JP2005322813A - リトロー型外部共振器半導体レーザーにおける光軸のずれの補正方法および装置 - Google Patents

リトロー型外部共振器半導体レーザーにおける光軸のずれの補正方法および装置 Download PDF

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Abstract

【課題】リトロー型外部共振器半導体レーザーにおける光軸のずれを簡単に、安価に、かつ的確に補正することができる、リトロー型外部共振器半導体レーザーにおける光軸のずれの補正方法及び装置を提供する。
【解決手段】レーザー光を入射する手段と、前記レーザー光が入射する回折格子33とプリズム35とを所定の配置となるように一体的に固定する治具36と、前記回折格子33とプリズム35とを一体的に回転可能な回転軸34とを備え、この回折格子33とプリズム35の回転軸34での回転により、入射光の波長を可変にするとともに、この波長の変化によっても出力光39の光軸は不変であるようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、リトロー型外部共振器半導体レーザーにおける光軸のずれの補正方法および装置に関するものである。
波長可変レーザーは、原子・分子の分光やレーザー冷却、半導体量子ドットの分光、および量子情報処理などの分野の研究においてよく用いられる。
このような装置として、大型の色素レーザーやチタンサファイアレーザーなどが以前から光学機器メーカーによって販売されてきたが、最近では、より安価でコンパクトな外部共振器半導体レーザー(ECDL)が市販されるようになった。ECDLには主にリトロー(Littrow)型とリットマン(Littman)型の2種類がある。
なし
上記したリトロー型ECDLは簡便であり、出力パワーなどに関して高い性能を有するものの、波長の変化に伴って出力光の光軸が動くという難点を持つ。
以下、従来の問題点について詳細に説明する。
図3は従来のリトロー型ECDLの模式図、図4は従来のリットマン型ECDLの模式図である。
図3において、1は半導体レーザー(LD)、2はコリメートレンズ、3は入射光、4は回折格子、5はその回折格子4の回転軸、6は1次回折光、7は0次回折光(出力光)、8は回折格子4に対する垂直線(点線)である。
図4において、11は半導体レーザー(LD)、12はコリメートレンズ、13は入射光、14は回折格子、15はミラー、16はそのミラーの回転軸、17は回折格子14からの1次回折光、18はミラー15からの反射光、19は反射光18の回折格子14からの1次回折光、20は反射光18の0次回折光、21は0次回折光(出力光)である。
図3に示されたリトロー型ECDLでは、半導体レーザー(LD)1からの光をコリメートレンズ(凸レンズ)2でコリメートして回折格子4に入射させ、0次回折光7と1次回折光6を生じさせる。1次回折光6をLD1に帰還させ、LD1の後ろ側端面と回折格子4の間で共振器を形成する。回折格子4を回転軸5を中心にして回転することによって共振器長を変え、光波長を変化させる。このとき、回折格子4に対する入射光3の入射角度と出力光である0次回折光7の出射角度は等しくなるので、出力光7の方向が回折格子4の回転とともに変化してしまう。すなわち、出力光7の光軸が光波長に依存して動いてしまう。
その一方で、図4に示されたリットマン型ECDLでは、LD11からの光をリトロー型の場合よりも大きな入射角で回折格子14に照射して、0次回折光21と1次回折光17を生じさせる。このとき、1次回折光17はLD11の方へは戻らないため、ミラー15を用いて真っ直ぐに反射させる。この反射光18は再び回折格子14に入射し、再び0次回折光20と1次回折光19が発生する。この反射光18の1次回折光19をLD11に帰還させ、LD11の後ろ側端面とミラー15との間で共振器を形成する。この方法では、回折格子14を固定したままミラー15を回転させることによって波長を変化させる。そのため、出力光(LD11からの入射光13の0次回折光)21の光軸は波長によらず一定となる。
しかしながら、リットマン型ECDLはリトロー型ECDLに比べて構造が複雑になる。また、ミラー15からの反射光の0次回折光20はロスとなるので出力パワーが小さくなり、加えて、2度の回折を経てLD11に戻るので帰還効率が小さくなる。その結果、波長の可変範囲が狭くなる。
従って、リトロー型ECDLにおいて回折格子4の回転による出力光7の光軸の変化を無くすことができれば、リトロー型ECDLの方が、リットマン型ECDLよりも高性能となる。
そこで、リトロー型ECDLにおける光軸のずれの補正法として、ミラーを用いる方法がある。
図5はかかるミラーを用いたリトロー型ECDLの光軸のずれの補正装置の模式図である。
この図において、21は半導体レーザー(LD)、22はコリメートレンズ、23は入射光、24は回折格子、25はその回折格子24の回転軸、26はミラー、27は回折格子24とミラー26とを所定の配置(回折格子24とミラー26が平行かつ向かい合うように配置)に固定するための治具、28は0次回折光(出力光)である。
この補正装置では、図5に示すように、同じ治具27の上に回折格子24とミラー26が平行かつ向かい合うように配置して回転させるようにしているので、常にECDLシステムからの出力光28の方向をLD21から回折格子24へ向かう入射光23と平行にすることができる。しかしながら、治具27を回転軸25で回転して波長を変えると、出力光28の光軸が平行に移動してしまうため不完全である。
量子情報処理の研究では、波長可変レーザーからの光を10μm以下のサイズの微小な導波路に結合させた上で最適な波長を選ぶ必要があるため、波長変化に伴う光軸のずれは重大な問題となる。特に、青色の光の場合には回折効率が低いため、一度の回折で外部共振器を構成できるリトロー型ECDLが持つ光の帰還効率に関する優位性はより顕著となる。こうした理由から、リトロー型ECDLにおける光軸のずれの補正に関して、有効な手だてが求められる。
本発明は、上記状況に鑑みて、リトロー型ECDLにおける光軸のずれを簡単に、安価に、かつ的確に補正することができる、リトロー型ECDLにおける光軸のずれの補正方法及び装置を提供するものである。
〔1〕リトロー型外部共振器半導体レーザーにおける光軸のずれの補正方法において、回折格子とプリズムとを治具で所定の配置となるように一体的に固定し、前記回折格子とプリズムの回転軸での回転により、入射光の波長を変化させるとともに、この波長の変化によっても出力光の光軸が不変であることを特徴とする。
〔2〕リトロー型外部共振器半導体レーザーにおける光軸のずれの補正装置であって、レーザー光を入射する手段と、前記レーザー光が入射する回折格子とプリズムとを所定の配置となるように一体的に固定する治具と、前記回折格子とプリズムとを一体的に回転可能な回転軸とを具備することを特徴とする。
〔3〕上記〔2〕記載のリトロー型外部共振器半導体レーザーにおける光軸のずれの補正装置において、前記プリズムは底面が直角二等辺三角形の柱形状であることを特徴とする。
〔4〕上記〔3〕記載のリトロー型外部共振器半導体レーザーにおける光軸のずれの補正装置において、前記回折格子の格子面と前記柱形状のプリズムの直角二等辺三角形の斜面にあたる面とが平行に配置されることを特徴とする。
本発明は、プリズムを用いたリトロー型ECDLにおける光軸のずれの補正方法および装置に係り、回折格子とプリズムは所定の配置で一体的に固定され、その一体化された回折格子とプリズムの回転軸での回転により入射光の波長を可変にし、その光の波長の変化によっても出力光の光軸は不変であるようにすることができる。
したがって、ECDLを使う全ての科学技術分野に影響を及ぼすと考えられる。特に、半導体量子ドットの分光のように波長を大きく掃引して行う実験や、量子情報処理の研究などに見られるような10μm以下のサイズの細い導波路に波長を最適化させながら光を結合させる必要がある実験において、大きな需要が得られるものと期待される。
レーザー光を入射する手段と、前記レーザー光が入射する回折格子とプリズムとを所定の配置となるように一体的に固定する治具と、前記回折格子とプリズムとを一体的に回転可能な回転軸とを備え、波長の変化によっても出力光の光軸を不変にすることができる。
本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示すプリズムを用いたリトロー型ECDLの模式図である。
この図において、31は半導体レーザー(LD)、32はコリメートレンズ、33は回折格子、34はその回折格子33の回転軸、35は底面が直角二等辺三角形である柱型のプリズム、36は回折格子33とプリズム35とを所定の配置(回折格子33の格子面とプリズム35の直角二等辺三角形の斜辺にあたるb面が平行になるように配置)に固定するための治具、37は入射光、38は0次回折光、39は出力光である。なお、治具36は、例えば回折格子33とプリズム35のそれぞれの少なくとも一側面を固定する板状体を用いることができる。
以下、底面が直角二等辺三角形である柱型のプリズム35を用いた場合における本発明の原理を示す。便宜上、プリズム35の3つの側面を、図1に示すようにa面、b面、c面と呼ぶことにする。プリズムb面と回折格子面とが平行になるように、プリズム35と回折格子33を同じ治具36に配置する。
図2に、LD31からの入射光37が回折格子33に入射してから0次回折光38を得てプリズム35を透過して出力光39となるまでの光軸を、回折格子33への入射角が45°である場合〔図2(a)〕、45°以上である場合〔図2(b)〕の2つの場合について示す。以下の説明では、回折格子33への入射角が45°のときを基準として回折格子33の左回りへの回転角をθとおく。また、便宜上回折格子33からの0次回折光38の光軸の方向を、LD31から回折格子33への入射光37と0次回折光38のなす角αで記述する(図2における下方向に光が進んでいるときを正とする)。
まず、図2(a)に示すように回転角θ=0の場合を考える。このとき、0次回折光38はα=90°の方向に向かい、プリズムa面に角度0度で入射して屈折せずに透過する。その後、プリズムb面で全反射されてα=180°の方向に向かい、プリズムc面を屈折せずに透過して出力光39となる。
次に、図2(b) に示すように回転角θが0でない場合を考える。このとき、回折格子33だけでなくプリズム35も角度θだけ回転することに注意する。LD31からの入射光37が回折格子33へ角度45°+θで入射した後、α=90°+2θの方向へ0次回折光38が発生し、プリズムa面へ角度θで入射して屈折する。プリズム35の屈折率をnとすると屈折角φは
sinφ=sinθ/n …(1)
で表される。プリズムa面で屈折した後の光はα=90°+θ+φの方向へ向かい、角度45°+φでプリズムb面に入射して全反射され、α=180°+θ−φの方向へ進む。この光はプリズムc面に角度φで入射して屈折する。このとき屈折角χは
sinχ=nsinφ …(2)
によって与えられる。上記式(1)と上記式(2)の比較からχ=θとなる。そのため、プリズムc面において屈折した後の光、すなわち図1に示したECDLシステムの出力光は、回転角θに依らず常にα=180°の方向に出射される。
ここで、プリズム35の屈折率n>1であれば、上記式(1)より|φ|<|θ|、かつφとθが同符号になるので、プリズムb面によって全反射された光の進行方向α=180°+θ−φは、θ<0のときα<180°、θ>0のときα>180°となる。そのため、図2に示すようにLD31から回折格子33に向かう入射光37の光軸と垂直な方向にx軸を取り、プリズムb面およびc面への光の入射位置のx座標をそれぞれxb (θ)およびxc (θ)とおくと、θ<0においてxb (θ)<xc (θ)、θ>0においてxb (θ)>xc (θ)となるようにプリズムa面とプリズムb面の位置を選べば全反射後の光軸はθに依らずxc (0)に近づく方向へ向かう。プリズムc面の位置を選べば、xc (θ)=xc (0)にすることができる。
光波長に対して回折格子33の格子間隔dを選べば|θ|を1rad(:=57.3°)よりも十分に小さくできるので、xc (θ)をθに対するべき級数展開の1次の項までで近似することができる。すなわち、係数a0 、a1 を用いて
Figure 2005322813
となる。このとき、xc (θ)がθに依らないための条件x′c (θ)=0 を満たすためには、a1 =0となる必要がある。ここで、図1に示すように、プリズムa面、b面、c面および回折格子面とその回転軸34との間の距離をそれぞれRa 、Rb 、Rc およびTとする。単純な計算を繰り返して光軸の位置と方向を追っていくことにより、a1 をRa 、Rb 、Rc 、Tおよびnの関数として求めることができる。その結果、a1 =0となる条件として以下の式が得られる。
Figure 2005322813
一例として、大量に生産されている中心波長785nmのLDからの光を、格子周波数1/d=1800本/mmの回折格子によって形成される外部共振器を用いて±15nmの広い範囲で波長を掃引し、一般的によく用いられるBK7ガラスで作られたプリズムによって光軸補正をすることを考える。この場合、波長λに対する回転角θは
Figure 2005322813
で与えられる。波長780±15nmにおいては、−1.13°<θ<+1.05°となりθ≪1radの条件を満たしている。屈折率nは光波長に依存するが、BK7ガラスで作られたプリズムを用いる場合、可視および赤外領域で±15nm程度の波長範囲であれば一定とみなすことができる。実際、波長780±15nmにおいては小数点以下第2位までの値は変化せずn=1.51となる。このとき、T=6.7mm、Rb =10mm、Rc −Ra =−0.33mmとすれば式(4)を満たす。これらの条件を満足するためには、例えば、互いに等しい2つの辺の長さが13.8mmの直角二等辺三角形を底面に持つ三角柱形状のプリズムを回折格子に隣接して設置すればよい。そのように構成した場合、全体の光学系を約5cm×5cmの基板の上に収めることができ、波長可変のレーザー光源としては極めてコンパクトである。また、ここでは光学部品メーカーが標準品として市販している三角プリズムを例に用いたが、光が通過するプリズムの3つの面の位置が式(4)を満たしていればどのような形状でもよい。従って、光が通らない部分を切り落としてさらにコンパクトにすることも可能である。
従来のミラーを用いた装置でも、回転角θに対してミラーの位置と角度をコンピューター制御によって調整すれば、出力光の光軸の平行移動を抑制することができるだろう。しかしながら、コンピューター制御に頼ればコストがかかり、システムが複雑になる上、外部にコンピューターを配置するためのスペースが必要となる。加えて、ミラーの位置を動かすためにモーターなどによる微動システムが必要になるので、コストがさらに高くなる上にECDLのシステムが大きくなってしまう。コンピューター制御に頼らない本発明は、高い性能を有するリトロー型ECDLの光軸を非常に簡便かつ安価に、かつ的確に補正でき、そのうえ全体をコンパクトにできるという点で極めて有効である。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
本発明のプリズムを用いたリトロー型ECDLにおける光軸のずれの補正装置は、原子・分子の分光やレーザー冷却、半導体量子ドットの分光、および量子情報処理などの分野に利用可能である。
本発明の実施例を示すプリズムを用いたリトロー型ECDLの模式図である。 本発明の実施例を示すプリズムを用いたリトロー型ECDLの動作の説明図である。 従来のリトロー型ECDLの模式図である。 従来のリットマン型ECDLの模式図である。 ミラーを用いるリトロー型ECDLの光軸ずれの補正装置の模式図である。
符号の説明
31 半導体レーザー(LD)
32 コリメートレンズ
33 回折格子
34 回折格子の回転軸
35 プリズム
36 治具
37 入射光
38 0次回折光
39 出力光

Claims (4)

  1. リトロー型外部共振器半導体レーザーにおける光軸のずれの補正方法において、
    (a)回折格子とプリズムとを治具で所定の配置となるように一体的に固定し、
    (b)前記回折格子とプリズムの回転軸での回転により、入射光の波長を変化させるとともに、該波長の変化によっても出力光の光軸が不変であることを特徴とするリトロー型外部共振器半導体レーザーにおける光軸のずれの補正方法。
  2. (a)レーザー光を入射する手段と、
    (b)前記レーザー光が入射する回折格子とプリズムとを所定の配置となるように一体的に固定する治具と、
    (c)前記回折格子とプリズムとを一体的に回転可能な回転軸とを具備することを特徴とするリトロー型外部共振器半導体レーザーにおける光軸のずれの補正装置。
  3. 請求項2記載のリトロー型外部共振器半導体レーザーにおける光軸のずれの補正装置において、前記プリズムは底面が直角二等辺三角形の柱形状であることを特徴とするリトロー型外部共振器半導体レーザーにおける光軸のずれの補正装置。
  4. 請求項3記載のリトロー型外部共振器半導体レーザーにおける光軸のずれの補正装置において、前記回折格子の格子面と前記柱形状のプリズムの直角二等辺三角形の斜面にあたる面とが平行に配置されることを特徴とするリトロー型外部共振器半導体レーザーにおける光軸のずれの補正装置。
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