JP2005325411A - 焼結性に優れた金属粉末、その製造方法、及び当該金属粉末を用いた焼結体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 銀粉末または銀合金粉末をハロゲン元素および/またはハロゲン化物の存在下において焼結することで、焼結時に粉末粒子間のネック部の成長が促進されることを見出した。これによって低温での焼結が可能となり焼結体の延性は改善される。本発明では、金属粉末におけるハロゲン元素含有率は5〜2000ppmの範囲内であることが好ましく、このような金属粉末を製造する際には、延性向上成分であるハロゲン含有物を金属粉末と混合しても良いし、ハロゲンイオンを含む溶液中に金属粉末を浸漬させた後、取り出して乾燥させても良く、ハロゲンイオン含有水溶液を噴霧媒として用い、この噴霧媒により金属溶湯を噴霧して金属粉末としても良い。
【選択図】 なし
Description
更に本発明は、このような金属粉末を用いることにより、延性に優れ且つ寸法収縮の小さい焼結体を製造するための方法に関するものでもある。
一方、焼結部品の製造コストの低減といった観点から、より低温の焼結で良い特性の焼結体を得るような技術が要求されている。しかしながら焼結温度を低くした場合、寸法収縮は抑えることはできるが、粉末粒子間の焼結は十分に進行せず機械的特性が劣化するだけでなく、各金属粒子間のネックの成長に差が生じ易くなるため、焼結体の機械的特性にバラツキが生じるといった問題が起こる。
更に、本発明は、比較的低温の焼結で延性に優れ且つ寸法収縮の小さい焼結体を製造することが可能な方法を提供することを課題とするものでもある。
このような観点に立って、本願発明者は上記の課題を解決すべく種々検討を重ねた結果、ハロゲン元素および/またはハロゲン化物を原料粉末と混合あるいは粉末表面に付着および形成させ焼結することで、原料粉末粒子間の収縮を抑え且つ低温であっても焼結が促進することを見出した。このようにして製造された焼結品は、寸法収縮が小さく且つ優れた延性を示す。
この際、上記のハロゲン化物としては、元素周期律表のIA〜VIIA族およびVIII族並びにIB族〜IVB族に属する元素とハロゲン元素との化合物が好ましく、特に好ましいものは、コバルト、鉄、ビスマス、ニッケル、銅、銀、亜鉛および錫から成るグループより選ばれた金属元素とのハロゲン化物である。
又、上述の金属粉末を製造するための本発明の第2の方法は、銀または銀合金のいずれかを主成分とする金属粉末を、ハロゲンイオンを含む溶液中に浸漬させ、当該溶液から取り出した後、乾燥を行うことにより、前記金属粉末の表面にハロゲン化物を形成させる工程を含むことを特徴とするもの(浸漬法)である。
更に、上述の金属粉末を製造するための本発明の第3の方法は、噴霧媒としてハロゲンイオンを含む水溶液を予め準備する工程と、前記工程で準備した噴霧媒を用いて金属の溶湯を噴霧することにより金属粉末を得る工程とを含むことを特徴とするもの(アトマイズ法)である。
本発明の焼結処理において使用されるハロゲン元素は、具体的にはVIIB族に属する元素が挙げられる。さらに好ましくは塩素が使用される。またハロゲン化物としては、特に限定されない。具体的には、元素周期律表のIA〜VIIA族およびVIII族並びにIB族〜IVB族に属する元素とのハロゲン化物が挙げられる。さらに好ましくはコバルト、鉄、ビスマス、ニッケル、銅、銀、亜鉛および錫のような金属元素とのハロゲン化物が使用される。
また金属微粉末の製造には、高圧力の水で金属の溶湯を噴霧するアトマイズ法が一般的に使用される。上記製造法の噴霧媒としてハロゲン元素を含む水溶液、例えば塩素を含む水道水を使用する。上記のように製造過程で原料金属粉末にハロゲン元素を添加することもできる。
焼結性の評価は、JPMA 9規格の抗折試験により試料の曲がり角度および試料破断時の曲がり角度で検討した。
〔実施例1〜4〕
原料粉末として銀粉末を用意した。上記原料粉末をそれぞれ30、1000ppmの塩酸水溶液に浸積させ、その後脱水、乾燥し塩素を有した粉末を作成した。上記粉末の塩素含有量分析結果を表1に示す。上記粉末を圧力5MPaで加圧成形し、幅10mm、長さ30mm、厚さ2mmの圧粉体を作成した。上記圧粉体を大気中において温度600℃、650℃で30分間、焼結炉内で焼結した。得られた焼結体の評価結果を表1に併せて記載する。
原料粉末として銀粉末を用意した。上記原料粉末に対してAgI粉末を0.05質量%混合した。上記粉末を上記実施例1〜4と同様に加圧成形し圧粉体を作成した。上記圧粉体を大気中において温度650℃で30分間、焼結炉内で焼結した。得られた焼結体の評価結果を表1に併せて記載する。
原料粉末として銀粉末を用意した。上記原料粉末に対してAgBr粉末を0.05質量%混合した。上記粉末を上記実施例1〜4と同様に加圧成形し圧粉体を作成した。上記圧粉体を大気中において温度650℃で30分間、焼結炉内で加熱した。得られた焼結体の評価結果を表1に併せて記載する。
原料粉末として銀粉末を用意した。上記原料粉末を脱水機容器内において塩素含有量13ppmの水道水で流水洗浄し、その後脱水、乾燥して塩素を有する粉末を作成した。上記粉末の塩素含有量分析結果を表1に示す。これを上記実施例1〜4と同様に圧粉体を作成した。上記圧粉体を大気中において温度650℃で30分間、焼結炉内で焼結した。得られた焼結体の評価結果を表1に併せて記載する。
原料粉末として銀粉末を用意した。上記原料粉末にZnCl2粉末を0.05質量%混合した。上記粉末を上記実施例1〜4と同様に加圧成形し圧粉体を作成した。上記圧粉体を大気中において温度650℃で30分間、焼結炉内で焼結した。得られた焼結体の評価結果を表1に併せて記載する。
原料粉末として銀粉末を用意した。上記原料粉末にSnCl2粉末を0.05質量%混合した。上記粉末を上記実施例1〜4と同様に加圧成形し圧粉体を作成した。上記圧粉体を大気中において温度650℃で30分間、焼結炉内で焼結した。得られた焼結体の評価結果を表1に併せて記載する。
原料粉末として銀粉末を用意した。上記原料粉末にBiCl3粉末を0.05質量%混合した。上記粉末を上記実施例1〜4と同様に加圧成形し圧粉体を作成した。上記圧粉体を大気中において温度650℃で30分間、焼結炉内で焼結した。得られた焼結体の評価結果を表1に併せて記載する。
原料粉末としてAg-7.5%Cuを用意した。上記原料粉末を上記実施例1〜4と同様に塩素を含有させ圧粉体を作成した。上記粉末の塩素含有量分析結果を表1に示す。上記圧粉体を大気中において温度600℃で30分間、焼結炉内で焼結した。得られた焼結体の評価結果を表1に併せて記載する。
原料粉末として銀粉末を用意した。上記原料粉末を200ppmのNaOCl水溶液に浸積させ、その後脱水、乾燥し塩素を有した粉末を作成した。上記粉末の塩素含有量分析結果を表1に示す。上記粉末を上記実施例1〜4同様に加圧成形し圧粉体を作成した。上記圧粉体を大気中において温度650℃で30分間、焼結炉で焼結した。得られた焼結体の評価結果を表1に併せて記載する。
原料金属粉末の製造には、高圧力のアトマイズ法を使用する。この噴霧媒として水にNaOClを30ppm添加しアトマイズした。上記方法で製造した原料金属の塩素含有量分析結果は表1に示す。上記粉末を上記実施例1〜4同様に加圧成形し圧粉体を作成した。上記圧粉体を大気中において温度650℃で30分間、焼結炉で焼結した。得られた焼結体の評価結果を表1に併せて記載する。
高圧力の水アトマイズ法を使用する。この噴霧媒として水に塩酸を30ppm添加しアトマイズした。上記方法で製造した原料金属の塩素含有量分析結果は表1に示す。上記粉末を上記実施例1〜4同様に加圧成形し圧粉体を作成した。上記圧粉体を大気中において温度650℃で30分間、焼結炉で焼結した。得られた焼結体の評価結果を表1に併せて記載する。
高圧力の水アトマイズ法を使用する。この噴霧媒として水道水を使用しアトマイズした。上記方法で製造した原料金属の塩素含有量分析結果は表1に示す。上記粉末を上記実施例1〜4同様に加圧成形し圧粉体を作成した。上記圧粉体を大気中において温度650℃で30分間、焼結炉で焼結した。得られた焼結体の評価結果を表1に併せて記載する。
原料粉末として塩素含有量5ppm未満の銀粉末を用意した。これらを上記実施例1〜4と同様に圧粉体を作成した。上記圧粉体を大気中において温度600℃、650℃、900℃で30分間、焼結炉内で焼結した。得られた焼結体の評価結果を表1に併せて記載する。
原料粉末としてハロゲン元素含有量5ppm未満のAg-7.5%Cu合金粉末を用意した。これらを上記実施例1〜4と同様に圧粉体を作成した。上記圧粉体を大気中において温度600℃で30分間、焼結炉内で焼結した。得られた焼結体の評価結果を表1に併せて記載する。
上記の実施例1〜16および比較例1〜4で得られた金属粉末に関する評価結果を表1にまとめて示す。
また寸法収縮率は、比較例1〜4に比べ実施例1〜16の方が小さい。これは焼結温度が低いために粉末粒子原子の内部拡散よりも、気相となったハロゲン元素を介した原料粉末原子のネック部への蒸発凝着の方が大きく寄与したためと考えられる。
このように、本発明の特徴は、焼結の際にハロゲン元素を利用することで、焼結温度が低温であっても焼結が進行し焼結体は十分な延性が得られ、しかも高温焼結で得られる焼結体に比べ寸法収縮が小さい点にある。
図1は、実施例1で得られた焼結体の断面の光学顕微鏡組織写真であり、図2は実施例2の焼結体のものであり、図3に比較例1の焼結体のものであり、図4は比較例3の焼結体のものである。実施例1,2の焼結体は、隣り合う粒子間のネック部が太く成長し、気孔側面は丸味を帯びた形状となっていることを確認できる。一方、比較例1の断面写真ではネックを形成している箇所が少なく、またネックを形成しても細く成長していない。温度が低いために焼結が十分に進行していないことがわかる。
Claims (7)
- 焼結によって焼結体を製造するのに使用される金属粉末であって、当該金属粉末が、銀または銀合金のいずれかを主成分とし、延性向上成分として、ハロゲン元素またはハロゲン化物の少なくともいずれか一方を含み、当該金属粉末におけるハロゲン元素含有率が5〜2000ppmの範囲内であることを特徴とする金属粉末。
- 前記ハロゲン化物が、元素周期律表のIA〜VIIA族およびVIII族並びにIB族〜IVB族に属する元素とハロゲン元素との化合物であることを特徴とする請求項1に記載の金属粉末。
- 前記ハロゲン化物が、コバルト、鉄、ビスマス、ニッケル、銅、銀、亜鉛および錫から成るグループより選ばれた金属元素とのハロゲン化物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属粉末。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載される金属粉末を製造するための方法であって、当該方法が、延性向上成分として、ハロゲン元素またはハロゲン化物の少なくともいずれか一方を予め準備する工程、及び、前記延性向上成分を、銀または銀合金のいずれかを主成分とする金属粉末と混合する工程を含むことを特徴とする金属粉末の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載される金属粉末を製造するための方法であって、当該方法が、銀または銀合金のいずれかを主成分とする金属粉末を、ハロゲンイオンを含む溶液中に浸漬させ、当該溶液から取り出した後、乾燥を行うことにより、前記金属粉末の表面にハロゲン化物を形成させる工程を含むことを特徴とする金属粉末の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載される金属粉末を製造するための方法であって、当該方法が、噴霧媒としてハロゲンイオンを含む水溶液を予め準備する工程、及び、前記工程の噴霧媒を用いて金属の溶湯を噴霧することにより金属粉末を得る工程を含むことを特徴とする金属粉末の製造方法。
- 銀または銀合金のいずれかを主成分とし、ハロゲン元素またはハロゲン化物の少なくともいずれか一方を延性向上成分として含む金属粉末で、当該金属粉末におけるハロゲン元素含有率が5〜2000ppmの範囲内であるものを準備し、前記金属粉末を使用して加圧成形を行い、圧粉体を形成し、得られた圧粉体を500〜900℃の温度で焼結することを特徴とする焼結体の製造方法。
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