JP2005341904A - 無細胞蛋白質合成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 無細胞蛋白質合成系により高効率かつ低コストで目的蛋白質を合成する方法を提供する。
【解決手段】 蛋白質合成反応液と緩衝液とを接触させて無細胞系で蛋白質合成を行う方法であって、該蛋白質合成反応液は、少なくとも鋳型核酸、リボソーム、基質エネルギー又は基質エネルギーとその再生に必要な成分、転移RNAおよび基質アミノ酸を含み、かつ蛋白質合成能を有する水溶液であり、該緩衝液は、少なくとも鋳型核酸、リボソームおよび基質アミノ酸を含まず、かつ該蛋白質合成能の維持機能を有する水溶液であることを特徴とする無細胞蛋白質合成方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、無細胞蛋白質合成方法に関し、さらに詳しくは無細胞蛋白質合成反応系で反応系中に含まれる基質アミノ酸に対して効率よく蛋白質を合成する方法に関する。
細胞内で行われている蛋白質の合成反応は、まず遺伝情報をもつDNAからその情報がmRNAに転写され、そしてリボソームがそのmRNAの情報を翻訳して、蛋白質を合成するという工程で進行している。現在、この細胞内における蛋白質合成を試験管等の生体外で行う方法としては、例えばリボソームを生物体から抽出し、これらを用いて試験管内で無細胞蛋白質合成を行う方法の研究が盛んに行われている(例えば特許文献1〜5参照)。これらの方法には、リボソームの原料として、大腸菌、植物胚芽、ウサギ網状赤血球等が用いられている。
無細胞蛋白質合成をバッチで行う場合、反応が途中で停止してしまい十分な蛋白質合成量が得られないという問題点があった。近年、Spirin等は、無細胞蛋白質合成反応液に、原料であるアミノ酸とATP、GTP等の反応基質を含む溶液を連続的に供給して反応基質の初期濃度を維持すると同時に、合成された目的蛋白質等を限外濾過により反応液から除去することによって、反応時間を20時間以上にわたって持続させることに成功したと報告している(非特許文献1参照)。
また山根等は、無細胞蛋白質合成反応液と基質アミノ酸、ATP、GTP等の反応基質含む溶液とを中空子膜を介して接触させ、低分子基質を合成反応液中に移行させ、合成反応液中の低分子基質濃度をほぼ一定に維持する方法を提案し、この方法により、蛋白質合成量を顕著に高くすることができることを報告している(特許文献6参照)。
この様に、これまで合成反応液中の低分子基質濃度を一定に維持する(初期濃度を維持する)ことが反応の持続に必須であると考えられてきた。しかしながら、上記方法により反応液中の基質濃度を維持するためには合成系に対し比較的大量の基質溶液が必要となる。また、基質溶液に含まれるアミノ酸、特に蛋白質の構造解析などに用いられるラベル化アミノ酸(非天然アミノ酸)、ATPやGTP等の基質エネルギーとその再生系は、高価な試薬である。上記方法では、これらの高価な試薬が、反応を維持するために大量に浪費されることとなる。特に非天然アミノ酸を基質として使用する蛋白質合成や、大スケールでの蛋白質合成等を行う場合、コストの面で大きな問題があった。
上記の通り、無細胞蛋白質合成系をより有用に産業上に適用するため、合成効率の向上に関する諸種の提案がなされてきたが、必ずしも満足できる結果が得られているわけではない。産業上の有用性向上のためには、さらに合成効率が改良され、低コストで目的とする蛋白質を大量に効率よく合成可能な方法の提供が求められている。
特開平6−98790号公報 特開平6−225783号公報 特開平7−194号公報 特開平9−291号公報 特開平7−147992号公報 A. S. Spirin, et al., (1998), Science, 242, 1162-1164 特開平10−80295号公報
本発明は、無細胞蛋白質合成系において、高効率かつ低コストで、目的蛋白質を合成する方法の提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、無細胞蛋白質合成系に対して基質アミノ酸濃度をほぼ一定に維持する必要は無く、予め合成蛋白質量に対して必要量の基質アミノ酸を反応液に内在させておくだけで、充分量の蛋白質合成ができることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
すなわち、本発明によれば、(1)蛋白質合成反応液と緩衝液とを接触させて無細胞系で蛋白質合成を行う方法であって、該蛋白質合成反応液は、少なくとも鋳型核酸、リボソーム、基質エネルギー又は基質エネルギーとその再生に必要な成分、転移RNAおよび基質アミノ酸を含み、かつ蛋白質合成能を有する水溶液であり、該緩衝液は、少なくとも鋳型核酸、リボソームおよび基質アミノ酸を含まず、かつ該蛋白質合成能の維持機能を有する水溶液であることを特徴とする無細胞蛋白質合成方法が提供される。
この発明の好ましい態様によれば、(2)合成反応液と緩衝液との接触が、膜を介して行われる上記(1)に記載の方法;(3)膜が、透析膜、限外濾過膜、セラミック膜、半透膜および中空子膜よりなる群から選ばれる上記(2)に記載の方法;(4)緩衝液が、ゾル又はゲルに含まれる上記(1)に記載の方法;(5)合成反応液と緩衝液との接触が、界面を有して行われる上記(1)又は(4)に記載の方法;(6)緩衝液が、少なくともマグネシウムイオンを含み、pHが6.8〜7.6の範囲内である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法;(7)基質エネルギーがATPであり、その再生に必要な成分がクレアチンリン酸とクレアチンキナーゼ又はホスホエノールピルビン酸とピルビン酸キナーゼである上記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法;(8)合成反応液中の基質アミノ酸の濃度が、0.01〜10mMの範囲内である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法が提供される。
また、本発明の別の態様によれば、(9)少なくとも鋳型核酸、リボソームおよび基質アミノ酸を含まず、かつ該蛋白質合成能の維持機能を有する水溶液であり、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の方法に用いることを特徴とする緩衝液が提供される。
この発明の好ましい態様によれば、(10)水溶液が、少なくともマグネシウムイオンを含み、pHが6.8〜7.6の範囲内である上記(9)に記載の緩衝液が提供される。
更に、本発明の別の態様によれば、(11)上記(9)又は(10)に記載の緩衝液、少なくともリボソームを含有する試薬溶液含み、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の方法により目的蛋白質を合成するための試薬キットが提供される。
本発明によれば、合成反応時に基質を無駄に供給しないことで、蛋白質合成反応が基質量に対して非常に高効率に行われ、蛋白質合成反応に必要な基質の使用量を最小限に押さえることができる。また、緩衝液にアミノ酸を内在させないので雑菌等のコンタミを防止でき、緩衝液の安定性が向上する。この様に、本発明により高効率、かつ低コストの無細胞蛋白質合成が可能となる。
以下、本発明の実施態様の代表例を示し、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の無細胞蛋白質合成方法は、蛋白質合成反応液と緩衝液とを接触させて無細胞系で蛋白質合成を行う方法であって、該蛋白質合成反応液は、少なくとも鋳型核酸、リボソーム、基質エネルギー又は基質エネルギーとその再生に必要な成分、転移RNAおよび基質アミノ酸を含み、かつ蛋白質合成能を有する水溶液であり、該緩衝液は、少なくともリボソームおよび基質アミノ酸を含まず、かつ該蛋白質合成能の維持機能を有する水溶液であることを特徴とする方法である。
上記の通り、本発明は、蛋白質合成反応液中に予め合成蛋白質量に対して、必要量の基質、例えば基質アミノ酸を内在させる点に一つの特徴を有するものである。これにより、合成反応液中への基質の無駄な供給を行う必要が無くなり、低コストで、高効率の無細胞蛋白質合成が可能となる。
1)蛋白質合成反応液
本発明において、蛋白質合成反応液とは、少なくともリボソーム、基質エネルギー又は基質エネルギーとその再生に必要な成分、転移RNA、基質アミノ酸および鋳型核酸を含み、かつ蛋白質合成能を有する水溶液、即ち生細胞を用いずにmRNAを翻訳鋳型として目的蛋白質を合成する能力を有する水溶液であれば如何なるものであってもよい。
ここで、リボソームとは、蛋白質の生合成にmRNAとともに関与するRNA−蛋白質複合体であり、通常、無細胞蛋白質合成用の細胞抽出液として調製することができる。
無細胞蛋白質合成用の細胞抽出液としては、例えば、大腸菌、植物種子の胚芽、ウサギ網状赤血球等の細胞抽出液等が挙げられる。これらの細胞抽出液は、市販のものを用いることができるし、それ自体既知の方法、例えば、大腸菌の場合は、Pratt, J. M. et al., Transcription and translation, Hames, 179-209, B. D. & Higgins, S. J., IRL Press, Oxford(1984)等に記載の方法を用いて調製したものでもよい。
市販の細胞抽出液として、例えば大腸菌由来のものは、E. coli S30 extract system (Promega社製)、RTS 500 Rapid Translation System等を挙げことができる。ウサギ網状赤血球由来のものは、Rabbit Reticulocyte Lysate system(Promega社製)等、さらにコムギ胚芽由来のものは、PROTEIOSTM(TOYOBO社製)等を挙げることができる。本発明においては、コムギ胚芽の細胞抽出液が好ましく、さらには、WO03/064671号公報に記載の方法により調製されたコムギ胚芽の細胞抽出液が特に好ましく用いられる。さらにこれらの細胞抽出液からリボソーム画分を分離・精製したものを用いることもできる。
基質エネルギーとしては、高エネルギーリン酸化合物、例えばATPやGTPが挙げられ、ATPは1.0〜1.5mM、GTPは0.2〜0.3mM程度反応液に内在させることが好ましい。基質エネルギー(ATP)の再生系としては、例えばクレアチンリン酸とクレアチンキナーゼ、ホスホエノールピルビン酸とピルビン酸キナーゼ等が挙げられる。反応液中の内在量は、基質エネルギーの再生系が機能し得る濃度であれば特に限定されないが、例えばクレアチンリン酸が1〜100mM、好ましくは10〜50mM、さらに好ましくは16〜28mM、クレアチンキナーゼが0.001〜5μg/μl、好ましくは0.01〜1μg/μl、さらに好ましくは0.04〜0.4μg/μl、ホスホエノールピルビン酸が1〜20mM、ピルビン酸キナーゼが0.01〜1μg/μl程度が適当である。
転移RNA(transfer RNA)としては、それ自体既知の基質アミノ酸に対応する転移RNAが用いられる。反応液中の転移RNAの内在量としては、蛋白質合成反応が起こり得る濃度であれば特に限定されない。転移RNAは、Moniter, R., et al., Biochim. Biophys. Acta., 43, 1 (1960)等に記載の方法により取得することができるし、市販のものを用いることもできる。なお、上記WO03/064671号公報に記載の方法により調製されたコムギ胚芽の細胞抽出液を用いる場合は、合成反応に必要な転移RNAが抽出液に含まれており、特に反応液に添加しなくともよい。
基質アミノ酸としては、20種類のL−アミノ酸が挙げられる。これら基本アミノ酸以外に、例えば13C又は15Nのシングルラベルのアミノ酸、13C、15Nおよび2Hの3種類核種から選ばれる2つずつの組み合わせのダブルラベルのアミノ酸、13C、15Nおよび2Hのトリプルラベルのアミノ酸、3H(放射性)ラベルのアミノ酸、14C(放射性)ラベルのアミノ酸、35S(放射性)ラベルのアミノ酸(メチオニン、システイン)、蛍光物質の付いたアミノ酸、例えばBODIPY結合リジン、硫黄原子がセレン原子で置換されたアミノ酸、例えばセレノメチオニン等が挙げられる。特にこれらのラベルアミノ酸(非天然アミノ酸)は、蛋白質の構造解析や機能解析に重要な役割を有するものであり、特に高価な物質である。
基質アミノ酸の反応液中の内在量は、下限が通常0.01mM以上、より好ましくは0.3mM以上、上限が通常10mM以下、好ましくは5mM以下である。濃度範囲はこれら上限と下限の組み合わせで特定される範囲であればよいが、好ましくは1〜5mM、より好ましくは1.25〜4mMの範囲が適当である。
反応液には、金属イオン類、少なくともマグネシウムイオンが含まれ、さらにカリウムイオンが含まれる。マグネシウムイオンの内在量は、通常1〜10mM、好ましくは2〜3mM程度、カリウムイオンの内在量は、通常10〜300mM、好ましくは60〜150mM程度が適当である。これらイオン類の内在量は、酢酸マグネシウム、酢酸カリウムを添加することにより調整することができる。
反応液中には、更に核酸分解酵素阻害剤、還元剤、核酸安定化剤、3’,5’−cAMP、葉酸塩、抗菌剤等が内在していてもよい。核酸分解酵素阻害剤としては、0.3〜3U/μlのリボヌクレアーゼインヒビターや、0.3〜3U/μlのヌクレアーゼインヒビター等が挙げられる。このうち、リボヌクレアーゼインヒビターとしては、例えばヒト胎盤由来のRNase inhibitor(TOYOBO社製等)等が用いられる。還元剤としては、0.1〜3 mMのジチオスレイトール等が挙げられる。核酸安定化剤としては、0.3〜0.5 mMスペルミジン等が用いられる。3’,5’−cAMPの濃度は0.1〜24mM程度が適当である。抗菌剤としては、0.001〜0.01%のアジ化ナトリウム、又は0.1〜0.2 mg/mlのアンピシリン等が挙げられる。これらの物質は、目的蛋白質の種類や用いる反応系に応じて成分や濃度を適宜選択して反応液に内在させればよい。
反応液のpHは、蛋白質合成反応が起こり得る範囲であれば特に限定されないが、通常pH6.8〜7.6の範囲が適当である。pHの調整に用いる緩衝剤は特に限定されないが、通常、15〜35mM程度のHepes−KOH、あるいは10〜50mM程度のTris−酢酸等が挙げられる。
上記組成の反応液は蛋白質合成能を有しており、適当な温度条件下で、鋳型核酸を添加することにより、蛋白質合成反応を開始させることができる。
鋳型核酸としては、目的蛋白質をコードする配列(以下これを「ORF」と称することがある)を含み、無細胞蛋白質合成系で転写・翻訳または翻訳され、目的蛋白質を発現し得るものであれば特に制限は無い。これら鋳型核酸はそれ自体既知の通常用いられる方法で構築することができる。
本発明において、鋳型核酸としては、目的蛋白質をコードする配列(ORF)を有し、ORFの上流に、プロモーター配列、翻訳活性増強配列等を有し、下流には停止配列とmRNAの安定性のための非翻訳領域を含むDNA、それを転写したmRNAが好ましく用いられる。ORFとしては、目的蛋白質の精製等に用いられるタグとの融合蛋白質をコードする配列を用いることもできる。また、プロモーター配列は、蛋白質合成に用いる細胞抽出液、また転写に用いるRNA合成酵素(RNAポリメラーゼ)により適宜選択することができる。具体的には、転写にSP6 RNAポリメラーゼを用いる場合には、SP6プロモーターを用いることが好ましい。翻訳活性増強配列として、真核生物においては、例えば5’キャップ構造(Shatkin, Cell, 9, 645- (1976))、コザック配列(Kizak, Nucleic Acid Res., 12, 857-(1984))等があり、また原核生物においては、例えばシャインダルガーノ配列等が知られている。更にはRNAウィルスの5’−非翻訳リーダー配列にも翻訳促進活性があることが見出されており(特許第2814433号公報)、これらの配列を用いることもできる(特開平10−146197号公報)。
上記反応液は、鋳型核酸の転写・翻訳用または翻訳用のいずれにも用いることができる。反応液を転写・翻訳用とする場合は、反応液に、更にRNAポリメラーゼを内在させる必要がある。RNAポリメラーゼとしては、鋳型核酸に含まれるプロモーターに適したものが用いられる、具体的には、例えばSP6 RNAポリメラーゼやT7 RNAポリメラーゼ等を用いることができる。これらの内在量は、それ自体既知であり、適宜選択して合成反応液を調製すればよい。
上記反応液の調製に用いる成分及び試薬は、それ自体既知であり、市販品を購入するか、または通常用いられる方法により調製することができる。なお、上記各成分の濃度(内在量)は、反応液中の初期濃度である。
2)緩衝液
本発明で用いる緩衝液は、蛋白質合成反応液と接触させて、蛋白質合成能の維持に用いられるものである。該緩衝液は、少なくとも鋳型核酸、リボソームおよび基質アミノ酸を含まず、かつ該蛋白質合成能の維持機能を有する水溶液である。ここで、本明細書において「蛋白質合成能の維持」とは、合成反応時間を延長(持続)させて反応効率を高めることを意味する。緩衝液への基質アミノ酸の添加は、しばしば雑菌等のコンタミの原因となるが、本発明においては、緩衝液にアミノ酸を内在させないので、雑菌等のコンタミを防止でき、緩衝液の安定性を向上させることができる。
緩衝液には、少なくともマグネシウムイオンを含むことが好ましく、またpHは6.8〜7.6の範囲内が好ましい。pHの調整に用いられる緩衝剤は、通常上記した15〜35mM程度のHepes−KOH、あるいは10〜50mM程度のTris−酢酸等を用いればよい。
緩衝液は、さらに基質エネルギー、基質エネルギーとその再生系、カリウムイオンを含んでいてもよい。基質エネルギー、基質エネルギーとその再生系としては、上記したものが挙げられる。マグネシウムやカリウム等の金属イオン源としては、上記酢酸マグネシウム、酢酸カリウム等を用いればよい。これら成分の濃度は、上記反応液と同様である。
緩衝液には、更に核酸分解酵素阻害剤、還元剤、核酸安定化剤、3’,5’−cAMP、葉酸塩、抗菌剤等を含んでいてもよい。これら成分の具体例、濃度等も上記反応液と同様である。
緩衝液は、ゲルまたはゾルに含ませて用いることもできる。本発明で用いられるゲルまたはゾルとは、上記緩衝液をそのマトリックス及び排除容積の両方に含有でき、これと界面を有して接触させた反応液との間で、緩衝液および低分子副産物・分解物等が自由に拡散し得るものであれば如何なるものであってもよい。具体的には、高分子物質を構成要素とするものが挙げられる。
ここで、本明細書において、ゲルとは、構成要素が独立した流動性を失って、集合して固化した状態のものをいい、ゾルとは、構成要素が液体中に分散して流動性を示す状態のものをいう。本発明で用いられるゲルの好ましい例としては、アガロース、またはアクリルアミド等を構成要素とするもの等が挙げられる。また、ゾルの好ましい例としては、ゲルろ過剤、アフィニティゲル剤、磁性ビーズ等を構成要素とするもの等が挙げられる。
また、マトリックスとは、ゲルまたはゾルが占める空間のうち、ゲルまたはゾルの構成分子が占める空間を意味する。更に、排除容積とは、ゲルまたはゾルが占める空間のうち、マトリックス以外の空間を意味する。
緩衝液を含むゲルまたはゾルの調製方法としては、上記の性質を有し、かつそのマトリックス及び排除容積の両方に無細胞蛋白質合成反応を行うに充分な量の緩衝液が含有される方法であれば特に制限はない。
以下に、ゲルの1例としてアガロースゲルを用いる場合を具体的に説明する。
アガロースは、上記の蛋白質合成反応に影響を及ぼさない程度に精製されていて、後述する条件で無細胞蛋白質合成反応を行った際に溶解しない適度な強度を保ち得るものを選択して用いる。具体的には、Agarose S(ニッポンジーン社製)等が好ましく用いられる。アガロースゲルの調製方法としては、上記アガロースが0.1〜15重量%、好ましくは0.1〜1.0重量%、さらに好ましくは0.2〜0.5重量%、最も好ましくは0.3重量%となるように水あるいは適当な緩衝液に懸濁し、これを加熱してアガロースを溶解した後に冷却する方法等が用いられる。
このように調製したアガロースゲルに、緩衝液を含有させる方法としては、該アガロースゲルを、上記緩衝液に浸漬するか、または、上記のとおりアガロースを溶解した後に、適当な温度まで冷却し、これに濃縮緩衝液を添加してさらに冷却する方法等が挙げられる。ここで、適当な温度とは、用いるアガロースの凝固点以上で、かつ緩衝液が変性する温度未満である。具体的には、30〜50℃が好ましい。また、濃縮緩衝液とは、最終的に調製されたアガロースゲル中の緩衝液の濃度が上記のとおりになるように濃縮したものをいう。また、上記緩衝液にアガロースゲルを浸漬する場合、浸漬時間は緩衝液がアガロースゲルに十分に浸透する時間であれば特に制限はないが、1時間以上が好ましい。浸漬する際の温度は、緩衝液の活性を保つために低温、例えば4℃が好ましい。さらに、緩衝液に浸漬した後は、これを反応液と接触させる前に、接触表面に付着した緩衝液を除去することが好ましい。具体的な除去方法としては、アガロースゲルを緩衝液からピンセット等を用いて取り出し、該ゲルの反応液の接触表面を、紙などに接触させる方法等が挙げられる。
緩衝液を含むアガロースゲルの調製は、蛋白質合成反応を行うための容器(以下、これを「反応容器」と称することがある)で行ってもよいし、適当な容器を用いてアガロースゲルを調製した後に、これを反応容器に合わせて適当に整形してもよい。調製するアガロースゲルの形状は、これを後述するように、反応液と緩衝液とを、界面を有して接触させた際に、低分子副産物・分解物等の拡散が自由に行われるもので、かつ反応中にアガロースゲルが溶解しない程度の強度が保たれる形状であれば特に制限はない。好ましくは、反応液との接触面が広い形状が挙げられる。具体的には、反応容器中で固化させたものや、小粒状のもの、さらには反応液の底面の形状に合わせて整形したもの等が挙げられる。
以下に、反応容器の具体例とともに、これに適した緩衝液を含有するアガロースゲルの調製方法の例を詳述する。反応容器としては、本発明の無細胞蛋白質合成反応が行われ得るものであれば如何なるものであってもよいが、具体的には、例えば、プラスチック製のチューブ、スピンカラム、マルチウェルプレート等が好ましく用いられる。
プラスチック製のチューブとしては、何れの形状のものでもよいが、具体的には、1.5〜2ml容量のエッペンドルフチューブ、5〜50ml容量のプラスチックチューブ等が挙げられる。また、その底部に適当な孔径のフィルターを有するものも含む。適当な孔径とは、蛋白質合成反応に必要な物質が通過せず、かつ緩衝液、合成された目的蛋白質、および低分子副産物・分解物等が自由に通過し得る範囲が好ましい。具体的には、0.1〜0.45μmの孔径を有するフィルターや限界分子量10kD〜300kDの透析膜あるいは限外濾過膜等が用いられる。プラスチックチューブを用いる場合、緩衝液を含有するアガロースゲルとしては、上記方法により該チューブ内で調製したものや、あるいは該チューブ内に投入した反応液に浸漬するように整形したもの等が好ましい。
スピンカラムとは、底部に適当な孔径のフィルターを有しており、かつ遠心機により遠心操作が可能なものをいう。ここで、適当な孔径とは、合成された目的蛋白質が通過し得るが、ゲルおよびゾルの構成要素が通過しない孔径を意味する。具体的には、例えば0.1〜0.45μmのフィルターや、限界分子量10kD〜300kDの透析膜等を有するものが好ましい。容量としては、0.5〜10mlのものが好ましく用いられる。スピンカラムを用いる場合も、緩衝液を含有するアガロースゲルとしては、上記方法により該チューブ内で調製したものや、あるいは該チューブ内に投入した反応液に浸漬するように整形したもの等が好ましい。緩衝液を含有させる方法も上記と同様である。また、スピンカラムの場合、アガロースゲルが入っている状態で遠心分離機にかけることがあるのでアガロースが0.1〜2%濃度のものを用いることが好ましい。
本発明で用いられるプラスチック製のマルチウェルプレートとしては、特に制限はないが、1ウェルが0.1〜50ml容量のもので、底部に0.22μm孔径のフィルターや限界分子量10kD〜300kDの透析膜等を有するものが好ましく用いられる。マルチウェルプレートを用いる場合も、緩衝液を含有するアガロースゲルとしては、上記方法により該ウェル内で固化させたものや、あるいは該ウェル内に投入した反応液に浸漬するように整形したもの等が好ましい。緩衝液を含有させる方法も上記と同様に行うことができる。
さらに、ゾルの1例としてゲルろ過剤を用いる場合について具体的に説明する。ゲルろ過剤は、蛋白質合成反応に影響を及ぼさない程度に精製されていて、非特異的な吸着性がなく、上記緩衝液を含有でき、反応液との間に界面を形成し得る性質を有し、かつ反応液と緩衝液との間で低分子副産物・分解物等が自由拡散し得る性質を有するものを選択して用いる。具体的なゲルろ過剤として、セファデックス(アマシャムバイオサイエンス社製)、セファクリル(アマシャムバイオサイエンス社製)、セファロース(アマシャムバイオサイエンス社製)等が挙げられる。このうちセファデックスG−25、G−50、セファクリルS300、セファロース4Bが好ましく用いられる。このうち、セファデックスG−50がさらに好ましく、セファデックスG−50Fineが特に好ましい。また、後述するとおり、目的蛋白質またはその一部のポリペプチドと親和性を有するゲルろ過剤を用いれば、合成された目的蛋白質を精製することもできる。
ゲルろ過剤は、これを上記と同様の緩衝液で平衡化する。平衡化の方法は、選択したゲルろ過剤に応じて適宜調整すればよい。ゲルろ過剤の平衡化は、反応容器中で行ってもよいし、適当な容器中で行った後にこれを反応容器へ移してもよい。ゾルを用いる場合には反応容器として、カラムチューブ、スピンカラム、マルチウェルプレートやカップ等が好ましく用いられる。また、マルチウェルプレートおよびカップについては、底部に上記と同様のフィルターや透析膜を有するものも用いることができる。特に、大量な応用としてフィルター付きカップ(例えばステリカップ(ミリポア社製))等も用いられる。これら緩衝液を含むゲルまたはゾルを用いる蛋白質合成法(反応液と緩衝液との接触方法)は次に詳述する。
3)反応液と緩衝液との接触方法(蛋白質合成方法)
反応液と緩衝液との接触は、両者が接触時に混合しない方法であれば如何なる方法であってもよい。本発明において、反応液と緩衝液との接触は、膜を介して行ってもよいし、界面を有して行ってもよい。これにより、反応液中で蛋白質合成反応により生成されるAMP、GDP、ピロリン酸、無機リン酸塩等の低分子副産物・分解物を、分子拡散により緩衝液中に排出させることができる。その結果、合成反応が維持され、蛋白質合成反応時間を延長(持続)させることができる。従来、基質アミノ酸を反応液中に供給し、一定濃度に維持することが必要と考えられていたが、それは全く不要である。反応液中への基エネルギー等の供給も、必ずしも必要ではない。
該合成反応に用いられる反応液の量としては、特に制限はないが、通常10μl〜50ml、好ましくは50μl〜10ml程度である。反応液(以下これを「内液」と称することがある)に接触させる緩衝液(以下これを「外液」と称することがある)の容量は、接触させる条件により異なり、各条件における蛋白質合成能の維持に充分な量であれば特に制限されないが、通常、外液の量は内液の量の10〜50倍程度が適当である。
膜を介して反応液と緩衝液とを接触させる場合、使用される膜としては、高分子物質と低分子物資とが分離できるものであれば、如何なる材質の膜でもよい。具体的には、例えば透析膜、限外濾過膜、セラミック膜、半透膜、中空子膜等が挙げられる。反応により生成する低分子副産物・分解物を透過させ、かつ生成物である目的蛋白質や蛋白質合成に必要なリボソーム、鋳型核酸、基質エネルギー再生系等の高分子物質を透過させないためには、分子量限界が100,000Da以下、好ましくは1,000〜600,000Da、さらに好ましくは3,000〜20,000Da程度の膜を用いるのが適当である。膜を介して内液と外液とを接触させる方法は、例えば特開平10−80295号公報等に記載されている方法、あるいは透析法(木川等、第21回日本分子生物学会、WID6)と呼ばれる方法に準じて行うことができる。
これらの膜の中で、透析膜を用いるのが特に好ましい。透析膜を用いる場合、外液の量は内液の量の最低で10倍程度、最高で50倍程度である。この場合、透析膜が付加されている適当な透析容器に反応液を入れて反応内液とし、それを緩衝液(外液)に浸漬させることにより、反応液と緩衝液とを接触させることができる。外液は、必要量を一度に接触させてもよいし、また必要に応じて逐次交換して接触させてもよい。透析容器としては、底部に透析膜が付加されている容器(第一化学社製:透析カップ12,000等)や、透析用チューブ(三光純薬社製:12,000等)が挙げられる。透析膜は、10,000ダルトン以上の分子量限界を有するものが用いられるが、12,000ダルトン程度の分子量限界を有するものが好ましい。
蛋白質合成反応液と緩衝液とは、膜を介すること無く、界面を有して直接接触させてもよい(以下これを「重層法」と称することがある)。重層法は、PROTEIOSTM Wheat germ cell-free protein synthesis core kit取扱説明書(TOYOBO社製)、WO02/24939号公報の記載に準じて次の通り行うことができる。
重層法を用いて蛋白質合成を行う場合には、合成反応液を適当な容器に入れ、該反応液上に、上記緩衝液を、界面を乱さないように重層することにより蛋白質合成を行う。具体的には、例えば、鋳型核酸を除いた上記合成反応液を必要に応じて適当時間プレインキュベートした後、鋳型核酸を添加して、適当な容器に入れ反応相とする。容器としては、例えばマイクロタイタープレート等が挙げられる。この反応相の上層に上記緩衝液を、界面を乱さないように重層して反応を行う。
両相の界面は必ずしも重層によって水平面状に形成させる必要はなく、両相を含む混合液を遠心分離することによって、水平面を形成させることも可能である。両相の円形界面の直径が7mmの場合、反応相と緩衝液相の容量比は、好ましくは1:4〜1:8、特に好ましくは1:5程度が適当である。両相からなる界面面積は大きいほど拡散による物質交換率が高く、蛋白質合成効率が上昇する。従って、両相の容量比は、両相の界面面積によって変化する。合成反応は静置条件下で、反応温度および時間は用いる蛋白質合成系において適宜選択される。
また本発明において、緩衝液は上記の通りゲルまたはゾルに含ませて反応液と接触させることもできる。この場合、上記膜を介して両者を接触させてもよいし、界面を有するように直接接触させてもよい。
反応容器中で、上記緩衝液が含まれるゲルまたはゾルと反応液とを界面を有して接触させる方法としては、上記の通り反応液中の低分子副産物・分解物が緩衝液へ拡散するに十分な接触面を有する方法であれば特に制限はない。ゲルとしてアガロースゲルを用い、該アガロースゲルを緩衝液で固化させて調製した場合、このアガロースゲルの上に反応液を載せる方法が好ましい。また、緩衝液に浸漬するように調製したアガロースゲルの場合には、反応容器に反応液とアガロースゲルを投入する方法が用いられる。このとき、投入する順番は特に制限はないが、アガロースゲルを投入した後に反応液を投入すれば、アガロースゲルの投入の際に反応液の飛散等を考慮に入れずに操作することができる。上記の通り、反応液とゲルおよびゾルとを接触させる方法の具体例としては、反応液をゾルまたはゲルの表面に重層する方法、反応液に固形ゲルを投入する方法、ゾルまたはゲルの表面に界面を有して接触させる方法などが挙げられる。
さらに、ゾルの1例としてゲルろ過剤を用いる場合は、該反応容器に上記緩衝液で平衡化したゲルろ過剤を充填した後に、この上部に反応液を重層する方法が好ましい。
上記反応液と緩衝液との接触において、反応容器として、上記した適当な孔径のフィルターや透析膜を底部に有するものを用いる場合には、このフィルターや透析膜を介し、さらに上記緩衝液を接触させるようにすることもできる。具体的には、例えば、マルチウェルプレートの底部に上記のフィルターがあるものを用いる場合、該ウェルの底部がつかる程度にさらに容器を設け、該容器中に緩衝液を入れるもの等が好ましい。
さらには、反応液と緩衝液との接触は、合成反応液により合成反応を行い、合成反応が停止した時点で、該反応液を、上記緩衝液を含むゲルに供給し、合成物や副産物・分解物を排出することにより蛋白質合成を行う方法(特開2000−333673号公報:以下これを「不連続ゲルろ過法」と称することがある)で行うこともできる。
具体的には、例えば、鋳型核酸を除いた上記反応液を必要に応じて適当時間プレインキュベートした後、鋳型核酸を添加して、適当な容器に入れ反応を行う。容器としては、例えばマイクロプレート等が挙げられる。
合成反応の停止した上記反応液を、予め上記緩衝液で平衡化したゲルろ過カラムに通して反応液と緩衝液とを接触させる。このろ過溶液を再度適当な反応温度に保温することにより、合成反応が再開し、蛋白質合成は数時間にわたって進行する。以下、この反応とゲルろ過操作を繰り返す。
蛋白質合成の反応温度及び時間は、用いる蛋白質合成系において適宜選択されるが、リボソームとしてコムギ胚芽抽出物を用いる系においては、通常10〜40℃で、好ましくは18〜30℃、さらに好ましくは20〜26℃で、通常10分〜12日間、好ましくは10〜48時間、また、大腸菌抽出物を用いる系では通常30〜37℃、好ましくは30℃程度が適当である。
上記方法により蛋白質合成反応を長時間わたって維持することができるので、反応容器は、蛋白質合成反応中に反応液が蒸発して濃縮されないように密閉手段を有するものが好ましい。
かくして得られた蛋白質は、それ自体既知の方法により確認することができる。具体的には、例えばアミノ酸の蛋白質への取りこみ測定や、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動による分離とクマシーブリリアントブルー(CBB)による染色、オートラジオグラフィー法(Endo, Y. et al., J. Biotech., 25, 221-230 (1992); Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 97, 559-564(2000))等を用いることができる。
また、反応液には、目的蛋白質が高濃度に含まれているので、透析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ゲルろ過等のそれ自体既知の分離、精製法により、該反応液から目的蛋白質を容易に取得することができる。
5)試薬キット
本発明の試薬キットは、上記緩衝液と、少なくともリボソームを含有する試薬溶液含み、上記無細胞蛋白質合成方法に用いるものである。
該キットには、他に、無細胞蛋白質合成反応のための試薬、上記した反応液を作製するために必要な成分、RNAポリメラーゼ、陽性コントロール用鋳型核酸、鋳型核酸を作製するためのベクター、バッファー類、反応容器等が含まれるが、これら全てを含む必要はなく、本発明の方法に用い得るキットであれば如何なる試薬および容器の組み合わせであってもよい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に明記しない限り、minは分、lはリットル、mlはミリリットル、Mはモル/リットル、mMはミリモル/リットル、μgはマイクログラムをそれぞれ表す。
リボソーム画分の調製(ワーリングブレンダーによる微粉砕抽出)
北海道産のチホク小麦(未消毒)を用い、WO02/295377号公報の実施例に記載の方法に準じて、胚芽を分離し、胚芽の純度(任意のサンプル1g当たりに含まれる胚芽の重量割合)が98%以上になるまで選別した。得られた小麦胚芽50gを、4℃の蒸留水中に懸濁し、超音波洗浄器を用いて洗浄液が白濁しなくなるまで洗浄した。次に、ノニデット(Nonidet)P40の0.5容量%溶液に懸濁し、超音波洗浄器を用いて洗浄液が白濁しなくなるまで洗浄して胚乳分を除去した小麦胚芽を得た。
次いで、以下の操作を4℃で行い、小麦胚芽抽出物含有液を得た。まず洗浄した小麦胚芽を抽出Buffer(HEPES−KOH(pH7.8)80mM、酢酸カリウム200mM、酢酸マグネシウム10mM、塩化カルシウム4mM、L型アミノ酸20種類各0.6mM及びジチオスレイトール8mM)100mlとともにワーリングブレンダーに入れ、回転数5000〜20000rpmで30秒間粉砕した。ブレンダー内壁に付着した胚芽等をかき落とした後再び5000乃至20000rpmで30秒間粉砕する作業を2回行った。得られた胚芽粉砕物の粒径分布を、レーザー散乱方式粒度分布装置(堀場製作所製LA−920)を用いて測定した。
得られた抽出液と粉砕胚芽の混合物を遠心管に移し30000g、30分間の遠心をかけ上清を採取した。これをさらに30000g、30分間の遠心をかけ上清を採取する操作を5回繰り返し濁りのない上清を得た。これをあらかじめBuffer(HEPES−KOH(pH7.8)40mM、酢酸カリウム100mM、酢酸マグネシウム5mM及びジチオスレイトール4mM)で平衡化しておいたセファデックスG−25カラムでゲルろ過を行った。得られた液を30000g、12分間の遠心をかけ上清を採取し、限外ろ過膜を使用して濃縮を行った。これを小麦胚芽抽出物含有液(リボソーム画分)とした。試料の濃度は、260nmにおける光学密度(O.D.)(A260)が180〜250(A260/A280=1.5程度)になるように調製した。
mRNA溶液の調製
(1)無細胞蛋白質合成系用plasmidの作製
SP6プロモーター配列およびリボソーム結合配列を5’→3’の順に含むオリゴDNA(配列番号1)を化学合成により取得した。
蛋白質合成用ベクターであるpEU3b(Sawasaki, T., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99(23), 14652-14657(2002))からSP6プロモーター配列、Ω配列およびマルチクローニングサイトを除去して、NaeIで切断し、上記で取得した配列番号1で示
されるDNA断片とライゲーションを行った。このプラスミドをpEUbluntとした。
緑色蛍光蛋白質(GFP)をコードするDNA配列が含まれるプラスミド(Plasmid-pCaMV35S-sGFP(S65T)-NOS3'(25)、Haas, J. et al., Curr. Biol., 6(3), 315-324(1996))を鋳型として、配列番号2および3に記載の塩基配列を有するプライマーを用いてPCRを行った。増幅されたDNA断片をSfi Iで切断し、pEUbluntをSmaIおよびSfiIで切断したものとライゲーションを行った。得られたプラスミドをGFP/pEUとした。
(2)mRNA溶液の調製
上記(1)で調製したGFP/pEUを鋳型として、SP6 RNAポリメラーゼ(Promega社製)を用いて転写を行い、得られたRNAをエタノール沈殿により定法に従い精製して用いた。精製を行ったmRNAを30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.65mM酢酸マグネシウム、2.5mMジチオスレイトール、1.2mM ATP、0.25mM GTP、16mMクレアチンリン酸、0.4mg/mlクレアチンキナーゼ、0.380mMスペルミジンに溶解させ、mRNA溶液とした。
合成反応液の調製
(1)合成前の反応液の調製
実施例1で調製した小麦胚芽抽出液を、260nmの波長での吸光度が75Absの条件で、組成が30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.65mM酢酸マグネシウム、2.5mMジチオスレイトール、1.2mM ATP、0.25mM GTP、16mMクレアチンリン酸、0.4mg/mlクレアチンキナーゼ、0.38mMスペルミジン、各20種アミノ酸濃度がそれぞれ13.05、7.5、3.75、1.875、0.45、0.15、0.075、0.0375、0mMになるように調製した。次に、各アミノ酸条件の小麦胚芽抽出液:40ulと実施例2で調製したmRNA溶液:20ulとを混合し、合成反応液とした。
(2)合成反応
調製した合成反応液:60ulを透析カップ(第一化学社製)中に入れ、緩衝液1(30mM HEPES−KOH(pH7.8)、100mM酢酸カリウム、2.65mM酢酸マグネシウム、2.5mMジチオスレイトール、1.2mM ATP、0.25mM GTP、16mMクレアチンリン酸、0.4mg/mlクレアチンキナーゼ、0.38mMスペルミジン):3mlを透析外液とし26℃の条件で40時間合成反応を行った。合成された蛋白質(GFP)は、この条件では透析カップ内に留まり、合成反応の進行状況を肉眼で観察することができた。
GFPの蛍光強度の結果を図1に示す。X軸は各合成液のアミノ酸濃度条件を示す。Y軸はGFPの蛍光強度を示す。またSDS-PAGEの結果を図2に示す。
図1および2から明らかな通り、合成反応液中のアミノ酸濃度が1.25mM〜5mMの条件で最も合成量が高く、これらの濃度以下では合成量の低下が大きく、また8.7mMの条件では合成量が減少していた。
反応効率の検討
反応液及び透析外液のアミノ酸濃度を変更した以外は、実施例3と同様の条件でGFPの合成を行い、合成蛋白質量および残存するアミノ酸量を測定し、用いたアミノ酸に対する蛋白質(GFP)の収率(重量%)を算出した。なお、合成蛋白質量(g)は、CBB染色で定量した反応液中の蛋白質濃度(mg/ml)に液量をかけて算出した。
その結果、24時間の反応条件では、コントロール(反応液および透析外液中にアミノ酸0.3mM添加)の収率が1.2重量%に対し、反応液中にのみ2.5mM添加した条件での収率は7.0重量%であった。また、48時間の反応条件では、コントロール(反応液および透析外液にアミノ酸0.3mM添加)の収率が2.3重量%に対し、反応液にのみ2.5mM添加した条件での収率は10.6重量%であった。
この結果から、本発明の方法では、基質アミノ酸当りの蛋白質の収率が優れる、即ち効率的な蛋白質合成が可能であることが分かる。
本発明の方法による蛋白質合成の結果を示す図である。図中、縦軸はGFPの蛍光強度を示し、横軸は合成反応液中の基質アミノ酸の初期濃度を示す。 本発明の方法による蛋白質合成の結果を示すSDS-PAGE(SDS−ポリアクリルアミド電気泳動)の写真である。写真中の矢印が目的蛋白質(GFP)のバンドである。

Claims (11)

  1. 蛋白質合成反応液と緩衝液とを接触させて無細胞系で蛋白質合成を行う方法であって、該蛋白質合成反応液は、少なくとも鋳型核酸、リボソーム、基質エネルギー又は基質エネルギーとその再生に必要な成分、転移RNAおよび基質アミノ酸を含み、かつ蛋白質合成能を有する水溶液であり、該緩衝液は、少なくとも鋳型核酸、リボソームおよび基質アミノ酸を含まず、かつ該蛋白質合成能の維持機能を有する水溶液であることを特徴とする無細胞蛋白質合成方法。
  2. 合成反応液と緩衝液との接触が、膜を介して行われる請求項1に記載の方法。
  3. 膜が、透析膜、限外濾過膜、セラミック膜、半透膜および中空子膜よりなる群から選ばれる請求項2に記載の方法。
  4. 緩衝液が、ゾル又はゲルに含まれる請求項1に記載の方法。
  5. 合成反応液と緩衝液との接触が、界面を有して行われる請求項1又は4に記載の方法。
  6. 緩衝液が、少なくともマグネシウムイオンを含み、pHが6.8〜7.6の範囲内である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 基質エネルギーがATPであり、その再生に必要な成分がクレアチンリン酸とクレアチンキナーゼ又はホスホエノールピルビン酸とピルビン酸キナーゼである請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 合成反応液中の基質アミノ酸の濃度が、0.01〜10mMの範囲内である請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 少なくとも鋳型核酸、リボソームおよび基質アミノ酸を含まず、かつ該蛋白質合成能の維持機能を有する水溶液であり、請求項1〜8のいずれかに記載の方法に用いることを特徴とする緩衝液。
  10. 水溶液が、少なくともマグネシウムイオンを含み、pHが6.8〜7.6の範囲内である請求項9に記載の緩衝液。
  11. 請求項9または10に記載の緩衝液、少なくともリボソームを含有する試薬溶液含み、請求項1〜8のいずれかに記載の方法により目的蛋白質を合成するための試薬キット。
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