JP2005338725A - 反射型表示媒体、それを用いた表示素子及び表示装置 - Google Patents

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一成 川合
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Abstract

【課題】 本発明は視認性、質感がきわめて紙に近い反射型表示媒体及びそれを用いた表示素子ならびに表示装置を提供することを課題とする。
【解決手段】
拡散光源を光源とした際の、0°方向への反射率が50%以上であり、0°から70°まで及び0°から−70°までの角度変化に対して反射率が増加し、
かつ、入射角15°より入射する平行光源に対する、0°方向での明度(L )と、−75°方向での明度(L )と、−15°方向での明度(L )との関係が、L /L >1.4、かつL /L <1.2であることを特徴とする反射型表示媒体(但し、表示媒体垂直方向を0°とし、媒体水平方向を±90°とする)を提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、視認性、質感がきわめて紙に近い、反射型の表示媒体及びそれを用いた表示素子ならびに表示装置を提供する。
表示素子に関して現在までに多種多様な技術が研究開発されている。その中でも視認性が高く目に優しいといわれている反射光による表示素子についても種々の方法が検討されている。反射光による表示素子は、周囲の明度に表示面が追随する等の理由のため、目が疲れにくく長時間の使用に耐える点が最大の長所として挙げられている。しかし、この長所を十分に発揮するには、紙と同様な光散乱による自然で柔らかい、紙的な白さを表示媒体に如何にして付与するかが重要である。紙と同様な光散乱挙動を示す表示媒体は、すなわち紙に近い視認性を有していると言えるからである。
反射光を利用する他の表示素子として、電圧印加により、固体や液体に生じる可逆的な色相の変化を利用する電気化学型表示素子が知られている(例えば特許文献1参照。)。本素子では着色表示に関しては、液晶等の表示媒体とは異なり、色相がクリアで視野角依存性もない優れた表示を行うことが可能である。特許文献1では、酸化チタン等の着色剤及び発色剤としての金属イオンを含有した高分子固体電解質層を電極間に挟んだ、エレクトロデポシション型表示素子について記載されている。
しかしながら上記方法は、視認性に最も重要と考えられる白表示に関しては、白色顔料を用いているため、白さを出すための機構が紙とは根本的に異なるため、視認性および質感は紙とは異なる。また、本方式のように高分子電解質を用いた方式で、白色度を高めようとした場合には白色顔料を大量に電解質に含有させる必要がある。しかしながら白色顔料自体にはイオン伝導性を有していないため、電解液を用いた場合に比してイオン伝導度が低くなるため、表示の応答速度が遅くなる上、駆動電圧が上昇しやすい。また、イオン伝導性の温度依存性が液体の電解質を用いた場合に比して大きいため、広い温度領域、特に低温度での安定した駆動がしにくくなる。
特開平14−258327号公報
本発明は視認性、質感がきわめて紙に近い反射型表示媒体及びそれを用いた表示素子ならびに表示装置を提供することを課題とする。
本発明者らは、拡散光源を光源とした際の、
0°方向への反射率が50%以上であり、
0°から70°までの角度増加及び0°から−70°までの角度減少に対して反射率が増加し、
かつ、入射角15°より入射する平行光源に対する、
0°方向での明度(L )と、
−75°方向での明度(L )と、
−15°方向での明度(L )との関係が、
L / L >1.4、かつL /L <1.2である反射型表示媒体(但し、表示媒体垂直方向を0°とし、媒体水平方向を±90°とする)が紙と同等な光散乱特性を有し、きわめて紙と近い視認性を有すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、
0°方向への反射率が50%以上であり、0°から70°まで及び0°から−70°までの角度変化に対して反射率が増加し、
かつ、入射角15°より入射する平行光源に対する、
0°方向での明度(L )と、−75°方向での明度(L )と、−15°方向での明度(L )との関係が、
L /L >1.4、かつL /L <1.2であることを特徴とする反射型表示媒体を提供する(但し、表示媒体垂直方向を0°とし、媒体水平方向を±90°とする)。
また、本発明は、ジカルボン酸ハロゲン化物、ジクロロホーメート化合物及びホスゲン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を有機溶媒に溶解した有機溶液(A)と、
珪酸アルカリと、2種以上の金属元素を有しその金属元素の1種がアルカリ金属である、金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属化合物と、ジアミンとを含有する塩基性の水溶液(B)
とを混合攪拌し、重縮合反応させることにより得られる有機ポリマーと無機化合物との複合体を得る複合体合成工程と、
前記複合体の固形分率が35質量%以下の状態で、電解液を含浸させて、複合体に電解液を保持させる含浸工程とを有することを特徴とする反射型表示媒体の製造方法を提供する。
本発明により、紙と同等な光散乱挙動を有することで、視認性、質感が紙と同等の反射型の表示媒体、それを用いた表示素子及び表示装置を提供できる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の反射型表示媒体、それを用いた表示素子及び表示装置は、白色顔料等を用いて白色を表示させる表示媒体とは光散乱挙動が異なり、視認性、質感が紙とほぼ同等である。
(反射型表示媒体の光学特性)
本発明で用いられる反射型表示媒体は、拡散光源を光源とした際の、0°方向への反射率が50%以上となる紙様の白さを有し、0°から70°までの角度増加、及び0°から−70°までの角度減少に対して反射率が増加するという反射率の角度依存性をもち、
かつ、入射角15°より入射する平行光源に対する、0°方向での明度(L )と、
−75°方向での明度(L )と、−15°方向での明度(L )との関係が、
L / L >1.4、かつL /L <1.2である。すなわち前方光散乱特性をもち、かつ指向性の強い正反射を示さないことを特徴とする反射型表示媒体である(但し、表示媒体垂直方向を0°とし、媒体水平方向を±90°とする)。
上記のパラメーターはすなわち、拡散光源による反射率が50%以上と明るく、
拡散光源、平行光源にかかわらず、媒体面方向への反射率や明度が媒体垂直方向への反射率や明度が高い、すなわち光散乱能力が高く、
且つ、平行光源に対する鏡面反射のような強い正反射を有していないことを表しており、これらの特徴はまさに、紙様光学特性の特徴を現している。
本発明の表示媒体は、このような光学特性を有しているため、視認性や質感が紙と同等であり、現状強く所望されている表示媒体の特徴に合致するものである。このような光散乱挙動を有する反射型表示媒体は知られていない。
このような、光散乱特性は主として表示媒体を構成している材料の形状に起因していることが明らかとなっている。本発明で用いられる表示媒体を構成する材料は、繊維径が20μm以下でアスペクト比が10以上のパルプ形状、及び/または、平均粒径が50μm未満の粉体形状を有していることが好ましい。このような形状を有することで、媒体構成材料の微粒子とその周囲を満たす電解液との間で光散乱が多くかつ、媒体の面方向に強く生じることにより、紙と同様な光散乱挙動を有する結果、紙と同様な視認性と質感を有する媒体とすることができる。このため、本発明の反射型表示媒体を用いると、光学特性、視認性、質感が極めて紙に近く高い反射率を有する反射型表示素子及び表示装置を提供することができる。
本発明の反射型表示素子は、電極を有する2枚の基板を、該電極を内側にして相対向させた基板間に、本発明の反射型表示媒体を挟持させることにより得られる。
本発明の反射型表示媒体が電気化学的な表示媒体であるためには、このような形状のほかに、イオン伝導が高い必要がある。媒体のイオン伝導を高くするためには、イオン伝導が最も高いと言われる電解液をいかに多量に漏洩させずに含浸させうるかが重要である。前述の形状と電解液保持特性とを併せ持つ表示媒体用の材料として下記の有機無機複合体が特に好適に用いられる。
(有機無機複合体)
本発明は表示媒体として、有機無機複合体を用いることが好ましい。本発明で好適に用いられる有機無機複合体は、ポリアミド、ポリウレタンおよびポリ尿素からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機ポリマーと、シリカおよび金属酸化物から選ばれる少なくとも1種の無機化合物とから構成される。
また、該無機化合物の平均粒子径は1μm以下であり、複合体中に20〜80質量%含有される。
サブミクロンメートル〜ナノメートルオーダーの無機微粒子が複合体全体に対して高い含有率で微分散状態で存在していることにより多量の電解液を保持することができるため好ましい。
(有機成分)
有機ポリマーは、ポリアミド、ポリウレタンおよびポリ尿素からなる群から選ばれる少なくとも1種である。ポリアミドは、例えば、後述のジカルボン酸ハロゲン化物とジアミンとの重縮合によって得られるものであり、その構造は、重縮合に用いるこれらモノマーの種類によって決まる。ポリウレタンは、例えば、後述のジクロロホーメート化合物とジアミンとの重縮合によって得られるものであり、その構造は、重縮合に用いるこれらモノマーの種類によって決まる。ポリ尿素は、例えば、後述のホスゲン系化合物とジアミンとの重縮合によって得られるものであり、その構造は、重縮合に用いるこれらモノマーの種類によって決まる。
(無機成分)
無機化合物は、シリカ(SiO2 )および金属酸化物から選ばれる少なくとも1種である。
金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化テルルなどが挙げられる。保持することができる電解液の量(つまり表示媒体のイオン伝導度の大きさ)及び、得られる表示媒体の白色度の観点から、無機化合物としては、シリカまたは酸化アルミニウムが好ましい。
本複合体が電解液を多く保持して高いイオン伝導度を有することで良好な表示特性を持ち、且つ、有機ポリマーと無機粒子との界面領域を広くすることで高い光散乱効率を与え、紙に近い質感の高い白色度を得るためには、前記複合体の無機化合物の平均粒子径が1ミクロン以下であり、更に好ましくは500nm以下、最も好ましくは100nm以下である。(複合体の無機化合物の平均粒径は複合体より75nm厚の超薄切片を透過型電子顕微鏡(TEM)で10万倍に拡大し、100個の粒子径を目視により観察しその平均値を無機化合物平均粒子径としている。(詳細な測定方法は実施例中に記載))
また、同様な効果を得るために前記複合体(100質量%)中の無機化合物の含有率は、20〜80質量%であることが好ましく、更に好ましくは複合体中30〜70質量%である。
また、本発明で用いる有機無機複合体は前述の通り、電解液を漏洩させず且つ高いイオン伝導度を有する必要があるため、電解液の保持量が多い必要がある。電解液の保持量は複合体100質量部に対して、400〜2500質量部であることが好ましい。また、前記複合体は、ウエットケーキをシート状にした際の視認性や、電解液保持能力の観点から、繊維径が20ミクロン以下でアスペクト比が10以上のパルプ形状を有していることが好ましい。
また、前記複合体は、ジカルボン酸ハロゲン化物、ジクロロホーメート化合物およびホスゲン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を有機溶媒に溶解した有機溶液(A)と、珪酸アルカリ、2種以上の金属元素を有しその金属元素の1種がアルカリ金属である、金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物およびジアミンを水に溶解した水溶液(B)とを接触させることにより得られる反応生成物であることが望ましい。この方法で重合させる(いわゆる液液重合)ことにより反応生成物は、パルプ(界面重合の場合)または微粒子(乳化重合の場合)で得られるため、所望の形状が直接得られるため好ましい。
(電解液)
本発明で用いる表示媒体は電解液を含んでいるが、用いる電解液は、支持電解質とこれを溶解させる溶媒とから構成される。本発明で用いる溶媒としては水系、非水系のどちらでもよく、水のほかに、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、2−エトキシエタノール、2−メトキシメタノール、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ブチロニトリル、グルタロニトリル、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコール、プロピレングリコール等の極性溶媒を例示することができる。なお、水系の場合には0℃以下での凝固を防止することで低温条件下の動作を満たすため、上記溶媒の内、水と相溶する溶媒を相溶させて用いることができる。
本発明で用いる有機無機複合体の無機成分は各種の材料を選択することができる一方、有機成分はポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素に限定されている。これら有機ポリマーの屈折率は1.5近辺であるため、複合体を構成する有機ポリマーとの屈折率差が高い電解液を用いると、電解液の浸漬による該複合体の白色度の低下を最小限に抑え、より高い白色度を維持した表示媒体とすることができる。有機ポリマーがポリアミド6.6である場合は該ポリマーの屈折率は1.53であるため、好ましくは1.40以下の屈折率の溶媒、さらに好ましくは1.38以下の溶媒を用いる。このような溶媒としては水、アセトニトリル、メタノール、エタノール、アセトニトリル、2−エトキシエタノール、2−メトキシメタノール、イソプロピルアルコール等やこれらの混合物を例示することができる。
(支持電解質)
電解液を構成する支持電解質としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、過塩素酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、ホウフッ化リチウム等のリチウム塩、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム等のハロゲン化アルカリ金属、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロリド、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム、ホウフッ化とトラブチルアンモニウム等のアンモニウム塩等を例示することができる。
(電極)
本発明で用いる電極は視面側に位置するものは透明である必要がある。これらとしては、現在最も広く用いられているITO(インジウムスズ酸化物)の他にATO(アンチモンスズ酸化物)、TO(酸化スズ)、ZO(酸化亜鉛)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、FTO(フッ素スズ酸化物)等を例示することができる。一方、透明電極と対向する電極は必ずしも透明である必要はない、そのため上記金属酸化物の他、電気化学的に安定な金属類、たとえば、白金、金、コバルト、パラジウム等や炭素材料を用いることもできる。
(基材)
本発明で用いる基材としては、視面側に用いる材料については表面が平滑で、光の透過率が高く、上記電極を設置できるものであれば特に限定されない。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリカーボネートなどのプラスチックシートやガラス板などを挙げることができる。視面の反対側に用いる基材の場合は、光透過率が高い必要もない。
(消着色部)
本発明の反射型表示媒体を電気化学型反射型表示媒体として使用する際に、電気化学型反射型表示素子における消着色部の導入形式としては2つの方式を挙げることができる。第一の方式としては、電気化学的な酸化還元により変色する発色剤を電解液中に予め溶解させておき、これを本発明の電気化学型に使用する反射型表示媒体中に含有させ、電気の印加により電極上で析出させることで着色し、溶解させることで消色する材料を用いる方式である。
第二の方式としては電気化学的な酸化レベル、還元レベルを変化させることにより発色、消色する材料層を本発明の電気化学型に使用する反射型表示素子の視面側の電極上に形成しておく方式である。
前記のうち第一の方式では発色剤を電解液中に溶解状態で共存させ得る、有機化合物および金属化合物を用いることができる。発色剤として用いられる有機化合物としてはベンゾキノン、ナフサキノン、アントラキノン、ジフェノキノン、ジフェニルキノン、ジベンゾアントラキノン、ビオラントロン、イソビオラントロン、ピラントロン等の有機キノン類を例示することができる。これら有機キノン類は電極に駆動電圧を印加することにより、還元され各化合物特有の着色状態を作り出す。また、発色剤として用いられる金属化合物としては、銀、ビスマス、銅、鉄、クロム、ニッケル等のハロゲン化物、硫化物、硝酸塩、過ハロゲン酸塩等を例示することがきる。これらの化合物を電解液中に溶解させることにより、各金属はイオン化するため、該電解液を発色剤として用いることができる。たとえば、銀化合物を溶解させた電解液を用いた場合には、電極に駆動電圧を印加すると、Ag+e→Agの還元反応が陰極側で生じて、このAg析出物により電極上が黒色に変化する。上記金属のうちビスマス、銀が、電解液に溶解させた状態でほぼ透明である上に、析出物の色が濃く、消着色の可逆反応が良好であることより特に好ましく用いられる。
このような銀化合物としては塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀等のハロゲン化銀の他に、過塩素酸銀、塩素酸銀、酢酸銀、臭素酸銀、ヨウ素酸銀、炭酸銀、酸化銀、硫酸銀、硫化銀、硝酸銀、亜硝酸銀等を例示できる。またビスマス化合物としては、塩化ビスマス、臭化ビスマス等のハロゲン化ビスマスの他に、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、オキシ過塩素酸ビスマス、オキシ硫酸ビスマス、硫酸ビスマス、硫化ビスマス、硝酸ビスマス、リン酸ビスマス等を例示できる。これらの化合物は、用いる溶媒や、支持電解質との組み合わせにより、最適なものを選定することができる。
本発明の反射型表示媒体を用いた表示素子であって、上記の発色剤を電解液中に溶解状態で共存させた表示装置の表示素子の構成を図1に示す。
図1の上部側を視面とすると、1は発色剤と支持電解質を含有する電解液を保持した有機無機複合体ウエットケーキ、2はガラスやプラスチック等の透明基材、3はITO等の透明電極、4は対向電極、5は封止剤、6は対向基材である。
前記の消着色部の第二の導入方式では、電極を有する2枚の基板のうち、一方の電極上に電気化学的な酸化還元により変色する材料層を有する。基板の一方の透明電極上に、電気化学的な酸化もしくは還元により変色する材料層によって表示を行うことができる。本方式では電極と接した材料層として有機化合物および金属化合物を用いることができる。材料層を構成する有機化合物としては、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアズレン、ポリチオフェン、ポリインドール、及びポリカルバゾール等の高分子化合物を例示することができるが、特にポリピロールが析出物の色が濃く、消着色の可逆反応が良好であることより好ましく用いられる。また、材料層を構成する無機化合物としては、WO、MoO、V、Nb、TiO、NiO、Cr2O、MnO、CoO及びIrO等を例示することができる。本方式ではこれら消着色が生じる材料層が前記基板の一方の透明電極上に形成されている必要がある。材料層として有機化合物を用いる場合には、上記高分子化合物の原料モノマーを電解重合もしくは化学的重合することにより、該層を透明電極上に製膜することができる。金属化合物を用いる場合には、真空蒸着法、電子ビーム真空蒸着法、スパッタリング法等の公知の方法で製膜することができる。これらの表示素子の構成を図2に示す。
(複合体合成工程)
本発明において、紙的質感を表示媒体に付与するため、有機無機複合体は重要な役割を有する。複合体合成工程においては、例えば、常温、常圧下で10秒〜数分程度の攪拌操作により、有機溶液(A)中のモノマーと水溶液(B)中のジアミンとが迅速に重縮合し、有機ポリマーが収率よく得られる。この際、珪酸アルカリなどのアルカリ金属含有無機化合物中のアルカリ金属が、モノマーとジアミンとの重縮合の際に発生するハロゲン化水素の除去剤として作用することで有機ポリマーの生成を促進する。本反応と同時に、アルカリ金属含有無機化合物は、そのアルカリ金属成分が除去され、珪酸アルカリを用いた場合はシリカへ、他の金属化合物を用いた場合はアルカリ金属以外の金属元素を有する無機化合物へと転化することで有機溶液や水に不溶化し、固体として析出する。さらにこの際、モノマーとジアミンとの重縮合による有機ポリマーの生成と、無機化合物の析出とは、どちらか一方のみが生じることはなく平行して起こるため、サブミクロンメートルからナノメートルオーダーの微粒子状ないし3次元ネットワークないしは2次元ネットワーク状の無機化合物が有機ポリマーに微分散した複合体が得られる。
従来より行われている、エクストリューダー等の混合装置を用いて有機ポリマーに無機化合物を複合化させようとした場合、無機化合物を1ミクロン以下の微分散状態で、かつ20質量%以上の高含有質で均一に分散させることは、無機化合物特有の自己凝集性に起因して極めて困難である。本発明で用いる有機無機複合体はこのような材料とは本質的に異なっている。
本発明においては、有機溶液(A)中のモノマーを選択することにより、複合体のマトリクスである有機ポリマーの種類を変えることができる。モノマーとしてジカルボン酸ハロゲン化物を用いた場合はポリアミドを、ジクロロホーメート化合物を用いた場合はポリウレタンを、ホスゲン系化合物を用いた場合にはポリ尿素を、水溶液(B)中のジアミンとの反応によって得ることができる。
(有機溶液(A))
(ジカルボン酸ハロゲン化物)
有機溶液(A)中のジカルボン酸ハロゲン化物としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物;イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物;あるいは芳香環の水素をハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基などで置換した芳香族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物などが挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
(ジクロロホーメート化合物)
有機溶液(A)中のジクロロホーメート化合物としては、例えば、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール等の脂肪族ジオール類の水酸基を全てホスゲン化処理によりクロロホーメート化したもの;レゾルシン(1,3−ジヒドロキシベンゼン)、ヒドロキノン(1,4−ジヒドロキシベンゼン)、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ビフェノール、ビスフェノールS、ビスフェノールA、テトラメチルビフェノール等、1個または2個以上の芳香環に水酸基を2個持つ2価フェノール類の水酸基を全てホスゲン化処理によりクロロホーメート化したものが挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
(ホスゲン系化合物)
有機溶液(A)中のホスゲン系化合物としては、例えば、ホスゲン、ジホスゲンおよびトリホスゲンを挙げることができる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、以上例示した有機溶液(A)中のモノマーは各種組み合わせて、用いても良い。
(有機溶液(A)に用いる有機溶媒)
有機溶液(A)に用いる有機溶媒としては、上記各種モノマーやジアミンとは反応せず、有機溶液(A)中の各種モノマーを溶解させるものであれば特に制限なく用いることができる。このうち水と非相溶なものとしては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類を、水と相溶するものとしては、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸プロピル等の酢酸アルキルなどを代表的な例として挙げることができる。
有機溶液(A)の有機溶媒として水と非相溶なものを用いた場合、生じる重縮合反応は有機溶液(A)と水溶液(B)との界面のみで生じる界面重縮合となる。この場合は得られる有機ポリマーの分子量を容易に高くすることができるため、繊維形状(パルプ状)の複合体が得られやすい。また、有機溶液(A)と水溶液(B)との界面で生じた複合体膜を引き上げつつ紡糸することで、強度の高い長繊維を得てこれをせん断して用いることもできる。一方、有機溶液(A)の有機溶媒として水と相溶するものを用いた場合には、有機溶媒と水とが乳化した状態で重縮合が生じるため、粉体形状の複合体が容易に得られる。
いずれの有機溶媒を用いた場合でも、得られる複合体は、前述の通り粉体またはパルプ状であり、バルク形状に比べて外表面積が大きいため、粉砕等の処理を行うことなしに電解液を容易、速やかに、かつ大量に保持させることができる。
(水溶液(B))
(ジアミン)
水溶液(B)中のジアミンとしては、有機溶液(A)中の各モノマーと反応し、有機ポリマーを生成するものであれば特に制限なく用いることができる。具体的には、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタンなどの脂肪族ジアミン;m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレンなどの芳香族ジアミン;あるいは芳香環の水素をハロゲン原子、ニトロ基、またはアルキル基などで置換した芳香族ジアミンなどが例として挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶液(A)中のモノマー濃度、および水溶液(B)中のジアミン濃度は、重縮合反応が十分に進行すれば特に制限されないが、各々のモノマー同士を良好に接触させる観点から、0.01〜3モル/Lの濃度範囲、特に0.05〜1モル/Lが好ましい。
(珪酸アルカリ)
水溶液(B)中の珪酸アルカリとしては、JIS K 1408に記載された水ガラス1号、2号、3号などのA2O・nSiO2の組成式で表されるもの等が挙げられる。ここで、Aはアルカリ金属、nの平均値は1.8〜4である。また、nの平均値が0.8〜1.1である、メタ珪酸アルカリ(たとえばメタ珪酸ナトリウム1種、2種)も用いることができる。珪酸アルカリに含まれるアルカリ金属化合物が有機溶液(A)中のモノマーと水溶液(B)中のジアミンとが重縮合する際に発生する酸の除去剤として作用することで、水ガラス(珪酸アルカリ)は、モノマーとジアミンとの重縮合を促進すると同時に、極性溶媒に不溶の固体ガラス(シリカ)に転化することで複合体を構成する無機化合物の原料となる。
(アルカリ金属含有金属化合物)
水溶液(B)中の、2種以上の金属元素を有しその金属元素の1種がアルカリ金属である、金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸化物(以下、アルカリ金属含有金属化合物とも記す)としては、一般式AxMyBzとして表すことができる化合物を挙げることができる。ここで、Aはアルカリ金属元素であり、Mはアルカリ金属以外の金属元素からなる群から選ばれる少なくとも1種類以上の金属元素であり、BはO、CO3 、OHからなる群から選ばれる少なくとも1種の基であり、x、y、zは、A、MおよびBの結合を可能とする数である。上記一般式AxMyBzで表される化合物は、水に溶解し塩基性を示すものが好ましい。アルカリ金属含有金属化合物に含まれるアルカリ金属もまた、珪酸アルカリ中のアルカリ金属化合物と同様に、重縮合の際に発生する酸の除去剤として作用することで、モノマーとジアミンとの重縮合を促進すると同時に、極性溶媒に不溶の金属化合物に転化することで複合体を構成する無機化合物の原料となる。
アルカリ金属含有金属化合物の内、上記一般式中のBがOである化合物としては、亜鉛酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、亜クロム酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、スズ酸ナトリウム、亜テルル酸ナトリウム、チタン酸ナトリウム、バナジン酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウム等のナトリウム複合酸化物;亜鉛酸カリウム、アルミン酸カリウム、亜クロム酸カリウム、モリブデン酸カリウム、スズ酸カリウム、マンガン酸カリウム、タンタル酸カリウム、亜テルル酸カリウム、鉄酸カリウム、バナジン酸カリウム、タングステン酸カリウム、金酸カリウム、銀酸カリウム等のカリウム複合酸化物;アルミン酸リチウム、モリブデン酸リチウム、スズ酸リチウム等のリチウム複合酸化物のほか、ルビジウム複合酸化物、セシウム複合酸化物などが挙げられる。
上記一般式中のBがCO3 とOHとの双方の基を含むアルカリ金属含有金属化合物としては、炭酸亜鉛カリウム、炭酸ニッケルカリウム、炭酸ジルコニウムカリウム、炭酸コバルトカリウム、炭酸スズカリウム等を例示することができる。
これらのアルカリ金属含有金属化合物は、水に溶解させて用いるため、水和物であってもよい。また、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、前述の珪酸アルカリと同時に用いてもよい。
水溶液(B)中のアルカリ金属含有無機化合物の濃度は、有機溶液(A)中のモノマー濃度および水溶液(B)中のジアミン濃度によってある程度は決定されるが、複合体の高収率を維持し、かつ重縮合時の過剰な発熱により生じうる有機溶液(A)中のモノマーと水との副反応を防止する理由より、1〜200g/Lが望ましい。
アルカリ金属含有無機化合物は、重縮合反応時に生じるハロゲン化水素を中和して重縮合反応を促進させる作用も有するため、これらの配合量が少なく、生じるハロゲン化水素が重縮合反応の進行を阻害する場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの酸受容体を水溶液(B)に添加してもよく、上記酸受容体の溶液を合成系に後添加してもよい。
(製造装置)
複合体の製造に用いられる製造装置としては、有機溶液(A)と水溶液(B)とを良好に接触させることができる装置であればとくに限定されず、連続式、バッチ式のいずれの方式でも可能である。連続式の具体的な装置としては、大平洋機工株式会社製「ファインフローミルFM−15型」、同社製「スパイラルピンミキサSPM−15型」、あるいは、インダク・マシネンバウ・ゲーエムベー(INDAG Machinenbau Gmb)社製「ダイナミックミキサDLM/S215型」などが挙げられる。バッチ式の装置としては、有機溶液(A)と水溶液(B)との接触を良好に行わせる必要があるので、プロペラ状翼、マックスブレンド翼、ファウドラー翼等を持つような汎用の攪拌装置を用いることができる。
水溶液(B)中のジアミンとして脂肪族ジアミンを、有機溶液(A)中のモノマーとして脂肪族ジカルボン酸ハロゲン化物を用いた場合には、重縮合によって強固なゲル状物が生成する場合がある。その場合にはゲルを破砕し反応を進行させるために高い剪断力を持つミキサーを用いることが好ましく、ミキサーの例としては、オスタライザー(OSTERIZER)社製ブレンダーなどが挙げられる。
有機溶液(A)中のモノマーと水溶液(B)中のジアミンとの重縮合反応は、例えば−10〜50℃の常温付近の温度範囲で十分に進行する。したがって、有機溶液(A)と水溶液(B)とを接触させる温度は、−10〜50℃の常温付近の温度範囲とされる。この際、加圧、減圧も必要としない。また、重縮合反応は、用いるモノマー種や反応装置にも
よるが、通常10分以下で完結する。
(電解液含浸工程)
こうして得られた複合体に電気化学的に着色される着色剤としての金属イオン等を溶解させた電解液を含浸、保持させることで本発明の電気化学的表示媒体を得ることができる。上記複合体合成工程で得られる複合体は、およそ4〜7倍質量の水を主体とする極性溶媒を保持したウエットケーキの状態で得られるが、ウエットケーキ状態の複合体に電解液を含浸させ、極性溶媒を電解液に置換してもよいし、ウエットケーキ状態の複合体を一旦乾燥させ、乾燥状態の複合体に電解液を含浸させてもよい。ただし、ウエットケーキ状態の複合体を乾燥させると、有機ポリマーの極性基に由来する水素結合により、複合体が強固に固化し、複合体が電解液を吸収しにくくなって、電解液の保持量をあまり多くすることができなくなるの場合があるので、ウエットケーキ状態の複合体に電解液を含浸させ、極性溶媒を電解液に置換する方法が好ましい。
(複合体に電解液を含浸、保持させる方法)
複合体に電解液を含浸、保持させる方法としては、あらかじめ調製した電解液中に複合体を投入し、十分に分散させた後に濾過する方法や、電解液を複合体に流通させることで電解液を含浸させる方法、複合体を電解液中で分散させた後、元から含有している極性溶媒を留去する方法等が挙げられるがこれらに限定されない。本発明における複合体は、後述の推定機構により、電解液保持特性が極めて高いため、電解液中に複合体を投入、分散させ濾過を行うといった簡単な操作を行うのみで、4〜20倍質量の電解液を保持させたウエットケーキとすることができる。また、複合体の電解液への分散も該複合体がパルプ状または粉体で得られるため、汎用のバッチ式攪拌層を用いて容易に行うことができる。
(加工特性)
複合体が繊維形状の場合は抄紙性を、粉体の場合は塗工性を有しており、複合体自身が加工性を有し、ハンドリングしやすい特徴を持っている。特に複合体が繊維形状の場合は、複合体に電解液を分散させた液を濾過することにより、引っ張り強度や、可とう性や、屈曲に対する追随性が高いウエットケーキシートを得ることができる。そのため、他の材料との複合化や混合の必要がなく、本複合体のみからなる表示媒体を用いてもセパレーターとしての役割を兼備させることができる。
複合体に電解液を含浸、保持させたウエットケーキである表示媒体を、さらに所望の形状に成形することを目的に、ウエットケーキに結合材や各種樹脂等の結着材を、必要とされる白色度、電解液保持性、電子絶縁性等を損なわない範囲で含有させてもよい。
(有機無機複合体の各種機能の発現機構)
本発明で用いる有機無機複合体は、紙に近い光散乱を有する表示素子の白色体、電解液を保持した表示媒体、及び電極間セパレーターの3つの機能を兼備する必要がある。そのため、該複合体ウエットケーキの最良の形態としては、紙に近い視認性、電解液保持特性及び、電子絶縁性のいずれの特性も高いことが挙げられる。これらの特性は有機無機複合体の物性のどのような機構により発現しているかについての推定機構と、このような複合体を合成するための最適な原料について以下に述べる。
(紙様白色体)
本発明の媒体の紙様な光散乱挙動は主として、媒体を構成する材料の形状に起因しているが、構成材料自体に高白色度を付与するための、有機無機複合体の有機成分としては着色の無いポリマーを与える原料が、無機成分としては無色または白色の微粒子を与える材料が好ましく用いられる。
このような有機成分には、有機ポリマーの主鎖が脂肪族である場合は、共役構造を有しないために可視光線の吸収が生じず、着色しないため好ましく用いられる。このような有機ポリマーを合成することができる有機溶液(A)に用いるモノマーとしてはコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物や、1.2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール等の脂肪族ジオール類の水酸基を全てホスゲン化処理によりクロロホーメート化した脂肪族クロロホーメート化合物、ホスゲン、ジホスゲン及びトリホスゲンのホスゲン系化合物を例示することができる。また、水溶液(B)に用いるジアミンとしては1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン等の脂肪族ジアミンを例示することができる。
一方、このような無機成分としては、金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ及び酸化テルル(IV)を例示できる。これらを有機無機複合体に複合化できる無機原料としての金属化合物(1)としてはアルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、亜鉛酸ナトリウム、亜鉛酸カリウム、スズ酸ナトリウム、スズ酸カリウム、亜テルル酸ナトリウム、亜テルル酸カリウム等のアルカリ金属複合酸化物や、炭酸亜鉛カリウム、炭酸ジルコニウムカリウム、等のアルカリ金属複合炭酸化物を例示することができる。
また、シリカも好適に用いることができ、このような無機原料としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等の珪酸アルカリや、等のアルミン酸アルカリを例示することができる。
表示媒体用の電解液として、水等の低屈折率(水は1.33)の溶媒を用いた場合は、白色度に対する無機成分の役割は不明確な点もあるが、無機材料は有機ポリマーと比べて通常屈折率が高い。そのため、電解液に高屈折率の溶媒を用いた場合でも、有機無機複合体を用いることにより、屈折率差による光散乱を生じさせて紙的な視認性を媒体に付与することができる。
(電解液の保持機構)
本発明の表示媒体は、複合体100質量部に対して、400〜2500質量部の多量の電解液を液が漏洩することなく保持できるので、支持電解質を溶解させた電解液に極めて近いイオン伝導性を持つ上、多量の発色剤としての金属をイオン状態で保持することができる。
本発明の表示媒体における電解液保持特性もまた、複合体の有機ポリマーおよび無機化合物の各成分が持つ化学的特性及び形状的な因子により発現している。
複合体中の無機化合物は以下の役割を有すると考えられる。
複合体の無機化合物は、シリカ、金属酸化物であり、これらは極性溶媒との親和性が極めて高い。また、無機化合物の含有率は20〜80質量%と高くすることができ、さらに無機化合物の大きさはサブミクロンメートルからナノメートルオーダー(すなわち平均粒
径が1ミクロン以下)と極めて小さい。
無機化合物がサブミクロンメートルからナノメートルオーダー(すなわち平均粒径が1ミクロン以下)であることは単位質量当たりの表面積が極めて大きい微粒子状ないし3次元ネットワークないしは2次元ネットワーク状の無機化合物が無数に複合体中に存在していることを意味する。これらの無機化合物の広い表面により極性溶媒への強い親和性が付与されることで、複合体には多量の電解液の保持特性が発現する。そのため、無機化合物の平均粒径は好ましくは500nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。また、該複合体は無機化合物の含有率を最大で80質量%と極めて大きくできるため、無機化合物の有する上記の特性を更に一層高くできる(無機化合物による、化学吸着的電解液の保持機構)。
特に無機化合物がシリカまたは酸化アルミニウムの場合は、微粒子状の無機化合物の粒子径が約10ナノメートルと極めて微小となる上、該無機化合物の微粒子同士が一部分で連結したネットワーク構造を形成していることが、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により明らかになっている。この構造により該複合体は50〜150m2 /gの高い比表面積(つまりは多孔質性)を有しており、さらに高い電解液保持性を持ち得る。このような構造を付与できる無機化合物の原料は前述のとおり珪酸アルカリ、アルミン酸アルカリである(物理吸着的電解液の保持機構)。
一方、電解液保持性に対して、有機ポリマーは以下の役割を有すると考えられる。
複合体の有機成分であるポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素はそれらが高い頻度で有するアミド結合、ウレタン結合、尿素結合の高極性に由来して、ポリオレフィン等にくらべ、高い極性溶媒への親和性を持つ。そのため、有機ポリマー成分も電解液保持性に寄与している(有機ポリマーによる、化学吸着的電解液の保持機構)。ただし、本機構のみでは自重100質量部に対して400質量部以上の電解液保持能力がないため、無機化合物を有しない有機ポリマー成分のみの材料を用いては、十分なイオン伝導度を持ちかつ電解液が漏洩しない表示媒体を作製することはできない。また、有機ポリマーがマトリクス(基材)となっていることにより、本来高極性に起因して自己凝集性が高い無機化合物を微分散状態にし、かつハンドリング可能な形状を与えている。
加えて、特に複合体がパルプ形状を有している場合は、複合体の繊維間に水を強固に保持できるので、さらに電解液の保持特性を高めることが可能である。また、複合体の有機ポリマー成分が脂肪族ポリアミド以外の有機ポリマーの場合は複合体形状が粉体となるが、この場合でもブロック形状の複合体にくらべて、材料の外表面積が高いため、高い電解液保持特性、電解液吸収速度を有する(複合体形状による電解液保持性)。
このように、本発明の表示媒体は、上述の機構により水をはじめとした極性溶媒のほとんどを保持することができるので、電解液の極性溶媒の種類に制限がない。また、電解液中の金属イオンや支持電解質の濃度を上げても、電解液保持特性はあまり影響を受けない。そのため高いイオン伝導度を持ち、且つ発色力が強い表示媒体とすることができる。
(電子絶縁性)
本発明における有機無機複合体ウエットケーキが、電子絶縁性を有するセパレーターとしての特性は、有機無機複合体の有機および無機の各成分に電子伝導性を有する材料を用いなければ、問題なく発現する特性である。スズ酸カリウム等のスズ酸アルカリや炭酸スズカリウムを用い、かつ無機化合物を60質量%の高い割合にする場合には使用に注意を要するが、これ以外の無機化合物の原料は問題なく用いることができる。また、有機ポリマーがポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素のいずれの場合でも電子伝導性を有しないため、特に問題なく用いることができる。
また、本発明で用いる有機無機複合体は以下に記載した、実使用において重要な特性を有していることも特徴である。
(耐熱性)
有機ポリマーと無機化合物との複合体は、無機化合物が有する、有機ポリマーへの補強効果に起因して耐熱性が高く(例えば、有機ポリマーとしてポリアミドを、無機化合物としてシリカとから構成されシリカの含有率が60質量%である複合体は300℃以上まで物性変化を生じない)、これに極性溶媒を保持させた本発明の表示媒体もまた耐熱性に優れる。有機無機複合体をゾルゲル法により作製することは広く行われているが、このようにして得られた有機無機複合体ゲルは、一般に100℃以上の高温下ではゲルの脱水反応に伴う硬化等の物性変化が生じることによりゲル状態を安定的に維持できない。
(耐溶媒性)
加えて、本発明における有機無機複合体は極めて高い耐溶媒性を有していることが特徴である。例えば、有機ポリマーとしてポリアミドと、無機化合物としてシリカとから構成される複合体を用いた場合には、ポリアミドを溶解するクレゾール類と、シリカを溶解する強アルカリ溶液以外の液体には極めて安定であるため、多種多様な溶媒を電解液として用いることができる。
以下に実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。特に断らない限り、「部」は「質量部」を表す。
(合成例1:シリカ/ポリアミド複合体の合成)
イオン交換水81.1部に1,6−ジアミノヘキサン1.58部、水ガラス3号9.18部を加え、25℃で15分間攪拌し、均質透明な水溶液(B)を得た。室温下でこの水溶液(B)をオスタライザー社製ブレンダー瓶中に仕込み、毎分10000回転で攪拌しながら、アジポイルクロライド2.49部をトルエン44.4部に溶解させた有機溶液(A)を20秒かけて滴下した。生成したゲル状物をスパチュラで砕き、さらに毎分10000回転で40秒間攪拌した。この操作で得られたパルプ状の生成物が分散した液を、直径90mmのヌッチェを用い目開き4μmのろ紙上で減圧濾過した。ヌッチェ上の生成物をメタノール100部に分散させスターラーで30分間攪拌し減圧濾過することで洗浄処理を行った。引き続き同様な洗浄操作を蒸留水100部を用いて行い減圧濾過することで、純白色のシリカ/ポリアミド複合体の水を含むウエットケーキ(以下、ウエットケーキ(1)と言う。)を得た。
(合成例2:酸化ジルコニウム/ポリアミド複合体の合成)
水溶液(B)としてイオン交換水38.5部に1,6−ジアミノヘキサン1.58部と炭酸ジルコニウムカリウム(K2[Zr(OH)2(CO32])3.79部を入れ、攪拌して得られた均質な水溶液(B)を用いた以外は、実施例1に記載した方法と同様にして、純白色の酸化ジルコニウム/ポリアミド複合体の水を含むウエットケーキ(以下、ウエットケーキ(2)と言う。)を得た。
(合成例3:シリカ/ポリ尿素複合体の合成)
イオン交換水38.5部に1,6−ジアミノヘキサン1.58部、水ガラス1号5.37部を加え、25℃で15分間攪拌し、均質透明な水溶液(B)を得た。室温下でこの水溶液(B)を300mlセパラフラスコ中に仕込み、アンカー翼を用いて毎分300回転で攪拌しながら、トリホスゲン1.34部をトルエン44.4部に溶解させた有機溶液(A)を20秒かけて滴下した。攪拌開始後5分後より白色のポリマー状物が徐々に析出しだした。15分以降は析出ポリマー量に増加は見られなかったため、攪拌開始後25分で合成操作を終了した。この操作で得られた白色生成物が分散した液を、直径90mmのヌッチェを用い目開き4μmのろ紙上で減圧濾過した。ヌッチェ上の生成物をメタノール100部に分散させスターラーで30分間攪拌し減圧濾過することで洗浄処理を行った。引き続き同様な洗浄操作を蒸留水100部を用いて行い減圧濾過することで、純白色のガラス/ポリ尿素複合体のウエットケーキ(以下、ウェットケーキ(3)と言う。)を得た。
(合成例4:無機化合物を含まないポリアミドの合成)
水溶液(B)として、水ガラス3号の代わりに水酸化ナトリウム1.18部を加えたものを用いた以外は、合成例1に記載した方法と同様にして、無機化合物を一切含まない淡黄色のポリアミドの水を含むウエットケーキ(以下、ウエットケーキ(4)と言う。)を得た。
(合成例5:無機化合物を含まないポリ尿素の合成)
水溶液(B)中の水ガラス1号の替わりに水酸化ナトリウム1.247部を用いた以外は合成例3と同様な方法で合成をおこなうことで、無機成分を一切含まない淡黄色のポリ尿素ウエットケーキ(以下、ウェットケーキ(5)と言う。)を得た。
(複合体の物性評価)
得られた各種有機無機複合体を以下の(1)〜(3)の方法に従って分析した。
(1)無機化合物含有率(灰分)の測定法
各材料に含まれる無機化合物の含有率の測定法は以下の通りである。
各材料を絶乾後に精秤(複合体質量)し、これを空気中、600℃で3時間焼成し、有機ポリマー成分を完全に焼失させ、焼成後の質量を測定し灰分質量(=無機化合物質量)とした。下式により無機化合物含有率を算出した。
無機化合物含有率(質量%)=(灰分質量/複合体質量)×100
(2)複合体中の無機化合物の粒径測定および分散状態の観察
複合体を170℃、20MPa/cm2 の条件で2時間熱プレスを行い、厚さ約1mmの複合体からなる薄片を得た。これをマイクロトームを用いて厚さ75nmの超薄切片とした。得られた切片を日本電子社製透過型電子顕微鏡「JEM−200CX」にて100000倍の倍率で観察した。無機化合物は暗色の像として、明るい有機ポリマーに微分散しているのが観察された。図3は、シリカ/ポリアミド複合体の透過型電子顕微鏡写真であり、図4は、酸化ジルコニウム/ポリアミド複合体の透過型電子顕微鏡写真であるり、図5は、シリカ/ポリ尿素複合体の透過型電子顕微鏡写真である。
続いて、100個の無機化合物粒子の粒径を測定し、その平均値を無機化合物平均粒径とした。本観察においては、シリカ/ポリアミド複合体では約10nmの球状と推定されるシリカが網目状、すなわち3次元的にネットワークを形成しポリアミド中に微分散しているのが観察された。酸化ジルコニウム/ポリアミド複合体では、850nm近辺の酸化ジルコニウム粒子の各々の粒子が独立して分散しているのが観察された。一方、シリカ/ポリ尿素複合体では、約30nmのネットワークとなっているのが観察された。
(3)複合体の形状測定
複合体100mgを水1mlに分散させ、2枚のプレパラートの間に挟んだ。これをキーエンス社製 デジタルHFマイクロスコープ VH−8000にて150倍まで拡大し、複合体の形状を観察した。有機ポリマーがポリアミドの場合(合成例1、2、4)は、繊維状となり、有機ポリマーがポリ尿素(合成例3、6)の場合は、粒子状であった。繊維状の材料では、短軸値(繊維径)、長軸値(繊維長さ)を測定し、長軸値/短軸値を算出し、アスペクト比とした。また、粒子状の材料では、粒子の任意の1軸の長さを測定した。それぞれ任意の100個の複合体を選んで形状を測定した結果を表1にまとめた。
Figure 2005338725
(発色剤と支持電解質を有する電解液の作製)
(調整例1)水系電解液(発色剤 ビスマス)
溶媒として水20.0部、発色剤としてオキシ過塩素酸ビスマスを0.54部、支持電解質として過塩素酸の60質量%溶液0.42部、還元促進剤としてヒドロキノン0.28部からなる電解液(以下、水系電解液(5)と言う。)を調製した。この電解液は水に各成分が完全に溶解し透明均一であった。水の屈折率は室温で1.33である。
(水系電解液を含浸させた電気化学型反射型表示媒体の作製)
(無機化合物を含む有機無機複合体)
(実施例1)
得られたウエットケーキ(1)約10gをそれぞれ、100gの超純水中で分散し、減圧濾過をする工程を3回繰り返すことにより洗浄処理を行い、超純水を有するウエットケーキを約10g得た。得られた各種ウエットケーキ(1)の質量測定後(湿潤質量)、150℃で2時間乾燥させ、質量を測定した(乾燥質量)。これらの数値より、ウエットケーキの固形分率を下式により算出した。
固形分率(質量%)=(乾燥質量/湿潤質量)×100
この固形分率より、試料固形分が0.3gになるように算出した各々のウエットケーキを、予め(調整例1)で作製した水系電解液(5)中で室温下で10分間攪拌し分散させた後、4μmのろ紙上で5分間、0.02MPaで減圧濾過することで、水系電解液を有する約700μm厚の本発明の電気化学型反射型表示媒体(1)を作製した。
(実施例2)
ウェットケーキ(2)を用いる他は実施例1と同様にして本発明の電気化学型反射型表示媒体(2)を作成した。
(実施例3)
ウェットケーキ(3)を用いる他は実施例1と同様にして本発明の電気化学型反射型表示媒体(3)を作成した。
(無機化合物を含まない有機無機複合体)
(比較例1)
合成例(4)で作製したウエットケーキ(4)(無機化合物を含まないポリアミド)に電解液を含浸することにより、電気化学型反射型表示媒体(4)を作製した。
(比較例2)
合成例(5)で作成したウエットケーキ(5)(無機化合物を含まないポリ尿素)に、電解液を含浸することによりで、電気化学型反射型表示媒体(5)を作成した。
(複合体質量に対する電解液保持量の測定)
上記で得られた本発明の電気化学型反射型表示媒体(1)〜(3)の質量測定後(ケーキ質量)、ケーキ質量の15倍の超純水を加え、常温下30分間の分散洗浄、減圧濾過を3回繰り返すことで、支持電解質等を完全に除去し、超純水のみを有するウエットケーキを得た。このウエットケーキを150℃で2時間減圧乾燥させ、質量を測定した(乾燥質量)。これらの数値より、複合体(またはポリアミド)100質量部に対する電解液の保持量(電解液保持量)を下式により算出した。また、比較例(1)および(2)で得られた電気化学型反射型表示媒体(4)及び(5)についても上記と同様な洗浄処理を行った後、電解液保持量を算出した。
電解液保持量(質量部)={(ケーキ質量−乾燥質量)/乾燥質量}×100
複合体質量に対する電解液保持率(%)の測定結果を表2に示した。
Figure 2005338725
(比較例3)
特許文献3の実施例4に従って、高分子固体電解質としてポリフッ化ビニリデンクロライド、LiBF、AgClOの混合物を用いたエレクトロデポジション型表示媒体を作製した(従来技術表示媒体)。
(光学測定)
実施例(1)〜(3)、比較例(1)〜(3)、コピー紙(参考例(1))及び標準白色板(参考例(2))の光学測定を下記要領にて実施した。
(拡散光源による反射率の測定方法)
表示装置評価システム DMS−5000(オウトロニック社製)を用いた。測定条件は、試料垂直面をθ=0°、試料水平面をθ=90°と規定したとき、θ=0°〜70°までの範囲を5°刻みで反射強度を測定した。反射率は、各θにおける標準白色板の反射強度を基準として、次式より求めた。
(拡散光源による反射率の算出)
反射率(%)=各θにおける試料の反射強度/各θにおける標準白色板の反射強度×100
また、θ=0°〜70°における反射率の変化率(%/°)を次式により求めた。
反射率の変化率(%/°)=(反射率(70°)−反射率(0°))/70
拡散光源による反射率及び反射率の変化率の測定結果を表3に示した。
Figure 2005338725
(平行光源による表示媒体の明度(L*値)測定方法)
3次元変角分光測色システムGCMS-11型(村上色彩技術研究所)を用いた。測定条件は、試料垂直方向をθ=0°とし、光入射方向の試料水平方向をθ=90°、その反対方向をθ=−90°と規定したとき、θ=15°から試料に向けて平行光を入射し、θ=−75°から75°までの明度(L*値)を15°刻みで測定した。
平行光源による表示媒体の明度(L*値)測定結果を表4に示した。
Figure 2005338725

但し、L は0°方向での明度を、L は−75°方向での明度を、L は−15°方向での明度である。
(電気化学型反射型表示媒体、表示素子及び表示装置の作製)
(実施例4)
実施例1で得られた電気化学型反射型表示媒体(1)の両面を700μm厚のガラス基板を有するITO電極(表面抵抗10Ω/□)で電極面が内側になるように500μm厚で挟み込み、周囲をエポキシ樹脂により封止することで、表示素子を作製した。該表示素子のITO電極をファンクションジェネレーター付きの電源に接続することにより、表示装置(電気化学型反射型表示装置1)を作製した。この表示装置を用いて各種表示特性の評価を行った。
(実施例5)
電気化学型反射型表示媒体(1)の代わりに、実施例2で得られた電気化学型反射型表示媒体(2)を用いた以外は実施例1と同様な方法で表示素子及び表示装置を作製し(電気化学型反射型表示装置2)、各種表示特性の評価を行った。
(実施例6)
電気化学型反射型表示媒体(1)の代わりに、実施例3で得られた電気化学型反射型表示媒体(3)を用いた以外は実施例1と同様な方法で表示素子及び表示装置を作製し(電気化学型反射型表示装置3)、各種表示特性の評価を行った。
(比較例4)
電気化学型反射型表示媒体(1)の代わりに、比較例(1)の媒体を用いた以外は実施例1と同様な方法で表示素子及び表示装置(電気化学型反射型表示装置4)を作製し、各種表示特性の評価を行った。
(比較例5)
電気化学型反射型表示媒体(1)の代わりに、比較例(2)の媒体を用いた以外は実施例1と同様な方法で表示素子及び表示装置(電気化学型反射型表示装置5)を作製し、各種表示特性の評価を行った。
(比較例6)
特許文献3の実施例4に従って、高分子固体電解質としてポリフッ化ビニリデンクロライド、LiBF、AgClOの混同物を用いて、エレクトロデポジション型表示装置を作製した。
(9)コントラストの測定方法:
各表示装置のコントラストは、各表示素子をプラスマイナス1.7V矩形波を1秒印加することにより駆動させ、白表示および黒表示の状態でのそれぞれの試料垂直面(θ=0°)に対する反射率を測定することにより算出した。測定装置は、表示装置評価システムDMS−5000(オウトロニック社製)を用いた。なお反射率は、前述の(拡散光源による反射率の測定の項と同様な測定をθ=0°で行い、その結果を用いた。
コントラスト=白表示時の反射率(%)/黒表示時の反射率(%)
上記の電気化学型反射型表示装置の表示特性評価結果を表5にまとめた。
Figure 2005338725
本発明による電気化学型反射型表示媒体1〜3(実施例1〜3)は、表3、図6、表4、図8より、1)媒体垂直方向よりも媒体水平方向への反射率およびL*が大きく、かつ
2)正反射が小さいことがわかった。
これらの光学特性は、紙に近い光学特性であった。ポリアミド単体からなる電気化学型反射型表示媒体4(比較例1)およびポリ尿素単体からなる電気化学型反射型表示媒体5(比較例2)もまた、紙に近い光学特性を示した。しかし、電気化学型反射型表示媒体4および5は、表2より電解液保持能力が本発明の電気化学型反射型表示媒体1から3よりも少なく、電気化学型反射型表示媒体としてのポテンシャルが低いだけはなく、表示装置として利用した際にも、表5よりコントラストが低いという問題があった。一方、従来技術による表示装置(比較例6)は、0°方向における反射率およびコントラストにより評価した場合は実施例に近い値を示す。しかし、反射型表示媒体(比較例3)としては、表3、表4、図7及び図9の結果からわかるように、紙面水平方向への反射率およびL*は低下し、かつ指向性の強い正反射を示し、肉眼で感じるのと同じように紙とは異なる光学特性を示した。
以上の結果より、本発明による反射型表示媒体は、1)媒体垂直方向よりも媒体水平方向への反射率およびL*が大きく、かつ2)正反射が小さい、という紙に近い光学特性を有していることが示された。したがって、本発明による反射型表示媒体は、媒体水平方向に光散乱するため、指向性の強い正反射を防ぎ、目に優しく、紙に近い視認性を提供することができた。
本発明の反射型表示媒体は視認性、質感がきわめて紙に近く、これを用いた表示素子ならびに表示装置は、紙に近い背景に対して、表示することができる反射型表示素子及び反射型表示装置として非常に有用である。
本発明における反射型表示媒体を使用した反射型表示素子の模式図である。 本発明における反射型表示媒体を使用した反射型表示素子であって、視面側の透明電極上に電気化学的な酸化還元により変色する材料層を設けた場合の模式図である。 シリカ/ポリアミド複合体の透過型電子顕微鏡写真である。 酸化ジルコニウム/ポリアミド複合体の透過型電子顕微鏡写真である。 シリカ/ポリ尿素複合体の透過型電子顕微鏡写真である。 実施例1の電気化学型反射型表示媒体(1)に対して、拡散光源による反射率を測定角度に対してプロットした図である。 比較例3のエレクトロデポジション型表示媒体に対して拡散光源による反射率を測定角度に対してプロットした図である。 実施例1の電気化学型反射型表示媒体(1)に対して、法線方向から15°傾けた方向(θ=15°)から試料に向けて平行光を入射し、θ=−75°〜75°までの明度(L*値)を15°刻みで測定した図である。 比較例3のエレクトロデポジション型表示媒体に対して、法線方向から15°傾けた方向(θ=15°)から試料に向けて平行光を入射し、θ=−75°〜75°までの明度(L*値)を15°刻みで測定した図である。
符号の説明
1 本発明の反射型表示媒体
2 透明基材
3 透明電極
4 対向電極
5 封止剤
6 対向基材
7 電気化学的な酸化還元により変色する材料層

Claims (12)

  1. 拡散光源を光源とした際の、
    0°方向への反射率が50%以上であり、0°から70°まで及び0°から−70°までの角度変化に対して反射率が増加し、
    かつ、入射角15°より入射する平行光源に対する、
    0°方向での明度(L )と、−75°方向での明度(L )と、−15°方向での明度(L )との関係が、
    L /L >1.4、かつL /L <1.2であることを特徴とする反射型表示媒体(但し、表示媒体垂直方向を0°とし、媒体水平方向を±90°とする)。
  2. 前記反射型表示媒体が、電解液を保持した、ポリアミド、ポリウレタンおよびポリ尿素からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機ポリマーと、シリカおよび金属酸化物から選ばれる少なくとも1種の無機化合物との複合体である請求項1記載の反射型表示媒体。
  3. 前記複合体が、繊維径が20μm以下でアスペクト比が10以上のパルプ形状、及び/または、平均粒径が50μm未満の粉体形状を有する請求項1又は2に記載の反射型表示媒体。
  4. 前記複合体が、複合体100質量部に対して400〜2500質量部の電解液を保持している請求項1〜3のいずれかに記載の反射型表示媒体。
  5. 前記複合体の無機化合物の平均粒子径が1μm以下であり、前記複合体中の無機化合物の含有率が20〜80質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の反射型表示媒体。
  6. 前記電解液に用いる溶媒の屈折率が1.40未満である、請求項1〜5のいずれかに記載の反射型表示媒体。
  7. 前記電解液に用いる溶媒が水である請求項6に記載の反射型表示媒体。
  8. 前記電解液中に、電気化学的な酸化還元により変色する発色剤を有する請求項1〜7のいずれかに記載の反射型表示媒体。
  9. 電極を有する2枚の基板を、該電極を内側にして相対向させた基板間に、請求項8に記載の反射型表示媒体を有する反射型表示素子。
  10. 前記基板の一方の電極上に電気化学的な酸化還元により変色する材料層を有する請求項9に記載の反射型表示素子。
  11. 請求項9または10に記載の反射型表示素子を有する反射型表示装置。
  12. ジカルボン酸ハロゲン化物、ジクロロホーメート化合物及びホスゲン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を有機溶媒に溶解した有機溶液(A)と、
    珪酸アルカリと、2種以上の金属元素を有しその金属元素の1種がアルカリ金属である、金属酸化物、金属水酸化物および金属炭酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属化合物と、ジアミンとを含有する塩基性の水溶液(B)
    とを混合攪拌し、重縮合反応させることにより得られる有機ポリマーと無機化合物との複合体を得る複合体合成工程と、
    前記複合体の固形分率が35質量%以下の状態で、電解液を含浸させて、複合体に電解液を保持させる含浸工程とを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の反射型表示媒体の製造方法。


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