JP2005330293A - Hsvの治療的処置に用いるワクチン - Google Patents

Hsvの治療的処置に用いるワクチン Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、単純ヘルペスウイルス(HSV)感染を検出するために有効なポリペプチド、ならびに再発性単純ヘルペスウイルス(HSV)誘導疾病を阻止するのに有効なワクチンおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 単純ヘルペスウイルス(HSV)糖タンパク質(gB)をコードする、単離したヌクレオチド配列を含有する宿主細胞で産生される、組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)糖タンパク質B(gB)ポリペプチドの免疫学的に等価な断片。
【選択図】 なし

Description

ヘルペスウイルスには、1型(HSV-1)および2型(HSV-2)と名付けられた2つの密接に関連する変異体を含む単純ヘルペスウイルスが包含される。これらの型のウイルスは、強い交差反応を示すが、中和滴定により区別することができる。HSV-1およびHSV-2は様々なヒトの疾患(例えば、皮膚感染、陰部ヘルペス、ウイルス性脳炎など)の原因となっている。
単純ヘルペスウイルスは2本鎖DNAウイルスであって、膜内に被包された二十面体の核
キャプシド内に約150〜160kbpのゲノムを有する。この膜には、数多くのウイルス特異的
な糖タンパクが含まれ、それらのうち最も多いのは、gB、gC、gD、およびgEである。ここで、gBおよびgDは、1型と2型との間で交差反応を示す。
HSV-1およびHSV-2の両方に対するヒトヘの安全で効果的なワクチンを提供すること、および感染が生じた場合は、その疾患の治療法を提供することは、医学的にも科学的にも非常に興味ある問題である。
ある有望な試みは、単離された糖タンパクを予防に用いることであった。この糖タンパクは、マウスに注射し、次いで生きたウイルスを感染させた場合に、防御性を与えることが示されていた。しかし、単純ヘルペス糖タンパクの利用は、これまで、主にウイルスの培養と膜タンパクの単離とに依存してきた。糖タンパクの商業的生産においては、危険な病原体の取り扱い、培養細胞中におけるウイルスの維持、ウイルスゲノムまたはその一部を含まない糖タンパクの単離などに関する問題が、糖タンパクをワクチンとして用いることを妨げてきた。従って、ウイルスを培養し、そして膜タンパクを分離すること以外の方法により生産された糖タンパクを用いたワクチンを提供することが望ましい。
ヘルペスの感染を治療的に処置するための方法、すなわち個体がウイルスに感染した後で、その疾患を軽減したり、その疾患の再発を防止する処置法を開発することもまた非常に興味が持たれる。ウイルスの感染は、通常、抗生物質による治療に対しては抵抗性を示すので、著しい副作用を持たない他の方法に非常に興味が持たれている。再発性ヘルペス疾患の治療には、いくつかの薬剤(特に、アシクロビール(Acyclovir))が有効であった
が、再発を防止するために長期間にわたって連続投与を行う必要性があるので望ましくなく、治療の過程で薬剤抵抗性の変異体が生じる。
EberleおよびMou(J. of Infectious Diseases(1983)148:436-444)は、ヒト血清中におけるHSV-1に特有のポリペプチド抗原に対する抗体の相対的な力価を報告している。Marsdenら(J.of Virology(1978) 28:624-642)は、HSV-1とHSV-2との間におけるタイプ内
の組み換えにより、117キロダルトン(kd)の糖タンパクに対応する遺伝子がHSVの遺伝子地図上の0.35〜0.40地図単位内に位置することを報告している。Ruyechanら(同上(1979)29:677-679)は、糖タンパクB遺伝子の位置が、0.30〜0.42地図単位の間にあることを報
告している。SkareおよびSummersVirology(1977) 76:581〜595)は、HSV-1 DNA上のEcoRI、XbaI、HindIIIのエンドヌクレアーゼ切断部位を報告している。Roizman(Ann.Rev. Genetics(1979) 13:25〜57)は、HSVゲノムの構成を報告している。DeLuccaら(Virology(1982) 122:411)は、0.345〜0.368地図単位の間のgB1構造遺伝子内に変異があると考えられるいくつかの表現型変異体の位置を決定している。
HSV-1またはHSV-2に感染したニワトリ胚細胞から抽出されたサブユニットワクチンが、
米国特許第4,317,811号および第4,374,127号に述べられている。また、Hilfenhausら(Develop.Biol. Standard(1982)52:321-331)により、特定のHSV-1種(BW3)からのサブユ
ニットワクチンの調製が述べられているのを参照されたい。Roizmanら(同上(1982)52:287-304)は、免疫感作したマウスにおいて効力を有することが示されている非感染性のHSV-1×HSV-2組換え体および欠失変異体の調製について述べている。Watsonら(Science(1982)218:381-384)は、カエル卵母細胞の核への注入によるクローン化断片の発現だけで
なく、HSV-1gD遺伝子のクローニングおよびエセリヒア・コリー(E.coli)内における該
遺伝子の低レベル発現について述べている。彼らはまた、gD遺伝子の塩基配列も示している。Weisら(Nature(1983)302:72-74)は、エセリヒア・コリー内におけるgDの高レベル発現について報告している。このポリペプチドは、ウサギにおいて中和抗体を誘導する。Bermanら(Science(1983)222:524-527)は、哺乳動物培養細胞中における糖タンパクD
の発現について報告している。Laskyら(Biotechnology(1984年6月)527-532)は、この糖タンパクDをマウスの免疫化に用いることを報告している。Cohenら(J. Virol(1984) 49:102-108)は、成熟タンパクの8〜23残基内に含まれる、gDの特定の抗原決定基の位置
および化学合成について報告している。
HSVを感染させた細胞からの膜タンパク調製物を、ヒトの感染後ワクチンとして、「治
療」に用いることについては、Dundarov,S.ら(Dov. Biol.Standard(1987)57:351-357)およびSkinner, G.R.B.ら(同上(1982) 52:333-34)により報告されている。
単純ヘルペスウイルス1型および2型に対する治療に用いるワクチンおよび組成物、ならびにそれらの生産方法が提供される。これらの治療法は、組換えDNA技術により生産さ
れるウイルス特異的ポリペプチドの組み合わせを用いている。特に、HSVgBおよびgDは、
改変された哺乳動物宿主で生産され、そして組み合わせて用いられた。これらのポリペプチドは、ヒトを含む動物における単純ヘルペスウイルス感染の治療に用いられうる。
従って、本発明のある局面は単純ヘルペスウイルス(HSV)感染の治療的処置に用いら
れるワクチンである。該ワクチンは、
a.免疫的に活性な単純ヘルペスウイルス糖タンパクB(gB)ポリペプチド;および;
b.免疫的に活性な単純ヘルペスウイルス糖タンパクD(gD)ポリペプチドを含有する。
ここで、該ポリペプチドは哺乳動物細胞中において組換えDNA構築物を発現させて調製
されたものであり、該ポリペプチドは、このワクチンが、HSVに一次感染した後の個体に
投与される場合には、HSVに感染した該個体においてHSVにより誘導される疾患の再発を防止するのに効果的な量で存在する。
本発明の他の局面は、単純ヘルペスウイルス(HSV)感染の治療に用いられるワクチン
である。該ワクチンは、
a.免疫的に活性な単純ヘルペスウイルス糖タンパクB(gB)ポリペプチド;または
b.免疫的に活性な単純ヘルペスウイルス糖タンパクD(gD)ポリペプチドを含有する。
ここで、該ポリペプチドは、哺乳動物細胞中において組換えDNA構築物を発現させて得
られたものであり、該ポリペプチドは、このワクチンが、HSVに一次感染した後の個体に
投与される場合には、HSVに感染した該個体においてHSVにより誘導される疾患の再発を防止するのに効果的な量で存在する。
本発明によれば、単純ヘルペスウイルス(HSV)糖タンパク質B1型(gB1)をコードする、図4〜7に記載の単離したヌクレオチド配列を含有する宿主細胞で産生される、組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)糖タンパク質B(gB)ポリペプチド、その免疫学的に等価な断片、またはそれらの混合物が提供される。
本発明によれば、単純ヘルペスウイルス(HSV)糖タンパク質B2型(gB2)をコードする、図4〜7に記載の単離したヌクレオチド配列を含有する宿主細胞で産生される、組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)糖タンパク質B(gB)ポリペプチド、その免疫学的に等価な断片、またはそれらの混合物が提供される。
本発明によれば、単純ヘルペスウイルス(HSV)糖タンパク質B(gB)およびその前駆体、あるいはそれらの類似体をコードするヌクレオチド配列を含有する宿主細胞で産生される、組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)糖タンパク質B(gB)ポリペプチド、その免疫学的に等価な断片、またはそれらの混合物であって:
該ヌクレオチド配列は、
i)図4〜7に記載のアミノ酸配列、または、
ii) 該アミノ酸配列の免疫学的等価物、
をコードするヌクレオチド配列を含有する、組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)糖タンパク質B(gB)ポリペプチド、その免疫学的に等価な断片、またはそれらの混合物が提供される。
本発明によれば、前記単純ヘルペスウイルス(HSV)糖タンパク質B(gB)ポリペプチドおよび/または単純ヘルペスウイルス(HSV)糖タンパク質D(gD)、その免
疫学的に等価な断片、またはそれらの混合物を含む、再発性単純ヘルペスウイルス(HSV)誘導疾病を阻止するのに有効なワクチンが提供される。
本発明によれば、抗単純ヘルペスウイルス(HSV)糖タンパク質B(gB)抗体および抗単純ヘルペスウイルス(HSV)糖タンパク質D(gD)抗体の両者と結合可能なポリペプチドを含有する、抗単純ヘルペスウイルス(HSV)糖タンパク質B(gB)抗体および抗単純ヘルペスウイルス(HSV)糖タンパク質D(gD)抗体の両者を検出する組成物であって、該抗体が、単純ヘルペスウイルス(HSV)糖タンパク質B(gB)ポリペプチドおよびHSV gDポリペプチド、またはそれらの混合物により産生される、組成物が提供される。
本願発明によれば、前記の単純ヘルペスウイルス(HSV)糖タンパク質B(gB)をコードするポリヌクレオチドが提供される。
本願発明によれば、以下のヌクレオチド配列を含有するDNA構築物が提供される:
(a) 前記の単純ヘルペスウイルス(HSV)糖タンパク質B(gB)をコードするヌクレオチド酸配列を有する単離したヌクレオチド配列:
(b) 宿主細胞中での発現を推進するための、該ヌクレオチド配列と結合可能な制御配列。
本願発明によれば、前記のDNA構築物により形質転換された、宿主細胞が提供される。
本願発明により、単離した糖タンパク質をコードするポリヌクレオチドを利用して再発性単純ヘルペスウイルス誘導疾病を阻止するのに有効なワクチンを製造することが可能になった。
(ワクチン)
本発明のワクチンは、1型および2型の両方の組換えHSV糖タンパクBおよびDを用い
ている。成熟(全長)gBおよびgDタンパクは、これら成熟タンパクと免疫学的に等価な(すなわち、感染に対して防御性を与える)断片、前駆体、および類似体と同様に用いられる。請求の範囲で用いているように、「糖タンパクBポリペプチド」および「糖タンパクDポリペプチド」という用語は、このような断片、前駆体、および類似体を含むことが意図される。組換えgBおよびgDポリペプチドは、真核細胞、好ましくは酵母または哺乳動物細胞、最も好ましくは哺乳動物細胞において生産される。断片の長さは、少なくとも約15アミノ酸、好ましくは少なくとも約30アミノ酸である。ワクチンは、1型ポリペプチドの混合物、2型ポリペプチドの混合物、または1型および2型ポリペプチド両方の混合物、あるいは個々のポリペプチドのいずれをも含有し得る。
gBおよびgDポリペプチド混合物は、単独でも用いられるが、通常は、生理学的および薬理学的に受容される媒体、一般的には水、生理食塩水、リン酸緩衝液、糖などと共に用いられる。さらに、該ポリペプチド混合物は、生理学的に受容されるアジュバント(例えば、水酸化アルミニウム、ムラミルジペプチド誘導体など)と共に用いられ得る。実施例6.3で示されるように、様々なアジュバントが有効である。アジュバントの選択は、少なく
とも部分的には、アジュバントを含んだワクチンの安定性、投与経路、ワクチン接種される個体種に対するアジュバントの効能、そしてヒトの場合には、このアジュバントが食品医薬品局(FDA)によってヒトヘの使用が認可されているかいないかといったことに依存
する。ワクチンは、リポソームにより運搬されるか、および/またはインターロイキン1および2のような免疫調節剤と共に運搬される。ワクチンは都合のよい非経口経路(例えば、静脈内、動脈内、皮下、真皮内、筋肉内、または腹腔内)により投与されうる。同一または異なった経路で投与されるワクチンを分割して投与することは有利である。ワクチンは、単純へルペスウイルスに一次感染した後に投与される。
感染後投与の効能は、実施例6.1に示されている。ウイルス感染後の宿主における免疫
応答の増大に及ぼすワクチンの効果は、実施例6.2に示されている。単純ヘルペスウイル
スのウイルス表面糖タンパクは、抗体が介在するウイルスの中和化と、抗体依存性細胞障害(ADCC)とによって認識される抗原であることが示されている。NorrildB.ら、Infect.
Immun.(1980) 28:38-44。頻繁にHSV感染を再発する患者は、しばしば中和抗体およびADCCの両方を高いレベルで有する。Corey,L.およびSpear, P.G., Eng. N., J. Med. 314:686-691,1986。このような患者にとって、HSV特異的抗体の有力な誘導物質が、ウイルス糖タンパクであることが示された。Eberle,R., Mou, S.W.,およびZaia, J.A., J. Gen Virol. 65:1839-1843、1984。従って、2つのウイルス糖タンパクだけから構成され、他のウイルス抗原を含まない組換えサブユニットワクチンを、再発性陰部ヘルペスの治療へ臨床的に利用することは期待されなかった。
糖タンパクBおよびDは改変することなく用いられる。しかし、より小さな関連ポリペプチド(例えば、断片など)を用いる場合、および分子量が約5,000ダルトンより小さい
(例えば、1,500〜5,000ダルトン)場合には、所望の免疫応答を誘導するために改変が必要とされる。より小さなハプテンは、適切な免疫原キャリアー(例えば、破傷風トキソイドなど)に結合させなければならない。
gBまたはgDポリペプチドをコードする短いDNA断片を、他の病原性生物やウイルスから
のタンパクを発現する遺伝子に連結することもできる。このようにして、得られた融合タンパクは1種類より多くの病気に対して免疫性を与え得る。
1回の投与量あたりに用いられる組換えgBおよびgDポリペプチドの総量は、通常、宿主の体重1kgあたり、約0.1μg〜2mg、より一般的には約0.5μg〜1mg、そして特に約0.5
μg〜10μgである。ワクチン中のgDに対するgBの割合は、通常、約0.1:1〜10:1、より一般的には約0.5:1〜10:1、そして好ましくは約0.5:1〜5:1である。1回の投与は、日単位から週単位の間隔で繰り返して行われ、通常は2週間から4週間の間隔で、通常は約2回から10回を越えずに行われる。しかし、実施例6.4に示されるように、ウイル
スに一次感染した後の投与時間が、疾患の再発率に影響を及ぼす。従って、治療される種および/または個体に依存して、最も効果的な投与時間を決定する必要がある。最も効果的な時間は、例えば疾患の状態をモニターする疾患症候学または抗体価を用いる基本的な検査により決定し得る。さらに、疾患の急性期、すなわち個体がHSVにより誘導される病
変を体に示す場合に、ワクチン投与が疾患の再発を著しく低減させることは、実施例6.4
のデータに示されている。
(組換え糖タンパクB)
組換えgBポリペプチドの調製は、1985年10月24日に公開された国際公開No.WO85/04587
の国際出願No.PCT/US85/00587に詳述されている。組換えgBポリペプチドを生産するのに
用いる材料および方法については、以下で簡単に記述する。
実施例における図4〜図7は、gB1パットン株のヌクレオチド配列と、そのヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列とを表す。図4〜図7には、gB1とgB2との間の実質的な相同性も示されている。ヌクレオチド配列には多くの変化があり得る。独立した機能を有する種々の断片が用いられ得る。これら断片は成熟gB以外のタンパクに結合し得る。さらに、種々のコドンは、同じアミノ酸をコードするように改変され得るが、宿主の性質に従ってより効果的な発現を示す。例えば、これらコドンは、1種またはそれ以上のタンパク、あるいはタンパク群における特定コドンの出現頻度に従って改変され得る。これらタンパクは、例えば解糖系タンパクであって、特定の宿主(例えば、酵母)の全タンパクにおいて高い比率を占める。ある場合には、1個またはそれ以上のコドンは、あるアミノ酸を別のアミノ酸で置き換えることにより、異なるアミノ酸をコードするように改変し得る。この場合、変化の影響はタンパクの免疫原性や興味ある他の生物学的因子に有害ではない。ある場合には、N末端またはC末端にアミノ酸を付加することが望ましい。このようなアミノ酸の付加は好ましい結果をもたらす。このことは、成熟gB1またはその前駆体をコードする配列の5'末端または3'末端にコドンを付加することにより、容易に達成し得る。さらにgB2のアミノ酸配列はgB1のアミノ酸配列と20%だけ数が異なっているが、HSV-1またはHSV-2の他の株は、それぞれgB1パットン株またはgB2333株と同一または
類似のgB糖タンパクを持っている。これらgB糖タンパクは、通常は5%より少ない数だけ、より一般的には2%より少ない数だけ、そして多くの場合は、0.5%より少ない数だけ
のアミノ酸が、gB1パットン株またはgB2333株のアミノ酸配列と異なっている。
gB1の配列、特にgB1パットン株は、タンパクのN末端から始まる4つのドメインに分けられる:1番目のアミノ酸から約30番目のアミノ酸にまで広がる第1の疎水性領域、第1の疎水性領域から約726番目のアミノ酸にまで広がり、極性が変化し得る領域;極性が
変化し得る該領域から約795番目のアミノ酸にまで広がる第2の疎水性領域;そして904番目のアミノ酸のC末端にまで広がり、極性が変化し得る第2の領域である。
gBは膜の糖タンパクであるから、他の糖タンパクから類推すると、第1の疎水性領域は分泌および/または膜の配置を支配するシグナルリーダー配列であると考えられる。従って、極性が変化し得る第1の配列は、膜の外側にあり、gBが別のタンパクに対する受容体として、あるいはワクチン中の免疫原として作用する程度まで、認識配列として役立つ。第2の疎水性配列は、トランスメンブレン・インテクグレイター配列(transmembraneintegrator sequence)(しばしば、「アンカー(anchor)」と呼ばれる)としての役目を果たし得る。極性が変化し得る第2のアミノ酸配列は、細胞質内に存在すると考えられ、受容体
がトランスメンブレン・インテクグレイター配列の外部にあるという程度まで、1つまたはそれ以上の細胞質プロセスを変更する役目を果たし得る。
gBの前駆体またはその機能的な断片をコードしているポリヌクレオチド配列は、適当な発現ベクターに該ポリヌクレオチド配列を挿入し、得られた発現構築産物を適合する宿主に導入することにより、クローン化され、そして発現され得る。コードしている断片は、約0.1地図単位未満、通常は約0.05地図単位未満である;ここで、1.0地図単位とはHSVゲ
ノム全体の大きさである。発現ベクターは、染色体外に存在するか、あるいは宿主細胞のゲノム内に組み込まれた、低レベルまたは高レベルのマルチコピーベクターであり得る。そして、発現ベクターは、興味のあるポリペプチドを分泌または排泄させるか、あるいは興味のあるポリペプチドを細胞質内または膜内に保持させる。非常に数多くの発現ベクターが文献に発表されており、一般に、真核宿主で用いるのに有用である。真核宿主には、酵母(例えば、サッカロマイセス・セルビシア(S.cerevisiae))および広範囲の永久増殖性哺乳動物細胞(例えば、マウス細胞、サル細胞、ハムスター細胞(例えば、3T3、ベロ(Vero)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、または初代細胞系)が含まれる。分泌が必要とされる場合には、宿主に依存して、天然または非天然のいずれかの分泌リーダー配列を用いることができる。分泌リーダー配列を切断するプロセッシングシグナルは、天然のシグナル、または非天然の分泌リーダー配列に関連するシグナル、あるいはこの両方がタンデムになったものであり得る。
gB1パットンをコードするポリヌクレオチド配列を得るために、EcoRI制限酵素断片F上に、gB1コード配列の位置を地図に示した。F断片の3つの副断片が、単離され、pBR322中にサブクローン化された(図2)。次いで、これらサブクローンのDNA断片は、HSV-1が感染した細胞から単離したポリA+mRNAのノーザンブロットに対するプローブとして用いられた。gBに対して予測された大きさのmRNAにハイブリダイズした断片は、gBコード領域内に存在すると推定された。gBの転写方向もまた、DNAプローブのどの鎖がmRNAとハイブ
リダイズしたかを決定することにより明らかにされた。gB配列の同一性を確認するために、DNA断片をハイブリッド−セレクトHSV-1mRNAに対して用いた。このmRNAは、次いでインビトロで翻訳され、得られたタンパクはgB特異的抗体を用いてgBに関して分析された。
gB1をコードする断片は、今日では、制限酵素地図作成や塩基配列の決定を含む様々な方法で取り扱われ、制限酵素切断部位や発現のためのオープンリーディングフレーム領域が確証される。次いで、DNA配列は、完全なgB前駆体またはその断片をコードしている配
列を与えることに限定される。次いで、これら配列は、適当な位置にある転写シグナルおよび適当な翻訳シグナルを有する適当な発現ベクターに挿入される。これは、突出部分を充填し、そしてアダプターなどを用いて平滑末端結合を行うことにより達成し得る。
増幅能力を有する遺伝子に対して遺伝子をタンデムに導入することは特に興味深いことである。有用な遺伝子には、メトトレキセートを用いることにより増幅し得るジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)遺伝子(ここで、dhfr遺伝子および隣接領域は反復している);および重金属(例えば、銅)などで増幅し得るメタロチオネインが含まれる。発現構築産物は、形質転換、トランスフェクション、リン酸カルシウム沈澱などを含むいかなる有用な手段によっても、適当な宿主に導入することができる。次いで、宿主細胞は、特定の遺伝子を増幅することを選択するレベルに、適当な生物毒によりストレスがかけられる。次いで、これら細胞は培養され、所望のポリペプチドを有効に生産するまで増殖される。
上述の手順に従って、HSV-2 333株由来のgB2をコードしているポリヌクレオチド配列
は、前駆体および成熟体の両方が単離され、クローン化され、そして構築物を与えるために操作される。その結果、1種またはそれ以上の宿主で発現し得る。gB1パットンをコードする断片の有用性を考慮すると、これら断片は、特異的HSV-2制限断片クローンヘのDNA
部分をコードするgB2の位置付け、または感染した宿主細胞由来のgB2mRNAの単離のいずれのプローブとしても用いられる。便宜的には、gB1遺伝子の異なる領域をコードする複数のプローブが用いられる。このプローブにハイブリダイズするのにおおよそ適当な大きさを有する陽性DNA断片または豊富なmRNAのいずれもが選択される。次いで、mRNAは逆転
写されてcDNAを与えるか、および/またはHSV-2ゲノムの断片とのハイブリダイゼーショ
ンに用いて、gB2をコードしているその機能を確認することができる。必要に応じて、gB2構造遺伝子の一部を含む1個より多くのクローン化された断片は、適当に、全コード領域および隣接領域を与えるために操作され、そして結合され得る。次いで、このコード領域は発現ベクター中に導入される。
(組換え糖タンパクD)
組換えgD1の調製は、1985年10月24日に公開された国際公開No.WO85/04587の国際出願No.PCT/US85/00587に詳述されている。組換えgDポリペプチドを生産するのに用いられる材料および方法については、以下で簡単に述べる。組換えgD2の調製に関する詳しい記述は以下の実施例に与えられている。
天然に存在する糖タンパクDと免疫学的に交差反応を行うポリペプチドは、例えば酵母や哺乳類細胞(例えば、CHO細胞)の真核宿主において、組換えDNAの方法論により生産される。真核生物での生産は、真核宿主に関連して、例えば翻訳後修飾および/または分泌などの利点を与える。gDポリペプチドは、少なくとも約9個のアミノ酸をコードする比較的短い合成DNA断片から生産され、gDに特異的な免疫応答を誘導するのに有効なハプテン
を与える。
gD DNA断片は、天然起源または合成起源のものであり得る。HSV-1の天然のgD遺伝子は
、ウイルスゲノム上において、短い内部繰り返し(IRs)配列と、その3'末端にある短い
終結繰り返し(TRs)配列との間に位置する。成熟タンパクをコードしているということ
は、約1.6kbpの断片がゲノムの2.9kbpSacI制限酵素断片上に位置しているのを見い出せ
ることである。成熟タンパクの全コード領域は、2.9kbpSacI断片のうちのHindIII−Nru
I断片中に位置している。天然に存在するgD遺伝子は、修飾を受ける場合もあれば、受けない場合もある。遺伝子の領域は、望み通りに欠失させるか、および/または他のDNA断
片と結合させ得る。gDDNA断片は、gB DNAの発現について上述したものと同様の材料およ
び手順を用いて、発現ベクターに挿入され、そして発現され得る。天然に存在するgD遺伝子の特定断片の調製、クローニング、および発現については、以下の実施例において詳述する。
以下の実施例は、例示を目的として与えられたものであり、限定するものではない。以下の実施例において、第1節では組換えタンパクを生産するのに用いられる一般的な手順について、第2節では組換えgB1の調製について;第3節では組換えgB2の調製について;第4節では組換えgD1の調製について;第5節では組換えgD2の調製について;第6節ではgBおよびgDのポリペプチド混合物を用いたワクチンの研究について述べる。
(1.材料および方法)
HSV-1パットン株およびHSV-2 333株の生きた保存株は、Dr.Richard Hyman(Hershey Medical Center,Hershey, Pennsylvania)より入手した。これらのウイルスは、Dr.Evelyn Linnette(Viro Labs,Emeryville, California)またはAmerican Type Tissue Culture Laboratoryより入手したベロ細胞中で増殖させ得る。この増殖は標準的な手順に従って行
われる。プラスミドpACYC184(ChangおよびCohen,J.Bacteriology(1978)134:1141)のEcoRI部位にクローン化されたHSV-1パットンEcoRI DNA断片(Kudlerら、Virology(1983)124:86-99)のライブラリーは、Dr.Hymanより得るか、あるいは簡便法で独自に調製し得
る。2つのHSV-2 333クローン、すなわちpBR322(Sutcliffe,NucleicAcids Research(197
8) 5:2731)のHindIII部位に挿入されたHindIII断片HおよびLもまた、Dr.Hymanより得ることができる。
dhfr欠損CHO細胞系は、Dr.Y.W.Kan(University of California, San Francisco)より
得た。この細胞系はもともと、UrlaubおよびChasin(Proc.Natl. Acad. Sci. USA(1980) 77:4216-4220)により記述されている。非選択条件下で、これらの細胞は、10%牛胎児
血清、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、そして150μg/mlL-プロリン
を追加したハムのF-12培地(Gibcoより入手、cat. no.176)で増殖させた。選択培地は、10%の透析された牛胎児血清と、ペニシリン、ストレプトマイシン、および150μg/mlL-
プロリンとを追加したDEMであった。メトトレキセート(MTX)選択のために、濃縮MTX保
存培地は、Lederleより得たMTXから調製し、使用直前に上記のDME選択培地に加えた。
(1.1 クローニング)
すべてのDNA操作は、標準的な手順に従って行われた。Maniatisら、Molecular
Cloning, CSH(1982)を参照されたい。制限酵素、T4 DNAリガーゼ、エセリヒア・コリー
DNAポリメラーゼIクレノー断片、そして他の生物学的試薬は、BethesdaResearch Laboratories、あるいは他の表示した市販品供給業者から購入し、製造業者の指示書に従って
使用した。2本鎖DNAは1%アガロースゲル上で分離し、電気溶出により単離した。
(1.2 RNAの単離,ノーザンブロット解析,およびハイブリッド選択翻訳法)
全RNAは、細胞あたり10個のウイルスという多重度でHSV-1またはHSV-2に感染して6時
間後のベロ細胞より調製した。細胞単分子層を洗浄し、抽出緩衝液でインキュベートし、そしてPachlら(Cell(1983)33:335-344)によって述べられているように処理した。ポリA+ RNAは、500mM NaCl, 10mM Tris HCl(pH7.5)、1mMEDTA、0.1% SDS中に入ったオリ
ゴdTセルロース(Collaborative Researchより得た)の3mlカラムに、2mgの全RNAを通
し、次いで100mMNaCl, 10mM Tris
HCl(pH7.5)、1mM EDTA、0.1% SDSでカラムを洗浄し、そして10mM Tris HCl(pH7.5)、1mM EDTA、0.1% SDSでポリA+分画を溶出させることにより調製した。
ノーザンブロット解析を行うために、ポリA+ RNAを、グリオキサール(McMasterら、Proc. Natl. Acad. Sci.USA(1977) 74:4835-4838)で変性させ、1%アガロースゲルの電
気泳動により分別し、ニトロセルロースペーパー(Thomas, 同上(1980)77:5201-5205)
に移し、そして32P標識プローブでハイブリダイズさせた。
ハイブリッド選択翻訳法に用いられる方法の詳細は、以前に記述されている(Pachlら
、Cell(1983) 33:335-344)。DNAフィルターは、gBをコードする3.5kbのXho-Kpn断片3
μg、またはHSV-1gDをコードする3.0kbのSstI−SstI断片2μgのいずれかを用いて調製した。このフィルターを、HSV-1が感染した細胞由来のポリA+ RNA40μgと共にインキュベートした、結合RNAを溶出し、網状赤血球無細胞系(Pachlら、J. Virol.(1983)45:133-139)で翻訳させた。翻訳産物は、12.5%SDSポリアクリルアミドゲル(Laemmli,Nature(1970) 227:689)で解析した。
(1.3 DNAトランスフェクション)
COS 7細胞(Gluzman,Cell(1981) 23:175-182)またはdhfr欠損CHO細胞(Urlaubおよ
びChasin(1980) 前出)の形質転換は、キャリアーDNAを省略したこと以外は、vander Eb
およびGraham(Methods in Enz.(1980)65:826-839)の手順を、ParkerおよびStark(J. ofVirol.(1979) 31:306-369)により改変された手順を用いて行った。プラスミドDNAの
リン酸カルシウム沈澱は、250mM CaCl2中のプラスミドDNAに、これと等容量の2倍に濃縮したHEPES-緩衝化生理食塩水(2×HBS)を1滴ずつ加えて混合することにより調製した
(1×HBSは、0.14MNaCl、5mM KCl、0.7mM Na2HPO4、2.8mM グルコース、10mM HEPES(pH7.0)である)。室温で約20分間インキュベートした後、1mlのリン酸カルシウム-DNA懸
濁液(15μgのDNAを含む)を、10cmの平板上で集密度が50%に達するまで増殖した細胞の培地へ加えた。6〜8時間後、DNAを含んだ培地を取り除き、細胞を15%グリセロール−
1×HBSと共に4分間インキュベートした。次いで、これら細胞を2日間非選択培地(F12)で増殖させ、その後これら細胞を選択培地中に分割、すなわち植え継いだ。10日後には、dhfr陽性の細胞コロニーが現れ、14日後に、パスツールピペットで平板からコロニーの細胞を移すことにより、これらコロニーを分離した。分離した細胞を増殖のためにマルチウェルの平板に移した。
(1.4 細胞のインビボ標識および免疫沈澱)
35S−メチオニンで標識するために、細胞を3.5cmの平板で集密的に増殖させ、PBS(0.14M NaCl 2.7mM KCl、15.3mMNa2HPO4)で1回洗浄し、次いでメチオニンを除いた0.5mlの標識培地DEM(Gibcoから得たダルベッコの修正イーグル培地、cat.no.188G)に、1%の
透析された牛胎児血清と、400μCi/mlの35S−メチオニン(>1000μCi/mmol)を加えた
ものを、各平板に添加した。これら細胞を37℃にて適当な時間インキュベートした。標識期間の終わりには、培地を取り除き、単分子層をPBSで1回洗浄した。「冷」メチオニン
チェイス(“cold”methioninechase)として、2.5mMのメチオニンを含むDMEで標識培地
を置き換えた。免疫沈澱を行うために、細胞を、0.1mlの細胞溶液緩衝液(20mMTris-HCl
(pH8)、100mM NaCl、1mM EDTA、0.5%ノニデットP40、0.5%デオキシコール酸ナトリ
ウム、牛血清アルブミン、0.1%SDS、1.0mMフェニルメチルスルホニルフルオリド、10mM
ベンズアミジン、1%アプロテニン、Sigma Chemical Companyより得た)中で溶解させた。細胞溶解物を、チューブにかき集め、手早くボルテックスミキサーにかけ、次いで4℃にて5〜10分間放置した。細胞破片物は、遠心分離により取り除き、透明になった溶解物は−70℃で貯蔵した。
免疫沈澱を行うために、細胞溶解物0.1mlは、普通血清と4℃で30分間インキュベート
することにより予め清澄させ、次いでプロテインAセファロース(PAS)の20%溶液(溶
解緩衝液中)50μlを加え、4℃で30分間、静かに振盪しながらインキュベートし続けた
。PASは、14,000×gで1分間遠心分離することにより取り除き、5μlのHSV-1ポリクローナル抗体(DAKOより得た)またはgB特異的モノクローナル抗体F3AB(Universityof South
AlabamaのDr.John Oakesより得た)を加えた。F3AB抗体を用いる場合は、溶解緩衝液か
ら0.1% SDSを省いた。4℃で30分間の後、75μlのPASを加え、上述のようにインキュベ
ートした。PAS-免疫複合体を遠心分離により集め、BSAとプロテアーゼ阻害剤とを欠く溶
解緩衝液で3回洗浄し、0.12MTris HCl(pH7.0)で1回洗浄した。免疫沈澱したタンパクをSDSサンプル緩衝液中で煮沸することによりPASから解離させ、次いで12%ポリアクリルアミドゲルで解析した。細胞培地から標識タンパクを免疫沈澱させるために、培地をまず遠心分離により清澄にし、次いで1/10容量の10倍溶解緩衝液を加えると、タンパクが上
述のように沈澱した。
(1.5 免疫螢光)
COS細胞またはCHOクローンにおけるgBまたはgDの発現を分析するために、スライドのウェル内で増殖した細胞をPBSで3回洗浄し、100%メタノールを用いて−20℃にて10分間固定し、続いてさらにPBSで3回洗浄し、5%ヤギ血清(GS)を足したPBSで1回洗浄した。次いで、固定された細胞を、1次抗体(PBS-5%GSで1/100に希釈したHSV-1またはHSV-2ポリクローナル抗体)とともに37℃にて30分間インキュベートした。次に、この細胞をPBS-5%GSで3回洗浄し、2次抗体(PBS-5%GSで1/10に希釈したFITC−結合ヤギ抗−ウ
サギIgG(カペル)とともに37℃にて30分間インキュベートした。PBS-5%GSで4回洗浄
した後、スライドを50%グリセロール−100mMトリス(pH8.0)を用いてカバー片でマウントし、螢光光学系を装備したライツ光学顕微鏡で観察した。生細胞の免疫螢光は、細胞をPBS-5%GSでの最初の洗浄に引き続き直ちに1次抗体とともにインキュベートしたことを除いては、上述のようにして行った。カバー片でマウントする前に、生細胞を5%ホルムアルデヒドを含有するPBSで固定した。螢光染色した細胞は、コダックのエクタクロムフ
ィルム(KodacEktachrome film;ASA400)を用いて写真を撮った。
(1.6 ELISA分析)
CHO細胞を培養した培地中のgBタンパク濃度を、標準物質として精製した組換えgB調製
物を用いた間接酵素結合免疫吸着分析法(ELISA)により測定した。PBSで1:1000に希釈されたF3AB抗体50μlを、室温で1時間インキュベートすることにより、96−ウェルの塩
化ポリビニルプレート(DynatechLaboratories, Inc.)のウェルに吸着させた。過剰な抗体をPBS-5%GSで3回洗浄することにより除去した。50μlの培地試料またはPBS-1%GSで希釈したgBタンパク標準物質をウェルに添加し、室温にて1時間インキュベートした。次いで、このプレートをPBS+1%GSで3回洗浄し、その後同じ緩衝液で1:1000に希釈し
た50μlのウサギ抗HSV-1ポリクローナル抗体(DAKOより入手)とともに3回目のインキュベーションを1時間行った。過剰な2次抗体は、PBS+1%GSで3回洗浄することにより
除去した。最後に、PBS-1%GSで1:500に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤ
ギ抗ウサギ抗体(BoehringerMannheim)の50μlを各ウェルに添加し、1時間インキュベ
ートした、次いで、ウェルをPBS+1%GSで1回洗浄し、続いてPBSで8回洗浄した後、1mg/mlの濃度の2,2'−アジド−ジ〔3−エチルベンズ−チオアゾリンスルホネート〕(BoehringerMannheim)を0.1Mクエン酸(pH4.0)、0.003% H2O2中に含有する液50μlで呈色させた。この呈色反応を、5分後に50μlの10%SDSを添加することによって停止させ、吸光度をマイクロタィタープレートリーダーで414nmにて読み取った。
gDタンパクの濃度は、標準物質として精製した組換えgDおよびF3ABの代わりにgD−特異的モノクローナル抗体8D2(Rectorら、Infect. andImmun.(1982) 38:168-174)を使用したことを除いては、同様の方法で測定した。
(2.糖タンパク)
(2.1 gB1遺伝子の分離,クローニングおよび特徴付け)
糖タンパクgB1に対応する遺伝子を単離するために、HSV-1パットン株(Patton;SkareおよびSummers,Virology(1977) 76:581-595)のEcoRIF制限断片の地図の座標0.345-0.40に及ぶDNA断片を、プラスミドpBR322にサブクローン化した。これらの断片は、プラス
ミドpACY184のEcoRI領域の適当な制限酵素消化物から調製され、TAE緩衝液(0.04Mトリ
ス−酢酸、0.002M EDTA)を用いた1%アガロースゲルでの電気泳動により分離され、電
気溶出された。単離された断片を、前もって適当な制限酵素で切断し、アルカリホスファターゼで処理してあるpBR322に結合した。HSV-1の全ゲノムの制限酵素切断地図を図1に
示し、サブクローン化された領域のより詳細な地図を図2に示す。図1を参照すると、従来の地図が最初の2行で示されている(Roizman,1979)。点線はL−S連結部を示す。プロトタイプのアイソマーの配列のEcoRI制限酵素切断地図を、ハッチングを施した枠で囲むことにより示されるEcoRI断片Fとともに第3行に示す(SkareおよびSummers,1977;Roizman, 1979)。HSV-2のHindIII制限酵素切断地図を、ハッチングを施した枠で囲んだHindIII断片Hとともに第4行に示す(Roizman,1979)。1地図単位は、HSV-1のDNAの98.9
メガダルトンまたは148.9kbpに相当し、HSV-2のDNAの105.6メガダルトンまたは160.5kbp
に相当する。
図2を参照すると、詳細な地図ライン(I)に示された制限酵素切断部位は次の通りである:E,EcoRI; B,BamHI; S,SalI; P,PstI;X,XhoI(DeLuccaらより, 1983); N,NdeI; Xn, XmnI; V,EcoRV。0.355のDeLuccaらによってマッピングされたBstEII部位は、この株では欠失しており、0.357に新しいPstI部位が存在する。ラインIIは、gB1コード領域を含む3つのプラスミドのサブクローンを示す。これらは、0.345のBamHI部位から0.360のSalI部位までの範囲のpHS106;0.36のSalI部位から0.388のSalI部位までの範囲のpHS107;および0.345から0.40地図単位までの範囲のBamHI断片である。ラインIIIはgB1のmRNAをマッピングするために用いられる3つのプローブを示し;ラインIVはハイブリッド選択のために用いられる断片を示し;そして、ラインVはgB2遺伝子の位置を決定するために用いられるこれらのプローブを示す(以下を参照)。これらの断片を作製するために用いた追加の制限酵素切断部位は、Nc,NcoI; K,KpnI; およびA,AluIである。
EcoRI断片におけるgB1コード領域の位置を決定するために、HSV-1が感染したベロ細
胞から単離したポリA+ mRNAのノザンブロッティングを、pHS106およびpHS107から単離さ
れた詳細な地図に示されたDNA断片をプローブとして行った。pHS106から単離された0.5kbPstI−SalI断片をHSV-1についてのプローブとして用いたとき、検出された主な種類は
3kbのmRNAであった。PstI−SalI断片の約1kb上流に位置する0.49kbNcoI断片をプロ
ーブとして同様のブロッティングを行うと、gB1のmRNAと推定される3kbのmRNAとのハイブリダイズも検出された。このことは、gB1をコードする配列がPstI−SalI断片の少なくとも1kb上流まで延長されていることを示唆する。3kbのmRNAは、PstI−SalI断片から下流の最初のXhoI部位よりは延長されていない。なぜならば、0.5kbXhoI−XhoI断片がこのmRNAとハイブリダイズしないからである。gB1転写単位の転写の方向は右から左(3'←5')であり、このことはPstI−SalIおよびNcoI−NcoI断片の5'−3'の方向の鎖のみが3kbgB1 mRNAにハイブリダイズすることにより証明される。
ハイブリッド選択翻訳は、HSV-1ポリA+ mRNAを3.2kb KpnI−XhoI断片(gB1コード領域として示される領域を含む)とハイブリダイズさせることにより行った。結合したmRNAを溶出し、インビトロで翻訳させたとき、HSV-1感染ベロ細胞由来のgB1と同様の大きさ
の100kdタンパクが検出された。この100kdタンパクの同定の確認は、gB1−特異的モノクローナル抗体と免疫沈降することより行われた。KpnI−XhoI断片を用いたハイブリッド選択により、その他のいくつかのタンパクも検出されたが、おそらくこれはDNAのG+C含
有量が高いためにおこったmRNAの非特異的なハイブリダイズの結果である。HSV-1糖タン
パクgDをコードする3.0kbのSstI−SstIDNA断片を用いて同じRNAを選択すると、同様の
タンパクのパターンが観察されたが、100kdのgBタンパクは検出されなかった。この結果
は、gBがKpnI−XhoI断片に特異的であることを示唆する。
図3は、0.345地図単位のBamHI制限酵素切断部位から0.373地図単位のXhoI部位まで
の、3.95kb DNA断片の制限酵素切断地図を示す。gB1オープンリーディングフレームは枠で囲んで示されており、転写の方向は図示されているように右から左へである。実際のコード領域は、地図単位0.348から0.367までである。BamHI部位から3,640番目の唯一では
ないAluI部位までのDNA配列を示し、AluI部位は(A)で示す。図示されている制限酵
素切断部位は、B,BamHI;B1, BalI;
Bs, BstEII; K, KpnI; Nc, NcoI; P,PstI; Pv, PvuII; S,SalI; Sc, SacI; X,XhoI; Xm,Xma3を含む。右側に示すAluI部位から末端のXhoI部位までの制限酵素切断部位は示されていない。生産されたgB1タンパクのグリコシル化の可能性がある部位および疎水性アンカーおよびシグナル領域(枠で囲い塗りつぶした部分)が示されている。
BamHI部位からヌクレオチド残基の3,640番目の唯一ではないAluI部位までのDNA配列
を、SangerのM13ジデオキシヌクレオチド合成法を用いて決定した。コード領域の両DNA鎖を配列決定した。完全なDNA配列が、並べた制限酵素切断断片から集められ、このように
して該配列は診断片全部を通して読み取られる。図4〜図7は、gB1のDNA配列を示し(
第3行);gB1に対する予想アミノ酸配列は、DNA配列の下に示す(第4行)。
図4〜図7に示したgB1に対応するアミノ酸配列およびDNA配列は、国際特許公開第WO85/04587号(1985年10月24日公開)の表1に初めて示された配列とは異なる、ということ
は注意すべきである。この表1の中のDNA配列には誤りがあり、配列の607番目の位置にヌクレオチド(G)が付け加えられている。図4〜図7ではこのヌクレオチドは削除されて
おり、この図は正しいDNA配列を示す。上記表1中のアミノ酸配列は、その中に示されて
いる誤ったDNA配列から推定されたものであり;上記付け加えられたヌクレオチドにより
リーディングフレームが変わっているため、該表1に示された配列は正しくない。図4〜図7は正しいDNA配列に基づいたアミノ酸配列を示し;図4〜図7のアミノ酸配列は、gB
1のN−末端領域のアミノ酸配列決定により確認されている。この推定アミノ酸配列における変化は、疎水性および親水性の領域の推定された位置、およびgB1分子内のグリコシ
ル化部位に関する訂正も結果する。正しい配列に基づいた推定アミノ酸配列を、該配列の下に示す。
22bpのオリゴヌクレオチド(残基473-494)を用いたプライマー延長は、gB1のmRNAの5'末端が残基188に位置することを示した。CATおよびTATA転写調節シグナルは、残基55-62および125-131であると推定される。残基438-440のATGから開始し、TGA停止コドンで終結する、2712個のヌクレオチドのオープンリーディングフレームが存在する。2つの推定されるポリアデニル化シグナルが、残基3166-3173および3409-3416の3'側の非コード領域に位置している。
記述されたアミノ酸配列は膜タンパクの特徴を示す。カルボキシ末端近くのアミノ酸残726から795番目までの範囲の非常に疎水性の領域が存在し、69個のアミノ酸は膜に結合し得る。N−末端における最初の30個のアミノ酸は主に疎水性である。この疎水性アミノ酸ドメインは、荷電したアミノ酸または親水性のアミノ酸が高度に集中した領域の前にある。N−末端の親水性の配列は分泌リーダーまたはシグナル配列として働き、該配列の次に分泌リーダーの切断および除去のためのプロセッシングシグナルがある。C−末端近くの疎水性の領域は、タンパクを細胞膜に結合するためのトランスメンブレン・インテグレーション配列として作用できる。
配列のデータは親水性の外部ドメイン内のasn-X-thr/ser配列(図3も参照のこと)に
より定義されるような9個の可能性のあるN−結合型グリコシル化部位が存在することも示唆する。もしも最初の30個のアミノ酸がプロセッシングにより除去され、可能性のある各N−結合型グリコシル化部位が部位あたり平均2kdの炭水化物を付加するのに利用されるならば、成熟タンパクの分子量は約123kdとなる。
(2.2 哺乳動物細胞におけるgB1の発現)
哺乳動物細胞でgB1を発現させるために、dhfrを欠くCHO細胞にプラスミドpHS112およ
びpHS114を導入して形質転換させた。この形質転換は、材料および方法に記述したようなカルシウム沈澱法を用いて行った。プラスミドpHS112およびpHS114で形質転換したE.coliHB101株は、ATCCに寄託されており、それぞれ受託番号39650および39651で受託されてい
る。これらの株の構築は、国際特許公開第WO85/04587号(前出)に記載されている。形質転換された細胞は、チミジン、プリンおよびグリシンを欠いた選択培地を用いて選択した。細胞は、パスツールピペットで取り出すことにより単離し、複数のウェルを持つプレートで増殖させた。多数のクローンが単離され、該クローンはHSV-1ポリクローナル抗体ま
たはgBに特異的なモノクローナル抗体を用いた免疫螢光および放射性免疫沈降によりgBを生産することが示された。3個の細胞クローンpHS112-1、pHS112-9およびpHS112-23が単
離され、該クローンは細胞内にある形の完全なgBタンパクを合成した。これら細胞で生産されたgBは、グリコシル化されていると考えられる。なぜならば、1時間パルス標識し、続いて5時間チェイスした後に、チェイスを行わなかった細胞に比べてより大きな分子量の形が検出され得、約10%のgBが培地中に分泌されたからである。不完全なgBを発現する5個の細胞クローン(pHS114-5、pHS114-6、pHS114-7、pHS114-11およびpHS114-12)も分析され、やはり培地中にいくらかのgBを分泌することが示された。これらの細胞系の1つであるpHS114-7は、MTXでさらに増幅するために選択された。クローンは最初は0.01、0.05、0.10および0.3μMMTXで選択された。免疫螢光分析で検出すると高レベルのgBを合成する3個のクローンが、0.3μM MTXで選択されたものから単離された。放射性免疫沈降により、これらのクローンpHS114-0.3μM-6、23および25は、35S−メチオニンで1時間標識
している間に、増幅しなかったクローンpHS114-7よりも2〜3倍多くのgBを合成する。パルスチェイス実験は、1時間のパルスの間にこれらのクローンで合成されるgBの少なくとも8%が、5時間で細胞外に分泌されることを示す。
発現は、発現ベクターpHS137を用いても行われた。このベクターの地図を図9に示す。
プラスミドpHS137は、シグナル配列の切断後の長さが690個のアミノ酸である不完全なgB
1タンパクをコードする。
pHS137は、pHS108(2.1章で記述した)をXhoIおよびBamHIで分解し、続いて、得られた3.5kd断片を単離することにより構築した。この断片の末端はクレノーで平滑末端とし
た。この平滑末端とされたXhoI−BamHI断片をPVUIIで部分分解し、ゲルで2098bpのバンドとして移動したDNAを該部分分解物から単離した。単離されたXhoI−PVUIIバンドを、
前もってSmaIで分解されているpSV7dに連結し、得られたDNAをE.coliを形質転換するの
に用いた。得られた細菌クローンを、gB1インサートが適当な方向で挿入されているプラスミドについてスクリーニングした。
発現を得るために、pHS137をプラスミドpADdhfrとともにdhfr欠損CHO細胞に導入して形質転換させた。得られたクローンはgB1を生産し、分泌した。このようなクローンの1つであるpHS137-7-B-50は、10mlの完全培地を入れたT75培養フラスコ中で、24時間に1-3×107細胞あたり6.91+/−1.53μg/mlgB1タンパクを生産した。
(3.糖タンパクB2)
gB2遺伝子の単離、特徴付け、およびクローニングは、国際特許公開第WO85/04857号(前出)に記載されている。
(3.1 哺乳動物細胞でのgB2の発現)
HSV-2糖タンパクgBの発現は、pHS210単独で形質転換するか、またはpHS210とともに同
時形質転換することにより、COS細胞(一時的な発現)で行われる。この2番目のプラス
ミドはdhfrを含む。
プラスミドpHS210は以下のようにして構築した;全gB2遺伝子を3.8kb NruI−BamHI
断片としてpBR322にサブクローン化し、pHS208を作製した。図10を参照のこと。遺伝子の5'末端のPstI部位(NruI部位の100bp右(下流))を、M13でのインビトロでの変異によりHindIII部位に変えた。次いで、1.9kbのHindIIIからPvuIIまでの断片を、pSV1/dhfrをHindIIIおよびBglIIで分解することにより得られるpSV1に挿入した。図10を参照のこと
;pSV1/dhfrは、PCT国際特許公開第WO85/04587号に記載されている。このクローニング工程のために、pHS208をPvuIIで切断し、末端を平滑末端に修復した。次いで、この分子をHindIIIで切断し、1.9kbHindIII−(PvuII) 断片をゲル電気泳動により単離した。同様にpSV1/dhfrをBglIIで切断し、平滑末端に修復し、HindIIIで切断し、ゲル電気泳動により4.85kbHindIII−(BglII)ベクター断片を単離した。これら2つの断片(1.9kbおよび4.85kb)を、発現ベクターであるpHS210(図10)を作製するために連結した。
プラスミドpHS210は、直接にCOS細胞を形質転換するのに用いた。発現は、1次抗体ス
クリーニング用として、gB特異的モノクローナル抗体であるF3ABおよび市販のポリクローナル抗体であるHSV-2抗体(DAKO)も用いた、免疫螢光分析により検出された。gB2の培
地への分泌は、gB2−特異的ELISA分析により検出された。この目的のために、プレート
をモノクローナル抗体でコートした。細胞培養培地試料をコートしたプレートに添加し、次いで結合したgB2を、ウサギ抗HSV-2ポリクローナル抗体(DAKO)に続いて西洋ワサビ
結合ヤギ抗ウサギIgGを用いて検出した。
CHO細胞形質転換のためのプラスミドpHS210は、同時形質転換プロトコルでは、選択マ
ーカとしてdhfrを含む第2のプラスミドとともに用いられた(図10)。選択培地で続いて形質転換および増殖させることにより、約100個のdhfr+クローンが単離され、ELISA分
析(ELISAプレートはF3AB特異的モノクローナル抗体でコートされている)を用いてgB2
の合成および分泌についてスクリーニングされた。gB分泌のレベルが最も高いクローンpHS210 #3-1は、さらにgB2ポリペプチドの特徴について選択された。gB2タンパクは、〔35S〕−メチオニンで標識し、続いて放射性免疫沈降を行うことにより検出された。1時
間パルス後、79kdおよび84kdのポリペプチドに相当する2つの拡散したバンドが細胞内で検出された。これらのタンパクは、637残基の不完全な遺伝子産物について推測された大
きさよりも68,991ダルトン大きく、該タンパクは部分的にグリコシル化された前駆体に相当すると推測された。5時間チェイスした後、細胞内にgB2は検出されなかった。そして、89kdのポリペプチドが培地中に検出された。クローンpHS210#3-1の培地中に分泌された成熟型の大きさの完全なグリコシル化されたgB2は、pHS4-6により分泌された100kdのgB
1よりもいくぶん小さかった。これは、gB1プラスミドに含まれる94アミノ酸に対応するコード配列が、pHS210から除去されたためである。
(4.糖タンパクD1)
(4.1 gD1の哺乳類発現ベクターの構築)
pBR322のEcoRI部位にクローン化したパットン株のHSV-1のEcoRI断片のライブラリー
は、Dr.Richard Hyman, HersheyMedical Center, Hershey, PAにより作製された。gD1遺伝子は、このライブラリーのクローンHのEcoRI断片内の2.9kb SacI断片中に完全に含
まれている。15kbEcoRI挿入物を含むクローンHはDr.Hymanから得た。この2.9kb断片を
ゲル電気泳動で精製し、次にHindIIIとNcoIとで完全分解した。74bpの5'非翻訳配列とアミノ末端20アミノ酸をコードする60bpとからなるgD遺伝子の5'末端を134bpの断片として
ゲルから単離した。gD遺伝子の3'末端は、pHYS119(国際公開No.WO85/04587(前出)を参照されたい)を、NcoIとSalIとで分解し、873bp断片を単離することにより得られた。
これらの2断片(5'末端および3'末端)をあらかじめHindIIIおよびSalIで分解したプラスミドpUC12と連結した。pUC12ベクターは、PharmasiaおよびP-LBiochemicalsから市販されており、得られたプラスミドはpHS131と名付けた。プラスミドpHS131をHindIIIで分解
し、5'側の4塩基対の突出部をクレノーポリメラーゼで充填し、次にSalIで分解した。gD遺伝子を含む1007bp断片をゲル単離し、そしてあらかじめSmaIおよびSalIで切断した
プラスミドpSV7dに連結した。このプラスミドpSV7dについては以下に述べる。得られた発現ベクターはpHS132と名付ける。その誘導は図11に概略を示す。
このプラスミドは、完全なタンパクの合計399個のアミノ酸のうちの25個のアミノ酸の
シグナル配列を含むgD1タンパクの315個のアミノ酸をコードする。このタンパクはカル
ボキシル末端で切断されており、疎水性の膜アンカードメインと細胞質ドメインとを含む84アミノ酸を欠いており、得られたタンパクは培地に分泌される。
プラスミドpSV7dを以下のように構築した:SV40の複製起点と初期プロモーターを含む400bpのBamHI/HindIII断片を、SVgtI(Mulligan,R.ら、J. Mol. Cell Biol.(1981) 1:854-864)から切り出し、そして精製した。SV40のポリA付加部位を含む240bpのSV40Bcl
I/BamHI断片を、pSV2/dhfr(Subramaniら、J.Mol. Cell Biol.(1981) 1:854-864)から切り出し、そして精製した。これらの断片を下のリンカー:
Figure 2005330293
により融合させた。このリンカーは3つの全ての読み取り枠での停止コドンと共に5つの
制限部位を含む。得られた670bp断片(SV40の複製起点、SV40の初期プロモーター、停止
コドンを有するポリリンカー、およびSV40のポリアデニル化部位を含む)を約1.5kbが欠
失したpBR322誘導体(LuskyおよびBotchan,Cell(1984)36:391)であるpMLのBamHI部位
にクローン化し、pSV6を得た。pSV6のpML配列内のEcoRIおよびEcoRV部位を、EcoRIおよびEcoRVで分解することにより除去した後、各末端の約200bpを除去するために、Bal31ヌ
クレアーゼで処理し、最後に再連結してpSV7aを得た。Bal31切除により、EcoRV部位から
約200bp離れたSV40領域に隣接する1つのBamHI制限部位を除去した。SV40領域に隣接す
る第2のBamHI部位を除去するために、pSV7aをNruIで分解した。この酵素はpML配列を
複製起点の上流で切断する。これを平滑末端連結により再環化させ、pSV7bを得た。
pSV7cおよびpSV7dは連続したポリリンカー置換物を意味する。まず、pSV7bをStuIおよびXbaIで分解した。次に、以下のリンカーをベクターに連結させ、pSV7cを得た:
Figure 2005330293
その後、pSV7cをBglIIおよびXbaIで分解し、以下のリンカーと連結させ、pSV7dを得た:
Figure 2005330293
(4.2 gD1の哺乳類細胞での発現)
プラスミドpHS132のgD1発現は多くの実験で示されている。第1に、前述の方法を用い、かつ検出に市販の対HSV-1ウサギ血清(DAKO)を用いて感染させた後、特異的免疫螢光
が、COS7細胞で観察された。第2に、gD1を分泌する安定なCHO細胞系が確立された。発現レベルはELISAで分析され、パルス標識し、チェイスした細胞溶解物と培地との放射免
疫沈降により確認された。第3に、gD1がCHO細胞系D64のローラーボトル培養の培地から、硫安沈澱、免疫アフィニティークロマトグラフィー、および限外濾過という一連の工程により精製された。アフィニティークロマトグラフィーには、Rectorら(1982)(前出)に記載のgDモノクローナル抗体8D2を臭化シアン活性化セファロース4Bに結合させたものを
用いた。
(5.糖タンパクD2)
(5.1 gD2の哺乳類発現ベクターの構築)
HSV-2の333株のHindIII断片は、文献(Kudlerら、Virology(1983) 124:86-99)に示されているように、Dr.RichardHymanによりpBR322にクローン化された。糖タンパクgD2の
遺伝子は、Ruyechanら、J. Virol.(1970)29:677-697により、0.90〜0.945地図単位間の
ウイルスの短い特異領域に地図化されている。HindIIIL断片の占める領域は、Roizman,B.,Ann. Rev. Genet(1979)13:25-27のゲノム地図に示されている。gD2遺伝子のDNA配列
が、Watson, Gene(1983)26:307-312により報告されている。
pBR322にクローン化されたHindIIIL断片を、Dr.Richard Hymanから入手し、図12の
Aに示す制限地図を決定した。gD2の遺伝子はgD1をコードする2.9kbSacI断片をプローブとしてHindIIIL断片の制限酵素分解物をサザンブロットすることにより、2.4kb XhoI断片上に存在することが見いだされた。XhoI断片の地図とgD2遺伝子の位置とを図12
のBに示す。この2.4kbXhoI断片をXhoI部位を含むpBR322誘導体ベクターにクローン化
し、プラスミドpHS204を得た。3つの異なるgD2発現ベクター、プラスミドpHS211、pHS212、およびpHS213を次のように構築し、模式図を図13に示した。プラスミドpHS211はシグナル配列を含むgD2の初めの305個のアミノ酸をコードする。その構築には、pHS204をSmaIおよびBamHIで切断し、2つの制限断片をゲルから単離した:5'非翻訳配列の82bpを含む該遺伝子の5'末端を含む250bpSmaI断片、および該遺伝子の内部を含む3'隣接の746bpのSmaI−BamHI断片。哺乳類細胞発現ベクターpSV7d(第4.2節に記載)をEcoRIで切断し、5'の4bpの突出部分をクレノーポリメラーゼで平滑末端にし、次いでBamHIで切断した。pHS204の2断片を分解されたpSV7dに連結し、そして細菌の形質転換体からSmaI断片が正しい方向に入っているものを選択し、ベクターpHS211を得た。
gD2の352個のアミノ酸およびpHS211に存在する遺伝子を越える付加的な47個の残基を
コードするプラスミドpHS212を、pHS204のHaeIIでの分解、そしてクレノーポリメラーゼ
での末端平滑化、およびBamHIでの分解により構築した。(HaeII)(括弧は末端が充填
されていることを表わす)からBamHIまでの141bpの断片をゲル単離した。プラスミドpHS211をE.coliGM272株に導入し、プラスミドDNAを調製し、それを次にBclIで分解後、クレノーポリメラーゼで平滑化し、そしてBamHIで分解した。大きいベクター断片(約3.4kb
)をゲル単離し、141bp(HaeII)−BamHI断片に連結し、プラスミドpHS212を得た。gD2配列とプラスミドベクター配列の、該遺伝子の3'末端側での融合により、gD2遺伝子の3'末端側にナンセンスDNAの27コドンが付加される。これらのナンセンス配列を除去するため
に、プラスミドpHS213を、pHS211のSalIでの部分分解、1ヶ所切断されたプラスミドの
ゲル単離、次いでクレノーポリメラーゼでの平滑化およびBamHIでの分解、により構築した。pHS204の(HaeII)からBamHIの141bp断片を、線状化したpHS211に連結し、プラスミドpHS213を得た。
(5.2 哺乳類細胞におけるgD2の発現)
哺乳類細胞におけるgD2の発現は、pHS211、pHS212およびpHS213でCOS7細胞にトラン
スフェクトすることにより、一過性の発現についてまず分析した。gD2の発現は、免疫螢光、およびCOS7が培養された培地の捕捉ELISA分析、の両方法により、免疫螢光に対してはウサギ抗HSV-2抗体を用いて、そしてELISAにおける捕捉抗体については、gD型の共通抗体である8D2(Rectorら(1982)前出)を用いて検出した。
次に、Addhfrを有するプラスミドpHS211またはpHS213でトランスフェクトし、dhfr獲得について選択し、gD2の発現についてERISA分析でスクリーニングすることにより、永久CHO細胞系を確立した。
Ad-dhfrの記述:
dhfr遺伝子を持つプラスミドを、アデノウイルス−2由来の主要好気プロモーター(Ad-MLP、地図単位16〜17.3)を5'末端でマウスdhfr cDNAに融合させることにより構築した
。SV40小t抗原に対するイントロンとSV40初期領域ポリアデニル化部位とをコードするDNAを、SouthernおよびBerg,J. Mol. Appl. Genet.(1982) 1:327-341に記載されているpSV2-neoより得て、dhfr cDNAの3'末端に融合させた。これら3つの断片をpBR322にサブクローン化し、プラスミドAd-dhfrを得た。このプラスミドは、KauhmanおよびSharp,Molec. and Cell Biol.,(1982)
2:1304-1319に記載されているdhfrプラスミドと機能的には同様である。
(6.gB−gDワクチンを用いた治療的処置)
(6.1 一次感染後に投与した組換えHSV糖タンパクワクチンがモルモットの再発性ヘルペ
ス疾患に及ぼす効果)
雌のハートレイモルモットの膣内に、第1日目に5×105pfu HSV-2 MS株を接種した。
これら動物を、アシクロビール(5mg/ml)を飲料水に加えることにより、第1〜10日目において処置した。アシクロビールは、一次感染の症状を軽減し、従って2次的な細菌感染の発生、および生殖器の傷の発生を減少させる。一次感染中におけるアシクロビールの使用は、モルモットに対する処置を停止した後の疾患の経過には影響がないことが示されている(Bernsteinら、Virology,(1986)67:1601)。一次感染から回復した後、これら動物を、HSV-2全糖タンパク調製物(gP2)で免疫化し、組換えgB1およびgD1の混合物(HSV-1gB+gD)で免疫化するか、あるいは処置しなかった。処置グループを下に示している

グループ 処置 投与量 アジュバント 経路 N
I なし なし なし なし 11
II HSV-1 gB+gD 25μg+25μg フロインド 足蹠 11
III gP2 50μgフロインド 足蹠 11
IV 対照アジュバントのみ なし フロインド 足蹠 9
後方の足蹠にワクチンを注射することにより、第21日目と、さらに第42日目に動物を免疫化した。組換えタンパクgB1およびgD1の両方を、前述のように哺乳類細胞において生産した。結果は表1および図14に報告する。
これらの結果は、再発性ヘルペス疾患のパターンがI群およびIV群について同じであったことを示しており、それ故にこれらの群を分析用にプールした(対照,n=20)。
表1および図14に示されている結果は、組換え糖タンパクによるワクチン接種が疾患の再発頻度に対して顕著な影響を及ぼすことを示している。加えて、gB+gDの組み合わせは天然の糖タンパクの混合物より優れている。
特定の時間内に起こる病害日数により測定した疾患の再発率は、再発エピソードの頻度と持続期間との両方を考慮する評価である。図15のAは、ヘルペス疾患が認められた週あたりの平均日数として表されている再発性ヘルペス疾患の感染率を示している。免疫化したグループは、gBgDおよびgD-2でワクチン投与された動物の両方を含む。図15のAに示されているように、疾患の再発率(週あたりの病害日数)は、評価期間が最初の感染から遠ざかるにつれて、全てのグループで低下したが、低下率はワクチン投与した動物では大きかった。対照動物と免疫化した動物との間における再発性ヘルペス疾患の感染率の差を図15のBに示す。図15のBから明らかなように、糖タンパクによる免疫化が疾患の再発率に及ぼす効果は、図14より推論されるように、2回目の投与後よりもむしろ1回目の免疫化投与に続いて確立されているようであった。
Figure 2005330293
(6.2 一次感染後に投与した組換えHSV糖タンパクワクチンが宿主の免疫応答に及ぼす効
果)
感染後の糖タンパク投与が宿主の免疫応答に及ぼす効果は、感染した動物によって生産される抗HSV抗体を、感染前と、HSV糖タンパクワクチンで免疫化した後とに測定することにより、決定された。
6.1節で述べたように、これら動物にHSV-2 ms株で接種し、アシクロビールで処置し、
そしてHSV糖タンパクワクチンで処置した。これら動物から血清を第41日目と第95日目に
集めた。血清中の抗HSV抗体は、本質的にはPachl,C.ら、Jof Virology(1987)61:315-325
に記載されているように、1.6節に述べた方法である、ELISAにより測定した。捕捉抗原には、HSV-1糖タンパク混合物(gP-1)、HSV-1糖タンパクD(gD-1)、あるいはHSV-2糖タ
ンパクD(gD-2)が含まれていた。
HSV糖タンパクワクチン投与が抗HSV抗体の力価に及ぼす効果は、データが幾何平均で表されている表2に示されている。抗体は、HSV接種前に集めた血清中には検出されなかっ
た。表2に見られるように、未処置の対照動物では、抗HSV抗体の力価は第95日目よりも
第41日目の方が大きかった。それとは対照的に、糖タンパクで処置した動物は、一般的に第95日目までずっと高い力価を示していた。またHSV糖タンパクでワクチン接種すると、
未処置の対照に比べて抗HSV抗体の力価が顕著に増加した(P<.05)。さらに、gP-2混合物での処置は、抗体の力価が1.4〜7倍上昇したが、組換えHSV-1gBgDワクチンでの処置は、対照値に比べて力価が9〜31倍上昇した。このように、HSV糖タンパクを動物に投与する
こと、特に組換えHSV糖タンパクgBgDを投与することは、宿主の免疫応答を増加させ、そ
して6.1節に示したように、再発性HSV疾患の頻度および症状を軽減する。
Figure 2005330293
(6.3 gD1を含むHSV糖タンパクワクチンにより誘導された免疫応答におけるアジュバン
トの影響)
いくつかのアジュバントを、HSV糖タンパクワクチンによる免疫治療処置におけるその
影響を調べるために試験した。試験を行なったアジュバントは、完全フロインドアジュバント(CFA)、水酸化アルミニウム、およびN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1'−2'−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキ
シホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PEと呼ばれる)であった。
アジュバントの影響は、gD1を含むワクチン(これはまた、種々のアジュバントを含む)を投与した後の抗gD1抗体量を測定することにより調べられた。gD1のみを含むワクチンは、gBgDを含むワクチンのモデルとして働く。なぜなら、アジュバントの影響は、ワクチン中のHSV糖タンパクの型に特異的であるようには考えられないためである。
以下の研究において、gD1をpHS132から合成し、4.2節に記載されているように、単離
した。雌のモルモットに、35μgのgD1と種々のアジュバント組成物とから成る混合物を
3週間間隔で3回にわたり足蹠から投与し免疫化した。2回目の免疫化の1週間後、そして3回目の免疫化の1,5,9および13週間後に、動物から採血し、そして抗gD力価を、1.6節に述べたようにELISAにより決定した。
次に示す結果により、試験したアジュバントのうちで最も有望なのはMTP-PEであることが示唆される。なぜなら、MTP-PEは実験動物中で高い抗gD1力価を恒常的に生産するためである。力価についてはCFAほどは長期間保持されなかったが、これらのレベルはCFAについて見られたものと同等であった。
(6.3.1 CFAと水酸化アルミニウムとの比較)
動物を、gD1とCFAまたは水酸化アルミニウムのいずれかとを含むワクチンで免疫化し
た。抗gD力価におけるアジュバントの影響を表3に示す。表3ではデータを幾何平均で表している。表5に見られるように、最も効果的なアジュバントはCFAであった。最も長く
持続し最も高い抗体力価は、CFAワクチンで免疫化した群に見られた。他のアジュバント
の影響を、CFAで得られた力価に比較した割合(パーセント)として示す。10%水酸化ア
ルミニウム懸濁液をアジュバントとして用いることにより、最も低い抗gD1力価が得られた。
Figure 2005330293
(6.3.2 CFA,nor−MDP,およびMTP-PEの比較)
動物を、gD1と、CFA、nor−MDP、およびMTP-PEのうちのいずれかとを含むワクチンで
免疫化した。MTP-PEをリポソームにカプセル化し、そしてこの後者のアジュバントを、外因性のgD1とともに、そして、リポソームに取込まれたgD1とともに、投与した。リポソ
ームは、合成ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンおよびMTP-PE(またはMTP-PEおよびgD1)を、懸濁媒体(滅菌したCa++およびMg++塩を含まない等張ダルベッコ緩衝液、pH7.2)中に175:75:1の割合加え、ボルテックスにより撹拌することにより調製され
た。表4に見られるように、CFAを含むワクチンでの免疫化により最も高い抗gD1平均力
価を得た。nor-MDPで得られた力価は、CFAで免疫化した群で得られた平均力価の44から74%の範囲であった。MTP-PEおよび外因性gD1で得られた平均力価は、nor−MDPで得られたものよりもいくらか低く、CFAで得られたものの32から72%の範囲であった。MTP-PEおよ
びリポソームでカプセル化されたgD1で得られた力価が非常に低いのは、カプセル化された形のgD1のレベルが非常に低いためであり得る。カプセル化されたgD1の投与量は外因性のgD1の投与量の約7%のみであった。この低い投与量は、リポソーム中へのgD1の取込みが、非常に低い効率であることに起因するものであった。この非常に低い取込みは、抗原のサイズにより引き起こされ得る。リポソームの他の処方によれば、抗原をさらによい効率で取込むことができた。
Figure 2005330293
(6.3.3 MTP-PEを含む異なる処方物の比較)
動物を、高油性デリバリー系(スクアレン/アルラセル)中のMTP-PEで処方されたワクチン、および低油性デリバリー系中のMTP-PEで処方されたワクチンを含むgD1で免疫化した。油性度の低いMTP-PE処方物は、4%のスクアレンおよび0.008%のTween80を含んでい
た。これらのアジュバント処方物で得たgD1抗体力価を表5に示す。
表5に見られるように、MTP-PE処方物は、オイル−界面活性剤の割合の低い処方物中の唯一の成分として用いたときでさえも、アジュバントとして効果的であった。[それは、RIBI中のCWS成分の効果的な代替物でもあったし、さらにRIBIと比較してもその効果は時
間とともに増大した。3回目の採血時に、MTP-RIBIで得られた力価はRIBIで得られたものの2倍であった。]1回目の採血後、MTP-PE低油性処方物は、高油性デリバリーシステム(スクアレン/アルラセル)よりも高い力価を示した。
Figure 2005330293
(6.4 治療的研究:モルモットの再発性ヘルペス病予防に効果的なワクチンにおけるアジュバントの影響,投与部位,および投与時期)
gBgDワクチンは、SDS-PAGEにより判断するとおよそ70−80%の単一性にまで精製した組換えgB1およびgD1のそれぞれ25μgを含む。組換えgB1タンパクは、pHS113-9-10-21お
よびpHS137-7-B-50セルラインから調製したgB1の50:50の混合物であった。これらのセ
ルラインは、ベクターpHS113およびpHS137をそれぞれ保有するCHOセルラインである。pHS
113およびpHS137の調製については、2.2節に記載されている。gBタンパクは、Pachlら、Jof Virology,61:315-325(1987)に記載されているように精製され、このことについて
は2.2節に記載されている。アフィニティークロマトグラフィーによる精製中において、C4D2の代わりに8D2を用いたこと以外は、4.2節に記載されているように、gD1を調製した
この実施例においては、2つのアジュバント、nor-MDPおよびCFAの効果を比較している。アジュバントnor-MAPを、50%スクアレン/アルラセルおよび抗原で乳化し、50μg/投与で用いた。
本研究はまた、2つの投与経路についても比較を行なっている。つまり、足蹠内投与と、筋肉内または皮下投与との比較を行なっている。最後に、モルモットでの再発性ヘルペス病の予防における投与の種々の時間を比較している。実験計画を表6に示す。
Figure 2005330293
体重350〜400gの雌のハートレイモルモットに、第1日目に5.7/log10pfuのHSV-2 MS株を膣内に植菌した。膣内植菌24時間後に収集した膣からの清拭試料からHSVを回収するこ
とにより、動物が感染していることを確めた。一次感染の医療経過を、Stanberryら、JInfec Dis(1987)155:914で述べられているように、生殖器の皮膚の病変により、追跡し、
定量化した。一次感染より回復後、動物を表10に示してあるような処理群に無作為化した。急性の疾病が消散後、11日目から100日目までの間、疾病の再発の徴候について、動物
を毎日調べた。疾病日は、再発した疾病が観察された日として定義し、重症の再発は1個を越える数の水泡が認められた日であり、そしてエピソードは、病変のない日に続いて新しく疾病が発生することを示す。
第22日から第76日の間の動物の分析より得た結果を表7に示す。表9のデータにより、IM注射において、nor-MDPが効果的なアジュバントであることが示唆される。これは、疾
病全日数がより低いこと、重症の再発がより低率であること、および、ヘルペス性のエピソードの全数が減少することに反映される。さらに、nor-MDPを含むワクチンおよび投与
されたIMは、CFAを含みそして足蹠中に投与されたワクチンと同程度に効果的であると考
えられる。
Figure 2005330293
種々のアジュバントを含むワクチンの注射により生じる局所的な反応もまた、監視した。その結果を表8に示す。注射部位での局所的な紅斑および硬変の発生率は、nor-MDPを
含むワクチンについて同様であった。さらに、局所的な反応生成性も基づき、nor-MDPは
ワクチンにおける使用が可能であると考えられる。
Figure 2005330293
表7の結果によっても、免疫治療の開始と急性の疾病の始まりとの間の間隔が減少するにつれて、処置の相対的な効力が増強することが示される。最初の感染後、8、15または21日後にCFAを含むgBgDワクチンの接種を受けた動物のうち、膣内植菌後最も短時間のう
ちワクチンを受けた動物が、未処置のコントロールに比較すると、疾病の期間が最も短く、重い再発の割合が最も低く、そして、全エピソードが最も少なかった。感染15日後に、ワクチンを接種した動物について得た値は、8日後にワクチン接種した群について得たものよりも高く、そして21日後に接種した群は15日後に接種した群よりも高かった。この効果は図16にも示されている。図16は、HSV-2植菌8、15または21日後に、最初にワク
チン接種した動物について、膣内に植菌した後の日々における再発数のグラフを示す。
図16のデータは、再発した疾病の割合の減少(%)を計算するために用いられた(疾病の再発率の有意性についての説明は6.1節を参照されたい)、このデータは表9に示さ
れている。表9では、最も早い期間(つまり14〜50日)において8日目に最初のワクチンを接種することにより、再発した疾病の割合(パーセント)が最も大きく減少するのが観察され得る。しかし、HSVを膣内に植菌した15日後に最初のワクチン接種を行なうことに
より、51〜92日目から、最も効果的な保護が得られた。HSV-2に初めに接触させてから21
日後に最初のワクチン接種を行なったときに最も弱い保護効果がか得られた。
モルモットにおいては、病気の急性な時期が、ウイルスの感染後14〜21日の期間に起こるということを銘記すべきである。この急性な時期において、HSVにより誘導された疾病
が、動物の身体に見い出される。従って、図16のデータにより、51〜92日目における最も効果的な保護が、感染の急性な時期の期間でのワクチンの投与により得られたことが示される。
Figure 2005330293
本発明によれば、単純ヘルペスウイルスの感染後に投与することにより、単純ヘルペスウイルス1型および2型の治療処置に効果のあるワクチンが提供される。
上記発明は、その内容を明快に理解するために、例示し、実施例を挙げることによりいくぶん詳細に述べてきたが、添付の請求の範囲内において、ある変更および修飾がなされ
得ることは明らかである。
HSV-1およびHSV-2の物理的地図、プロトタイプのアイソマーの配置に対するEcoRI切断地図、およびHSV-2のHindIII制限酵素切断地図を表す。 HSV-1地図におけるgB1コード領域の制限酵素切断地図を表す。 gB1コード領域の制限酵素切断地図である。 gB1およびgB2のDNAアミノ酸配列を表す。 図4の続きである。 図5の続きである。 図6の続きである。 HSV-2の物理的地図であり、gB2コード領域が示されている。 プラスミドpHS137のいくつかの重要な特徴を示す地図である。 gB2の制限酵素切断地図である。 gD1の哺乳動物発現ベクターであるpHS132の構築に関するフローチャートである。 HSV-2の物理的地図であり、gD2コード領域が示されている。 gD2に対する哺乳動物ベクターの構築に関するフローチャートである。 一次感染した後に行われる組換えgB−gDを用いたワクチン接種が再発性ヘルペス疾患に及ぼす効果を表す。 Aは、ヘルペスウイルス糖タンパクによる免疫化が再発性ヘルペスの感染率に及ぼす効果を表す。Bは、対照のモルモットと感作したモルモットとの間における週単位の再発率の差を表す。 gBgDワクチンの投与時間がヘルペス疾患の再発に及ぼす効果を表すグラフである。

Claims (1)

  1. 単純ヘルペスウイルス(HSV)糖タンパク質(gB)をコードする、単離したヌクレオチド配列を含有する宿主細胞で産生される、組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)糖タンパク質B(gB)ポリペプチドの免疫学的に等価な断片。
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