JP2005305539A - 高強度自動車用部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高強度と優れた形状凍結性に加えて優れた形状自由度が高く、塗装後耐食性にも優れた自動車部品の製造法を提供する。
【解決手段】 最表面に片面当たり3g/m2 以下の潤滑皮膜を備えた表面処理鋼板を使用し、冷間プレス工程により所定の形状に成形した後に、850℃以上に加熱し、然る後に最終形状の金型に挟んで冷却することで焼入れ処理をすることを特徴とする高強度自動車用部材の製造方法。
【効果】 本製造法によって製造した自動車部品は、1500MPa級の高強度と優れた形状凍結性を兼備するもので、自動車産業の今後の軽量化に寄与する。
【選択図】 なし
【解決手段】 最表面に片面当たり3g/m2 以下の潤滑皮膜を備えた表面処理鋼板を使用し、冷間プレス工程により所定の形状に成形した後に、850℃以上に加熱し、然る後に最終形状の金型に挟んで冷却することで焼入れ処理をすることを特徴とする高強度自動車用部材の製造方法。
【効果】 本製造法によって製造した自動車部品は、1500MPa級の高強度と優れた形状凍結性を兼備するもので、自動車産業の今後の軽量化に寄与する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、バンパービーム,ドアインパクトビーム,ピラー等のリインフォース等の強度を要求される部材を効率的に製造する方法に関する。
近年、地球環境問題を発端とした低燃費化の動きから自動車用鋼板の高強度化に対する要望が強い。しかし、一般に高強度化は加工性、成形性の低下を伴い、高強度、高成形性を両立する鋼板が望まれている。
これに対する一つの回答は、残留オーステナイトのマルテンサイト変態を利用したTRIP(TRansformation Induced Placiticity)鋼であり、近年用途が拡大しつつある。しかし、この鋼により、成形性の優れた1000MPa級の高強度鋼板は製造することは可能であるが、更に高強度、例えば1500MPa以上というような超高強度鋼で成形性を確保することは困難である。また、TRIP鋼は延性が高く成形性には優れるが、プレス成形時の残留応力のために発生するスプリングパックに関しては通常の高強度鋼と何ら変わりなく、形状凍結性という意味からは大きな課題を残している。
これに対する一つの回答は、残留オーステナイトのマルテンサイト変態を利用したTRIP(TRansformation Induced Placiticity)鋼であり、近年用途が拡大しつつある。しかし、この鋼により、成形性の優れた1000MPa級の高強度鋼板は製造することは可能であるが、更に高強度、例えば1500MPa以上というような超高強度鋼で成形性を確保することは困難である。また、TRIP鋼は延性が高く成形性には優れるが、プレス成形時の残留応力のために発生するスプリングパックに関しては通常の高強度鋼と何ら変わりなく、形状凍結性という意味からは大きな課題を残している。
これを解決すべく、高強度、高成形性を両立する別の手段として最近注目を浴びているのが熱間プレス(ホットプレス)である。これは鋼板を800℃以上のオーステナイト域で加熱した後に熱間で成形することにより高強度鋼板の成形性の課題を無くし、成型後の冷却により焼きを入れて所望の材質を得るというものである。これにより1500MPa級の高強度を有する高強度部材を高寸法精度で製造することが可能となる。
この工法は、超高強度を有する部材を製造する方法として有望であるが、従来技術は大気中で鋼板を加熱する工程があり、表面に酸化物(スケール)が生成してこれをショットブラストや酸洗等の後工程で除去する必要があった。ところが、ショットブラストでは完全にスケールを排除することが難しく、また、ショットブラストによる変形の可能性があった。酸洗も廃水処理等をする必要があり、環境負荷、経済性という観点から問題があった。
これを改善する技術を開示したものが特開2000−38640号公報(特許文献1)であり、0.15〜0.5%の炭素を含有する鋼板にAlめっきした試料を使用することで加熱時の酸化抑制を図っている。Alめっきを付与することで、酸化抑制のみならず、塗装後の耐食性が飛躍的に向上し、耐食性を要求される部材にも適用することが可能となる。このような方法により加熱時の酸化の課題は解決されるが、別の課題もある。この工法で成形できる形状には限りがあり、冷間で行うプレスに比べて成形形状の選択肢が狭い。熱間ではr値(ランクフォード値)は1に近く、冷間プレスで一般的な絞り成形がし難い等である。また、この工法は1工程で成形する必要があるために多段でないと成形できないような形状にも成形できない。
この点を改善するために、欧州では既にプリフォームと呼ばれる工法も使用されている。これは冷間プレスで最終形状に近いところまで成形し、最後に加熱して最終形状の金型に挟んで焼きを入れるというものである。これにより冷間プレスで成形できる全ての形状の部品が高強度かつ高寸法精度で製造可能となる。
ところが、前述したAlめっき鋼板を使用してプリフォーム工法を使用すると、冷間プレス時にAlめっき層にクラックやカジリ等ができ、この後加熱するとAlめっきに被覆していない箇所からスケールが生成する。すると、この部位はスポット溶接性や塗装後の耐食性が大きく低下する。当然外観品位も低下する。このためプリフォーム工法は冷延鋼板でしか使用できなかった。
本発明者らは鋭意検討を加え、表面処理鋼板を使用してプリフォーム工法を適用する製造方法を知見した。プリフォーム時のカジリを抑制するためにAlめっきあるいはZnめっきの表面に潤滑皮膜を付与するものとする。しかし、ただ潤滑皮膜を付与しただけではこの皮膜が加熱により変質して加熱した後の塗装後耐食性、スポット溶接性に悪影響を及ぼす。この弊害を無くすためには出来る限り潤滑皮膜の量が少ない方が好ましく、片面当たりの潤滑皮膜量を3g/m2 以下とすることで前記したこれらの弊害を防止しつつ、冷間成形時のめっき損傷を抑制して表面処理鋼板を使用したプリフォーム工法が初めて可能となったものである。かかる知見を基に完成された本発明は、次の通りである。
(1)最表面に片面当り3g/m2 以下の潤滑皮膜を備えた表面処理鋼板を、冷間プレスにより成形し、850℃以上に加熱し、しかる後に金型で挟んで焼入れ処理を行うことを特徴とする高強度自動車用部材の製造方法。
(2)金型を水冷することを特徴とする前記(1)記載の高強度自動車用部材の製造方法。
(3)鋼板が、C:0.05%以上、Mn:0.5〜4%を含有した、両面付着量80g/m2 以上のAl系めっき鋼板であることを特徴とする前記(1)または(2)記載の高強度自動車用部材の製造方法。
(2)金型を水冷することを特徴とする前記(1)記載の高強度自動車用部材の製造方法。
(3)鋼板が、C:0.05%以上、Mn:0.5〜4%を含有した、両面付着量80g/m2 以上のAl系めっき鋼板であることを特徴とする前記(1)または(2)記載の高強度自動車用部材の製造方法。
(4)鋼板が、C:0.05%以上、Mn:0.5〜4%を含有した、両面付着量80g/m2 以上のZn系めっき鋼板であることを特徴とする前記(1)または(2)記載の高強度自動車用部材の製造方法。
(5)潤滑皮膜中にポリオレフィン系ワックス、パラフィン系ワックスの少なくとも1種からなる潤滑性付与成分を含有せしめることを特徴とする前記(1)〜(4)記載の高強度自動車用部材の製造方法。
(5)潤滑皮膜中にポリオレフィン系ワックス、パラフィン系ワックスの少なくとも1種からなる潤滑性付与成分を含有せしめることを特徴とする前記(1)〜(4)記載の高強度自動車用部材の製造方法。
(6)潤滑皮膜中の潤滑性付与成分以外の成分が、ジルコニウム化合物と、バナジウム化合物と、シリカ化合物と、りん酸化合物と、水酸基、カルボニル基、及びカルボキシル基の少なくとも1種の官能基を有する有機化合物からなる複合皮膜であり、かつ複合皮膜中に片面当り、ジルコニウムとして2〜1200mg/m2 、バナジウムとして0.1〜300mg/m2 、PO4 換算として0.3〜450mg/m2 含有させることを特徴とする前記(1)〜(5)記載の高強度自動車用部材の製造方法。
(7)潤滑皮膜中に更にコバルト化合物を含有させることを特徴とする前記(6)記載の高強度自動車用部材の製造方法にある。
(7)潤滑皮膜中に更にコバルト化合物を含有させることを特徴とする前記(6)記載の高強度自動車用部材の製造方法にある。
以上述べたように、本発明によって製造した自動車部品は、1500MPa級の高強度と優れた形状凍結性に加えて、スケール生成がないため後工程での溶接性等の性能バラツキが少なく、また、優れた塗装後耐食性も兼備したものとなり、自動車産業の今後の軽量化に寄与するものとなる。
本発明の限定範囲を詳細に説明する。
まず、この工法に用いる鋼板は最表面に潤滑皮膜を供えた表面処理鋼板とし、潤滑皮膜量を片面当たり3g/m2 以下とする。潤滑効果を十分得るためには0.1g/m2 以上が望ましい。これは前述したように潤滑皮膜が厚すぎるとその後の溶接性、塗装後耐食性に悪影響を及ぼすためである。潤滑皮膜の種類は特に限定しないが、潤滑成分としてポリオレフィン系ワックス、パラフィン系ワックス等を含有することが好ましい。
まず、この工法に用いる鋼板は最表面に潤滑皮膜を供えた表面処理鋼板とし、潤滑皮膜量を片面当たり3g/m2 以下とする。潤滑効果を十分得るためには0.1g/m2 以上が望ましい。これは前述したように潤滑皮膜が厚すぎるとその後の溶接性、塗装後耐食性に悪影響を及ぼすためである。潤滑皮膜の種類は特に限定しないが、潤滑成分としてポリオレフィン系ワックス、パラフィン系ワックス等を含有することが好ましい。
皮膜の他の成分も特に限定しないが、例えばジルコニウム化合物と、バナジウム化合物と、シリカ化合物と、りん酸化合物と、水酸基、カルボニル基、及びカルボキシル基のうちの少なくとも1つの官能基をもつ有機化合物からなる複合皮膜を使用すると、一次防錆、潤滑性、成形後の特性等にバランスがとれた鋼板が得られる。Zn系めっき鋼板を使用する場合には、リン酸系の極薄い皮膜で潤滑効果があることが知られており、このような皮膜を使用することも可能である。この場合にはリン酸系の皮膜と油のみで良好な潤滑性が得られるため、有機物系のワックスは必要ない。
次に、この潤滑皮膜を供えた表面処理鋼板を冷間プレス工程により所定の形状に成形する。所定の形状とは最終形状であってもよいし、最終形状に近い形状まで冷間プレスを行い、次の熱間プレス工程で最終形状に仕上げてもよい。但し深絞り加工は熱間プレスでは困難なため、深絞り成形は冷間プレスで仕上げることが望ましい。
冷間プレス後に加熱して熱間プレスに移行するが、このときの加熱は850℃以上とする。本工法は加熱によりオーステナイト相に変態させ、熱間プレス時に焼入れするため、加熱後の熱間プレス段階でAc3 変態点以上の温度である必要があり、このためには850℃以上に加熱する必要がある。熱間プレス後に金型内で焼入れ処理するため、金型としては水冷等の手法で連続的に冷却の可能な構造を備えたものであることが望ましい。
次に、表面処理鋼板の具備する要件を述べる。
本工法は焼入れにより高強度を得るものであるため、鋼成分としてC:0.05%以上、Mn:0.5〜4%を含有することが望ましい。Cは焼入れ後の強度に、Mnは焼入れ性に効果がある。また、表面処理としてはAl系めっきあるいはZn系めっきを両面付着量80g/m2 以上施すことが望ましい。Al系めっきを使用するとことで特に優れた部材としての塗装後耐食性を得ることができる。Zn系めっきは経済的であり、また、自動車用表面処理として広く使用されているもので他部品との電気的な相互作用等を考慮する必要がない。いずれのめっきでも付着量は両面80g/m2 以上が好ましく、これは塗装後耐食性を確保するために望ましいものである。具体的なめっき種としてはAl−Siめっき、Al−Si−Mgめっき、Al−Znめっき、Zn−Niめっき、Zn−Al−Mgめっき、Zn−Snめっき等がありうる。
本工法は焼入れにより高強度を得るものであるため、鋼成分としてC:0.05%以上、Mn:0.5〜4%を含有することが望ましい。Cは焼入れ後の強度に、Mnは焼入れ性に効果がある。また、表面処理としてはAl系めっきあるいはZn系めっきを両面付着量80g/m2 以上施すことが望ましい。Al系めっきを使用するとことで特に優れた部材としての塗装後耐食性を得ることができる。Zn系めっきは経済的であり、また、自動車用表面処理として広く使用されているもので他部品との電気的な相互作用等を考慮する必要がない。いずれのめっきでも付着量は両面80g/m2 以上が好ましく、これは塗装後耐食性を確保するために望ましいものである。具体的なめっき種としてはAl−Siめっき、Al−Si−Mgめっき、Al−Znめっき、Zn−Niめっき、Zn−Al−Mgめっき、Zn−Snめっき等がありうる。
また、潤滑皮膜に含有させるジルコニウム化合物は、ジルコニウム化合物を含有する表面処理剤を塗布乾燥することにより形成することが望ましい。表面処理剤に含有させるジルコニウム化合物としては特に限定するものではないが、硝酸ジルコニル、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、炭酸ジルコニウムナトリウム、ジルコニウムアセテートなどがあげられる。皮膜中のジルコニウム化合物含有量が片面当たり、ジルコニウムとして2〜1200mg/m2 であることが好ましく、より好ましくは10〜1000mg/m2 である。
皮膜中のジルコニウム化合物の含有量が、片面当りジルコニウムとして2mg/m2 未満の場合は■次防錆能の向上効果が乏しく、1200mg/m2 を超える場合は加工性の
向上効果に乏しい。表面処理剤に含有させるジルコニウム化合物としては、炭酸ジルコニウム錯イオンを含有するジルコニウム化合物(A)がより好ましい。炭酸ジルコニウム錯イオンを含有するジルコニウム化合物としては特に限定するものではないが、炭酸ジルコニウム錯イオン[Zr(CO3 )2 (OH)2 ]2-もしくは[Zr(CO3 )3 (OH)]3-のアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩などが挙げられる。
向上効果に乏しい。表面処理剤に含有させるジルコニウム化合物としては、炭酸ジルコニウム錯イオンを含有するジルコニウム化合物(A)がより好ましい。炭酸ジルコニウム錯イオンを含有するジルコニウム化合物としては特に限定するものではないが、炭酸ジルコニウム錯イオン[Zr(CO3 )2 (OH)2 ]2-もしくは[Zr(CO3 )3 (OH)]3-のアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩などが挙げられる。
薬剤中の全固形分100質量%に対する、この成分(A)の固形分の割合はジルコニウムとして20〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは22〜35質量%である。薬剤中の全固形分100質量%に対する、この成分(A)の固形分の割合がジルコニウムとして20質量%未満の場合は耐食性及び耐熱性の向上効果が乏しく、40質量%を超える場合は耐食性及び加工性の向上効果に乏しいため好ましくない。
また、本発明の潤滑皮膜に含有させるバナジウム化合物は、バナジウム化合物を含有する表面処理剤を塗布乾燥することにより形成されることが好ましい。表面処理剤に含有させるジルコニウム化合物としては特に限定するものではないが、五酸化バナジウム、メタバナジン酸、メタバナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸ナトリウム、オキシ三塩化バナジウム、三酸化バナジウム、二酸化バナジウム、オキシ硫酸バナジウム、バナジウムオキシアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネート、三塩化バナジウム、リンバナドモリブデン酸、硫酸バナジウム、二塩化バナジウム、酸化バナジウム等があげられる。
皮膜中のバナジウム化合物の含有量が、片面当りバナジウムとして0.1〜300mg/m2 であることが好ましく、より好ましくは1〜100mg/m2 である。皮膜中のバナジウム化合物の含有量が、片面当りバナジウムとして0.1mg/m2 未満の場合は1次防錆能の向上効果が乏しく、300mg/m2 を超える場合は加工性の向上効果に乏しい。表面処理剤に含有させるバナジウム化合物としては、バナジルイオン(VO 2+ )を含有するバナジウム化合物(B)がより好ましい。バナジルイオン(VO 2+ )を含有するバナジウム化合物(B)は、塩酸、硝酸、りん酸、硫酸などの無機酸、もしくはギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸等の有機酸アニオンとの塩によって供給されるオキソバナジウムカチオンである。
薬剤中の全固形分100質量%に対する、この成分(B)の固形分の割合はバナジウムとして1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜8質量%である。薬剤中の全固形分100質量%に対する、この成分(B)の固形分の割合がバナジウムとして1質量%未満の場合は耐食性の向上効果が乏しく、10質量%を超える場合は、耐食性、耐熱性及び塗装性の向上効果に乏しいため好ましくない。
また、本発明の潤滑皮膜に含有させるシリカ化合物は、鋼板との密着性を確保するための成分であり、シリカ化合物を含有する表面処理剤を塗布乾燥することにより形成される。表面処理剤に含有させるシリカ化合物としては特に限定するものではないが、水分散性シリカ化合物(C)がより好ましい。水分散性シリカ化合物(C)は、コロイダルシリカ、気相シリカがあり、コロイダルシリカとしては、特に限定するものではないが、スノーテックスC、スノーテックスO、スノーテックスN、スノーテックスS、スノーテックスUP、スノーテックスPS−M、スノーテックスPS−L、スノーテックス20、スノーテックス30、スノーテックス40(何れも日産化学工業製)、アデライトAT−20N、アデライトAT−20A、アデライトAT−20Q(何れも旭電化工業製)などが挙げられる。気相シリカとしては、特に限定するものではないが、アエロジル50、アエロジル130、アエロジル200、アエロジル300、アエロジル380、アエロジルTT600、アエロジルMOX80、アエロジルMOX170(何れも日本アエロジル製)、などが挙げられる。
また、本発明の潤滑皮膜に含有させるりん酸は、各種成分のバインダー的役割のための成分であり、りん酸化合物を含有する表面処理剤を塗布乾燥することにより形成される。本発明の金属表面処理薬剤に含有させるりん酸化合物(D)は、りん酸イオンを含めばよいが、例えば、オルトりん酸(りん酸)、メタりん酸、ピロりん酸及びこれらの物質の一部あるいは全部の水素イオンが置き換えられたアンモニウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩等の塩類を単独あるいは混合して使用することができる。
複合皮膜中のりん酸化合物の含有量が、片面当りPO4 として0.3〜450mg/m2 であることが好ましく、より好ましくは0.5〜200mg/m2 である。皮膜中のりん酸化合物の含有量が、片面当りPO4 として0.3mg/m2 未満の場合は十分なバリアー性を示す皮膜を形成できないため、また、450mg/m2 を超える場合は、フリーのりん酸イオンが皮膜中に存在することになるため1次防錆能が低下する傾向にある。
金属表面処理剤を塗布・乾燥し複合皮膜を形成する際、皮膜中にめっき成分(Al,Si,Fe,Zn等)が取り込まれる場合があるが、本発明の主旨を損なうものではなく、また、皮膜のめっき表面付近にめっき成分が濃化した場合も同じである。さらに、複合皮膜がめっき表面上に不均一に形成されていても本発明の主旨を損なうものではない。
複合皮膜中の化合物含有量の測定方法について特に限定はしないが、任意面積のサンプルを使用し、表面処理皮膜を酸(ふっ酸等)で溶解除去し溶解させた溶液をICPにより定量分析を実施する手法がある。この際、めっき成分も溶解しているので測定上の注意が必要である。その他、蛍光X線強度の検量線による定量法も可能である。有機化合物についてはIR等により存在の有無を確認することが可能である。シリカ化合物については皮膜表面をXRDやXPS(ESCA)により分析することで検出が可能である。
表面処理剤の塗布方法としては特に限定するものではないが、ロールコーター法、浸漬法、静電塗布法などを用いることができる。塗布後の乾燥は、到達板温度として50〜200℃で乾燥させるのが好ましい。
表面処理剤の塗布方法としては特に限定するものではないが、ロールコーター法、浸漬法、静電塗布法などを用いることができる。塗布後の乾燥は、到達板温度として50〜200℃で乾燥させるのが好ましい。
(実施例1)
通常の熱延、冷延工程を経た、表1に示す鋼成分の冷延鋼板(板厚1.2mm)を材料として、溶融Alめっきを行った。溶融Alめっきは無酸化炉−還元炉タイプのラインを使用し、めっき後ガスワイピング法でめっき付着量を両面160g/m2 に調節し、その後冷却し、ゼロスパングル処理を施した。この際のめっき浴組成としてはAl−10%Si−2%Feであった。浴中のFeは浴中のめっき機器やストリップから供給される不可避のものである。めっき外観は不めっき等なく良好であった。めっき後表2に示す薬液をロールコーターで塗布し、熱風乾燥炉により焼付した。このときの板温は約80℃であった。このとき薬液の塗布量を片面0.3〜5g/m2 の範囲で変えて試料を作成した。
通常の熱延、冷延工程を経た、表1に示す鋼成分の冷延鋼板(板厚1.2mm)を材料として、溶融Alめっきを行った。溶融Alめっきは無酸化炉−還元炉タイプのラインを使用し、めっき後ガスワイピング法でめっき付着量を両面160g/m2 に調節し、その後冷却し、ゼロスパングル処理を施した。この際のめっき浴組成としてはAl−10%Si−2%Feであった。浴中のFeは浴中のめっき機器やストリップから供給される不可避のものである。めっき外観は不めっき等なく良好であった。めっき後表2に示す薬液をロールコーターで塗布し、熱風乾燥炉により焼付した。このときの板温は約80℃であった。このとき薬液の塗布量を片面0.3〜5g/m2 の範囲で変えて試料を作成した。
この鋼板を使用してプレスを行った。300t油圧プレス機を使用し、ブランク径160mm,ポンチ径100mm,クリアランス1.4mm,ダイス肩r5mm,しわ抑え圧1500kgfで絞り比1.8の円筒絞り成形とした。この成形を以下の条件で行った。なお、連続成形によるカジリ発生を模擬するためダイスの表面を♯600紙やすりで研磨して試験に供した。
(a)冷間成形後、プレス品を900℃に保定した炉内で5分間加熱し、再度同じ型で熱間プレス (b)鋼板を900℃に保定した炉内で5分間加熱し、熱間プレス(冷間プレスなし)
なお、(a)(b)において熱間プレス開始温度は約700℃とした。
(a)冷間成形後、プレス品を900℃に保定した炉内で5分間加熱し、再度同じ型で熱間プレス (b)鋼板を900℃に保定した炉内で5分間加熱し、熱間プレス(冷間プレスなし)
なお、(a)(b)において熱間プレス開始温度は約700℃とした。
このようにして成形した円筒絞り品の縦壁部の塗装後耐食性を次の方法で評価した。縦壁部をワイヤーカット等の方法で切出し後、日本パーカライジング(株)製化成処理液PB−3081Mで化成処理を施し、その後日本ペイント(株)製カチオン電着塗料パワーニクス110を約20μm塗装した。その後、カッターで塗膜にクロスカットを入れ、自動車技術会で定めた複合腐食試験(JASO−610M)を150サイクル(50日)行い、クロスカットからの膨れ幅(両側最大膨れ幅)を測定した。このときの腐食の判定基準を下に示す。
〔膨れ幅〕
◎:4mm以下
○:4mm超〜6mm
△:6mm超〜9mm
×:9mm超
◎:4mm以下
○:4mm超〜6mm
△:6mm超〜9mm
×:9mm超
表3に潤滑皮膜の厚みを変えた試料でプレス、縦壁部の塗装後耐食性を評価した結果を示す。プレス条件b、すなわち、熱間プレスで円筒絞り成形をすると潤滑皮膜の有無、量に関わらず全てプレス時に割れが発生した。熱間プレスにおいては絞り成形が困難であることを示す。一方、プレス条件a,すなわち、本発明の方法を使用すると冷間で絞り成形をするため成形可能であった。成形可能であったプレス品の断面硬度を板の中心部で調査し、全ての部位で硬度(ビッカース硬度)400以上であった。しかし、No.2のように潤滑皮膜を付与しないと冷間成形時のカジリがひどく、塗装後耐食性に劣る。潤滑皮膜を付与することでこれが劇的に改善されるが、厚すぎても塗装後耐食性は低下する傾向を示す(No.8、10)。本発明例のNo.3、5、6、つまり潤滑皮膜量が片面0.3〜2g/m2 の範囲で優れた塗装後耐食性を示した。
(実施例2)
実施例1に示した冷延鋼板を使用して、種々のめっきを施した。めっきは無酸化炉−還元炉タイプの装置で行い、付着量を両面80〜160g/m2 の範囲で変更した。この鋼板の表面に実施例1の潤滑皮膜を片面当たり0.5g/m2 付与し、円筒プレス試験をし、縦壁部の塗装後耐食性を評価した。これらの方法、評価基準も実施例1と同一である。表4にめっき種とプレス性、塗装後耐食性の結果を示す。
めっき種、付着量を変えた結果、どのめっき種、付着量でも潤滑皮膜付与によるカジリ抑制効果が認められた。断面硬度は全てビッカース硬度400以上であった。また、熱間プレスではやはりこのような円筒絞り形状には成形できなかった。
実施例1に示した冷延鋼板を使用して、種々のめっきを施した。めっきは無酸化炉−還元炉タイプの装置で行い、付着量を両面80〜160g/m2 の範囲で変更した。この鋼板の表面に実施例1の潤滑皮膜を片面当たり0.5g/m2 付与し、円筒プレス試験をし、縦壁部の塗装後耐食性を評価した。これらの方法、評価基準も実施例1と同一である。表4にめっき種とプレス性、塗装後耐食性の結果を示す。
めっき種、付着量を変えた結果、どのめっき種、付着量でも潤滑皮膜付与によるカジリ抑制効果が認められた。断面硬度は全てビッカース硬度400以上であった。また、熱間プレスではやはりこのような円筒絞り形状には成形できなかった。
Claims (7)
- 最表面に片面当り3g/m2 以下の潤滑皮膜を備えた表面処理鋼板を、冷間プレスにより成形し、850℃以上に加熱し、しかる後に金型で挟んで焼入れ処理を行うことを特徴とする高強度自動車用部材の製造方法。
- 金型を水冷することを特徴とする請求項1記載の高強度自動車用部材の製造方法。
- 鋼板が、C:0.05%以上、Mn:0.5〜4%を含有した、両面付着量80g/m2 以上のAl系めっき鋼板であることを特徴とする請求項1または2記載の高強度自動車用部材の製造方法。
- 鋼板が、C:0.05%以上、Mn:0.5〜4%を含有した、両面付着量80g/m2 以上のZn系めっき鋼板であることを特徴とする請求項1または2記載の高強度自動車用部材の製造方法。
- 潤滑皮膜中にポリオレフィン系ワックス、パラフィン系ワックスの少なくとも1種からなる潤滑性付与成分を含有せしめることを特徴とする請求項1〜4記載の高強度自動車用部材の製造方法。
- 潤滑皮膜中の潤滑性付与成分以外の成分が、ジルコニウム化合物と、バナジウム化合物と、シリカ化合物と、りん酸化合物と、水酸基、カルボニル基、及びカルボキシル基の少なくとも1種の官能基を有する有機化合物からなる複合皮膜であり、かつ複合皮膜中に片面当り、ジルコニウムとして2〜1200mg/m2 、バナジウムとして0.1〜300mg/m2 、PO4 換算として0.3〜450mg/m2 含有させることを特徴とする請求項1〜5記載の高強度自動車用部材の製造方法。
- 潤滑皮膜中に更にコバルト化合物を含有させることを特徴とする請求項6記載の高強度自動車用部材の製造方法。
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