JP2005320947A - 摺動部材及び摺動部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】過酷な摩擦条件においても低摩擦性、耐摩耗性を有する摺動部材及び摺動部材の製造方法の提供。
【解決手段】周期律表第IIIb族元素及び第IVb族元素から選択される少なくとも1つの元素を主要構成成分とする非晶質相を母相とし、母相中に金属炭化物を主要構成成分とするナノサイズ径の微細結晶相粒を分散させた被膜を基材上に被覆してなる摺動部材。被膜は、プラズマイオン注入成膜法により金属イオン及び反応ガスイオンを含むプラズマイオンと基材とを接触させることにより形成することが好ましい。
【選択図】なし
【解決手段】周期律表第IIIb族元素及び第IVb族元素から選択される少なくとも1つの元素を主要構成成分とする非晶質相を母相とし、母相中に金属炭化物を主要構成成分とするナノサイズ径の微細結晶相粒を分散させた被膜を基材上に被覆してなる摺動部材。被膜は、プラズマイオン注入成膜法により金属イオン及び反応ガスイオンを含むプラズマイオンと基材とを接触させることにより形成することが好ましい。
【選択図】なし
Description
本発明は、各種産業機械、精密機械、輸送機器等に使用する摺動部材及び摺動部材の製造方法に関する。
近年、各種産業機械、精密機械、輸送機器等に使用する摺動部材、特に各種産業機械、精密機械、輸送機器等の内燃機関に使用する摺動部材について耐摩耗性の向上、摩擦損失の低減が求められている。
例えば、自動車用のガソリンエンジンでは、希薄燃焼と可動動弁系の組合せ、および筒内噴射燃焼の採用により、低燃費と高出力の両立が図られている。したがって、自動車用摺動部材についても、摩擦損失の低減、軽量化による慣性抵抗の低減および伝達効率の向上が求められている。特に、エンジンの摺動部材であるピストン、コンロッド、クランク、ピストンリング、動弁系のカム、フォロアなどは摩擦損失の低減と軽量化、材料変更に伴う摩擦量低減が要求されるため、従来から種々の表面処理が多用されてきた。
この中でピストンリングについては、耐摩耗特性を付与することを目的として、摺動面に硬質クロムめっき層を形成させたピストンリングが内燃機関用部品として従来から多用されてきた。ところで、近年、内燃機関がますます高速化、高出力化する傾向にあり、使用条件もますます過酷なものとなってきている。そのため、ピストンリングなどでは、例えば、特開平7−286261号公報(特許文献1)では、CrNとCr2Nとの混合からなる被膜が開示されており、該被膜のビッカース硬さはHv1700程度である。
一方、動弁系であるカム・シムについては、カムでは合金鋳鉄、シムでは合金鋼の浸炭焼入れ材が一般には使用されている。表面粗さの低減を図るため、シムに高硬度薄膜をコーティングした例が、特開平5−163909号公報(特許文献2)に開示されている。これは、シムに形成された高硬度の被膜により相手側のカム面を鏡面化して摩擦抵抗を低減するものであり、該高硬度薄膜としてTiNが好適である旨記載されている。
ピストンは、ピストンリング溝が高温、高圧下で潤滑不良となりエンジン摩擦損失の中で1/2を占めるほど大きく、リング溝部の耐摩擦性向上のためセラミックファイバを添加したアルミ合金を用いたりしている。また、別途オイルをジェットで送り込み潤滑性を向上させる方法も検討されている。
このように、ピストン、ピストンリング、シムの耐摩耗性を向上するためにピストンリングではクロムめっきに加え、CrN被膜等、シムではTiN被膜等が検討されてきた。
しかしながら、これらの被膜は、上述の低燃費と高出力化するエンジンに求められる、さらなる摩擦損失の低減、軽量化による慣性抵抗の低減および伝達効率の向上といった要求から来る過酷な条件では十分な耐久性が見込めなかった。
また、自動車以外の内燃機関でも同様に過酷な条件が求められており、高耐久性の摺動部材が求められている。
本発明は、過酷な摩擦条件においても低摩擦性、耐摩耗性を有する摺動部材及び摺動部材の製造方法である。
本発明は、基材上に被膜を形成した摺動部材であって、周期律表第IIIb族元素及び第IVb族元素から選択される少なくとも1つの元素を主要構成成分とする非晶質相を母相とし、前記母相中に金属炭化物を主要構成成分とするナノサイズ径の微細結晶相粒を分散させた被膜を前記基材上に被覆してなる。
また、前記摺動部材において、前記被膜中の前記微細結晶相の割合は1%〜30%の範囲にあることが好ましい。
また、前記摺動部材において、前記微細結晶相の粒径は1nm〜100nmの範囲にあることが好ましい。
また、前記摺動部材において、前記被膜のヌープ硬度は1500〜5000の範囲にあることが好ましい。
また、前記摺動部材において、前記非晶質相は炭素を主要構成成分とすることが好ましい。
また、前記摺動部材において、前記金属炭化物は、周期律表第IVa族元素、第Va族元素及び第VIa族元素から選択される少なくとも1つの元素の炭化物であることが好ましい。
また、前記摺動部材において、前記被膜は、金属イオン及び反応ガスイオンを含むプラズマイオンと、前記基材と、を接触させるプラズマイオン注入成膜法により形成されることが好ましい。
また、本発明は、基材上に被膜を形成した摺動部材であって、周期律表第IIIb族元素及び第IVb族元素から選択される少なくとも1つの元素を主要構成成分とする非晶質相と、金属炭化物を主要構成成分とする結晶相と、を有する被膜を前記基材上に被覆してなり、前記被膜は、金属イオン及び反応ガスイオンを含むプラズマイオンと、前記基材と、を接触させるプラズマイオン注入成膜法により形成される。
また、本発明は、前記摺動部材の製造方法であって、金属イオン及び反応ガスイオンを含むプラズマイオンと、前記基材と、を接触させるプラズマイオン注入成膜法により基材上に被膜を形成する。
また、本発明は、基材上に被膜を形成した摺動部材の製造方法であって、周期律表第IIIb族元素及び第IVb族元素から選択される少なくとも1つの元素を主要構成成分とする非晶質相と、金属炭化物を主要構成成分とする結晶相と、を有する被膜を前記基材上に被覆し、前記被膜を、金属イオン及び反応ガスイオンを含むプラズマイオンと、前記基材と、を接触させるプラズマイオン注入成膜法により形成する。
本発明において、周期律表第IIIb族元素及び第IVb族元素から選択される少なくとも1つの元素を主要構成成分とする非晶質相と、金属炭化物を主要構成成分とする結晶相と、を有する被膜を基材上に形成することにより、過酷な摩擦条件においても低摩擦性、耐摩耗性を有する摺動部材及び摺動部材の製造方法を提供する。
本発明の実施の形態について以下説明する。本発明の実施の形態に係る摺動部材は、周期律表第IIIb族元素及び第IVb族元素から選択される少なくとも1つの元素を主要構成成分とする非晶質相を母相とし、前記母相中に金属炭化物を主要構成成分とするナノサイズ径の微細結晶相粒を分散させた被膜を前記基材上に被覆してなる。
非晶質相の主要構成成分である周期律表第IIIb族元素としては、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムが挙げられ、第IVb族元素としては、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛が挙げられるが、炭素、ケイ素であることが好ましく、炭素であることがより好ましい。炭素及びケイ素は有害物質ではないことから好ましく、炭素はDLC(Diamond like carbon)構造を取り、低摩擦を示すことからより好ましい。
結晶相の主要構成成分である金属炭化物としては、周期律表第IVa族元素、第Va族元素、第VIa族元素、第VIIa族元素、及び第VIII族元素等から選択される少なくとも1つの金属元素の炭化物が挙げられるが、第IVa族元素、第Va族元素及び第VIa族元素から選択される少なくとも1つの元素の炭化物であることが好ましい。第IVa族元素としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウムが挙げられ、第Va族元素としては、バナジウム、ニオブ、タンタルが挙げられ、第VIa族元素としては、クロム、モリブデン、タングステンが挙げられる。低摩擦を示すことから、チタン、クロム、モリブデン、タングステンであることがより好ましく、チタン、タングステンであることがさらに好ましい。
本実施形態において、摺動部材を構成する被膜は、炭素等の周期律表第IIIb族元素及び第IVb族元素から選択される少なくとも1つの元素を主要構成成分とする非晶質相を母相とし、この母相中に金属炭化物を主要構成成分とするナノサイズ径の微細結晶相粒が分散されている。炭素等の非晶質相中に金属炭化物を主要構成成分とする微細結晶相粒を分散させた被膜においては、被膜の破壊で重要な転位の移動は結晶相内で起こる。転位が結晶粒界に移動したとしても結晶粒界が非晶質相であるために転位の移動がそこで阻止される。したがって被膜の硬度(強度)が上昇する。
その他の破壊に関わる重要な要素としてはクラックの発生が挙げられるが、本実施形態においてはクラックの発生は非晶質相で起こると考えられ、クラックの大きさは結晶粒界のため限定される。このようにして高硬度(高強度)の被膜が得られ、この被膜を基材上に被覆してなる摺動部材は耐摩耗性を向上することができる。
被膜において、炭素等の非晶質相中の、金属炭化物を主要構成成分とする微細結晶相粒の分散状態については特に制限はなく、均一であっても不均一であってもよい。転位の移動やクラックの発生等をより効果的に抑制するためには、炭素等の非晶質相中に金属炭化物を主要構成成分とする微細結晶相粒を摺動面内に均一に分散させることが好ましい。また、被膜の膜厚方向においても微細結晶相粒を均一に分散させることが好ましい。もちろん均一といっても、微細結晶相粒が一部凝集した状態を含んでいてもよい。
微細結晶相粒の形状は、球状、板状、繊維状等が挙げられ、特に制限はないが、球状に近い形状であることが好ましい。
炭素等の非晶質中に金属炭化物よりなる微細結晶相を分散させた被膜において、結晶相の割合は1%〜30%の範囲にあり、残部を非晶質相とすることが好ましい。結晶相の割合としてより好ましくは、2%〜25%の範囲であり、さらに好ましくは3%〜15%である。結晶相が1%未満では、非晶質相が多すぎてクラックが大きくなりすぎ硬度が低下することがある。また、結晶相が30%より多いと強度の弱いナノサイズ径の金属が多く分散する結果となり、十分な硬度(強度)が得られないことがある。
ここで、結晶相の割合は、透過型電子顕微鏡による観察結果に基づいて算出した。例えば、所定の面積内の結晶相の面積を画像解析等により算出することによって求めることができる。所定の面積は、微細結晶相粒の粒径に応じて決めればよい。例えば、微細結晶相粒の粒径が数十nm〜数百nmの場合は、1μm×1μm内の結晶相の面積を、微細結晶相粒の粒径が数nmの場合は、100nm×100nm、50nm×50nm内の結晶相の面積を求める。
さらに、微細結晶相粒の粒径をナノサイズ径、すなわち1μm未満、好ましくは1nm〜100nmの大きさに制限することにより、転位の結晶粒内発生をできるだけ抑え、結晶粒微細化による硬度上昇により耐摩耗性を向上することができる。結晶粒径が1nm未満であると結晶粒界が長くなりクラックが入り易く、かえって硬度が向上しないことがある。また、結晶粒径が100nmより大きいと、特に1μm以上であると、結晶相が塑性変形しやすくなり、十分な硬度(強度)が得られないことがある。結晶粒径のさらに好ましい範囲は、1nm〜20nmである。
ここで、微細結晶相粒の粒径は微細結晶相粒の長径のことをいい、透過型電子顕微鏡による観察結果に基づいて算出した。例えば、所定の個数(例えば、10個)の結晶相の長径を算出し、これを平均した値より求めることができる。
さらに、被膜のヌープ硬度を規定することが好ましい。好ましくは被膜硬度をヌープ硬度1500〜5000、より好ましくはヌープ硬度1500〜3000の範囲にする。これにより、耐摩耗性の向上と、結晶相が多量になることによる摩耗量増大とのバランスを取ることができ、摺動部材としてより効果的となる。
被膜の膜厚は、特に制限はないが、1μm〜20μmの範囲にあることが好ましく、1μm〜5μmの範囲にあることがより好ましく、1μm〜3μmの範囲にあることがさらに好ましい。被膜の膜厚が1μm未満であると膜の性能が十分に発揮されにくく、20μmより厚いと均一な膜を作成するのが困難であり、また膜の作成に時間がかかることになる。
被膜を形成する基材としては、アルミニウム、アルミニウム合金、フェライト、SUS等の金属;Si3N4等のセラミックス等が挙げられる。
本実施形態に係る摺動部材において、前記被膜の形成方法としては、炭素等の非晶質相中に金属炭化物を主要構成成分とするナノサイズ径の微細結晶相粒を分散させた被膜を基材上に被覆することができる方法であれば特に制限はないが、例えば、UBM(非平衡マグネトロン)スパッタ成膜法やプラズマイオン注入成膜法等が挙げられる。この中でも、金属イオン及び反応ガスイオンを含むプラズマイオンと、前記基材と、を接触させるプラズマイオン注入成膜法により形成されることが好ましい。
プラズマイオン注入成膜装置1の一例の概略を図1に示す。プラズマイオン注入成膜装置1は、高電圧パルス発生部10、フィードスルー20、チャンバ30、スパッタ発生源40、金属アーク蒸発源50、ガス供給口60等を含んで構成される。
ガス供給口60よりガスを導入し、スパッタ発生源40及び金属アーク蒸発源50等の金属イオン発生源から金属イオンを発生させ、減圧下でプラズマを生成させる。処理物である基材100に高電圧パルス発生部10から発生する電圧パルスをかけることにより、周辺のプラズマイオンを加速して基材100上に注入成膜することができる。この製法は、プラズマイオン注入製膜法と呼ばれている。高密度のプラズマで基材100に全方向からイオン注入できることに特徴がある。
ガスとしては、周期律表第IIIb族元素及び第IVb族元素を含むガス、例えば、メタンガス等の炭化水素系ガス;シリコンガス等が挙げられ、母相である非晶質相の主要構成成分として使用する元素に応じて選択することができる。
スパッタ発生源40及び金属アーク蒸発源50等の金属イオン発生源に使用するターゲットとしては、金属のターゲット、例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン等のターゲットが挙げられる。
このようなプラズマイオン注入成膜法により、炭化水素等のガス雰囲気中で金属チタンまたは金属タングステン等の金属蒸気を発生させてプラズマイオンを生成し、高密度のプラズマ中から加速されたイオン衝撃により、炭素等の非晶質相の母相中にチタン、タングステン等の金属イオンを核とした金属炭化物を主要構成成分とするナノサイズ径の微細炭化物結晶相を形成することができる。
また、本発明の別の実施形態において、摺動部材は、周期律表第IIIb族元素及び第IVb族元素から選択される少なくとも1つの元素を主要構成成分とする非晶質相と、金属炭化物を主要構成成分とする結晶相と、を有する被膜を前記基材上に被覆してなり、前記被膜は、金属イオン及び反応ガスイオンを含むプラズマイオンと、前記基材と、を接触させるプラズマイオン注入成膜法により形成される。
この場合、摺動部材は、周期律表第IIIb族元素及び第IVb族元素から選択される少なくとも1つの元素を主要構成成分とする非晶質相を母相とし、前記母相中に金属炭化物を主要構成成分とするナノサイズ径の微細結晶相粒を分散させた被膜を前記基材上に被覆してなることが好ましい。
以上のような実施形態により、各種産業機械、精密機械、輸送機器等に使用する摺動部材、特に各種産業機械、精密機械、輸送機器等の内燃機関に使用する摺動部材について耐摩耗性の向上、摩擦損失の低減を実現することができる。また、過酷な摩擦条件においても低摩擦性、耐摩耗性を有する摺動部材を実現することができる。特に、これらの被膜は、ピストン、ピストンリング、シム、カム等のオイル潤滑を主とする自動車エンジン用摺動部材に適用すると効果が顕著に現われる。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
基材としてステンレス製円板(材質:SUS440C、大きさ:直径3.0cm)を用い、結晶相を構成する金属の炭化物としてタングステンの炭化物を用い、非晶質相を構成する元素として炭素を用い、プラズマイオン注入成膜法にて成膜した。具体的には、金属タングステンと炭素のターゲットを用意し、スパッタリング蒸発源を使用して、炭化水素ガスとしてCH4ガスを導入して、プラズマイオン注入成膜装置(株式会社イオン工学センター製、全方位イオン注入装置)において以下の条件で成膜した。このとき、炭素とタングステンの混合割合は88:12とした。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、タングステン炭化物(WC)の微細結晶相粒が分散する被膜(被膜の膜厚は約2μm)を得ることができた。
基材としてステンレス製円板(材質:SUS440C、大きさ:直径3.0cm)を用い、結晶相を構成する金属の炭化物としてタングステンの炭化物を用い、非晶質相を構成する元素として炭素を用い、プラズマイオン注入成膜法にて成膜した。具体的には、金属タングステンと炭素のターゲットを用意し、スパッタリング蒸発源を使用して、炭化水素ガスとしてCH4ガスを導入して、プラズマイオン注入成膜装置(株式会社イオン工学センター製、全方位イオン注入装置)において以下の条件で成膜した。このとき、炭素とタングステンの混合割合は88:12とした。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、タングステン炭化物(WC)の微細結晶相粒が分散する被膜(被膜の膜厚は約2μm)を得ることができた。
[成膜条件]
スパッタ電力:3.5kW、パルスバイアス電圧:−20kVおよび−50V、炭化水素ガス圧力:3Pa
スパッタ電力:3.5kW、パルスバイアス電圧:−20kVおよび−50V、炭化水素ガス圧力:3Pa
被膜の膜厚は、次の方法で測定した。シリコンウェハに一部マスキングをし、実施例1で作成した試験片と同時に成膜をした。成膜後、マスキングを剥し、粗さ計(東京精密表面形状測定機サーフコム1400V)で、成膜部と、マスキングをしていた非成膜部との段差より膜厚を求めた。
(実施例2)
金属タングステンのターゲットの代わりに金属チタンのターゲットを使用した以外は実施例1と同様にして被膜を形成した。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、チタン炭化物の微細結晶相粒が分散する被膜を得ることができた。
金属タングステンのターゲットの代わりに金属チタンのターゲットを使用した以外は実施例1と同様にして被膜を形成した。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、チタン炭化物の微細結晶相粒が分散する被膜を得ることができた。
(実施例3)
金属タングステンのターゲットの代わりに金属クロムのターゲットを使用した以外は実施例1と同様にして被膜を形成した。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、クロム炭化物の微細結晶相粒が分散する被膜を得ることができた。
金属タングステンのターゲットの代わりに金属クロムのターゲットを使用した以外は実施例1と同様にして被膜を形成した。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、クロム炭化物の微細結晶相粒が分散する被膜を得ることができた。
(実施例4)
金属タングステンのターゲットの代わりに金属モリブデンのターゲットを使用した以外は実施例1と同様にして被膜を形成した。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、モリブデン炭化物の微細結晶相粒が分散する被膜を得ることができた。
金属タングステンのターゲットの代わりに金属モリブデンのターゲットを使用した以外は実施例1と同様にして被膜を形成した。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、モリブデン炭化物の微細結晶相粒が分散する被膜を得ることができた。
(比較例1)
実施例1で使用したものと同じステンレス製円板(SUS440C)に何も被膜しないものを比較例1とした。
実施例1で使用したものと同じステンレス製円板(SUS440C)に何も被膜しないものを比較例1とした。
(比較例2)
実施例1で使用したものと同じステンレス製円板(SUS440C)へ、アーク式イオンプレーティング法にてアーク式イオンプレーティング装置(株式会社イオン工学センター製、イオンプレーティングN型)を使用して、下記の条件でTiNの被膜(膜厚約2μm)を形成した。
実施例1で使用したものと同じステンレス製円板(SUS440C)へ、アーク式イオンプレーティング法にてアーク式イオンプレーティング装置(株式会社イオン工学センター製、イオンプレーティングN型)を使用して、下記の条件でTiNの被膜(膜厚約2μm)を形成した。
[成膜条件]
カソード原料:Ti、アーク電流:80A、バイアス電圧:−200V、窒素ガス流量:600cc
カソード原料:Ti、アーク電流:80A、バイアス電圧:−200V、窒素ガス流量:600cc
(比較例3)
比較例2と同様にして、TiNの代わりにCrNの被膜を形成した。
比較例2と同様にして、TiNの代わりにCrNの被膜を形成した。
(比較例4)
比較例2と同様にして、TiNの代わりにDLCの被膜を形成した。
比較例2と同様にして、TiNの代わりにDLCの被膜を形成した。
(比較例5)
タングステン炭化物と炭素の複合被膜をPVD法の1種であるアーク式イオンプレーティング法にて、アーク式イオンプレーティング装置(株式会社イオン工学センター製、イオンプレーティングN型)を使用して、実施例1で使用したものと同じステンレス製円板(SUS440C)へ以下の条件で被膜(膜厚約2μm)を形成した。このとき、炭素とタングステンの混合割合は88:12とした。その結果、炭素が非晶質相、タングステン炭化物が結晶相であり、WC結晶相を母相とする複合被膜を得ることができた。
タングステン炭化物と炭素の複合被膜をPVD法の1種であるアーク式イオンプレーティング法にて、アーク式イオンプレーティング装置(株式会社イオン工学センター製、イオンプレーティングN型)を使用して、実施例1で使用したものと同じステンレス製円板(SUS440C)へ以下の条件で被膜(膜厚約2μm)を形成した。このとき、炭素とタングステンの混合割合は88:12とした。その結果、炭素が非晶質相、タングステン炭化物が結晶相であり、WC結晶相を母相とする複合被膜を得ることができた。
[成膜条件]
アーク電流:80A、バイアス電圧:−200V、窒素ガス流量:600cc
アーク電流:80A、バイアス電圧:−200V、窒素ガス流量:600cc
<摩擦摩耗試験>
実施例1〜4、比較例1〜5でステンレス製円板(SUS440C)に形成した被膜について、SUS440C製ボールによりボールオンディスク摩擦摩耗試験装置(荷重100g試験用装置:新東科学株式会社製、トルク式摩擦抵抗測定機HEIDON−20,荷重200g試験用装置:ORIENTEC社製、摩擦摩耗試験機、FRICTORON MODEL EFM−III−EN)により摩擦摩耗試験を実施した(図2参照)。摩擦摩耗試験条件を表1に示す。試験結果を表2、表3に示す。
実施例1〜4、比較例1〜5でステンレス製円板(SUS440C)に形成した被膜について、SUS440C製ボールによりボールオンディスク摩擦摩耗試験装置(荷重100g試験用装置:新東科学株式会社製、トルク式摩擦抵抗測定機HEIDON−20,荷重200g試験用装置:ORIENTEC社製、摩擦摩耗試験機、FRICTORON MODEL EFM−III−EN)により摩擦摩耗試験を実施した(図2参照)。摩擦摩耗試験条件を表1に示す。試験結果を表2、表3に示す。
オイル(5W−30)の給油の有無の両方の環境で評価を実施したところ、比較例1のSUS404Cに対して、比較例2〜4のTiN、CrN、DLCでコーティングしたものは摩耗量が1/2以下に低減していることがわかる。それに対し、実施例1の被膜をコーティングしたものは、さらに摩耗量が低減し、SUS404Cに対して1/5以下となっていることがわかる。燃料直射噴射やEGR(排ガス再循環)が適用されたときの条件としては現状の5倍以上という過酷な条件に耐えることが必要と考えられており、本摩擦試験において相対摩耗量がそれぞれ12〜15であり、実施例1の被膜をコーティングした摺動部材はその条件を満足することがわかった。また、比較例5の被膜は、相対摩耗量、摩擦係数が実施例1〜4より高くなっている。
<電子顕微鏡観察>
実施例1で形成した被膜の透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JEM4000−EX−II型)による観察を実施した。結果を図3に示す。観察用のサンプルは、成膜したサンプルを接着層を介して貼り合わせ、サンプル断面を研磨して作成した。実施例1で作成した被膜には、非晶質相の中に結晶相の存在が見られる。結晶相の粒径は10nm〜20nmであり、ナノサイズの微結晶相粒が分散して生成していることがわかる。WCの結晶相と炭素の非晶質相の複合被膜であると考えられる。これは、透過型電子顕微鏡による観察でも裏付けられ、WC結晶相については格子像が観察されたが、炭素非晶質相には格子像は観察されなかった。
実施例1で形成した被膜の透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JEM4000−EX−II型)による観察を実施した。結果を図3に示す。観察用のサンプルは、成膜したサンプルを接着層を介して貼り合わせ、サンプル断面を研磨して作成した。実施例1で作成した被膜には、非晶質相の中に結晶相の存在が見られる。結晶相の粒径は10nm〜20nmであり、ナノサイズの微結晶相粒が分散して生成していることがわかる。WCの結晶相と炭素の非晶質相の複合被膜であると考えられる。これは、透過型電子顕微鏡による観察でも裏付けられ、WC結晶相については格子像が観察されたが、炭素非晶質相には格子像は観察されなかった。
<エンジンオイルの有無での摩擦係数の比較>
エンジンオイルには炭化水素系オイルだけではなく、摩擦係数の低減、耐摩耗性の向上のための各種添加剤を添加しているため、摺動面において添加剤が析出し形成される膜により潤滑効果が上がる。エンジンオイルの中の添加剤は、固体接触部の面積を減少させるように作用するために摩擦係数が低減できるといわれている。
エンジンオイルには炭化水素系オイルだけではなく、摩擦係数の低減、耐摩耗性の向上のための各種添加剤を添加しているため、摺動面において添加剤が析出し形成される膜により潤滑効果が上がる。エンジンオイルの中の添加剤は、固体接触部の面積を減少させるように作用するために摩擦係数が低減できるといわれている。
比較例4のDLC膜では、エンジンオイル中での摩擦係数は0.1であり、無潤滑下の摩擦係数0.1と変わらず、摩擦係数の低下は見られなかった。一方、実施例1〜4において形成したナノサイズ径の金属炭化物の微細結晶相粒を均一に分散させた非晶質炭素被膜は、エンジンオイル中での摩擦係数は0.03〜0.05であり、無潤滑下の摩擦係数0.1に比べてエンジンオイル中での摩擦係数低減効果が見られている。この効果を検証するため、実施例1の被膜について、添加剤の含有があるエンジンオイル(SJ 5W−30)と、添加剤の含有がないエンジンオイル(5W−30)とを使用し、ボールオンディスク摩擦摩耗試験装置(荷重100g試験用装置:新東科学株式会社製、トルク式摩擦抵抗測定機HEIDON−20,荷重200g試験用装置:ORIENTEC社製、摩擦摩耗試験機、FRICTORON MODEL EFM−III−EN)により摩擦係数を比較した結果を図4に示す。
添加剤の添加有りのオイルを使用した場合、摩擦係数は低下していくが、添加剤なしのエンジンオイルを使用した場合は、時間経過と共に摩擦係数は増加していく傾向が見られた。摩擦試験後の摺動痕表面には、二次イオン質量分析(SIMS)からZn、Ca、S、P等の添加剤含有元素が多く検出された。薄膜表面に均一に分散しているナノサイズ微細炭化物結晶が、エンジンオイル中で添加剤の吸着サイトとなって効果が上がったものと考えられる。
<結晶相の割合と相対摩耗量との関係>
次に実施例5〜10として、実施例1のタングステンの混合割合を変更し、結晶相、非晶質相の割合を変えた。
次に実施例5〜10として、実施例1のタングステンの混合割合を変更し、結晶相、非晶質相の割合を変えた。
(実施例5〜10)
金属のパルス電圧を変えることにより炭素とタングステンの混合割合を変えた以外は実施例1と同様にして、被膜を形成した。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、タングステン炭化物の微細結晶相粒が分散する被膜を得ることができた。
金属のパルス電圧を変えることにより炭素とタングステンの混合割合を変えた以外は実施例1と同様にして、被膜を形成した。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、タングステン炭化物の微細結晶相粒が分散する被膜を得ることができた。
実施例5〜10において結晶相、非晶質相の割合を変えて形成した被膜について、上記と同様にして相対摩耗量と摩擦係数とを測定した。結果を表4に示す。また、そのときの結晶相の割合と相対摩耗量との関係を図5に示す。その結果、結晶相の割合が1%では、オイル給油環境下での相対摩耗量が10となり、エンジンの高回転、高出力化に伴う、過酷な摩擦摩耗条件でも、十分な摩擦損失の低減が望める低摩擦、耐摩耗性に優れたエンジン内部の駆動系および動弁系摺動部材には十分な耐久性が得られる。また、結晶相を増加して3%とすると相対摩耗量は10以下となり、上記過酷な条件でのさらなる耐久性が得られる。一方、結晶相の割合が20%以上では、相対摩耗量は17であり、上記過酷な条件での耐久性は得られるが、さらに結晶相の割合を増加して30%以上とすると相対摩耗量が30以上となり、耐久性が悪化する傾向にある。このことから、被膜中の好ましい結晶相の割合を1%〜30%とした。しかし、結晶相の割合を30%以上としても、比較例1に比べると相対摩耗量はまだ低い値であり、比較例1〜5に比べると、摩擦係数は低くなっている。
<結晶相の割合と被膜硬度との関係>
次に実施例11〜15として、実施例2のチタンの混合割合を変更し、結晶相、非晶質相の割合を変えた。
次に実施例11〜15として、実施例2のチタンの混合割合を変更し、結晶相、非晶質相の割合を変えた。
(実施例11〜15)
炭素とチタンの混合割合を変えた以外は実施例2と同様にして、被膜を形成した。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、チタン炭化物の微細結晶相粒が分散する被膜を得ることができた。
炭素とチタンの混合割合を変えた以外は実施例2と同様にして、被膜を形成した。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、チタン炭化物の微細結晶相粒が分散する被膜を得ることができた。
実施例11〜15において結晶相、非晶質相の割合を変えて形成した被膜について、ヌープ硬度測定装置(島津製作所製、マイクロ硬度計HMV−2000型)によりヌープ硬度を測定した。結果を表5に示す。また、そのときの結晶相の割合とヌープ硬度との関係を図6に示す。上述した結晶相/非晶質相の割合と相対摩耗量との関係の説明にもあるように、結晶相/非晶質相の割合が適当な範囲となったときに上記過酷な条件での耐久性が得られる。
次に、実施例16〜21として、成膜条件を変えることにより被膜のヌープ硬度を変えて被膜を形成した。
<被膜硬度と相対摩耗量の関係>
(実施例16)
成膜条件を下記のようにした以外は、実施例1と同様にして被膜を形成した。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、タングステン炭化物の微細結晶相粒が分散する被膜を得ることができた。
(実施例16)
成膜条件を下記のようにした以外は、実施例1と同様にして被膜を形成した。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、タングステン炭化物の微細結晶相粒が分散する被膜を得ることができた。
[成膜条件]
パルス電圧:1kV、ターゲット電力:0.1kW、炭化水素ガス:50ccm、繰返しパルス数:1000pps、気圧:1Pa
パルス電圧:1kV、ターゲット電力:0.1kW、炭化水素ガス:50ccm、繰返しパルス数:1000pps、気圧:1Pa
(実施例17)
成膜条件を下記のようにした以外は、実施例1と同様にして被膜を形成した。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、タングステン炭化物の微細結晶相粒が分散する被膜を得ることができた。
成膜条件を下記のようにした以外は、実施例1と同様にして被膜を形成した。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、タングステン炭化物の微細結晶相粒が分散する被膜を得ることができた。
パルス電圧:1kV、ターゲット電力:0.2kW、炭化水素ガス:50ccm、繰返しパルス数:1000pps、気圧:1Pa
(実施例18)
成膜条件を下記のようにした以外は、実施例1と同様にして被膜を形成した。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、タングステン炭化物の微細結晶相粒が分散する被膜を得ることができた。
成膜条件を下記のようにした以外は、実施例1と同様にして被膜を形成した。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、タングステン炭化物の微細結晶相粒が分散する被膜を得ることができた。
パルス電圧:3kV、ターゲット電力:0.3kW、炭化水素ガス:50ccm、繰返しパルス数:1000pps、気圧:1Pa
(実施例19)
成膜条件を下記のようにした以外は、実施例1と同様にして被膜を形成した。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、タングステン炭化物の微細結晶相粒が分散する被膜を得ることができた。
成膜条件を下記のようにした以外は、実施例1と同様にして被膜を形成した。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、タングステン炭化物の微細結晶相粒が分散する被膜を得ることができた。
パルス電圧:5kV、ターゲット電力:0.3kW、炭化水素ガス:50ccm、繰返しパルス数:1000pps、気圧:1Pa
(実施例20)
成膜条件を下記のようにした以外は、実施例1と同様にして被膜を形成した。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、タングステン炭化物の微細結晶相粒が分散する被膜を得ることができた。
成膜条件を下記のようにした以外は、実施例1と同様にして被膜を形成した。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、タングステン炭化物の微細結晶相粒が分散する被膜を得ることができた。
パルス電圧:10kV、ターゲット電力:0.5kW、炭化水素ガス:50ccm、繰返しパルス数:1000pps、気圧:1Pa
(実施例21)
成膜条件を下記のようにした以外は、実施例1と同様にして被膜を形成した。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、タングステン炭化物の微細結晶相粒が分散する被膜を得ることができた。
成膜条件を下記のようにした以外は、実施例1と同様にして被膜を形成した。その結果、炭素が非晶質相の母相の中に、タングステン炭化物の微細結晶相粒が分散する被膜を得ることができた。
パルス電圧:10kV、ターゲット電力:0.5kW、炭化水素ガス:50ccm、繰返しパルス数:2000pps、気圧:1Pa
実施例16〜21においてヌープ硬度を変えた被膜について、上記と同様にしてヌープ硬度及び相対摩耗量を測定した。結果を表6に示す。そのときの被膜のヌープ硬度と相対摩擦量との関係を図7に示す。その結果、被膜のヌープ硬度が1000では相対摩擦量が30と大きく、上記過酷な条件では十分な耐久性は望みにくくなる。さらに硬度を上げ、1600とすると相対摩擦量が20と低下し、上記過酷な条件でも十分な耐久性が得られる。一方、硬度をさらに上げ、2000とすると相対摩擦量が10以下となり、上記過酷な条件でも耐久性があるが、さらに硬度を上昇し、5300とすると前述したように脆くなり、相対摩擦量がかえって増加して40以上となり、上記過酷な条件では十分な耐久性は望みにくくなる。これらの結果、好ましいヌープ硬度の範囲としては1500〜5000とした。
以上のように、本実施形態に係る摺動部材及び摺動部材の製造方法により、各種産業機械、精密機械、輸送機器等に使用する摺動部材、特に各種産業機械、精密機械、輸送機器等の内燃機関に使用する摺動部材について耐摩耗性を向上させ、摩擦損失を低減することができる。例えば、自動車用のエンジンオイル中では、従来のクロムめっき、TiNやCrNやDLC被膜を施した部材では耐久性が不十分である。CO2排出削減のための燃費向上の要求、DOHC化、ターボチャージャの装着、可変バルブタイミング機構等の採用等により高回転、高出力化する自動車エンジンの要求に適応するため、過酷な摩擦摩耗条件でも十分な摩擦損失の低減が望める低摩擦、耐摩耗製に優れたエンジン内部の駆動系および動弁系摺動部材等に適用することができる被膜を得ることができる。
1 プラズマイオン注入成膜装置、10 高電圧パルス発生部、20 フィードスルー、30 チャンバ、40 スパッタ発生源、50 金属アーク蒸発源、60 ガス供給口、100 基材。
Claims (10)
- 基材上に被膜を形成した摺動部材であって、
周期律表第IIIb族元素及び第IVb族元素から選択される少なくとも1つの元素を主要構成成分とする非晶質相を母相とし、前記母相中に金属炭化物を主要構成成分とするナノサイズ径の微細結晶相粒を分散させた被膜を前記基材上に被覆してなることを特徴とする摺動部材。 - 請求項1に記載の摺動部材であって、
前記被膜中の前記微細結晶相の割合は1%〜30%の範囲にあることを特徴とする摺動部材。 - 請求項1または2に記載の摺動部材であって、
前記微細結晶相の粒径は1nm〜100nmの範囲にあることを特徴とする摺動部材。 - 請求項1〜3のいずれか1つに記載の摺動部材であって、
前記被膜のヌープ硬度は1500〜5000の範囲にあることを特徴とする摺動部材。 - 請求項1〜4のいずれか1つに記載の摺動部材であって、
前記非晶質相は炭素を主要構成成分とすることを特徴とする摺動部材。 - 請求項1〜5のいずれか1つに記載の摺動部材であって、
前記金属炭化物は、周期律表第IVa族元素、第Va族元素及び第VIa族元素から選択される少なくとも1つの元素の炭化物であることを特徴とする摺動部材。 - 請求項1〜6のいずれか1つに記載の摺動部材であって、
前記被膜は、金属イオン及び反応ガスイオンを含むプラズマイオンと、前記基材と、を接触させるプラズマイオン注入成膜法により形成されることを特徴とする摺動部材。 - 基材上に被膜を形成した摺動部材であって、
周期律表第IIIb族元素及び第IVb族元素から選択される少なくとも1つの元素を主要構成成分とする非晶質相と、金属炭化物を主要構成成分とする結晶相と、を有する被膜を前記基材上に被覆してなり、
前記被膜は、金属イオン及び反応ガスイオンを含むプラズマイオンと、前記基材と、を接触させるプラズマイオン注入成膜法により形成されることを特徴とする摺動部材。 - 請求項1〜6のいずれか1つに記載の摺動部材の製造方法であって、
金属イオン及び反応ガスイオンを含むプラズマイオンと、前記基材と、を接触させるプラズマイオン注入成膜法により基材上に被膜を形成することを特徴とする摺動部材の製造方法。 - 基材上に被膜を形成した摺動部材の製造方法であって、
周期律表第IIIb族元素及び第IVb族元素から選択される少なくとも1つの元素を主要構成成分とする非晶質相と、金属炭化物を主要構成成分とする結晶相と、を有する被膜を前記基材上に被覆し、
前記被膜を、金属イオン及び反応ガスイオンを含むプラズマイオンと、前記基材と、を接触させるプラズマイオン注入成膜法により形成することを特徴とする摺動部材の製造方法。
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-
2004
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