JP2005332962A - キャパシタ、フィルタ、デュプレクサ、および通信装置 - Google Patents

キャパシタ、フィルタ、デュプレクサ、および通信装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 小型でQ値の高いキャパシタ、それを備えたフィルタ、デュプレクサ、および通信装置を構成する。
【解決手段】 基板1表面に複数の線路導体2a〜2eからなる環状の共振単位を設けたステップリング共振器7を構成し、その表面に絶縁体層3を形成し、さらにその上面にスパイラル電極4a,4bと端子電極6a,6bを形成してスパイラルキャパシタ8を構成する。このスパイラルキャパシタ8とステップリング共振器7とを誘導性結合させ、ステップリング共振器7の共振周波数付近でのスパイラル電極4を取り巻く磁界ベクトルの疎密変化を平坦化させ、縁端効果および表皮効果を低減して低損失化を図る。
【選択図】 図1

Description

この発明は、無線通信や電磁波の送受信に利用される、例えばマイクロ波帯やミリ波帯におけるキャパシタ、フィルタ、デュプレクサ、および通信装置に関するものである。
例えば高周波増幅回路などでDCカット用素子や整合回路用にキャパシタが使用されている。このようなキャパシタは、回路の高周波化や低損失・高出力化に伴い、高Q化の要求がある。従来、高周波回路で使用されているキャパシタとしては、構造が簡単なインターディジタルキャパシタ(特許文献1参照。)や、高周波回路でよく使用されるMIM(Metal-Insulator-Metal )キャパシタがあった。
特開平7−169911号公報
ところが、金属電極で形成されたインターディジタルキャパシタには電極の抵抗成分があり、高周波帯において線路の表皮効果により高周波抵抗が増加する。また、MIMキャパシタのQ値も電極の損失や誘電体の誘電体損(tanδ)により決まるため、Q値の高いキャパシタを作成することが困難であった。このようにキャパシタのQ値が低い場合は、増幅回路の利得や出力が低下するという問題があった。
そこで、この発明の目的は、小型でQ値の高いキャパシタ、それを備えたフィルタ、デュプレクサ、および通信装置を提供することにある。
(1)この発明のキャパシタは、スパイラル状に形成したキャパシタ用電極を有し、単数または複数の導体線路からなる環状の共振単位の、1個または複数個から構成された共振器を前記キャパシタ用電極に近接させた構造とする。
(2)また、この発明のキャパシタは、(1)において、導体線路を基板の表面または表面付近に形成して前記共振器を構成するとともに、前記導体線路の上部に絶縁体層を介して前記キャパシタ用電極を形成した構造とする。
(3)また、この発明のキャパシタは、(1)において、キャパシタ用電極を下部基板の表面または表面付近に形成し、導体線路を素子基板の表面または表面付近に形成して前記共振器を構成するとともに、導体線路の形成面をキャパシタ用電極の形成面に対向させて下部基板に素子基板を配置した構造とする。
(4)また、この発明のキャパシタは、(1)〜(3)において、キャパシタ用電極のそれぞれの一端が端子電極に導通する2つのスパイラル状電極と、該2つのスパイラル状電極との間で容量を生じさせるスパイラル状電極とから構成したものとする。
(5)この発明のフィルタは、(1)〜(4)のキャパシタを備えたものとする。
(6)この発明のデュプレクサは、(5)のフィルタを備えたものとする。
(7)この発明の通信装置は、(1)〜(4)のいずれかのキャパシタ、(5)のフィルタ、または(6)のデュプレクサを備えたものとする。
(1)この発明によれば、スパイラル状に形成したキャパシタ用電極に対して、導体線路からなる環状の共振単位で構成された共振器を近接させたことにより、共振周波数近傍における磁界ベクトルは上記共振器による共振モードが支配的となり、スパイラル状のキャパシタ用電極を取り巻く磁界ベクトルの疎密変化が平坦化される。その結果、キャパシタ用電極の縁端効果や表皮効果が緩和され、Qの高いキャパシタが得られる。
(2)また、この発明によれば、基板の表面または表面付近に前記導体線路を形成して共振器を構成するとともに、導体線路の上部に絶縁層を介して前記キャパシタ用電極を形成したことにより、別の素子を用いることなく基板上にQの高いキャパシタが構成できる。
(3)また、この発明によれば、前記導体線路を素子基板の表面または表面付近に形成して共振器を構成し、それを下部基板のキャパシタ用電極の形成面に対向するように、下部基板に対して素子基板を配置したことにより、下部基板のキャパシタ用電極と共振器用の導体線路とがそれぞれ最適なプロセスで製造可能となり、線路の微細化によって縁端効果および表皮効果の大きな低減効果が得られる。
(4)また、この発明によれば、キャパシタ用電極のそれぞれの一端が端子電極に導通する2つのスパイラル状電極と、該2つのスパイラル状電極との間で容量を生じさせるスパイラル状の電極とから構成したことにより、2つの端子電極間の電気的特性の設計上の自由度が大きく向上する。
(5)また、この発明によれば、前記キャパシタを備えることによって小型で低損失なフィルタが構成できる。
(6)また、この発明によれば、前記フィルタを備えることによって小型で低損失なデュプレクサが構成できる。
(7)また、この発明によれば、前記キャパシタ、フィルタまたはデュプレクサを備えることによって低損失・高利得な通信装置が得られる。
以下、この発明に係るキャパシタ、フィルタ、デュプレクサ、および通信装置の例を各図を参照して説明する。
図1は第1の実施形態に係るキャパシタの構成を示す図であり、(A)は上面図、(B)は基板表面の平面図、(C)は(A)におけるC−C部分の断面図である。
(B)に示すように、例えばアルミナやサファイア等の絶縁体からなる基板1の表面に、複数の線路導体2からなるステップリング共振器7をフォトリソグラフィ等の薄膜微細加工プロセスで構成している。このステップリング共振器7については後に詳述する。
(A)において破線の円はステップリング共振器7の形成領域を示している。基板1の表面にはステップリング共振器7の形成領域を含む範囲に、ポリイミド(PI)やベンゾシクロブテン(BCB)などの樹脂材料で約10μmの絶縁体層3を形成し、その表面にスパイラル電極4a,4bと端子電極6a,6bをそれぞれフォトリソグラフィ等の薄膜微細加工により形成している。スパイラル電極4aの外周端は端子電極6aに接続している。またスパイラル電極4bの外周端は端子電極6bに接続している。
この2つのスパイラル電極4a,4bは合同であり、この2つのスパイラル電極を基板上で中心を共有して180度回転させることによって、線間隔一定の2重構造のスパイラルを成している。
このスパイラル電極4a,4bと端子電極6a,6bによるキャパシタを以下「スパイラルキャパシタ」8という。この実施形態に係るキャパシタは上記スパイラルキャパシタ8に対して上記ステップリング共振器7を互いの面同士を近接させて誘導性結合(磁界結合)させたものである。
基板1上の導体線路2a,2b,2c,2d,2eは、その両方の端部同士が幅方向に近接するとともに、導体線路2a,2b,2c,2d,2eのそれぞれの一方の先端と、それに隣接する他の導体線路の一方の先端とが、Gで示す位置で所定間隙を隔てて向き合うように配置している。このパターンは、一本のスパイラル状の導体線路を、途中の所定箇所で部分的に切断して得られるものに等しい。すなわち、或る2つの隣接する共振単位同士で比較すると、共振単位の容量性領域(図中波線の楕円で囲んだ範囲内に存在する領域)は周回方向に少しずつずれた位置に形成している。
このようにして、限られた占有面積内に多くの導体線路(2a〜2e)を配置して小型のステップリング共振器を構成している。また、各導体線路の全長に亘って、隣接する導体線路同士の間隙を一定とし、導体線路の全体にわたって縁端効果による電流集中を緩和するようにしている。
ここで、上記導体線路2a,2b,2c,2d,2eのうち1つの共振単位について図2を基に説明する。
図2の(A)は1共振単位の平面図である。(B)は、導体線路2の両方の端部同士の近接部分での電界分布を示している。(C)は導体線路上の電流分布を示している。
このように、導体線路2は誘電体基板1上で、一定幅で1周以上周回した形状としていて、その両方の端部を互いに導体線路の幅方向に近接させている。
図2の(B)において実線の矢印は電界ベクトル、白抜きの矢印は電流ベクトルを表している。この(B)に示すように、導体線路の両端x1,x2の幅方向に近接する部分に電界が集中する。また、導体線路の一方の先端部と、それに近接する他方の端部付近x11との間に、および他方の先端部と、それに近接する他方の端部付近x21との間にも電界が分布し、これらの部分に容量が生じる。
図2の(C)に示すように、電流強度は導体線路のAからBにかけて急峻に増大し、B〜Dの領域において略一定値を保ち、DからEにかけて急激に減少する。両端部は0である。導体線路の両端部同士が幅方向に近接する領域A〜B,D〜Eは容量性領域、その他の領域B〜Dを誘導性領域と呼ぶ。この容量性領域と誘導性領域とにより共振動作する。すなわち、この共振単位は、それを集中定数回路のように見なせばLC共振回路を構成している。
このように、共振単位をインピーダンスの高い誘導性領域とインピーダンスの低い容量性領域とから構成していて、インピーダンスがステップ状に変化するので、この共振単位をステップリングと呼ぶ。また、この共振器は複数の共振単位(ステップリング)からなるので、ステップリング共振器と呼ぶ。
このようにして、限られた占有面積内に線数の多い導体線路2の集合体を配置して、線数の多い導体線路を設け、且つ小型の共振器を構成する。なお、ステップリング共振器の微細電極の線幅を動作周波数における表皮深さよりも小さくすることによって表皮効果を緩和し、このステップリング共振器での損失を低減させている。
図3は図1に示したキャパシタの等価回路図、図4は図3の等価回路を導く過程を示す図である。
図1に示したキャパシタのうちスパイラルキャパシタは、分布定数的な等価回路として図4の(A)のように表せる。これを集中定数回路に変形すると、同図の(B)のように表せる。この回路は端子の引き出す方向を変えると、同図の(C)のように表すことができる。
従って、図1に示したキャパシタは、図4の(C)に示したスパイラルキャパシタにステップリング共振器を結合させて、図3のように表せる。
ここで「第1の回路」は上層に形成したスパイラルキャパシタによる回路、「第2の回路」は下層のステップリング共振器による回路である。このようにスパイラルキャパシタは、集中定数回路としては第1・第2の端子間にキャパシタンスC1,C2を並列接続し、インダクタンスL1,L2および抵抗R1,R2を直列接続した回路で表せる。ここでR1はスパイラル電極4aの抵抗成分、R2はスパイラル電極4bの抵抗成分、L1はスパイラル電極4aのインダクタンス成分、L2はスパイラル電極4bのインダクタンス成分である。また、C1,C2はスパイラル電極4a,4b間に生じる容量である。
ステップリング共振器は、インダクタンスL3、抵抗R3、およびキャパシタンスC3のリング回路によって表せる。ここでR3は線路導体2の抵抗成分、C3は前記容量性領域のキャパシタンス、L3は前記誘導性領域によるインダクタンスである。図中の黒点は、相互誘導係数(M)の符号を定義するための極性を表している。
スパイラル電極4a,4bの巻数(ターン数)が多い程キャパシタンスC1,C2が増大するが、インダクタンスL1,L2も増大する。キャパシタンスC1,C2の値を変化させずにインダクタンスを低減するためにはスパイラル電極の線間隔を狭くし、線長を短くすることが有利である。
図3に示した等価回路からも明らかなように、スパイラルキャパシタ単体では、第1端子と第2端子間は断線した状態であり、直流(DC)からは誘導素子として機能しない。しかしながら、絶縁体層3を介してステップリング共振器の線路2と近接配置することにより、ステップリング共振器の共振モード近傍(高周波)ではスパイラル電極4a,4bとステップリング共振器の線路2とが相互誘導結合した状態となって動作する。共振周波数近傍で2つのスパイラル電極4a,4bには同時に内向きまたは同時に外向きの電流が流れる。このため第1・第2の端子から見たときに電流は同じ向き(同相)となり、閉じた回路として動作する。図3の等価回路中の矢印は、このときの電流の向きを示している。
このようにスパイラル電極単体で動作させたときに比べて、ステップリング共振器の線路と相互誘導して動作する方が全体として縁端効果や表皮効果の緩和が得られ高Q化の効果が得られる。
次に、図1に示したキャパシタの磁界ベクトル分布のシミュレーション結果を図5に示す。(A)はステップリング共振器7およびスパイラルキャパシタ8の形成領域の中心から右半面の断面について磁界ベクトルの分布を示している。また(B)は(A)における部分拡大図である。ここで下層のステップリング共振器は、その線路導体の線路幅を1.3μm、線路間隔を1.3μm、線数を60線とし、各線に1[A]の電流を分布させた。上層のスパイラルキャパシタのスパイラル電極は、シミュレーションのために線幅1.3μm、線間隔15.7μm、巻数10ターンの1本の電極とし、1[A]の電流を分布させた。
図18は、図1に示した下層のステップリング共振器を設けない、上層のスパイラルキャパシタ単体での磁界ベクトル分布のシミュレーション結果である。但し、FEM計算でメッシュ条件を共通にするために、図5のステップリング共振器の線路導体に相当する部分にはダミーの空気を配置している。
図18に示すようにスパイラル電極4に電流が流れた時に誘導される磁界ベクトルの分布は、スパイラル電極単体で見たときに、スパイラル電極の線間隔が大きいほど、電極周りで疎密変化が急峻となる。これに対し、図5に示すようにステップリング共振器がスパイラル電極に近接すると、図1に示すスパイラル電極4とステップリング共振器7が相互誘導結合する。そのためステップリング共振器7の各線路導体の周囲には、ステップリング共振器7の共振周波数に依存した振幅で同じ周波数の電流が流れることにより磁界が発生する。さらにステップリング共振器を形成する各線路導体の線路幅と線路間隔が微細であるため、同心環状に形成されたステップリング共振器7には、その中心部から外周部を通る閉磁界が形成される。さらにスパイラル電極4とステップリング共振器7を近接させているため、スパイラル電極4とステップリング共振器7の両方の電極周囲の磁界分布が重なり、両電極を取り囲むような閉磁界が形成される。このようにステップリング共振器をスパイラル電極に近接させることにより、スパイラル電極4の各線(各部)で発生される磁界が緩和される。
その結果、スパイラル電極を取り巻く磁界ベクトルの疎密変化は平坦化される。この時、ステップリング共振器を構成する線路導体2の線幅および線間隔が小さいほど、全体として縁端効果や表皮効果が緩和されて高Q化に有利となる。
図3に示した回路の入力インピーダンスZinは次の式で表される。
但し、
ここで第1の回路(スパイラルキャパシタ)のスパイラル電極と第2の回路(ステップリング共振器)および結合係数の計算条件を次のとおりにして求めた回路解析結果を図6に示す。
〔第1の回路(スパイラルキャパシタ)〕
自己誘導量 : L1 = L2 = 6.7nH (at 1GHz)
Q値 : Q1 = 20 (at 1GHz)
自己共振周波数: f01 = 12GHz
寄生容量 : C1 = C2 = 0.0263pF (at 12GHz)
〔第2の回路(ステップリング共振器)〕
自己誘導量 : L3 = 0.681nH (at 5GHz)
Q値 : Q3 = 160 (at 5GHz)
共振周波数 : f03 = 5GHz
内部容量 : C3 = 1.49pF (at 5GHz)
〔結合係数〕
第1の回路内部の相互誘導の結合係数: k12 = 0.2
第1と第2の回路の相互誘導の結合係数: k23 = K31 = 0.8
相互誘導量 : M12 = 1.34 nH
相互誘導量 : M23 = M31 = 1.71nH
図6の(A)は、入力インピーダンスZinの逆数であるアドミタンスの実数部Gであり、Ga0は第1の回路(スパイラルキャパシタ)のみの場合、Ga1はそれに第2の回路(ステップリング共振器)を付加した場合である。
図6の(B)は、入力Zinのアドミタンスの虚数部Bであり、Ba0は第1の回路(スパイラルキャパシタ)のみの場合、Ba1はそれに第2の回路(ステップリング共振器)を付加した場合である。
図6の(C)は、キャパシタのQ値(B/G)であり、Qa0は第1の回路(スパイラルキャパシタ)のみの場合、Qa1はそれに第2の回路(ステップリング共振器)を付加した場合である。この例では、6〜10GHz付近で高Q化できている。例えば、スパイラルキャパシタ単体では約6GHzで50程度のQ値しか得られないのに対し、第2の回路(ステップリング共振器)を付加した場合には約120と高いQ値が得られている。
図6の(D)はキャパシタンス(C=B/ω)について示している。Ca0は第1の回路(スパイラルキャパシタ)単体での特性、Ca1はそれに第2の回路(ステップリング共振器)を付加した場合の特性である。上記周波数6GHzで約0.04pFが得られる。
この発明の目的はQの高いキャパシタを得ることであるので、使用周波数帯でQが最も高くなり、且つ所定のキャパシタンスが得られるように上記計算条件で示した各パラメータを設定する。例えば、ステップリング共振器のインダクタンス値を変化させることにより、ステップリング共振器の共振周波数を変えることができるため、スパイラルキャパシタは変更することなく、高Q化の効果の得られる周波数帯域を定めることができる。また、よりQ値の高いステップリング共振器を用いることによってキャパシタのQ値をさらに高めることができる。
図7はスパイラル電極に流れる電流に対するステップリング共振器の線路導体に流れる電流の比とQ値との関係を示している。この例では上記電流比を0.1から高めるにつれてQ値は上昇し、電流比が1.0の時、Q値は最大となる。このようにスパイラル電極に流れる電流に対するステップリング共振器の線路導体に流れる電流比が1.0の状態は、特定の電極に電流が集中していない状態である。したがって、同等の電流振幅を持った電極を互いに近接させて、疎密の平坦な磁界分布にすることによってQ値の高いインダクタを実現できる。
なお、結合係数が1.0を超えることは実際に考えられないので、図7上の電流比が1.0以上の領域は参考値として示している。
このキャパシタによれば、既に述べたように直流(DC)の伝達機能が無いが、例えば高周波用の増幅器を構成する場合などは半導体素子に直流電圧を印加する必要がある。このような条件に対して本実施例に示す高周波回路素子は直流の電位差を与えたい部分にも使用することができる。これによって直流伝達を遮断するための専用設計が不要となる利点がある。このことは以降に述べる各実施形態でも同様である。
次に、第2の実施形態に係るキャパシタの構成を図8を参照して説明する。
図8の(A),(B)は形状の異なる2つのキャパシタの上面図である。(A),(B)のいずれも、図1に示したキャパシタを2組同一基板に設けたものである。図中の破線の円で示す領域はステップリング共振器7a,7bの形成領域である。このステップリング共振器の構成は、図1の(B)に示したものと同様であり、基板1の上面に独立した2つのステップリング共振器7a,7bを配置している。
3つのスパイラル電極4a,4b,4cは2つのスパイラルインダクタ8a,8bを構成している。スパイラル電極4aの外周端は端子電極6aに接続し、スパイラル電極4bの外周端は端子電極6bに接続している。そして、この2つのスパイラル電極4a、4bの線間を補間するようにスパイラル電極4cを配置している。このスパイラルキャパシタ8a,8bのそれぞれの構造は、図1の(A)に示したスパイラル電極4a,4bによるスパイラルキャパシタ8に等しい。
図8の(A)は端子電極6a、6bを基板1の対向する二辺方向に形成したものである。図8の(B)は端子電極6a、6bを基板1の同一辺方向に形成したものである。このように3つのスパイラル電極を備えた構造によれば、端子電極の位置の自由度が高い。
図9は図8の(A),(B)に示したキャパシタの等価回路図である。このキャパシタは図3に示した等価回路を2組設けて直列に接続したものに等しい。本実施形態のような構造にすることにより、第1の実施形態の場合とは逆に、第1・第2端子から見たときに電流の向きを逆(逆相)にすることができる。
このようにして、同一の基板に複数のキャパシタを設けて、一つのキャパシタとして用いることもできる。
次に、第3の実施形態に係るキャパシタについて図10を参照して説明する。
図10の(A)はキャパシタに用いる共振器素子10の下面図、(B)は基板1の平面図、(C)はキャパシタの(B)におけるC−C部分の断面図である。
共振器素子10は素子基板9の表面に図1の(B)に示したものと同様の線路導体2を形成してステップリング共振器7を構成したものである。基板1の上面には図1の(A)に示したものと同様のスパイラル電極4a,4bおよび端子電極6a,6bを形成してスパイラルキャパシタ8を構成している。
このように基板(下部基板)1側にスパイラルキャパシタ8を構成し、その上部に共振器素子10を、その線路導体2の形成面が基板1のスパイラル電極4a,4bの形成面に対向するようにフリップチップボンディングする。共振器素子10には、その四隅にAu(金)バンプBPを形成していて、スパイラル電極4と線路導体2との間隔GをAuバンプBPによって定める。但し、図10の(C)ではバンプを図示していない。
このようにスパイラルキャパシタと、それに付加するステップリング共振器を個別に形成し、所定位置関係に組み合わせることによって、第1の実施形態の場合と同様のキャパシタを構成することができる。但し、第1の実施形態の場合と異なり、ステップリング共振器を表面が平坦な基板(素子基板)上に薄膜微細加工によって形成できるので、特性バラツキが少なく、また線路導体2の線幅および線路間隔を微細化して、表皮効果の緩和効果をさらに高めることができる。さらに、バンプの高さによってスパイラル電極とステップリング共振器との結合量を調整できる。このことはステップリング共振器のインダクタンス値を変化させることになるので、スパイラルキャパシタおよびステップリング共振器自体を変更することなく、バンプ高さによってステップリング共振器の共振周波数を定め、高Q化効果の得られる周波数帯域を定めることができる。
次に、第4の実施形態に係るキャパシタについて図11を参照して説明する。
第1〜第3の実施形態では2つの端子電極を用いたキャパシタ、第4の実施形態では単一の端子電極を用いたキャパシタについてそれぞれ示したが、この図11に示すキャパシタは4つの端子電極6a,6b,6c,6dを備えている。基板1の上面には図1の(B)に示したものと同様のステップリング共振器7を構成している。そのさらに上面には絶縁体層3を形成していて、その表面に4つのスパイラル電極4a,4b,4c,4dをそれぞれステップリング共振器7と対向する位置に形成している。これらのスパイラル電極4a〜4dの外周端は端子電極6a〜6dにそれぞれ接続している。4つのスパイラル電極4a〜4dは合同であり、90°回転対称の形状とし、互いに交差しないように、隣接する電極の間隔をほぼ一定にしている。
このような構成であるため、4つの端子電極6a〜6dの隣接する端子電極間に所定容量が生じる4つのキャパシタの集合体として作用する。
同様にして、多数の端子電極間にそれぞれキャパシタンスを有するキャパシタを構成することができ、端子の設計上の自由度を得ることができる。また複数の端子間に同時にキャパシタンスが必要な回路に容易に適用できる。
次に、第5の実施形態に係るフィルタについて、図12・図13を基に説明する。
図12はフィルタの上面図である。基板1の上面には、その4箇所に図1の(B)に示したものと同様のステップリング共振器7をそれぞれ配置している。そのさらに上面には絶縁体層3を形成していて、その表面の上記4つのステップリング共振器7にそれぞれ対向する位置にスパイラルキャパシタ8a,8b,8c,8dを形成し、さらに4つの端子電極6a,6b,6c,6dを形成している。
スパイラルキャパシタ8aはスパイラル電極4a2と4c2とで構成している。スパイラルキャパシタ8bはスパイラル電極4a1と4b1とで構成している。スパイラルキャパシタ8cはスパイラル電極4c1と4d1とで構成している。スパイラルキャパシタ8dはスパイラル電極4b2と4d2とで構成している。
スパイラル電極4a2,4a1の外周端はそれぞれ端子電極6aに接続している。またスパイラル電極4b1,4b2はそれぞれ端子電極6bに接続している。同様に、スパイラル電極4c1,4c2はそれぞれ端子電極6cに接続し、スパイラル電極4d1,4d2はそれぞれ端子電極6dに接続している。
図13は図12に示したフィルタの等価回路図である。ここでキャパシタンスC1a,C2aとインダクタンスL1a,L2aによる回路部分は、図12に示したスパイラルキャパシタ8a部分の等価回路である。また、キャパシタンスC1b,C2bとインダクタンスL1b,L2bによる回路部分は、図12に示したスパイラルキャパシタ8b部分の等価回路である。同様に、キャパシタンスC1c,C2cとインダクタンスL1c,L2cによる回路部分は、図12に示したスパイラルキャパシタ8c部分の等価回路であり、キャパシタンスC1d,C2dとインダクタンスL1d,L2dによる回路部分は、図12に示したスパイラルキャパシタ8d部分の等価回路である。また、キャパシタンスCabは、入力端子6a−6b間に生じる容量であり、Ccdは端子電極6c−6d間に生じる容量である。
図13において破線の円で示す部分には2つのインダクタンスの相互誘導が生じるが、それらに対してさらにステップリング共振器が結合している。但し、この図13では図面の煩雑化を避けるため、ステップリング共振器部分の等価回路は図示を省略している。このステップリング共振器部分の等価回路は図3に示した第2の回路を構成する、インダクタ、抵抗およびキャパシタのリング回路として表すことができる。
なお、図3や図9ではスパイラル電極の抵抗成分を等価回路図中に表したが、この図13ではその図示を省略している。
図13のスパイラルキャパシタ8a〜8dは単にキャパシタとして作用するのではなく、同図に示すようにキャパシタとインダクタのリング回路を構成していて、所定周波数を共振周波数とする共振器として作用する。そして、スパイラルキャパシタ8a,8dのように直列要素の共振器は帯域通過用共振器として作用し、スパイラルキャパシタ8b,8cのように並列要素の共振器は帯域阻止用共振器として作用する。
このようにして全体がフィルタとして作用するが、各スパイラルキャパシタによる共振器に相互誘導結合するステップリング共振器の共振周波数およびその線路導体の巻数を設計上のパラメータとして定めることによって、フィルタの通過帯域および減衰域の特性を高い自由度の下で設計することができる。
なお、このフィルタは基板の裏面側に接地電極を形成しなくても動作する共平面型回路であるので、第1〜第4の実施形態の場合と同様に小面積・低背設計が可能となる。
次に、第6の実施形態に係るキャパシタについて図14を基に説明する。(A)は上面図、(B)は基板表面の平面図、(C)は(A)におけるC−C部分の断面図である。
絶縁体からなる基板1の表面には、第1の実施形態の場合と同様のステップリング共振器7を構成している。このステップリング共振器7を構成した基板上には絶縁体層31を形成していて、絶縁体層31の上面には一方のスパイラル電極4aと端子電極6aを形成している。その上部にはさらに絶縁体層32を形成していて、その絶縁体層32の表面に他方のスパイラル電極4bと端子電極6bを形成している。スパイラル電極4bの外周端は端子電極6bに接続している。これらのスパイラル電極4a,4bはステップリング共振器7に対向する位置にそれぞれ絶縁状態で配置している。第1の実施形態として図1に示したキャパシタと異なり、2つのスパイラル電極4a,4bの互いの巻き方向を逆としている。
図15は、図14に示したキャパシタの等価回路図である。図1の等価回路である図3に比べて明らかなように、インダクタンスL1−L2間の相互誘導の向きが逆となっている。この構造は、図8の(A)に示したキャパシタを小型化したものであり、限られた占有面積で所定容量のキャパシタンスを確保できるという効果を奏する。
次に、第7の実施形態に係るキャパシタについて図16を参照して説明する。
図16の各図は、スパイラルキャパシタに付加するステップリング共振器の構成例である。図1・図10・図14に示した例では、ステップリング共振器の各導体線路の両端の端部同士が幅方向に近接しているとともに、線路導体の一方の先端とそれに隣接する他の線路導体の一方の先端とが所定間隙を隔てて向かい合うように配置したが、図16の(A)に示すように、各導体線路2a,2b,2cの両端の端部を近接させた容量性領域を1箇所に集中して配置してもよい。図中破線の円は容量性領域を示している。
また、図1・図10・図14に示した例では、1つの共振単位を単数の導体線路で構成したが、共振単位を構成する線路導体は単数である必要は無く、複数であってもよい。例えば図16の(B)に示すように、4つの線路導体で環状の共振単位を構成してもよい。すなわち図16の(B)に示す例では、2a,2b,2c,2dで示す4つの導体線路をそれぞれ4分の1周以上周回した形状としている。2e,2f,2g,2hで示す4つの導体線路や2i,2j,2k,2lで示す4つの導体線路についても同様である。
また、図1・図10・図14に示した例では、複数の導体線路のそれぞれを同一の線路幅同一の線路間隔にしてステップリング共振器を構成したが、図16の(C)に示すように、複数の導体線路の集合体の幅方向のほぼ中央から両端にかけて導体線路幅を次第に細くしてもよい。この構成により、導体線路集合体の縁端部における表皮効果による電流集中を効率よく緩和でき、その分Qを高めることができる。
なお、図1に示した例では、基板上にステップリング共振器を構成し、その上部にスパイラルキャパシタを構成したが、これを逆にしてもよい。すなわち、図1の基板1の表面にスパイラルキャパシタ8を構成し、その上部に絶縁体層を介してステップリング共振器7を形成することによって、単一の基板上にスパイラルキャパシタとステップリング共振器を近接配置してもよい。
次に、第8の実施形態に係るデュプレクサおよび通信装置の構成を図17を基に説明する。
図17において、送信フィルタTxFILと受信フィルタRxFILを備えたデュプレクサDUPのアンテナポートにアンテナANTを接続し、送信フィルタTxFILの入力ポートと送信回路TxCIRとの間にインピーダンス整合回路IMCを設けている。また受信フィルタRxFILの出力ポートに受信回路RxCIRを接続している。
上記インピーダンス整合回路IMCは送信回路TxCIRの出力段のFETと送信フィルタTxFILの入力ポート間のインピーダンス整合を行う。このインピーダンス整合回路IMCには、第1〜第3の実施形態で示したキャパシタを設けることができる。また、第5の実施形態で示したフィルタを上記受信フィルタRxFILや送信フィルタTxFILに用いることができる。この発明に係るキャパシタやフィルタによれば導体損失が抑えられるため、送信信号の電力損失が低減でき、高利得化が図れる。
第1の実施形態に係るキャパシタの構成を示す図 同キャパシタで用いるステップリング共振器の構成および作用を示す図 同キャパシタの等価回路図 同キャパシタのスパイラルキャパシタの等価回路図 同キャパシタの磁界ベクトル分布のシミュレーション結果を示す図 同キャパシタの周波数特性を示す図 同キャパシタの、スパイラル電極の電流に対するステップリング共振器の線路導体に流れる電流比とQ値との関係を示す図 第2の実施形態に係るキャパシタの構成を示す図 同キャパシタの等価回路図 第3の実施形態に係るキャパシタの構成を示す図 第4の実施形態に係るキャパシタの構成を示す図 第5の実施形態に係るフィルタの構成を示す図 同フィルタの等価回路図 第6の実施形態に係るフィルタの構成を示す図 同フィルタの等価回路図 第7の実施形態に係るキャパシタで用いるステップリング共振器の幾つかの構成例を示す図 第8の実施形態に係るデュプレクサおよび通信装置の構成を示す図 従来のスパイラルキャパシタの磁界ベクトル分布のシミュレーション結果を示す図
符号の説明
1−基板(下部基板)
2−線路導体
3,31,32−絶縁体層
4−スパイラル電極
6−端子電極
7−ステップリング共振器
8−スパイラルキャパシタ
9−素子基板
10−共振器素子

Claims (7)

  1. スパイラル状に形成したキャパシタ用電極を有するキャパシタであって、
    単数または複数の導体線路からなる環状の共振単位の、1個または複数個から構成された共振器を前記キャパシタ用電極に近接させたことを特徴とするキャパシタ。
  2. 前記導体線路を基板の表面または表面付近に形成して前記共振器を構成するとともに、前記導体線路の上部に絶縁体層を介して前記キャパシタ用電極を形成した請求項1に記載のキャパシタ。
  3. 前記キャパシタ用電極を下部基板の表面または表面付近に形成し、
    前記導体線路を素子基板の表面または表面付近に形成して前記共振器を構成するとともに、前記導体線路の形成面を前記キャパシタ用電極の形成面に対向させて前記下部基板に前記素子基板を配置した請求項1に記載のキャパシタ。
  4. 前記キャパシタ用電極は、それぞれの一端が端子電極に導通する2つのスパイラル状電極と、該2つのスパイラル状電極との間で容量を生じさせるスパイラル状電極とから構成した請求項1〜3のいずれかに記載のキャパシタ。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のキャパシタを備えたフィルタ。
  6. 請求項5に記載のフィルタを備えたデュプレクサ。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載のキャパシタ、請求項5に記載のフィルタ、または請求項6に記載のデュプレクサを備えた通信装置。
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