JP2005334614A - 替刃用鋼帯及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 スリットナイフと言った機械的に溝を形成する方法を用いた鋼帯ではなく、新規な方法により分割可能な替刃用の鋼帯を提供する。
【解決手段】 軟化焼鈍状態のマルテンサイト系ステンレス鋼帯の一方端面側に、該一方端面側から所定の間隔の位置に長手方向に連続した熱エネルギーによる加工溝が形成され、他方端面側に、該他方端面側から所定の間隔の位置に長手方向に連続した加熱変質部が形成されており、前記加工溝は鋼帯の分割箇所となる替刃用鋼帯である。
また、軟化焼鈍状態のマルテンサイト系ステンレス鋼帯を通板しつつ、該マルテンサイト系ステンレス鋼帯の左右両方の端面側から、それぞれ所定の間隔の位置に熱エネルギーを照射し、一方の端面側に長手方向に連続した加工溝を形成し、他方端面側に長手方向に連続した分割箇所となる加熱変質部を形成する替刃用鋼帯の製造方法である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、カミソリ等の替刃用のマルテンサイト系ステンレス鋼帯及びその製造方法に関するものである。
カミソリ等の替刃を製造するには、鋼帯を機械的な切断手法で切断する方法が採られている。
例えば、特表平9−510401号公報(特許文献1参照)には「カミソリ刃の製造」として、コイルを素材として、スタンプ加工を行い、スリットナイフによって直線的な溝が形成され、そして、素材を硬化させる熱処理を施し、素材を分割してカミソリ替刃を製造する。
この方法は、コイルとなった鋼帯に連続的に溝を形成、材料硬化、分割の順番に行うことが可能なため、生産性を向上できるという点で優れたものである。
特表平9−510401号公報
上述した特許文献1で開示される方法で素材として用いられる鋼帯は、圧延ままの鋼帯にスリットナイフによって溝を形成されるものであるが、精度の高いスリットナイフの位置合わせを行う必要があり、また、素材の鋼帯の送り速度を高速にすれば、スリットナイフの磨耗量も増加することから、材料の鋼帯の送り速度を高速にできないという問題がある。
本発明の目的は、スリットナイフと言った機械的に溝を形成する方法を用いた鋼帯ではなく、新規な方法により分割可能な替刃用の鋼帯とその製造方法を提供することにある。
機械的な溝加工は、鋼帯とスリットナイフとを接触させ、精度の高い位置合わせが必要となることから、非接触で鋼帯の分割可能な箇所を形成できる方法を検討した結果、例えば熱エネルギーを利用するレーザ加工機により鋼帯を部分的に加熱し分割可能な箇所を形成すれば、精度良く分割可能な箇所を形成できることを知見した。更に検討を加えた結果、例えばレーザ加工機を用いれば、鋼帯の分割可能な箇所を高速で形成可能なことを見出した。
そして、更に検討を加えた結果、鋼帯に一箇所の分割可能な箇所を形成すると、鋼帯に曲がりを生じたりする変形の問題が発生することを知見し、変形の問題を解決すべく検討を重ねた結果、分割可能な箇所以外に加熱変質部を熱エネルギーの照射により形成すれば鋼帯の変形の問題も解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、軟化焼鈍状態のマルテンサイト系ステンレス鋼帯の一方端面側に、該一方端面側から所定の間隔の位置に長手方向に連続した熱エネルギーによる加工溝が形成され、他方端面側に、該他方端面側から所定の間隔の位置に長手方向に連続した加熱変質部が形成されており、前記加工溝は鋼帯の分割箇所となる替刃用鋼帯である。
上記の加工溝は、レーザ加工による加工溝であり、該加工溝は幅が200μm以下、深さが板厚の5%以上である替刃用鋼帯である。
本発明に用いるマルテンサイト系ステンレス鋼の化学組成が、質量%でC:0.30〜0.80%、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、Cr:10.0〜15.0%、残部が実質的にFeでなる替刃用鋼帯である。
また本発明は、必要に応じて上記の化学組成に加えて、更にMo:2.0%以下を含有する替刃用鋼帯である。
また本発明は、軟化焼鈍状態のマルテンサイト系ステンレス鋼帯を通板しつつ、該マルテンサイト系ステンレス鋼帯の左右両方の端面側から、それぞれ所定の間隔の位置に熱エネルギーを照射し、一方の端面側に長手方向に連続した分割個所となる加工溝を形成し、他方端面側に長手方向に連続した加熱変質部を形成する替刃用鋼帯の製造方法である。
本発明の替刃用鋼帯は、鋼帯を分割可能な箇所が長手方向に連続した熱エネルギーによる加工溝としていることから、鋼帯の全長にわたって断面がほぼ一定の形状の分割可能な箇所とすることができる。よって、鋼帯の分割を行う際に、一部が分割されないで接合されたまま残留するといった問題の発生を防止できるといった効果を奏するものである。
また、熱エネルギーによる加工溝の形成は、例えばレーザ加工機により、形成可能なことから、鋼帯と非接触で精度の高い分割可能な箇所を形成することができ、レーザ加工機の方式を選定することにより従来の機械的な加工溝の形成と比較し、鋼帯の送り速度を向上できることから、生産性にも優れるものとなるという、効果を奏するものである。
上述したように、本発明の重要な特徴は替刃用鋼帯の分割可能な箇所に熱エネルギーによる加工溝を形成し、他方端面側に長手方向に連続した加熱変質部を形成したことが最大の特徴である。
そして、本発明において軟化焼鈍状態のマルテンサイト系ステンレス鋼帯左右両方の端面側から、それぞれ所定の間隔の位置に熱エネルギーを照射するのは、例えば加工溝のみを熱エネルギーの照射によって形成すると、加熱−溶融−冷却による熱収縮が生じて、曲がり等の変形を起こすため、マルテンサイト系ステンレス鋼帯左右両方の端面側から、それぞれ所定の間隔の位置に対して加工溝と加熱変質部を形成する。
これにより、熱エネルギーの照射によってマルテンサイト系ステンレス鋼帯の変形を抑制できるのである。
以下に本発明を詳しく説明する。
先ず、本発明の替刃用鋼帯の素材として用いるマルテンサイト系ステンレス鋼とは、焼入れによって鋼帯の金属組織がマルテンサイト組織に変態し、鋼帯の硬度が硬くなる、Crを質量%で少なくとも10%以上含有するステンレス鋼を言い、このマルテンサイト系ステンレス鋼を帯状に加工した鋼帯に、軟化焼鈍を施した鋼帯を素材とする。
軟化焼鈍後の素材の金属組織はフェライト組織であり、焼入れによって硬度を高める前の状態であるため、硬さが低く、コイルに巻ける状態であるため、本発明では軟化焼鈍状態のマルテンサイト系ステンレス鋼帯を素材とする。
なお、この軟化焼鈍状態のビッカース硬さはコイルとして巻き取ることができるHv250〜370の範囲であれば十分である。そして、本発明で言う軟化焼鈍状態とは、軟化焼鈍を行った後の鋼帯であって、焼入れにより硬度を高める処理を行う前の鋼帯を指し、通常実施される。また、軟化焼鈍後に圧下率20%以下の仕上げ圧延を行ったものであっても良い。なお、仕上げ圧延の工程を含める場合においても、コイルとして巻き取れる硬さとするのがよく、望ましい軟化焼鈍状態のビッカース硬さは260〜330の範囲である。
本発明では、上述の鋼帯の端面から所定の間隔で長手方向に例えば熱エネルギーを利用するレーザ加工機を用いて分割可能な箇所を加熱して分割箇所となる加工溝を形成する。そして、加工溝を形成した他方の端面側には、例えば熱エネルギーを利用するレーザ加工機を用いて変形防止のための加熱変質部を形成する。
なお、本発明で言う加工溝とは、マルテンサイト系ステンレス鋼帯を熱エネルギーで加工した際に形成される凹み部を言い、加熱変質部とはマルテンサイト系ステンレス鋼帯を例えば熱エネルギーで加工した際に、金属組織を変化させた箇所を加熱変質部と呼ぶ。なお、加工溝の好ましい形成方法と加工寸法については後述する。
本発明において、加工溝の好ましい形成としては、レーザ加工機を用いるのが良い。この理由としては、マルテンサイト系ステンレス鋼に分割可能な箇所となる鋼帯の部位に、非接触で加熱/冷却し、金属組織を脆い溶融・凝固組織として、加工溝を形成するのに好適であるためである。この脆い溶融凝固組織は、焼入れ、焼戻しを行っても、溶融凝固した脆い金属組織は殆どそのまま維持される。これにより、鋼帯を加工溝で分割可能となる。
また、レーザ加工機を用いれば、精度の高い加熱変質部の寸法制御が容易であり、レーザを照射しながら高速で鋼帯を送ることができ、生産性を飛躍的に向上させることができる。
なお、加工溝を形成する他方の端面側に形成する加熱変質部の形成もレーザ加工機を用いれば、精度の高い加熱変質部の寸法制御が容易であり、高速で鋼帯を通板しつつレーザを照射することができ、より一層、生産性を向上させることができる。
加熱−冷却による変形をより確実に抑制するためには、加工溝を形成した側の端面とほぼ等しい距離をもって、他方の端面側からの位置に加熱変質部を形成することが望ましいが、レーザの出力に応じて位置を移動させても良い。また、加熱変質部はレーザで加熱することで溝が形成される場合があるが、前述の加工溝の深さを超える深さまで溝が形成されると、ハンドリング性が劣化し、加熱変質部で折れが生じることから、ハンドリング性を考慮すると加熱変質部に形成される溝は、分割箇所となる加工溝の深さ未満とするのが良く、できる限り溝が形成されない方が望ましい。仮に溝が形成されたとしても、最大で加工溝の50%深さまでに制御するとハンドリング性の劣化が抑制できる。
レーザ加工機を用いた加工溝や加熱変質部の形成には、例えばYAGレーザを用いれば良く、中でも特に、長時間安定した高出力を発生することの出来る半導体励起DISK−YAGレーザを用いれば良い。
レーザ加工機による分割可能な箇所の加熱変質部の形成では、機械的な溝加工とは異なり、溝加工時の素材鋼帯の送り速度を例えば500m/min以上の速さで送ることができ、本発明者等の検討によれば、送り速度を1000m/min以上の速さで送ることも可能である。
このレーザ加工機により形成された加工溝や加熱変質部は、断面がほぼ一定の形状の加工溝、加熱変質部が鋼帯の長手方向に連続して形成することが可能であるため、一部が分割されないで接合されたまま残留すると言った問題の発生を防止できる。
なお、本発明の加工溝(4)や加熱変質部(2)の形成は、図5に鋼帯の表面(圧延面)模式図に示すように刃物用鋼帯(1)の端面(6)から所定の間隔をもって連続して形成し、長手方向とは鋼帯の圧延された鋼帯の長さ方向を言う。
また、加工溝や加熱変質部が破線のように不連続して形成した場合、一部が分割されないで接合されたまま残留すると言った問題が発生するため、加工溝や加熱変質部は連続して形成する必要がある。
本発明では、加工溝を形成することで、例えば、鋼帯を加工溝に応力が集中するように固定して折り曲げる方法で分割する場合、浅い角度で鋼帯の分割が可能となる。これについては、後述の実施例にて詳しく説明する。
レーザ加工によって溝を形成した場合、図1〜図2に断面顕微鏡写真として示すように、加熱変質部(2)に形成された加工溝(4)周辺に溶融・凝固部(3b)と熱影響部(3a)を有するものとなっている特徴がある。
なお、断面金属組織で見られた溶融・凝固部と熱影響部は本発明で言う加熱変質部にも見られるものである。
本発明において、上記の加工溝の形状は、鋼帯を分割することが可能な幅と深さを有していれば、鋼帯の分割がより一層容易に行うことができるが、幅が200μm以下、深さが板厚の5%以上とすると、より好ましい。
本発明において、幅を200μm以下としたのは、過度に幅を広げると分割位置が安定しないため、精度に悪影響があることから、幅を200μm以下とした。好ましい幅は10〜100μmの範囲である。
また、深さを板厚の5%以上としたのは、例えば、鋼帯を加熱変質部に応力が集中するように固定して折り曲げる方法で分割する場合、より浅い角度で鋼帯の分割が可能となるためである。なお、例えばレーザ加工の方式や加工条件変更によって、溝の深さを深くできるが、過度に溝の深さを深くすれば、溶断に近い状態となり、コイルのハンドリング性も劣化する。特に替刃用鋼帯の厚さは3mm以下(100μm以下の場合もある)と薄いことから、好ましい深さの上限としては板厚の50%である。
溝加工する場合の加工溝の好ましい深さの範囲は、鋼帯板厚の10〜47%の範囲である。
次に、本発明で用いるマルテンサイト系ステンレス鋼の好ましい化学組成について説明する。特に示さない限り、質量%として記すことにする。
C:0.30〜0.80%
Cは、焼入れ時オーステナイト化温度において炭化物から基地に固溶し、焼入れで生成するマルテンサイトの硬さを決定する重要な元素である。カミソリの替刃用としての十分な硬さを得るためには0.30%以上とすると良い。但し、0.80%を超えて含有すれば、凝固時に大型の共晶炭化物が晶出し、厚さが薄く、しかも鋭利な刃先を有する用途には、このような大型の炭化物は、刃欠けの原因となり易くなるため、上限を0.80%とした。
Si:1.0%以下
Siは通常鋼の精錬時の脱酸剤として用いられるが、鋼中に固溶し、低温焼もどしにおける軟化を抑制する元素として知られている。しかし、硬質非金属介在物(SiO)として鋼中に残存する確立が高く、刃欠けや点錆の原因となるため上限を1.0%とした。好ましいSiの範囲は0.35%以下である。
Mn:1.0%以下
MnもSiと同様、精錬時の脱酸剤としての役割を有し、MnSやMn−Si−Oxideのような組成加工により伸展する軟質な非金属介在物を形成し、上記の硬質非金属介在物(SiO)の形成防止にも有効であるが、1.0%を越えると熱間における加工性を低下させるため、1.0%を上限とした。好ましいMnの範囲は0.6〜0.8%である。
Cr:10.0〜15.0%
Crは耐食性を向上させる点からステンレス鋼には不可欠の元素であり、耐食性を十分に発揮させるためおよび炭素との結合により微細なクロム炭化物を分散させるためには、10%以上とするのが良い。但し、15%を超えて含有すると、Cr型の大型炭化物の晶出をまねき、刃欠けの原因となるため10.0〜15.0%の範囲とした。
好ましくは12.0〜14.5%の範囲である。
本発明においては、上述の元素の他、更にMo:2.0%以下の範囲で含有しても良い。
Mo:2.0%以下
Moは、孔食を誘発する塩素のようなハロゲン系元素に対する耐食性に優れているため、必要に応じて添加しても良い。但し、2.0%を越えるとマルテンサイト変態開始温度(Ms点)を低下させて、焼入時に残留オーステナイトを過剰に生成させ焼入硬さの低下をまねくため2.0%以下とする。望ましくは0.5〜1.5%の範囲である。
本発明では、上記した元素の他は、残部が実質的にFeとしたが、例えばHSOのような非酸化性の酸に対する耐食性を向上させるNiを含有させても良いし、不可避的不純物は含まれる。
しかしながら、上記した元素以外の元素の総量が2.0%を超えると、刃欠けや、熱間加工性等を劣化させるため、残部のFe以外に含有させても良い元素の総量を2.0%以下とすると良い。
以下の実施例で本発明を更に詳しく説明する。
大気溶解で作製したマルテンサイト系ステンレス鋼の鋼塊(No.1合金及び2合金)を、鍛造、熱間圧延を行い、熱間加工で形成された酸化スケールを除去し、冷間圧延用素材を得た。
この冷間圧延用素材を、冷間圧延、焼鈍を繰返し、最終の軟化焼鈍を行った後に、圧下率18%で仕上げ圧延を行って、厚さ0.080mm×幅6mm×長さの替刃用鋼帯の素材とした。化学組成を表1に示す。
なお、この替刃用鋼帯の素材の金属組織は、何れもフェライト組織を呈しており、硬さはビッカース硬さでNo.1が280、No.2が290であり、コイルとして巻けるものであった。
上述の替刃用鋼帯の素材を用いて、鋼帯の分割位置となる鋼帯の両側の端面(6)から1mmの箇所に、鋼帯を通板しつつ、長手方向にレーザ加工機を用いて加工溝(4)を形成した。この時、変形防止のための加熱変質部(2)の形成も、鋼帯を通板しつつ、長手方向にレーザ加工機を用いて形成して図5の模式図として示す刃物用鋼帯(1)とした。
高速で加工させるためには、レーザのノズルを移動させる方法もあるが、レーザの移動距離に制限があるため、替刃用鋼帯を移動させた方が生産性という点では有利なため、本実施例では刃物用鋼帯を一定の速度で送りながら(通板しながら)、レーザ加工溝と加熱変質部の形成を行った。
また、長距離の鋼帯を加工するためにコイル状にした鋼帯を一方で解き、他の一方で巻き取る構造とした。巻き取り量が増えるに従って、鋼帯の速度が変化する問題については、速度調整器を付属して対策を行った。
レーザ発振機には、YAGレーザを用いて実験を行った。出力方式で連続出力タイプとパルス出力タイプの二種類があるが、高速加工を行うにはYAGレーザの連続出力タイプが溝加工に非常に適していた。
用いた合金と、レーザ加工の形成条件、鋼帯の送り速度を表2、3に示す。なお、表2は溝加工条件、表3は加熱変質部の形成条件である。
レーザ加工した上記のA1〜10の刃物用鋼帯から、長手方向の両端部周辺とほぼ中央部付近の3箇所からサンプルを切出した。
切出したサンプルは断面顕微鏡観察用のサンプル及び変形測定用のサンプルを採取した。変形測定用のサンプルは0.08mm×6mm×1000mmとし、0.1mm以上の真直度を持ったスケールにサンプルの両端を合わせ、500mm位置でのサンプル曲がりを測定した。
また、このサンプルの分割箇所となる加工溝及び変形防止のための加熱変質部の断面顕微鏡観察を行い、幅、深さの測定を行った。
一例として、No.A1の分割箇所となる加工溝の断面顕微鏡写真と、A1の変形防止のための加熱変質部の断面写真を図1〜2に示す。
例えば、図1はNo.A1の分割箇所となる加工溝の断面金属組織を示す顕微鏡写真であり、刃物用鋼帯(1)に、レーザ加工機によって形成された加熱変質部(2)が形成されている。この加熱変質部(2)には、分割箇所となる加工溝(4)が形成され、加工溝周辺には溶融・凝固部(3b)、熱影響部(3a)が形成された組織となった。
この図1模式図中には破線が示す通り、破線より凸となった凸部(5)が現れる場合がある。この場合、再度、ロールで凸部を潰すように軽微な圧下率で冷間圧延により凸部を潰しても良い。
なお、この図1で言う加工溝の幅とは、凸部(5)〜凸部(5)の頂点から頂点までを幅とは言わず、加工溝の幅の測定は、加工溝の両端の平坦部分から直線を引き、溝となる位置の両側の幅を本発明の幅(図中の破線部分)と言う。深さは、溝の最深部から加工溝を形成した側の平坦な表面からの深さを言う。(図3参照)
また、図2に示すA1の変形防止のための加熱変質部の断面観察では、加熱変質部には溶融・凝固部、熱影響部が形成された組織となっていた。
次に、レーザ加工により分割箇所となる加工溝及び変形防止のための加熱変質部を形成した刃物用鋼帯から、長手方向の両端部周辺とほぼ中央部付近の3箇所から試験片を切出し、切出した試験片の断面顕微鏡観察を行った結果、断面形状はほぼ同じ形状となっていたのを確認した。
表4に鋼帯中央部から採取した試験片の加工溝の幅、深さを示した。そして、表5には変形防止のための加熱変質部を加工した際に形成された溝の幅、深さを示すが、加熱変質部の形成時に溝が形成されなかったものには「溝なし」として示す。なお、変形防止のための加熱変質部自体を形成していないA9、A10は表5からは割愛した。
そして、刃物用鋼帯の分割の試験を実施するために厚さ0.080mm×幅6mm×長さ15mmの試験片を2枚採取し、模式図として図4に示す実験装置で刃物用鋼帯の片側を固定し、他方を折り曲げる試験とした。加工溝を形成したものでは溝底で応力が集中するように溝の反対側に折り曲げることにした。
分割の試験は、刃物用鋼帯を1050℃〜1100℃で焼入れ、350℃で焼戻し処理を施し、替刃用鋼帯を高硬度化させて評価を行った。なお、この焼入れ焼戻し後のサンプルの硬さはビッカース硬さで620から660の間であった。
分割の結果をグラフとして纏め、横軸に曲げ角度、縦軸に曲げ角度を達成する為に必要としたトルクとして図6に示す。また、レーザ加工した加熱変質部で分割できたものには○を、できなかったものには×印を付し、表6に示す。
なお、この分割の試験においては、レーザ加工機により加熱変質部を形成しないものを比較例(合金組成はNo.2合金)として「加熱変質部無」として示した。試験片のサイズは厚さ0.080mm×幅6mm×長さ15mmである。
本実施例の結果から、加工溝及び加熱変質部を形成していないものに対して、変形量を抑制しつつ、全ての試験片で小さい角度で分割でき、分割に必要とされるトルクが小さい結果となり、優れた折れ特性が得られていることが分かる。
なお、A8は変形が無く、変形を抑制することができたが、加熱変質部の溝深さが深いために、図4に示した折り曲げ試験の際、試験装置に鋼帯を固定した時に加熱変質部の一部にクラックが発生する場合があり、鋼帯のハンドリングには注意が必要であった。
以上の結果から、本発明の分割箇所となる加工溝と変形防止のための加熱変質部の2つの熱加工を行ったものでは変形がない若しくは少ないことが確認された。
本発明は加工速度と分割特性に優れているため、鋼帯を精度よく分割することが不可欠な用途に適用できる。また、加熱変質部を持たせることで材料の曲がりが非常に小さくなるため、鋼帯をコイル状に巻いた場合でも巻き崩れが非常に少なく、高精度の刃付け加工を要求される製品への適用が可能となる。
加工溝を形成した刃物用鋼帯の一例を示す断面顕微鏡写真とその模式図である。 加熱変質部を形成した刃物用鋼帯の一例を示す断面顕微鏡写真とその模式図である。 刃物用鋼帯に形成した加工溝の幅と深さを示す断面模式図である。 刃物用鋼帯の分割(折れ)テストの模式図である。 刃物用鋼帯に加工溝と加熱変質部を形成した一例を示す模式図である。 刃物用鋼帯の分割(折れ)テストの結果を示す図である。
符号の説明
1. 刃物用鋼帯
2. 加熱変質部
3a.熱影響部
3b.溶融・凝固部
4. 加工溝
5. 凸部
6. 端面

Claims (5)

  1. 軟化焼鈍状態のマルテンサイト系ステンレス鋼帯の一方端面側に、該一方端面側から所定の間隔の位置に長手方向に連続した熱エネルギーによる加工溝が形成され、他方端面側に、該他方端面側から所定の間隔の位置に長手方向に連続した加熱変質部が形成されており、前記加工溝は鋼帯の分割箇所となることを特徴とする替刃用鋼帯。
  2. 加工溝は、レーザ加工による加工溝であり、該加工溝は幅が200μm以下、深さが板厚の5%以上であることを特徴とする請求項1に記載の替刃用鋼帯。
  3. マルテンサイト系ステンレス鋼の化学組成が、質量%でC:0.30〜0.80%、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、Cr:10.0〜15.0%、残部が実質的にFeでなることを特徴とする請求項1または2に記載の替刃用鋼帯。
  4. 請求項3に記載の化学組成に加えて、更にMo:2.0%以下を含有することを特徴とする替刃用鋼帯。
  5. 軟化焼鈍状態のマルテンサイト系ステンレス鋼帯を通板しつつ、該マルテンサイト系ステンレス鋼帯の左右両方の端面側から、それぞれ所定の間隔の位置に熱エネルギーを照射し、一方の端面側に長手方向に連続した分割箇所となる加工溝を形成し、他方端面側に長手方向に連続した加熱変質部を形成することを特徴とする替刃用鋼帯の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2018506970A (ja) * 2015-02-20 2018-03-15 ネステク ソシエテ アノニム ペット用グルーミングツール

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