JP2005333852A - 液状体採取装置および細胞培養方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】細胞懸濁液等の液状体の採取に適しており、同時に採取した液状体の分離操作も実施可能な液状体採取装置を提供する。
【解決手段】液状体採取装置1内の圧力を調整可能な内圧調整部3と、前記内圧調整部3の操作によって液状体の吸引および/または排出を可能とする吸排孔5aを有する吸排部5と、前記吸排部5と連通され吸引した液状体を貯留可能であるとともに、吸引した前記液状体中の重力および/または遠心力によって沈降分離可能な成分を集積可能な集積部8aを前記吸排部5との連通部位を含まない部位に有する貯留部7と、を備えるようにする。
【選択図】 図1
【解決手段】液状体採取装置1内の圧力を調整可能な内圧調整部3と、前記内圧調整部3の操作によって液状体の吸引および/または排出を可能とする吸排孔5aを有する吸排部5と、前記吸排部5と連通され吸引した液状体を貯留可能であるとともに、吸引した前記液状体中の重力および/または遠心力によって沈降分離可能な成分を集積可能な集積部8aを前記吸排部5との連通部位を含まない部位に有する貯留部7と、を備えるようにする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、細胞懸濁液などの液状体が採取可能であって、採取した該液状体の処理操作にも適用できる液状体採取装置およびこの液状体採取装置を用いた細胞培養方法に関する。
細胞培養技術が発達し、近年では医療や研究などの技術分野において培養された細胞が利用されている。例えば、患者本人から採取された少量の皮膚表皮細胞(ケラチノサイト)を培養して増殖させることによって、大量の培養表皮細胞シートを得て、熱傷などの患者に対して利用されている。このように、採取された少量の細胞から多くの細胞を得るためには、継代培養という技術が必要になる。
継代培養とは、1つの培養容器で培養した細胞を一旦剥離して回収した後、複数の培養容器に再度播種して培養することであって、必要な回数だけ繰り返すことができる。この継代培養操作では、通常、最初に、培養容器底面に接着している細胞を酵素処理などによって剥離して細胞懸濁液の状態にした後、この細胞懸濁液をピペットで吸引する。次いで、ピペット中の細胞懸濁液を遠心チューブに注入し、遠心分離器によって細胞をペレット状に凝集させた後、上清のみをピペットで吸引排出する。最後に、新しい培地を遠心チューブに注入して細胞を分散させ、この細胞懸濁液をピペットで吸引し、複数の培養容器にそれぞれ再播種して培養する(非特許文献1)。このような継代培養操作は、作業者によるマニュアル作業によって行われているため、作業者の負担になっている。また、培養におけるコンタミネーション(汚染)を防止するためには、ピペット操作などの作業において熟練した技術が必要である。その一方で、継代培養操作の工程を自動化した装置が案出されている。CCDカメラによって培養容器底面から細胞増殖の状態を観察し、所定状態に至った時点で自動的に細胞剥離、細胞回収、細胞再播種の工程を行っている(特許文献1)。
特開2001−275659号公報
第三版 組織培養の技術[基礎編],日本組織培養学会編,朝倉書店,p.32-46,1996
しかしながら、このような自動培養装置は個々の培養ロットごとに広いスペースが必要となり、多くのロットを取り扱うのには適していない。また、多種多様な細胞を培養するには適していない。一方、細胞懸濁液などの液状体を採取するピペットは、液状体の採取と排出とのみを行なう手段として提供されてきており、それ自体多用途に用いられているものの、他の液状体操作、例えば、液状体の採取後液状体の排出までの間において遠心分離などの各種の液状体の処理操作などを実現可能に形成されているものは現状においてはない。
本発明は、上記問題点を鑑み、細胞懸濁液等の液状体の採取に適しており、同時に採取した液状体の分離操作も実施可能な液状体採取装置および液状体採取用チップを提供することを他の一つの目的とする。さらに、本発明は、このような液状体採取装置を用いた細胞培養方法を提供することを他の一つの目的とする。
本発明によれば、液状体採取装置であって、前記装置内の圧力を調整可能な内圧調整部と、前記内圧調整部の操作によって液状体の吸引および/または排出を可能とする吸排孔を有する吸排部と、前記吸排部と連通され吸引した液状体を貯留可能であるとともに、吸引した前記液状体中の重力および/または遠心力によって沈降分離可能な成分を集積可能な集積部を前記吸排部との連通部位を含まない部位に有する貯留部と、を備える、液状体採取装置が提供される。この液状体採取装置において、前記液状体は細胞懸濁液であることが好ましい態様である。また、前記貯留部は吸排部の外側に突出形成されていることが好ましく、さらに好ましくは、前記貯留部は前記吸排部に対して対称的に外側に突出形成されている。これらの前記貯留部が吸排部の外側に突出形成されている態様においては、前記貯留部は前記吸排部に対してほぼ直交して備えることが好ましい。また、前記貯留部は管状体であることが好ましい。また、これらのいずれかの液状体採取装置においては、単一の前記貯留部が二以上の前記集積部を有することが好ましい。この態様においては、前記貯留部は、前記吸排部に対してほぼ直交して備えられ前記吸排部を中心とした円周上に二以上の前記集積部を備えていることが好ましい。さらにまた、単一の前記吸排部に対して二以上の前記内圧調整部を有することが好ましい態様である。
また、本発明によれば、前記貯留部は前記液状体採取装置における前記吸排部の反対側端部に前記集積部を有することが好ましい態様である。この態様においては、前記貯留部は、前記吸排部を含む前記液状体採取装置の一部に対して摺動可能に構成された管状の前記内圧調整部によって形成されていることが好ましい。
さらに、本発明によれば、液状体採取用チップであって、前記チップの内部の圧力を調節可能な内圧調整装置に着脱可能であり、接続された前記内圧調整装置の操作により液状体を吸引および排出可能な吸排孔を有する吸排部と、前記吸排部と連通され吸引した前記液状体を貯留可能であるとともに、重力および/または遠心力によって沈降分離可能な成分を集積可能な集積部位を前記吸排部との連通部位を含まない部位に有する貯留部と、
を備える、チップが提供される。
を備える、チップが提供される。
また、本発明によれば、細胞の培養方法であって、上記いずれかの液状体採取装置を用いて、培養した細胞の懸濁液を吸引して採取する採取工程と、前記液状体採取装置の前記集積部に重力および/または遠心力によって前記細胞を集積させる細胞分離工程と、集積された前記細胞の上清を前記内圧調整部を操作して排出するとともに前記内圧調整部を操作して新たな培地を吸引採取して集積された前記細胞を分散した細胞懸濁液を調製する細胞懸濁液調製工程と、前記液状体採取装置内に調製した細胞懸濁液を前記内圧調整部を操作して培養容器に排出して細胞を播種する播種工程と、播種した前記細胞を培養する培養工程と、を備える、培養方法が提供される。この形態においては、前記培養工程は継代培養工程であることが好ましい。
本発明の液状体採取装置は、前記液状体採取装置内の圧力を調整可能な内圧調整部と、前記内圧調整部の操作によって液状体の吸引および/または排出を可能とする吸排孔を有する吸排部と、前記吸排部と連通され吸引した液状体を貯留可能であるとともに、吸引した前記液状体中の重力および/または遠心力によって沈降分離可能な成分を集積可能な集積部を前記吸排部との連通部位を含まない部位に有する貯留部と、を備えている。この液状体採取装置によれば、採取した液状体を貯留し、前記吸排部を含まない部位に重力および/または遠心力によって沈降分離可能な成分を集積させることができる。このため、この液状体採取装置によれば、単一の装置によって液状体を採取するとともに遠心分離等によって液状体中の沈降分離可能な成分を分離することができる。また、前記吸排部を含まない部位に沈降成分を集積させるため、集積部に沈降成分を保持したままで上清を排出することができ、同時に、沈降成分を集積部に保持した状態で液状物を吸引することができる。したがって、この液状体採取装置によれば、同一装置によって、液状体の吸引採取、遠心分離等による成分分離(沈降成分の集積部位への集積と、上清の排出)、沈降成分への液状体の供給を実現することができる。また、このような液状体採取装置によれば、細胞懸濁液の採取、遠心分離等による細胞の分離、所望の液状体による分離した細胞の再分散、再分散液の排出を容易に行うことができ、この結果、細胞の継代培養における一連の操作を容易化することができる。
以下、本発明の液状体採取装置について説明するとともに液状体採取用チップについて説明し、次いで、この液状体採取装置を用いた細胞培養方法を含む細胞処理方法について説明する。
(液状体採取装置)
(第1の実施形態)
まず、図1〜図4に示す本発明の一例の液状体採取装置を参照しながら、本発明の液状体採取装置の基本構成を説明しつつ、第1の実施形態について説明する。図1には、本発明の第1の実施形態の液状体採取装置(以下、単に装置という。)1が示されている。装置1は、内圧調整部3と、吸排部5と、貯留部7と、を備えている。
(第1の実施形態)
まず、図1〜図4に示す本発明の一例の液状体採取装置を参照しながら、本発明の液状体採取装置の基本構成を説明しつつ、第1の実施形態について説明する。図1には、本発明の第1の実施形態の液状体採取装置(以下、単に装置という。)1が示されている。装置1は、内圧調整部3と、吸排部5と、貯留部7と、を備えている。
(内圧調整部)
内圧調整部3は、吸排部5の吸排孔5aから液状体を吸引および排出可能に装置1の内部、具体的には液状体を吸引保持可能なハウジング1a内の圧力を調整する手段である。内圧調整部3としては、吸排孔5aから液状体を吸排可能に吸排部5内の圧力を変動させることができるものであればよく、形状一定で内部の圧力を変動させる気体吸排手段のほか、所定範囲をスライドさせることにより、装置1の吸排孔5aにいたる範囲の容積を拡張あるいは縮小させることのできるピストンなどのスライド部材や、可撓性によってそれ自体の内部容積を拡張および収縮可能として装置1の吸排孔5aにいたる範囲の容積を変動可能とするスポイト部材など公知の各種容積変動部材を用いることができる。
内圧調整部3は、吸排部5の吸排孔5aから液状体を吸引および排出可能に装置1の内部、具体的には液状体を吸引保持可能なハウジング1a内の圧力を調整する手段である。内圧調整部3としては、吸排孔5aから液状体を吸排可能に吸排部5内の圧力を変動させることができるものであればよく、形状一定で内部の圧力を変動させる気体吸排手段のほか、所定範囲をスライドさせることにより、装置1の吸排孔5aにいたる範囲の容積を拡張あるいは縮小させることのできるピストンなどのスライド部材や、可撓性によってそれ自体の内部容積を拡張および収縮可能として装置1の吸排孔5aにいたる範囲の容積を変動可能とするスポイト部材など公知の各種容積変動部材を用いることができる。
なお、内圧調整部3は、単一の吸排部5に対して複数個設けられていてもよい。多量の液状体を吸排するのに都合がよく、また、内圧調整部3として、スライド等によって内部容積を変動させる部材を用いる場合には、個々の摺動部材の移動量を大きくすることなく多量の液状体の吸排が可能となる。また、摺動部材等の移動量を小さくすることで、必要量を吸引保持したときの装置1の外形サイズを小さくすることができ、取り扱いや遠心分離装置への装着を容易にすることができる。
装置1においては、特に、内圧調整部3を、シリンダー3aとシリンダー3aの内部に挿入され内部をスライド移動することでシリンダー3a内の容積を変動可能なピストン3bとから構成している。シリンダー3aは、吸排部5と貯留部7と連通しており、シリンダー3a内でピストン3bをスライド移動させると、ハウジング1aの外部と連通する内部容積(吸排部5と貯留部7とシリンダー3aの内部容積)が変動するため、内部圧力が変動し、吸排孔5a近傍の液状体を貯留部7内部に吸引したり、貯留部7内部の液状体を排出したりできる。
(吸排部)
吸排部5は、開口した吸排孔5aを備えている。吸排部5は、内圧調整部3の操作により液状体を吸引および排出可能となっているとともに液状体を貯留する貯留部7と連通されている。吸排部5は、その先端側を、液状体を吸引および排出を容易に可能な管状に形成することができる。この場合には、その先端に吸排孔5aを備えることができる。装置1は、特に、吸排部5が吸排孔5aに向かって先細り状の管状体に形成されている。吸排部5は、その一部において、通常は、吸排孔5aを鉛直下方に向けて配置したときその上方において貯留部7と連通している。装置1においては、吸排部5は、吸排孔5aから貯留部7の下端に至る管状体となっている。
吸排部5は、開口した吸排孔5aを備えている。吸排部5は、内圧調整部3の操作により液状体を吸引および排出可能となっているとともに液状体を貯留する貯留部7と連通されている。吸排部5は、その先端側を、液状体を吸引および排出を容易に可能な管状に形成することができる。この場合には、その先端に吸排孔5aを備えることができる。装置1は、特に、吸排部5が吸排孔5aに向かって先細り状の管状体に形成されている。吸排部5は、その一部において、通常は、吸排孔5aを鉛直下方に向けて配置したときその上方において貯留部7と連通している。装置1においては、吸排部5は、吸排孔5aから貯留部7の下端に至る管状体となっている。
(貯留部)
貯留部7は、吸排部5と連通されて吸引した液状体を貯留可能に形成されている。すなわち、吸排部5から吸引した液状体が導入されて貯留可能なキャビティを備えている。貯留部7は、吸排部5とともに装置1のハウジング1aを構成しており、吸排部5と連通され、吸排部5と同様内圧調整部7によって内部圧力が調整される。貯留部7の形態は限定しない。液状体を貯留可能なキャビティを有しており、キャビティ内部が吸排部5と連通されていればよい。したがって、貯留部7は、適当なキャビティを有する容器状であってその開口部位が吸排部5と連通する形態を採ることができる。貯留部7は、好ましくは、図1に示すような一般の遠心分離用チューブなどを含む管状の容器とする。管状体であると、その底部を集積部7aとすることで吸排部5と十分離れた集積部7aを容易に形成することができ、集積部7aに沈降成分を保持した状態での液状体の吸引排出を容易に行なうことができる。
貯留部7は、吸排部5と連通されて吸引した液状体を貯留可能に形成されている。すなわち、吸排部5から吸引した液状体が導入されて貯留可能なキャビティを備えている。貯留部7は、吸排部5とともに装置1のハウジング1aを構成しており、吸排部5と連通され、吸排部5と同様内圧調整部7によって内部圧力が調整される。貯留部7の形態は限定しない。液状体を貯留可能なキャビティを有しており、キャビティ内部が吸排部5と連通されていればよい。したがって、貯留部7は、適当なキャビティを有する容器状であってその開口部位が吸排部5と連通する形態を採ることができる。貯留部7は、好ましくは、図1に示すような一般の遠心分離用チューブなどを含む管状の容器とする。管状体であると、その底部を集積部7aとすることで吸排部5と十分離れた集積部7aを容易に形成することができ、集積部7aに沈降成分を保持した状態での液状体の吸引排出を容易に行なうことができる。
このような貯留部7は、一旦吸排部5にて吸引した液状体を、装置1を動かすことなどによって装置1内で移動させてはじめて導入可能に形成されていてもよいが、好ましくは吸排孔5aから吸引した液状体を、吸引に伴ってそのまま貯留部7に導入可能に形成されている。こうした形態であれば、装置1を動かすことなく液状体を貯留部7に導入できるため、装置1の取り扱いを容易にすることができる。特に、図1および図2に示すように、貯留部7は、吸排孔5aをおおよそ鉛直下方に位置させたとき、貯留部7に貯留した液状体が同時に吸排部5を満たすように形成されていることが好ましい。この構成によれば、貯留部7と吸排部5との間で液状体を均等に存在させることができ、液状体を装置1内で遠心分離等の処理をかける時に容易に吸排部5の液状体を貯留部7へ移動させることができる。また、装置1から液状体を排出するときには、容易に排出しようとする全ての液状体を排出できる。
なお、貯留部7は、装置1を方向変換させることによって吸排部5から吸引した液状体を全て貯留部7に貯留させておくことができることも好ましい。こうすることで、吸排部5には液状体が及ばない状態で貯留部7において遠心分離が可能となる。例えば、図1に示すように、吸排部5に対して貯留部7を直交状に設けることにより、液状体の吸引導入も容易であるとともに、必要に応じて装置1を方向変換すれば、貯留部7にのみ液状体を貯留することができる。
(集積部)
貯留部7は、少なくとも一つの集積部7aを有している。集積部7aは、重力および/または遠心力によって沈降分離可能な成分を沈降させて集積させる部位である。集積部7aは、吸排部5との連通部位を含まない部位とする。好ましくは、集積部7aは、貯留部7において吸排部5との連通部位から最も遠位にある部分とする。こうすることで、集積部7aに確実に沈降成分を集積保持させて上清と沈降成分とを容易に分離させることができる。多くの場合、集積部7aは、貯留部7の最奥部あるいはその近傍であって、貯留部7を独立した容器として把握した場合の底部に相当する。また、集積部7aは、貯留部7における重力方向および/または遠心力がかかる部位であるため、装置1は、遠心時等において貯留部7の最奥部あるいは底部近傍が遠心力方向に一致するように遠心分離装置の回転軸等に装着されるように構成される。なお、集積部7aは、通常の遠心分離用チューブと同様に、沈降成分を集積しやすい先細り状あるいは半球状であることが好ましく、より好ましくは円錐形状である。
貯留部7は、少なくとも一つの集積部7aを有している。集積部7aは、重力および/または遠心力によって沈降分離可能な成分を沈降させて集積させる部位である。集積部7aは、吸排部5との連通部位を含まない部位とする。好ましくは、集積部7aは、貯留部7において吸排部5との連通部位から最も遠位にある部分とする。こうすることで、集積部7aに確実に沈降成分を集積保持させて上清と沈降成分とを容易に分離させることができる。多くの場合、集積部7aは、貯留部7の最奥部あるいはその近傍であって、貯留部7を独立した容器として把握した場合の底部に相当する。また、集積部7aは、貯留部7における重力方向および/または遠心力がかかる部位であるため、装置1は、遠心時等において貯留部7の最奥部あるいは底部近傍が遠心力方向に一致するように遠心分離装置の回転軸等に装着されるように構成される。なお、集積部7aは、通常の遠心分離用チューブと同様に、沈降成分を集積しやすい先細り状あるいは半球状であることが好ましく、より好ましくは円錐形状である。
以上のことから、貯留部7の吸排部5に対する配置形態の一例として、図1および図2に示すように、貯留部7は吸排部5からその外側に突出する中空の凸状部とする例を挙げることができる。この構成によれば、スイングロータやアングルロータ等においても外側に突出させた凸状部の最奥部(底部)近傍を遠心力方向となるように遠心分離装置にセットすることが可能である。また、貯留部7と吸排部5との連通形態は、上述したように、吸排部5で吸引した液状体をそのまま同時に導入可能であることが好ましい。したがって、図1および図2に示すように、吸排部5との連通部位は吸排孔5aの近傍であることが好ましい。また、同様に図1および図2に示すように、連通部位からそのまま液状体が貯留部7内へと導入でき、また貯留部7内からの液状体がそのまま吸排部5へと移動できるためには、液状体の吸引時、すなわち、吸排孔5aがおおよそ鉛直下方に向けた状態において、貯留部7のキャビティがほぼ水平状になるように形成されていることが好ましい。具体的には、吸排部5に対して直交するように貯留部7が備えられていることが好ましい。こうすることで、吸排部5内の容積を超えて吸引された液状体はスムーズに貯留部7に導入されることになり、同様にスムーズに吸排部5から排出できる。なお、吸排部5の容積は貯留部7の容積に比較して十分に小さく形成されることが好ましい。例えば、5分の1程度以下とすると、十分量を貯留部7に導入でき効果的な分離操作が可能となる。
なお、貯留部7は、吸排部5の外側の一方向に突出されていてもよいし、二以上の方向で外側に突出されていてもよい。例えば、後述するように、吸排部5に対して対称的に外側に突出されていてもよく、放射状に突出されていてもよい。したがって、貯留部7は、吸排部5に対して二個以上設けることもできる。また、多くの液量を吸引および排出可能とし、あるいは大量の沈降成分を沈降集積させるためには、容積の大きい貯留部7を形成することが好ましく、この場合、吸排部5に対して、好ましくは吸排部5の外側の二方向以上に突出する単一の貯留部7を形成して、この単一の貯留部7に対して複数個の集積部7aを形成することもできる。こういった貯留部7については、第1の実施形態の変形例としての第2の実施形態において詳細に説明する。
次に、本装置1を用いた細胞の培養方法について説明し、特に継代培養操作の一例を図3および図4を参照しながら説明する。
まず、継代培養のため、現状の培養細胞の懸濁液を調製する(図3のステップS100)。たとえば、作業者は、接着依存性の細胞を培養した培養容器(図示せず)にトリプシン溶液などの細胞剥離剤を注入し、所定時間静置することによって培養面である培養容器底面から培養細胞を剥離させる。培養細胞が剥離したことを確認するか、あるいは所定時間が経過したら、酵素処理を抑制する抑制剤を投入し、酵素処理を終了させる。剥離処理によって細胞が培養面から剥離すると、細胞は溶液中に分散し、細胞懸濁液の状態になる。なお、このような細胞剥離工程に関しては、細胞培養あるいは組織培養における当業者においては周知の事項である。
次に、調製した細胞懸濁液を採取する(図3のステップS110)。作業者は、装置1の吸排孔5aを細胞懸濁液に接触させ、その状態でピストン3bを上方に摺動させて、装置1内の容積を増大させる。これにより装置1の内部、すなわち、貯留部7や吸排部5の内部に負圧が加わり、これにより、細胞懸濁液が吸排孔5aから吸引される(図4(a))。装置1においては、特に吸排部5の直上に貯留部7が位置されており、しかも貯留部7は細胞懸濁液を吸引する状態において吸排部5に対してほぼ水平状態であるため、吸排孔5aから吸引された細胞懸濁液はそのまま貯留部7内に導入され貯留される。
次に、細胞懸濁液を吸引し貯留部7に貯留させた装置1を、遠心分離装置にセットし、遠心分離して細胞を分離する(図3のステップS120)。まず、装置1を、貯留部7の集積部7aが鉛直下方を指向するように装置1の方向を変換する。こうした方向変換により、吸排部5と貯留部7の一部を満たしていた細胞懸濁液は全て貯留部7に導入され貯留されることになり、吸排部5側には及ばない状態となる(図4(b))こうした姿勢における装置1の貯留部7は、通常の遠心分離用チューブと同様の形態であるといえ、装置1の貯留部7は、スイングロータあるいはアングルロータ等いずれの形態の遠心分離装置に対して適用可能である。
本装置1のスイング型の遠心分離装置のチューブ懸架部(ホルダー)へのセット時および遠心時の状態を図5に示す。図5に示すように、装置1の貯留部7を遠心分離装置のホルダー8aに懸架保持させる。ホルダー8aは、遠心時には水平状となるよう揺動軸8cに支持されている。なお、装置1の吸排孔5aには、内部の液体の蒸発や飛散を防止するためのキャップ8bを装着することができる。こうして遠心分離装置に本装置1をセット後、遠心分離装置を駆動させると、遠心力の作用によりホルダー8aが水平状態となり、ホルダー8aにセットされた装置1は集積部7aが遠心力方向を指向した状態で回転する。遠心分離装置は常法に基づいて細胞を沈降分離可能な回転数と時間で遠心する。この遠心分離操作によって、細胞は集積部7aに集められ、集積部7aに細胞のペレットが形成される。同時に、細胞懸濁液中の残余の部分である懸濁液ないし溶液は上清となる。なお、遠心分離装置へ本装置1のセット時には、ピストン3bをシリンダー3a内に摺動させてシリンダー3a内の空気を排出しておくこともできる。こうすることで、ピストン3bの突出長さを減少させることができるためホルダー8aへのセットが容易になり、本装置1をセットして使用するために必要な遠心分離装置内のスペースを縮小することができる。また、安定した遠心分離が可能となる。
遠心分離後、集積部7aに集積された細胞ペレットが崩れないように注意しながら、作業者は吸排孔5aが下方に位置する状態でピストン3bを下方に摺動させ、剥離剤を含む上清を吸排孔5aより排出する(図4(c)参照)。
次に、装置1に新たな培地を吸引採取して細胞を分散させて播種のための細胞懸濁液を調製する(図3のステップS130)。図4(d)に示すように、吸排孔5aを新鮮な液体培地に接触させた状態で、すなわち、吸排孔5aを鉛直下方に向けた状態でピストン3bを上方に摺動させて液体培地を吸排部5および貯溜部7内に吸引する。新鮮な液体培地を吸引した後、吸排孔5aを適当なフィルムあるいは専用のキャップ9で密閉した後、作業者は装置1を激しく振とうすることによって、集積部7aに集められている細胞ペレットを分散させ、細胞を液体培地中に懸濁させることができる(図4(e)参照)。これによって継代培養のために播種可能な細胞懸濁液を得ることができる。
細胞懸濁液が得られたら、培養容器にこれらを排出して細胞を播種する(図3のステップS140および図4(f))。作業者はピストン3bを下方に摺動させ、所定の播種量となるように複数の培養容器に順次注入して播種工程を実施する。播種工程が実施されると、次いで所定の培養条件で培養工程を開始する。
このように、本発明の液状体採取装置によれば、剥離した細胞などを液状体に懸濁させて得られる細胞懸濁液の採取、細胞分離(細胞の集積と上清の排出)、新たな培地による細胞懸濁液の調製、1あるいは2以上の培養容器への分注を含む播種工程などの継代操作に必要な作業を1つの装置内で全て行えるため、作業者の負担を軽減することができる。また、工程毎におけるピペットと容器間での液状体の移し替えなどの操作が省略でき細胞が外部に曝される機会を減少させることができて、コンタミネーションの可能性を低減することができる。以上のことから、本装置は、細胞懸濁液の処理、特に、継代培養に伴う細胞の処理に適している。この他、本装置は、重力および/または遠心力によって沈降分離可能な成分を含む液状体の採取、分離、洗浄等の操作にも適している。例えば、DNAやRNAなどの核酸を含む液状体の採取、分離、洗浄等の操作にも適している。
(第2の実施形態)
次に、第1の実施形態の変形例である第2の実施形態の装置11について図6を参照しながら説明する。第1の実施形態では、貯留部7は、吸排部5の外周方向の一方側のみに形成した略L字形態を有するものであったが、例えば、図6に示すように、貯留部17を吸排部15の両外側に突出するように設けることができる。また、図6の装置11においては、貯留部17は、一つのキャビティを有し、両側の端部が閉じられた管状体であって、その長尺方向の中央部分において吸排部15と連通されている。この貯留部17の両端は、重力および/または遠心力によって沈降分離可能な成分が集積可能な集積部17aとなっており、円錐状の端部形態を有している。したがって、貯留部17は、吸排部15を中心とする円周上に二つの集積部17aを有していることになる。また、貯留部17は、吸排部15と直交状に位置されており、吸排孔15aが鉛直下方を指向するときには、水平状となるように形成されている。
次に、第1の実施形態の変形例である第2の実施形態の装置11について図6を参照しながら説明する。第1の実施形態では、貯留部7は、吸排部5の外周方向の一方側のみに形成した略L字形態を有するものであったが、例えば、図6に示すように、貯留部17を吸排部15の両外側に突出するように設けることができる。また、図6の装置11においては、貯留部17は、一つのキャビティを有し、両側の端部が閉じられた管状体であって、その長尺方向の中央部分において吸排部15と連通されている。この貯留部17の両端は、重力および/または遠心力によって沈降分離可能な成分が集積可能な集積部17aとなっており、円錐状の端部形態を有している。したがって、貯留部17は、吸排部15を中心とする円周上に二つの集積部17aを有していることになる。また、貯留部17は、吸排部15と直交状に位置されており、吸排孔15aが鉛直下方を指向するときには、水平状となるように形成されている。
図7に本装置11を用いた細胞培養方法について、細胞懸濁液を採取し遠心分離後に新たな細胞懸濁液を調製する一連の操作例を示しながら説明する。図7(a)および図7(b)に示すように、装置1と同様にシリンダー13a外へピストン13bをスライド移動させるよう操作して吸排部15および貯留部17に細胞懸濁液を吸引する。その後、回転軸20への適当な支持部材16を用いて吸排部15が回転中心となるように遠心分離装置に装着する。図7(b)においては、吸排孔15aに密着して密封するキャップ18を施した上で、給排部15と貯留部17とを支持部材16によって回転軸20に固定している。装置11は、吸排部15を中心として左右対称であるため、吸排部15を回転中心となるように遠心分離装置に装着することにより、予め貯留部17を水平状(回転軸20に対して直角)に保持させることができる。
図7(c)に示すように、遠心分離操作により貯留部17内の細胞懸濁液の細胞は、両端の集積部17aに集積される。すなわち、装置11においては、吸排部15に対して単一の貯留部17を有しながら、二つの集積部17aを有しているため、多量の細胞懸濁液の処理が可能となっている。また、吸排部15を中心とする外縁側に集積部17aを有する構成となっているため、吸排部15を回転中心とした遠心によりこれらの集積部17aに一挙に細胞を集積させることができる。次いで、図7(d)に示すように、遠心分離後、貯留部17内の上清をピストン13bを操作して貯留部17および吸排部15から排出する。以下、図4に示すのと同様にして新たな培地を貯留部17に供給し、装置11を振とうなどすることにより集積部17aの細胞を再懸濁させることができる。
こうした装置11によれば、貯留部17の容積の拡大が容易であり、また、多数の集積部17aを円周上に備えているため、多量の細胞培養液などの液状体の取り扱いに好適である。さらに、貯留部17は、吸排部15に対して直交状に備えられているため、スイング式ロータを用いなくても吸排部15を回転中心とすれば容易に回転軸20に対して直角の状態で遠心分離できる。
なお、この形態では、貯溜部17に対して1つの内圧調整部13を設けたもので説明したが、1つの貯溜部17に対して複数の内圧調整部13を設けてもよい(図8参照)。こうすれば、ピストンなどスライド部材のストローク量が少なくても、容積の変動量を大きくすることができて多くの空気を吸排できるので装置をコンパクトにすることができるとともに作業者は操作し易くなる。なお、図8に示すように、ピストン13bの操作を容易にするために、ピストン13bの操作部位(把持部位)を一体の操作部13cにすることができる。
また、この形態では、貯留部17は、左右対称に吸排部15から突出する管状体として構成したが、これに限定するものではなく、吸排部15に対してほぼ直交して備えられて外側に突出されていればよい。吸排部15から突出される貯留部17としては、さらに吸排部15に対して追加の管状体を備えることもできるし、吸排部15の全周を囲む一つのキャビティを有しその外周縁に一つ(連続状の場合も含む)あるいは複数の集積部17aを備えるようなリング状あるいはスター状等の貯留部17を形成することもできる。
なお、装置11の貯留部17内に区画を設けて装置1のような吸排部15に対して一方向のみに突出した貯留部を内部に形成することもできる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の液状体採取装置の第3の実施形態について図9を参照しながら説明する。この装置21は、第1の実施形態と同様、内圧調整部23、吸排部25と、貯留部27と、を備えている。以下、第1の実施形態と異なる点を主として説明する。
次に、本発明の液状体採取装置の第3の実施形態について図9を参照しながら説明する。この装置21は、第1の実施形態と同様、内圧調整部23、吸排部25と、貯留部27と、を備えている。以下、第1の実施形態と異なる点を主として説明する。
(内圧調整部)
装置21における内圧調整部23も、装置21内の内部容積を変動させることにより内部圧力を調整するものであって、吸排部25の管状体25bを保持する柱状の軸体21aに対して摺動するスライド部材23aを備えている。スライド部材23aは、底部(図9左図においては天井部)を有し他端において開口するチューブ状であって、その内部に軸体21aを収容して、この軸体21aに対して摺動可能に構成されている。スライド部材23aの底部の内部形状は円錐形状となっており、吸排部25からの管状体25bが開口する端面とスライド部材23aとに液状体を貯留するキャビティを構成している。スライド部材23aの下方の端部形状は、山状部と谷状部とを有する凹凸状に形成されている。
装置21における内圧調整部23も、装置21内の内部容積を変動させることにより内部圧力を調整するものであって、吸排部25の管状体25bを保持する柱状の軸体21aに対して摺動するスライド部材23aを備えている。スライド部材23aは、底部(図9左図においては天井部)を有し他端において開口するチューブ状であって、その内部に軸体21aを収容して、この軸体21aに対して摺動可能に構成されている。スライド部材23aの底部の内部形状は円錐形状となっており、吸排部25からの管状体25bが開口する端面とスライド部材23aとに液状体を貯留するキャビティを構成している。スライド部材23aの下方の端部形状は、山状部と谷状部とを有する凹凸状に形成されている。
(吸排部)
吸排部25は、吸排孔25aを先端に有する細い管状体25bを有し、軸体21aに接続されている。管状体25bは、軸体21a内を通過して軸体21aのスライド部材23a内に露出された端面にまで到達されており、管状体25b内部とスライド部材23a内部とは連通されている。この結果、スライド部材23aの摺動によって吸排孔25aから液状体を吸排可能となっている。
吸排部25は、吸排孔25aを先端に有する細い管状体25bを有し、軸体21aに接続されている。管状体25bは、軸体21a内を通過して軸体21aのスライド部材23a内に露出された端面にまで到達されており、管状体25b内部とスライド部材23a内部とは連通されている。この結果、スライド部材23aの摺動によって吸排孔25aから液状体を吸排可能となっている。
(貯留部)
装置21における貯留部27は、上記スライド部材23a内部を、液状体を貯留するキャビティとするものである。すなわち、貯留部27は内圧調整部23のスライド部材23aに一致している。貯留部27は、吸排部25の管状体25bと連通するとともに、その内部圧力がそれ自身でもあるスライド部材23の軸体21aに対するスライド移動によって調整可能に形成されている。貯留部27(スライド部材23a)の円錐状の底部(天井部)は、重力および/または遠心力によって沈降分離可能な成分を集積可能な集積部27aとなっている。
装置21における貯留部27は、上記スライド部材23a内部を、液状体を貯留するキャビティとするものである。すなわち、貯留部27は内圧調整部23のスライド部材23aに一致している。貯留部27は、吸排部25の管状体25bと連通するとともに、その内部圧力がそれ自身でもあるスライド部材23の軸体21aに対するスライド移動によって調整可能に形成されている。貯留部27(スライド部材23a)の円錐状の底部(天井部)は、重力および/または遠心力によって沈降分離可能な成分を集積可能な集積部27aとなっている。
(ロック機構)
本装置21においては、スライド部材23aを軸体21aに対して固定可能なロック機構を有している。軸体21aは、吸排部25の管状体25b側の外周にスリーブ21bを有し、スリーブ21bは、スライド部材23aをスリーブ21bに対して固定可能な係合部21cを有している。係合部21cは、スライド部材23aを吸排孔25aから離れるようにスライド移動させた状態で軸体21aに対して固定可能とする。このため、係合部21cは、そのような固定状態を容易に形成可能にスリーブ21bのスライド部材23a側に形成されている。図9においては、スリーブ21bがスライド部材23aの山状部と谷状部にそれぞれ対応する谷状部と山状部とを有しており、係合部21cは、この山状部の先端に切欠き状の係合凹部として形成されている。
本装置21においては、スライド部材23aを軸体21aに対して固定可能なロック機構を有している。軸体21aは、吸排部25の管状体25b側の外周にスリーブ21bを有し、スリーブ21bは、スライド部材23aをスリーブ21bに対して固定可能な係合部21cを有している。係合部21cは、スライド部材23aを吸排孔25aから離れるようにスライド移動させた状態で軸体21aに対して固定可能とする。このため、係合部21cは、そのような固定状態を容易に形成可能にスリーブ21bのスライド部材23a側に形成されている。図9においては、スリーブ21bがスライド部材23aの山状部と谷状部にそれぞれ対応する谷状部と山状部とを有しており、係合部21cは、この山状部の先端に切欠き状の係合凹部として形成されている。
一方、スライド部材23aは、係合部21cに係合可能な係合部23bを有している。図9においては、スライド部材23aの山状部の先端部が係合部21cに係合する係合部23bとして形成されている。このロック機構においては、スライド部材23aが軸体21aの軸方向に沿ってスライド移動可能であるとともに軸体21a周りを回転可能であるので、容易にスライド部材23aの係合部23bをスリーブ21bの係合部21cに係合させることができるようになっている。また、軸体21aの周囲に形成したスリーブ21bと軸体21aの周囲をスライド移動および回転移動可能なスライド部材23aの対向する端部において係合するように形成しているため、外側に突起物を形成することなく装置21の取り扱いを妨げないロック機構となっている。なお、ロック機構の係合形態は特に限定されないで各種の係合形態を採ることができる。
次に、図9を参照しながら装置21を用いた細胞培養方法について、装置21の継代培養操作における使用例を挙げて説明する。図9(a)に示すように、装置21の吸排孔25aを鉛直下方を指向させるようにして細胞懸濁液に接触させた状態でスライド部材23aを上方に操作することで、スライド部材23a内のキャビティ、すなわち貯留部27の内部容積が増大されることにより、吸排孔25aから細胞懸濁液が吸引される。細胞懸濁液は管状体25bを上方に移動してスライド部材23a内、すなわち、貯留部27内に導入される。
貯留部27に細胞懸濁液を保持したら、スライド部材23aを軸体21a周りに回転させて、係合部23bをスリーブ21bの係合部21cの位置に合わせるとともにスライド部材23aを少し下方に押し下げて係合部21cに係合させる。その後、装置21の上下を反転させて、使用する遠心分離装置の形態に応じた形態でセットする。本装置21は、全体として柱状であるため、遠心分離装置がスイング型であってもアングル型であっても容易にセットして遠心分離することができる。
図9(b)に示すスイング型の遠心分離装置への使用例では、細胞懸濁液の吸引時とは上下を反転させた装置21を図示しないロータに対して揺動軸28cを介して固定されるホルダー28bにセットすることができる。吸排孔25aは適宜キャップ28bをしておくこともできる。こうした状態で遠心分離装置を駆動させると、遠心時においては揺動軸28cを介してホルダー28aが水平状となり、装置21の集積部27aが遠心方向に一致された状態となる。遠心分離後は、第1の実施形態と同様に操作することで、継代培養操作を終了できる。
本装置21によれば、貯留部27が装置21において吸排部25と反対側に位置されているため、全体として直線状の柱状形態を採ることができ、コンパクト化されている。また、内圧調整部23のスライド部材23aを、集積部に適した内部形状の底部を有するチューブ状とすることで、チューブ内を貯留部27として兼用することができる点においても、コンパクト化されている。このようなコンパクト化によって、細胞懸濁液などの液状体の採取、分離、混合・懸濁、排出などの操作を容易に行なうことができる。特に、全体として一つのシリンジ形態を有しているため、通常の遠心分離装置にも容易にセットすることができる。さらに、装置21は、吸排部25が細長い管状体25bからなるため、管状体25bに吸引した液状体を容易に貯留部27へ導入することができる。
なお、図10に示すように、貯留部27内の液状体を効率よく排出するために、吸排部25と貯留部27との連通部位(軸体21aの貯留部27に露出される端面)はすり鉢状に形成することが好ましい。
なお、上記した実施形態において、液状体として細胞懸濁液を採取する場合について説明したが、本装置で採取するのは細胞懸濁液以外にも固形成分を含む懸濁液、2相以上の液相を有する混合液、エマルジョン、スラリーなど各種の液状体を採取するとともに分離することができる。
上記した実施形態において、液状体中の沈降分離可能な成分の集積部への集積には遠心力を用いる場合について説明したが、例えば、液状体採取装置の集積部を鉛直下方に位置するようにして静置して重力によって前記成分を沈降させることもできる。
各種の液状体採取装置および該液状体採取装置を用いた細胞培養方法を例示したが、本発明の液状体採取用チップは、上記した第1の実施形態および第2の実施形態における本発明の液状体採取装置において内圧調整部を備えず、別に準備された内圧調整装置に着脱可能したものである。したがってこれらの各種形態の吸排部および貯留部の形態をそのまま本発明の液状体採取用チップに適用することができる。このようなチップによれば、遠心分離操作時には、内圧調整装置から取り外して操作することができるとともに、液状体の吸排時には、内圧調整装置を装着することができる。遠心分離時には内圧調整装置を取り外すことにより、遠心分離に際しての取り扱いや遠心時の安定性に優れる装置を提供できる。
1、11、21 液状体採取装置、1a ハウジング、3、13、23 内圧調整部、3a,13a シリンダー、3b、13b ピストン、5、15、25 吸排部、5a、15a、25a 吸排孔、7、17、27 貯留部、7a、17a、27a 集積部、8a,28a ホルダー、8b、28b キャップ、8c、28c 揺動軸、18 キャップ、20 回転軸、21a 軸体、21b スリーブ、係合部21c、23a スライド部材、23b 係合部、25b 管状体。
Claims (11)
- 液状体採取装置であって、
前記装置内の圧力を調整可能な内圧調整部と、
前記内圧調整部の操作によって液状体の吸引および/または排出を可能とする吸排孔を有する吸排部と、
前記吸排部と連通され吸引した液状体を貯留可能であるとともに、吸引した前記液状体中の重力および/または遠心力によって沈降分離可能な成分を集積可能な集積部を前記吸排部との連通部位を含まない部位に有する貯留部と、
を備える、液状体採取装置。 - 前記液状体は細胞懸濁液である、請求項1に記載の液状体採取装置。
- 前記貯留部は吸排部の外側に突出形成されている、請求項1または2に記載の液状体採取装置。
- 前記貯留部は前記吸排部に対して対称的に外側に突出形成されている、請求項3に記載の液状体採取装置。
- 前記貯留部は前記吸排部に対してほぼ直交して備えられている、請求項3または4に記載の液状体採取装置。
- 前記貯留部は前記吸排部を中心とした円周上に二以上の前記集積部を備えている、請求項5に記載の液状体採取装置。
- 単一の前記吸排部に対して二以上の前記内圧調整部を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の液状体採取装置。
- 前記貯留部は前記液状体採取装置における前記吸排部の反対側端部に前記集積部を有する、請求項1または2に記載の液状体採取装置。
- 前記貯留部は、前記吸排部を含む前記液状体採取装置の一部に対して摺動可能に構成された管状の前記内圧調整部によって形成されている、請求項8に記載の液状体採取装置。
- 液状体採取用チップであって、
前記チップの内部の圧力を調節可能な内圧調整装置に着脱可能であり、
接続された前記内圧調整装置の操作により液状体を吸引および排出可能な吸排孔を有する吸排部と、
前記吸排部と連通され吸引した前記液状体を貯留可能であるとともに、重力および/または遠心力によって沈降分離可能な成分を集積可能な集積部位を前記吸排部との連通部位を含まない部位に有する貯留部と、
を備える、チップ。 - 細胞の培養方法であって、
請求項1〜9のいずれかに記載の液状体採取装置を用いて、細胞懸濁液を吸引して採取する採取工程と、
前記液状体採取装置の前記集積部に重力および/または遠心力によって前記細胞を集積させる細胞分離工程と、
集積された前記細胞の上清を前記内圧調整部を操作して排出するとともに前記内圧調整部を操作して新たな培地を吸引採取して集積された前記細胞を分散した細胞懸濁液を調製する細胞懸濁液調製工程と、
前記液状体採取装置内に調製した細胞懸濁液を前記内圧調整部を操作して培養容器に排出して細胞を播種する播種工程と、
播種した前記細胞を培養する培養工程と、
を備える、培養方法。
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