JP2005329246A - フェンタニール及びスフェンタニールの経皮電気的移送式投与デバイス - Google Patents

フェンタニール及びスフェンタニールの経皮電気的移送式投与デバイス Download PDF

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Abstract

【課題】 鎮痛薬、即ち、フェンタニールとスフェンタニールの改良された電気的移送式薬物投与系を提供する。
【解決手段】 フェンタニール/スフェンタニールを、電気的移送式デバイス10に用いるために、好ましくはヒドロゲル組成物中の、水溶性塩(例えば、フェンタニール塩酸塩)として提供する。本発明によると、大手術に付随する中程度〜重度な疼痛に苦しむヒト患者(例えば、成人)に鎮痛を誘導するために充分である、フェンタニール/スフェンタニールの経皮電気的移送式投与量が供給される。
【選択図】図1

Description

本発明は一般に改良された薬物投与に関する。詳しくは、本発明は鎮痛薬、特にフェンタニール及びフェンタニール類似体の改良された電気的移送式投与のためのデバイス、組成物及び方法に関する。電気的移送式デバイスに用いるためのヒドロゲル製剤の形状の組成物を提供する。
表皮を通しての拡散による薬物の経皮投与は、例えば皮下注射及び経口投与のような、より伝統的な投与方法を凌駕する改良を提供する。経皮薬物投与は、経口薬物投与によって経験される肝臓一次通過効果を回避する。経皮薬物投与はまた、皮下注射に付随する患者の不快感をも除去する。さらに、経皮投与はある一定種類の経皮投与デバイスの長時間制御投与プロフィルのために、ある一定期間にわたって、患者の血流中の薬物の一層均一な濃度を与えることができる。“経皮”投与なる用語は大ざっぱに、動物の例えば皮膚、粘膜又は爪のような体表を通しての作用剤の投与を包含する。
皮膚は身体中への物質の経皮浸透に対する第1バリヤーとして機能し、例えば薬物のような治療剤の経皮投与に対する身体の主要な抵抗を表す。現在まで、受動的拡散による薬物投与のために皮膚の物理的抵抗を軽減するか又は皮膚の透過性を強化することに努力が集中されていた。経皮薬物流量(flux)の速度を高めるための種々な方法が、最も顕著には、化学的な流量強化剤を用いて試みられている。
経皮薬物投与速度を高めるための他のアプローチは、例えば電気エネルギー及び超音波エネルギーのような、他のエネルギー源の使用を包含する。電気的に補助された経皮投与も電気的移送と呼ばれる。本明細書で用いるかぎり、“電気的移送”なる用語は一般的に、例えば皮膚、粘膜又は爪のような、膜を通しての作用剤(例えば、薬物)の投与を意味する。投与は電位の印加によって誘導又は助成される。例えば、皮膚を通しての電気的移送式投与によって人体の全身循環系中に、有益な治療剤を投与することができる。広く用いられている電気的移送プロセス、エレクトロマイグレーション(イオン導入法とも呼ばれる)は荷電したイオンの電気的に誘導された移送を包含する。他の種類の電気的移送、電気的浸透は電界の影響下での、投与されるべき作用剤を含有する液体の流動を意味する。さらに他の種類の電気的移送プロセス、エレクトロポレーションは生物学的膜に一時的に存在する膜の、電界の印加による形成を意味する。作用剤はこれらの孔を通して受動的に(即ち、電気的補助なしに)又は能動的に(即ち、電位の影響下で)投与されることができる。しかし、如何なる特定の電気的移送プロセスにおいても、少なくともある程度の“受動的”拡散を包含する、これらのプロセスの1つより多くがある程度、同時に生ずる可能性がある。したがって、本明細書で用いるかぎり、“電気的移送”なる用語は、作用剤が実際に移送される特定の機構(単数又は複数)が如何なるものであっても、荷電された作用剤、荷電されない作用剤又はこれらの混合物でありうる、少なくとも1種の作用剤の電気的に誘導又は強化された移送を包含するように、最も広く可能な解釈を与えるべきである。
電気的移送式デバイスは、皮膚、爪、粘膜又は身体の他の膜表面の一部と電気的に接触する、少なくとも2個の電極を用いる。一般に“ドナー”電極と呼ばれる、1つの電極は、それから作用剤が身体中に投与される電極である。典型的に“カウンター”電極と呼ばれる、他方の電極は、身体を通して電気回路を閉じるために役立つ。例えば、投与されるべき作用剤が正に荷電している、即ち、カチオンである場合には、アノードがドナー電極であり、カソードがカウンター電極である。或いは、投与されるべき作用剤が負に荷電している、即ち、アニオンである場合には、カソードがドナー電極になり、アノードがカウンター電極になる。さらに、アニオン作用剤イオンとカチオン作用剤イオンの両方、又は荷電されていない溶解した作用剤を投与すべきである場合には、アノードとカソードの両方がドナー電極と見なされることができる。
さらに、電気的移送式投与系は一般に、身体に投与されるべき作用剤の少なくとも1個の溜め又はソースを必要とする。このようなドナー溜めの例はポウチ若しくはキャビティ、多孔質スポンジ若しくはパッド、及び親水性ポリマー又はゲルマトリックスを包含する。このようなドナー溜めは、アノード又はカソードと体表とに電気的に接続し、アノード又はカソードと体表との間に配置されて、1種以上の作用剤又は薬物の固定した又は再生可能なソースを形成する。電気的移送式デバイスは例えば1個以上のバッテリーのような電源をも有する。典型的に、任意の時点において、電源の1極はドナー電極に電気的に接続し、反対極はカウンター電極に電気的に接続する。電気的移送式薬物投与がデバイスによって供給される電流にほぼ比例することが判明しているので、多くの電気的移送式デバイスは典型的に、電極によって供給される電圧及び/又は電流を制御することによって、薬物投与速度を調節する電気的制御装置を有する。これらの制御回路は電源によって供給される電流及び/又は電圧の振幅、極性、タイミング、波形等を制御するために種々な電気的要素を用いる。例えば、McNichols等の米国特許第5,047,007号を参照のこと。
現在まで、商業的な経皮電気的移送式薬物投与デバイス(例えば、Iomed社(Salt Lake City,UT)によって販売されるPhoresor;Empi社(St.Paul,MN)によって販売されるDupel Iontophoresis;Wescor社(Logan,UT)によって販売されるWebster Sweat Inducer,モデル3600)は一般に卓上型電源ユニットと1対の皮膚接触電極とを用いている。ドナー電極は薬物溶液を含有し、カウンター電極は生体適合性電解質塩の溶液を含有する。電源ユニットは電極によって供給される電流量を調節するための電気的制御装置を有する。“サテライト“電極は長い(例えば1〜2m)導電性ワイヤ又はケーブルによって電源ユニットに接続する。ワイヤ接続は切断を受け、患者の運動と移動を限定する。電極と制御装置との間のワイヤは患者にとって迷惑又は不快であると考えられる。“サテライオ”電極アセンブリを用いる卓上型電源ユニットの他の例は、Jacobsen等,米国特許第4,141,359号(図3と4参照);LaPrade,米国特許第5,006,108号(図9参照);及びMaurer等,米国特許第5,254,081号に開示されている。
より最近では、小型自給式電気的移送式投与デバイスが皮膚上に、時には衣類の下に目立たないように、長期間装着されるように提案されている。このような小型自給式電気的移送式投与デバイスは例えばTapper,米国特許第5,224,927号;Sibalis等,米国特許第5,224,928号;及びHaynes等,米国特許第5,246,418号に開示されている。
最近、多重薬物含有ユニットと共に用いるために適している再使用可能な制御装置を有する電気的移送式デバイスを用いることが示唆されている。薬物含有ユニットは薬物が消耗されたときに制御装置から簡単に解離され、その後に、新鮮な薬物含有ユニットが制御装置に接続される。このようにして、デバイスの比較的高価なハードウェア(例えば、バッテリー、LED、回路ハードウェア等)が再生可能な制御装置内に含有されることができ、比較的安価なドナー溜めとカウンター溜めマトリックスは一回使用式/使い捨て式薬物含有ユニット中に含有されることができ、それによって、電気的移送式薬物投与の総合費用を低下させることができる。薬物含有ユニットに除去可能に結合した、再使用可能な制御装置から成る電気的移送式デバイスの例は、Sage,Jr等の米国特許第5,320,597号;Sibalis,米国特許第5,358,483号;Sibalis,米国特許第5,135,479号(図12);及びDevane等,英国特許第2,239,803号に開示されている。
電気的移送式デバイスのさらなる開発では、一部は、水が例えばアルコール及びグリコールのような他の液体溶媒に比べてその優れた生体適合性によって電気的移送式薬物投与に用いるために好ましい液体溶媒であるという事実のために、ヒドロゲルが薬物溜めマトリックス及び電解質溜めマトリックスとして特に好まれている。ヒドロゲルは高い平衡含水率(equilibrium water content)を有し、水を迅速に吸収することができる。さらに、ヒドロゲルは皮膚及び粘膜と良好な生体適合性を有する傾向がある。
経皮投与では、中等度から重度の疼痛を治療するための鎮痛薬の投与が特に重要である。過剰投与の可能な危険性と、不充分な投与量の不快とを避けるために、鎮痛薬の経皮投与にとって、薬物投与の速度及び持続期間の制御が特に重要である。
経皮投与ルートに用途を見いだしている鎮痛薬の1種類は全身麻酔薬、4−アニリンピペリジンのグループである。例えばフェンタニールとある一定のその誘導体(例えば、スフェンタニール)のような、全身麻酔薬は経皮投与に特に良好に適する。これらの全身麻酔薬はそれらの迅速な鎮痛開始、高い効力及び短い作用持続期間(duration of action)を特徴とする。これらはモルヒネよりもそれぞれ80倍及び800倍高い効力であると推定される。これらの薬物は弱塩基、即ち、その主要な画分が酸性媒質中でカチオンであるアミンである。
ThymanとPreat(Anesth.Analg.77(1993)61〜66頁)は、血漿濃度を測定するin vivo試験で、pH5のクエン酸塩緩衝液中での電気的移送式投与に関してフェンタニール及びスフェンタニールの単純な拡散を比較した。達成可能な血漿レベルは、皮膚を横切ることができる薬物の最大流量と、例えばクリアランス及び分配量のような、薬物の動態的性質とに依存した。電気的移送式投与は受動的経皮パッチに比べて有意に短縮した遅延時間(即ち、ピーク血漿レベルに達するために必要な時間)を有する(1.5時間対14時間)と報告されている。これらの研究者の結論は、これらの麻酔薬の電気的移送が伝統的なパッチよりも、疼痛をより迅速に抑制することができ、薬物のパルス化放出(電流の調節によって)は伝統的なパッチの絶えず続く(constant)投与に匹敵した。例えば、Thysman等,Int.J.Pharma.,101(1994)105〜113頁;V.Preat等,Int.J.Pharma.,96(1993)189〜196頁(スフェンタニール);Gourlav等,Pain,37(1989)193〜202頁(フェンタニール);Sebel等,Eur.J.Clin.Pharmacol.32(1987)529〜531頁(フェンタニールとスフェンタニール)をも参照のこと。鎮痛を誘導する、例えばフェンタニールのような、麻酔性鎮痛薬の受動的(即ち、拡散による)経皮投与及び電気的補助経皮投与は両方とも特許文献に述べられている。例えば、Gale等,米国特許第4,588,580号及びTheeuwes等,米国特許第5,232,438号を参照のこと。
最近の数年間に、手術後の疼痛の治療は電気的移送式投与以外の投与系を求めている。患者が受容する鎮痛薬量を患者が所定の範囲内で調節することを可能にするデバイス及び系が特に注目されている。これらの種類のデバイスによる経験は一般に、鎮痛薬投与の患者による制御が、投与量が医師(physician)によって処方された場合に投与されたと考えられるよりも少ない麻酔薬の投与を生じているということであった。自己投与(self−administered)又は患者によって制御される自己投与(patient controlled self−administration)は、患者制御鎮痛法(patient−controlled analgesia)(PCA)として知られている(本明細書では呼ぶことにする)。
公知のPCAデバイスは典型的に、大容量電源、例えば嵩ばる交流又は大容量バッテリーパックのような、大容量電源を必要とする電気機械的ポンプである。商業的に入手可能なPCAデバイスは、それらの嵩と複雑さとのために、一般的に患者がベッド、又は他の何らかの本質的に固定された位置に限定されることを必要とする。公知のPCAデバイスは資格のある医療技術者によって予定の静脈、動脈又は他の器官に挿入されなければならない静脈内ライン又はカテーテルを用いて患者に薬物を投与する。この方法は鎮痛薬を投与するために皮膚バリヤーを破ることを必要とする(Zdeb,米国特許第5,232,448号を参照)。したがって、商業的に入手可能なPCAデバイスを用いて実施されるときに、PCAはPCAデバイスの操作を開始し、PCAデバイスの操作をその付随する感染の危険性と共に管理するために高度に熟練した医療技術者の存在を必要とする。さらに商業的に入手可能なPCAデバイスはそれら自体がそれらの経皮的(即ち、静脈内又は皮下)アクセスのために使用に若干の苦痛を伴う。
当該技術分野は、充分な鎮痛を得るために患者制御式に投与される薬物量として、慣用的PCAに競合することができる経皮電気的移送式デバイスとしては殆ど何も製造していない。さらに、例えば鎮痛薬の静脈内投与のための、長期間安定性を有し、患者制御式電気機械的ポンプに匹敵する性能特徴を有する、鎮痛薬電気的移送、特にフェンタニール経皮電気的移送式投与のためのヒドロゲル製剤を提供するための進歩は殆どなされていない。小型自給式患者制御式デバイスの便利さを利用するために適したデバイスとして、鎮痛性製剤を提供する必要が存在する。
米国特許第5,047,007号 米国特許第4,141,359号 米国特許第5,006,108号 米国特許第5,254,081号 米国特許第5,224,927号 米国特許第5,224,928号 米国特許第5,246,418号 米国特許第5,320,597号 米国特許第5,358,483号 米国特許第5,135,479号 英国特許第2,239,803号 米国特許第4,588,580号 米国特許第5,232,438号 米国特許第5,232,448号 Thysman等,Int.J.Pharma.,101(1994)105〜113頁 V.Preat等,Int.J.Pharma.,96(1993)189〜196頁(スフェンタニール) Gourlav等,Pain,37(1989)193〜202頁(フェンタニール) Sebel等,Eur.J.Clin.Pharmacol.32(1987)529〜531頁
発明の説明
本発明は、フェンタニールとフェンタニール類似体、特にスフェンタニール(sufentanil)の改良された経皮電気的移送式投与デバイスを提供する。本発明のデバイスは、このようなものとして、鎮痛性フェンタニール又はスフェンタニールの電気的移送式投与の高度な効率を提供し、同時に、疼痛治療における高度な度合いの患者安全性と快適さとを提供する。本発明の上記その他の利点は電気的移送によって体表(例えば、無傷の皮膚)を通してフェンタニール又はスフェンタニールを投与するためのデバイスであって、フェンタニール/スフェンタニール塩の少なくとも部分的水溶液を含有するアノードドナー溜めを有するデバイスによって提供される。
本発明は、大きな手術処置に付随する中程度〜重度な疼痛を治療するための経皮電気的移送によるフェンタニール又はスフェンタニールの投与デバイスに関する。約20分間までの投与期間にわたって投与される、約20μg〜約60μgの経皮電気的移送投与量は、約35kgを越える体重を有するヒト患者における中程度〜重度な手術後疼痛の治療に治療的に有効である。フェンタニール投与量は好ましくは約5〜15分間の投与期間にわたって約35μg〜約45μgであり、最も好ましくは約10分間の投与期間にわたって約40μgである。フェンタニールは人体にひと度投与されたならば、比較的短い分配半減期(distribution half life)(即ち、約3時間)を有するので、鎮痛を誘導するためのデバイスは好ましくは、このように誘導された鎮痛を維持するための手段を包含する。したがって、電気的移送によってフェンタニールを経皮投与するためのデバイスは好ましくは、少なくとも1投与量の付加した(at least 1 additional)、より好ましくは約10〜100投与量付加した、最も好ましくは約20〜80投与量付加した、同じ投与量(単数又は複数)のフェンタニールを24時間に及ぶ連続した同じ投与間隔(単数又は複数)にわたって投与するための手段を包含する。経皮電気的移送式フェンタニール投与デバイスから同じ投与量の複数投与量を投与する可能性は、異なる患者がかれらの疼痛を治療するために異なる量のフェンタニールを必要とする広範囲な患者集団の疼痛を治療する可能性をも提供する。少量のフェンタニールの電気的移送式投与量の複数倍を投与する可能性を与えることによって、患者はかれらの疼痛を治療するために必要である量のみを投与し、それ以上を投与しないことをかれら自身で決定することができる。
本発明の他の利点と、特定の適応、構成の変化及び物理的特性のより詳しい理解とは、下記図面、詳細な説明、実施例及び添付図面の検討から知ることができる。
発明を実施するための形態
本発明は、既知のIVアクセスド患者制御式鎮痛薬ポンプ(IV accessed patient controlled analgesic pump)によって得られる効果に匹敵する全身鎮痛効果を得るための、フェンタニール又はスフェンタニール塩の電気的移送式投与デバイスと同デバイスの使用方法とに関する。本発明は、鎮痛効果を得るために、体表(例えば、皮膚)を通してフェンタニール又はスフェンタニールを投与するための電気的移送式投与デバイスを提供する。フェンタニール又はスフェンタニール塩は電気的移送式投与デバイスのドナー溜め中に好ましくは水性塩溶液として供給される。
経皮電気的移送によって投与されるフェンタニールの投与量は、体重35kg以上を有するヒト患者では約20分間までの投与時間にわたって約20μg〜約60μgである。この投与期間にわたって約35μg〜約45μgの投与量が好ましく、約40μgの投与量が最も好ましい。本発明のデバイスはさらに、鎮痛効果を得て、維持するために、24時間の期間にわたって好ましくは約10〜100投与量、より好ましくは約20〜80投与量付加した、同様な投与量を包含する。
経皮電気的移送によって投与されるスフェンタニールの投与量は、体重35kg以上を有するヒト患者では約20分間までの投与時間にわたって約2.3μg〜約7.0μgである。この投与期間にわたって約4μg〜約5.5μgの投与量が好ましく、約4.7μgの投与量が最も好ましい。本発明のデバイスはさらに、鎮痛効果を得て、維持するために、24時間の期間にわたって好ましくは約10〜100投与量、より好ましくは約20〜80投与量付加した、同様な投与量を投与するための手段を包含する。
電気的移送によってフェンタニール/スフェンタニールの上記投与量を経皮投与するためのフェンタニール/スフェンタニール塩を含有するアノード溜め組成物(formulation)は好ましくは、例えばHCl塩又はクエン酸塩のような水溶性フェンタニール/スフェンタニール塩の水溶液から成る。最も好ましくは、この水溶液は例えばヒドロゲルマトリックスのような親水性ポリマーマトリックス中に含有される。フェンタニール/スフェンタニール塩は約20分間までの投与期間にわたって電気的移送によって上記投与量を経皮投与して、全身鎮痛効果を得るために充分な量で存在する。フェンタニール/スフェンタニール塩は典型的には、完全水和に基づいて、ドナー溜め組成物(ポリマーマトリックスの重量を包含して)の約1〜10重量%を占め、より好ましくは、完全水和に基づいて、ドナー溜め組成物の1〜5重量%を占める。本発明のこの態様にとって決定的ではないが、電気的移送式供給電流密度(applied electrotransport current density)は典型的に約50〜150μA/cmの範囲内であり、電気的移送式供給電流(applied electrotransport current)は典型的に約150〜240μAの範囲内である。
アノードのフェンタニール/スフェンタニール塩含有ヒドロゲルは適当には任意の数種類の物質から構成されることができるが、好ましくは親水性ポリマー物質、好ましくは、薬物安定性を強化するように、事実上極性である物質から構成される。ヒドロゲルマトリックスのために適当な極性ポリマーは種々な合成及び天然生成ポリマー物質を含む。好ましいヒドロゲル組成物は適当な親水性ポリマーと、緩衝剤と、湿潤剤(humectant)と、増粘剤と、水と、水溶性フェンタニール又はスフェンタニール塩(例えば、HCl塩)とを含む。好ましい親水性ポリマーマトリックスは、例えばウォシュド(washed)及び完全加水分解ポリビニルアルコール(PVOH)、例えばHoechst社から商業的に入手可能なMowiol 66−100のようなポリビニルアルコールである。適当な緩衝剤は酸形と塩形の両方の、メタクリル酸とジビニルベンゼンとのコポリマーであるイオン交換樹脂である。このような緩衝剤の1例はPolacrilin(Rohm & Haas,Philadelphia,PAから入手可能な、メタクリル酸とジビニルベンゼンとのコポリマー)又はそのカリウム塩である。Polacrilinの酸形とカリウム塩形との混合物は、ヒドロゲルのpHを約6に調節するためのポリマー緩衝剤として機能する。ヒドロゲル組成物に湿潤剤を用いることは、ヒドロゲルからの水分の損失を抑制するために有利である。適当な湿潤剤の1例はグアーガムである。増粘剤もヒドロゲル組成物に有利である。例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、Dow Chemical,Midland,MIから入手可能なMethocel K100MP)のようなポリビニルアルコール増粘剤は、高温ポリマー溶液が型又はキャビティ中に分配されるときの高温ポリマー溶液のレオロジーの調節に役立つ。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは冷却時に粘度が増大するので、冷却されたポリマー溶液が型又はキャビティからあふれ出る傾向を有意に低下させる。
好ましい1実施態様では、アノードのフェンタニール/スフェンタニール塩含有ヒドロゲル組成物は、約10〜15重量%のポリビニルアルコールと、0.1〜0.4重量%の樹脂緩衝剤と、約1〜2重量%のフェンタニール又はスフェンタニール塩、好ましくは塩酸塩を含む。残部は水と、例えば湿潤剤、増粘剤等のような成分である。ポリビニルアルコール(PVOH)に基づくヒドロゲル組成物は、フェンタニール又はスフェンタニール塩を含めた全ての物質を単一容器内で、約90℃〜95℃の高温において少なくとも約0.5時間混合することによって、調製される。この高温ミックスを次にフォーム型(foam mold)に注入して、約−35℃の凍結温度において一晩貯蔵して、PVOHを架橋させる。周囲温度までに加温したときに、フェンタニール電気的移送に適した、粘り強い弾性ゲルが得られる。
ヒドロゲル組成物は例えば以下で説明するような電気的移送式デバイスに用いられる。適当な電気的移送式デバイスは、好ましくは銀から構成されるアノードドナー電極と、好ましくは塩化銀から構成されるカソードカウンター電極とを包含する。ドナー電極は、フェンタニール/スフェンタニール塩の水溶液を含有するドナー溜めと電気的に接触する。上述したように、ドナー溜めは好ましくはヒドロゲル組成物である。カウンター溜めも好ましくは、例えばクエン酸塩緩衝化生理的食塩水(citrate buffered saline)のような、生体適合性電解質の溶液(例えば、水溶液)を含有するヒドロゲル組成物を含む。アノードとカソードのヒドロゲル溜めは、それぞれ、好ましくは約1〜5cm、より好ましくは約2〜3cmの皮膚接触面積を有する。アノードとカソードのヒドロゲル溜めは好ましくは約0.05〜0.25cm、より好ましくは約0.15cmの厚さを有する。電気的移送式供給電流は、望ましい鎮痛効果に依存して、約150μA〜約240μAである。最も好ましくは、電気的移送式供給電流は投与期間中実質的に一定なDC電流である。
次に、本発明によって用いることができる具体的な電気的移送式デバイスを示す図1を参照する。図1は、プシュボタンスイッチ12としての起動スイッチと、発光ダイオード(LED)14としてのディスプレイとを有する電気的移送式デバイス10の透視分解組み立て図を示す。デバイス10は上部ハウジング16と、回路板アセンブリ18と、下部ハウジング20と、アノード電極22と、カソード電極24と、アノード溜め26と、カソード溜め28と、皮膚適合性(skin−compatible)接着剤30とを含む。上部ハウジング16は、患者の皮膚上にデバイス10を保持するのを助ける側方ウイング15を有する。上部ハウジング16は好ましくは射出成形可能なエラストマー(例えば、エチレン酢酸ビニル)から成る。印刷回路板アセンブリ18は個別の電気的要素40とバッテリー32とに結合した集積回路19を含む。回路板アセンブリ18を孔(opening)13aと13bとを貫通するポスト(図1に示さず)によってハウジング16に取り付ける、ポストの端部を加熱/溶融して、回路板アセンブリ18をハウジング16に熱固定する(heat stake)。接着剤30によって下部ハウジング20を上部ハウジング16に取り付け、接着剤30の上面34は下部ハウジング20と、ウイングの下面を含む上部ハウジング16との両方に接着する。
回路板アセンブリ18の下側には、バッテリー32が示され(部分的に)、バッテリー32は好ましくはボタン電池バッテリー、最も好ましくはリチウム電池である。他の種類のバッテリーもデバイス10に電力を与えるために使用可能である。
回路板アセンブリ18の回路出力(図1に示さず)は下部ハウジング中に形成された凹み25、25’中の孔23、23’を介して電極24、22と、導電性接着剤ストリップ42、42’によって電気的に接触する。そして次に、電極22と24は溜め26と28の上側44’、44と機械的及び電気的に直接接触する。溜め26と28の下側46’、46は接着剤30中の孔29’、29を介して患者の皮膚と接触する。プッシュボタンスイッチ12を押し下げると、回路板アセンブリ18上の電子回路は所定電流を電極/溜め22、26及び24、28に所定長さの投与時間(delivery interval)、例えば約10分間供給する。好ましくは、デバイスは発光するLED14及び/又は例えば“ビーパー”からの可聴音シグナルを用いて、薬物投与(又はボラス)時間開始の可視的及び/又は可聴的確認を使用者に伝える。次に、鎮痛薬(例えば、フェンタニール)を患者の例えば腕の皮膚を通して所定の投与時間(例えば、10分間)投与する。実際に、使用者は可視的シグナル(LED14が発光する)及び/又は可聴的シグナル(“ビーパー”からのビープ(beep))によって薬物投与時間の開始に関してフィードバックを受容する。
アノード電極は好ましくは銀から成り、カソード電極は好ましくは塩化銀から成る。溜め26と28の両方は好ましくは本明細書に述べるようなポリマーヒドロゲル物質から成る。電極22、24と溜め26、28とは下部ハウジング20によって保持される。フェンタニール塩とスフェンタニール塩に関しては、アノード溜め26が、薬物を含有する“ドナー溜め”であり、カソード溜め28が生体適合性電解質を含有する。
プッシュボタンスイッチ12と、回路板アセンブリ18上の電子回路部品(circuitry)と、バッテリー32とは、上部ハウジング16と下部ハウジング20との間に接着的に“シールされる”。上部ハウジング18は好ましくはゴム又は他の弾性物質から構成される。下部ハウジング20は、凹み25、25’を形成するために容易に成形され、孔23、23’を形成するように容易に切断されることができるプラスチック又は弾性シート物質(例えば、ポリエチレン)から構成されることが好ましい。組み立てられたデバイス10は好ましくは耐水性(即ち、スプラッシプルーフ(splash−proof))であり、最も好ましくは防水性である。この系は、身体に容易に順応する低いプロフィルを有するので、装着部位及びその周囲の自由な動きを可能にする。アノード/薬物溜め26とカソード/塩溜め28とはデバイス10の皮膚接触側に配置され、かつ充分に分離しているので、通常の取り扱い及び使用中の偶発的な電気的短絡を防止する。
デバイス10は、上側34と身体接触側36とを有する周辺接着剤30によって、体表(例えば、皮膚)に接着する。接着剤の側36は、通常の使用者活動中にデバイス10が身体上の適所に留まることを保証し、しかも所定の(例えば、24時間)装着期間後に妥当な除去を可能にする接着性を有する。接着剤の上側34は下部ハウジング20に接着して、ハウジング凹み25、25’中の電極と薬物溜めとを保持し、ハウジング20を上部ハウジング16に結合した状態に維持する。
プッシュボタンスイッチ12はデバイス10の頂上側に配置され、衣服を通して容易に始動される。短時間(例えば、3秒間)内のプッシュボタンスイッチの2度押しを用いて、薬物投与のためにデバイス10を始動させることによって、デバイス10の不注意による始動の可能性を最小にすることが好ましい。
スイッチを始動させると、可聴アラームが薬物投与の開始を知らせ、この時点で回路が所定レベルのDC電流を電極/溜めに所定の投与時間(例えば、10分間)にわたって供給する。LED14は投与時間を通して“オン”に留まり、デバイス10が活性な薬物投与モード状態であることを表示する。バッテリーは好ましくはデバイス10にDC電流の所定レベルにおいて全装着期間(例えば、24時間)にわたって連続的に電力を与えるために充分な容量を有する。
好ましくは、ドナー溜め中の溶液のフェンタニール又はスフェンタニールの濃度は、経皮電気的移送式フェンタニール/スフェンタニール流量が電気的移送式薬物投与期間中にドナー溜めの薬物濃度に無関係であるようなレベル以上に維持される。経皮電気的移送式フェンタニール流動は、フェンタニール塩濃度が約11〜16mM未満に低下すると、水溶液中のフェンタニール塩の濃度に依存し始める。11〜16mM濃度はドナー溜めに用いられる液体溶媒の量にのみ基づいて算出されたものであり、溜めの全量に基づいて算出されたものではない。換言すると、11〜16mM濃度は、溜めマトリックス(例えば、ヒドロゲル又は他のマトリックス)物質によって表される溜めの量を包含しない。さらに、11〜16mM濃度は、ドナー溜め溶液中に含有されるフェンタニール塩のモル数に基づくものであり、フェンタニール遊離塩基の同等なモル数に基づくものではない。他のフェンタニール塩(例えば、フェンタニールクエン酸塩)は、問題の特定のフェンタニール塩の対イオンの分子量の差に基づいてやや異なる重量に基づく濃度を有する。フェンタニール塩濃度が約11〜16mMに低下すると、電気的移送式供給電流が一定に留まるとしても、フェンタニール経皮電気的移送式流量は顕著に低下し始める。したがって、特定レベルの電気的移送式供給電流によって予測可能なフェンタニール流量を保証するために、ドナー溜め中に含有される溶液のフェンタニール塩濃度は約11mMより高く維持されることが好ましく、約16mMより高く維持されることがさらに好ましい。フェンタニールの他に、スフェンタニールの水溶性塩も、それ未満では経皮電気的移送式流量が溶液中のスフェンタニール塩の濃度に依存するようになる最低水溶液濃度を有する。スフェンタニールのこの最低濃度は約1.7mMであり、これはスフェンタニールクエン酸塩では約1mg/mlに相当する。
フェンタニールとスフェンタニールは両方とも塩基であるので、フェンタニールとスフェンタニールの塩は典型的に酸付加塩、例えば、クエン酸塩、塩酸塩等である。フェンタニールの酸付加塩は典型的に約25〜30mg/mlの水溶解度を有する。スフェンタニールの酸付加塩は典型的に約40〜50mg/mlの水溶解度を有する。これらの塩を溶液(例えば、水溶液)中に入れると、塩は溶解して、プロトン化フェンタニール又はスフェンタニールカチオンと対アニオン(例えば、クエン酸又は塩化物アニオン)を形成する。このようなものとして、フェンタニール/スフェンタニールカチオンが電気的移送式投与デバイスのアノード電極から投与される。アノード溜め中のpH安定性を維持する方法として、銀電極が経皮電気的移送式投与のために提案されている。例えば、Untereker等の米国特許第5,135,477号とPetelenz等の米国特許第4,752,285号を参照のこと。これらの特許も電気的移送式投与デバイスに銀アノード電極を用いることの欠点の1つ、即ち、銀アノードが銀を酸化させて(Ag→Ag+e)、銀カチオンを形成して、この銀カチオンが電気的移送による皮膚中への投与に関してカチオン薬物と競合することを認識している。銀イオンは皮膚中に侵入すると、皮膚の一過性表皮変色(TED)を生じる。これらの特許の教示によると、カチオンのフェンタニールとスフェンタニールとは好ましくはハライド塩(例えば、塩酸塩)として製剤化される(formulated)ので、電気化学的に発生した銀イオンは薬物対イオン(即ち、ハライドイオン)と反応して、実質的に不溶性のハロゲン化銀を形成する(Ag+X→AgX)。これらの特許の他に、Phipps等のWO95/27530は、経皮電気的移送式投与デバイスのドナー溜め中の高分子量塩化物樹脂としての補助的な塩化物イオン供給源の使用を教示する。これらの樹脂は、銀アノード電極を用いた電気的移送によって経皮的にフェンタニール又はスフェンタニールを投与する場合の銀イオン侵入と、付随する皮膚変色とを防止するために充分な塩化物の供給に非常に効果的である。
本発明を下記実施例によってさらに説明するが、これらの実施例は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を限定しない。
実施例1
中程度から重度の手術後疼痛に苦しむヒト患者において許容されるレベルの鎮痛を得るために必要な経皮電気的移送式投与レベルを測定するために、下記試験をおこなった。この試験は、整形外科(肩、膝、長骨)手術及び腹部(泌尿器科、婦人科)手術を包含する手術後に中程度から重度の疼痛を有すると考えられた132人の男性及び女性の患者において、おこなわれた。患者は手術後24時間、上腕に2種類の異なる電気的移送式フェンタニールHCl投与デバイスの1つを装着した。両方のデバイスはデバイス上のプッシュボタンスイッチの始動後10分間の投与時間にわたって電気的移送式電流を供給した。132人の患者の中の79人によって装着された第1デバイスは150μAの電気的移送式電流を供給して、10分間の投与時間にわたって25μgの平均フェンタニール投与量を投与した。132人の患者の中の53人によって装着された第2デバイスは240μAの電気的移送式電流を供給して、10分間の投与時間にわたって40μgの平均フェンタニール投与量を投与した。
両方のデバイスにおいて、患者は毎時間6回分の投与量までを自己投与することができた。第1(即ち、25μg投与量)デバイスを用いた患者は最大144回分投与量を供給することができた。第2(即ち、40μg投与量)デバイスを用いた患者は最大数80回分投与量を供給することができた。
両方のデバイスは、再使用可能な電子制御装置と、一回使用/使い捨て式薬物含有ユニットとを包含する二部式系であった。各薬物ユニットはアノードフェンタニールHCl含有ドナーゲルとカソード生理的食塩水含有カウンターゲルとを含有した。全てのゲルは2cmの皮膚接触面積と0.16cmの厚さとを有した。ドナーゲルの近似重量は350mgであった。25μg投与量系と40μg投与量系におけるアノードドナーゲルは同じサイズと組成であり、電気的移送式供給電流レベルのみが異なった。カソードカウンター電極アセンブリは各々、クエン酸塩緩衝化生理的食塩水を含有する、PVOHに基づくゲルを有した。塩化銀カソード電極はカウンターゲルの片面に積層された。25μg投与量と40μg投与量のアノードゲルは下記組成を有した:
Figure 2005329246
全ての患者は最初に、手術直後の回復室において静脈内(IV)フェンタニールによって許容可能な鎮痛レベルを判定された(titrated)。患者が回復室から出るための通常の施設基準を満たし、かれらの装着電気的移送式投与デバイスを操作することができるようになった手術後3時間以内に、患者は病棟に移され、そこで患者はかれらの疼痛を治療するために経皮電気的移送によってフェンタニールを自己投与することができた。電気的移送式フェンタニール投与法(delivery regimen)が疼痛の抑制のために不充分であった場合には、患者は充分な鎮痛を得るためにIV投与による補充フェンタニールによって再判定された(retitrated)。25μg投与量グループでは、79人患者の中の38人(即ち、48%)が回復室を出た後に補充IVフェンタニールを必要としなかった。40μg投与量グループでは、53人患者の中の47人(即ち、89%)が回復室を出た後に補充IVフェンタニールを必要としなかった。これらの割合に基づくと、患者の約半数ではこれらの種類の手術処置に付随した疼痛を治療するために25μg投与量法で充分であり;試験した患者の約90%ではこれらの種類の手術処置に付随した疼痛を治療するために40μg投与量法で充分であったことが判断された。25μg投与量法は約半数の患者にとって鎮痛的に有効であったので、例えばヘルニア修復、腎臓結石、関節炎痛、腹腔鏡処置及び、大手術に付随する疼痛よりも重度でない疼痛を伴う他の状態によって経験されるような、あまり重度でない急激な疼痛の治療では、これらの同じ投与時間(即ち、20分間まで)にわたる約20〜30μg、好ましくは約20〜25μgのフェンタニールの低い投与量法も有効であり、故意ではない過剰投与をする可能性が少ない。これに対応するスフェンタニールの低い投与量法は、これらの同じ投与時間(即ち、20分間まで)にわたって投与される約2.3〜約3.5μg、好ましくは約2.3〜約2.9μgである。
疼痛強度は最初の要求に応じた投与量の始動直前の基底状態で(at baseline)評価し、デバイスを最初に始動させた後の0.5、1、2、3、4、6、8、12、16、20及び24時間目に再び評価した。1〜100のスケールを含有する10cm長さのストリップ上に無痛に関しては1を、最も重度な強度の疼痛に関しては100を標識することによって疼痛の強度を評価するように、患者に要請した。鎮痛の質は、疼痛の強度の測定の時間スケジュールと同じ時間スケジュールに従って非常に良好、良好、かなり又は不充分のカテゴリー等級によって評価した。
40μg投与量電気的移送式デバイスを用いた53人の患者に関する鎮痛の質と疼痛の強度とのデータをそれぞれ図2と3に示す。
アノードゲルとカソードゲルの真下の皮膚部位をデバイスの除去後1、6及び24時間目に評価し、局所(例えば、刺激状態)効果に関して評価した。局所効果データは表1に示す。
Figure 2005329246
実施例2
下記組成を有する2種類のフェンタニール塩酸塩含有アノードドナー溜めPVOHに基づくゲルを調製した:
Figure 2005329246
両方の組成物に関して、水とPVOHとを92℃〜98℃の温度において混合した後に、フェンタニール塩酸塩を加えて、続いてさらに撹拌した。次に、液体ゲルをディスク形状キャビティを有するフォーム型に供給した。この型をフリーザーに−35℃において一晩入れて、PVOHを架橋させた。このゲルは患者に鎮痛を与えるための経皮電気的移送式フェンタニール投与に適したアノードドナー溜めとして用いることができる。
要約すると、本発明はフェンタニールとスフェンタニールの水溶性塩の経皮電気的移送を改良するためのデバイスを提供する。この電気的移送式投与デバイスは好ましくは銀アノードドナー電極とヒドロゲルに基づくドナー溜めとを有する。電気的移送式デバイスは好ましくは患者制御式デバイスである。ヒドロゲル組成物は、許容可能なレベルの鎮痛を与えるために充分である薬物濃度を含有する。
以下では、本発明を添付図面に関連して説明する、図面において:
図1は、本発明による電気的移送式薬物投与デバイスの透視分解組立て図であり; 図2は、経皮電気的移送式にフェンタニールを投与された患者における鎮痛の質を時間の関数として説明するグラフであり; 図3は、経皮電気的移送式にフェンタニールを投与された患者によって経験される疼痛の強度を時間の関数として説明するグラフである。

Claims (20)

  1. 電気的移送によって投与される形状のフェンタニールを含有するドナー溜め(26)と、カウンター溜め(28)と、溜め(26、28)に電気的に接続した電源(32)と、電気的移送式供給電流の大きさとタイミングとを制御するための制御回路(19、40)とを包含する、電気的移送によってフェンタニールを経皮投与するためのデバイス(10)において、
    溜め(26、28)、電源(32)及び制御回路(19、40)が約20μg〜約60μgのフェンタニールを約20分間までの投与期間にわたって電気的移送によって投与するために有効であることを特徴とするデバイス(10)。
  2. デバイス(10)が約35μg〜約45μgのフェンタニールを約5〜15分間までの投与期間にわたって投与する、請求項1記載のデバイス。
  3. デバイス(10)が約40μgのフェンタニールを投与期間にわたって投与する、請求項1記載のデバイス。
  4. デバイス(10)があまり重度でない疼痛を治療するために用いられ、デバイス(10)が約20μg〜約30μgのフェンタニールを投与期間にわたって投与する、請求項1記載のデバイス。
  5. 投与期間が約10分間である、請求項1記載のデバイス。
  6. デバイスが約100投与量まで付加されたフェンタニールの20μg〜60μg投与量を1回の投与期間が約20分間までの持続期間であるときに1回以上の連続した投与期間にわたって投与するために有効である、請求項1記載のデバイス。
  7. ドナー溜め(26)がフェンタニール塩組成物を含む、請求項1記載のデバイス。
  8. フェンタニール塩が組成物の約1.9〜2.0重量%を占める、請求項7記載のデバイス。
  9. フェンタニール塩がフェンタニール塩酸塩である、請求項8記載のデバイス。
  10. ドナー溜め(26)がポリビニルアルコールを含む、請求項1記載のデバイス。
  11. 電気的移送によって投与される形状のスフェンタニールを含有するドナー溜め(26)と、カウンター溜め(28)と、溜め(26、28)に電気的に接続した電源(32)と、電気的移送式供給電流の大きさとタイミングとを制御するための制御回路(19、40)とを包含する、電気的移送によってスフェンタニールを経皮投与するためのデバイス(10)において、
    溜め(26、28)、電源(32)及び制御回路(19、40)が約2.3μg〜約7.0μgのスフェンタニールを約20分間までの投与期間にわたって電気的移送によって投与するために有効であることを特徴とするデバイス(10)。
  12. デバイス(10)が約4μg〜約5.5μgのスフェンタニールを約5〜15分間までの投与期間にわたって投与する、請求項11記載のデバイス。
  13. デバイス(10)が約4.7μgのスフェンタニールを投与期間にわたって投与する、請求項11記載のデバイス。
  14. デバイス(10)があまり重度でない疼痛を治療するために用いられ、デバイス(10)が約2.3μg〜約3.5μgのスフェンタニールを投与期間にわたって投与する、請求項11記載のデバイス。
  15. 投与期間が約10分間である、請求項11記載のデバイス。
  16. デバイスが約100投与量まで付加されたスフェンタニールの2.3μg〜7.0μg投与量を1回の投与期間が約20分間までの持続期間であるときに1回以上の連続した投与期間にわたって投与するために有効である、請求項11記載のデバイス。
  17. ドナー溜め(26)がスフェンタニール塩組成物を含む、請求項11記載のデバイス。
  18. スフェンタニール塩が組成物の約1.9〜2.0重量%を占める、請求項11記載のデバイス。
  19. スフェンタニール塩がスフェンタニール塩酸塩である、請求項18記載のデバイス。
  20. ドナー溜め(26)がポリビニルアルコールを含む、請求項11記載のデバイス。
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