JP2005312448A - スギ花粉症予防乃至治療用物質スクリーニング用標的物質及びその製法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 スギ花粉症を予防乃至治療するのに適切な物質を効果的にスクリーニングすることができるスクリーニング用標的物質を提供する。
【解決手段】 スギ花粉を食塩水溶液中に浸漬し、スギ花粉から当該水溶液中に30秒〜3分以内に溶出したプロテアーゼからなる。本プロテアーゼは、(a)分子量が約67,000、N末端配列をAla-Glu-Thr-Ala-Ala-Phe-Gly-Tyr-Thr-Val-Lys-Pro-Phe-からなり、(b)Suc-Ala-Ala-Pro-Phe-MCAを基質とした場合、ジイソプロピルフルオロフォスフェートが2mmol/L濃度以上で存在していれば加水分解しないが、モノヨード酢酸またはペプスタチンAが存在していても加水分解し、(c)pH7.4〜pH8.0の水溶液中でニューロテンシンのIle12-Leu13間で加水分解し、(d)pH7.4〜pH8.0の水溶液中でβ-エンドルフィンのThr6-Ser7間で加水分解する、という特性を有するプロテアーゼからなる。
【選択図】なし

Description

本発明は、スギ花粉症を予防乃至治療するための物質をスクリーニングするために用いる標的物質、及びその製法に関する。
従来、(1)スギ花粉がヒトの体内に侵入すれば、そのスギ花粉中の抗原性物質であるスギ花粉アレルゲンのために、それに対するイムノグロブリンE抗体を、ヒトの体内に産生し、その状態で、次にスギ花粉がヒトの体内に侵入すれば、そのスギ花粉中のスギ花粉アレルゲンとそれまでに産生されていたイムノグロブリンE抗体とが免疫反応を起こし、ヒトがアレルギー症状を呈することになり、これが、スギ花粉症であるとされ、従って、スギ花粉症の主因が、スギ花粉アレルゲンであるとされ、また、(2)上述したスギ花粉アレルゲンには、「Crypj-1」と称されているタンパク質でなるアレルゲンと「Crypj-2」と称されているタンパク質でなるアレルゲンとが存在するが、スギ花粉から、スギ花粉アレルゲン(「Crypj-1」、「Crypj-2」)中のT細胞エピトープのみからなる低分子のペプチドを精製し、そのペプチドを、ヒトに投与すれば、減感作の作用で、副作用を伴うことなしに、スギ花粉症を予防乃至治療することができるとされている、という知見(特許文献1参照)に基づき、スギ花粉症の患者を対象とした対症療法剤の研究が多々なされている。
特開2003−2897号公報
しかしながら、従来、スギ花粉症を予防乃至治療するに適切な物質をスクリーニングし、そのスクリーニングされた物質を以って、スギ花粉症を予防乃至治療する、という研究はほとんどなされていない。
それは、スギ花粉症を予防乃至治療するための物質をスクリーニングするために用いて効果的なスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の提案がなされていなかったことによる。
よって、本発明は、スギ花粉症を予防乃至治療するための物質をスクリーニングするために用いて効果的な、新規なスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質、及びその製法を提案せんとするものである。
本発明者等は、スギ花粉症を予防乃至治療するための物質をスクリーニングするために用いて効果的なスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質を提案すべく種々の実験を重ねたところ、
(1)スギ花粉を食塩を溶解している水溶液中に浸漬すれば、その食塩を溶解している水溶液中に、スギ花粉から、30秒〜3分以内でも、「プロテアーゼ」が溶出すること、従って、スギ花粉を食塩を溶解している水溶液中に浸漬することで、スギ花粉から食塩を溶解している水溶液中に30秒〜3分以内に溶出した「プロテアーゼ」を含有しているプロテアーゼ含有水溶液を得ることができること、
(2)[背景技術]で上述したスギ花粉による免疫反応は、より詳しくは、スギ花粉がヒトの体内に侵入し、その侵入したスギ花粉のアレルゲンが、ヒトの抗原提示細胞内にその細胞内のプロテアーゼによって取り込まれる、ということで引き起こされるが、スギ花粉がヒトの体内に侵入し、スギ花粉アレルゲンがヒトの抗原提示細胞内に取り込まれるまでの時間は、「30秒〜3分以内」というごく短い時間であり、その「30秒〜3分以内」という時間は、上記(1)で「スギ花粉から食塩を溶解している水溶液中に30秒〜3分以内に溶出した「プロテアーゼ」」としている中における「30秒〜3分以内」という時間に対応していること、
(3)上記(1)で「スギ花粉から食塩を溶解している水溶液中に30秒〜3分以内に溶出した「プロテアーゼ」」としているその「プロテアーゼ」が、ヒトの鼻粘膜や咽頭のびらん状神経端末を構成しているペプチドホルモンや神経ペプチドなどでなる基質を溶質としている水溶液中で、その基質を加水分解すること、従って、いま述べた「プロテアーゼ」が、ヒトの鼻粘膜や咽頭のびらん状神経端末を構成しているペプチドホルモンや神経ペプチドなどに対し、加水分解活性(酵素活性)を有すること、
(4)上記(1)、(2)及び(3)で述べたことから、上記(3)で述べた「プロテアーゼ」がヒトの鼻粘膜や咽頭に侵入したとすれば、その「プロテアーゼ」がヒトの鼻粘膜や咽頭のびらん状神経端末を構成しているペプチドホルモンや神経ペプチドなどを加水分解し、それがヒトの呼吸中枢をかく乱し、ヒトにスギ花粉症にみられると同様の急性の喘息様の発作を生じさせたりし、よって、その「プロテアーゼ」が神経中枢に影響を与えることによるスギ花粉症をヒトに生じさせること、
(5)上記(1)、(2)及び(3)で述べたことから、上記(3)で述べた「プロテアーゼ」がヒトの鼻粘膜や咽頭に侵入したとすれば、その前にスギ花粉がヒトの体内に侵入していれば、そのスギ花粉中のスギ花粉アレルゲンであるCrypj-1及びCrypj-2を、いま侵入した上記(3)で述べた「プロテアーゼ」が加水分解し、よって、上記(3)で述べた「プロテアーゼ」が免疫反応によるスギ花粉症をヒトに生じさせること、
(6)以上のこと、及び後述する[実施例1]の記載をもとに、スギ花粉を食塩を溶解している水溶液中に浸漬して得られた、スギ花粉から当該水溶液中に30秒〜3分以内に溶出したプロテアーゼを含有しているプロテアーゼ含有水溶液から、
(a)分子量を約67,000とし且つN末端配列をAla-Glu-Thr-Ala-Ala-Phe-Gly-Tyr-Thr-Val-Lys-Pro-Phe-とし、
(b)Suc-Ala-Ala-Pro-Phe-MCA蛍光基質を、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0の蛍光基質水溶液中で、ジイソプロピルフルオロフォスフェートの2mmol/Lの濃度以上での存在のもとでは加水分解しないが、モノヨード酢酸及びペプスタチンA中のいずれが存在しても加水分解し、
(c)ニューロテンシンを、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0のニューロテンシン水溶液中で、当該ニューロテンシンのIle12-Leu13間について加水分解し、
(d)β-エンドルフィンを、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0のβ-エンドルフィン水溶液中で、当該β-エンドルフィンのThr6-Ser7間について加水分解する、
という特性を有するプロテアーゼを含有する剤を精製すれば、その精製によって得られるプロテアーゼを含有する剤が、スギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質たり得ること、
を確認乃至推認するに到った。
本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質は、上述した確認乃至推認に基づき提案されたもので、スギ花粉を食塩を溶解している水溶液中に浸漬して得られた、スギ花粉から当該水溶液中に30秒〜3分以内に溶出したプロテアーゼを含有しているプロテアーゼ含有水溶液から精製された、
(a)分子量を約67,000とし且つN末端配列をAla-Glu-Thr-Ala-Ala-Phe-Gly-Tyr-Thr-Val-Lys-Pro-Phe-とし、
(b)Suc-Ala-Ala-Pro-Phe-MCA蛍光基質を、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0の蛍光基質水溶液中で、ジイソプロピルフルオロフォスフェートが2mmol/Lの濃度以上で存在していれば加水分解しないが、モノヨード酢酸及びペプスタチンA中のいずれが存在していても加水分解し、
(c)ニューロテンシンを、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0のニューロテンシン水溶液中で、当該ニューロテンシンのIle12-Leu13間について加水分解し、
(d)β-エンドルフィンを、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0のβ-エンドルフィン水溶液中で、当該β-エンドルフィンのThr6-Ser7間について加水分解する、
という特性を有するプロテアーゼを含有している剤でなる、というものである。
また、本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法も、上述した確認乃至推認に基づき提案されたもので、スギ花粉を食塩を溶解している水溶液中に浸漬して得られた、スギ花粉から当該水溶液中に30秒〜3分以内に溶出したプロテアーゼを含有しているプロテアーゼ含有水溶液から、
(a)分子量を約67,000とし且つN末端配列をAla-Glu-Thr-Ala-Ala-Phe-Gly-Tyr-Thr-Val-Lys-Pro-Phe-とし、
(b)Suc-Ala-Ala-Pro-Phe-MCA蛍光基質を、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0の蛍光基質水溶液中で、ジイソプロピルフルオロフォスフェートが2mmol/Lの濃度以上で存在していれば加水分解しないが、モノヨード酢酸及びペプスタチンA中のいずれが存在していても加水分解し、
(c)ニューロテンシンを、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0のニューロテンシン水溶液中で、当該ニューロテンシンのIle12-Leu13間について加水分解し、
(d)β-エンドルフィンを、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0のβ-エンドルフィン水溶液中で、当該β-エンドルフィンのThr6-Ser7間について加水分解する、
という特性を有するプロテアーゼを含有している剤を、スギ花粉症予防乃至治療用物質スクリーニング用標的物質として精製する、というものである。
本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質によれば、それが段落[0007]で述べた特性を有するプロテアーゼを含有している剤でなることから、そのプロテアーゼの特性、とくに段落[0007]中の(b)、(c)及び(d)に記載の特性を利用して、スギ花粉症を予防乃至治療するのに適切な物質を効果的にスクリーニングすることができる。
本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法によれば、スギ花粉症を予防乃至治療するのに適切な物質を効果的にスクリーニングすることができる本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質を、容易に製造することができる。
次に、本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の実施例を、それを製造する本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例とともに述べよう。
本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の実施例は、スギ花粉を食塩を溶解している水溶液中に浸漬して得られた、スギ花粉から当該水溶液中に30秒〜3分以内に溶出したプロテアーゼ含有しているプロテアーゼ含有水溶液から、本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例によって精製された、プロテアーゼを含有している剤を用いている剤でなるというものである。
このことから、いま、本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の実施例を製造する、本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例を述べれば、次のとおりである。
すなわち、
(1)まず、スギ花粉の1gに、0.3mol/L塩化ナトリウム、2mmol/Lエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、及び2mmol/Lシステインを含有している、pHが7.4〜8.0である0.2mol/L リン酸緩衝液の24mLを、食塩を溶解している水溶液として、加え、それによって得られた水溶液について、その温度を20℃に1時間保って後、ガラス製ホモジナイザーでホモジナイズし、そのホモジナイズされた水溶液に対し、10,000rpm、6分間の遠心分離を施しそれによる上清液を得、
(2)次で、その上清液に、硫酸アンモニウムを、45%飽和になるように加え、それによって得られた溶液に対し、その温度を7℃に1時間保ってから、10,000rpm、6分間の遠心分離を施し、それによる上清液を得、
(3)次で、その上清液を、飽和硫酸アンモニウムを45%含有している、pHが7.4〜8.0である10mmol/L リン酸緩衝液によって平衡化したButyl-Sepharose疎水クロマトグラフィーにかけ、pH7.4〜8.0の10mmol/Lリン酸緩衝液に対するリニアグラジエントで、プロテアーゼを溶解している溶液を得、
(5)そのプロテアーゼを溶解している溶液を、限外ろ過器で濃縮し、それによる濃縮溶液を得、その濃縮溶液を、スギ花粉を食塩を溶解している水溶液中に浸漬して得られた、スギ花粉から当該水溶液中に30秒〜3分以内に溶出したプロテアーゼ含有しているプロテアーゼ含有水溶液から精製された、後述する特性を有するプロテアーゼを含有している剤として、得た。
以上が、本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の実施例を製造する、本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例である。
このような本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例は、スギ花粉を食塩を溶解している水溶液中に浸漬して得られた、スギ花粉から当該水溶液中に30秒〜3分以内に溶出したプロテアーゼを含有しているプロテアーゼ含有水溶液から、後述する特性を有するプロテアーゼを含有している剤を、スギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質として精製する、というものであることは明らかであるが、いま、そのような本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例によって精製された、プロテアーゼを含有している剤におけるプロテアーゼの特性をみるに、それは、次のとおりである。
まず、本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例によって精製された、プロテアーゼを含有している剤の特性の理解の容易のため、スギ花粉を食塩を溶解している水溶液中に浸漬すれば、30秒〜3分以内に、その食塩を溶解している水溶液中に、Suc-Ala-Ala-Pro-Phe-MCA蛍光基質に対して加水分解活性(酵素活性)を有するプロテアーゼが溶出する、ということを確認すれば、次のとおりである。
すなわち、
(イ)(i)スギ花粉の5mgに、0.3mol/L塩化ナトリウム、2mmol/Lエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、及び2mmol/Lシステインを含有している、pHが7.4〜8.0である0.2mol/L リン酸緩衝液の100μLを、上述した本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例における、段落[0014]記載の食塩を溶解している水溶液に準じた食塩を溶解している水溶液として加え、それによる得られた懸濁液を得、
(ii)次で、その懸濁液について、その懸濁液を得てから、一定時間後に、生物顕微鏡によって観察したところ、いま「その懸濁液を得てから、一定時間後に、」と述べたその「一定時間」を、30秒〜3分以内としても、その懸濁液中にスギ花粉の内容物が漏出していること、
(ロ)(i)上記(イ)(i)の懸濁液を得、
(ii)次で、その懸濁液に対し、その温度を37℃にして後、一定時間後に、10,000rpm、1分間の遠心分離を施し、それによる上清液を得、
(iii)次で、その上清液について、クーマシーブルー染色法によって、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動像を観察したところ、上記(ii)で「その懸濁液に対し、その温度を37℃にして後、一定時間後に、」と述べたその「一定時間」を30秒〜3分以内としても、その上清液中に、スギ花粉による、抗原タンパク質(スギ花粉アレルゲン)を含んでいるタンパク質が、漏出していること、
(ハ)上記(イ)(i) の懸濁液を得、
(ii)次で、その懸濁液に対し、その温度を37℃に保って後、一定時間後に、10,000rpm、1分間の遠心分離を施し、それによる上清液を得、
(iii)次で、その上清液の20μLと、 10mmol/L Suc-Ala-Ala-Pro-Phe-MCA蛍光基質を溶解しているジメチルスルホキシド溶液の 5μLと、0.3mol/L塩化ナトリウム、2mmol/Lエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、及び2mmol/L システインを含有している、pHが7.4〜8.0である0.2mol/L リン酸緩衝液の2975μL との混合液を得、
(iv)次で、その混合液について、その蛍光強度を、その混合液の温度を37℃に2時間保ってから、励起波長380nm、蛍光波長460nmの蛍光を用いて測定したところ、上記(ii)で「その懸濁液に対し、その温度を37℃に保って後、一定時間後に、」と述べたその「一定時間」を30秒〜3分以内としても、その混合液の蛍光強度が増大すること、
を確認した。
本発明者等は、このような確認をもとに、スギ花粉を食塩を溶解している水溶液中に浸漬すれば、30秒〜3分以内に、その食塩を溶解している水溶液中に、Suc-Ala-Ala-Pro-Phe-MCA蛍光基質に対して加水分解活性(酵素活性)を有するプロテアーゼが溶出する、ということを推認した。
次に、上述した本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例によって精製された、プロテアーゼを含有している剤におけるプロテアーゼの特性を、スギ花粉を食塩を溶解している水溶液中に浸漬すれば、30秒〜3分以内に、食塩を溶解している水溶液中にSuc-Ala-Ala-Pro-Phe-MCA蛍光基質に対して加水分解活性(酵素活性)を有するプロテアーゼが溶出する、ということの上述した確認のもとで、それを加味して、みるに、それは次のとおりである。
すなわち、
(a-1)上述した本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例によって精製された、段落[0014]に記載のプロテアーゼを含有している剤としての濃縮溶液について、クーマシーブルー染色法によるSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動像を観察したところ、その電気泳動像中に、分子量既知のマーカープロテアーゼ(タンパク質)との比較から、分子量67,000と見積もられる位置に、単一のバンドが存在する、ということを確認した。
本発明者等は、このような確認をもとに、本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例によって精製された、プロテアーゼを含有している剤としての濃縮溶液におけるプロテアーゼが、分子量を約67,000とする、という特性を有することを推認した。
また、
(a-2)上述した本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例によって精製された、段落[0014]に記載のプロテアーゼを含有している剤としての濃縮溶液について、エドマン法によるアミノ酸配列分析装置を用いたアミノ酸配列分析を行ったところ、プロテアーゼを含有している剤としての濃縮溶液におけるプロテアーゼが、N末端配列をAla-Glu-Thr-Ala-Ala-Phe-Gly-Tyr-Thr-Val-Lys-Pro-Phe-としていることを確認した。
本発明者等は、このような確認をもとに、本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例によって精製された、プロテアーゼを含有している剤としての濃縮溶液におけるプロテアーゼが、N末端配列をAla-Glu-Thr-Ala-Ala-Phe-Gly-Tyr-Thr-Val-Lys-Pro-Phe-とする、という特性を有することを推認した。
さらに、
(b-1)上述した本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例によって精製された、段落[0014]に記載のプロテアーゼを含有している剤としての濃縮溶液と、セリンプロテアーゼ阻害剤である、4mmol/Lの濃度を有するジイソプロピルフルオロホスフェートとを、1対1の容量比で混合し、その混合液について、その温度を30℃に保ってから、1時間後に、その混合液による、Suc-Ala-Ala-Pro-Phe-MCA蛍光基質の加水分解活性の測定を行ったところ、その混合液が本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例によって精製されたプロテアーゼを含有している剤を含有しているにも拘らず、その混合液によるSuc-Ala-Ala-Pro-Phe-MCA蛍光基質の加水分解活性が、実質的に喪失しており、そして、このようなことは、その混合液を構成しているジイソプロピルフルオロホスフェートの濃度が、4mmol/L以下であっても2mmol/L以上であれば、また、4mmol/L以上であっても、同様であることを確認した。
本発明者等は、このような確認をもとに、上述した本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例によって精製された、プロテアーゼを含有している剤としての濃縮溶液におけるプロテアーゼが、Suc-Ala-Ala-Pro-Phe-MCA蛍光基質を、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0の水溶液中で、ジイソプロピルフルオロフォスフェートが2mmol/Lの濃度以上で存在していれば、加水分解しない、という特性を有することを推認した。
また、
(b-2)上述した本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例によって製造された、段落[0014]に記載のプロテアーゼを含有している剤としての濃縮溶液と、システインプロテアーゼ阻害剤である4mmol/Lモノヨード酢酸とを混合し、その混合液 について、上記(b-1)の場合と同様の、その混合液によるSuc-Ala-Ala-Pro-Phe-MCA蛍光基質の加水分解活性を測定したところ、その混合液がシステインプロテアーゼ阻害剤である4mmol/Lモノヨード酢酸を含有しているにも拘らず、混合液によるSuc-Ala-Ala-Pro-Phe-MCA蛍光基質の加水分解活性が、実質的に喪失していず、そしてこのようなことは、この(b-2)で上述した測定において、混合液が含有しているシステインプロテアーゼ阻害剤である4mmol/Lモノヨード酢酸を0.01mmol/Lペプスタチン(pepstatin )Aに代えたことを除いて(b-2)で上述した測定でも、同様であることを確認した。
本発明者等は、このような確認をもとに、上述した本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例によって精製された、プロテアーゼを含有している剤としての濃縮溶液におけるプロテアーゼが、Suc-Ala-Ala-Pro-Phe-MCA蛍光基質を、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0の蛍光基質水溶液中で、モノヨード酢酸及びペプスタチンA中のいずれが存在していても、加水分解する、という特性を有する、ということを推認した。
さらに、
(c) 5μmol/Lニューロテンシンを溶解している、pHが7.4〜8.0である0.2mol/L リン酸緩衝液の200μLに、上述した本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例によって精製された、段落[0014]に記載のプロテアーゼを含有している剤としての濃縮溶液の5μLを加え、それによって得られた混合液について、37℃の温度に3時間保って後、TOF-MASS質量分析装置を用いた分析を行ったところ、pGlu1-Ile12に相当するペプチドが存在することを確認した。
本発明者等は、このような確認をもとに、上述した本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例によって精製された、プロテアーゼを含有している剤としての濃縮溶液におけるプロテアーゼが、ニューロテンシンを、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0の水溶液中で、当該ニューロテンシンのIle12-Leu13間について加水分解する、という特性を有することを推認した。
また、
(d) 5μmol/L β-エンドルフィンを溶解している、pHが7.4〜8.0である0.2mol/L リン酸緩衝液の200μLに、上述した本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例によって精製された、段落[0014]に記載のプロテアーゼを含有している剤としての濃縮溶液の5μLを加え、それによって得られた混合液について、37℃の温度で3時間保って後、TOF-MASS質量分析装置を用いた分析を行ったところ、Tyr1-Thr6に相当するペプチドが存在することを確認した。
本発明者等は、このような確認をもとに、上述した本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例によって精製された、プロテアーゼを含有している剤としての濃縮溶液におけるプロテアーゼが、β-エンドルフィンを、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0の水溶液中で、当該β-エンドルフィンのThr6-Ser7間について加水分解する、という特性を有する、ということを推認した。
上述したところから、本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の実施例を製造する本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例が明らかになった。
このことから、本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の実施例が、スギ花粉を食塩を溶解している水溶液中に浸漬して得られた、スギ花粉から当該水溶液中に30秒〜3分以内に溶出したプロテアーゼを含有しているプロテアーゼ含有水溶液から精製された、
(a)分子量を約67,000とし且つN末端配列をAla-Glu-Thr-Ala-Ala-Phe-Gly-Tyr-Thr-Val-Lys-Pro-Phe-とし、
(b)Suc-Ala-Ala-Pro-Phe-MCA蛍光基質を、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0の蛍光基質水溶液中で、ジイソプロピルフルオロフォスフェートが2mmol/Lの濃度以上で存在していれば加水分解しないが、モノヨード酢酸またはペプスタチンAが存在していても加水分解し、
(c)ニューロテンシンを、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0のニューロテンシン水溶液中で、当該ニューロテンシンのIle12-Leu13間について加水分解し、
(d)β-エンドルフィンを、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0のβ-エンドルフィン水溶液中で、当該β-エンドルフィンのThr6-Ser7間について加水分解する、
という特性を有するプロテアーゼを含有している剤でなる、ということが明らかとなった。
また、このような本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用物質スクリーニング用標的物質の実施例によれば、詳細説明は省略するが、[発明の効果]の項で上述した効果が得られることは明らかである。
さらに、上述したところから、本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法は、スギ花粉を食塩を溶解している水溶液中に浸漬して得られた、スギ花粉から当該水溶液中に30秒〜3分以内に溶出したプロテアーゼを含有しているプロテアーゼ含有水溶液から、
(a)分子量を約67,000とし且つN末端配列をAla-Glu-Thr-Ala-Ala-Phe-Gly-Tyr-Thr-Val-Lys-Pro-Phe-とし、
(b)Suc-Ala-Ala-Pro-Phe-MCA蛍光基質を、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0の蛍光基質水溶液中で、ジイソプロピルフルオロフォスフェートが2mmol/Lの濃度以上で存在していれば加水分解しないが、モノヨード酢酸またはペプスタチンAが存在していても加水分解し、
(c)ニューロテンシンを、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0のニューロテンシン水溶液中で、当該ニューロテンシンのIle12-Leu13間について加水分解し、
(d)β-エンドルフィンを、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0のβ-エンドルフィン水溶液中で、当該β-エンドルフィンのThr6-Ser7間について加水分解する、
という特性を有するプロテアーゼを含有している剤を、スギ花粉症予防乃至治療用物質スクリーニング用標的物質として精製する、ということが明らかとなった。
また、このような本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質の製法の実施例によれば、詳細説明は省略するが、[発明の効果]の項で上述した効果が得られることは明らかである。
なお、上述した本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用スクリーニング用標的物質、及びその製法の実施例においては、段落[0014]中の(1)〜(5)に記載の順次の工程を経て得られたプロテアーゼを溶解している溶液としての濃縮溶液を以って、段落[0034]中の(a)〜(d)に記載の特性を有するプロテアーゼを含有している剤とする、という場合を述べたが、、段落[0014]中の(1)〜(5)に記載の順次の工程に準じたまたは代えた工程を経て得られた段落[0014]に記載の濃縮溶液に準じたまたは相当する溶液を以って、段落[0034]中の(a)〜(d)に記載の特性を有するプロテアーゼを含有している剤とするようにすることもでき、その他、本発明の精神を脱することなしに、種々の変型、変更をなし得ることは明らかであろう。
本発明によるスギ花粉症予防乃至治療用物質スクリーニング用標的物質、及びその製法は、スギ花粉症を予防乃至治療するのに適切な物質をスクリーニングすることができる物質、及びその製法として、広く使用することができる。

Claims (2)

  1. スギ花粉を食塩を溶解している水溶液中に浸漬して得られた、スギ花粉から当該水溶液中に30秒〜3分以内に溶出したプロテアーゼを含有しているプロテアーゼ含有水溶液から精製された、
    (a)分子量を約67,000とし且つN末端配列をAla-Glu-Thr-Ala-Ala-Phe-Gly-Tyr-Thr-Val-Lys-Pro-Phe-とし、
    (b)Suc-Ala-Ala-Pro-Phe-MCA蛍光基質を、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0の蛍光基質水溶液中で、ジイソプロピルフルオロフォスフェートが2mmol/Lの濃度以上で存在していれば加水分解しないが、モノヨード酢酸及びペプスタチンA中のいずれが存在していても加水分解し、
    (c)ニューロテンシンを、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0のニューロテンシン水溶液中で、当該ニューロテンシンのIle12-Leu13間について加水分解し、
    (d)β-エンドルフィンを、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0のβ-エンドルフィン水溶液中で、当該β-エンドルフィンのThr6-Ser7間について加水分解する、
    という特性を有するプロテアーゼを含有している剤でなることを特徴とするスギ花粉症予防乃至治療用物質スクリーニング用標的物質。
  2. スギ花粉を食塩を溶解している水溶液中に浸漬して得られた、スギ花粉から当該水溶液中に30秒〜3分以内に溶出したプロテアーゼを含有しているプロテアーゼ含有水溶液から、
    (a)分子量を約67,000とし且つN末端配列をAla-Glu-Thr-Ala-Ala-Phe-Gly-Tyr-Thr-Val-Lys-Pro-Phe-とし、
    (b)Suc-Ala-Ala-Pro-Phe-MCA蛍光基質を、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0の蛍光基質水溶液中で、ジイソプロピルフルオロフォスフェートが2mmol/Lの濃度以上で存在していれば加水分解しないが、モノヨード酢酸及びペプスタチンA中のいずれが存在していても加水分解し、
    (c)ニューロテンシンを、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0のニューロテンシン水溶液中で、当該ニューロテンシンのIle12-Leu13間について加水分解し、
    (d)β-エンドルフィンを、それを溶質とするpH7.4〜pH8.0のβ-エンドルフィン水溶液中で、当該β-エンドルフィンのThr6-Ser7間について加水分解する、
    という特性を有するプロテアーゼを含有している剤を、スギ花粉症予防乃至治療用物質スクリーニング用標的物質として精製することを特徴とするスギ花粉症予防乃至治療用物質スクリーニング用標的物質の製法。
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