JP2005298795A - セルロースアシレートフィルム、ハードコートフィルムおよび情報記録担体 - Google Patents

セルロースアシレートフィルム、ハードコートフィルムおよび情報記録担体 Download PDF

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Abstract

【課題】透過光や反射光のムラがないセルロースアシレートフィルム、透過光や反射光のムラがなく光入射表面の傷発生が効果的に防止されかつ保存安定性にも優れたハードコートフィルム、並びに光学的手段や磁気的手段などにより記録・再生が可能で、記録読みとり特性に優れ、光入射表面の傷発生が効果的に防止された情報記録担体を提供する。
【解決手段】セルロースアシレートフィルム上に少なくとも一層のハードコート層を塗布して成り、直径12cmの円内の膜厚最大変化幅が0.3μm以下であるハードコートフィルム、並びに光学的手段によって情報信号を再生可能な情報記録担体であって、支持体と、該支持体上に形成され情報信号を記録可能な記録層と、該記録層上に形成され光を透過する透光層とを少なくとも有し、該透光層が該ハードコートフィルムからなる情報記録担体。
【選択図】なし

Description

本発明は、光学特性にすぐれたセルロースアシレートフィルム、ハードコートフィルムおよび、光学的手段や磁気的手段などにより記録・再生が可能な情報記録担体に関し、特に光学的手段によって再生を行うことのできる情報記録担体に関する。
従来、レーザ光により1回限りの情報の記録が可能な追記型光情報記録担体として、CD−Rと称される記録担体が広く知られている。CD−Rは、市販のCDプレーヤを用いて再生できる利点を有しており、また最近ではパーソナルコンピュータの普及に伴ってその需要も増大している。また、CD−Rより大容量の記録が可能な情報記録担体として、デジタル・ハイビジョンの録画などに対応するための追記型デジタル・ヴァーサタイル・ディスク(DVD−R)も実用化されている。
これら追記型光情報記録担体としては、例えば、円盤状支持体上に、Auなどからなる光反射層と、有機化合物からなる記録層と、更に該記録層を保護する透光層(記録層と接着させるための接着層を含む。カバー層ともいう。)とが順次積層された構造のものが知られており、レーザ光が透光層側から照射されることで、記録及び再生を行うことができる。追記型光情報記録担体への情報の記録は、記録層のレーザ光照射部分がその光を吸収して局所的に発熱変形(例えば、ピットなどの生成)することにより行われる。一方、情報の再生は、通常、記録用のレーザ光と同じ波長のレーザ光を追記型光情報記録担体に照射して、記録層が発熱変形した部位(記録部分)と変形していない部位(未記録部分)との反射率の違いを検出することにより行われている。
最近、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。また、HDTV(High Definition Television)の放映も開始された。このような状況の下で、画像情報を安価簡便に記録することができる大容量の光情報記録担体が必要とされている。上記のDVD−Rは現状では大容量の記録担体としての役割を十分に果たしているが、大容量化、高密度化の要求は高まる一方であり、これらの要求に対応できる記録担体の開発も必要である。このため、光情報記録担体としては、更に、短波長の光で高密度の記録を行うことができる、より大容量の記録担体の開発が進められている。特に、1回限りの情報の記録が可能な追記型光情報記録担体は、大容量の情報の長期保存又はバックアップ用としての使用頻度が高まりつつあるため、その開発に対する要求は強い。
通常、光情報記録担体の高密度化は、記録及び再生用レーザの短波長化、ピックアップに使用する対物レンズの高NA(開口数(Numerical Aperture))化によりビームスポットを小さくすることで達成することができる。最近では、波長680nm、650nm及び635nmの赤色半導体レーザから、更に超高密度の記録が可能となる波長400nm〜500nmの青紫色半導体レーザ(以下、青紫色レーザと称する。)まで開発が急速に進んでおり、それに対応した光情報記録担体の開発も行われている。特に、青紫色レーザの発売以来、該青紫色レーザと高NAピックアップを利用した光記録システムの開発が検討されており、相変化する記録層を有する書換型光情報記録担体及び光記録システムは、既に、DVRシステムとして発表されている(例えば、非特許文献1参照)。これにより、書換型光情報記録担体における高密度化の課題に対しては、一定の成果が得られた。
上述のような青紫色レーザと高NAピックアップを利用した光記録システムに用いる光情報記録担体は、青紫色レーザ光を記録層に照射させる際、高NAの対物レンズの焦点を合わせるために、レーザ光が入射する情報記録担体表面から記録層まで(すなわち透光層)を薄化することが好ましい。このため規格上、透光層の厚みは100μmに設定されている。このような光情報記録担体は、上述のように高NAピックアップを利用しているため、ピックアップと透光層との間隔が小さく、光情報記録担体の面ブレによってピックアップと透光層とが接触してしまい、透光層に傷が発生しやすいという問題を有していた。
この問題に対して、透光層上にスピンコート法や真空堆積法を用いて傷つき防止層やハードコート層を設け、透光層の傷つきを防止する方法が既に提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。しかしながら、これらの傷つき防止層やハードコート層は、透光層上に枚葉式で設けられるため、生産性が低いという課題を有していた。また、スピンコート法でこれらの傷つき防止層やハードコート層を設ける場合、遠心力によりより外周部の層厚が厚くなりやすく、厚みの精度が十分ではないという課題を有していた。
一方、セルロースアシレートフィルムのような透明で薄いフィルムを用い、接着剤又は粘着剤を用いて記録層に接着することで透光層を構成する方法がある(例えば、特許文献3および4参照)。透光層の厚さは、通常、接着剤又は粘着剤が硬化し形成された接着層又は粘着剤層を含め約100μmであるが、照射されるレーザの波長やNAにより最適化される。このような方法で構成された情報記録担体は生産性は優れているものの、市販されているセルロースアシレートフィルムを用いると、記録特性や読みとり特性が不十分であることがわかった。
また、特許文献3や4に記載された光情報記録担体表面のハードコートフィルムを、そのままディスプレーや窓ガラス等に貼り合わせてみると、透過光や反射光のムラが生じており、製品のデザイン上もこのましくないものであった。
特許第3112467号明細書 特開2000−67468号公報 特開2002−170280号公報 特開2002−197723号公報 光メモリー国際シンポジウム(ISOM2000)予稿集,p.210−211
本発明は、透過光や反射光のムラがなく光学特性にすぐれたセルロースアシレートフィルム、ハードコートフィルム、および光学的手段や磁気的手段などにより記録・再生が可能な情報記録担体にあって、記録読みとり特性に優れた情報記録担体を提供することを目的とする。
また、本発明は、光入射表面の傷発生が効果的に防止され、保存安定性にも優れたハードコートフィルムおよび情報記録担体を提供することも目的とする。
本発明者らが鋭意検討を行った結果、以下の構成のセルロースアシレートフィルム、ハードコートフィルム及び情報記録担体により本発明の上記目的を達成できることが判った。
1.直径12cmの円内の膜厚最大変化幅が0.6μm以下であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
2.上記1に記載のセルロースアシレートフィルム上に少なくとも一層のハードコート層を塗布して成ることを特徴とするハードコートフィルム。
3.フィルム表面の鉛筆硬度が2H以上であることを特徴とする上記2に記載のハードコートフィルム。
4.セルロースアシレートフィルム上に少なくとも一層のハードコート層を塗布して成るハードコートフィルムにおいて、該セルロースアシレートフィルムが、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I−a)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルからなり、鉛筆硬度が2H以上であることを特徴とするハードコートフィルム。
(I−a) 2.3≦X+Y≦3.0
(II) 0≦X≦2.5
5.4記載のハードコートフィルムにおいて、該セルロースアシレートフィルムが、セルロースエステルと有機溶媒とを含有し、21質量%以上の固形分濃度を有するドープを用い、且つ、該ドープを支持体上に流延し、ウェブ(ドープ膜)を形成後、該支持体から該ウェブ(ドープ膜)を剥離する溶液流延製膜法により得られるものであることを特徴とするハードコートフィルム。
6.ハードコート層が、少なくとも多官能性アクリル酸エステル系モノマーと粉末状無機充填剤とを含有する硬化性組成物の硬化物からなり、ハードコート層中に該無機充填剤が5〜60質量%含まれることを特徴とする2〜5のいずれかに記載のハードコートフィルム。
7.2〜6のいずれかに記載のハードコートフィルムに粘着剤を塗設することによって形成されたことを特徴とする粘着剤付きハードコートフィルム。
8.光学的手段によって情報信号を再生可能な情報記録担体であって、支持体と、該支持体上に形成され情報信号を記録可能な記録層と、該記録層上に形成され光を透過する透光層とを少なくとも有し、該透光層が、直径12cmの円内の膜厚最大変化幅が0.3μm以下であるセルロースアシレートフィルムからなることを特徴とする情報記録担体。
9.光学的手段によって情報信号を再生可能な情報記録担体であって、支持体と、該支持体上に形成され、情報信号を記録可能な記録層と、該記録層上に形成され、光を透過する透光層とを少なくとも有し、該透光層が、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I−a)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルを少なくとも1種類含有することを特徴とする情報記録担体。
(I−a) 2.3≦X+Y≦3.0
(II) 0≦X≦2.5
10.透光層の表面に少なくとも一層のハードコート層が塗設されていることを特徴とする8又は9に記載の情報記録担体。
11.ハードコート層表面の鉛筆硬度が、2H以上であることを特徴とする8〜10のいずれかに記載の情報記録担体。
12.ハードコート層が、少なくとも多官能性アクリル酸エステル系モノマーと粉末状無機充填剤とを含有する硬化性組成物の硬化物からなり、ハードコート層中に該無機充填剤が5〜60質量%含まれることを特徴とする10または11に記載情報記録担体。
13.セルロースアシレートフィルムに粘着剤が塗設された粘着剤付きフィルムが、支持体と記録層とからなる基盤に貼り合わせられていることを特徴とする8〜12のいずれかに記載の情報記録担体。
本発明によれば、透過光や反射光のムラがなく、光学特性にすぐれたセルロースアシレートフィルム、透過光や反射光のムラがなく光学特性にすぐれ、光入射表面の傷発生が効果的に防止され、保存安定性にも優れたハードコートフィルムを提供することができる。また、このハードコートフィルムを、光学的手段により記録・再生が可能な情報記録担体の記録層上の透光層に用いることにより、記録読みとり特性に優れた情報記録担体を提供することができる。本発明の情報記録担体は、特に、青紫色レーザと高NAピックアップを利用した光記録システムに有効である。
以下、本発明の情報記録担体について更に詳述する。なお、本明細書において、素材の物性値や製品の特性値等を表す「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。
まず本発明のセルロースアシレートフィルムに関して述べる。
セルロースは六員環の基本分子構造をもち、この基本単位内に3つの水酸基(OH)を有している。セルロースを氷酢酸、プロピオン酸、酪酸、無水酢酸、無水プロピオン酸等を用いて水酸基をエステル化することによって、セルロースアシレートは合成することができ、合成条件によって、3つの水酸基のうちの一部、または全てをエステル化することができる。このうち特に水酸基を2個以上置換したセルロースアシレートは、溶剤を用いた流延法または溶融押し出し法によって薄いシート状に加工することができ、合成されたセルロースアシレートは、屈折率が1.5前後の透明体で、固有複屈折が小さく、光入射角度の依存性も小さいという特徴を持つ。そして、このセルロースアシレートにテンションをかけて得られるセルロースアシレートフィルムは、強靱でありながら、材料の固有複屈折を継承して、長手方向、横断方向の複屈折差も抑えられたフィルムとなるので、本発明の透光性フィルムとして好適である。
セルロースアシレートは、セルロース誘導体の合成条件を調整することにより、λ=350〜450nmの透過率を事実上透明(透過率70%以上、望ましくは80%以上)にすることが好ましい。セルロースアシレートは、セルロース誘導体の合成条件によって、黄変したり白化したりするが、このような材料を用いて情報記録担体を構成すると反射率が低下して再生信号出力が劣化することがあるためである。
セルロースアシレートフィルムは、その強靭性と難燃性から各種の写真材料や光学材料に用いられている。セルロースアシレートフィルムは、代表的な写真感光材料の支持体である。また、セルロースアシレートフィルムは、その光学的等方性から、近年市場の拡大している液晶表示装置にも用いられている。液晶表示装置における具体的な用途としては、偏光板の保護フィルムおよびカラーフィルターが代表的である。
セルロースアシレートフィルムは、一般にソルベントキャスト法またはメルトキャスト法により製造する。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを溶媒中に溶解した溶液(ドープ)を支持体上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。メルトキャスト法では、セルロースアシレートを加熱により溶融したものを支持体上に流延し、冷却してフィルムを形成する。ソルベントキャスト法の方が、メルトキャスト法よりも平面性の高い良好なフィルムを製造することができる。このため、実用的には、ソルベントキャスト法の方が普通に採用されている。ソルベントキャスト法については、多くの文献に記載がある。最近のソルベントキャスト法では、ドープを支持体上へ流延してから、支持体上の成形フィルムを剥離するまでに要する時間を短縮して、製膜工程の生産性を向上させることが課題になっている。例えば、特公平5−17844号公報には、高濃度ドープを冷却ドラム上に流延することにより、流延後、剥ぎ取りまでの時間を短縮することが提案されている。
ソルベントキャスト法に用いる溶媒は、単にセルロースアシレートを溶解することだけでなく、様々な条件が要求される。平面性に優れ、厚みの均一なフィルムを、経済的に効率よく製造するためには、適度な粘度とポリマー濃度を有する保存安定性に優れた溶液(ドープ)を調製する必要がある。ドープについては、ゲル化が容易であることや支持体からの剥離が容易であることも要求される。そのようなドープを調製するためは、溶媒の種類の選択が極めて重要である。溶媒については、蒸発が容易で、フィルム中の残留量が少ないことも要求される。セルロースアシレートの溶媒として様々な有機溶媒が提案されている。実用化されている有機溶媒としては実質的にはメチレンクロリドに限定されるが、メチレンクロリドはその環境適性、沸点等の問題を有しておりその代替となる溶媒の探索が行なわれている。
J.M.G.Cowie他の論文、Makromol,chem.,143巻、105頁(1971年)は、置換度2.80から置換度2.90のセルロースアシレートを、アセトン中で−80℃から−70℃に冷却した後、加温することにより、アセトン中にセルロースアシレートが0.5乃至5質量%に溶解している希薄溶液が得られたことを報告している(ただし、ここでのアシル基はアセチル基に限定されている)。以下、このように、セルロースアシレートと有機溶媒との混合物を冷却して、溶液を得る方法を「冷却溶解法」と称する。また、セルロースアシレートのアセトン中への溶解については、上出健二他の論文「三酢酸セルロースのアセトン溶液からの乾式紡糸」、繊維機械学会誌、34巻、57頁(1981年)にも記載がある。この論文は、その標題のように、冷却溶解法を紡糸方法の技術分野に適用したものである。論文では、得られる繊維の力学的性質、染色性や繊維の断面形状に留意しながら、冷却溶解法を検討している。この論文では、繊維の紡糸のために10乃至25質量%の濃度を有するセルロースアセテートの溶液を用いている。また、上記冷却溶解以外にも、混合物を高温、高圧条件下で溶解させる「高温溶解法」が提案されている。
このようにして、様々な溶媒に溶解されたセルロースアシレート溶液(ドープ)を支持体上に流延し、支持体からフィルムを剥離、乾燥する流延法においては、得られたセルロースアシレートフィルムの面状が良好でないことが多々あった。すなわち、ドープの粘度が高いために流延時の筋等が平滑化されずに残存してしまい、表面が平滑でなかったり、時には筋状故障として認識されてしまう。良好な面状を得るためには、ドープを希釈するか、乾燥を温和な条件で行なうことにより表面の平滑化を行なうしかなく、面状を対策することにより製造コストの上昇、製造速度の低下等の問題が発生することとなり、その対策が求められていた。
光学的手段により記録・再生が可能な光情報記録担体の表面を保護するために用いるセルロースアシレートフィルムあるいはセルロースアシレートフィルム表面に少なくとも1層のハードコート層を有するハードコートフィルムの場合、光情報記録担体の記録読みとり特性を向上させるためには、表面を覆うフィルムの膜厚ムラが少ないことが好ましく、この膜厚ムラは直径12cmの円内の膜厚最大変化幅が0.3μm以下であることが必要であることが分った。膜厚変動の変化幅は、好ましくは0.25μm以下であり、0.2μm以下であることがより好ましい。
また、透過光や反射光のムラがなく光学特性にすぐれ、光入射表面の傷発生が効果的に防止され、保存安定性にも優れたハードコートフィルムを提供したりする目的、あるいは上述のような光学的手段により記録・再生が可能な情報記録担体において記録読みとり特性に優れた情報記録担体を提供するためには直径12cmの円内の膜厚最大変化幅が0.3μm以下であるセルロースアシレートフィルムを用いることが重要であることが分った。
膜厚変動の変化幅は0.3μm以下であるときに好ましいが、より好ましくは0.25μm以下であり、0.2μm以下であることがさらに好ましい。
本発明の膜厚変動幅は接触式連続膜厚計で測定し、その最大膜厚部分と最小膜厚部分を測定することで求められる。具体的な測定方法としては、安立電気製の連続厚味計を用い、操作速度180mm/minで12cmの長さを2cm間隔で7回走査し、この中で最も厚い膜厚と、最も薄い膜厚との差を求めることによって、本発明の膜厚変動幅を求めることが出来る。
次に、このような膜厚変化幅にするためのセルロースアシレートフィルムの作成方法として、以下のような方法を用いることが好ましい。
(1)セルロースアシレートを溶剤に溶解してセルロースアシレート溶液を調製する工程、得られた溶液を平滑なバンドまたはドラム上に流延する工程、バンドまたはドラム上に形成された未乾燥フィルムをセルロースアシレートの貧溶剤で処理する工程、未乾燥フィルムをバンドまたはドラムから剥ぎ取る工程、そして、未乾燥フィルム乾燥する工程を、この順で実施するセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(2)(1)で未乾燥フィルムを貧溶剤で処理する工程で、未乾燥フィルムを貧溶剤に浸漬するかあるいは未乾燥フィルムに貧溶剤を噴霧する。
(3)(1)で貧溶剤を水、アルコールまたは炭化水素とする。
(4)(3)で貧溶剤を水、沸点120℃以下のアルコールまたは炭素原子数が10以下の炭化水素とする。
(5)(1)でセルロースアシレートを溶解する溶剤を、実質的に非塩素系の溶剤とする。
(6)(1)でセルロースアシレート溶液を調製する工程が、セルロースアシテートと溶剤との混合物を−80乃至−10℃に冷却する処理または80乃至220℃に加熱する処理を含む。
(7)(1)で溶液を流延する工程を、二層以上の層の共流延法により実施する。
(8)(1)で平均粒子径0.1μm以下のシリカ粒子、可塑剤または紫外線吸収剤を溶液に添加する。
本方法による具体的なセルロースアシレートフィルムの作成方法は特開2002−21064号公報に記載されている。
また、特開平10−235664号、同10−32853号、同11−254594号の各公報に記載されたセルロースアシレートフィルムの作成方法を併用することもできる。また、発明協会公開技報2001−1745号に記載されたセルロースアシレートフィルム用の各種添加剤、製造方法を適用することもできる。
さらに本発明の目的を達成するために用いるセルロースアシレートフィルムは以下の1〜16のような方法によって製造したのものであることが、保存後の記録、読みとり特性を向上させるために好ましい。
1.炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I−a)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルを1種類以上含むセルロースエステルと有機溶媒とを含有するドープを用いて溶液流延製膜法によりセルロースアシレートフィルムを製造する方法において、該ドープが21質量%以上の固形分濃度を有し、且つ、該ドープを支持体上に流延し、ウェブ(ドープ膜)を形成後、該支持体から該ウェブ(ドープ膜)を剥離することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(I−a) 2.3≦X+Y≦3.0
(II) 0≦X≦2.5
2.上記式(I−a)が下記式(I−b)で表されることを特徴とする前記1に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(I−b) 2.6≦X+Y≦3.0
3.有機溶媒がメチレンクロライドを含有することを特徴とする前記1または2に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
4.前記ドープが、融点が25℃以上の可塑剤Aと融点が25℃未満の可塑剤Bとを合計で1〜20質量%含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
5.前記ドープが、融点が20℃以下の紫外線吸収剤を含有することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
6.前記ドープが微粒子を含有することを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
7.セルロースアシレートフィルムの20Hzにおけるインピーダンスの絶対値が4×105Ω以上であることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
8.支持体からウェブ(ドープ膜)を剥離後、該ウェブ(ドープ膜)の残留溶媒量が35質量%以下の状態から、テンターをかけながら、該残留溶媒量が10質量%以下になるまで乾燥させる工程を有することを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
9.搬送速度30〜150m/分で支持体上にウェブ(ドープ膜)を形成することを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
10.セルロースアシレートフィルムの乾燥膜厚が20〜65μmであることを特徴とする前記1〜9のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
11.支持体からウェブ(ドープ膜)を剥離する際に、剥離張力190N/m以下で剥離し、更に搬送張力190N/m以下で乾燥させることを特徴とする前記1〜10のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
12.Yがプロピオニル基の置換度であることを特徴とする前記1〜11のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
13.前記1〜12のいずれか1項に記載の製造方法で作製されたことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法は、炭素原子数が2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をX、またプロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとして、前記式(I−a)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルを、有機溶媒に溶解させてセルロースエステルドープとし、該ドープを用いて溶液流延製膜法で製膜するセルロースアシレートフィルムの製造方法であり、そのドープ中の固形分の濃度を21.0質量%以上に調製することに特徴がある。ドープ中の固形分とは、セルロースエステル、添加剤等有機溶媒中に溶解している構成成分を表す。
更に好ましくは、前記式(I−b)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルを用い、特に好ましくは、アセチル置換度Xが2.0未満であるセルロースエステルを用いて溶液流延製膜法で製膜するセルロースアシレートフィルム及びその製造方法である。
本発明に係るセルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹または広葉樹由来)、ケナフなどを挙げることが出来る。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。本発明に係るセルロースエステルは、セルロース原料をアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて反応して得られる。
アシル化剤が酸クロライド(CH3COCl、C25COCl、C37COCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には、特開平10−45804号に記載の方法等を参考にして合成することが出来る。また、本発明に係るセルロースエステルは各置換度に合わせて上記アシル化剤量を調製混合して反応させたものであり、セルロースエステルはこれらアシル基がセルロース分子の水酸基に反応する。
セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が置換された数を置換度という。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している(実際には2.6〜3.0)。
本発明に係るセルロースエステルとしては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、またはセルロースアセテートプロピオネートブチレートのようなアセチル基の他にプロピオネート基あるいはブチレート基が結合したセルロースエステルが挙げられる。なお、ブチレートを形成するブチリル基としては、直鎖状でも、分岐していてもよい。
アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することが出来る。
本発明に係るセルロースエステルの数平均分子量は、70,000〜250,000が、成型した場合の機械的強度が強く、且つ、適度なドープ粘度となり好ましく、更に好ましくは、80,000〜150,000である。
本発明に係る有機溶媒としては、セルロースエステルを溶解でき、かつ、適度な沸点であることが好ましく、例えばメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることが出来るが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げられる。
また、下記の製膜工程に示すように、溶媒蒸発工程において支持体上に形成されたウェブ(ドープ膜)から溶媒を乾燥させるときに、ウェブ中の発泡を防止する観点から、用いられる有機溶媒の沸点としては、30〜80℃が好ましく、例えば、上記記載の良溶媒の沸点は、メチレンクロライド(沸点40.4℃)、酢酸メチル(沸点56.32℃)、アセトン(56.3℃)、酢酸エチル(76.82℃)等である。
上記記載の良溶媒の中でも溶解性に優れるメチレンクロライド、酢酸メチルが好ましく用いられ、特にメチレンクロライドが全有機溶媒に対して50質量%以上含まれていることが好ましい。
上記有機溶媒の他に、0.1〜30質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。特に好ましくは10〜30質量%で前記アルコールが含まれることが好ましい。
これらは上記記載のドープを流延用支持体に流延後、溶媒が蒸発を始めアルコールの比率が多くなるとウェブ(ドープ膜)がゲル化し、ウェブを丈夫にし流延用支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらが割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることが出来る。
これらのうちドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性も良く、且つ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。更に、好ましくはメチレンクロライド70〜85質量%に対してエタノール15〜30質量%を含む溶媒を用いることである。環境上の制約でハロゲンを含む溶媒を避ける場合は、メチレンクロライドの代わりに酢酸メチルを用いることもできる。
上記記載のセルロースエステルと有機溶媒を用いて、次のように製膜を行う。なお、本発明において、セルロースエステル溶液のことをセルロースエステルドープまたは単にドープという。
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法に用いられる製膜工程は、下記に示す溶解工程、流延工程、溶媒蒸発工程、剥離工程、乾燥工程及び巻き取り工程からなる。以下に各々の工程を説明する。
《溶解工程》溶解釜中で、上記記載の良溶媒を主とする有機溶媒にセルロースエステルのフレークを攪拌しながら溶解し、ドープを形成する工程である。
本発明では、ドープ中の固形分濃度は21.0質量%以上であり、ドープ中の固形分濃度を21.0質量%以上に調整することにより、カールが少ないフィルムが得られ、製造中のロール汚れを著しく低減できるが、更にその効果を得るためには、固形分濃度としては22.0質量%以上が好ましく、更に好ましくは23質量%以上である。
ドープ中の固形分濃度の上限は特にないが、あまり高すぎるとドープの粘度が高くなりすぎ、流延時にシャークスキンなどが生じてフィルム平面性が劣化する場合があるので、通常40質量%が上限である。
ドープ粘度は10〜50Pa・sの範囲に調製されることが好ましい。溶解には、常圧で行う方法、上記記載のような好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)の沸点以下で行う方法、上記記載の良溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、冷却溶解法で行う方法、高圧で行う方法等種々の溶解方法等がある。良溶媒の沸点以上の温度で、かつ沸騰しない圧力をかけて溶解する方法としては、40.4〜120℃で0.11〜1.50MPaに加圧することで発泡を抑え、かつ、短時間に溶解することができる。
本発明に係る溶解工程において用いられる溶媒としては、単独でも併用でもよいが、良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが、生産効率の点で好ましく、更に好ましくは、良溶剤と貧溶剤の混合比率は良溶剤が70〜95質量%であり、貧溶剤が30〜5質量%である。
本発明に用いられる良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルの結合酢酸量によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いるときには、セルロースエステルの結合酢酸量55%では良溶剤になり、結合酢酸量60%では貧溶剤となってしまう。
また、セルロースエステルを溶解する際に、まず、良溶剤と貧溶剤の一部を用いて、先にセルロースエステルを溶解した後、後から残りの貧溶剤を添加する事も出来る。本発明に用いられる貧溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン等が好ましく用いられる。
冷却溶解方法としては、例えば特開平9−95538号、同9−95544号、同9−95557号に記載の方法を使用することが出来る。また、特開平11−21379号に記載の高圧溶解方法も好ましく使用出来る。
溶解後ドープを濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送ることが好ましく、また、その際、ドープ中には、可塑剤、酸化防止剤、染料、マット剤等も添加されることがある。
これらの化合物は、セルロースエステル溶液の調製の際に、セルロースエステルや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
また液晶画面表示装置用には耐熱耐湿性を付与する可塑剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤、マット剤などを添加することが好ましい。
上記酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイト等が挙げられる。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
また、この他、カオリン、タルク、ケイソウ土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナ等の無機微粒子、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩などの熱安定剤を加えてもよい。
更に帯電防止剤、難燃剤、滑剤、油剤等も加えることができる。
《流延工程》ドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、無限に移送する無端の金属ベルトあるいは回転する金属ドラムの流延用支持体(以降、単に支持体ということもある)上に加圧ダイからドープを流延する工程である。流延用支持体の表面は鏡面となっている。
その他の流延する方法は流延されたドープ膜をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調製出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。
製膜速度を上げるために加圧ダイを流延用支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法においては、乾燥膜厚で20〜65μmのフィルムを作製するという観点からは、支持体上へのドープの製膜速度を30m/m以上に調整することが好ましく、特に良好な平面性を有するフィルムを得るという観点から、製膜速度として、30〜150m/分に調整することが好ましい。
《溶媒蒸発工程》ウェブ(本発明においては、流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜をウェブと呼ぶ)を流延用支持体上で加熱し溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/または支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が乾燥効率が好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。
《剥離工程》支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で支持体から剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。
剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
支持体上の剥離位置における温度は、好ましくは10〜40℃であり、更に好ましくは11〜30℃である。また、剥離を容易にする観点から、該剥離位置におけるウェブの残留溶媒量は20〜100質量%が好ましく、更に好ましくは40〜90質量%である。
本発明に係るウェブの残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量={1−(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)}×100%
尚、残留溶媒量を測定する際の、加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
上記のように剥離時の残留溶媒量に調整するには、流延後の流延用支持体の表面温度を制御し、ウェブからの有機溶媒の蒸発を効率的に行えるように、流延用支持体上の剥離位置における温度を上記記載の温度範囲に設定することが好ましい。支持体温度を制御するには、伝熱効率のよい伝熱方法を使用するのがよく、例えば、液体による裏面伝熱方法が好ましい。
輻射熱や熱風等による伝熱方法は支持体温度のコントロールが難しく、好ましい方法とはいえないが、ベルト(支持体)マシンにおいて、移送するベルトが下側に来た所の温度制御には、緩やかな風でベルト温度を調節することが出来る。
支持体の温度は、加熱手段を分割することによって、部分的に支持体温度を変えることが出来、流延用支持体の流延位置、乾燥部、剥離位置等異なる温度とすることが出来る。
製膜速度を上げる方法(残留溶媒量が出来るだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることが出来る)として、残留溶媒が多くとも剥離出来るゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。
それは、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。
また、ドープ中に金属塩を加える方法もある。支持体上でゲル化させ膜を強くすることによって、剥離を早め製膜速度を上げることが出来るのである。
残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易く、経済速度と品質との兼ね合いで剥離残留溶媒量を決められる。
支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、通常196〜245N/mで剥離が行われるが、セルロースエステルの単位質量あたりの紫外線吸収剤の含有量が多く、且つ、従来よりも薄膜化されている本発明のセルロースアシレートフィルムは、剥離の際にシワが入りやすいため、190N/m以下で剥離することが好ましく、更には、剥離できる最低張力〜166.6N/m、次いで、最低張力〜137.2N/mで剥離することが好ましいが、特に好ましくは、最低張力〜100N/mで剥離することである。剥離張力が低いほど面内リターデーションR0が低く保てるため好ましい。面内リターデーションR0は20nm未満であることが好ましく、更には、10nm未満、次いで、5nm未満であることが好ましいが、最も好ましくは0〜1nmである。
《乾燥工程》ウェブを千鳥状に配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置及び/またはクリップまたはピンでウェブの両端を保持して搬送するテンター装置を用いて巾保持しながら、ウェブを乾燥する工程である。乾燥工程における搬送張力も可能な範囲で低めに維持することがR0が低く維持できるため好ましく、190N/m以下であることが好ましい。更に好ましくは170N/m以下であることが好ましく、更に好ましくは140N/m以下であることが好ましく100〜130N/mであることが特に好ましい。特に、フィルム中の残留溶媒量が少なくとも5質量%以下となるまで上記搬送張力以下に維持することが効果的である。
乾燥の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。あまり急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通し、通常乾燥温度は40〜250℃が好ましく、更に好ましくは、70〜180℃である。
使用する溶媒によって、乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて乾燥条件を適宜選べばよい。
流延用支持体面から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブは巾方向に収縮しようとする。
高温度で急激に乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、出来上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。
この観点から、例えば、特開昭62−46625号に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を巾方向にクリップまたはピンでウェブの巾両端を巾保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式と呼ばれる)、中でも、クリップを用いるテンター方式、ピンを用いるピンテンター方式が好ましく用いられる。
尚、この様に幅把持しながら乾燥することで得られるフィルムのカールが小さくできるとの効果が得られることが分かった。このとき幅手方向の延伸倍率は×1.00〜×1.10であることが好ましく、×1.03〜×1.07であることが更に好ましい。テンターを行う場合のウェブの残留溶媒量は、テンター開始時に35質量%以下であるのが好ましく、且つ、ウェブの残留溶媒量が10質量%以下になるまでテンターをかけながら乾燥を行う事が好ましく、更に好ましくは5質量%以下である。
また、セルロースアシレートフィルムの乾燥工程においては、支持体より剥離したフィルムを更に乾燥し、残留溶媒量を3質量%以下にすることが好ましい、更に好ましくは、0.5質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール懸垂方式か、上記記載のようなピンテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が採られる。液晶表示部材用としては、ピンテンター方式で幅を保持しながら乾燥させることが、寸法安定性を向上させるために好ましい。特に支持体より剥離した直後の残留溶剤量の多いところで幅保持を行うことが、寸法安定性向上効果をより発揮するため特に好ましい。フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行う。簡便さの点で熱風で行うのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性を良くするためさらに好ましい。
《巻き取り工程》ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってからセルロースアシレートフィルムとして巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることが出来る。
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
セルロースアシレートフィルムの膜厚は、通常5〜500μmの範囲にあり、更に20〜250μmの範囲が好ましく、20〜100μmの膜厚のセルロースアシレートフィルムが特に好ましい。
膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、流延用支持体の速度等をコントロールするのがよい。
また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。溶液流延製膜法を通しての流延直後から乾燥までの工程において、乾燥装置内の雰囲気を、空気とするのもよいが、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気で行ってもよい。
ただ、乾燥雰囲気中の蒸発溶媒の爆発限界の危険性は常に考慮されなければならないことは勿論のことである。
本発明のセルロースアシレートフィルムは可塑剤を含有するのが好ましい。本発明に係る可塑剤について説明する。
本発明に係る可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステルが好ましく用いられ、また、本発明では、特に融点が25℃以下の可塑剤を含むことが好ましく、更には、セルロースアシレートフィルムが融点が25℃未満の可塑剤と25℃以上の可塑剤を併用して含有することが好ましい。
可塑剤としては特に限定はないが、リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)、ビフェニル−ジフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
カルボン酸エステル系可塑剤としては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的なものである。フタル酸エステルの例としては、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、エチルフタリルエチルグリコレート等が用いられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリエチル(OACTE)およびクエン酸アセチルトリブチル(OACTB)が用いられる。
グリコール酸エステル系可塑剤としては、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を単独あるいは併用するのが好ましい。
その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。
本発明においては、リン酸エステル系の可塑剤と融点25℃未満の可塑剤を併用することが寸法安定性、耐水性に優れるため特に好ましい。
本発明に係る融点25℃未満の可塑剤としては、融点が25℃未満であれば特に限定されず、上記可塑剤の中から選ぶことができる。例えば、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、トリアセチン、エチルフタリルエチルグリコレート等をあげることができる。これらの可塑剤を単独あるいは併用するのが好ましい。
本発明において用いられる融点が25℃未満の可塑剤は、特に融点が−5〜25℃であることが好ましい。
本発明に係る融点が25℃以上の可塑剤としては、例えば、ジエトキシエチルフタレート(融点34℃)、トリフェニルホスフェート(融点48.5℃)、ベンゾフェノン(融点48℃)、樟脳(融点152℃)、o−クレジル−p−トルエンスルホネート(52.5℃)、シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミド(86℃)、メチルベンゾイルベンゾエート(52℃)、エチルベンゾイルベンゾエート(融点58℃)等が挙げられる。
このうち、融点が80℃未満のものは温度変化によって組成が変化するため、融点は80℃以上であることが好ましく、特に好ましくは100℃以上であることが好ましい。
本発明中の融点とは、共立出版株式会社出版の化学大事典に記載されている真の凝固点を融点としている。
これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して1〜15質量%が好ましい。液晶表示部材用としては、寸法安定性の観点から5〜15質量%が更に好ましく、特に好ましくは、7〜12質量%である。本発明においては、融点が25℃以上の可塑剤と融点が25℃未満の可塑剤のセルロースアシレートフィルム中の合計の含有量としては、1〜20質量%であることが好ましい。
また、セルロースアシレートフィルムに対して融点が25℃未満の可塑剤の含有量は1〜10質量%が好ましく、更に好ましくは、3〜7質量%である。
全可塑剤のうち融点が25℃未満の可塑剤の占める割合は多い方が、セルロースアシレートフィルムの柔軟性が良化し加工性に優れるため好ましい。
融点が25℃未満の可塑剤をセルロースエステルに対して1質量%以上使用することにより、セルロースアシレートフィルムの柔軟性が良化し加工性に優れるため好ましい。14℃未満の可塑剤を使用すると加工性がさらに良く好ましい。
加工性とはフィルムをスリット加工や打ち抜き加工する際のことで、加工性が悪いと切断面がノコギリ状になり切り屑が発生し、製品に付着して欠陥となるため好ましくない。
本発明のセルロースアシレートフィルムに係る紫外線吸収剤について説明する。本発明のセルロースアシレートフィルムは、劣化防止の観点から紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。具体的には380nmの透過率が10%未満であることが好ましく、特に5%未満であることがより好ましい。
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。又、特開平6−148430号記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては下記一般式〔1〕で示される化合物が好ましく用いられる。
Figure 2005298795
式中、R1、R2、R3、R4及びR5は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシル基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基または5〜6員の複素環基を表し、R4とR5は閉環して5〜6員の炭素環を形成してもよい。
また、上記記載のこれらの基は、任意の置換基を有していて良い。以下に本発明に係る紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、Ciba製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109、Ciba製)
上記の中で、融点が20℃以下の紫外線吸収剤としては、UV−8が融点が−56℃であり、UV−9が常温(25℃)で黄色透明な粘稠液体である。
また本発明に係る紫外線吸収剤のひとつであるベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記一般式〔2〕で表される化合物が好ましく用いられる。
Figure 2005298795
式中、Yは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、及びフェニル基を表し、これらのアルキル基、アルケニル基及びフェニル基は置換基を有していてもよい。Aは水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基または−CO(NH)n-1−D基を表し、Dはアルキル基、アルケニル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。m及びnは1または2を表す。
上記において、アルキル基としては、例えば、炭素数24までの直鎖または分岐の脂肪族基を表し、アルコキシル基としては例えば、炭素数18までのアルコキシル基で、アルケニル基としては例えば、炭素数16までのアルケニル基で例えばアリル基、2−ブテニル基などを表す。又、アルキル基、アルケニル基、フェニル基への置換分としてはハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子など、ヒドロキシル基、フェニル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子などを置換していてもよい)などが挙げられる。
以下に一般式〔2〕で表されるベンゾフェノン系化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
本発明で好ましく用いられる上記記載の紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
本発明に係る紫外線吸収剤添加液の添加方法としては、下記に記載の方法が挙げられる。
《添加方法A》紫外線吸収剤添加液の調製方法としては、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶剤に紫外線吸収剤を溶解してから直接ドープ組成中に添加する。
《添加方法B》紫外線吸収剤添加液の調製方法としては、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶剤に紫外線吸収剤と少量のセルロースエステルを溶解してからインラインミキサーでドープに添加する。
本発明においては、添加方法Bの方が、紫外線吸収剤の添加量を容易に調整できるため、生産性に優れていて好ましい。
紫外線吸収剤の使用量は化合物の種類、使用条件などにより一様ではないが、通常はセルロースアシレートフィルム1m2当り、0.2〜2.0gが好ましく、0.4〜1.5gがさらに好ましく、0.6〜1.0gが特に好ましい。
本発明においては、特に、融点が50℃以上の紫外線吸収剤がフィルムの湿度安定性を向上されるために好ましく用いることができる。より好ましい紫外線吸収剤の融点は80℃以上である。
また、本発明の光記録媒体に用いるためには記録、読みとりに用いる光波長の光吸収が少ないことが好ましい。具体的には青色レーザーを用いる高密度光記録媒体に用いるためには390〜420nmの光吸収が5%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以下であることが好ましい。さらに405nmの光吸収が5%以下、特に好ましくは3%以下で有ることが好ましい。このため、用いる紫外線吸収剤の長波端は400nm以下であることが好ましく、390nm以下であることが更に好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムに添加できる微粒子について説明する。本発明に係る微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースエステル積層フィルムの濁度を低減できるので、二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
二酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。
酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。
上記記載のシリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
本発明に係る微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。
本発明に係る微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子を観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって、1次平均粒子径とした。
微粒子の、見掛比重としては、70g/リットル以上が好ましく、更に好ましくは、90〜200g/リットルであり、特に好ましくは、100〜200g/リットルである。見掛比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましく、また、本発明のように固形分濃度の高いドープを調製する際には、特に好ましく用いられる。
1次粒子の平均径が20nm以下、見掛比重が70g/リットル以上の二酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることができる。また例えばアエロジル200V、アエロジルR972V(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、それらを使用することができる。
本発明において、上記記載の見掛比重は二酸化珪素微粒子を一定量メスシリンダーに採り、この時の重さを測定し、下記式で算出した。
見掛比重(g/リットル)=二酸化珪素質量(g)÷二酸化珪素の容積(リットル)
本発明に係る微粒子の分散液を調製する方法としては、例えば以下に示すような3種類が挙げられる。
《調製方法A》溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープ液に加えて撹拌する。
《調製方法B》溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別に溶剤に少量のセルローストリアセテートを加え、撹拌溶解する。これに前記微粒子分散液を加えて撹拌する。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
《調製方法C》溶剤に少量のセルローストリアセテートを加え、撹拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
調製方法Aは二酸化珪素微粒子の分散性に優れ、調製方法Cは二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい点で優れている。中でも、上記記載の調製方法Bは二酸化珪素微粒子の分散性と、二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
《分散方法》二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がさらに好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
セルロースエステルに対する二酸化珪素微粒子の添加量はセルロースエステル100質量部に対して、二酸化珪素微粒子は0.01〜0.3質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部がさらに好ましく、0.08〜0.12質量部が最も好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方がヘイズが低く、凝集物も少ない点が優れている。
分散機は通常の分散機が使用できる。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。二酸化珪素微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。
メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミルなどがあげられる。
メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.807MPa以上であることが好ましい。更に好ましくは19.613MPa以上である。またその際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。
上記のような高圧分散装置にはMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)あるいはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)社製UHN−01等が挙げられる。
また、本発明に係る微粒子を含む層を流延支持体に直接接するように流延することが、滑り性が高く、ヘイズが低いフィルムが得られるので好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、周波数20Hzにおけるインピーダンスの絶対値が4×105Ω以上であることが好ましく、更に好ましくは5×105〜5×1020Ω、最も好ましくは8×105〜1×1014Ωである。
公知のように材料の導電性は、陽イオン、陰イオンもしくは電子、正孔など粒子中に存在する電荷担体により発現し、主な電荷担体がイオンのとき固体電解質となり、電荷担体が電子の場合は半導体となる。
更に、導電性について詳細な検討を行ったところ、一般には次の公知の一般式(A)式に見られるように材料の導電性が上がれば、抵抗の項を含むインピーダンスZの絶対値が減少することは良く知られている。
一般式(A)|Z|=〔R2+(1/ωC)2〕1/2
但し、Z:インピーダンス
R:抵抗
C:静電容量
ω:2πf
f:周波数
本発明において、フィルム材料のインピーダンス測定に関しては、電子部品の誘電率測定に用いる一般のインピーダンス測定装置を用いることができるが、好ましくは周波数1Hz以上の測定が可能なインピーダンス測定装置と、フィルム測定用電極を組み合わせた装置である。例えば、横河・ヒューレット・パッカード社製プレシジョンLCRメーターHP4284AとHP16451Bの組み合わせである。他の装置を用いる場合には、電極部分の補正を行う必要がある。
本発明に記載の効果を得る為には、フィルム材料のインピーダンスを正しく測定する必要があるので、補正不可能の装置を用いた場合には、好ましい結果が得られない。この装置の組み合わせで更に20Hzにおけるインピーダンスの絶対値を求める一例を詳細に記すが、フィルム材料の正確な周波数20Hzのインピーダンスの絶対値が測定できるならば、本発明では測定方法を制限しない。
平行な平面で構成される二電極とガード電極を有するHP16451Bの接続されたプレシジョンLCRメーターHP4284Aを用い、23℃、20%RH雰囲気下で、空隙法によりフィルム材料のインピーダンスの絶対値を計測する。
空隙法の測定に関しては、HP16451Bの取り扱い説明書に記載された電極非接触法に従う。サンプルの大きさについては、電極平面よりも大きければ特に制限は無いが、主電極の直径が3.8cmの場合には、大きさ6cm×6cmから5cm×5cmの正方形サンプルが好ましい。サンプルの直流電流を用いて測定された表面比抵抗の大きさが表裏で等しければ、どちらの面を上方にしてもよいが、表裏で等しくなければ表面比抵抗の値が低い面を上方に向け、平行な平面で構成される二電極間にサンプルを設置し交流電圧をかけながら空隙法で計測する。
計測された好ましい範囲は、面積が11から12cm2の電極を用いて測定した周波数20Hzにおけるインピーダンスの絶対値が4×105Ω以上、好ましくは5×105Ω以上5×1020Ω以下、更に好ましくは8×105Ω以上1×1014Ω以下である。
導電性を有する物質を添加することで好ましいインピーダンスを有する光学フィルムを得ることができる。導電性物質としては特に限定はされないが、イオン導電性物質や導電性微粒子あるいはセルロースエステルと相溶性を有する帯電防止剤などを用いることができる。
ここでイオン導電性物質とは電気伝導性を示し、電気を運ぶ担体であるイオンを含有する物質のことであるが、例えば、イオン性高分子化合物を挙げることができる。
イオン性高分子化合物としては、特公昭49−23828号、同49−23827号、同47−28937号にみられるようなアニオン性高分子化合物;特公昭55−734号、特開昭50−54672号、特公昭59−14735号、同57−18175号、同57−18176号、同57−56059号などにみられるような、主鎖中に解離基をもつアイオネン型ポリマー;特公昭53−13223号、同57−15376号、特公昭53−45231号、同55−145783号、同55−65950号、同55−67746号、同57−11342号、同57−19735号、特公昭58−56858号、特開昭61−27853号、同62−9346号にみられるような、側鎖中にカチオン性解離基をもつカチオン性ペンダント型ポリマー;等を挙げることができる。
また、導電性微粒子の例としては導電性を有する金属酸化物が挙げられる。金属酸化物の例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V25等、或いはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、TiO2及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加、TiO2に対してはNb、Ta等の添加、又SnO2に対しては、Sb、Nb、ハロゲン元素等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01mol%〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1mol%〜15mol%の範囲が特に好ましい。
また、これらの導電性を有する金属酸化物粉体の体積抵抗率は107Ωcm以下特に105Ωcm以下であって、1次粒子径が10nm以上0.2μm以下で、高次構造の長径が30nm以上6μm以下である特定の構造を有する粉体をフィルム内の少なくとも一部の領域に体積分率で50%以下含んでいることが好ましく、更に好ましくは、0.01%〜20%含んでいることである。
特に好ましくは、特開平9−203810号に記載されているアイオネン導電性ポリマーあるいは分子間架橋を有する第4級アンモニウムカチオン導電性ポリマーなどを含有することが望ましい。
架橋型カチオン性導電性ポリマーの特徴は、得られる分散性粒状ポリマーにあり、粒子内のカチオン成分を高濃度、高密度に持たせることができるため、優れた導電性を有しているばかりでなく、低相対湿度下においても導電性の劣化は見られず、粒子同志も分散状態ではよく分散されているにもかかわらず、流延後造膜過程において粒子同志の接着性もよいため膜強度も強く、また他の物質例えば支持体の樹脂にも優れた接着性を有し、耐薬品性に優れている。
架橋型のカチオン性導電性ポリマーである分散性粒状ポリマーは一般に約0.01μm〜0.3μmの粒子サイズ範囲にあり、好ましくは0.05μm〜0.15μmの範囲の粒子サイズが用いられる。ここで用いている"分散性粒状性ポリマー"の語は、視覚的観察によって透明またはわずかに濁った溶液に見えるが、電子顕微鏡の下では粒状分散物として見えるポリマーである。
本発明においては、微粒子とセルロースエステルの比率は微粒子1質量部に対して、セルロースエステルが1〜10質量部が好ましく、透過率、ヘイズの点で添加量が少ない方が好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムには、種々の外的な圧力から情報記録層や透光層の光透過性の変化を生じないようにすることが重要であり、このため表面の鉛筆硬度を2H以上にすることが好ましい。
表面の耐擦傷性を向上させるために、例えば特開2003−99982号公報には、最表面にシリコーン系潤滑剤やフッ素系潤滑剤または脂肪酸エステル系潤滑剤を用いることが記載されている。しかしながら、この方法では表面に対して水平に近い方向で加わる力に対しては強いものの、表面に対して垂直に加わる力に対しては弱いという欠点があった。従って、情報記録担体の保存性を向上させるためには、鉛筆硬度を高めることが必要である。
鉛筆硬度に関しては、JIS S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS−K−5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い、9.8Nの荷重にて傷が認められない鉛筆の硬度として求めることができる。
要求される鉛筆硬度としては2H以上であることが好ましく、より好ましくは3H以上であり、4H以上であることがさらに好ましい。
このような鉛筆硬度を達成するためには、透光層が上記透光性フィルム上に、放射線硬化樹脂を含む硬化性組成物から形成される硬化皮膜からなるハードコート層を有することが好ましい。以下、本発明の透光性フィルムを支持体として、該支持体上にハードコート層を塗布したものをハードコートフィルムと称するが、本発明で用いられるハードコートフィルムとしては以下のようなものが挙げられる。
(1)特許第1815116号明細書記載のように層の硬度を上げるために、該層の樹脂形成成分を多官能性アクリル酸エステル系モノマーとし、これにアルミナ、シリカ、酸化チタン等の粉末状無機充填剤および重合開始剤を含有する被覆用組成物を支持体上に塗布したハードコートフィルム。
(2)特許1416240号明細書記載のアルコキシシラン等で表面処理したシリカもしくはアルミナからなる無機質の装填材料を含む光重合性組成物がさらに架橋有機微粒子を充填したハードコートフィルム。
(3)特開2000−52472号公報記載のハードコート層を2層構成とし、第一層に微粒子のシリカを添加するハードコートフィルム。
(4)特開2000−71392号公報記載のハードコート層を2層構成とし、下層をラジカル硬化性樹脂とカチオン硬化性樹脂のブレンドからなる硬化樹脂層を使用し、上層にラジカル硬化性樹脂のみからなる硬化樹脂層を使用したハードコートフィルム。
(5)特開2002−248619号公報記載の充填材と樹脂を熔融混練、押出し成型で作製されるハードコートフィルム。
これらのハードコートフィルムは上記公報の明細書記載のままでは充分な硬度が得られない場合が含まれるが、その場合、各々、以下のような調製方法の改善によって所望の硬度を得ることができる。
(1)多官能性アルキルエステルモノマーの官能基数増加、無機充填剤や開始剤量の増量
(2)無機質充填剤の増量
(3)1層目のシリカ量の増量
(4)ラジカル硬化樹脂の比率増加
(5)充填剤の増量
このなかで、ハードコート層が少なくとも多官能性アクリル酸エステル系モノマーと粉末状充填剤とを含有する硬化性組成物の硬化物からなり、ハードコート層中に充填剤が5〜60質量%含まれるものが好ましい。微粒子を添加することでハードコート層の硬化収縮量を低減できるため、支持体との密着性が向上したり、カールを低減でき好ましい。微粒子としては、無機微粒子、有機微粒子、有機−無機複合微粒子のいずれも使用できる。無機微粒子としては例えば、二酸化ケイ素粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化アルミニウム粒子などが挙げられる。このような無機微粒子は一般に硬質であり、ハードコート層に充填させることで、硬化時の収縮を改良できるだけではなく、表面の硬度も高めることができる。
ただし、微粒子は一般にヘイズを増加させる傾向があるために、各必要特性のバランスの上で充填方法が調整される。
一般に、無機微粒子は、多官能ビニルモノマーや硬化により生成するポリマーなどの有機成分との親和性が低いため単に混合するだけでは凝集体を形成したり、硬化後のハードコート層がひび割れやすくなる場合がある。本発明では無機微粒子と有機成分との親和性を増すため、無機微粒子表面を有機セグメントを含む表面修飾剤で処理することができる。表面修飾剤は、無機微粒子と結合を形成するか無機微粒子に吸着しうる官能基と、有機成分と高い親和性を有する官能基を同一分子内に有するものが好ましい。
無機微粒子に結合もしくは吸着し得る官能基を有する表面修飾剤としては、シラン、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム等の金属アルコキシド表面修飾剤や、リン酸基、硫酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等のアニオン性基を有する表面修飾剤が好ましい。
さらに有機成分との親和性の高い官能基としては単に有機成分と親疎水性を合わせただけのものでもよいが、有機成分と化学的に結合しうる官能基が好ましく、特にエチレン性不飽和基、もしくは開環重合性基が好ましい。
本発明において好ましい無機微粒子表面修飾剤は、金属アルコキシド、またはアニオン性基とエチレン性不飽和基もしくは開環重合性基とを同一分子内に有する硬化性樹脂である。
これら表面修飾剤の代表例として以下の不飽和二重結合含有のカップリング剤や、リン酸基含有有機硬化性樹脂、硫酸基含有有機硬化性樹脂、カルボン酸基含有有機硬化性樹脂等が挙げられる。
S−1 H2C=C(X)COOC36Si(OCH33
S−2 H2C=C(X)COOC24OTi(OC253
S−3 H2C=C(X)COOC24OCOC510OPO(OH)2
S−4 (H2C=C(X)COOC24OCOC510O)2POOH
S−5 H2C=C(X)COOC24OSO3
S−6 H2C=C(X)COO(C510COO)2
S−7 H2C=C(X)COOC510COOH
S−8 3−(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン
ここで、Xは、水素原子あるいはCH3を表す。
これらの無機微粒子の表面修飾は、溶液中でなされることが好ましい。無機微粒子を機械的に微細分散する時に、一緒に表面修飾剤を存在させるか、または無機微粒子を微細分散したあとに表面修飾剤を添加して攪拌するか、さらには無機微粒子を微細分散する前に表面修飾を行って(必要により、加温、乾燥した後に加熱、またはpH変更を行う)、そのあとで微細分散を行う方法でもよい。
表面修飾剤を溶解する溶液としては、極性の大きな有機溶剤が好ましい。具体的には、アルコール、ケトン、エステル等の公知の溶剤が挙げられる。
有機微粒子としては特に制限がないが、エチレン性不飽和基を有するモノマーからなるポリマー粒子、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等、および本発明における一般式(1)および(3)からなるポリマー粒子が好ましく用いられ、その他に、ポリシロキサン、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、アセチルセルロース、ニトロセルロース、ゼラチン等の樹脂粒子が挙げられる。これらの粒子は架橋されていることが好ましい。
微粒子の微細化分散機としては、超音波、ディスパー、ホモジナイザー、ディゾルバー、ポリトロン、ペイントシェーカー、サンドグラインダー、ニーダー、アイガーミル、ダイノミル、コボールミル等を用いることが好ましい。また、分散媒としては前述の表面修飾用の溶媒が好ましく用いられる。
これらの充填剤としては、無機微粒子であることが好ましく、無機粒子がシリカであることが生産性、表面硬度の点から最も好ましい。
微粒子の充填量は、充填後のハードコート層の質量に対して、5〜60質量%が好ましく、15〜55質量%がより好ましく、25〜50質量%であることが最も好ましい。
本発明では以下のようなハードコートも好ましく用いることが出来る。
1.フッ素原子およびケイ素原子の少なくともいずれかの原子と重合性基を有する防汚性を付与するための硬化性樹脂を含有する硬化性組成物であり、該硬化組成物を硬化して得られるハードコート層表面の水の接触角が90度以上であることを特徴とする硬化性組成物より硬化形成されるハードコート層。
2.ハードコート層の表面弾性率が4.0GPa以上10GPa以下であることを特徴とする上記1に記載のハードコート層。
3.ハードコート層の厚みが10μm以上60μm以下であることを特徴とする上記1または2のいずれかに記載のハードコート層。
4.硬化性組成物が、活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性組成物であり、開環重合性基を含有する硬化性樹脂および同一分子内にエチレン性不飽和基を2個以上含む硬化性樹脂の少なくともいずれかを含有することを特徴とする上記1乃至3のいずれかに記載のハードコート層。
5.開環重合性基を含有する硬化性樹脂が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含有する架橋性ポリマーであることを特徴とする上記4に記載のハードコート層。
一般式(1)
Figure 2005298795
一般式(1)中:
1は、水素原子または炭素原子数1から4のアルキル基を表す。
1は、一価の開環重合性基または開環重合性基を有する一価の基を表す。
1は、単結合または二価以上の連結基を表す。
6.開環重合性基が、カチオン重合性基であることを特徴とする上記4または5に記載のハードコート層。
以下、上記1乃至6で述べたハードコート層、防汚性ハードコート層について詳細に説明する。
本発明のハードコートフィルムに塗布する層(以下、単に「ハードコート層」と称する)は、硬化性組成物が硬化して形成されたハードコート層である。硬化は活性エネルギー線重合であっても熱重合であってもかまわないが、生産性の観点から活性エネルギー線硬化が好ましい。そして、本発明のハードコート層の表面の鉛筆硬度は好ましくは2H以上であり、より好ましくは3H以上である。さらに表面の水に対する接触角は、防汚性の観点から好ましくは90度以上であり、より好ましくは97度以上である。また上限としては150度以下が好ましく、130度以下がより好ましい。
ハードコート層表面の水に対する接触角を上記範囲とするには、ハードコート層を形成するための硬化性組成物にフッ素原子およびケイ素原子の少なくともいずれかを含有し、かつ重合性基を有する硬化性樹脂あるいは化合物を防汚剤として含有させる方法により達成される。重合性基は活性エネルギー線の照射により重合する基であることが好ましい。
ハードコート層に含有され、フッ素原子およびケイ素原子の少なくともいずれかを有し、かつ活性エネルギー線により重合する基を有する防汚剤としての硬化性樹脂は、活性エネルギー線で重合する公知の含フッ素硬化性樹脂や含ケイ素硬化性樹脂、あるいはフッ素原子を含有する骨格とケイ素原子を含有する骨格とを有する硬化性樹脂が用いられる。
さらに、ハードコート層を主として構成する硬化した樹脂あるいは該樹脂に分散した金属酸化物等と相溶性の良い骨格と、フッ素原子およびケイ素原子の少なくともいずれかを有する骨格とを有する活性エネルギー線重合性樹脂が好ましく挙げられる。
このような硬化性樹脂をハードコート層または防汚性層を形成するために硬化することで、ハードコート層表面にフッ素あるいはケイ素を存在させることができる。
なお、本明細書においては、防汚性層は、防汚性ハードコート層の一部を構成する。但し、説明の便宜上、防汚性層は、ハードコート層と区別して記載することもあるが、その場合でも、防汚層は防汚性ハードコート層に包含される層である。
ハードコート層に用いられる、防汚剤としての上記硬化性樹脂の具体的な例としては、フッ素原子またはケイ素原子を含有するモノマー、あるいはフッ素原子及びケイ素原子を含むモノマーの共重合体、ブロック共重合体、あるいはグラフト共重合体にアクリル基を含有させたポリマーが挙げられる。
フッ素含有モノマーとしては、ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、パーフルオロアルキルスルホンアミドエチルアクリレート、パーフルオロアルキルアミドエチルアクリレート等に代表されるパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
具体的には、2−パーフルオロオクチルエチルメタアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート(日本メクトロン(株)製)、M−3633、M−3833、R−3633、R−3833等のアクリレート化合物((株)ダイキンファインケミカル研究所製)、AFC−1000,AFC−2000、FA−16等(共栄社化学(株)製)、メガファック531A(大日本インキ(株)製)などの重合性基を含有する化合物が挙げられる。
フッ素を含有する共重合体としては、主鎖が炭素原子のみからなり、かつ含フッ素ビニルモノマー重合単位と側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重合単位とを含んでなる共重合体があり、具体的には下記一般式(2)で表される共重合体が挙げられる。
一般式(2)
Figure 2005298795
(一般式(2)中、Mfは含フッ素ビニルモノマーの重合単位、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、mは0または1を表す。Xは水素原子またはメチル基を表す。Aは任意のビニルモノマーの重合単位を表し、単一成分であっても複数の成分で構成されていてもよい。x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表し30≦x≦60、40≦y≦80、0≦z≦65を満たす値を表す。)
一般式(2)におけるMfで表される含フッ素ビニルモノマーとしてはフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(商品名、大阪有機化学製)やM−2020(商品名、ダイキン製)等)、パーフルオロアルキルスルホン酸メタアクリルアミド、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、パーフルオロオレフィン類が好ましく、溶解性、透明性、入手性等の観点からはヘキサフルオロプロピレンが特に好ましい。
一般式(2)で表される共重合体は、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重合単位を必須の構成成分として有する。共重合体への(メタ)アクリロイル基の導入法は特に限定されるものではないが、例えば、(1)水酸基、アミノ基等の求核基を有するポリマーを合成した後に、(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸とメタンスルホン酸の混合酸無水物等を作用させる方法、(2)上記求核基を有するポリマーに、硫酸等の触媒存在下、(メタ)アクリル酸を作用させる方法、(3)上記求核基を有するポリマーにメタクリロイルオキシプロピルイソシアネート等のイソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物を作用させる方法、(4)エポキシ基を有するポリマーを合成した後に(メタ)アクリル酸を作用させる方法、(5)カルボキシル基を有するポリマーにグリシジルメタクリレート等のエポキシ基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物を作用させる方法、(6)3―クロロプロピオン酸エステル部位を有するビニルモノマーを重合させた後で脱塩化水素を行う方法などが挙げられる。これらの中で本発明では特に水酸基を含有するポリマーに対して(1)または(2)の手法によって(メタ)アクリロイル基を導入することが好ましい。尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」は「アクリレート又はメタクリレート」、「アクリロイル又はメタクリロイル」、「アクリル酸又はメタクリル酸」の意味を表す。
これらの(メタ)アクリロイル基含有重合単位の組成比を高めれば皮膜強度は向上し、含フッ素ビニルモノマー重合単位の種類によっても異なるが、一般に(メタ)アクリロイル基含有重合単位は全重合単位の40〜80モル%を占めることが好ましく、45〜75モル%を占めることがより好ましく、50〜70モル%を占めることが特に好ましい。
本発明に有用な共重合体では、上記含フッ素ビニルモノマー重合単位および側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重合単位以外に、一般式(2)におけるAで表される、支持体への密着性、ポリマーのガラス転移点(Tg)の調整(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜他のビニルモノマーを共重合することもできる。これらのビニルモノマーは目的に応じて複数を組み合わせてもよく、合計で共重合体中の0〜65モル%の範囲で導入されていることが好ましく、0〜40モル%の範囲であることがより好ましく、0〜30モル%の範囲であることが特に好ましい。
併用可能なビニルモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル等)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル等)、スチレン誘導体(スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−メトキシスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、アリルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、不飽和カルボン酸類(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等)、アクリルアミド類(N,N−ジメチルアクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類(N,N−ジメチルメタクリルアミド)、アクリロニトリル等を挙げることができる。
好ましくはビニルエーテル誘導体、ビニルエステル誘導体であり、特に好ましくはビニルエーテル誘導体である。
一般式(2)中、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは2〜4の連結基であり、直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、環構造を有していてもよく、O、N、Sから選ばれるヘテロ原子を有していてもよい。
好ましい例としては、*−(CH2)2−O−**, *−(CH2)2−NH−**, *−(CH2)4−O−**, *−(CH2)6−O−**, *−(CH2)2−O−(CH2 )2−O−**, *−CONH−(CH2)3−O−**, *−CH2CH(OH)CH2−O−**, *−CH2CH2OCONH(CH2)3−O−**(*はポリマー主鎖側の連結部位を表し、**は(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す。)等が挙げられる。mは0または1を表す。
一般式(2)中、Xは水素原子またはメチル基を表す。硬化反応性の観点から、より好ましくは水素原子である。
x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表し、30≦x≦60、40≦y≦80、0≦z≦65を満たす値を表す。好ましくは、35≦x≦55、45≦y≦75、0≦z≦20の場合であり、特に好ましくは40≦x≦55、50≦y≦70、0≦z≦10の場合である。
ケイ素含有モノマーとしてはポリジメチルシロキサンと(メタ)アクリル酸等の反応によるシロキサン基を有するモノマーが挙げられる。末端(メタ)アクリレートのシロキサン化合物の具体例としては、X−22−164A、X−22−164B、X−22−164C、X−22−2404、X−22−174D、X−22−8201、X−22−2426(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。
フッ素原子およびケイ素原子の少なくともいずれかの原子と活性エネルギー線重合性基を有する化合物を用いたハードコートフィルムの場合、フッ素原子およびケイ素原子の少なくともいずれかの原子と活性エネルギー線重合性基を有する化合物を含有する硬化性組成物はハードコート層表面に局在化していることが好ましく、局在化した層の厚みは、2nm以上100nm以下が好ましい。薄すぎると防汚の耐久性が得られ難く厚すぎると硬度が低下する。さらに好ましくは5nm以上60nm以下であり、10nm以上40nm以下の範囲がより好ましい。
活性エネルギー線の照射により重合する基は、例えば(メタ)アクリロイル基等のラジカル重合性の二重結合やエポキシ基等のカチオン重合性基を導入することによって付与される。これら硬化性組成物に含まれるフッ素、ケイ素と活性エネルギー線重合性基を有する化合物の含有量は硬化性樹脂の0.01〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましい。
ハードコート層が耐擦傷性に優れるためには、ハードコート層の硬度がある程度大きいことが好ましい。硬度の観点から、ハードコート層の表面弾性率は4.0GPa程度以上が好ましく、より好ましくは4.5GPa以上である。表面弾性率が4.0GPa未満のハードコート層では、十分な鉛筆硬度及び耐擦傷性が得られない。なお、上記の表面弾性率をユニバーサル硬度で表すと、その値は250N/mm2程度以上が好ましく、より好ましくは300N/mm2以上である。
無機微粒子を添加することにより、表面弾性率を上げることができる。無機微粒子の添加量を増やすと脆性が悪くなるので、表面弾性率の上限は、10GPa、好ましくは9.0GPaである。従って、好ましい表面弾性率の範囲は、4.0〜10GPaであり、特に好ましくは4.5〜9.0GPaである。
ハードコート層の鉛筆硬度と脆性の両立化を図ることを検討した結果、硬度は若干小さいが脆性が改善されているハードコート剤を厚く塗布することが有効である。
上記表面弾性率は、微小表面硬度計((株)フィッシャー・インスツルメンツ製:フィッシャースコープH100VP−HCU)を用いて求めた値である。具体的には、ダイヤモンド製の四角錐圧子(先端対面角度;136°)を使用し、押し込み深さが1μmを超えない範囲で、適当な試験荷重下での押し込み深さを測定し、除荷重時の荷重と変位の変化から求められる弾性率である。
また、前述の微小表面硬度計を用いて表面硬度をユニバーサル硬度として求めることもできる。ユニバーサル硬度は四角錐圧子の試験荷重下での押し込み深さを測定し、試験荷重をその試験荷重で生じた圧痕の幾何学的形状から計算される圧痕の表面積で割った値である。
上記の表面弾性率とユニバーサル硬度の間には、正の相関を有することが知られている。
ハードコート層の厚みをあまり厚くすると鉛筆硬度は向上するが、フィルムを曲げることが難しくなり、さらに曲げによる割れが発生しやすくなる。本発明のハードコート層の厚みは1〜20μmが好ましく、2〜15μmがさらに好ましい。より好ましくは2.5〜10μmであり、3〜7μmが最も好ましい。
ハードコート層は、単層でも複数層から構成されていてもよいが、製造工程上簡便な単層であることが好ましい。この場合の単層とは、同一の硬化性組成物から硬化形成されたハードコート層を指し、塗布、乾燥後の組成が、同一組成のものであれば、複数回の塗布後、硬化して形成されていてもよい。一方、複数層とは組成の異なる複数の硬化性組成物から硬化、形成された層を指す。
本発明のハードコート層は、活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性組成物を塗布後、活性エネルギー線の照射により硬化して形成される。該硬化性組成物の活性エネルギー線照射による硬化収縮率は、0〜15%、好ましくは0〜13%、より好ましくは0〜11%である。
上記硬化収縮率は、用いた活性エネルギー線、例えばUV光の照射前の硬化性組成物の密度と照射硬化後の硬化性組成物の密度を求め、その値から下記数式Aで計算して求めた値である。なお、密度はマイクロメトリック社製MULTIVOLUME PYCNOMETERで測定(25℃)した値である。
数式A:体積収縮率={1−(硬化前密度/硬化後密度)}×100(%)
ハードコート層を形成するための硬化性組成物は、前記した防汚剤としての硬化性樹脂とは異なる、活性エネルギー線や熱によって硬化する硬化性樹脂を主成分として含有する。ハードコート層を形成するための硬化性組成物(以下、単に「硬化性組成物」とも称する。)は、該硬化性樹脂として、開環重合性基を有する硬化性樹脂またはエチレン性不飽和基を同一分子内に2個以上(より好ましくは3個以上)有する硬化性樹脂、あるいは両者を含有することが好ましく、これら二種の硬化性樹脂のいずれをも含有することがより好ましい。このことによって、ハードコート層の表面硬度が高くなり、耐擦傷性に優れたハードコートフィルムが得られる。同時に、体積収縮率が上記した範囲を満たし、硬化後のカールが小さくなり、諸取り扱い時のひび割れが発生しにくくなる。さらに、ハードコート層の膜厚を一定の膜厚にすることによって、上記の効果がさらに顕著となる。
以下、本発明に好ましく用いられる開環重合性基を含む硬化性樹脂について説明する。
開環重合性基を含む硬化性樹脂とは、カチオン、アニオン、ラジカルなどの作用により開環重合が進行する環構造を有する硬化性樹脂であり、この中でもヘテロ環状基含有硬化性樹脂が好ましい。このような硬化性樹脂としてエポキシ誘導体、オキセタン誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、環状ラクトン誘導体、環状カーボネート誘導体、オキサゾリン誘導体などの環状イミノエーテル類などが挙げられ、特にエポキシ誘導体、オキセタン誘導体、オキサゾリン誘導体が好ましい。
本発明において開環重合性基を有する硬化性樹脂は、同一分子内に2個以上の開環重合性基を有することが好ましいが、より好ましくは3個以上有することが好ましい。また、本発明において、開環重合性基を有する硬化性樹脂を2種以上を組み合わせて併用してもよい。この場合、同一分子内に開環重合性基を1個有する硬化性樹脂と同一分子内に開環重合性基を2個以上有する硬化性樹脂とを組み合わせてもよく、また同一分子内に開環重合性基を2個以上有する硬化性樹脂のみを2種以上組み合わせてもよい。
本発明で言う開環重合性基を有する硬化性樹脂とは、上記のような環状構造を有する硬化性樹脂であれば特に制限がない。このような硬化性樹脂の好ましい例としては、例えば単官能グリシジルエーテル類、単官能脂環式エポキシ類、2官能脂環式エポキシ類、ジグリシジルエーテル類(例えばグリシジルエーテル類としてエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル)、3官能以上のグリシジルエーテル類(トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリス(グリシジルオキシエチル)イソシアヌレートなど)、4官能以上のグリシジルエーテル類(ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテルなど)、脂環式エポキシ類(セロキサイド2021P、セロキサイド2081、エポリードGT−301、エポリードGT−401(以上、ダイセル化学工業(株)製))、EHPE(ダイセル化学工業(株)製)、フェノールノボラック樹脂のポリシクロヘキシルエポキシメチルエーテルなど)、オキセタン類(OX−SQ、PNOX−1009(以上、東亞合成(株)製)など)などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明では開環重合性基を有する硬化性樹脂として、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーを含有していることが特に好ましい。以下にこれら架橋性ポリマーについて詳細に説明する。
一般式(1)中、R1は水素原子または炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。
1は、単結合または二価以上の連結基であり、好ましくは単結合、−O−、アルキレン基、アリーレン基および*側で主鎖に連結する*−COO−、*−CONH−、*−OCO−、*−NHCO−である。
1は、一価の開環重合性基または開環重合性基を有する一価の基であり、好ましいP1としては、エポキシ環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、ラクトン環、カーボネート環、オキサゾリン環などのイミノエーテル環などを有する一価の基が挙げられ、この中でも特に好ましくはエポキシ環、オキセタン環、オキサゾリン環を有する一価の基である。
本発明において一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーは、対応するモノマーを重合させて合成することが簡便で好ましい。この場合の重合反応としてはラジカル重合が最も簡便で好ましい。
以下に一般式(1)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2005298795
Figure 2005298795
Figure 2005298795
本発明において、一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーは複数種の一般式(1)で表される繰り返し単位で構成されたコポリマーであってもよく、また、一般式(1)以外の繰り返し単位(例えば開環重合性基を含まない繰り返し単位)を含んだコポリマーでもよい。特に架橋性ポリマーのガラス転移点(Tg)や親疎水性をコントロールしたい場合や、架橋性ポリマーの開環重合性基の含有量をコントロールする目的で一般式(1)以外の繰り返し単位を含有するコポリマーとする手法は好適である。一般式(1)以外の繰り返し単位の導入方法は、対応するモノマーを共重合させて導入する手法が好ましい。
一般式(1)以外の繰り返し単位を、対応するビニルモノマーを重合することによって導入する場合、好ましく用いられるモノマーとしては、アクリル酸またはα−アルキルアクリル酸(例えばメタクリル酸など)類から誘導されるエステル類(例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−メチル−2−ニトロプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ペンチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−メトキシメトキシエチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2−ジメチルブチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、3−ペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、セチルアクリレート、ベンジルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、4−メチル−2−プロピルペンチルアクリレート、ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、n−オクタデシルアクリレート、メチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、n−オクタデシルメタクリレート、2−イソボルニルメタクリレート、2−ノルボルニルメチルメタクリレート、5−ノルボルネン−2−イルメチルメタクリレート、3−メチル−2−ノルボルニルメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートなど)、
アクリル酸またはα−アルキルアクリル酸(例えばメタクリル酸など)類から誘導されるアミド類(例えば、N−i−プロピルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド)、アクリル酸またはα−アルキルアクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸など)、ビニルエステル類(例えば酢酸ビニル)、マレイン酸またはフマル酸から誘導されるエステル類(マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチルなど)、マレイミド類(N−フェニルマレイミドなど)、マレイン酸、フマル酸、p−スチレンスルホン酸のナトリウム塩、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジエン類(例えばブタジエン、シクロペンタジエン、イソプレン)、芳香族ビニル化合物(例えばスチレン、p−クロルスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム)、N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルサクシンイミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、1−ビニルイミダゾール、4−ビニルピリジン、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、ビニリデンクロライド、ビニルアルキルエーテル類(例えばメチルビニルエーテル)、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等が挙げられる。
これらのビニルモノマーは2種類以上組み合わせて使用してもよい。これら以外のビニルモノマーはリサーチディスクロージャーNo.19551(1980年、7月)に記載されているものを使用することができる。
なかでも、アクリル酸またはメタクリル酸から誘導されるエステル類およびアミド類、ならびに芳香族ビニル化合物が特に好ましく用いられる。
一般式(1)以外の繰り返し単位として、開環重合性基以外の反応性基を有する繰り返し単位も導入することができる。特に、ハードコート層の硬度を高めたい場合や、支持体もしくはハードコート層上に別の機能層を用いる場合の層間の接着性を改良したい場合、開環重合性基以外の反応性基を含むコポリマーとする手法が好適である。開環重合性基以外の反応性基を有する繰り返し単位の導入方法は対応するビニルモノマー(以下、反応性モノマーと称する)を共重合する手法が簡便で好ましい。
以下に反応性モノマーの好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ヒドロキシル基含有ビニルモノマー(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、アリルアルコール、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートなど)、イソシアネート基含有ビニルモノマー(例えば、イソシアナトエチルアクリレート、イソシアナトエチルメタクリレートなど)、N−メチロール基含有ビニルモノマー(例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど)、カルボキシル基含有ビニルモノマー(例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、カルボキシエチルアクリレート、安息香酸ビニル)、アルキルハライド含有ビニルモノマー(例えばクロロメチルスチレン、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルメタクリレート)、酸無水物含有ビニルモノマー(例えばマレイン酸無水物)、ホルミル基含有ビニルモノマー(例えばアクロレイン、メタクロレイン)、スルフィン酸基含有ビニルモノマー(例えばスチレンスルフィン酸カリウム)、活性メチレン含有ビニルモノマー(例えばアセトアセトキシエチルメタクリレート)、酸クロライド含有モノマー(例えばアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド)、アミノ基含有モノマー(例えばアリルアミン)、アルコキシシリル基含有モノマー(例えばメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン)などが挙げられる。
本発明において、一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマー中、一般式(1)で表される繰り返し単位が含まれる割合は、1質量%以上100質量%以下、好ましくは30質量%以上100質量%以下、特に好ましくは50質量%以上100質量%以下である。
一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの好ましい質量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定、ポリエチレングリコール換算値)の範囲は、1000以上100万以下、さらに好ましくは3000以上20万以下である。最も好ましくは5000以上10万以下である。
以下に一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの好ましい例を表1に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、前記で具体例を挙げた一般式(1)で表される繰り返し単位は前記で挙げた具体例の番号で表し、共重合可能なモノマーから誘導される繰り返し単位は、モノマー名を記載し、共重合組成比を質量%で付記した。
Figure 2005298795
既に述べたように、ハードコート層を形成するための活性エネルギー線によって硬化する硬化性組成物には、開環重合性基を含む硬化性樹脂とエチレン性不飽和基を同一分子内に2個以上含む硬化性樹脂との両方を含有することが好ましい。
以下に、上記エチレン性不飽和基を同一分子内に2個以上含む硬化性樹脂について詳しく説明する。
好ましいエチレン性不飽和基の種類は、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニルエーテル基であり、特に好ましくはアクリロイル基である。
さらに、分子内に2〜6個のアクリル酸エステル基を有する多官能アクリレートモノマーや、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートと称される分子内に数個のアクリル酸エステル基を有する分子量が数百から数千のオリゴマーなどを本発明の硬化性樹脂として好ましく使用することができる。
これら同一分子内に2個以上のアクリル基を有する硬化性樹脂の具体例としては、エチレングリコールジアクリレート、1,6−へキサンジオールジアクリレート、ビスフェノール−Aジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のポリオールポリアクリレート類、ポリイソシナネートとヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有アクリレートの反応によって得られるウレタンアクリレート等を挙げることができる。同一分子内に2個以上のアクリル基を有する硬化性樹脂がさらに好ましい。
また、本発明では同一分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を有する硬化性樹脂として、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーも好ましく使用できる。以下、一般式(3)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーについて詳細に説明する。
一般式(3)
Figure 2005298795
上記一般式(3)中、R2は、水素原子または炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。
2は、一価のエチレン性不飽和基またはエチレン性不飽和基を有する一価の基を表す。
2は、単結合もしくは二価以上の連結基を表し、好ましくは単結合、−O−、アルキレン基、アリーレン基および*側で主鎖に連結する*−COO−、*−CONH−、*−OCO−、*−NHCO−である。
好ましいP2としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基またはこれらの基のいずれかを含有する一価の基であり、最も好ましくはアクリロイル基またはこれを含有する一価の基である。
一般式(3)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーは、(i)対応するモノマーを重合させて直接エチレン性不飽和基を導入する手法で合成してもよく、(ii)任意の官能基を有するモノマーを重合して得られるポリマーに高分子反応によりエチレン性不飽和基を導入する手法で合成してもよい。また、上記(i)および(ii)の手法を組み合わせて合成することもできる。重合反応としてはラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合などが挙げられる。
上記(i)の方法を用いる場合、重合反応により消費されるエチレン性不飽和基と架橋性ポリマー中に残されるエチレン性不飽和基の重合性の差を利用することにより可能である。例えば、一般式(3)のP2が、アクリロイル基、メタクリロイル基またはこれらのいずれかを含有する一価の基である場合、架橋性ポリマーを生成させる重合反応をカチオン重合とすることで上記(i)の手法によって本発明の架橋性ポリマーを得ることができる。一方、P2がスチリル基またはスチリル基を含有する一価の基である場合は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合のいずれの方法をとってもゲル化が進行しやすいため、通常上記(ii)の手法によって一般式(3)の架橋性ポリマーを合成する。
このように上記(ii)の高分子反応を利用する手法は、一般式(3)中に導入されるエチレン性不飽和基の種類によらず、架橋性ポリマーを得ることが可能であり、有用である。
高分子反応は、(I)例えば2−クロロエチル基から塩酸を脱離させるようなエチレン性不飽和基をプレカーサー化した官能基を含むポリマーを生成させたあとに官能基変換(脱離反応、酸化反応、還元反応など)によりエチレン性不飽和基に誘導する方法と、(II)任意の官能基を含むポリマーを生成させたあとに、該ポリマー中の官能基と結合生成反応が進行して共有結合を生成しうる官能基とエチレン性不飽和基の両方を有する反応性モノマーを反応させる方法が挙げられる。これら(I)、(II)の方法は組み合わせて行ってもよい。
ここで言う結合形成反応とは、一般に有機合成分野で用いられる結合生成反応のなかで共有結合を形成する反応であれば特に制限なく使用できる。一方で、架橋性ポリマーに含まれるエチレン性不飽和基が反応中に熱重合し、ゲル化してしまう場合があるので、できるだけ低温(好ましくは60℃以下、特に好ましくは室温以下)で反応が進行するものが好ましい。また反応の進行を促進させる目的で触媒を用いても良く、ゲル化を抑制する目的で重合禁止剤を用いてもよい。
以下に好ましい高分子結合形成反応が進行する官能基の組み合わせの例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
加熱もしくは室温で反応が進行する官能基の組み合わせとしては、
(イ)ヒドロキシル基に対して、エポキシ基、イソシアネート基、N−メチロール基、カルボキシル基、アルキルハライド、酸無水物、酸クロライド、活性エステル基(例えば硫酸エステル)、ホルミル基、アセタール基、
(ロ)イソシアネート基に対して、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、N−メチロール基、
(ハ)カルボキシル基に対して、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、N−メチロール基、
(ニ)N−メチロール基に対して、イソシアネート基、N−メチロール基、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、
(ホ)エポキシ基に対して、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、N−メチロール基、
(ヘ)ビニルスルホン基に対してスルフィン酸基、アミノ基、
(ト)ホルミル基に対してヒドロキシル基、メルカプト基、活性メチレン基、
(チ)メルカプト基に対して、ホルミル基、ビニル基(アリル基、アクリル基など)、エポキシ基、イソシアネート基、N−メチロール基、カルボキシル基、アルキルハライド、酸無水物酸クロライド、活性エステル基(例えば硫酸エステル)、
(リ)アミノ基に対して、ホルミル基、ビニル基(アリル基、アクリル基など)、エポキシ基、イソシアネート基、N−メチロール基、カルボキシル基、アルキルハライド、酸無水物、酸クロライド、活性エステル基(例えば硫酸エステル)、などの組み合わせが挙げられる。
以下に反応性モノマーの好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ヒドロキシル基含有ビニルモノマー(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、アリルアルコール、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートなど)、イソシアネート基含有ビニルモノマー(例えば、イソシアナトエチルアクリレート、イソシアナトエチルメタクリレートなど)、N−メチロール基含有ビニルモノマー(例えば、 N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど)、エポキシ基含有ビニルモノマー(例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、CYCLOMER−M100、A200(ダイセル化学工業(株)製)など)、カルボキシル基含有ビニルモノマー(例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、カルボキシエチルアクリレート、安息香酸ビニル)、アルキルハライド含有ビニルモノマー(例えばクロロメチルスチレン、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルメタクリレート)、酸無水物含有ビニルモノマー(例えばマレイン酸無水物)、ホルミル基含有ビニルモノマー(例えばアクロレイン、メタクロレイン)、スルフィン酸基含有ビニルモノマー(例えばスチレンスルフィン酸カリウム)、活性メチレン含有ビニルモノマー(例えばアセトアセトキシエチルメタクリレート)、ビニル基含有ビニルモノマー(例えばアリルメタクリレート、アリルアクリレート)、酸クロライド含有モノマー(例えばアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド)、アミノ基含有モノマー(例えばアリルアミン)、などが挙げられる。
上記(II)に記載した任意の官能基を含むポリマーは、反応性官能基とエチレン性不飽和基の両方を有する反応性モノマーの重合を行うことで得ることができる。また、ポリ酢酸ビニルを変性して得られるポリビニルアルコールのように反応性の低い前駆体モノマーの重合後、官能基変換を行うことで得ることもできる。
これらの場合の重合方法としては、ラジカル重合が最も簡便で好ましい。
以下に一般式(3)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2005298795
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Figure 2005298795
Figure 2005298795
Figure 2005298795
本発明において一般式(3)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーは複数種の一般式(3)で表される繰り返し単位で構成されたコポリマーであってもよく、また、一般式(3)以外の繰り返し単位(例えばエチレン性不飽和基を含まない繰り返し単位)を含んだコポリマーでもよい。特に架橋性ポリマーのガラス転移点(Tg)や親疎水性をコントロールしたい場合や、架橋性ポリマーのエチレン性不飽和基の含有量をコントロールする目的で一般式(3)以外の繰り返し単位を含んだコポリマーとする手法は好適である。一般式(3)以外の繰り返し単位の導入方法は、(a)対応するモノマーを共重合させて直接導入する手法を用いてもよく、(b)官能基変換可能な前駆体モノマーを重合させ、高分子反応により導入する手法を用いてもよい。また、(a)および(b)の手法を組み合わせて導入することもできる。
(a)の手法によって一般式(3)以外の繰り返し単位を対応するビニルモノマーを重合することによって導入する場合、好ましく用いられるモノマーとしては、前述の一般式(1)の説明において、一般式(1)以外の繰り返し単位を対応するビニルモノマーを重合することによって導入する場合に好ましく用いられるモノマーとして挙げたものと同様なものが挙げられる。それらのビニルモノマーは2種類以上組み合わせて使用してもよい。これら以外のビニルモノマーはリサーチディスクロージャーNo.19551(1980年、7月)に記載されているものを使用することができる。なかでも、アクリル酸またはメタクリル酸から誘導されるエステル類およびアミド類、ならびに芳香族ビニル化合物が特に好ましく用いられる。
また、一般式(3)で表される繰り返し単位を前記(ii)のように高分子反応で導入し、反応を完結させない場合、エチレン性不飽和基をプレカーサー化した官能基や反応性官能基を含む繰り返し単位を有する共重合体となるが、本発明ではこれを特に制限無く用いることができる。
上記で挙げたビニルモノマーから誘導されるエチレン性不飽和基を含まない繰り返し単位の大部分は前述した(b)官能基変換可能な前駆体モノマーを重合させ、高分子反応により導入することも可能である。一方で、本発明において一般式(3)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーは、高分子反応のみによってでしか導入できない、一般式(3)以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。典型的な例としてポリ酢酸ビニルを変性して得られるポリビニルアルコールやポリビニルアルコールのアセタール化反応によって得られるポリビニルブチラール等を挙げることができる。これらの繰り返し単位の具体的な例を以下に示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2005298795
本発明において一般式(3)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマー中、一般式(3)で表される繰り返し単位が含まれる割合は、1質量%以上100質量%以下、好ましくは30質量%以上100質量%以下、特に好ましくは50質量%以上100質量%以下である。
一般式(3)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの好ましい質量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定、ポリエチレングリコール換算値)の範囲は、1000以上100万以下、さらに好ましくは3000以上20万以下である。最も好ましくは5000以上10万以下である。
以下に一般式(3)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの好ましい例を表2に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、前記で具体例を挙げた一般式(3)で表される繰り返し単位とポリビニルアルコールなどの繰り返し単位は前記で挙げた具体例の番号で表し、共重合可能なモノマーから誘導される繰り返し単位は、モノマー名を記載し、共重合組成比を質量%で付記した。
Figure 2005298795
本発明に用いることのできる開環重合性基を有する硬化性樹脂として、一般式(1)および(3)で表される両方の繰り返し単位を含むポリマーも挙げることができる。この場合の一般式(1)および(3)の好ましい繰り返し単位としては、前記したものと同じである。また、一般式(1)および(3)以外の繰り返し単位を含んだコポリマーであってもエチレン性不飽和基および開環重合性基以外の反応性基を有する繰り返し単位を含んだコポリマーであってもよい。
一般式(1)および(3)で表される両方の繰り返し単位を含む架橋性ポリマー中、一般式(1)で表される繰り返し単位が含まれる割合は、1質量%以上99質量%以下、好ましくは20質量%以上80質量%以下、特に好ましくは30質量%以上70質量%以下であり、一般式(3)で表される繰り返し単位が含まれる割合は、1質量%以上99質量%以下、好ましくは20質量%以上80質量%以下、特に好ましくは30質量%以上70質量%以下である。
一般式(1)および(3)で表される両方の繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの好ましい質量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定、ポリスチレン換算値)の範囲は、1000以上100万以下、さらに好ましくは3000以上20万以下である。最も好ましくは5000以上10万以下である。
一般式(1)および(3)で表される両方の繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの好ましい例を表3に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、前記で具体例を挙げた一般式(1)および(3)で表される繰り返し単位とポリビニルアルコールなどの繰り返し単位は前記で挙げた具体例の番号で表し、共重合可能なモノマーから誘導される繰り返し単位は、モノマー名を記載し、共重合組成比を質量%で付記した。
Figure 2005298795
ハードコート層を形成するための硬化性組成物に好ましく含有される、エチレン性不飽和基を同一分子内に2個以上含む硬化性樹脂と開環重合性基を含む硬化性樹脂との好ましい混合比は、用いる硬化性樹脂の種類によっても異なり、特に制限はないが、エチレン性不飽和基を含む硬化性樹脂の割合が硬化性樹脂全体の30質量%以上90質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは50質量%以上80質量%以下である。
エチレン性不飽和基を含む硬化性樹脂と開環重合性基を含む硬化性樹脂を含有する硬化性組成物(以下、特に断りのない限り、「硬化性組成物」は、これら両者の硬化性樹脂を含有する組成物である)を硬化させる場合、両方の硬化性樹脂の架橋反応が進行することが好ましい。エチレン性不飽和基の好ましい架橋反応はラジカル重合反応であり、開環重合性基の好ましい架橋反応はカチオン重合反応である。いずれの場合も活性エネルギー線の作用により、重合反応を進行させることができる。通常、重合開始剤と称される少量のラジカル発生剤およびカチオン発生剤(もしくは酸発生剤)を添加し、活性エネルギー線によりこれらを分解し、ラジカルおよびカチオンを発生させ重合を進行させることができる。ラジカル重合とカチオン重合は別々に行ってもよいが、同時に進行させることが好ましい。
上記硬化性組成物を活性エネルギー線照射により硬化する場合、低温で架橋反応が進行する場合が多く、好ましい。
本発明では、活性エネルギー線として、放射線、ガンマー線、アルファー線、電子線、紫外線などが用いられる。その中でも紫外線を用いて、ラジカルもしくはカチオンを発生させる重合開始剤を添加し、紫外線により硬化させる方法が特に好ましい。また紫外線を照射した後、加熱することにより、さらに硬化を進行させることができる場合があり、この方法を好ましく用いることができる。この場合の好ましい加熱温度は140℃以下である。
紫外線によってカチオンを発生させる光酸発生剤としては、トリアリールスルホニウム塩やジアリールヨードニウム塩などのイオン性の硬化性樹脂やスルホン酸のニトロベンジルエステルなどの非イオン性の硬化性樹脂が挙げられ、有機エレクトロニクス材料研究会編、"イメージング用有機材料"ぶんしん出版社刊(1997)などに記載されている硬化性樹脂等種々の公知の光酸発生剤が使用できる。この中で特に好ましくはスルホニウム塩もしくはヨードニウム塩であり、対イオンとしてはPF6 -、SbF6 -、AsF6 -、B(C654 -などが好ましい。
紫外線によりラジカルを発生させる重合開始剤の例としてはアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのケトン、ベンゾイルベンゾエート、ベンゾイン類、α−アシロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイドおよびチオキサントン等の公知のラジカル発生剤が使用できる。また上記で挙げたように通常、光酸発生剤として用いられるスルホニウム塩やヨードニウム塩なども紫外線照射によりラジカル発生剤として作用するため、本発明ではこれらを単独で用いてもよい。また、感度を高める目的で重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、およびチオキサントン誘導体等が含まれる。
重合開始剤は、それぞれ組み合わせて用いてもよいし、単独でラジカルとカチオンの両方を発生させるような重合開始剤の場合などは1種単独で用いることができる。重合開始剤の添加量としては、硬化性組成物中に含まれるエチレン性不飽和基含有硬化性樹脂と開環重合性基含有硬化性樹脂の総質量に対し、0.1〜15質量%の範囲で使用することが好ましく、1〜10質量%の範囲で使用することがさらに好ましい。
本発明において一般式(1)で表される繰り返し単位を有する架橋性ポリマーや、一般式(3)で表される繰り返し単位を有する架橋性ポリマー(以下、これらを合わせて「本発明のポリマー」と称する)を使用する場合は、通常、本発明のポリマーは固体もしくは高粘度液体となり単独での塗布は困難であり、ポリマーが水溶性の場合や水分散物とした場合は水系で塗布することもできるが、通常有機溶媒に溶解して塗布される。有機溶媒としては、本発明のポリマーを溶解し得るものであれば特に制限なく使用できる。
好ましい有機溶媒としては、メチルエチルケトン等のケトン類、イソプロパノール等のアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類などが挙げられる。また、前記した単官能もしくは多官能のビニルモノマーや、単官能、2官能または3官能以上の開環重合性基を有する硬化性樹脂が低分子量硬化性樹脂である場合、これらを併用すると、硬化性組成物の粘度を調節することが可能であり、溶媒を用いなくても塗布可能とすることもできる。
本発明のハードコート層のヘイズは7%以下であることが好ましく、5%以下がさらに好ましく、3%以下が最も好ましい。ヘイズの評価法は、日本電色工業(株)製の濁度計「NDH−1001DP」を用いて測定したヘイズ=(拡散光/全透過光)×100(%)として自動計測される値を用いた。
本発明におけるハードコートフィルムは、カールを以下の数式Bで表したときの値が、マイナス15〜プラス15の範囲に入っていることが好ましく、マイナス12〜プラス12の範囲がより好ましく、さらに好ましくはマイナス10〜プラス10である。このときのカールの試料内測定方向は、ウェッブ形態での塗布の場合、支持体の搬送方向について測ったものである。
数式B:カール=1/R Rは曲率半径(m)
これは、ハードコートフィルムの製造、加工、市場での取り扱いで、ひび割れ、膜はがれを起こさないための重要な特性である。カール値が前記範囲にあり、カールが小さいことが好ましい。上記範囲にカールを小さくすることと高表面硬度とすることは、ハードコート層形成用の硬化性組成物の硬化前後の体積収縮率を15%以下とすることによって可能である。
カールの測定は、JIS−K7619−1988の「写真フィルムのカールの測定法」中の方法Aのカール測定用型板を用いて行われる。測定条件は25℃、相対湿度60%、調湿時間10時間である。
ここで、カールがプラスとはフィルムのハードコート層塗設側が湾曲の内側になるカールを言い、マイナスとは塗設側が湾曲の外側になるカールをいう。
また、本発明におけるハードコートフィルムは、上記したカール測定法に基づいて、相対湿度のみを80%と10%に変更したときの各カール値の差の絶対値が、24〜0が好ましく、15〜0がさらに好ましく、8〜0が最も好ましい。これはさまざまな湿度下でフィルムを貼り付けたときのハンドリング性や剥がれ、ひび割れに関係する特性である。
本発明におけるハードコートフィルムの耐ひび割れ性は、ハードコート層塗設側を外側にして丸めたときに、ひび割れが発生する曲率直径が、50mm以下であることが好ましく、40mm以下がより好ましく、30mm以下が最も好ましい。エッジ部のひび割れについては、ひび割れがないか、ひび割れの長さが平均で1mm未満であることが好ましい。この耐ひび割れ性は、ハードコートフィルムの塗布、加工、裁断、貼りつけ等のハンドリングで割れ欠陥を出さないための重要な特性である。
活性エネルギー線硬化塗布液(硬化組成物の塗布液)は、ケトン系、アルコール系、エステル系等の有機溶剤に、上記の多官能モノマーと重合開始剤を主体に溶解して調製する。さらに、表面修飾した硬無機微粒子分散液と軟微粒子分散液を添加して調製することができる。
本発明のハードコート層の作製は、支持体上に活性エネルギー線硬化塗布液をディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、グラビア法、ワイヤーバー法、スロットエクストルージョンコーター法(単層、重層)、スライドコーター法等の公知の薄膜形成方法で塗布し、乾燥、活性エネルギー線照射して、硬化させることにより作製することができる。
乾燥は、塗布した液膜中の有機溶媒濃度が、乾燥後に5質量%以下になる条件が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。乾燥条件は、支持体の熱的強度や搬送速度、乾燥工程長さなどの影響を受けるが、できるだけ有機溶媒の含有率の低いほうが重合率を高める点で好ましい。
活性エネルギー線照射に関しては、10〜3000mJ/m2の紫外光を照射し、この際、硬化反応の阻害となる酸素濃度を1%以下にすることが好ましい。
紫外線照射量の範囲は50mJ〜2000mJ/m2がより好ましく、200mJ〜1000mJ/m2であることが最も好ましい。
酸素濃度の範囲は0.5%以下にすることがより好ましく、0.1%以下にすることが最も好ましい。
さらに、支持体とハードコート層の密着性を向上させる目的で、所望により支持体の片面又は両面に、酸化法や凹凸化法等により表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。
更に、一層以上の下塗り層を設けることができる。下塗り層の素材としては塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエステル等の共重合体或いはラテックス、低分子量ポリエステル、ゼラチン等の水溶性ポリマー等が挙げられる。さらに下塗り層に酸化錫、酸化錫・酸化アンチモン複合酸化物、酸化錫・酸化インジウム複合酸化物等の金属酸化物や四級アンモニウム塩等の帯電防止剤を含有させることができる。
ハードコート層は、複数層構成でも可能であり、硬度の順に適宜積層して作製することもできる。
本発明のハードコートフィルムは、一方の面に粘着剤を塗設し、粘着剤層を儲けることによって得られる粘着剤付きのハードコートフィルムとして好ましく用いられる。
粘着剤層の塗設により、フィルム上部からの圧力により変形しやすくなるが、本発明のハードコート層と併用することにより、通常以上に変形しにくい粘着剤付きフィルムを得ることができる。
さらに、本発明のハードコートフィルム、および粘着剤付きフィルムを光記録材料の記録層の読みとり、書込みようの光が透過する面をカバーする透光層あるいは透光性フィルムとして用いることことにより、優れた記録特性を有する光記録媒体を提供するのに好ましく用いることができる。
粘着剤層を設置する工程において、あらかじめ一方の面にハードコート層が形成された透光性フィルムのハードコート層塗設面と異なる面に、粘着剤層を連続的に設けることができる。粘着剤層を設ける方法としては、予め形成された粘着剤層を貼り付ける方法(以下、適宜、間接法と称する)と、透光性フィルムの表面に、直接、粘着剤を塗布し、乾燥させることで粘着剤層を形成する方法(以下、適宜、直接法と称する。)と、の2つに大別することができる。
間接法の場合における「予め形成された粘着剤層を貼り付ける方法」とは、例えば、透光性フィルムと同じ大きさの離型フィルムの表面に、連続的に粘着剤を塗布し、乾燥させることで、離型フィルムの一方の面全域に粘着剤層を設け、その粘着剤層を透光性フィルムに貼り付ける方法を示す。その結果、透光性フィルムの他方の面全域には、離型フィルム付きの粘着剤層が設けられることになる。
直接法は、ロール状に巻回された透光性フィルムの先端を、所定の塗布領域まで送り出し、その透光性フィルムの一方の面の先端から末端まで、粘着剤を連続的に塗布し、塗膜を形成した後、順次、その塗膜を乾燥させて、透光性フィルムの他方の面全域に粘着剤層を設ける方法である。
上記の間接法及び直接法において、粘着剤の塗布手段としては、従来公知の塗布手段を用いることができる。具体的には、スプレー法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法などが挙げられる。
また、乾燥手段としては、加熱乾燥、送風乾燥など、従来公知の手段を用いることができる。
粘着剤としては、アクリル系、ゴム系、シリコン系の粘着剤を使用することができるが、透明性、耐久性の観点から、アクリル系の粘着剤が好ましい。かかるアクリル系の粘着剤としては、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレートなどを主成分とし、凝集力を向上させるために、短鎖のアルキルアクリレートやメタクリレート、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレートと、架橋剤との架橋点となりうるアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド誘導体、マレイン酸、ヒドロキシルエチルアクリレート、グリシジルアクリレートなどと、を共重合したものを用いることが好ましい。主成分と、短鎖成分と、架橋点を付加するための成分と、の混合比率、種類を、適宜、調節することにより、ガラス転移温度(Tg)や架橋密度を変えることができる。
上記粘着剤と併用される架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ樹脂系架橋剤、メラミン樹脂系架橋剤、尿素樹脂系架橋剤、キレート系架橋剤が挙げられるが、この中でも、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。かかるイソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、4−4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート類を使用することができる。これらのイソシアネート類の市販されている商品としては、日本ポリウレタン社製、コロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMR、ミリオネートHTL;武田薬品社製のタケネートD−102、タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202;住友バイエル社製、デスモジュールL、デスモジュールIL、デスモジュールN、デスモジュールHL;等を挙げることができる。
透光性フィルムのハードコート層が設置された以外の面に粘着剤層が形成されるが、その後の工程においてロール状に巻き取られ、ハードコート層と粘着剤層とが密着してしまうこと防止するためにも、粘着剤層の表面には、離型フィルムが貼り付けられていることが好ましい。上述のように、間接法においては、予め、離型フィルムを貼りつけた状態とすることができる。一方、直接法の場合には、粘着剤層が透光性フィルムの表面に形成された後に、その粘着剤層の表面に離型フィルムを貼り付ける工程を新たに加えることが好ましい。
ここで、粘着剤層の表面に貼り付けられる離型フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセテートセルロースフィルムなどが挙げられる。
本発明の情報記録担体は、光学的手段によって情報信号を再生可能な情報記録担体である。本発明の情報記録担体の基本的な構成は、支持体と、支持体上に形成され情報信号を記録可能な記録層と、記録層上に形成され光を透過する透光層とからなる。各々の構成要素は発明内容を阻害しない範囲で相互に入れ替えまたは組み合わせてもよい。各々は少なくとも1つずつ存在することが必要であるが、各々は複数層存在しても1つの層が組成や特性の異なる複数の層から構成されていてもよい。具体的には支持体/記録層/透光層/記録層/透光層のように支持体の片側に2層ずつの記録層と透光層を設けたり、透光層/記録層/支持体/記録層/透光層のように支持体の両面に記録層と透光層を配置したりすることもできる。上記構成以外にも、公知の静電気防止層、潤滑層、保護層、反射層などを設けてもよい。また、支持体の記録層とは反対側にレーベル印刷を施してもよい。また、本発明の情報記録担体の上記構成において、透光層として、本発明の粘着剤付きハードコートフィルムを用い、それを支持体と記録層からなる基板に貼り合わせることにより優れた記録特性を有する光記録媒体が得られる。
本発明の情報記録担体は、カートリッジ内部に装着されたものであってもよい。また、その大きさに制限はなく、ディスク状情報記録担体の場合には、例えば直径30〜300mmの各種サイズを取ることができ、直径32、51、65、80、88、120、130、200、300mmなどであってもよい。
本発明の情報記録担体において、支持体は、後述する記録層及び透光層などを機械的に保持する機能を持つベース(基盤)のことである。
その構成材料は、合成樹脂、セラミック、金属などいずれでもよい。合成樹脂の代表例としては、ポリカーボネートやポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート・ポリスチレン共重合体、ポリビニルクロライド、脂環式ポリオレフィン、ポリメチルペンテンなどの各種熱可塑性樹脂や熱硬化樹脂、各種放射線硬化樹脂(紫外線硬化樹脂、可視光硬化樹脂の例を含む)を好適に用いることができる。なお、これらは金属粉またはセラミック粉などを配合した合成樹脂であってもよい。セラミックの代表例としてはソーダライムガラス、ソーダアルミノ珪酸ガラス、ホウ珪酸ガラス、石英ガラスなどを用いることができる。金属としてはアルミ、銅、鉄などを用いることができる。
この中で耐湿性、寸度安定性及び価格などの点からポリカーボネートやアモルファスポリオレフィンが好ましく、ポリカーボネートが最も好ましい。
支持体の厚みは、他の層を機械的に保持する必要性から0.3〜3mmが好ましく、望ましくは0.6〜2mmであり、1.1mm±0.3mmの範囲のものが最も好適に用いられる。
支持体の表面には、通常、トラッキング用溝又はアドレス信号等の情報を表わす凹凸(プレグルーブ)が形成される。このプレグルーブは、ポリカーボネートなどの樹脂材料を射出成形又は押出成形する際に、直接支持体上に形成されることが好ましい。
また、プレグルーブの形成を、プレグルーブ層を設けることにより、行ってもよい。プレグルーブ層の材料としては、ポリオールのアクリル酸モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、ペンタエステルおよびヘキサエステルのうちの少なくとも1種のモノマー(又はオリゴマー)と光重合開始剤との混合物を用いることができる。プレグルーブ層の形成は、例えば、まず精密に作られた母型(スタンパ)上に上記のアクリル酸エステル及び重合開始剤からなる混合液を塗布し、更に、この塗布液層上に支持体を載せたのち、支持体又は母型を介して紫外線を照射することにより塗布層を硬化させて支持体と塗布層とを固着させる。次いで、支持体を母型から剥離することにより得ることができる。プレグルーブ層の層厚は一般に、0.01〜100μmの範囲にあり、好ましくは0.05〜50μmの範囲である。
本発明において、支持体のプレグルーブのトラックピッチは、200〜400nmの範囲とすることが好ましく、250〜350nmの範囲とすることがより好ましい。
また、プレグルーブの溝深さは10〜150nmの範囲とすることが好ましく、20〜100nmの範囲とすることがより好ましく、30〜80nmの範囲とすることが更に好ましい。また、その半値幅は、50〜250nmの範囲にあることが好ましく、100〜200nmの範囲であることがより好ましい。
本発明の情報記録担体に後述する光反射層を設ける場合には、光反射層が設けられる側の支持体表面に、平面性の改善、接着力の向上の目的で、下塗層を形成することが好ましい。
下塗層の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトルエン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質;シランカップリング剤等の表面改質剤;を挙げることができる。
下塗層は、上記材料を適当な溶剤に溶解又は分散して塗布液を調製した後、この塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコート等の塗布法により支持体表面に塗布することにより形成することができる。下塗層の層厚は、一般に0.005〜20μmの範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.01〜10μmの範囲である。
光反射層は、情報の再生時における反射率の向上の目的で、任意に、支持体と記録層との間に設けることができる。光反射層は、レーザ光に対する反射率が高い光反射性物質を蒸着、スパッタリング又はイオンプレーティングすることにより支持体上に形成することができる。光反射層の層厚は、一般的には10〜300nmの範囲とし、50〜200nmの範囲とすることが好ましい。なお、光反射性物質の反射率は70%以上であることが好ましい。
反射率が高い光反射性物質としては、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi等の金属、半金属又はステンレス鋼を挙げることができる。これらの光反射性物質は単独で用いてもよいし、二種以上の組合せで用いてもよいし、又は合金として用いてもよい。これらのうちで好ましいものは、Cr、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Al及びステンレス鋼である。特に好ましくは、Au、Ag、Al又はこれらの合金であり、最も好ましくは、Au、Ag又はこれらの合金である。
本発明の情報記録担体において、記録層とは、光学的または磁気的な記録手段により情報信号を該層へ記録することにより情報の記録又は書き換えができる機能を有した層であり、また光学的な再生手段(レーザ光など)により該層から情報信号の再生を行うことができる。記録層は、情報記録担体が再生専用型情報記録担体である場合には高反射率材料を用い、記録・再生型情報記録担体の場合には、記録または再生原理に従って、色素記録用材料、相変化記録用材料、光磁気記録用材料から選択して用いる。記録層の厚みは2〜300nmが好ましく、特に5〜200nmが好適に用いられる。
記録層に用いる高反射率材料としては、金、銀などが用いられる。
色素記録用の記録材料の具体的な例としては、シアニン色素、フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、アゾ色素、ナフトキノン色素、フルギド色素、ポリメチン色素、アクリジン色素などを用いることができる。
相変化記録用の記録材料としては、インジウム、アンチモン、テルル、セレン、ゲルマニウム、ビスマス、バナジウム、ガリウム、白金、金、銀、銅、錫、砒素などの合金(合金とは酸化物、窒化物、炭化物、硫化物、フッ化物などを含む)を用いることができ、特にGe、Sb、Te、Ag、In、Sb、Te、Cu、Al、Te、Sbなどを用いるのが好適である。インジウム合金とテルル合金の積層膜を用いて記録層としてもよい。
光磁気記録用の記録材料としては、テルビウム、コバルト、鉄、ガドリニウム、クロム、ネオジム、ジスプロシウム、ビスマス、パラジウム、サマリウム、ホルミウム、プロセオジム、マンガン、チタン、パラジウム、エルビウム、イッテルビウム、ルテチウム、錫などの合金(合金とは酸化物、窒化物、炭化物、硫化物、フッ化物の例を含む)を用いることができ、特にTbFeCo、GdFeCo、DyFeCoなどに代表されるように遷移金属と希土類の合金で構成するのが好適である。更に、コバルトと白金の交互積層膜を用いて記録層としてもよい。
なお、これら記録層には、再生出力向上や書き換え回数向上、保存安定性向上等の目的で、補助膜、例えばシリコン、タンタル、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、クロム、ジルコニウムなどの合金(酸化物、窒化物、炭化物を含む)や高反射膜(アルミニウム、金、銀など)を併用して積層してもよい。
色素記録用の記録材料を用いる記録層には、再生に用いるレーザ光の波長領域に極大吸収を有する色素を含有していることが好ましく、特に、500nm以下の波長のレーザで記録及び再生が可能なように、その波長領域に極大吸収を有する色素を含有していることがより好ましい。用いられる色素としては、例えば、シアニン色素、オキソノール色素、金属錯体系色素、アゾ色素、フタロシアニン色素等が挙げられる。具体的には、特開平4−74690号公報、特開平8−127174号公報、特開平11−53758号公報、特開平11−334204号公報、特開平11−334205号公報、特開平11−334206号公報、特開平11−334207号公報、特開2000−43423号公報、特開2000−108513号公報、特開2000−158818号公報の各公報に記載されている色素、又は、トリアゾール、トリアジン、シアニン、メロシアニン、アミノブタジエン、フタロシアニン、桂皮酸、ビオロゲン、アゾ、オキソノールベンゾオキサゾール、ベンゾトリアゾール等の色素が挙げられ、シアニン、アミノブタジエン、ベンゾトリアゾール、フタロシアニン等の色素が好ましい。
記録層は、色素記録用の記録材料を用いる場合、前述した色素と、所望により結合剤とを適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いで、この塗布液を前述の支持体のプレグルーブ表面、又は光反射層表面に塗布して塗膜を形成した後、乾燥することにより形成することができる。更に、塗布液中には、酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、及び潤滑剤など各種の添加剤を目的に応じて添加されてもよい。
また、色素や結合剤を溶解処理する方法としては、超音波処理、ホモジナイザー処理、ディスパー処理、サンドミル処理、スターラー攪拌処理等の方法を適用することができる。
塗布液の溶剤としては、例えば、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどのエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルムなどの塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミドなどのアミド;シクロヘキサンなどの炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール;2,2,3,3−テトラフロロプロパノールなどのフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などを挙げることができる。上記溶剤は使用する色素及び結合剤の溶解性を考慮して単独で用いてもよいし、二種以上を適宜併用することもできる。
結合剤の例としては、例えば、ゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴムなどの天然有機高分子物質;及びポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物などの合成有機高分子を挙げることができる。記録層の材料として結合剤を併用する場合に、結合剤の使用量は、色素に対して0.01〜50倍量(質量比)の範囲であることが好ましく、0.1〜5倍量の範囲であることがより好ましい。結合剤を記録層に含有させることにより記録層の保存安定性を改良することも可能である。
このようにして調製される塗布液中の色素の濃度は、一般に0.01〜10質量%の範囲にあり、好ましくは0.1〜5質量%の範囲にある。
塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法などを挙げることができる。
塗布温度としては、23〜50℃であれば特に問題はないが、好ましくは24〜40℃、更に好ましくは25〜37℃である。
記録層は単層でも重層でもよい。記録層の層厚は、一般に、20〜500nmの範囲にあり、好ましくは50〜300nmの範囲にある。
記録層には、該記録層の耐光性を向上させるために、種々の褪色防止剤を含有させることができる。
褪色防止剤としては、一般的に一重項酸素クエンチャーが用いられる。一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。その具体例としては、特開昭58−175693号公報、同59−81194号公報、同60−18387号公報、同60−19586号公報、同60−19587号公報、同60−35054号公報、同60−36190号公報、同60−36191号公報、同60−44554号公報、同60−44555号公報、同60−44389号公報、同60−44390号公報、同60−54892号公報、同60−47069号公報、同63−209995号公報、特開平4−25492号公報、特公平1−38680号公報、及び同6−26028号公報等の各公報、ドイツ特許350399号明細書、そして日本化学会誌1992年10月号第1141頁等に記載のものを挙げることができる。
一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤の含有量は、記録層の全固形分中、通常、0.1〜50質量%の範囲であり、好ましくは、0.5〜45質量%の範囲、更に好ましくは、3〜40質量%の範囲、特に好ましくは5〜25質量%の範囲である。
記録層の表面には、透光層との密着性と、色素の保存性を高めるために、中間層(バリア層)が形成されていてもよい。バリア層は、Zn、Si、Ti、Te、Sm、Mo、Ge等のいずれか1原子以上からなる酸化物、窒化物、炭化物、硫化物等の材料からなる層であり。また、バリア層は、ZnS−SiO2のようにハイブリット化されたものでもよい。バリア層は、スパッタリング、蒸着イオンプレーティング等により形成すること可能で、その厚さは、1〜100nmとすることが好ましい。
本発明の情報記録担体において、透光層は、収束した再生光を物理的には記録層に導く機能を持ち、同時に記録層を化学的、機械的に保護する機能を持つ。本発明の透光層は支持体の厚みよりも薄く構成されたフィルムからなることが好ましい。
なお、本発明において「透光」とは、記録再生に用いる光学的手段の光の波長(例えば、600〜800nmや350〜450nmの光)に対して事実上透明(透過率70%以上、望ましくは80%以上)であることを意味する。
本発明の透光層は支持体や記録層を含む基板と粘着剤層を介して貼り合わせることが好ましい。
本発明なる情報記録担体の透光層の厚みは、支持体の厚みよりも薄いことが好ましい。情報記録担体が傾いたときに増加する収差を考慮すると、その厚みは50〜300μmが相応しく、望ましくは60〜200μm、更に望ましくは70〜120μmである。また厚みの一面中でのバラツキは最大で±0.3μm以下である必要があるが、望ましくは±0.2μm以下更に望ましくは±0.1μm以下とする。
本発明の光情報記録担体は、例えば、次のようにして情報の記録、再生が行われる。まず、光情報記録担体を所定の線速度(0.5〜10m/秒)、又は、所定の定角速度にて回転させながら、透光層側から対物レンズを介して青紫色レーザ(例えば、波長405nm)などの記録用の光を照射する。この照射光により、記録層がその光を吸収して局所的に温度上昇し、例えば、ピットが生成してその光学特性を変えることにより情報が記録される。上記のように記録された情報の再生は、光情報記録担体を所定の定線速度で回転させながら光学的手段として青紫色レーザを用いてレーザ光を透光層側から照射して、その反射光を検出することにより行うことができる。
記録・再生用の光学的手段となる500nm以下の発振波長を有するレーザ光源としては、例えば、390〜415nmの範囲の発振波長を有する青紫色半導体レーザ、中心発振波長425nmの青紫色SHGレーザ等を挙げることができる。
また、記録密度を高めるために、ピックアップに使用される対物レンズのNAは0.7以上が好ましく、0.85以上がより好ましい。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1:ハードコートフィルム(光記録媒体の透光層)の作成と評価
ハードコートフィルム(光記録媒体の録層上に設置される透光層)は、支持体側から順に透光性フィルム、ハードコート層からなる。ここでは透光性フィルム、ハードコート層からなる透光層の作製例を示し、以下に、透光性フィルム(セルロースアシレートフィルム)の製造法、ハードコート層塗布の順に記載する。
(1−1:透光性フィルムの製造)
セルロースアシレート、セルロースアシレート溶液およびセルロースアシレートフィルムの化学的性質および物理的性質は、以下のように測定および算出した。
(1)セルロースアシレートの置換度及び酢化度(%)の測定(ケン化法による)
乾燥したセルロースアシレートを精秤し、アセトンとジメチルスルホキシドとの混合溶媒(容量比4:1)に溶解した後、所定量の1mol/L−水酸化ナトリウム水溶液を添加し、25℃で2時間ケン化した。フェノールフタレインを指示薬として添加し、0.5mol/L−硫酸(濃度ファクター:F)で過剰の水酸化ナトリウムを滴定した。また、上記と同様の方法により、ブランクテストを行った。そして、下記式に従って酢化度(%)を算出した。
酢化度(%)=(6.005×(B−A)×F)/W
式中、Aは試料の滴定に要した0.5mol/L−硫酸量(ml)、Bはブランクテストに要した0.5mol/L−硫酸量(ml)、Fは0.5mol/L−硫酸のファクター、Wは試料質量を示す。なお、複数のアシル基を含有する系では、そのpKaの差を使って、各アシル基の量を求めた。また、文献(T.Sei,K.Ishitani,R.Suzuki,K.Ikematsu PolymerJournal 17 1065、1985)に記載の方法によっても同様に求めた。さらに、求められた酢化度、その他のアシル基の量から分子量を考慮して置換度に換算した。さらにまた、セルロースアシレートの2位、3位および6位のアシル置換度を、セルロースアセテートをアシル化に用いていないアシル基でアシル化処理した後、Carbohydr. Res. 273(1995)83−91(手塚他)に記載の方法で13C−NMRにより求めた。
(2)セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)
絶乾したセルロースアシレート約0.2gを精秤し、メチレンクロリド:エタノール=9:1(質量比)の混合溶剤100mlに溶解した。これをオストワルド粘度計にて25℃で落下秒数を測定し、粘度平均重合度(DP)を以下の式により求めた。
ηrel =T/T0 T: 測定試料の落下秒数 T0:溶剤単独の落下秒
[η]=(1nηrel )/C(C→0) C: 濃度(g/l)
DP=[η]/Km Km:6×10-4
(4)セルロースアシレートフィルムおよびハードコートフィルムの平滑性(膜厚変動幅)の測定
安立電気製の連続厚味計を用い、操作速度180mm/minで12cmの長さを2cm間隔で7回走査し、この中で最も厚い膜厚と、最も薄い膜厚との差を求めることによって、本発明の膜厚変動幅を求めた。
(1−1−1:セルロースアシレート溶液の作製)
綿花リンターより得られたセルロース原料を特開平10−45804号公報記載の方法でアシル化した。本発明−1のセルロースアセテートは特開平10−45804号公報の比較例4、本発明−2のセルロースアシレートは実施例4、本発明−3、本発明−4及び比較例のセルロースアシレートは実施例5、本発明−5、6は、各々特開2002−210766号の実施例1のセルロースエステルフィルム8、9から紫外線吸収剤を除去することで、また本発明−7は本発明−6に対してセルロースアシレートを特開平10−45804号公報実施例4で用いたものに変更し、酢酸、酪酸、プロピオン酸の添加量などを調整して合成した。こうして得たセルロースアシレートを下記の2種の溶解方法にてセルロースアシレート溶液を作製した。詳細な溶剤組成については表4に記載した。なお、シリカ粒子(粒径20nm)、トリフェニルフォスフェート/ビフェニルジフェニルフォスフェート(1/2)、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジンをそれぞれセルロースアシレートに対して0.5質量%、10質量%、1.0質量%添加した。また、剥離剤としてクエン酸をセルロースアシレートに対して200ppm添加した。なお、本発明における共流延の内部層、外部層を形成する液としては上記セルロースアシレート溶液を濃度を変えて用いた。詳細は、表4に合わせて示した。
(1−1―1a:冷却溶解(表4に「冷却」と記載))
溶剤中に、よく攪拌しつつ表4記載のセルロースアシレートを徐々に添加し、室温(25℃)にて3時間放置し膨潤させた。得られた膨潤混合物をゆっくり撹拌しながら、−8℃/分の冷却速度で−30℃まで冷却、その後表4記載の温度まで冷却し6時間経過した後、+8℃/分の速度で昇温し内容物のゾル化がある程度進んだ段階で、内容物の撹拌を開始した。50℃まで加温しドープを得た。
(1−1―1b:高圧高温溶解(表4に「高温」と記載))
溶剤中に、よく攪拌しつつ表1記載のセルロースアシレートを徐々に添加し、室温(25℃)にて3時間放置し膨潤させた。得られた膨潤混合物を、二重構造のステンレス製密閉容器に入れた。容器の外側のジャケットに高圧水蒸気を通すことで+8℃/分の速度で昇温し1Mpa下、表4記載の温度で5分間保持した。この後外側のジャケットに50℃の水を通し−8℃/分の速度で50℃まで冷却し、ドープを得た。
(1−1−2:セルロースアシレート溶液の濾過)
次に得られたドープを50℃にて、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)で濾過し、さらに絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポール社製、FH025)にて濾過した。
(1−1−3:セルロースアシレートフィルムの作成)
上記(1−1−2)の溶液を特開昭56−162617号公報に記載の流延機を用いて流延した。以下に示した貧溶剤処理を一部の水準で実施後、剥ぎ取り工程を通した後に、テンター搬送し、120℃の環境下で30分乾燥して溶剤を蒸発させセルロースアシレートフィルムを得た。層構成は本発明においては二層または三層であり、二層ではバンド面から内部層/外部層の構成、三層では外部層/内部層/外部層のサンドイッチ型構成であった。詳細は表4に示した。
(1−1−3a:貧溶剤浴処理(表4に「溶剤浴」と記載))
剥ぎ取り位置の前に溶剤を満たした浴槽を用意し、剥離前の支持体が生乾きのフィルムごとこの浴槽中の溶剤に2〜3秒浸漬されるようにした。
(1−1―3b)貧溶剤噴霧処理(表4に「噴霧」と記載)
剥ぎ取り位置の前に溶剤を噴霧する工程を設け、剥離前の支持体に接着した状態の生乾きのフィルムの表面に貧溶剤を噴霧した。噴霧量はフィルム1m2あたり約5gであった。
(1−1−4)結果
得られたセルロースアシレートの溶液およびフィルムを上述の項目に従って評価した。結果を表4に示した。比較例−1及び比較例−2のセルロースアシレートフィルムは、平滑性に劣るハードコートフィルムの形成に用いる支持体フィルムであり、それ自体も後記する表5に示されるように平滑性に劣る。
Figure 2005298795
(1−2:ハードコート層の形成)
(1−2−1)ハードコート層塗布液の調製
(1−2−1−1)H1液の調製
メチルエチルケトン(MEK)中にグリシジルメタクリレートを溶解し、熱重合開始剤(V−65(和光純薬工業(株)製)を滴下しながら80℃で2時間反応させ、得られた反応溶液をヘキサンに滴下し、沈殿物を減圧乾燥して得たポリグリシジルメタクリレート(ポリスチレン換算分子量は12,000)をメチルエチルケトンに50質量%濃度になるように溶解した溶液100質量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート(ビスコート#295;大阪有機化学工業(株)製)150質量部と光ラジカル重合開始剤(イルガキュア184、チバガイギー社製)6質量部と光カチオン重合開始剤(ロードシル2074、ローディア社製)6質量部と防汚剤としてメガファック531A(大日本インキ化学工業(株)製)10質量部を30質量部のメチルイソブチルケトンに溶解したものを撹拌しながら混合し、ハードコート層塗布液(H1)を作製した。
(1−2−1−2)H2液の調製
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、ダイセル・ユーシービー(株)製)93質量部に、防汚剤としてR−3833(ダイキンファインケミカル研究所製)およびUMS−182(Gelest製)2質量部、光ラジカル重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)3質量部をメチルエチルケトン/メチルイソブチルケトン(1:1質量比)混合液に溶解混合し、ハードコート層塗布液(H2)を調整した。
(1−2−1−3:H3〜H7液の調製)
H2に対し、日産化学製MEK−ST(シリカ粒子固形分30質量%含有)の添加量を表5のように変更したH3〜H7を調製した。
(1−2−2:ハードコートフィルムの作製(ハードコート層の塗布))
富士写真フイルム株式会社製のセルローストリアセテートフィルム(TD80U)および上記製膜したセルロースアシレートフィルムにハードコート層を設置する面に屈折率1.55、ガラス転移温度37℃のスチレン−ブタジエンコポリマーからなるラテックス(LX407C5、日本ゼオン(株)製)と酸化錫・酸化アンチモン複合酸化物(FS−10D、石原産業(株)製)とを質量で5:5の割合で混合し、乾燥後の膜厚が200nmとなるよう塗布し、帯電防止層付き下塗り層を形成した後、上記ハードコート層用塗布液を表5に記載の厚みになるようにエクストルージョン方式で塗布、乾燥し、紫外線を照射(700mJ/cm2)して表5に記載の厚みのハードコートフィルムを作製し、ロール状に巻き取った。
(1−3:ハードコートフィルムの評価)
(1−3−1:鉛筆硬度試験)
記録担体の透光層のフィルムを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS−K−5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い、9.8Nの荷重にて傷が認められない鉛筆の硬度を求めた。
(1−3−2:フィルム面状)
フィルムを目視で観察し、その面状を以下の如く評価した。
A:きわめて面状が良好である。
B:まれにムラが認められる。
C:弱いムラが比較的多数見られる。
D:フィルム全面にムラが認められる。
この結果を表5に示す。
Figure 2005298795
表5より、本発明のような平滑なハードコートフィルムを作成するためには、セルロースアシレートフィルムとしても平滑なものを使用する必要があり、ハードコートフィルムの平滑性は、おおむねベースとなるセルロースアシレートフィルムの平滑性と対応していることが分かる。
実施例2:光情報記録担体の作製と評価
(2−A:支持体、記録層の作製)
スパイラル状のグルーブ(深さ100nm、幅120nm、トラックピッチ320nm)を有し、厚さ1.1mm、直径120mmの射出成形ポリカーボネート樹脂(帝人社製ポリカーボネート、商品名:パンライトAD5503)基板の面上に、Agをスパッタして100nmの厚さの光反射層を形成した。
その後、オラゾールブルGN(記録素材1、フタロシアニン系色素、cibaスぺシャリティケミカル社製)20gを2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール1リットル中に添加し、2時間超音波処理を行って溶解し、記録層形成用の塗布液を調製した。調製された塗布液を、光反射層上に回転数を300〜4000rpmまで変化させながら、23゜C、50%RHの条件でスピンコート法により塗布した。その後、23゜C、50%RHで1〜4時間保存して形成された記録層の膜厚は100nmであった。そして、記録層上に、ZnS−SiO2を厚さ5nmになるようにスパッタし、中間層(バリア層)を形成した。
また、記録用素材の別の例としてオラゾールブルGNの代わりにDC及びRFスパッタリング法を用い、相変化記録層としてAgPdCu/ZnSSiO/AgInSeTe/ZnSSiO(記録素材2)からなる積層膜を成膜形成したものも作製した。
(2−B:ハードコートフィルムと基板との貼合わせ)
次のようにして、上記2−Aで基板上に設けた記録層上に、中間層を介して、上記実施例1で作製したハードコートフィルムを貼り合わせることによって光情報記録担体を作製した。
(2−B−1:粘着剤層の形成)
アクリル系共重合体(溶剤:酢酸エチル/トルエン=1/1)と、イソシアネート系架橋剤(溶剤:酢酸エチル/トルエン=1/1)とを、100:1(質量比)で混合し、粘着剤塗布液Aを調製した。この粘着剤塗布液Aを用いて、間接法にて、離型フィルムの表面に粘着剤層を設けた。
即ち、ロール状に巻回されたポリエチレン製離型フィルムを搬送しながら、その離型フィルムの表面に乾燥後の厚さが20μmとなるように粘着剤塗布液Aを塗布した。その後、乾燥領域において100℃で乾燥させ、粘着剤層が設けられた離型フィルムを得た。
(2−B−2:光情報記録担体用透明シートの製造)
ハードコートフィルムのハードコート層が設けられた逆の面に、粘着剤層が設けられた離型フィルムを、粘着剤層が当接するように貼り合せた。その後、このハードコート層及び粘着剤層が設けられたハードコートフィルムを、再びロール状に巻き取り、その状態で、23゜C、50%RHの雰囲気で、72時間保持した。
そして、ハードコート層及び粘着剤層が設けられたハードコートフィルムを、送り出し、上記基板と同じ形状に打ち抜いた。これにより、透光性フィルムの一方の面に粘着剤層を有し、他方の面にハードコート層を有する光情報記録担体用透明シートを得た。
(2−B−3:光情報記録担体の作製(基板、記録層へのハードコートフィルムの貼合わせ))
ディスク状の光情報記録担体用透明シートから、粘着剤側の離型フィルムを剥がし、中間層と粘着剤層とをローラによる押し圧手段によって貼り合わせ、光情報記録担体を作製した。
(3:記録特性の測定、評価)
これらの情報記録担体をλ=405nmで発光する青紫レーザーと、開口数NA0.7の対物レンズから構成されるピックアップを有した記録再生装置に装着して、最短ピット長を0.24μmに設定したD8−15変調信号の記録と再生を行い信号再生ジッターを測定した。ジッターは小さいほど好ましく、具体的には15%以下望ましくは10%であることが好ましく、5%以下であることが最も望ましい。
作製した光記録媒体と、その各種測定結果を表6に示す。
ここで、擦傷後のジッターは、光記録媒体の表面をスチールウールで100g/cm2の圧力を加えて100回擦する後のジッタ−を示したものである。また、保存後のジッターは、光記録媒体を80℃80%の環境化に7日間保存した後のジッターを示したものである。
Figure 2005298795
表5、表6により次のことが分かる。
(1)平滑性の高いセルロースアシレートフィルムを用いることで、好ましい面状のハードコートフィルムを作成することができ、記録特性として好ましい(例えば、試料15及び16と、試料6の比較)。
(2)鉛筆硬度2H以上のハードコートを塗布することでジッター変化が小さくなり、耐久性を向上できる。
(3)充填剤量を35〜50質量%とすることで表面硬度を向上することができ、耐久性を向上できる。
(4)充填剤量を多くしすぎたり、膜厚を厚くしすぎるとハードコートフィルムの面状が劣化し、記録特性が悪化する(試料11参照)。
(5)ベースフィルムとして本発明-1ないし本発明-6のセルロースプロピオネートフィルムあるいはセルロースブチレートフィルムを用いた試料12ないし17では、高温高湿で保存した後もジッター増加が非常に小さい。

Claims (13)

  1. 直径12cmの円内の膜厚最大変化幅が0.6μm以下であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
  2. 請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム上に少なくとも一層のハードコート層を塗布して成ることを特徴とするハードコートフィルム。
  3. フィルム表面の鉛筆硬度が2H以上であることを特徴とする請求項2に記載のハードコートフィルム。
  4. セルロースアシレートフィルム上に少なくとも一層のハードコート層を塗布して成るハードコートフィルムにおいて、該セルロースアシレートフィルムが、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I?a)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルからなり、鉛筆硬度が2H以上であることを特徴とするハードコートフィルム。
    (I−a) 2.3≦X+Y≦3.0
    (II) 0≦X≦2.5
  5. 請求項4記載のハードコートフィルムにおいて、該セルロースアシレートフィルムが、セルロースエステルと有機溶媒とを含有し、21質量%以上の固形分濃度を有するドープを用い、且つ、該ドープを支持体上に流延し、ウェブ(ドープ膜)を形成後、該支持体から該ウェブ(ドープ膜)を剥離する溶液流延製膜法により得られるものであることを特徴とするハードコートフィルム。
  6. ハードコート層が、少なくとも多官能性アクリル酸エステル系モノマーと粉末状無機充填剤とを含有する硬化性組成物の硬化物からなり、ハードコート層中に該無機充填剤が5〜60質量%含まれることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のハードコートフィルム。
  7. 請求項2〜6のいずれかに記載のハードコートフィルムに粘着剤を塗設することによって形成されたことを特徴とする粘着剤付きハードコートフィルム。
  8. 光学的手段によって情報信号を再生可能な情報記録担体であって、支持体と、該支持体上に形成され情報信号を記録可能な記録層と、該記録層上に形成され光を透過する透光層とを少なくとも有し、該透光層が、直径12cmの円内の膜厚最大変化幅が0.3μm以下であるセルロースアシレートフィルムからなることを特徴とする情報記録担体。
  9. 光学的手段によって情報信号を再生可能な情報記録担体であって、支持体と、該支持体上に形成され、情報信号を記録可能な記録層と、該記録層上に形成され、光を透過する透光層とを少なくとも有し、該透光層が、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I−a)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルを少なくとも1種類含有することを特徴とする情報記録担体。
    (I−a) 2.3≦X+Y≦3.0
    (II) 0≦X≦2.5
  10. 透光層の表面に少なくとも一層のハードコート層が塗設されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の情報記録担体。
  11. ハードコート層の表面の鉛筆硬度が、2H以上であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の情報記録担体。
  12. ハードコート層が、少なくとも多官能性アクリル酸エステル系モノマーと粉末状無機充填剤とを含有する硬化性組成物の硬化物からなり、ハードコート層中に該無機充填剤が5〜60質量%含まれることを特徴とする請求項10または11に記載情報記録担体。
  13. セルロースアシレートフィルムに粘着剤が塗設された粘着剤付きフィルムが、支持体と記録層とからなる基盤に貼り合わせられていることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の情報記録担体。
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