料中の析出物に引っかかって停止していた転位が5%急増応力によってわずかに張り出し、急減する時に元に戻る挙動に着目したものである。転位にはゴムのように線張力が存在し、転位が負荷応力によって受ける力に応じてその曲率半径が変化する。5%急増応力によってある曲率半径に変化した転位は応力を元に急減することで、元の曲率半径に戻ろうとする。その戻る過程において転位はその運動速度に比例した抵抗力を受ける。転位が負荷応力によって受ける力と線張力による力との差分が転位の運動に伴う抵抗力と釣り合った状態で転位が元の曲率半径に戻るとした場合、転位の易動度Bを(B=v/τ,vは転位の運動速度,τ:転位に働くせん断応力)適当に与えることで変形挙動を計算することが可能であり、実際の変形挙動と一致するのに必要な転位の易動度Bを求めることができる。詳細には以下の通りである。
以下の説明におけるクリープ試験の供試材は改良型9Cr-1Mo鋼(ASME SA213 T91)と2.25Cr-1Mo鋼、条件は温度640℃〜700℃、応力39Mpa〜98MPaである。
大きな遷移(図3の○印部分)が現れる改良型9Cr-1Mo鋼はマルテンサイト組織であり、初期転位密度が高く、析出物の分布状態やマルテンサイトラス幅から推察すると、試験応力σと同等となるオローワン応力σoror=MGb/λcr,M:テーラー因子,G:剛性率, b:バーガースベクトルの大きさ)が発生する障害間隔λcr以下の障害間隔が多数存在し、それらに引っかかり張り出して停止している転位が多く存在するものと考えられる。また、2.25Cr-1Mo鋼においてはフェライト+ベイナイト組織であることから初期転位密度は高くないが、微細な析出物が分散しており、障害間隔λcr以下の障害間隔が多く存在し、それらに引っかかり張り出して停止している転位が少なからず存在すると考えられる。
図4に示すように、せん断応力τを受けている転位が障害間隔λに運動を阻止され、曲率半径ρで張り出した状態で停止している場合を考える。この場合、障害間隔λに運動を阻止された転位に働く力はτbλであり、張り出しによる転位の線張力Tの応力方向成分である2Tsinθと釣り合っている。ここで、転位の線張力TにT=Gb/2(G:剛性率, b:バーガースベクトルの大きさ)を用い、図4に示すようにsinθ=λ/2ρであるから、曲率半径ρはρ=Gb/2τとなる。ここで、応力を急増すると曲率半径はρ= Gb /2(τ+Δτ)となるまで張り出し運動を開始し、2ρ<λ≦2ρの障害間隔で張り出しを開始した転位は障害を突破し、λ≦2ρの障害間隔で張り出しを開始した。
転位は曲率半径ρとなった時点で停止する。λ≦2ρの障害間隔の転位は応力急減直後に応力と釣り合うように曲率半径ρからρに粘性的に負の運動をする。このことより応力急変直後に遷移域があると考えた。
そこで、応力急減時の遷移挙動に着目し、以上の考察に基づき、遷移挙動を解析した。
転位が応力急減後に曲率半径ρからρに変化するときに掃く面積 ΔAは図4から次式で表される。
ΔA=ρ θ−ρ θ−(λ/2 )(ρcosθ−ρcosθ) …(1)
図4に示したように応力急増による遷移完了後に応力を急減すると、障害間隔λの部分にピン止めされた転位はρ= Gb /2(τ+Δτ)から曲率半径ρ= Gb /2τに戻る際、粘性的な挙動をすると考えられる。図4から応力急減前はせん断応力(τ+Δτ)により転位に働く力と転位の線張力の応力方向成分は次式の関係で釣り合っている。
2 T sin θ= (τ+Δτ)bλ …(2)
応力急減直後は転位の線張力の応力方向成分はせん断応力τにより転位に働く力を上回り、粘性的に負の方向へ運動を始める。このとき運動速度をv(vは負)とすると次式の関係を保ったまま運動するものと考えられる。
2 T sin θ(t)= τbλ - (v(t)/ B)bλ …(3)
ここで、Bは転位の易動度である。さらにsinθ=λ/2ρの関係から上式は、
T /ρ(t)= τb - (v(t) / B)b …(4)
となる。ここで、ρ(t),v(t)はtの関数であることを表している。
図4に示すように転位の張り出しの頂点までの距離を障害物間の中央位置を原点にとりyとすると、yは次式のようになり、曲率半径ρの関数として表される。
y=ρ(1−cosθ)=ρ−(ρ−λ/4)1/2 …(5)
ここで、Δtの時間で曲率半径ρがΔρ変化し、yがΔyだけ変化した場合を考えると、次式の関係が近似的に成立する。
TΔρ/(ρ(ρ+Δρ))=(Δy/Δt/ B)b …(6)
この関係から、ある転位の易動度Bの値を与えると曲率半径ρからρになるまでの時間をΔρの変化に要する時間Δtの積算として計算することが可能である。また、Δρに伴う転位が掃く面積とも対応付けられる。このようにして、10%の応力急増によっても突破できない最大の障害間隔λcrに曲率半径ρ(ρ= MGb /2(σ+Δσ))で張り出した転位(この時ρcr /2)が応力急減後の応力σで釣り合う曲率半径 ρ(ρ= MGb /2σ)に戻るまでの時間と転位の掃いた面積を積算した結果を実測データにフィッティングさせた例を図5に示す。実測データは負の遷移が完了した後のクリープひずみ速度を応力急減直後まで外挿し、差し引いたものである。フィッティングさせることで、それに見合う転位の易動度Bと障害間隔λに運動を阻止された転位密度が得られる。この場合、転位の易動度はB=4.7×10-16 m/s/Paであり,障害間隔λcrにピン止めされた転位密度は3.1×1012/mとなった。
以上の手順で転位の易動度を求めた。クリープ試験の初期から加速期までこの手順で転位の易動度を求めたところ、転位の易動度は大きく変化せず、ほぼ一定とみなせた。また試験温度とこの手順で求めた転位の易動度の関係には図6に示す関係が得られた。これより実際の評価部の使用温度における転位の易動度の推定が可能である。
(2)有効応力(負荷応力−内部応力)
クリープ試験中に応力を1%,2%,5%,10%と変化させる応力急変試験の応力を急変させる前後において内部応力と運動転位密度がほとんど変化しない場合,運動している転位に有効に働く応力が急変応力分大きくなることが応力急変前後のクリープひずみ速度の変化の主因であり、応力急増前後のクリープひずみ速度の変化と急変応力との関係から内部応力を求めることができる。そして、負荷応力から内部応力を減じることにより、有効応力が求まる。詳細は以下の通りである。
応力急変時に顕著な瞬間塑性ひずみが観測されず、応力急変時の遷移挙動は転位が粘性的な挙動を示すと考えられる場合、運動転位の平均速度は有効応力σeに比例し、ひずみ速度dε/dtはオローワンの式を基に次式で表すことが可能である。
dε/dt=(2/M)ρ b Bσe … (7)
有効応力σeは負荷応力から内部応力を差し引いたものである。そこで,応力急変前のひずみ速度dε/dtは次式のように表すことができる。
dε/dt=(2/M)ρ b B (σ-σi) …(8)
ここで,σiは運動転位に働く内部応力である。
応力急増直後の遷移域では、応力急増前に運動していた転位の他に、急増前には負荷応力と釣り合い張り出して停止していたλcr(λcr =MGb/σ)より小さい障害間隔にピン止めされた転位が活動するが、遷移完了後は安定したひずみ速度となっており,その活動は完了しているものと考えられる。この応力急増後の遷移完了時点でのひずみ速度dε/dtは次式で表される。
dε/dt=(2/M)ρ’b B (σ+Δσ-σi’) …(9)
ここで、ρ’,σi’はそれぞれ応力急増時の遷移完了後の運動転位密度と運動転位の内部応力である。
運動転位密度と運動転位の内部応力は急増前と遷移完了後とでは変化していると考えられるが、転位が粘性的な挙動を示すことからΔσが微小であれば運動転位密度や内部応力の変化はわずかと考え、dε/dtとdε/dtの変化量をΔ(dε/dt)として、式(8)と(9)から運動転位の内部応力σiを次式により求めた。
σi=σ−(dε/dt)/(Δ(dε/dt)/Δσ)Δσ→0 … (10)
ここで、応力急変直前の内部応力を求めるために、(Δ(dε/dt)/Δσ)Δσ→0の値として、応力急変試験のΔσとΔ(dε/dt)の関係(図7参照)からΔσが零での接線の傾きを用いた。
クリープ試験の初期から加速期までこの手順で運動転位に働く内部応力の負荷応力に対する割合を求めたところ、この割合は大きく変化せず、ほぼ一定とみなせた。これより実際の評価部の負荷応力における有効応力の推定が可能である。
(3)運動転位密度
運動転位密度ρは式(8)と(10)より次式で求められる。
ρ= (Δ(dε/dt)/Δσ) Δσ→0(M/2bB) …(11)
転位の易動度Bの値には上記(1)に述べた手順で各試験条件の平均値を用いた。
クリープ試験の初期から加速期までこの手順で運動転位密度を求めたところ、運動転位密度はクリープひずみ速度の変化に対応して変化していることが判明した。また、運動転位密度は転位の運動の障害となる析出物分布が変化することと相関があると考えた。高温においては転位と析出物が反発型の相互作用を有する場合、転位は析出物を上昇運動して乗り越えることが可能であるが、供試材である改良型9Cr-1Mo鋼(ASME SA213 T91)と2.25Cr-1Mo鋼では転位と析出物の相互作用が吸引型であり、転位の上昇運動による析出物の乗り越えは起こらないと考えられ、転位が析出物間を通過できるかはオローワン応力σoror=MGb/λcr,M:テーラー因子,G:剛性率, b:バーガースベクトルの大きさ)が発生する析出物間隔λcr(この場合σor=負荷応力)より大きいの析出物間隔がクリープ変形とともに増加していくことと関係付けられると考えた。
析出物間隔としては平均粒子間隔を定量化する方法があるが、ここでは不均一な析出物分布を考慮して、以下のような析出物分布の定量化例を示す。
ある粒子に着目した場合の粒子間隔としては、最近接粒子間距離が一般的であるが、ここでは転位が粒子間距離の大きい部分を通過することを考慮して、図8に示すように、ある粒子間距離を直径とした円内に他の析出物が存在しない場合に、その粒子間距離を定量化した。これは転位が粒子間を通過する際に半円状に張り出すことを考慮したものである。
図9は式(12)で定義する析出物分布を基に求めた転位の有効運動面積分率Aeffと応力急変試験で求めた運動転位密度との関係を示したものである。
Figure 2005345308
この例のように、予め、応力急変試験で求めた運動転位密度とその時点での析出物分布とを定量的に関係付けておくことで、評価部材の析出物分布とオローワン応力σoror=MGb/λcr,M:テーラー因子,G:剛性率, b:バーガースベクトルの大きさ,)が発生する析出物間隔λcr(この場合σor=負荷応力)から運動転位密度を推定することができる。
本発明は、火力発電ボイラ高温設備を始めとして、各種の高温設備における使用材のクリープ余寿命評価に好適に利用可能である。
寿命消費率とクリープひずみの関係の一例を示す。 寿命消費率と寿命消費率の変化に対するクリープひずみの変化率との関係のマスターカーブの一例を示す。 応力急変試験における時間と伸びの関係の一例を示す。 せん断応力τを受けている転位が障害間隔λに運動を阻止され曲率半径ρで張り出した状態で停止している状態から、急増応力Δτにより曲率半径ρまで変化する場合の模式図を示す。 10%応力急減時の正味の負の変形挙動と解析値の比較例を示す (改良型9Cr-1Mo鋼, 640℃ 98MPa ε=6.4%)。 温度と転位の易動度の関係の一例を示す。 応力変化Δσとクリープひずみ速度の変化量Δ(dε/dt)の関係の一例を示す。 粒子間距離の定義の一例を示す。 析出物分布を基に求めた転位の有効運動面積分率Aeffと応力急変試験で求めた運動転位密度との関係の一例を示す。

Claims (1)

  1. 予め、評価材のクリープ試験により寿命消費率φとクリープひずみεの関係を求め、寿命消費率φと寿命消費率φの変化に対するクリープひずみεの変化率(dε/dφ)との関係のマスターカーブを求めておき、評価材の評価時点でのクリープひずみ速度(dε/dt)から、前記マスターカーブに載るような全寿命を求め、評価時点での余寿命を求めるクリープひずみ速度を利用した金属材料の余寿命評価方法において、
    クリープひずみ速度は、転位の易動度と有効応力と運動転位密度との積により算出されるものであり、
    転位の易動度は、クリープ試験中に応力を急変させる応力急変試験において応力の急減時に生じる負の伸び挙動から予め求め、
    有効応力は、応力急変試験における応力急増前後のクリープひずみ速度の変化と急変応力との関係から予め求め、
    運動転位密度は、応力急変試験における応力急増前後のクリープひずみ速度の変化と急変応力との関係及び応力の急減時に生じる負の伸び挙動から求めた転位の易動度から求め、さらにこの運動転位密度をその時点の析出物分布と定量的に予め関連付け、評価部の析出物分布から求めることを特徴とするクリープひずみ速度を利用した金属材料の余寿命評価方法。
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