JP2005334327A - ゴルフクラブ、ゴルフクラブヘッド及びその設計方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 反発特性に優れたゴルフクラブヘッド及びゴルフクラブを提供する。
【解決手段】 スイートスポットSSを含む基準平面内において定義されるx軸及びy軸についての基準断面の断面2次モーメントIx、Iyを、それぞれ300000(mm4)〜550000(mm4)及び150000(mm4)〜350000(mm4)の範囲に設定する。また、比(Ix/Iy)を1.3〜3.0とする。
【選択図】 図3
【解決手段】 スイートスポットSSを含む基準平面内において定義されるx軸及びy軸についての基準断面の断面2次モーメントIx、Iyを、それぞれ300000(mm4)〜550000(mm4)及び150000(mm4)〜350000(mm4)の範囲に設定する。また、比(Ix/Iy)を1.3〜3.0とする。
【選択図】 図3
Description
本発明は、ゴルフクラブヘッドと、これを用いたゴルフクラブと、ゴルフクラブヘッドの設計方法とに関するものである。
ゴルフクラブヘッドの反発特性を増大させる手法として、フェース部分又はフェース部分の近傍におけるヘッド肉厚を薄くすることが提案されている。特許文献1には、フェース部近傍に薄肉部を設けることにより、打球時におけるフェースの弾性的な撓みを増大させ、反発性を高めることができると記載されている。(特許文献1参照。)。
特開2003−210627号公報
しかしながら、打球時においては、フェース部分やその近傍には極めて大きな応力が作用するから、薄肉化しすぎるとヘッド強度が不足してしまう。よって、反発性を向上させるための薄肉化にはおのずと限界がある。
また、ヘッド素材をチタン合金やCFRP(炭素繊維強化プラスチック)等の高比強度材料で構成することにより、ヘッドの設計自由度が高まり、反発特性を向上させることが可能であるが、これも新たな材料が見つからない限りさらなる反発特性の向上は望めない。
発明者は、更に反発特性の向上が可能なゴルフクラブヘッドについて検討を重ね、従来にない新たな視点から反発特性を向上させる本発明を見いだした。即ち、所定断面の断面2次モーメントを考慮することにより、単にヘッド肉厚を薄肉化する手法やヘッド材質を工夫する手法によらなくても更に高反発化、高強度化が達成できることを見いだした。
本発明は、更なる反発性能の向上が可能なゴルフクラブヘッドを提供することを目的としている。
また、ヘッド素材をチタン合金やCFRP(炭素繊維強化プラスチック)等の高比強度材料で構成することにより、ヘッドの設計自由度が高まり、反発特性を向上させることが可能であるが、これも新たな材料が見つからない限りさらなる反発特性の向上は望めない。
発明者は、更に反発特性の向上が可能なゴルフクラブヘッドについて検討を重ね、従来にない新たな視点から反発特性を向上させる本発明を見いだした。即ち、所定断面の断面2次モーメントを考慮することにより、単にヘッド肉厚を薄肉化する手法やヘッド材質を工夫する手法によらなくても更に高反発化、高強度化が達成できることを見いだした。
本発明は、更なる反発性能の向上が可能なゴルフクラブヘッドを提供することを目的としている。
本発明のゴルフクラブヘッドは、ヘッドを所定のライ角及びロフト角で水平面上に載置した状態において、ヘッド重心からフェース面に下ろした垂線である基準垂線を含み且つ前記水平面と垂直な平面を基準平面とし、前記基準平面によるヘッド断面を基準断面とし、前記基準平面内に位置するとともに前記基準断面の図心を通り且つ前記基準垂線と垂直な軸をx軸とし、前記基準平面内に位置するとともに前記基準断面の図心を通り且つ前記基準垂線と平行な軸をy軸としたとき、前記x軸についての前記基準断面の断面2次モーメントIxが300000(mm4)以上550000(mm4)以下であり、前記y軸についての前記基準断面の断面2次モーメントIyが150000(mm4)以上350000(mm4)以下であり、前記Ixと前記Iyとの比(Ix/Iy)が1.3以上3.0以下であることを特徴とする。さらに、前記Ixが320000(mm4)以上450000(mm4)以下であり、前記(Ix/Iy)が1.4以上1.8以下であることを特徴とするのが好ましい。
このようにすると、Ix及びIyの値が最適化されるから、ヘッドの変形量が十分に確保されるとともに、打球時のエネルギーロスが最小限となり、反発性能が向上する。即ち、Ix又はIyが大すぎすぎてヘッドの変形量が不足したり、Ix又はIyが小さすぎてヘッドが変形しすぎエネルギーロスを生じたりすることがない。そして、比(Ix/Iy)が所定値以下であるから、Ixが大きすぎてフェース・バック方向への変形が不足したり、Iyが小さすぎて上下方向へ過剰に変形してエネルギーロスが過大となることがない。また、比(Ix/Iy)が所定値以上であるから、Ixが小さすぎてフェース・バック方向へ過剰に変形しエネルギーロスが過大となったり、Iyが大きすぎて上下方向への変形が不足したりすることがない。
本発明におけるゴルフクラブヘッドの設計方法は、ヘッドを所定のライ角及びロフト角で水平面上に載置した状態において、ヘッド重心からフェース面に下ろした垂線である基準垂線を含み且つ前記水平面と垂直な平面を基準平面とし、この基準平面によるヘッド断面を基準断面とし、前記基準平面内に位置するとともに前記基準断面の図心を通り且つ前記基準垂線と垂直な軸をx軸とし、前記基準平面内に位置するとともに前記基準断面の図心を通り且つ前記基準垂線と平行な軸をy軸としたとき、前記x軸についての前記基準断面の断面2次モーメントIxの値と、前記y軸についての前記基準断面の断面2次モーメントIyの値と、前記Ixと前記Iyとの比(Ix/Iy)の値とを考慮することを特徴とする。
この設計方法によれば、各断面2次モーメントIx、Iy及び(Ix/Iy)を適切に設定することでヘッドの変形態様を最適化し、反発性能を高めることが出来る。また、この設計方法において、前記Ixを300000(mm4)以上550000(mm4)以下とし、前記Iyを150000(mm4)以上350000(mm4)以下とし、前記(Ix/Iy)を1.3以上3.0以下とすることにより、上述したようにゴルフクラブヘッドの反発性能を高めることが出来る。
本発明によれば、断面2次モーメントIx、Iy及びその比(Ix/Iy)を考慮することにより、ヘッドの変形態様を最適化して反発性能を高めることが出来る。
以下に、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の第一実施形態であるゴルフクラブヘッド1をフェース面側から見た正面図であり、図2はヘッド1をクラウン部側からみた平面図である。このヘッド1は、所謂ウッド型のゴルフクラブヘッドであり、打球時にボールと接触するフェース面2aを構成するフェース部2と、ヘッド1の上面を構成するクラウン部3と、ヘッド1の下面を構成するソール部4と、クラウン部3とソール部4と間に延びるフェース部2以外の部分であるサイド部5と、シャフト(図示せず)を挿入接着するためのシャフト穴10を備えたホーゼル部11と、を備えている。
なお、ヘッド1の材質は特に限定されず、例えば6Al−4Vチタン、15V−3Cr−3Al−3Snチタン、15Mo−5Zr−3Alチタン、13V−11Cr−3Alチタンなどのチタン合金、ステンレス合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)などを単体または複合させて用いることが出来る。
図1は、本発明の第一実施形態であるゴルフクラブヘッド1をフェース面側から見た正面図であり、図2はヘッド1をクラウン部側からみた平面図である。このヘッド1は、所謂ウッド型のゴルフクラブヘッドであり、打球時にボールと接触するフェース面2aを構成するフェース部2と、ヘッド1の上面を構成するクラウン部3と、ヘッド1の下面を構成するソール部4と、クラウン部3とソール部4と間に延びるフェース部2以外の部分であるサイド部5と、シャフト(図示せず)を挿入接着するためのシャフト穴10を備えたホーゼル部11と、を備えている。
なお、ヘッド1の材質は特に限定されず、例えば6Al−4Vチタン、15V−3Cr−3Al−3Snチタン、15Mo−5Zr−3Alチタン、13V−11Cr−3Alチタンなどのチタン合金、ステンレス合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)などを単体または複合させて用いることが出来る。
図3は、この第一実施形態のヘッド1の断面図であり、より詳細には、後述する基準平面khによる断面である。図3に示すように、ヘッド1の肉厚分布は、フェース部2が他の部分よりも厚肉とされている。また、フェース部2の周縁部分はその中央部分よりも薄肉とされており、フェース部2の打球時の変形量(撓み量)を大きくしてヘッド1の反発係数が増大するように構成されている。
図1〜図3に示すように、ヘッド1を所定のライ角及びロフト角で水平面P(図1参照)上に載置した状態において、ヘッド1の中空部分に位置するヘッド重心gからフェース面2aに下ろした垂線が基準垂線ksである(図3参照)。そして、この基準垂線ksとフェース面2a(フェース部2の外面)との交点がスイートスポットSSである。また、この基準垂線ksを含み且つ前記水平面Pと垂直な平面が基準平面khである。よって、基準平面khは、スイートスポットSSとヘッド重心gとを含む平面である(図2参照)。
図3は、この基準平面khによるヘッド1の断面図であり、これをヘッド1の基準断面kdというものとする。そして、この基準断面kd(図3のハッチング部分)の図心zを通り且つ基準垂線ksと垂直な軸をx軸とし、図心zを通り且つ基準垂線ksと平行な軸をy軸とする。したがって、x軸、y軸共に基準平面kh上の線となる。
なお、この図3の実施形態では、ヘッド重心gと図心zとが異なる位置となっている。ヘッド重心gと図心zとは通常は一致しない。
なお、この図3の実施形態では、ヘッド重心gと図心zとが異なる位置となっている。ヘッド重心gと図心zとは通常は一致しない。
ここで、基準断面kdの断面2次モーメントを、上記x軸及びy軸のそれぞれについて考える。このヘッド1では、x軸についての基準断面kdの断面2次モーメントIxが300000(mm4)以上550000(mm4)以下となっており、且つ、y軸についての基準断面kdの断面2次モーメントIyが150000(mm4)以上350000(mm4)以下とされている。また、これらIxとIyとの比(Ix/Iy)が1.3以上3.0以下とされている。
このようにすると、Ix、Iy及び(Ix/Iy)の値が最適化されるから、ヘッドの変形量が十分に確保されるとともに、打球時のエネルギーロスが最小限となり、反発性能が向上する。
フェース面2a内のうち主として打球される部分はスイートスポットSS付近であり、また、スイートスポットSSに近い位置で打球すればするほど反発係数が高くなる。したがって、ヘッド1の反発特性を考慮するに際しては、スイートスポットSSが打点とされた場合のヘッド1の変形態様を考慮することが重要である。よって、このスイートスポットSSを含む基準平面khにおける断面、即ち基準断面kdの断面2次モーメントを考慮することが極めて重要となる。
また、基準平面khを前記水平面Pと垂直な平面とした理由は以下の通りである。ヘッド1のフェース部2は、一般にトウ・ヒール方向よりも上下方向(クラウン・ソール方向)のほうが狭くなっている。よって、クラウン部3やソール部4のトウ・ヒール方向中央部分(中でも特にフェース部2寄りの部分)は、打点から比較的近くに位置することになる。したがって、打撃時においてヘッド1に作用する応力のうち、フェース部2以外の部分(クラウン部3、ソール部4等)に作用する応力の大きさは、スイートスポットSSに比較的近い部分、即ち、クラウン部3やソール部4のトウ・ヒール方向中央部分において特に大きくなる。よって、クラウン部3やソール部4のトウ・ヒール方向中央部分(中でも特にフェース部2寄りの部分)の変形量は、フェース部2以外の他の部分の変形量よりも比較的大きいことが多い。従って、打撃時におけるヘッド1の変形態様を考慮する場合には、比較的大きな応力が作用するクラウン部3やソール部4のトウ・ヒール方向中央部分を含んだ断面、即ち前記水平面Pと垂直な断面とするのがよいと考えられる。また、ここでは、打撃時のヘッドの変形態様として、単にフェース部2のみの変形態様を考えるのではなく、ヘッド1全体の変形態様を考えている。よって、フェース部2のみの断面でなくヘッド1全体の断面として前述した基準断面kdを考慮している。
Ixは、ヘッド1のフェース・バック方向におけるヘッド1の変形しにくさをおおよそ示しており、Iyは、ヘッド1の上下方向(クラウン・ソール方向)におけるヘッド1の変形しにくさをおおよそ示している。つまり、Ixが大きいほどフェース・バック方向に変形しにくくなり、Iyが大きいほど上下方向(クラウン・ソール方向)に変形しにくくなる。ヘッド1では、Ix及びIyを上記数値以下としているので、Ix又はIyが大きすぎてヘッドの変形量が不足することがなく、反発性が高くなる。一方、IxやIyが小さすぎると、変形量が大きくなりすぎてエネルギーロスが発生し、かえって反発特性が低下するが、Ix及びIyを上記数値以上としているので、かかるエネルギーロスが抑制される。
打撃時にボールにより与えられる応力は、主としてフェース面2aに垂直な方向の応力であるから、ヘッド1はフェース・バック方向に変形するが、かかるフェース・バック方向の変形に連動して上下方向(クラウン・ソール方向)にも変形する。よって、IxとIyとの両者を考慮することにより、ヘッド全体の変形態様を的確に把握することができ、ヘッド1の反発性能を十分に高めることが可能となる。
そして、IxとIyとの相対関係をも考慮することにより、反発性能を更に高めることが出来る。即ち、比(Ix/Iy)が上記所定値以下であるから、Ixが大きすぎてフェース・バック方向への変形が不足したり、Iyが小さすぎて上下方向へ過剰に変形してエネルギーロスが過大となることがない。また、比(Ix/Iy)が所定値以上であるから、Ixが小さすぎてフェース・バック方向へ過剰に変形しエネルギーロスが過大となったり、Iyが大きすぎて上下方向への変形が不足したりすることがない。そして、比(Ix/Iy)を上記範囲とすることにより、ヘッドの変形が復元するタイミングとインパクトで潰れるように変形したボールの復元のタイミングが合いやすくなり、エネルギーロスが少なくなって反発特性が向上する。
更に、IxとIyとの比(Ix/Iy)を上記各数値の範囲内に設定することにより、IxとIyとのバランスが良好となってヘッド全体が効率よく変形する。即ち、比(Ix/Iy)を上記範囲に設定してIxとIyとのバランスを良好とすることにより、トウ・ヒール方向と上下方向とにバランス良く変形する。そうすると、ヘッド全体として十分な変形量が得られて反発性能が向上する。
また、IxとIyとのバランスが良好でない場合、打撃時の変形がフェース・バック方向又は上下方向(クラウン・ソール方向)のいずれか一方に過度に偏ることになる。したがってこの場合、ヘッドの特定部分のみが過度に変形したり、特定部分のみに応力が過度に集中したりすることがある。しかし本発明では、比(Ix/Iy)を適切に設定したので、ヘッド全体がバランス良く変形しやすくなり、特定部分の過度の変形や特定部分への応力集中が最小限に抑制される。よって、エネルギーロスを最小限とすることができるとともに、ヘッド強度を高めることも出来る。
また、IxとIyとのバランスが良好でない場合、打撃時の変形がフェース・バック方向又は上下方向(クラウン・ソール方向)のいずれか一方に過度に偏ることになる。したがってこの場合、ヘッドの特定部分のみが過度に変形したり、特定部分のみに応力が過度に集中したりすることがある。しかし本発明では、比(Ix/Iy)を適切に設定したので、ヘッド全体がバランス良く変形しやすくなり、特定部分の過度の変形や特定部分への応力集中が最小限に抑制される。よって、エネルギーロスを最小限とすることができるとともに、ヘッド強度を高めることも出来る。
以上の理由により、Ix、Iy及び比(Ix/Iy)が上記の範囲内に設定されており、より好ましくは、Ixは320000(mm4)以上とするのがよく、450000(mm4)以下とするのがよい。また、(Ix/Iy)は、1.4以上とするのが好ましく、1.8以下とするのが好ましい。
Ix、Iyの各値は、コンピュータにより容易に求めることが出来る。汎用の3次元CADソフトにヘッド1の3次元データを読み込ませ、ヘッド重心gやスイートスポットSSから基準平面khを定義して基準断面kdを決定すれば、図心z及びIx、Iyは当該ソフトにより求めることができる。
そして、Ix及びIyの値を適宜調整して、所望のIx、Iy、比(Ix/Iy)を得ることができる。
そして、Ix及びIyの値を適宜調整して、所望のIx、Iy、比(Ix/Iy)を得ることができる。
Ix及びIyを調整するには、基準断面kdを以下のように調整すればよい。
Ixを小さくするには、例えばy軸方向の長さを短くしたり、y軸と平行な方向の肉厚を薄くしたりすればよい。ヘッド体積をほぼ一定にしたままIxを小さくするには、y軸方向の長さを短くしてx軸方向の長さを長くすればよい。また、ヘッド重量をほぼ一定にしたままIxを小さくするには、y軸と平行な方向の肉厚を薄くしてx軸と平行な方向の肉厚を厚くすればよい。Ixを大きくするにはその逆である。即ち、Ixを大きくするには、例えばy軸方向の長さを長くしたり、y軸と平行な方向の肉厚を厚くしたりすればよい。
Iyを小さくするには、例えばx軸方向の長さを短くしたり、x軸と平行な方向の肉厚を薄くしたりすればよい。ヘッド体積をほぼ一定にしたままIyを小さくするには、x軸方向の長さを短くしてy軸方向の長さを長くすればよい。また、ヘッド重量をほぼ一定にしたままIyを小さくするには、x軸と平行な方向の肉厚を薄くしてy軸と平行な方向の肉厚を厚くすればよい。Iyを大きくするにはその逆である。即ち、Iyを大きくするには、例えばx軸方向の長さを長くしたり、x軸と平行な方向の肉厚を厚くしたりすればよい。
そして、ヘッド1の形状を変えることなくヘッド1の全体に亘ってヘッド肉厚を厚くすれば、Ix及びIyのいずれも大きくなる。逆にヘッド1の全体に亘ってヘッド肉厚を薄くすれば、Ix及びIyのいずれも小さくなる。
また、ヘッド体積や肉厚分布が略一定という前提では、基準断面kdを丸い形状に変化させるとIxやIyが小さくなる傾向があり、基準断面kdを四角い形状に変化させるとIxやIyが大きくなる傾向がある。上述のように、IxやIyを調整するのにヘッド肉厚を増減させる手法を用いても良いが、肉厚を変更する場合はヘッド重量やヘッド強度が変動するので、再度ヘッド重量やヘッド強度を調整する必要がある。しかし、肉厚を一定としたまま基準断面kdの形状を変化させることでIxやIyの値を調整すると、ヘッド重量はヘッド強度が大きく変化しにくく、ヘッド設計が比較的容易である。
以上のようにIxやIyの値を適宜調整することができるが、要するに、断面2次モーメントとは、断面の微小面積に軸までの距離の2乗を掛けたものを積分したものであるから、このことを考慮して基準断面kdを設計すればIx及びIyを所望の値とすることができる。
Ixを小さくするには、例えばy軸方向の長さを短くしたり、y軸と平行な方向の肉厚を薄くしたりすればよい。ヘッド体積をほぼ一定にしたままIxを小さくするには、y軸方向の長さを短くしてx軸方向の長さを長くすればよい。また、ヘッド重量をほぼ一定にしたままIxを小さくするには、y軸と平行な方向の肉厚を薄くしてx軸と平行な方向の肉厚を厚くすればよい。Ixを大きくするにはその逆である。即ち、Ixを大きくするには、例えばy軸方向の長さを長くしたり、y軸と平行な方向の肉厚を厚くしたりすればよい。
Iyを小さくするには、例えばx軸方向の長さを短くしたり、x軸と平行な方向の肉厚を薄くしたりすればよい。ヘッド体積をほぼ一定にしたままIyを小さくするには、x軸方向の長さを短くしてy軸方向の長さを長くすればよい。また、ヘッド重量をほぼ一定にしたままIyを小さくするには、x軸と平行な方向の肉厚を薄くしてy軸と平行な方向の肉厚を厚くすればよい。Iyを大きくするにはその逆である。即ち、Iyを大きくするには、例えばx軸方向の長さを長くしたり、x軸と平行な方向の肉厚を厚くしたりすればよい。
そして、ヘッド1の形状を変えることなくヘッド1の全体に亘ってヘッド肉厚を厚くすれば、Ix及びIyのいずれも大きくなる。逆にヘッド1の全体に亘ってヘッド肉厚を薄くすれば、Ix及びIyのいずれも小さくなる。
また、ヘッド体積や肉厚分布が略一定という前提では、基準断面kdを丸い形状に変化させるとIxやIyが小さくなる傾向があり、基準断面kdを四角い形状に変化させるとIxやIyが大きくなる傾向がある。上述のように、IxやIyを調整するのにヘッド肉厚を増減させる手法を用いても良いが、肉厚を変更する場合はヘッド重量やヘッド強度が変動するので、再度ヘッド重量やヘッド強度を調整する必要がある。しかし、肉厚を一定としたまま基準断面kdの形状を変化させることでIxやIyの値を調整すると、ヘッド重量はヘッド強度が大きく変化しにくく、ヘッド設計が比較的容易である。
以上のようにIxやIyの値を適宜調整することができるが、要するに、断面2次モーメントとは、断面の微小面積に軸までの距離の2乗を掛けたものを積分したものであるから、このことを考慮して基準断面kdを設計すればIx及びIyを所望の値とすることができる。
図4は、本発明の第二実施形態のヘッド1の基準断面kdである。この図4の実施形態は、図3の第一実施形態の基準断面kdをヘッドのバック側上部を除いて同一形状である。即ち、図4の実施形態では、図3の実施形態よりも基準断面kdのバック側上部が外側に張りだして角張ったような形状とされている。かかる形状変更により、図4の実施形態では、図3の実施形態よりもIx及びIyが大きくなっている。
本発明は、飛距離性能が最も重視される所謂ドライバー(W#1)に適用されるのが好ましい。ドライバーの仕様は、通常、クラブ長さが43.5〜48インチ、リアルロフト角が6度〜15度程度である。そして、本発明のゴルフクラブヘッドのヘッド重量は、160g以上220g以下が好ましい。160g以下であると、クラブバランスが軽く成りすぎて振りにくくなったり、特に350cc以上の体積とした場合にヘッド肉厚が薄くなりすぎて製造が困難となる場合がある。220g以上であると、特に上記ドライバーのクラブ長さとするとクラブバランスが重くなりすぎて振りにくくなる場合がある。
ヘッド体積は、300cc以上が好ましく、350cc以上がより好ましい。ヘッド体積が小さすぎると、特に上記好ましいヘッド重量に設定した場合にヘッド肉厚が厚くなりすぎ、打撃時の変形が不足する場合がある。また、ヘッド体積は600cc以下が好ましく、470cc以下がより好ましい。ヘッド体積が大きすぎると、特に上記好ましいヘッド重量に設定した場合にヘッド肉厚が薄くなりすぎ、ヘッド強度が不足する場合がある。
本発明におけるゴルフクラブヘッドの設計方法は、前述した断面2次モーメントIxの値と、断面2次モーメントIyの値と、前記Ixと前記Iyとの比(Ix/Iy)の値とを考慮する設計方法である。この設計方法によれば、各断面2次モーメントIx、Iy及び(Ix/Iy)を適切に設定することにより、上述したようにヘッドの変形態様を最適化し、反発性能を高めることが出来る。また、この設計方法において、前記Ixを300000(mm4)以上550000(mm4)以下とし、前記Iyを150000(mm4)以上350000(mm4)以下とし、前記(Ix/Iy)を1.3以上3.0以下とすることにより、上述したようにゴルフクラブヘッドの反発性能を高めることが出来る。
具体的には、実物あるいはコンピュータのCAD上にてゴルフクラブヘッドの一次試作品を作製し、これの各断面2次モーメントIx及びIyをコンピュータ等で適宜計算した上、所望のIxやIyが得られていない場合には、上述した手法によりIx及びIyを所望の値となるように一次試作品を適宜調整すればよい。一回の調整で所望のIx及びIyが得られなければ、この調整を繰り返せばよい。
具体的には、実物あるいはコンピュータのCAD上にてゴルフクラブヘッドの一次試作品を作製し、これの各断面2次モーメントIx及びIyをコンピュータ等で適宜計算した上、所望のIxやIyが得られていない場合には、上述した手法によりIx及びIyを所望の値となるように一次試作品を適宜調整すればよい。一回の調整で所望のIx及びIyが得られなければ、この調整を繰り返せばよい。
(実施例による本発明の効果の検証)
以下に、実施例1〜13及び比較例1〜20を作製して比較評価することにより、本発明の効果を検証した。
全ての実施例及び全ての比較例(以下、全ての例ともいう)において、ヘッド材質はチタン合金とし、ヘッド重量は190g〜192gとし、リアルロフト角は10度〜11度の間に設定し、ライ角は56度〜57度とした。また、全ての例は同一の製法により作製されたものであり、具体的には、フェース部2を鍛造にて作製し、フェース部2以外の部分であるヘッド本体をロストワックス精密鋳造にて作製した上、両者を溶接することにより作製した。
実施例の仕様及び評価結果を以下の表1に示し、比較例の仕様及び評価結果を以下の表2に示す。
以下に、実施例1〜13及び比較例1〜20を作製して比較評価することにより、本発明の効果を検証した。
全ての実施例及び全ての比較例(以下、全ての例ともいう)において、ヘッド材質はチタン合金とし、ヘッド重量は190g〜192gとし、リアルロフト角は10度〜11度の間に設定し、ライ角は56度〜57度とした。また、全ての例は同一の製法により作製されたものであり、具体的には、フェース部2を鍛造にて作製し、フェース部2以外の部分であるヘッド本体をロストワックス精密鋳造にて作製した上、両者を溶接することにより作製した。
実施例の仕様及び評価結果を以下の表1に示し、比較例の仕様及び評価結果を以下の表2に示す。
各表において「反発係数」とは、U.S.G.A.の Procedure for Measureing the Velocity Ratio of a Club Head for Conformance to Rule 4-1e, Revision 2 (February 8, 1999) に類似した方法で測定された反発係数である。ゴルフボールをボール発射装置を用いて発射し、台座上に固着することなく載置されたヘッドのフェース部のスイートスポット付近に衝突させる。ボールはヘッドのスイートスポットの位置から5mm以上離れない位置で且つフェース面に対して直角に衝突させる。そして、ゴルフボールの衝突直前の入射速度Viと跳ね返り速度Voとを測定した。更に、ゴルフボールの入射速度をVi、跳ね返り速度Vo、ヘッド質量をM、ゴルフボールの平均質量をmとした場合に、次式により反発係数を算定した。
(Vo/Vi)=(eM−m)/(M+m)
なお、ゴルフボールの発射口からフェース部までの距離は1mとし、ゴルフボールはタイトリスト社のピナクルゴールドを使用し、ボール初速は48.77m/sに設定した。また、速度センサーの位置は、ヘッドから360.2mm、同635mmに設置した。
(Vo/Vi)=(eM−m)/(M+m)
なお、ゴルフボールの発射口からフェース部までの距離は1mとし、ゴルフボールはタイトリスト社のピナクルゴールドを使用し、ボール初速は48.77m/sに設定した。また、速度センサーの位置は、ヘッドから360.2mm、同635mmに設置した。
そして、横軸をIx(mm4)、縦軸をIy(mm4)として、これら実施例及び比較例の値をプロットした散布図が図5である。
表1及び表2に示すように、全ての実施例は、全ての比較例よりも反発係数が大きくなっている。
表1及び表2に示すように、全ての実施例は、全ての比較例よりも反発係数が大きくなっている。
1 ゴルフクラブヘッド
2a フェース面
kh 基準平面
P 水平面
ks 基準垂線
g ヘッド重心
kd 基準断面
z 基準断面の図心
2a フェース面
kh 基準平面
P 水平面
ks 基準垂線
g ヘッド重心
kd 基準断面
z 基準断面の図心
Claims (5)
- ヘッドを所定のライ角及びロフト角で水平面上に載置した状態において、ヘッド重心からフェース面に下ろした垂線である基準垂線を含み且つ前記水平面と垂直な平面を基準平面とし、
前記基準平面によるヘッド断面を基準断面とし、
前記基準平面内に位置するとともに前記基準断面の図心を通り且つ前記基準垂線と垂直な軸をx軸とし、
前記基準平面内に位置するとともに前記基準断面の図心を通り且つ前記基準垂線と平行な軸をy軸としたとき、
前記x軸についての前記基準断面の断面2次モーメントIxが300000(mm4)以上550000(mm4)以下であり、前記y軸についての前記基準断面の断面2次モーメントIyが150000(mm4)以上350000(mm4)以下であり、前記Ixと前記Iyとの比(Ix/Iy)が1.3以上3.0以下であることを特徴とするゴルフクラブヘッド。 - 前記Ixが320000(mm4)以上450000(mm4)以下であり、前記(Ix/Iy)が1.4以上1.8以下であることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
- 請求項1又は請求項2に記載のゴルフクラブヘッドを備えたゴルフクラブ。
- ヘッドを所定のライ角及びロフト角で水平面上に載置した状態において、ヘッド重心からフェース面に下ろした垂線である基準垂線を含み且つ前記水平面と垂直な平面を基準平面とし、
この基準平面によるヘッド断面を基準断面とし、
前記基準平面内に位置するとともに前記基準断面の図心を通り且つ前記基準垂線と垂直な軸をx軸とし、
前記基準平面内に位置するとともに前記基準断面の図心を通り且つ前記基準垂線と平行な軸をy軸としたとき、
前記x軸についての前記基準断面の断面2次モーメントIxの値と、前記y軸についての前記基準断面の断面2次モーメントIyの値と、前記Ixと前記Iyとの比(Ix/Iy)の値とを考慮することを特徴とするゴルフクラブヘッドの設計方法。 - 前記Ixを300000(mm4)以上550000(mm4)以下とし、前記Iyを150000(mm4)以上350000(mm4)以下とし、前記(Ix/Iy)を1.3以上3.0以下とすることを特徴とする請求項4に記載のゴルフクラブヘッドの設計方法。
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