JP2005296352A - 白髪の評価方法 - Google Patents

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陽介 中沢
Tsutomu Soma
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Rumiko Toyama
ルミ子 外山
Masahiro Tajima
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Abstract

【課題】 毛髪に存在する白髪を客観的かつ定量的に供する白髪の評価方法に関する。
【解決手段】 検査対象に対する白髪の評価方法であって:前記検査対象の測定部位を特定する特定工程;及び毛髪固定部材を介して、前記の特定された測定部位に存在する毛髪群を整列して配列毛髪群を得る整列工程;を有することを特徴としている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、白髪の評価方法に関する。
白髪は、美容上重要な要素の一つであり、種々の調査・研究が行われている。その素因には、遺伝的な影響、加齢、生活環境、疾病やストレスなどが含まれ、種々雑多である。白髪の素因を探求すべく、毛髪の有する物理的・化学的特性を評価することにより、白髪の発生原因を探求する研究も多数行われており、その中には、疫学的な観点からの調査から、人種や性別により白髪の発生頻度が異なること、比較的太い毛髪がやがて白髪となりやすいこと、白髪が黒髪よりも伸張速度が高いことなど、諸説・俗説も入り乱れて、混沌としており、その素因を同定すべく精力的に研究されている。
一方、毛髪群に占める白髪の度合いを評価する方法は、従来から、主観的な官能評価により行われていることが実情である。この実情は、白髪の度合いを外観的に容易に行えることに起因していると考えられるが、その実、白髪の度合いに関する判断基準は実に曖昧であって、頭部毛髪の外観を主観的にランク付けし、全体的な印象に基づいて行われている。このような官能評価は、評価のバラツキを完全に排除することは難しく、また、経験豊富な研究者および美容技術者を育成するには時間と手間を要するため、評価の難しさや煩雑さを回避することができない。
しかも、外観にて評価することは、毛髪の頭部における存在形態を考慮すると、さらに曖昧なものになることが容易に予想可能である。つまり、通常、毛髪は頭部において非整列状態であり、この状態で毛髪を評価することは、その評価上、様々な弊害をもたらす可能性がある。
この現状に対して、主観をできる限り最小限にして、より正確に個々の白髪を評価する方法も開示されている。例えば、特許文献1では、局所の白髪を毛刈りし、白髪の本数を数えることで、全体の毛髪に対する白髪を定量的に評価する方法を開示しており、非特許文献1では、黒白スケールの上に毛髪を配置し、毛髪毎に白髪か否かを判定する方法を開示している。
特開2001−128957号公報 Van Nesteら著、"Thickness, medullation and growth rate of female scalp hair are subject to significant variation according to pigmentation and scalp location during ageing"、Eur. J. Dermatol.、14、p.28−32、2004
しかしながら、上述のいずれの方法も、白髪を計数する際、個々の毛髪が不揃いの状態で行っていることから、白髪の評価工程が煩雑となりやすい。
一方、このような毛髪の配置状態の下、上述の官能評価では、毛髪全体の印象を判定するのみであり、個々の白髪に関して、的確に評価することはできない。また、個々の白髪に関してその白髪度合いの評価を行う上述の方法であっても、最終的には人為的な判断が必要となり、客観性の高い白髪情報を得ることができないという問題がある。さらに、大量の毛髪群から白髪を簡便、迅速且つ正確に評価することは困難である。
本発明は上述の実情を鑑みてなされたものであり、以下に示す手段により、従来技術での上述の問題を解決している。すなわち、
本発明の請求項1に係る白髪の評価方法は、
検査対象に対する白髪の評価方法であって:
前記検査対象の測定部位を特定する特定工程;及び
毛髪固定部材を介して、前記の特定された測定部位に存在する毛髪群を整列して配列毛髪群を得る整列工程;
を有することを特徴とする。これにより、毛髪群の乱れが解消されて整列された状態で、白髪を評価することが可能となる。
本発明の請求項2に係る白髪の評価方法は、前記配列毛髪群を切断し、切断毛髪群と前記の特定された測定部位に残存する残存毛髪群とを得る切断工程をさらに有することを特徴とする。これにより、上述に加えて、一定期間を経過し成長した毛髪群を採取することができ、このことにより、各毛髪群に関して毛髪に関連した種々の特性を検討することが可能となる。
本発明の請求項3に係る白髪の評価方法は、前記切断毛髪群と前記残存毛髪群とを関連付ける関連付け工程をさらに有することを特徴とする。これにより、上述に加えて、切断毛髪群及び残存毛髪群に関する各種特性を比較検討することが可能となり、より幅広く、白髪を評価することが可能となる。
本発明の請求項4に係る白髪の評価方法は、前記配列毛髪群、前記切断毛髪群及び/又は前記残存毛髪群の画像データに基づいて、該各毛髪群の全毛髪数に対する該各毛髪群に存在する白髪数の割合を算出する算出工程をさらに有することを特徴としている。これにより、上述に加え、主観を排除して、測定部位に存在する全毛髪数に対する白髪数の割合を算出し、該数値データを用いて、より客観的且つ簡便に白髪を評価することが可能となる。なお、「前記配列毛髪群、前記切断毛髪群及び/又は前記残存毛髪群」との用語は、前記配列毛髪群と、前記切断毛髪群と、前記残存毛髪群とを任意に組み合わせた毛髪群を意味している。
検査対象の測定部位を配列するための毛髪固定部材は、測定部位に存在する毛髪群を毛髪毎に配列できるものであればよく、その形状・材質は種々の部材を用いることができ、例えば、プラスティック製の着色シートが挙げられる。また、毛髪固定部材の寸法は、測定部位に存在し、対象とする毛髪群の毛髪量に依存して、種々変更してもよい。さらに、かかる毛髪固定部材の色調は、毛髪群が適切に配列されていることを確認できるものであればよく、その色調は、好ましくは、緑、赤、橙、青であり、さらに好ましくは青である。また、毛髪を撮像する場合、背景としては白色が好ましく、毛髪固定部材の一部に白色の色調を有する部分を有することが望ましい。
本発明における白髪の評価方法は、上述の白髪の度合いに関連した指標に加えて、本技術分野公知の毛髪の物理的・化学的特性と組み合わせて総合的に評価することも可能である。上記公知の毛髪の特徴として、毛髪径、毛髪断面、毛髪扁平率などの物理的特徴や、メラニンやチロシナーゼ活性等の生化学的特徴が挙げられる。
また、本発明により得られた頭皮に残存する毛髪群を用いて、その毛髪特性を評価することも可能となる。つまり、上記公知の毛髪に関連した物理的・化学的特性に加えて、毛髪の成長速度や成長期毛率を測定し、さらに総合的に評価することも可能である。
さらに白髪の度合いに関連した指標として、公知である、熟練者等による官能評価を組み合わせることも可能である。
本発明におけるこれらの特徴により、より総合的に白髪を評価することが可能となる。
一方、本発明の画像データを得る手段としては、当業者公知の撮影装置を用いることが可能で、例えば、ビデオマイクロスコープを用いる。これにより、白髪であるか否かを始め、毛髪に関する情報を好適に得ることができる。
また、本発明において、白髪を評価するための対象とする測定部位は、頭部のいずれの場所でもよく、例えば、頭頂部、後頭部、左側頭部又は右側頭部などを挙げることができる。
一方、本発明における白髪の経時的な評価方法は、
請求項2乃至13のいずれか一項に記載の方法を用いることを特徴とする。このことにより、上述した白髪・毛髪特性を、経時的に追跡することにより、より総合的で、関連性を持った毛髪に関連した特性を取得することが可能となり、取得した情報から、さらに総合的に白髪を評価することが可能となる。
毛髪群に占める白髪の割合を、簡便に、効率的に及び/又は客観的に評価することが可能となる。
本発明に係る白髪の評価方法に関する好適実施例について、図を参照して以下に説明する。
1.本発明に従った白髪の評価方法の概略
図1は、本実施の一つの好適実施例に係る白髪の評価方法を示す概略図を示している。本好適実施例において、本発明に従った白髪の評価方法は、特定工程S1、整列工程S2、第1撮像工程S3、切断工程S4、関連付け工程S5、第2撮像工程S6及び算出工程S7から構成されている。他の各好適実施例では、特定工程S1及び整列工程S2が必須の工程であって、第1撮像工程S3、切断工程S4、関連付け工程S5、第2撮像工程S6及び算出工程S7が任意の工程である。
なお、理解を助ける便宜上、本願において、便宜的に第1撮像工程S3及び第2撮像工程S6と参照しているが、実質的には、以下に参照する撮像工程と同様の手法を用いて行う。さらに、第1撮像工程S3、切断工程S4、第2撮像工程S6、関連付け工程S5及び算出工程S7として、本発明を構成する一つの工程として参照しているが、各請求項に記載された構成要件を限定的に解釈するものではなく、あくまで、本発明の全貌をより明確に理解可能とすべく各工程を参照しており、各請求項の評価方法に応じて、以下に説明する各工程を種々組み合わせることにより、本発明の白髪の評価方法を構成することを申し述べておく。
まず、必須の工程(特定工程S1及び整列工程S2)に関し、説明する。
特定工程S1は、本発明における白髪の評価方法を実施する対象を特定・選択する工程である。整列工程S2は、特定工程S1で特定した測定部位に存在する毛髪群を、毛髪固定部材を用いて配列し、この毛髪固定部材上に毛髪群を固定する工程である。整列工程S2により得た配列毛髪群は、官能評価による各種の毛髪判定を行うことが可能である。
次に、任意の工程(第1撮像工程S3、切断工程S4、関連付け工程S5、第2撮像工程S6及び算出工程S7)に関し、説明する。
第1撮像工程S3(あるいは単に撮像工程と呼ぶこともある)は、上述の配列毛髪群を撮像する工程であって、この工程により、毛髪群の画像データを取得する。切断工程S4は、整列工程S2にて毛髪固定部材に固定された毛髪群を切断する工程である。この結果、毛髪群は、2つの群、つまり、切断された毛髪群(以下、切断毛髪群と略す)と、切断された結果、頭皮に生え残っている毛髪群(以下、残存毛髪群と略す)とを得ることになる。次に関連付け工程S5は、切断毛髪群に存在する個々の毛髪と残存毛髪群に存在する個々の毛髪とを対応付ける。第2撮像工程S6(あるいは単に撮像工程と呼ぶこともある)は、切断毛髪群及び/又は残存毛髪群を撮像する工程であり、上記の第1撮像工程S3と同様の手法により、切断毛髪群及び/又は残存毛髪群を対象として撮像する工程である。その後、算出工程S7において、得られた画像データを用いて、毛髪群に存在する個々の毛髪に関して、白髪であるか否かを判定し、毛髪群に対する白髪数の割合を算出する。
以下、本発明における好適な実施形態を示しながら、各工程に関して図を参照して、以下に説明する。
2.本発明に従った白髪の評価方法に係る各工程
(1)特定工程S1
特定工程S1は、対象とする被検者のどの部位を測定部位とするかを決定するための工程である。評価の対象とする頭部を所望の区画毎に分割し、各区画に存在する毛髪群を評価の対象としてもよい。図2は、頭部を特定の区画毎に分割し、各区画を概略的に示す図であり、それぞれ、頭頂部、後頭部、左側頭部及び右側頭部を示している。本発明において、特定工程S1を実行する測定部位として、これらの各区画を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、所望する測定部位を種々選択してもよい。
また、選択した測定部位は、一定の基準の下に、相対的にずれを生じることなく選択されることが好ましい。測定部位を特定する方法として、解剖学的な基準線又は基準位置を挙げることができる。例えば、正中線や頭頂線などを挙げることができる。図2には、正中線20及び頭頂線22が例示的に示されている。正中線20は、対象とする被検者の身体の矢状面に平行であり、且つ、身体の前面・背面の中央を、頭頂から縦にまっすぐ通る線である。また、頭頂線22は、左右の耳の中心を通り、頭頂部にて正中線20に直交している線である。図2では、測定部位を一定に保持する一つの手法を示している。例えば、頭頂部では、正中線20と頭頂線22が直交しており、この交点を中心に測定部位とすることも可能である。このように測定部位を固定することにより、評価すべき対象において、絶対的な位置がずれることなく、常に同様の測定対象に対して、本発明における白髪の評価方法を実施することが可能となる。
(2)整列工程S2
通常、測定対象部位の毛髪群は乱れて、交差した状態にある。また、毛髪群の毛根部には地肌が露出し、毛髪と地肌とが区別しにくい状態にある。この状態で、従来は、1本1本の毛髪が重なり合わないように毛髪を整えるのに非常に手間がかかっていた。そこで、特定工程S1を終了した後、この整列工程S2では、対象の測定部位として同定した領域に存在する毛髪群を、以下に続く工程に適した状態で整列し、保持することを目的としている。
図3は、整列工程S2を実施して得られた配列・保持された毛髪群と毛髪固定部材30との関係を示す図である。上述したように、整列工程S2での目的は、毛髪群に存在する毛髪を、毛髪固定部材30上で個々に配列・保持することであるので、毛髪群が、実質的に図3に示す状態に保持されていれば、いかなる手法も用いることが可能である。一例として、測定部位の毛髪群を大まかに直立させ、地肌32が視認できたところで、当該毛髪群と当該地肌32との間に毛髪固定部材30を挿入する。挿入された毛髪固定部材30上で、上述の直立した毛髪群に存在する個々の毛髪を配列する。配列する際、一旦配列された毛髪群が非配列状態とならないように、毛髪固定部材30上に粘着テープや接着剤等の接着部材を用いて、保持してもよい。また、整列工程S2に用いる毛髪固定部材30は、測定部位に存在する毛髪群を毛髪毎に配列できるものであればよく、その形状・材質は種々の部材を用いることができ、例えば、プラスティック製の着色シートが挙げられる。また、かかる毛髪固定部材の色調は、毛髪群が適切に配列されていることを確認できるものであればよく、その色調は、好ましくは、緑、赤、橙、青であり、さらに好ましくは青である。また、後の撮像工程を適切に行うべく、光反射性を極力押さえた毛髪固定部材であることが好ましい。さらに毛髪固定部材30の寸法は、測定部位に存在する毛髪群の量に応じて種々調節して用いる。例えば、図2に図示した毛髪固定部材30のように、10数センチの寸法であってもよい。
毛髪群に対する毛髪固定部材30の位置は、毛髪のいかなる部分であってもよいが、本発明の以下の工程を考慮して、当該位置を種々調節することが望ましい。図3では、毛髪固定部材30に対して対象の頭皮の近傍(つまり、毛髪固定部材30を地肌32にできるだけ近い位置)に配置しているが、この位置に限定されるものではなく、例えば、頭皮から個々の毛髪の長手方向に数センチに毛髪固定部材30を配してもよい。
(3)第1撮像工程S3及び第2撮像工程S6を含む本発明における撮像工程
本発明における撮像工程は、上記で得た毛髪群(つまり、整列・保持された毛髪群34、切断毛髪群及び/又は残存毛髪群)を、種々の撮影手段を用いて撮像し、画像データを得る工程である。
頭皮に毛髪の陰影が存在するために頭皮と毛髪とを明瞭に区別することが難しく、また、白髪と頭皮とを明瞭に区別することも難しい。そこで、撮像の際、毛髪群の陰影を強調し、再現性のある画像データを得るべく、公知の発光要素を毛髪群に指向して撮像してもよい。一般に、撮像手段の受光部は、被写体からの散乱光とともに反射光をも直接取り込むため、ハレーション現象を生じ、クリアな画像を得ることが阻害される傾向にある。この現象を回避すべく、偏光フィルターなどの偏光手段を用いることも可能である。この撮像工程により、反射光を直接受光することに起因するハレーション現象のない画像データを得ることができる。また、毛細の黒みの度合いを、後述する算出工程においてグレースケール値として読み取るためには、撮像部位の拝啓は白色を有することが望ましい。
またこの撮像工程は、公知の撮像装置を用いることが可能であり、例えばビデオマイクロスコープを挙げることができる。
(4)切断工程S4
本発明における切断工程S4は、整列工程S2で配列・保持された毛髪群を切断する工程である。図4は、左図は、切断工程S4実行前の毛髪群が配列された毛髪固定部材30と地肌32と切断手段40との関係を示した図であり、右図は、切断工程S4実行後の地肌32と残存毛髪群との関係を示した図である。切断工程S4に用いる切断手段40は、カッターやはさみなど、毛髪を切断するのに適した公知の手段を用いることができる。切断工程S4により切断される部位(図4の左図の切断手段40が挿入されている毛髪部分近傍)は、頭皮に近い毛髪部を切断することが好ましいが、以下の各工程の用途に応じて、切断部位を種々調節する。例えば、切断毛髪群に関して、生育する毛髪特性を解析するのに用いる用意がある場合には、頭皮から2以上6mm以下付近で切断することが好ましい。
切断工程S4により得られた切断毛髪群は、毛髪固定部材30上に保持されたまま、低温にて保存してもよいし、特定の媒体中に保存してもよい。後に行う毛髪に関連する解析工程には、種々の形態の毛髪サンプルを用いることが可能となる。
(5)関連付け工程S5
本発明における関連付け工程S5は、切断工程S4にて得た切断毛髪群と残存毛髪群とを関連付ける工程である。つまり、切断工程S4を実施する直前の個々の毛髪は、毛髪固定部材30上に整列・保持されており、頭皮に一本の毛髪として存在しているが、切断工程S4の実施により、2つの部分、つまり、切断毛髪と残存毛髪とに分断される。関連付け工程S5は、この切断毛髪と残存毛髪とを一本一本ずつ対応づける工程である。
毛髪は、元来特有の色調を有している。毛髪の伸張過程において、種々の環境の下、種々の色合いを有することが知られている。この現象は、毛髪の伸張過程において、毛根部に存在するメラノサイトが分泌するメラニン色素によると考えられている。個々の毛髪が存在する毛根部では、メラノサイトの他にも、毛母細胞が存在しており、個々の毛髪に特徴を与えている。
切断工程S4により切断された各毛髪群(切断毛髪群及び残存毛髪群)は、上述のように、一定の色調を有している。また、切断工程S4により得られた毛髪群の各毛髪は、毛髪固定部材30に固定された毛髪群の各毛髪と並び順、色調、形状により一対一に対応させて関連付けが可能であり、これらの性質を利用して関連付け工程S5を行う。関連付け工程S5で関連付けられた各毛髪セット(対応する切断毛髪及び残存毛髪)は、本発明における続く工程を行う際、番号付けしておくことが好ましい。切断毛髪及び残存毛髪に関する種々の特徴を、個別の毛髪で比較検討することが可能となるためである。なお、必要に応じて、この関連付け工程S5の後に第2撮像工程S6を実施し、上記した通り、毛髪群に関する画像データを取得する。
(6)算出工程S7
算出工程S7は、上記の第1撮像工程S3及び第2撮像工程S6で得た画像データを用いて、毛髪群に存在する白髪を計数し、毛髪群に対する白髪数を白髪率として算出する工程である。
上記の第1撮像工程S3及び/又は第2撮像工程S6で得た画像データを用いて算出工程S7を実行するに先立ち、画像解析ソフトにおいて、色調補正及びサイズ補正を行う。これにより、以降に行う算出工程S7において、より正確に画像データの解析を行うことが可能となる。この補正方法は、公知の画像処理手法を用いて行ってもよく、例えば、輝度、色調、サイズおよび歪みを補正して標準化する標準化処理などを挙げることができる。また、標準化に用いる画像補正用カラーチャートは公知のチャートを用いることが出来、例えば、株式会社ベア−メディック社製のキャスマッチがある。
上述の各補正の後、上記の第1撮像工程S3及び/又は第2撮像工程S6で得た各画像データは、白あるいは黒の度合いといった色調を判別するため、公知の画像形式においてグレースケール画像として保存する。保存された画像中に存在する毛髪群を構成する個々の毛髪に関し、公知の画像解析アプリケーションを用いて、上記のグレースケール画像における毛髪部分と背景部分とで、グレースケール値(いわゆる、グレースケール画像におけるK値)をそれぞれ読み取る。グレースケール値は、各ビットを構成する階調の度合いを%で示したものであり、黒み度合いが増大するにつれ、この数値が増大する。この数値は、下述する白髪の判断基準となる。
白髪であるか黒髪であるかを判定する基準として、上述のグレースケール値において、白髪と黒髪の境界値、つまり閾値を設定する必要がある。具体的な閾値は、経験に基づいて決定することが可能で、例えば、従来技術において官能評価により経験した判定基準から閾値を設定してもよい。
(7)判定工程
本発明における判定工程は、頭部の毛髪を全体的に視認することにより官能的に評価する方法であって、周知の手法である。判定工程により、従来行われていた白髪の外観判定結果を得ることが可能である。本発明における判定工程は、本発明における白髪率と関連付けることにより、本発明の妥当性を経験することができる。
(8)第1解析工程及び第2解析工程を含む解析工程
本発明において、上述の手法により得た白髪率と合わせて、毛髪に関連した種々の特徴を検討し、総合的に評価することも可能である。本発明において、第1解析工程及び第2解析工程を含む解析工程は、毛髪に関連する特性を解析する工程を参照している。この特性に関して、具体的には、第1解析工程は、生育する毛髪群及び/又は切断毛髪群に関して、その物理的・化学的特徴を解析する工程であって、 前記特徴は、毛髪径、毛髪断面、毛髪扁平率、メラニン色素、及び組織化学的特性からなる群から選択された少なくとも一つの特性を挙げることができる。また、第2解析工程は、生育する毛髪群に関して、その物理的・化学的特性を解析する工程であって、 前記毛髪特性は、成長速度及び/又は成長期毛率を挙げることができる。いずれの特徴・特性も、例示的に示したものであり、本技術分野にて公知の特徴・特性であってもよいし、公知の手法により検討することが可能である。
かかる特性を解析する対象は、上述したように、切断工程S4にて得た切断毛髪群や残存毛髪群であってもよいし、切断工程S4を行うことなく、特定工程S1にて特定した測定部位に存在する毛髪群であってもよい。
上述したように、切断工程S4により得られた残存毛髪群は、上述の毛髪に関連した特性に加え、毛髪の成長速度や成長期毛率など、頭皮に残存し、成長している毛髪に関する特有の現象(毛髪特性と略す)を解析することが可能である。例えば、成長速度は、
成長速度(mm/時間)=(測定開始X時間後の毛髪の長さ−測定0時間の毛髪の長さ)/日数(ただし、X>0)
で算出することができ、成長期毛率は、0.2μm/日を境界値として、これ以上の成長速度を有する毛髪を成長期毛髪とすると、
成長期毛率(%)=(成長期毛髪の本数/計測した毛髪の総本数)×100
で算出することができる。
(9)経時的評価方法
以上のように、本発明における白髪の評価方法は、毛髪群において白髪の度合いを主観的ではなく、客観的に評価することが可能となるとともに、配列した毛髪群を切断することにより、切断毛髪群と残存毛髪群とを得ることを可能としている。得られた残存毛髪群は、時間経過とともに成長し、成長した毛髪群として、再度本発明における整列工程S2を実行することにより、第2の切断毛髪群を得ることが可能となる。例えば、0日目に得た残存毛髪群と切断毛髪群に関し、本発明において例示した毛髪に関する特性を始めとした種々の特性(以下、種々特性)を評価した後、5日目において、成長した残存毛髪群の毛髪成長に関する特性を取得することも可能である。まだ、5日目に得た第2の切断毛髪群にて、種々特性を検討することも可能であるし、第2の切断毛髪群にて初めて得た種々特性に関するデータを、前述の第1の切断毛髪群にて検討することも可能である。
本発明における経時的な評価方法を用いる対象として、例えば、抗白髪剤のスクリーニングを挙げることができる。薬剤の効果を確認する手法として、処置後、一定の経過時間の後にその薬剤の持つ作用特性に着目し、種々の指標を検討することにより多角的に評価することは一般的に行われることであって、抗白髪剤の研究においても例外ではない。さらに、従来は、毛髪の外観から白髪を観察し、白髪の度合いを検討することが行われてきたが、本発明の評価方法を用いることにより、個々の毛髪の物理的・化学的特性を外観や色調とともに検討することが可能となる。さらに、この項にて述べるように、本発明の白髪の経時的評価方法を用いることにより、経時的且つ総合的な評価を実行することが可能となる。
(実施例1)
図5は、本発明の評価方法により得た白髪率と従来技術における外観判定との関係を示した相関グラフである。X軸は、従来技術において参照される外観判定を等間隔で示しており、Y軸は、本発明における白髪率である。グラフ内に示には、相関関数及び相関係数(二乗)を示している。明らかなように、本発明における白髪率は、従来の外観判定結果と高い相関関係を有していた。
(実施例2)
図6は、本発明に従って評価した白髪及び黒髪に関する平均毛髪径の比較図である。37名の被検者を対象とし、被検者の左側頭毛髪4071本に関して、本発明に従って白髪か黒髪かを評価し、さらに該毛髪の短径をノギスで計測した。
(実施例3)
図7は、本発明の評価方法に従って分類した白髪及び黒髪に関する毛髪断面を比較した図の典型例である。被験者15名から、本発明に従って切断毛髪群を採取し、得た毛髪164本を、凍結切片法により厚さ8μmで薄切し、固定した。左列には、本発明に従って評価・分類した白髪を、右列には、同様に評価・分類した黒髪を示し、上段には細毛を、中段には円形・楕円形の形状を有する毛髪を、下段には多角形の形状を有する毛髪に関する薄切像を示している。右列の毛髪群は、その中央部にメラニン色素とおぼしき黒斑が観察されるが、左列では黒斑が全く観察されなかった。
(実施例5)
図8は、本発明の評価方法に従って分類した白髪及び黒髪に関する毛髪の成長速度を比較した図である。実施例2で評価した左側頭毛髪4071本に関し、切断後x日後、個々の白髪及び黒髪に関して、毛髪長を計測し、上述の式に従って毛髪の成長速度を算出した。
(実施例6)
図9は、本発明の評価方法に従って分類した白髪及び黒髪に関する毛髪の成長期毛率を比較した図である。上記実施例5に従って得た毛髪の成長速度を元に、200μm/日以上の成長速度を有する毛髪を成長期毛髪とし、上述の式に従って毛髪の成長期毛率を算出した。
本実施の一つの好適実施例に係る白髪の評価方法を示す概略図である。 頭部を特定の区画毎に分割し、各区画を概略的に示す図である。 整列工程S2を実施して得られた配列・保持された毛髪群と毛髪固定部材30との関係を示す図である。 左図は、切断工程S4実行前の毛髪群が配列された毛髪固定部材30と地肌32と切断手段40との関係を示した図であり、右図は、切断工程S4実行後の地肌32と残存毛髪群との関係を示した図である。 本発明の評価方法により得た白髪率と従来技術における外観判定との関係を示した相関グラフである。 本発明に従って評価した白髪及び黒髪に関する平均毛髪径の比較図である。 本発明の評価方法に従って分類した白髪及び黒髪に関する毛髪断面を比較した図の典型例である。 本発明の評価方法に従って分類した白髪及び黒髪に関する毛髪の成長速度を比較した図である。 本発明の評価方法に従って分類した白髪及び黒髪に関する毛髪の成長期毛率を比較した図である。
符号の説明
S1 特定工程
S2 整列工程
S3 第1撮像工程
S4 切断工程
S5 関連付け工程
S6 第2撮像工程
S7 算出工程
S0 判定工程
20 正中線
22 頭頂線
30 毛髪固定部材
32 地肌
34 整列・保持された毛髪群
40 切断手段

Claims (14)

  1. 検査対象に対する白髪の評価方法であって:
    前記検査対象の測定部位を特定する特定工程;及び
    毛髪固定部材を介して、前記の特定された測定部位に存在する毛髪群を整列して配列毛髪群を得る整列工程;
    を有することを特徴とする白髪の評価方法。
  2. 前記配列毛髪群を切断し、切断毛髪群と前記の特定された測定部位に残存する残存毛髪群とを得る切断工程をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の白髪の評価方法。
  3. 前記切断毛髪群と前記残存毛髪群とを関連付ける関連付け工程をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の白髪の評価方法。
  4. 前記配列毛髪群、前記切断毛髪群及び/又は前記残存毛髪群の画像データに基づいて、該各毛髪群の全毛髪数に対する該各毛髪群に存在する白髪数の割合を算出する算出工程をさらに有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の白髪の評価方法。
  5. 前記毛髪固定部材は、前記毛髪群の色調を判別することのできる色調を有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の白髪の評価方法。
  6. 前記毛髪固定部材の一部は、白色の色調を有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の白髪の評価方法。
  7. 前記切断毛髪群の特徴を解析する第1解析工程をさらに有することを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載の白髪の評価方法。
  8. 前記特徴は、毛髪径、毛髪断面、毛髪扁平率、メラニン色素、及び組織化学的特性からなる群から選択された少なくとも一つの特性であることを特徴とする請求項7に記載の白髪の評価方法。
  9. 前記の特定された測定部位に存在する毛髪群と残存毛髪群の毛髪特性を解析する第2解析工程をさらに有することを特徴とする請求項2乃至8のいずれか一項に記載の白髪の評価方法。
  10. 前記毛髪特性は、成長速度及び/又は成長期毛率であることを特徴とする請求項9に記載の白髪の評価方法。
  11. 目視による前記毛髪群の白髪度の官能評価結果と関連づける判定工程をさらに有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の白髪の評価方法。
  12. 前記の特定された測定部位は、頭頂部、後頭部、左側頭部及び右側頭部からなる群から選択された部位であることを特徴とする請求項1乃至11に記載の白髪の評価方法。
  13. 撮像装置により前記画像データを得ることを特徴とする請求項4乃至12のいずれか一項に記載の白髪の評価方法。
  14. 請求項2乃至13のいずれか一項に記載の方法を用いた白髪の経時的な白髪の評価方法。
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