本発明は、コンクリート及びその製造方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、結晶性トバモライトの含有率を高めたコンクリート及びその製造方法に関する。
従来のコンクリート製造技術として、非特許文献1に開示されるもののように、普通ポルトランドセメントと、消石灰と、石膏と、微粉末石英と、発泡材としてアルミニウム粉と、水とを混合・練混ぜして得られた固化体を水蒸気オートクレーブ養生する技術がある。このコンクリート製造技術によれば、オートクレーブ養生の際に結晶性トバモライトを多く合成すると共に、硬化体中に無数の気泡を均一に形成する。結晶性トバモライトは、カルシウム−シリカの水和体化合物であり、適度な強度を備えると共に加熱の影響による変化を起こさない。このため得られたコンクリートは耐熱性に優れるという特徴を有する。また、硬化体中の無数の気泡がコンクリート材の軽量化に寄与する。
また、他の従来のコンクリート製造技術として、非特許文献2に開示されるもののように、ポルトランドセメントに反応性の高い粉体(シリカフューム、石英細砂、微細石英もしくは沈降シリカ)と、鋼繊維と、水と、高性能減水剤とを混合・練混ぜした固化体に対し、蒸気養生または水蒸気オートクレーブ養生または高温養生を施すことによりコンクリートを製造する技術、または前記混合・練混ぜ後にプレス成形して高温養生することによりコンクリートを製造する技術がある。このコンクリート製造技術によれば、鋼繊維を添加することにより高強度な硬化体が得られる。
一方、本件出願人によって、ポルトランドセメントを48重量%、消石灰を8.4重量%、石膏を3.6重量%、微粉末石英を40重量%配合し、上記諸材料の合計量100重量部に対して、1.1重量部の高性能減水剤と、26重量部の水を配合して混合・練混ぜし、硬化養生した後に、水蒸気オートクレーブ養生を施すことで、耐熱特性と高強度特性との両特性を併せ持つコンクリートを製造する技術が提案されている(特許文献1参考)。このコンクリート製造技術によれば、通常のコンクリートでは強度が低下してしまう65℃以上の高温環境下においても強度低下を生じず、鋼繊維を添加せずとも鋼繊維を使用したコンクリートに匹敵する高い強度を有する硬化体が得られる。
また、コンクリート原料の流動性を高め、水量を減らすことを目的として、セメントにフライアッシュを混合することが一般に行われている。セメントに混合されたフライアッシュは、ボールベアリングのように作用して水と共に練り混ぜられたコンクリート原料の流動性を高める。フライアッシュは、セメントの10〜20質量%を置き換える程度に配合される。これは、10質量%を下回ると、上記ベアリング効果が良好に得られず、20質量%を超えるとコンクリートの強度が著しく低下してしまうためである。また、上記ベアリング効果を良好に得るために、フライアッシュの粒子は微細である方が好ましいとされる。
Isu, Ishida, Mitsuda (1995), Influence of quartz particle size on the chemical and mechanical properties of autoclaved aerated concrete (1) Tobermoraite formation, Cement and Concrete Research, Vol.25,No.2,pp.243−248、および無機マテリアル学会(1995)、セメント・セッコウ・石灰ハンドブック、pp.475−478
鵜沢、山田(2001)、RPCを用いた超高強度・高じん性コンクリートの開発動向、コンクリート工学、Vol.39、No.2、pp.53−56
特開2003−171161号
しかしながら、非特許文献1の製造技術で得られるコンクリートは、耐熱性には優れるが、圧縮強度は50kgf/cm2(約5MPa)程度と極めて低強度である。一方、非特許文献2の製造技術で得られるコンクリートは、高強度ではあるが、耐熱性に関する検討結果は示されていない。また、非特許文献2のコンクリート製造技術では、強度を高めるために補強繊維(微小鋼繊維)を添加している。この場合、コンクリート原料を型枠に流し込む際に、鋼繊維の方向が不規則にばらつくと強度低下を招く。また、コンクリート原料を型枠に流し込む際に、鋼繊維同士が衝突するような箇所では強度が低下する。このため、型枠内のコンクリート原料の流れを考慮しなければならず、打設方向等の制約をもたらす。即ち、鋼繊維を用いると、自由な型枠形状に合わせたコンクリートの製造が困難となるという問題がある。さらに、海岸近傍で高温環境下に曝される条件下では、鋼繊維を混ぜたコンクリートでは、表層部から塩害による鋼繊維の腐食が進行するという問題がある。
また、特許文献1の製造技術で得られるコンクリートは、耐熱特性と高強度特性との両特性を併せ持つが、更なる耐熱性向上の観点から、耐熱性に寄与する結晶性トバモライトの生成量を、強度低下を招くことなく高めることが望まれる。
一方、産業副産物の利用促進ならびに処分地の制約等の観点から、火力発電所などから多量に排出されるフライアッシュの有効利用の割合を積極的に増やすことが望まれており、セメントコンクリート分野におけるフライアッシュの利用の拡大が望まれる。しかし、従来のフライアッシュ混合セメントでは、フライアッシュを多量(例えばセメントの20質量%以上の置き換え)に配合すると著しい強度低下を起こしてしまう。
そこで本発明は、フライアッシュを有効利用して、耐熱性に寄与する結晶性トバモライトを多く含むコンクリート及びその製造方法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するため、本発明者等が種々研究・実験した結果、水酸化カルシウムと石膏を一定量の範囲で含む水硬性セメントに対し、フライアッシュを一般的なコンクリートでの使用量よりも多量に配合して、180℃以上の高温下で水蒸気オートクレーブ養生を施すことにより、上記多量に配合したフライアッシュのほぼ全量がシリカ(SiO2)供給源として機能して水硬性セメント中の水酸化カルシウムと反応し、適度な強度と耐熱性とを兼ね備えるカルシウム−シリカの水和体化合物である結晶性トバモライトが多量に合成されることを知見するに至った。
請求項1記載のトバモライト高含有型コンクリートは、かかる知見に基づくものであって、5〜12質量%の水酸化カルシウムと4〜8質量%の石膏を含む水硬性セメントを60±3質量%、フライアッシュを40±3質量%の範囲で、合計量が100%となるように配合し、且つ骨材および必要な量の水を配合するようにしている。
上記配合の範囲であればカルシウム−シリカの水和体化合物中のカルシウム・シリカ比が適切なものに調整され、適度な強度と耐熱性とを兼ね備える結晶性トバモライトを多量に含むコンクリートが得られる。このコンクリートの強度は圧縮強度70MPa程度と高強度コンクリート域であり、従来のフライアッシュ混合セメントで見られるフライアッシュの多量配合による著しい強度低下は起こらない。
さらに、請求項2記載のトバモライト高含有型コンクリートのように、7質量%の水酸化カルシウムと6質量%の石膏を含む水硬性セメントを60質量部、フライアッシュを40質量部配合し、且つ骨材および必要な量の水を配合するとき、高強度と耐熱性の両特性を特に良好に示すことが実験により知見された。
また、請求項3記載のトバモライト高含有型コンクリートの製造方法は、5〜12質量%の水酸化カルシウムと4〜8質量%の石膏を含む水硬性セメントを60±3質量%、フライアッシュを40±3質量%の範囲で、合計量が100%となるように配合し、且つ骨材および必要な量の水を配合して混合および練混ぜし、養生温度180℃以上で水蒸気オートクレーブ養生を施すようにしている。
従って、上記配合の範囲であればカルシウム−シリカの水和体化合物中のカルシウム・シリカ比が適切なものに調整され、高温下での水蒸気オートクレーブ養生中に、多量に配合されたフライアッシュのほぼ全量がシリカ(SiO2)供給源として機能して水硬性セメント中の水酸化カルシウムと反応し、適度な強度と耐熱性とを兼ね備えるカルシウム−シリカの水和体化合物である結晶性トバモライトが多量に合成される。製造されたトバモライト高含有型コンクリートの強度は圧縮強度70MPa程度と高強度コンクリート域であり、高温下での水蒸気オートクレーブ養生中にフライアッシュのほぼ全量が高強度および耐熱性に寄与するカルシウム−シリカの水和体化合物の生成反応に用い尽くされるので、従来のフライアッシュ混合セメントで見られるフライアッシュの多量配合による著しい強度低下は起こらない。
さらに、請求項4記載のトバモライト高含有型コンクリートの製造方法のように、7質量%の水酸化カルシウムと6質量%の石膏を含む水硬性セメントを60質量部、フライアッシュを40質量部配合し、且つ骨材および必要な量の水を配合して混合および練混ぜし、養生温度180℃以上で水蒸気オートクレーブ養生を施すことにより、高強度特性と耐熱性特性を特に良好に示すコンクリートが製造されることが実験により知見された。
本発明に係るコンクリートによれば、熱収縮量が低い結晶性トバモライトを多量に含むため、高温環境下(例えば65℃以上の環境下)に長期間曝される場合でも強度低下を生じ難く、高い耐熱性を示す。さらに、結晶性トバモライトは、溶脱に対して高い抵抗性を示すので、本発明に係るコンクリートによれば、河川水や地下水等の水に長期間曝される場合でも水に侵食され難い。しかも圧縮強度70MPa程度を有し、高強度コンクリートの域である。さらに本発明のコンクリートはフライアッシュを多量に含むため、火力発電所などから多量に排出されるフライアッシュを有効に利用することができる。加えて本発明によれば鋼繊維を使用せずとも、既往の鋼繊維を使用した高強度コンクリートに匹敵する高い強度を示すことから、コンクリートの製造コストを低減する効果が得られるとともに、打設方向等の制約を受けることは無く、自由な型枠形状に合わせて、耐熱・高強度コンクリートを工場生産することが可能となり、さらに海岸近傍で高温環境下に曝される環境下で使用される場合においても、錆汁の流出等の腐食現象を生じることはない。
高温環境下のコンクリート構造物の設計を合理化するためには、耐熱性を向上させることが必要と考えられるが、本発明は、このような要求に対する一つの解を与える技術であり、極めて有用な技術である。本発明のコンクリートは、高温環境下(例えば65℃以上の環境下)で高強度が必要とされるあらゆる分野に利用でき、例えば高放射性物質のコンクリート製貯蔵容器、より具体的には原子炉の使用済原子燃料に代表される高放射性物質の貯蔵手段として利用されるコンクリートキャスクに用いるコンクリート材として、本発明を利用できる。
以下、本発明の構成を最良の実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明のトバモライト高含有型コンクリートは、5〜12質量%の水酸化カルシウムと4〜8質量%の石膏を含む水硬性セメントを60±3質量%、フライアッシュを40±3質量%の範囲で、合計量が100%となるように配合し、且つ骨材および必要な量の水を配合してなるものである。また、7質量%の水酸化カルシウムと6質量%の石膏を含む水硬性セメントを60±2質量部、フライアッシュを40±2質量部配合し、且つ骨材および必要な量の水を配合するとき、高強度と耐熱性の両特性を特に良好に示すことが実験により知見された。
本発明に用いる水硬性セメントとしては、例えば当業者の間で広く用いられている市販のポルトランドセメントを利用し、本発明効果を発現するには不足している水酸化カルシウムと石膏とを当該ポルトランドセメントに添加し補うことが好適である。この場合、安価且つ容易に本発明に用いる水硬性セメントを得ることができる。ただし、本発明に用いる水硬性セメントは、必ずしもポルトランドセメントを用いるものに限定されず、本発明効果を発現する上記成分比の水酸化カルシウムと石膏を含むものであれば、既知または新規の水硬性セメントを用いることができる。
本実施形態では、ポルトランドセメントを用いた場合について説明する。この場合、耐熱・高強度コンクリートは、例えば表1に示すように、ポルトランドセメントを40〜55質量%、消石灰(水酸化カルシウム)を5〜12質量%、石膏を1〜5質量%、フライアッシュを37〜43質量%の範囲で、上記諸材料の合計量が100%となるように配合し、且つ骨材および必要な量の水を配合してなるようにする。
ポルトランドセメントの種類は、普通型、早強型、超早強型など多岐に亘るが、本発明の耐熱・高強度コンクリートに用いるポルトランドセメントが、そのいずれかに特に限定されるものではなく、適宜選択可能である。例えば普通ポルトランドセメントは安価であり、コスト的に有利である。ポルトランドセメントは練混ぜ時に水と接触して水和反応を生じ、これによりカルシウム−シリカの水和体化合物と水酸化カルシウムが生じる。
消石灰(水酸化カルシウム)は、ポルトランドセメント中に含まれる水酸化カルシウムをさらに多くする役割を果たし、シリカ供給源として機能するフライアッシュとの反応量を調整する役割を果たす。カルシウム−シリカの水和体化合物中のカルシウム・シリカ比を調整することにより強度と耐熱性を兼ね備える硬化体を得ることができる。消石灰は、表1に示すように5〜12質量%の範囲で添加するのが好適である。12質量%より多いと圧縮強度および曲げ強度が低下し、5質量%より少ないと耐熱性に寄与するトバモライトの生成量が低下することが、実験により知見されたからである。
石膏は、ポルトランドセメントの凝結速度を抑制する役割を果たす。また、本発明者等による実験の結果から、石膏を添加してオートクレーブ養生を行うことで、カルシウムとシリカとの比率が異なる水和体化合物の結晶であってカルシウム比率の高まった結晶が生成されることが知見された。また、当該結晶が生成されることによりコンクリートの曲げ強度が高まることが知見された。曲げ強度が高まったのは、石膏を添加した場合としない場合とで結晶内の原子配列が異なったものとなることが原因と推測される。石膏は、表1に示すように1〜5質量%の範囲で添加するのが好適である。5質量%より多いと圧縮強度および曲げ強度が低下し、1質量%より少ないと曲げ強度が低下することが、実験により知見されたからである。
フライアッシュは、水蒸気オートクレーブ養生中に、シリカ(SiO2)供給源として機能し、水硬性セメント中に含まれる水酸化カルシウムと反応して、結晶性トバモライトの生成に寄与する。フライアッシュはセメント系材料(水硬性セメント)の40±3質量%を置き換える程度に配合することが好ましく、40±2質量%を置き換える程度に配合することがより好ましい。37質量%より少ない配合量であるとコンクリート材の強度低下を招き、43質量%より多い配合量であると耐熱性に寄与する充分な量の結晶性トバモライトが生成されないためである。
本願発明者が種々のフライアッシュを用いて実験検討した結果、フライアッシュの品質と結晶性トバモライトの生成量の間に相関があることが明らかとなった。具体的には、トバモライトの生成量は、粒子が微細なフライアッシュよりも一般的な粒子径(例えばブレーン値で示す比表面積が約3000〜5000cm2/g程度)のフライアッシュを用いた場合の方が生成量が多くなり、また、鉄分含有量(より具体的にはFe2O3含有量)の多いフライアッシュを用いた場合は生成量が少なくなり、非晶質量の多い(より具体的にはCaO含有量が少なくSiO2含有量が多い)フライアッシュを用いた場合は生成量が多くなる傾向が明らかとなった。また、鉄分含有量の比較的多いフライアッシュを用いた場合は、鉄分含有量の比較的少ないフライアッシュを用いた場合と比べて強度が若干低下することが明らかとなった。一方、粒子が微細なフライアッシュを用いた場合と一般的な粒子径のフライアッシュを用いた場合とで強度は同程度であった。以上の知見から、本発明コンクリートに用いるフライアッシュは、粒子の大きさがブレーン値で示す比表面積で約3000〜5000cm2/g程度であり、Fe2O3およびCaOの含有量が少なく、より具体的にはFe2O3含有量が9質量%以下程度、CaO含有量が2質量%以下程度であり、SiO2含有量が多い、より具体的にはSiO2含有量が60質量%以上であるフライアッシュが理想的である。
骨材には、例えばケイ砂などのクオーツ(石英)を多く含むものの利用が好ましい。これは、フライアッシュの反応ほどではないが、水蒸気オートクレーブ養生中にセメント系材料と反応して結晶性トバモライトを合成することが期待され、コンクリート中での骨材の付着性を高めるためである。例えば本実施形態では、石英で構成され、品質が安定しており扱い易いケイ砂5号を骨材として用いる。ここで、比較的粒径の大きなケイ砂3号を用いた場合、ケイ砂5号を用いた場合と比較して、結晶性トバモライトの生成量が多少減少した。これは、結晶性トバモライトの合成には分子レベルでの水が必要であり、細かな砂を使用した方がペースト中で均等に水を分散させる効果が得られるためと推測される。従って、比較的微細なケイ砂などの細骨材を利用することが好ましい。ただし、トバモライトの生成は主にフライアッシュが担うので、例えば砂利などの粗骨材を用いても良い。ここで、骨材の量が過少であると(例えばセメント系材料+フライアッシュを100質量部とした場合に50質量部以下であると)、収縮量が多くなり、ひび割れを生じることが懸念され、同時に練混ぜ時にセメント系材料が不均質な分散状態となり、欠陥をもたらすことが懸念される。一方、骨材の量が過多であると(例えばセメント系材料+フライアッシュを100質量部とした場合に300質量部以上であると)、練混ぜの作業性を確保するために多量の水を投入する必要が生じ、ペースト分の絶対量の低下の影響も受け、強度の低下をもたらす。このため、骨材の配合量は、練混ぜ水量を適切な範囲に抑制する観点から、例えばセメント系材料(水硬性セメント)とフライアッシュとの合計100質量部に対して、90〜110質量部の範囲で配合することが好ましく、水硬性セメントとフライアッシュとの合計100質量部と同じ100質量部することが最も好ましい。
本発明において配合する水の量は、例えばフライアッシュを用いたモルタル試験に関する試験規格(JIS A 6201)で用いられるフロー試験において、フロー値が200〜240mm、より好ましくは220mm程度に保たれるように調整する。このように水量を調整することで、コンクリートを綺麗に型枠に打設することができ、また、水蒸気オートクレーブ養生中に硬化体にひびが入ってしまうことを防止できる。また、高性能減水剤を使用して無理に水量を減らすよりも、上記のように水量を調整する方が、結晶性トバモライトの生成量が多少多くなることが知見された。これは、結晶性トバモライトの合成には分子レベルでの水が必要であり、ペースト中に均等に水が分散されることが好ましいためと考えられる。但し、用いるフライアッシュの品質や諸材料の混合率を変化させた場合に、練混ぜ水量が過多になり、ブリーディング(材料分離)を生じる場合があるので、そのような場合には高性能減水剤等の化学混和剤を適量添加することが好ましい。高性能減水剤等の化学混和剤を添加することにより練混ぜ水量を低減しつつ、流動性を確保し、諸材料を均一に攪拌することが可能となる。
ポルトランドセメントと、消石灰と、石膏と、フライアッシュとは、これら諸材料の合計量が100%となるように、表1に示された範囲の中の任意の数値で配合すれば良いが、更に表2に示すように、ポルトランドセメントを48質量部、消石灰を8.4質量部、石膏を3.6質量部、フライアッシュを40質量部、骨材としてケイ砂5号を100質量部、水を43質量部の割合で配合したときに、上記諸材料の練混ぜが良好に行え型枠に綺麗に打設することができ尚且つ高強度と耐熱性の両特性を特に良好に示すことが実験により知見された。
本発明の耐熱・高強度コンクリートは、例えば、ポルトランドセメントと消石灰と石膏とフライアッシュとを、表1に示された範囲の中の任意の数値(最も好ましくは表2に示す数値)で合計量が100%となるように配合し、且つ上記諸材料の合計量100質量部に対して、100質量部の骨材と、43質量部の水を配合して、混合および練混ぜし、硬化養生した後に、水蒸気オートクレーブ養生を施し、更にその後に乾燥養生を施すことにより製造される。
ここで、練混ぜ時に取り込まれた空気泡(連行空気)を追い出すために振動締固めを行うことが好ましい。
また、諸材料の混合・練混ぜ後には、硬化養生を施すことが好ましい。硬化養生とは、コンクリート打設後、コンクリートの硬化するまで、低温度、日光、風雨および衝撃などから保護するとともに硬化中に十分な湿気を保ちコンクリート表面のひび割れ等を防止するための処理である。一般には養生温度としては15〜25℃程度が望ましい。例えば硬化養生として、型枠への打設後、湿空養生(湿潤養生、20℃−相対湿度95%程度)を24時間程度行うことが望ましい。ただし、湿空養生槽を用いるものに限定されず、コンクリートの表面が乾燥しないように濡れた布をかぶせるなどの対策を施すことで、室内において養生することも可能である。
硬化養生後に、型枠から固化体を外し、既知の又は新規の水蒸気オートクレーブ装置にて、例えば圧力10〜30気圧程度の飽和蒸気下で、水蒸気オートクレーブ養生(高温高圧の蒸気養生)を行う。水蒸気オートクレーブ処理を施すことにより、常温常圧では得られない結晶性トバモライト(カルシウム−シリカの水和体化合物)を生成させることができる。
水蒸気オートクレーブの養生温度は、180℃以上の高温とすることが好ましい。本願発明者が実験したところ、養生温度が160℃程度では充分な量の結晶性トバモライトが生成されず、養生温度を180℃,200℃,220℃としたところ、養生温度が高温であるほど、結晶性トバモライトの生成量が多くなることが知見されたからである。強度に関しては、養生温度が180℃〜220℃の場合では同程度でありいずれも圧縮強度70MPa程度と高強度コンクリートの域であった。結晶性トバモライトの生成量を高める観点からは、養生温度は高温であるほど好ましく、例えば水蒸気オートクレーブ装置の仕様上の上限温度(例えば180℃〜220℃程度)近傍とすることが好ましい。より高温の養生温度に耐える水蒸気オートクレーブ装置を利用する場合等には、養生温度220℃以上としても勿論良い。
水蒸気オートクレーブの養生時間は、少なくとも3時間以上とすることでトバモライトの生成は可能ではあるが、結晶性トバモライトの生成量をより充分なものとするためには、養生温度が180℃程度の場合で6時間以上、養生温度が200℃〜220℃の場合で4時間以上とすることが望ましい。結晶性トバモライトの生成量を高める観点からは、基本的に養生時間は長くした方が有利であるが、高温高圧下で作動する水蒸気オートクレーブ装置の負担を考慮して、12時間程度とすることが好ましい。尚、反応時間(養生時間)を長くすることが可能な場合には養生温度を120℃以上としても良い。
水蒸気オートクレーブ養生後に行う乾燥養生(乾燥処理)は、水蒸気オートクレーブ養生の直後の固化体を、例えば60℃−相対湿度20%程度の乾燥炉中に7日間程度放置することによって行う。乾燥養生を行うことにより、水蒸気オートクレーブ養生後の固化体に含まれる水がコンクリート強度に及ぼす影響を低減することができる。
以上のように本発明のコンクリートによれば、熱収縮量が低い結晶性トバモライトを多量に含むため、高温環境下(例えば65℃以上の環境下)に長期間曝されても強度低下を生じ難く、高い耐熱性を示す。さらに、結晶性トバモライトは、溶脱に対して高い抵抗性を示すので、本発明のコンクリートによれば、河川水や地下水等の水に長期間曝される場合でも、水に侵食され難い。しかも圧縮強度70MPa程度を有し、高強度コンクリートの域である。
さらに本発明のコンクリートはフライアッシュを多量に含むため、火力発電所などから多量に排出されるフライアッシュを有効に利用することができる。
加えて本発明によれば鋼繊維を使用せずとも、既往の鋼繊維を使用した高強度コンクリートに匹敵する高い強度を示すことから、コンクリートの製造コストを低減する効果が得られるとともに、打設方向等の制約を受けることは無く、自由な型枠形状に合わせて、耐熱・高強度コンクリートを工場生産することが可能となり、さらに海岸近傍で高温環境下に曝される環境下で使用される場合においても、錆汁の流出等の腐食現象を生じることはない。
高温環境下のコンクリート構造物の設計を合理化するためには、耐熱性を向上させることが必要と考えられるが、本発明は、このような要求に対する一つの解を与える技術であり、極めて有用な技術である。本発明のコンクリートは、高温環境下(例えば65℃以上の環境下)で高強度が必要とされるあらゆる分野に利用でき、例えば高放射性物質のコンクリート製貯蔵容器、より具体的には原子炉の使用済原子燃料に代表される高放射性物質の貯蔵手段として利用されるコンクリートキャスクに用いるコンクリート材として、本発明を利用できる。
<実施例1>
本発明のトバモライト高含有型コンクリートの効果を確認するべく、実際にトバモライト高含有型コンクリートの試験体を製造した。この試験体は、具体的には次のように製造した。即ち、表2に示される諸材料を混合および練混ぜした後に型枠に流し込んだ。また、練混ぜ時に取り込まれた空気(連行空気)を追い出すために振動締固めを行った。型枠はJIS R 5201準拠の3連モルタル供試体成形用型枠を使用した。そして、型枠への打設後、湿空養生(20℃−相対湿度95%)を24時間行った。硬化後、型枠から固化体を外し、水蒸気オートクレーブ装置にて飽和蒸気下で水蒸気オートクレーブ養生を12時間行った。さらに、水蒸気オートクレーブ養生後に60℃−相対湿度20%程度の乾燥炉中で7日間の乾燥養生を行った。これによりトバモライト高含有型コンクリートの試験体を得た。
ここで、本実施例では、ポルトランドセメントとして普通型を使用し、石膏は焼き石膏を用いた。水量は、フライアッシュを用いたモルタル試験に関する試験規格(JIS A 6201)で用いられるフロー試験において、フロー値が220mm程度となるように調整した。また、フライアッシュは組成や粒子の大きさが異なる4種類を用い、各フライアッシュを用いた場合の試験体を製造した。また、水蒸気オートクレーブの養生温度は160℃,180℃,200℃,220℃の4種類に設定し、各温度条件での試験体を製造した。尚、水蒸気オートクレーブの養生時間は、いずれの温度条件の場合も12時間とした。製造された各試験体について、JIS R 5201に準拠した圧縮強度試験を実施し、また、結晶性トバモライトの生成量を調べるために粉末X線回折分析を実施した。
本実施例で用いた4種類のフライアッシュの化学組成および物理特性を表3に示す。尚、表3中の強熱減量は950℃に熱した場合に生じる質量減少率を示す。また、比表面積はブレーン値を示す。表3中の化学組成に着目すると、フライアッシュ「B」はSiO
2が少なくFe
2O
3が多く、フライアッシュ「M」はCaOが多く、フライアッシュ「W」,「F」は一般的な組成と言える。
各フライアッシュ「B」,「M」,「W」,「F」の粒度分布を図1に示す。フライアッシュ「B」,「M」,「W」はほぼ同様の粒度分布となっているが、フライアッシュ「F」は他よりも細かい粒子で構成されていることが分かる。
また、各フライアッシュ「B」,「M」,「W」,「F」について、コンクリート中でのフライアッシュの反応を主にもたらす非晶質相(ガラス相)の量を相対的に評価するために、粉末X線回折分析を行った。当該粉末X線回折分析時には、内部標準試料として酸化亜鉛(ZnO)をフライアッシュに混合した。混合比率はフライアッシュ:ZnO=9:1とした。粉末X線回折分析結果の代表例として、フライアッシュ「W」の分析結果を図2に示し、フライアッシュ「F」の分析結果を図3に示す。図2及び図3における右側の矢印Bは、内部標準試料として添加した酸化亜鉛の回折ピークを示す。図2及び図3における左側の山なりの頂点にあたる矢印Aで示すピークは、非晶質相(ガラス相)の回折ピークを示す。矢印Bの長さ(即ち矢印Bで示す回折X線の強度の大きさ)に対する矢印Aの長さ(即ち矢印Aで示す回折X線の強度の大きさ)の比「A/B」は、フライアッシュの非晶質量を示す。図2と図3とでは、当該ピーク強度比「A/B」がほぼ同等であることから、フライアッシュ「W」の非晶質量とフライアッシュ「F」の非晶質量とはほぼ同等であると判断できる。一方、図2に示すフライアッシュ「W」の矢印Aで示すピークは、図3に示すフライアッシュ「F」の矢印Aで示すピークに比べて左側に1°分ずれている。これは、フライアッシュ「W」の方が、フライアッシュ「F」に比べて、非晶質相(ガラス相)の組成としてCaO含有量が少ないことを示している。尚、各フライアッシュ「B」,「M」,「W」,「F」の非晶質量を示すピーク強度比「A/B」値を表4に示す。
フライアッシュ「W」を用い且つ水蒸気オートクレーブの養生温度を200℃として、製造された試験体について粉末X線回折分析を実施した結果を図4に示し、フライアッシュ「F」を用い且つ水蒸気オートクレーブの養生温度を200℃として、製造された試験体について粉末X線回折分析を実施した結果を図5に示す。粉末X線回折分析におけるX線の入射角度(粉末X線回折分析図の横軸)と格子間隔とは計算により変換可能であるから、結晶性トバモライトの代表的な格子間隔1.1nm(11Å)に基づいて、結晶性トバモライトを示すピークを粉末X線回折分析図から導き出すことが可能である。図4および図5中の矢印Cが結晶性トバモライトを示す回折ピークである。一方、図4および図5中の矢印Dは、骨材に含まれる石英を示す回折ピークである。本実施例では骨材の成分および配合量は各試験体で統一しているため、矢印Dの長さ(即ち矢印Dで示す回折X線の強度の大きさ)に対する矢印Cの長さ(即ち矢印Cで示す回折X線の強度の大きさ)の比「C/D」は、各試験体における結晶性トバモライトの生成量を示す。当該ピーク強度比「C/D」が大きいほど、結晶性トバモライトの生成量が多いことを示す。当該ピーク強度比「C/D」は、フライアッシュ「W」を用いた例を示す図4の場合では0.75程度であり、フライアッシュ「F」を用いた例を示す図5の場合では0.37程度であり、フライアッシュ「W」を用いた場合の方が結晶性トバモライトの生成量が多いことが明らかとなった。
上述したように、フライアッシュ「W」は、フライアッシュ「F」と化学組成の面では大差ないが、ガラス相の質が異なるために、具体的には非晶質相(ガラス相)の組成としてCaO含有量が少ないために、結晶性トバモライトの生成する反応量が多かったと考えられる。従って、トバモライト高含有型コンクリートの製造には、CaO含有量が少ないガラス相を多く含むフライアッシュを用いることが適切であることが明らかとなった。
フライアッシュ「W」を用い且つ水蒸気オートクレーブの養生温度を160℃として製造された試験体について粉末X線回折分析を実施した結果を図6に示し、フライアッシュ「W」を用い且つ水蒸気オートクレーブの養生温度を180℃として製造された試験体について粉末X線回折分析を実施した結果を図7に示し、フライアッシュ「W」を用い且つ水蒸気オートクレーブの養生温度を220℃として製造された試験体について粉末X線回折分析を実施した結果を図8に示す。さらに、養生温度の違いによる結晶性トバモライト生成量を比較するため、図4および図6〜図8の各図から求められる結晶性トバモライトの生成量を示すピーク強度比「C/D」を表5に示す。表5に示すように、養生温度の上昇と共に結晶性トバモライトの生成量が増加する傾向が認められた。
また、上記表5には該当試験体における圧縮強度試験の結果も併せて示している。表5に示すように、圧縮強度は、養生温度を変化させても大きな差を生じないことが明らかとなった。いずれの養生温度においても、圧縮強度70MPa程度を示していることから、高強度コンクリートの域である。
また、フライアッシュ「B」についての結晶性トバモライトの生成量を示すピーク強度比「C/D」値および圧縮強度と養生温度との関係を表6に示し、フライアッシュ「M」についての結晶性トバモライトの生成量を示すピーク強度比「C/D」値および圧縮強度と養生温度との関係を表7に示し、フライアッシュ「F」についての結晶性トバモライトの生成量を示すピーク強度比「C/D」値および圧縮強度と養生温度との関係を表8に示す。
表5〜表8に示すように、トバモライトの生成量は、粒子が微細なフライアッシュ「F」よりも一般的な粒子径のフライアッシュ「W」を用いた場合の方が生成量が多くなり、また、鉄分含有量(より具体的にはFe2O3含有量)の多いフライアッシュ「B」を用いた場合は生成量が少なくなり、非晶質量の多い(より具体的にはCaO含有量が少なくSiO2含有量が多い)フライアッシュ「W」を用いた場合は生成量が多くなる傾向が明らかとなった。また、鉄分含有量の比較的多いフライアッシュ「B」を用いた場合は、鉄分含有量の比較的少ないフライアッシュ「W」「M」「F」を用いた場合と比べて強度が若干低下することが明らかとなった。一方、粒子が微細なフライアッシュ「F」を用いた場合と一般的な粒子径のフライアッシュ「W」を用いた場合とで強度は同程度であった。以上の知見から、本発明コンクリートに用いるフライアッシュは、粒子の大きさがブレーン値で示す比表面積で約3000〜5000cm2/g程度であり、Fe2O3およびCaOの含有量が少なく、より具体的にはFe2O3含有量が9質量%以下程度、CaO含有量が2質量%以下程度であり、SiO2含有量が多い、より具体的にはSiO2含有量が60質量%以上であるフライアッシュが理想的である。
<実施例2>
セメント系材料とフライアッシュの質量比を変化させた場合の圧縮強度、曲げ強度、トバモライト量を測定した。セメント系材料は、ポルトランドセメント:消石灰:石膏の質量比が48:8.4:3.6で一定であるものとした。また、フライアッシュには上記「W」を用いた。練混ぜ水量は、セメント系材料とフライアッシュの合計量100質量部に対して、43質量部とした。水蒸気オートクレーブの養生温度は220℃とした。他のコンクリート製造条件は実施例1と同様とした。測定結果を表9に示す。尚、表9中のトバモライト量比は、内部標準法(ZnO添加)による試料間の相対比較のための半定量値を示す。
表9に示されるように、セメント系材料とフライアッシュの質量比と、圧縮強度および曲げ強度との間には、相関があり、セメント系材料:フライアッシュの比率を53.6:46.4とした場合に、両強度値は最大となり、各々82.5N/mm2、12.9N/mm2となった。一方、トバモライト生成量は、セメント系材料:フライアッシュの比率を62.5:37.5とした場合に最大となった。トバモライト生成量増大によるコンクリートの耐久性向上を図る観点から、フライアッシュはセメント系材料(水硬性セメント)の40±3質量%を置き換える程度に配合することが好ましく、40±2質量%を置き換える程度に配合することがより好ましいと考えられる。
<実施例3>
セメント系材料とフライアッシュの質量比を57.7:42.3に固定して、骨材を微増させた場合の圧縮強度、曲げ強度、トバモライト量を測定した。他のコンクリート製造条件は実施例2と同様とした。測定結果を表10に示す。
表10に示されるように、強度については大差ない。また、トバモライト生成量に関しては「ペースト分(セメント系材料+フライアッシュ)」に対する骨材量の増加によるペースト分の希釈効果が、トバモライト生成量を見かけ上、減少させているが、正味の影響は少ないと考えられる。しかし、骨材量の増加に伴い、練混ぜ水量が増加し、練混ぜ水量の増加による粗大空隙量の増加が強度の低下をもたらすと考えられる。本実施例では、ペースト分(セメント系材料+フライアッシュ)と細骨材の比率を1:1程度とすることで練混ぜ水量を適切な範囲に抑制することができたと考えられ、ペースト分と細骨材の比率の許容範囲は1:0.9〜1:1.1程度と考えられる。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば本発明に用いる水硬性セメントは、上述の実施形態のようにポルトランドセメントを用いるものに限定されない。例えば、アルミナセメントを利用し、本発明効果を発現するには不足している水酸化カルシウムと石膏とを当該アルミナセメントに添加し補うようにして、本発明に用いる水硬性セメントを得るようにしても良い。また、本発明に用いる石膏は、上述の実施例で用いた焼き石膏に限定されるものではなく、例えば二水石膏の使用も可能である。
また、諸材料の混合・練混ぜ後には、硬化養生を施すことが好ましいが、場合によっては、硬化養生を省略し、型枠に打設した直後に型枠と一緒にオートクレーブ養生を施し、オートクレーブ養生の際にコンクリートを硬化させるようにしても良い。また、上述の実施形態では、水蒸気オートクレーブ養生の後に、乾燥養生を施したが、場合によっては乾燥養生を省略しても良い。この場合、コンクリート製造工程を短縮することができる。
また、既述したように水蒸気オートクレーブの養生温度が高温であるほど結晶性トバモライトの生成量が高まることが知見された。この知見に基づき、特許文献1に示された配合の耐熱・高強度コンクリート、具体的には5〜12重量%(好ましくは7質量%)の水酸化カルシウムと4〜8質量%(好ましくは6質量%)の石膏を含む水硬性セメントを40〜60質量%(好ましくは60質量%)、微粉末石英を40〜60質量%(好ましくは40質量%)の範囲で、合計量が100%となるように配合し(例えばポルトランドセメントを48質量%、消石灰を8.4質量%、石膏を3.6質量%、微粉末石英を40質量%配合し)、且つ必要な量の水を配合して混合・練混ぜし、水蒸気オートクレーブ養生を施して製造される耐熱・高強度コンクリートにおいて、水蒸気オートクレーブの養生温度を180℃超の高温(例えば180℃〜220℃の高温、より好ましくは200℃〜220℃の高温)としても良い。
また、既述したように高性能減水剤を使用して無理に水量を減らすよりも、フロー値により水量を調整する方が、結晶性トバモライトの生成量が多くなることが知見された。この知見に基づき、特許文献1に示された配合の耐熱・高強度コンクリート、具体的には5〜12質量%(好ましくは7質量%)の水酸化カルシウムと4〜8質量%(好ましくは6質量%)の石膏を含む水硬性セメントを40〜60質量%(好ましくは60質量%)、微粉末石英を40〜60質量%(好ましくは40質量%)の範囲で、合計量が100%となるように配合し(例えばポルトランドセメントを48質量%、消石灰を8.4質量%、石膏を3.6質量%、微粉末石英を40質量%配合し)、且つ必要な量の水を配合して混合・練混ぜし、水蒸気オートクレーブ養生を施して製造される耐熱・高強度コンクリートにおいて、配合する水量を、JIS A 6201で用いられるフロー試験において、フロー値が200〜240mm、より好ましくは220mm程度に保たれるものに決定しても良い。
フライアッシュの粒度分布を示すグラフである。
フライアッシュ「W」の粉末X線回折分析結果を示す図である。
フライアッシュ「F」の粉末X線回折分析結果を示す図である。
フライアッシュ「W」を用い且つ水蒸気オートクレーブの養生温度を200℃として製造された試験体について粉末X線回折分析を実施した結果を示す図である。
フライアッシュ「F」を用い且つ水蒸気オートクレーブの養生温度を200℃として製造された試験体について粉末X線回折分析を実施した結果を示す図である。
フライアッシュ「W」を用い且つ水蒸気オートクレーブの養生温度を160℃として製造された試験体について粉末X線回折分析を実施した結果を示す図である。
フライアッシュ「W」を用い且つ水蒸気オートクレーブの養生温度を180℃として製造された試験体について粉末X線回折分析を実施した結果を示す図である。
フライアッシュ「W」を用い且つ水蒸気オートクレーブの養生温度を220℃として製造された試験体について粉末X線回折分析を実施した結果を示す図である。