以下、本発明の一実施形態を、図1から図11を参照して説明する。
この実施形態における内燃機関である燃料噴射式エンジン(以下、エンジンと称する)1は、図1に示すように、車両9の前部に設けられたエンジンルーム9a内に、そのクランク軸が車両9の車軸と平行にして搭載されるもので、いわゆる横置きエンジンと呼ばれる型式で車両9に搭載されるものである。このエンジン1は、ガソリンを燃料として、吸気系の圧力、すなわち吸気管圧力を圧力センサ8により検出し、検出した吸気管圧力とエンジン回転数とに基づいて燃料噴射量を設定し、設定した燃料噴射量の燃料を噴射して運転されるものである。エンジン1は、図2に示すように、吸気系2を構成するインテークマニホルド3(図1)及びサージタンク4を有してなる内燃機関本体であるエンジン本体5と、エアクリーナ6と、エアクリーナ6に連通するとともにサージタンク4に連通するスロットルボディ7と、スロットルボディ7の下流の吸気系2例えばサージタンク4に配置される圧力センサ8とを備えている。
車両9は、例えばその前部にエンジンルーム9aを有するもので、エンジンルーム9aの後方に、乗員のための車室9bがある。エンジンルーム9aは、その後部の車室9bとの境界部分に、エアコンやブレーキなどのための配管16やハーネス(図示しない)などがその表面に固定されるダッシュボード9cを備えてなり、そのダッシュボード9cを介して後述する連結部材であるアクセルケーブル10が車室9bに引き込まれている。
アクセルケーブル10は、可撓性を有する管状のアウターケーブル10aと、そのアウターケーブル10a内に摺動移動可能に収められる可撓性を有するインナーケーブル10bとからなる。アクセルケーブル10は、車室9b側の端部が車室9b内に設けられる操作体であるアクセルペダル11に接続され、反対側の端部がスロットルボディ7に接続され、エンジン本体5の上側を通過してダッシュボード9cの方向に向くように配置される。この実施形態のエンジンルーム9aにあっては、ワイパの下端部などを収納するために、ダッシュボード9cの上部9caがわずかにエンジン1特にはエアクリーナ6の空気通路6bに覆い被さるように前側にせり出した形状をしている。また、アクセルケーブル10は、スロットルボディ7に取り付けるために、その一方の端部に、取付のための取付ねじ部を構成する中空雄ねじ部材10cと2個のナット10dとを備えている。
エアクリーナ6は、エンジン本体5の上部にあるシリンダヘッドカバー5aの右側端部に、フィルタ部材を内蔵してなる本体部分6aが取り付けられ、シリンダヘッドカバー5aの上に覆い被さる空気通路6bと、例えば合成樹脂製のホース、ゴムホース、蛇腹などの可撓性の管部材6cとを介してスロットルボディ7と連通するものである。エアクリーナ6には、シリンダヘッド5b内に設けられた外気導入通路を介して本体部分6aの側面部から外気が導入され、外気を濾過した後、空気通路6bを介して塵埃の除去された空気を燃焼室に供給するものである。管部材6cのスロットルボディ7との接続部分は、クランプなどの締め付け部材により外側から締め付けられており、空気通路6bやスロットルボディ7が強い衝撃を被った際には、スロットルボディ7から外れるように構成してある。
このようなエンジン1において、スロットルボディ7は、図4から図8に示すように、吸入空気が入る入口側管体部7aと、入口側管体部7aに連通してスロットルバルブ7bを内蔵するバルブ管体部7cと、バルブ管体部7cを通過した吸入空気が圧力センサ8に向けて出ていく出口側管体部7dと、スロットルバルブ7bを操作するためのアクセルケーブル10が接続される接続部であるスロットルレバー7eとからなる。そして、少なくとも入口側管体部7aとバルブ管体部7cと出口側管体部7dとは、同一素材、例えば合成樹脂により一体成型されてなるものである。このように、スロットルボディ7の入口側管体部7aと出口側管体部7dとを同一素材により一体成型することにより、成型が容易になるとともに、以下に説明するようにして脆弱部を形成することで、スロットルボディ7とは別体で入口側管体部7aに破損を生じさせる部材を必要としないため、部品点数の増加を防止することができ、製造コストの上昇を抑えることができる。入口側管体部7aとバルブ管体部7cと出口側管体部7dとは、その内部形状が基本的に円筒形状をしており、バルブ管体部7cの内径が他の部分に比較して小さくなっている。このようなスロットルボディ7の正面には、アクセルケーブル10を取り付ける例えば板金製の取付部材12が、ボルトにより取り付けられる。なお、この実施形態にあっては、取付部材12はスロットルボディ7とは別体のものであるが、スロットルボディ7と一体に形成されて取り付けられるものであってもよい。
入口側管体部7aは、管部材6cを介してエアクリーナ6に連通するもので、エアクリーナ6で塵埃が除去された空気が吸入空気として流れ込むものである。入口側管体部7aは、バルブ管体部7cとの境界部分の外周面に、入口側管体部7aの強度を出口側管体部7dの強度より低く設定するための脆弱部を構成する環状ノッチ7fを備えている(図4及び図7)。環状ノッチ7fは、スロットルボディ7に衝撃が加わった際に、出口側管体部7dが破損する前に破損するものである。言い換えれば、環状ノッチ7fは、破損することにより、スロットルボディ7に加わった衝撃を吸収し、出口側管体部7dへの伝播を抑制するものである。
この入口側管体部7aに連続して、吸入空気量を制御するスロットルバルブ7bを内蔵するバルブ管体部7cが設けてある。スロットルバルブ7bは、バルブ管体部7cの内径にほぼ等しい外径の円板からなり、バルブ管体部7cに回転可能に取り付けられる回転軸7gに固定してある。回転軸7gは、バルブ管体部7cを横方向に貫通しており、その一方の端部近傍において付勢部材7h例えばコイルスプリングにより付勢されている。回転軸7gは付勢されていることにより、回転軸7gにアクセルケーブル10を介して回転力が加わらない状態ではスロットルバルブ7bは閉成、つまりバルブ管体部7cの有効断面積を最小にする位置に静止するものである。このスロットルバルブ7bの閉成位置を設定するために、入口側管体部7aの外面に、後述するスロットルレバー7eに係合するストップピン7sが位置調整可能に設けてある。また、回転軸7gの一方の端部には、アクセルケーブル10のインナーケーブル10bの端部が着脱可能に取り付けられるスロットルレバー7eが取り付けてある。さらに、回転軸7gの他方の端部は、スロットルバルブ7bの開度を検出するための開度センサ13に機械的に連結される。
出口側管体部7dは、バルブ管体部7cに連続して形成されており、インテークマニホルド3に連通するサージタンク4に連結されるものである。この出口側管体部7dのバルブ管体部7cとは反対側の端部の外側に、取付板部分7kが形成してある。この取付板部分7kには、サージタンク4との連結のために、取付用ボルト14が挿入される取付孔7mが三カ所に設けてある。そして、取付板部分7kには、出口側管体部7dの外壁との間に、補強用のリブ7nが2カ所に形成してある。このリブ7nは、サージタンク4にスロットルボディ7が固定され、スロットルボディ7に衝撃が加わった際に、出口側管体部7dに先立って環状ノッチ7fが破損するようにするためである。つまり、この実施形態では、環状ノッチ7fを入口側管体部7aに設け、かつリブ7nを出口側管体部7dのダッシュボード9cと対向する側に設けることにより、入口側管体部7aの強度と出口側管体部7dの強度とに明確な強度差を設定し、衝撃を受けた場合に確実に環状ノッチ7fが破損するように構成するものである。
スロットルレバー7eは、スロットルボディ7と同様に合成樹脂製のもので、アクセルケーブル10の張引力を回転軸7gに伝達するものである。スロットルレバー7eは、スロットルバルブ7bの回転軸7gに固定される軸取付部7eaと、軸取付部7eaに一体に形成されるケーブル案内部7ebと、軸取付部7eaとケーブル案内部7ebとの間に設けられる結合解消部分7ecと、ケーブル案内部7ebの側面からダッシュボード9cの方向に延出する伝達促進部分7edとを備えている。このような構成において、結合解消部分7ecと伝達促進部分7edとにより、車両9が衝撃を受けた際にスロットルバルブ7bの状態にかかわらずアクセルペダル11をスロットルバルブ7bに対して操作は不能にして、かつ作動自在な状態にさせる作動解放部7ekが構成される。
ケーブル案内部7ebは、扇形状をした板体で、その外周にインナーケーブル10bを案内する案内溝7eeを備えるとともに、インナーケーブル10bの端部を係止する係止孔7efを備えている。案内溝7eeは、その断面形状をV字型に形成してなり、例えば円の約1/3の円弧の長さである。インナーケーブル10bは、着脱可能にケーブル案内部7ebに係止されるものである。
結合解消部分7ecは、衝突時の衝撃力が集中することにより、軸取付部7eaとケーブル案内部7ebとの結合状態を解消するように形成されている。すなわち、結合解消部分7ecは、伝達促進部分7edに衝撃が加わった際に、剪断応力が生じて、軸取付部7eaとケーブル案内部7ebとの間が破損するように構成されており、例えばノッチにより構成される。それゆえ、伝達促進部分7edは、結合解消部分7ecへの衝撃による衝撃力の伝達を促進するものである。結合解消部分7ecにおけるノッチは、軸取付部7eaの全周にわたって形成してもよいし、伝達促進部分7edに対向する部位に所定長さだけ形成するものであってもよい。
取付部材12は、図9から図11に示すように、スロットルボディ7へのボディ取付部12aと、アクセルケーブル10のケーブル取付部12bと、ケーブル取付部12bからボディ取付部12aとは反対方向に延長される延出部12cとを備えている。この実施形態における取付部材12は、例えば板金製で、ボディ取付部12aと延出部12cとは一体に形成してあり、ボディ取付部12aと延出部12cとの境界にケーブル取付部12bが形成してある。
ボディ取付部12aは、下壁12aaと側壁12abと上壁12acとからなり、側壁12abに2個の取付孔12adが設けてある。下壁12aaは、側壁12abを補強するとともに取付部材12に取り付けられたアクセルケーブル10を部分的に保護するように形成してある。側壁12abは、取付部材12に取り付けられたアクセルケーブル10の伸張位置からオフセットするように折り曲げて形成してあり、取付孔12adの設けられた部分はアクセルケーブル10の伸張位置と平行になるように形成してある。ケーブル取付部12bは、アクセルケーブル10のアウターケーブル10aの端部に設けられたテンション調整を兼ねた中空おねじ部材10cが挿入される切欠12baを有している。
延出部12cは、ボディ取付部12aの側壁12abに連続する延出部側壁12caとボディ取付部12aの下壁12aaに連続する延出部下壁12cbとからなる。延出部側壁12caと延出部下壁12cbとは、その先端部分が外方向に湾曲してあり、先端部分の強度を高めている。延出部側壁12caは、その先端の幅よりもケーブル取付部12bが設けてある後端の幅が大きくしてあり、後端はケーブル取付部12bの高さとほぼ同じ寸法である。アクセルケーブル10の伸張位置とは、アクセルケーブル10がその可撓性の範囲内において直線状または湾曲した状態に配置された位置を指すものである。
以上の構成において、スロットルボディ7は、以下に説明するように取り付けられる。スロットルボディ7をエンジン本体5に組み付けるに際して、組み付け前にスロットルボディ7に取付部材12を固定しておくものである。
まず、出口側管体部7dの取付板部分7kをエンジン本体5のサージタンク4のスロットルボディ取付位置に密着させ、取付板部分7kにある取付孔7mに取付用ボルト14を挿入して締め付ける。この時、取付板部分7kの上面に、結合解消部分7ecへの衝撃力の伝達を容易にするための補助板15を共締めする。補助板15は、車両9が衝突した際に、スロットルレバー7eの伝達促進部分7edに迅速に衝撃を伝達するために取り付けるものである。この補助板15は、伝達促進部分7edの高さとほぼ同じ高さをしており、伝達促進部分7edとは反対方向に膨出する当接部15aを有している。当接部15aは、伝達促進部分7edとは反対側の端部に形成され、エンジン1が移動した際に最初にダッシュボード9cと当接する。以上のようにしてスロットルボディ7をサージタンク4に取り付けた後、入口側管体部7aに管部材6cを連結して、エアクリーナ6とスロットルボディ7とを連通する。
このようにしてエンジン本体5にスロットルボディ7を取り付けた後、アクセルケーブル10の一端を取付部材12に取り付ける。アクセルケーブル10は、まずインナーケーブル10bの一端をスロットルレバー7eの係止孔7efに係止し、アウターケーブル10a内から延出したインナーケーブル10bをスロットルレバー7eの案内溝7eeに沿わせる。この後、中空雄ねじ部材10cをケーブル取付部12bの切欠12baに嵌め込み、ケーブル取付部12bを中空雄ねじ部材10cに螺合されたナット10dにより挟み込んで、中空雄ねじ部材10cをケーブル取付部12bに固定して、アクセルケーブル10をスロットルレバー7eに取り付ける。スロットルレバー7eは、スロットルバルブ7bが閉成するように付勢されているので、アクセルケーブル10を取り付けた状態では、インナーケーブル10bが案内溝7eeのほぼ全長にわたって沿うものとなる。そして、スロットルレバー7eeとケーブル取付部12bとの間はインナーケーブル10bが露出するものであり、ケーブル取付部12bとアクセルペダル11との間はインナーケーブル10bがアウターケーブル10aにより被覆されるものである。
スロットルボディ7をエンジン本体5に組み付けた状態では、取付部材12の延出部12cは、エンジン本体5のシリンダヘッドカバー5aとエアクリーナ6の空気通路6bとの間に形成される空間に向かって、具体的には斜め上方に向かって延出するものとなる。したがって、取付部材12に取り付けられた状態でアクセルケーブル10は、シリンダヘッドカバー5aとエアクリーナ6の空気通路6bとの間を通ってエンジン本体5の前方に伸張するものである。
次に、車両9が衝突した場合について説明する。衝突は、車両9の前正面が他の車両あるいは建物などに衝突する場合を想定している。最初に、衝突した場合における衝撃が比較的小さい場合について説明する。
衝突した場合、車両9の前部分が後方に押し込まれることでエンジンルーム9aが変形し、その影響によりエンジン1が正常な搭載位置より後方、つまり図示しないトルクロッドを中心にして回転するようにダッシュボード9c側に移動する。このようにしてエンジン1が移動すると、最初に、エアクリーナ6の空気通路6bの後部がダッシュボード9cの上部9caに当接し、スロットルボディ7に衝撃が加わる。この衝撃により入口側管体部7aの環状ノッチ7fに応力が集中し、出口側管体部7dが破損する前に入口側管体部7aが破損する。
すなわち、出口側管体部7dは、取付板部分7kが3本のボルトにより固定されている。この取付板部分7kには三カ所にリブ7nが設けてあるので、出口側管体部7dの強度、特にはその取付板部分7kとの境界部の強度は、入口側管体部7aの強度より高くなっている。しかも、入口側管体部7aには、衝突時の衝撃力が集中するように環状ノッチ7fが設けてあるので、このような衝撃を受けてもその衝撃力が環状ノッチ7fを破損することで弱められる。このため、衝撃力は出口側管体部7dにまで伝達されず、あるいは伝達されてもリブ7nにより補強されているために、出口側管体部7dが破損することがない。
したがって、吸気系2における吸入空気の流れる方向を基準とすると、衝突によりスロットルボディ7に衝撃が加わると、スロットルバルブ7bより上流側においてスロットルバルブ7bの下流側より先に破損が発生するので、スロットルボディ7より下流に取り付けてある圧力センサ8は大気圧を検出することがない。つまり、圧力センサ8は、サージタンク4に取り付けられているので、高負荷高回転の運転状態でスロットルバルブ7bが全開である場合を除く運転状態では、スロットルバルブ7bの開度に応じてエンジン本体5による負圧を検出するものである。このため、出口側管体部7dが破損すると、スロットルバルブ7bより下流の吸気系2、具体的にはサージタンク4内が大気圧となり、圧力センサ8はスロットルバルブ7bが全開であることを示す出力信号を出力するが、入口側管体部7aが破損すると、スロットルバルブ7bより上流側が大気圧となるだけで、スロットルバルブ7bが制御されている正常な運転時の吸気管圧力に対応する出力信号を圧力センサ8は出力する。
このように、衝突時の衝撃でスロットルボディ7が損傷する場合であっても、その損傷がスロットルバルブ7bより上流側で発生するので、このようなスロットルボディ7の損傷時に圧力センサ8が大気圧を検出することを確実に防止することができる。そして、圧力センサ8が大気圧を検出しないことにより、圧力センサ8の出力信号とエンジン回転数とに基づいて設定される燃料噴射量が、スロットルバル7bの全開時の場合のように増加されることを防止することができる。
次に、同様に車両が正面衝突した場合、その衝突の度合いが前述の場合より大きいつまり発生する衝撃力が大きい場合は、上述の環状ノッチ7fの破損に続いて結合解消部分7ecの破損が生じるものである。
具体的には、この場合、車両9が衝突することで、エンジン1がダッシュボード9cを基準とした正常な搭載位置からダッシュボード9cに向かって大きく移動するものとなる。これによって、スロットルボディ7の部位においては、補助板15の当接部15aが配管16に衝突した後ダッシュボード9cに当接する。補助板15は、当接部15aがダッシュボード9cに当接することにより当接部15aとは反対側の端部が、スロットルレバー7eの伝達促進部分7edを押圧する。この結果、補助板15と伝達促進部分7edとを介して、衝突時の衝撃力が結合解消部分7ecに集中する。このようにして集中した衝撃力により、結合解消部分7ecが破損し、軸取付部7eaとケーブル案内部7ebとの結合状態が解消される。つまり、ケーブル案内部7ebに対して軸取付部7eaが空転する状態、したがって、スロットルバルブ7bの回転軸7gに対してスロットルレバー7eが空転する状態になる。なお、結合解消部分7ecが破損した状態においても、スロットルバルブ7bを閉じるための付勢部材7hは、スロットルバルブ7bを付勢し得る状態で、その配設位置に残るものである。
このように回転軸7gが空転する、つまりアクセルケーブル10に拘束されることがない状態となると、スロットルバルブ7bは、アクセルペダル11の操作の如何にかかわらず、付勢部材7hの付勢力により閉成する、あるいは衝撃により回転軸7gが固定されて任意の位置で静止した状態になる。一方、アクセルペダル11は、ケーブル案内部7ebが軸取付部7eaから切り離されることにより、アクセルケーブル10でケーブル案内部7ebと連結されていようとも、スロットルバルブ7bが前述のいずれの状態になったとしても、自在に操作し得る状態になる。自在に操作し得る状態とは、アクセルペダル11が特定の操作位置に固定されることなく、操作が可能な範囲において所望の位置あるいは任意の位置に操作し得る状態を指すものである。
したがって、衝突時に、運転者が体を支えるために、アクセルペダル11に載せた足を踏ん張っても、固定されているアクセルペダル11を全力で踏む場合と異なり、過度の負担がかかることを防止することができる。加えて、スロットルバルブ7bの回転軸7gが固定されることなく回転可能な状態を維持している場合は、スロットルバルブ7bが閉成するので、エンジン1の回転が異常に高くなることを防止することができ、衝突後に運転者の意に反して車両9が走り出すことを防止することができる。
以上の説明では、車両9が低速から中速で走行している場合に、正面から衝突した場合を説明したが、以下には、車両9が高速で正面から衝突した場合を説明する。
この場合にあっては、瞬時にスロットルボディ7がダッシュボード9cに押し付けられて出口側管体部7dの取付板部分7kが浮き上がり、スロットルボディ7自体がエンジン本体5側に向かって傾くことになる。この場合、スロットルボディ7がエンジン本体5側に傾くと、取付部材12の延出部12cの先端がエンジン本体5に衝突する。
具体的には、スロットルボディ7が傾くことにより、延出部12cはエンジン本体5側に傾いて、したがってエンジン本体5の上部を形成するシリンダヘッドカバー5a、具体的にはシリンダヘッドカバー5aの上面に衝突する。これによって、アクセルケーブル10のうち、ケーブル取付部12b近傍の部分は、エンジン本体5との間に延出部12cにより形成された空間において保護されるため、ケーブル取付部12bとエンジン本体5(シリンダヘッドカバー5a)とに挟まれて極端に折れ曲がることが回避される。
しかもこの場合に、延出部12cは、アクセルケーブル10の下側及び側部に延出部側壁12caと延出部下壁12cbとが存在するものの、上側には遮蔽要素が存在しないため、上側への移動は規制されない。したがって、アクセルケーブル10は、シリンダヘッドカバー5aに沿って上側に移動するもので、シリンダヘッドカバー5aと延出部12cとに挟まれて、鋭角を形成して極端に折れ曲がることはない。この場合、前述の環状ノッチ7fの破損と結合解消部分7ecの破損との少なくとも一方が合わせて生じることも起こり得るものであってもよい。つまり、延出部12cがシリンダヘッドカバー5aに衝突するまでに、結合解消部分7ecの破損が生じていたり、あるいはそれ以前に環状ノッチ7fの破損が生じ、それに連続して結合解消部分7ecの破損が生じ、その後に延出部12cのシリンダヘッドカバー5aへの衝突が生じるものであってもよい。
したがって、アクセルペダル11が操作、つまり踏まれると、アクセルケーブル10のインナーケーブル10bは、その操作量に応じて衝突以前と同じように移動する。言い換えれば、アクセルペダル11は、アクセルケーブル10のインナーケーブル10bが自在に動く状態に維持されているので、任意の角度を維持して固定されることはなく、衝突以前と同じにこのように操作可能な状態に維持される。それゆえ、衝突時に、運転者が体を支えるために、アクセルペダル11に載せた足を踏ん張っても、固定されているものを全力で踏む場合と異なり、過度の負担がかかることを防止することができる。
また、インナーケーブル10bが自在に動く状態に維持することができるので、上述のように全力でアクセルペダル11を踏み込んだ後、アクセルペダル11の操作を停止するつまりアクセルペダル11から足を除けば、スロットルバルブ7bは付勢部材7hの付勢力により、全閉状態に戻るものである。それゆえ、スロットルバルブ7bが、インナーケーブル10bの不具合により開いた状態に固定されることを防止することができ、エンジン1をオフにするまで回転が高い状態に維持されることを防止することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
上記実施形態においては、入口側管体部とバルブ管体部と出口側管体部とを同一の合成樹脂により一体成型により製作するものを説明したが、入口側管体部と出口側管体部との強度に差異を持たせるために、入口側管体部の素材を合成樹脂製とし、バルブ管体部と出口側管体部との素材を入口側管体部の合成樹脂より強度の高い金属製とするものであってよい。このような素材構成とすることにより、入口側管体部の強度設定を容易にすることができ、衝突時などの衝撃により確実に入口側管体部において破損が生じるようにすることができる。
また、入口側管体部と出口側管体部との強度設定は、次のような構造により行うものであってもよい。例えば、少なくとも入口側管体部のみをバルブ管体部と出口側管体部とは別体で作製し、入口側管体部とバルブ管体部とをボルトにより接続する。この場合、ボルトは、出口側管体部の強度より低い強度のものを使用する。このような構造により、受けた衝撃により出口側管体部が破損する以前にボルトが破損し、入口側管体部とバルブ管体部との連結が解消され、スロットルボディ全体を見た場合、入口側管体部が破損した状態と同等になる。したがって、検出される吸気管圧力が急速に上昇すると言った不具合を防止することができる。なお、このようにボルトを使用するものにあっては、入口側管体部とバルブ管体部と出口側管体部とをそれぞれ別体にて作製し、これらを強度の異なるボルトで接続するようにするものであってもよい。この場合、入口側管体部とバルブ管体部とを接続するボルトの強度を、バルブ管体部と出口側管体部とを接続するボルトの強度より低く設定するものである。
さらには、入口側管体部のみをバルブ管体部と出口側管体部とは異なる素材として、別体で作製し、入口側管体部とバルブ管体部と出口側管体部とを一体成型するものであってもよい。この場合、それぞれの素材は、金属であっても合成樹脂で合ってもよいが、入口側管体部の素材の強度が、バルブ管体部と出口側管体部との素材の強度よりも低いものを使用するものである。
操作体としては、上述したアクセルペダル以外に、例えば、福祉車両のうち、自操型車両に取り付けられるジョイスティックなどの操作レバーであってもよい。このような手で操作する操作体においては、車両が衝突した場合に、手首にかかる過度の負担を回避することができる。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。