JP2005295894A - 3−ヒドロキシアルカン酸及び3−ヒドロキシアルカン酸オリゴマーの生物学的製造方法 - Google Patents

3−ヒドロキシアルカン酸及び3−ヒドロキシアルカン酸オリゴマーの生物学的製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 簡便で且つ生産効率に優れたポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 細胞内のポリヒドロキシアルカン酸加水分解酵素及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素の活性とポリヒドロキシアルカン酸生合成酵素の活性とを向上させた、及び/又は、3-ヒドロキシアルカン酸及び/又はそのオリゴマーの代謝分解活性が弱いか低下させた細胞を培養し、培養物中からポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩を回収する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、細胞を培養し、培養物中からポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩を回収する、ポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法に関する。
3-ヒドロキシアルカン酸のポリマーであるポリヒドロキシアルカン酸(以下、「PHA」という)は、微生物により合成される生分解性プラスチックである。100種類以上の微生物において、PHAがエネルギー貯蔵物質として合成、貯蔵され、また分解利用されることが知られている(W.G.C. Forsythら、Nature 182, 800-801(1958))。
PHAを多量に生産する微生物としては、例えば、ラルストニア(Ralstonia)属、バチルス(Bacillus)属、アゾトバクター(Azotobacter)属、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属、パラコッカス(Paracoccus)属、ハイフォミクロビウム(Hyphomicrobium)属及びロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)属が知られている。これらの細菌は、培養条件を最適化して培養することで、乾燥菌体重量の50〜90%のPHAの蓄積が可能である。一方、エシェリキア(Escherichia)属は貯蔵型PHA非生産性細菌である。しかしながら、PHA生合成酵素をコードする遺伝子を、エシェリキア属に属する細菌に形質転換することにより、細菌内に多量のPHAが生産されることが知られている。
ところで、微生物によるPHA分解に関する研究として、例えば、PHA加水分解酵素及びそれらの遺伝子に関する研究が知られている。特に、細胞外に分泌生産されるPHA加水分解酵素の研究が数多く行われている(非特許文献1及び2)。また、研究例が少ないものの、細胞内PHA顆粒に対するPHA加水分解酵素(例えば、菌体内PHAデポリメラーゼ)に関する研究が、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)H16株(非特許文献3)、パラコッカス・デニトリフィカンス(Paracoccus denitrificans)(非特許文献4)及びメチロバクテリウム・エクストークエンス(Methylobacterium extorquens)(非特許文献5)を対象として行われている。さらに、細胞内3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素に関する研究も行われている(非特許文献6及び7)。
PHAの加水分解物である3-ヒドロキシアルカン酸又はそのオリゴマーは、光学活性化合物である。ここで、光学活性化合物とは、右形、左形のいずれか一方の鏡像異性体からなる化合物を意味する。
3-ヒドロキシアルカン酸又はそのオリゴマーは、様々な分野において用途を有する。例えば、製薬分野では光学活性医薬の合成原料として、プラスチック分野では共重合用モノマー原料として、また食品分野では食品添加物として、3-ヒドロキシアルカン酸又はそのオリゴマーは用いられる。
そこで、3-ヒドロキシアルカン酸を生産すべく、生物学的及び/又は有機化学的な3-ヒドロキシアルカン酸の製造方法が従来から知られている。例えば、(1)n-酪酸を酸化して(R)-3-ヒドロキシ酪酸に変換する方法(非特許文献8)、(2)細菌から分離したPHAを化学的に加水分解する方法、(3)PHA含有細胞を低pHでインキュベートし、分解活性を誘導する方法(特許文献1)、(4)嫌気条件下での直接醗酵法(非特許文献9及び10)及び(5)不斉触媒を用いた3-ケト酸エステルの不斉還元法等が挙げられる。
しかしながら、従来の3-ヒドロキシアルカン酸の製造方法は、工業的実施に適するとは言い難い。例えば、上記(2)の製造方法では、菌体からPHAの分離精製工程と酸加水分解工程の煩雑な操作を必要とし、コストも高い。また、上記(3)の製造方法では、菌体の繰り返し分離工程と懸濁工程の煩雑な操作を必要とし、生産濃度も低い。さらに、上記(5)の製造方法では、不斉触媒と水素を使用するために、コストが高い。
以上のように、3-ヒドロキシアルカン酸又はそのオリゴマーを大量生産でき、且つコストが低く、工業的実施に適した、3-ヒドロキシアルカン酸又はそのオリゴマーの製造方法は、これまで確立されていなかった。
国際公開第99/29889号パンフレット Jendrossek, D.ら, Appl. Microbiol. Biotech., 1996年, 46, p.451-463 Rene’ H.ら, J.B.C., 2001年, 276, p.36215-36224 Haruhisa S.ら, J. Bacteriol., 2001年, 183, p.94-100 Dai G.ら, FEMS Microbiology letters, 2001年, 196, p.159-164 日本農芸化学会仙台大会講演要旨集, 2002年, p.173 Merrikら, Biochemistry, 1966年, 4, p.3563-3568 Tanakaら, Eur. J. Biochem., 1981年, 118, p.177-182 J. Hasegawaら, J. Ferment. Technol., 1982年, 61, p.37 D. Vollbrechtら, European J. Appl. Microbiol. Biotechnol., 1978年, 6, p.145-155 D. Vollbrechtら, European J. Appl. Microbiol. Biotechnol., 1979年, 7, p.259-266
そこで、本発明は、上述した実状に鑑み、簡便で且つ生産効率に優れたポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、細胞内のPHA加水分解酵素及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素の活性とPHA生合成酵素の活性とを向上させた細胞を培養することで、3-ヒドロキシアルカン酸及び/又はそのオリゴマーを効率よく生産できることを見出した。また、3-ヒドロキシアルカン酸及び/又はそのオリゴマーの代謝分解活性が弱いか低下させた細胞を培養することで、3-ヒドロキシアルカン酸及び/又はそのオリゴマーを効率よく生産できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下を包含する。
(1)細胞内のポリヒドロキシアルカン酸加水分解酵素及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素の活性とポリヒドロキシアルカン酸生合成酵素の活性とを向上させた、及び/又は、3-ヒドロキシアルカン酸及び/又はそのオリゴマーの代謝分解活性が弱いか低下させた細胞を培養し、培養物中からポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩を回収する、ポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
(2)ポリヒドロキシアルカン酸加水分解酵素及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素をコードする遺伝子とポリヒドロキシアルカン酸生合成酵素をコードする遺伝子とを導入した細胞を用いることを特徴とする、(1)記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
(3)ポリヒドロキシアルカン酸加水分解酵素及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素をコードする遺伝子の発現とポリヒドロキシアルカン酸生合成酵素をコードする遺伝子の発現とを増加させることで、上記活性を向上させることを特徴とする、(1)記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
(4)上記ポリヒドロキシアルカン酸加水分解酵素がポリ-3-ヒドロキシ酪酸デポリメラーゼであることを特徴とする、(1)記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
(5)上記ポリヒドロキシアルカン酸加水分解酵素がラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)に由来するものであることを特徴とする、(1)記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
(6)上記ポリヒドロキシアルカン酸加水分解酵素が細胞内局在性を示す細胞外ポリヒドロキシアルカン酸ヒドロラーゼであることを特徴とする、(1)記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
(7)上記細胞内局在性を示す細胞外ポリヒドロキシアルカン酸ヒドロラーゼがパウシモナス・レモイネイ(Paucimonas lemoignei)に由来するものであることを特徴とする、(6)記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
(8)上記ポリヒドロキシアルカン酸生合成酵素がβ-ケトチオラーゼ、アセトアセチル-CoAリダクターゼ及びポリ-3-ヒドロキシ酪酸シンターゼからなる群より選択される1以上のポリ-3-ヒドロキシ酪酸生合成酵素であることを特徴とする、(1)記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
(9)上記ポリ-3-ヒドロキシ酪酸生合成酵素がラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)に由来するものであることを特徴とする、(8)記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
(10)3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素をコードする遺伝子を破壊することで、3-ヒドロキシアルカン酸の代謝分解活性を低下させることを特徴とする、(1)記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
(11)3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素をコードする遺伝子の発現を低下させることで、3-ヒドロキシアルカン酸の代謝分解活性を低下させることを特徴とする、(1)記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
(12)上記3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素が3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素であることを特徴とする、(10)又は(11)記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
(13)上記代謝分解活性の弱い細胞が大腸菌(Escherichia coli)であることを特徴とする、(1)記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
(14)上記3-ヒドロキシアルカン酸の代謝分解活性を低下させた細胞が、受託番号FERM P-19731で特定されるラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)であることを特徴とする、請求項1記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
(15)上記培養において、多糖、単糖、脂質、脂肪酸、アルコール、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、細菌が資化し得る炭化水素及びこれらの混合物からなる群から選択される炭素源が培地に添加されていることを特徴とする、(1)記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
(16)上記細胞を、好気又は微好気条件下で培養することを特徴とする、(1)記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
(17)上記培養物が培養上清であることを特徴とする、(1)記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
(18)上記ポリヒドロキシアルカン酸加水分解物が3-ヒドロキシ酪酸又はそのオリゴマーであることを特徴とする、(1)記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
本発明に係るポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法では、細胞においてポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩を効率よく生産させることができる。特に、本発明に係るポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法では、ポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩を細胞外に分泌生産させることで、各種の分野で有用なポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩を優れた生産性で製造できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るポリヒドロキシアルカン酸(以下、「PHA」という)加水分解物又はその塩の製造方法(以下、「本発明に係る製造方法」という)の第1方法は、細胞内のPHA加水分解酵素及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素の活性とPHA生合成酵素の活性とを向上させた細胞を培養することで、当該細胞におけるPHA加水分解能とPHA生産能とを亢進させ、PHA加水分解物又はその塩を回収するものである。また、本発明に係る製造方法の第2方法は、3-ヒドロキシアルカン酸及び/又はそのオリゴマーの代謝分解活性が弱いか低下させた細胞を培養することで、当該細胞における3-ヒドロキシアルカン酸及び/又はそのオリゴマーの代謝分解を抑制させ、PHA加水分解物又はその塩を回収するものである。
本発明において、PHAとは、構成単位である3-ヒドロキシアルカン酸が数百個以上重合したポリマーを意味する。一方、PHA加水分解物とは、3-ヒドロキシアルカン酸又はそのオリゴマーを意味する。3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマーとしては、3-ヒドロキシアルカン酸が2〜数十個、好ましくは2〜10個重合したものである。また、PHA加水分解物の塩としては、特に限定されないが、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩及びカルシウム塩等を挙げることができる。
本発明において、3-ヒドロキシアルカン酸は、細胞において生合成されるものであれば、いずれの種類であってもよいが、例えば、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシバレリアン酸、3-ヒドロキシヘキサン酸、3-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシデカン酸等が挙げられる。また本発明において、PHA及び3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマーは、上記に示した3-ヒドロキシアルカン酸を構成単位とするものである。PHAとしては、例えばポリ-3-ヒドロキシ酪酸(以下、「PHB」という)、ポリ-3-ヒドロキシバレリアン酸、ポリ-3-ヒドロキシヘキサン酸、ポリ-3-ヒドロキシオクタン酸、ポリ-3-ヒドロキシデカン酸及びこれらの共重合体が挙げられる。また3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマーとしては、例えば、2〜数十個の3-ヒドロキシ酪酸、2〜数十個の3-ヒドロキシバレリアン酸、又は2〜数十個の3-ヒドロキシ酪酸と3-ヒドロキシバレリアン酸との共重合体等が挙げられる。
図1は、PHAの代謝経路の例示として、PHAの1つであるPHBを生合成する代謝経路、PHBを加水分解する代謝経路及び3-ヒドロキシ酪酸の脱水素反応を示す。
図1に示すように、PHBを生合成する経路では、β-ケトチオラーゼの可逆的な作用により、グルコースやフラクトース等の糖質からピルビン酸を経て合成された又は脂肪酸やアルコール等から合成されたアセチル-CoA 2分子が縮合してアセトアセチル-CoAが合成される。また、アセトアセチル-CoAリダクターゼの可逆的な作用によりアセトアセチル-CoAから3-ヒドロキシブチリル-CoAが合成される。そして、PHBシンターゼの作用により、3-ヒドロキシブチリル-CoAからPHBが合成される。
このPHBを生合成する経路において、β-ケトチオラーゼ、アセトアセチル-CoAリダクターゼ及びPHBシンターゼは、PHB生合成経路における反応を触媒する酵素であり、PHB生合成において重要な役割を演じる酵素である。なお、本発明において、β-ケトチオラーゼ、アセトアセチル-CoAリダクターゼ及びPHBシンターゼを合わせて「PHB生合成酵素」と呼ぶ。
一方、PHBを加水分解する経路では、図1に示すように、PHBデポリメラーゼの作用により、PHBは3-ヒドロキシ酪酸オリゴマーに加水分解される。そして、3-ヒドロキシ酪酸オリゴマーヒドロラーゼの作用により、3-ヒドロキシ酪酸オリゴマーは3-ヒドロキシ酪酸に加水分解される。さらに、3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素の可逆的な作用により、3-ヒドロキシ酪酸はアセト酢酸に変換される。
〔本発明に係る製造方法の第1方法〕
本発明に係る製造方法の第1方法においては、細胞内のPHA加水分解酵素及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素の活性とPHA生合成酵素の活性とを向上させる条件下で細胞を培養する。ここで、「PHA加水分解酵素」とは、PHAから3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマーへの加水分解反応を触媒する酵素を意味する。また、「3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素」とは、3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマーから3-ヒドロキシアルカン酸への加水分解反応を触媒する酵素を意味する。さらに、「PHA生合成酵素」とは、PHA生合成経路における反応を触媒する酵素を意味する。なお、以下の説明では、PHA加水分解酵素遺伝子、3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素遺伝子及びPHA生合成酵素遺伝子を合わせて「PHA関連酵素遺伝子」という場合もある。
上記活性を向上させる方法としては、
1-1.PHA加水分解酵素及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素をコードする遺伝子(以下、「PHA加水分解酵素遺伝子及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素遺伝子」という)とPHA生合成酵素をコードする遺伝子(以下、「PHA生合成酵素遺伝子」という)とを導入した細胞株を用いる、
1-2.PHA加水分解酵素遺伝子及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素遺伝子の発現とPHA生合成酵素遺伝子の発現とを増加させる、
方法が挙げられる。
1-1.PHA加水分解酵素遺伝子及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素遺伝子とPHA生合成酵素遺伝子とを導入した細胞株を用いる方法
本発明において、PHA加水分解酵素遺伝子及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素遺伝子とPHA生合成酵素遺伝子とを導入した細胞株とは、PHA加水分解酵素遺伝子及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素遺伝子とPHA生合成酵素遺伝子とを導入することで、野生型と比較して、細胞内のPHA加水分解酵素及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素の活性とPHA生合成酵素の活性とが向上した細胞を意味する。上記細胞株において、PHA加水分解酵素遺伝子及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素遺伝子とPHA生合成酵素遺伝子とを過剰発現させてもよい。
上記細胞株は、PHA加水分解酵素遺伝子及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素遺伝子とPHA生合成酵素遺伝子を大腸菌等に由来する異なる又は同一のベクターに組込み、次に得られた組換えベクターで宿主を形質転換することで得られる。PHA関連酵素遺伝子を挿入するためのベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えばプラスミド、シャトルベクター、ヘルパープラスミドなどが挙げられる。また該ベクター自体に複製能がない場合には、宿主の染色体に挿入することなどによって複製可能となるDNA断片であってもよい。
プラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えばpET23b、pET30bなどのpET系、pBR322およびpBR325などのpBR系、pUC118、pUC119、pUC18およびpUC19などのpUC系、pBluescript等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13などのYEp系、YCp50などのYCp系等)などが挙げられる。またファージDNAとしては、λファージ(Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11、λZAP等)が挙げられる。さらに、レトロウイルス又はワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、カリフラワーモザイクウイルスなどの植物ウイルス、またはバキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
ベクターにPHA関連酵素遺伝子を挿入するには、まず適当な制限酵素でPHA関連酵素遺伝子のcDNAを切断し、次いで適当なベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法が用いられる。またベクターとPHA関連酵素遺伝子のcDNAのそれぞれ一部に相同な領域を持たせることにより、PCRなどを用いたin vitro法または酵母などを用いたin vivo法によって両者を連結する方法であってもよい。
細菌へのPHA関連酵素遺伝子を有する組換えベクターの導入方法は、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばカルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
また、酵母へのPHA関連酵素遺伝子を有する組換えベクターの導入方法は、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法等が挙げられる。
動物細胞を宿主とする場合は、サル細胞COS-7、Vero、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、マウスL細胞などが用いられる。動物細胞へのPHA関連酵素遺伝子を有する組換えベクターの導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。
昆虫細胞を宿主とする場合は、Sf9細胞などが用いられる。昆虫細胞へのPHA関連酵素遺伝子を有する組換えベクターの導入方法としては、昆虫細胞にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法などが挙げられる。
植物を宿主とする場合は、植物体全体、植物器官(例えば葉、花弁、茎、根、種子等)、植物組織(例えば表皮、師部、柔組織、木部、維管束等)又は植物培養細胞などが用いられる。植物へのPHA関連酵素遺伝子を有する組換えベクターの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法、アグロバクテリウム法、パーティクルガン法およびPEG法等が挙げられる。
一方、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法等によって、PHA関連酵素遺伝子が宿主に組み込まれたか否かの確認を行うことができる。例えば、形質転換体からDNAを調製し、PHA関連酵素遺伝子に特異的なプライマーを設計してPCRを行う。次いで、増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動等を行い、臭化エチジウム、SYBR Green液等により染色し、そして1本のバンドとして増幅産物を検出することにより、形質転換されたことを確認する。また、予め蛍光色素等により標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を検出することもできる。さらに、マイクロプレート等の固相に増幅産物を結合させ、蛍光又は酵素反応等により増幅産物を確認する方法を採用してもよい。
1-2.PHA加水分解酵素遺伝子及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素遺伝子の発現とPHA生合成酵素遺伝子の発現とを増加させる方法
PHA関連酵素遺伝子の発現を増加させる方法としては、例えば、PHA関連酵素遺伝子の発現を転写レベル又は翻訳レベルで増加させる方法が挙げられる。
PHA関連酵素遺伝子の発現を転写レベルで増加させる方法としては、対象となる細胞におけるPHA関連酵素遺伝子の転写プロモーター領域を誘導性プロモーターで置換してなる変異型細胞を調製し、当該変化型細胞を誘導条件で培養する方法が挙げられる。具体的な誘導性プロモーターとしては、例えば、酸性フォスファターゼ(PH05)プロモーター、ガラクトース誘導性のGAL1、GAL7、GAL10プロモーター、メリビアーゼ(MEL1)プロモーター、銅メタロチオネイン(CUP1)プロモーター及びヒートショックエレメント(HSE)プロモーターを使用することができる。
また、非誘導性プロモーターを用いて、恒常的にPHA関連酵素遺伝子を発現し、PHA加水分解物又はその塩を生産することもできる。このような方法に用いるプロモーターとしては、例えばアルコール脱水素酵素プロモーター、エノラーゼプロモーター、フォスフォグリセレートキナーゼプロモーター、グリセロアルデヒド3-リン酸脱水素酵素プロモーター、トリオースリン酸イソメラーゼプロモーター及びピルビン酸キナーゼプロモーターなどが挙げられる。
一方、PHA関連酵素遺伝子の発現を翻訳レベルで増加させる方法としては、例えば、対象となる細胞に最適なコドン使用頻度にする方法、発現量の多いタンパク質コード遺伝子をPHA関連酵素遺伝子の5'側に融合する方法、及び3'非翻訳領域を改良してmRNAの安定性を増加させる方法等が挙げられる。
上記1-1〜1-2の方法において、対象となるPHA加水分解酵素は、細胞内局在性又は細胞外分泌性のいずれのものであってよいが、上記1-1〜1-2の方法を適用した場合に、細胞内に局在し、且つ細胞内において形成されるPHA顆粒を加水分解する活性を有するものであればよい。細胞内局在性PHA加水分解酵素としては、例えば、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)、パラコッカス・デニトリフィカンス(Paracoccus denitrificans)及びメチロバクテリウム・エクストークエンス(Methylobacterium extorquens)由来のPHBデポリメラーゼなどが挙げられる。一方、細胞外分泌性PHA加水分解酵素としては、パウシモナス・レモイネイ(Paucimonas lemoignei)及びその他の微生物由来の細胞外PHBヒドロラーゼを含む細胞外PHAヒドロラーゼなどが挙げられる。
細胞外PHBヒドロラーゼをコードする遺伝子(以下、「細胞外PHBヒドロラーゼ遺伝子」という)としては、例えば、アシドボラクス(Acidovorax)属細菌に由来する遺伝子(DDBJ Accession No.AB015309)、カルジモナス(Caldimonas)属細菌に由来する遺伝子(DDBJ Accession No.AB038647)、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌に由来する遺伝子(DDBJ Accession No.AF293347)、アゾスピリルム(Azospirillum)属細菌に由来する遺伝子(DDBJ Accession No.AF474374)及びパウシモナス(Paucimonas)属細菌に由来する遺伝子(DDBJ Accession No.AY026355)(以下、「phaZ7遺伝子」という)等が挙げられる。上記1-1の方法を、上記phaZ7遺伝子に適用すると、当該細胞外PHBヒドロラーゼは、本来、細胞外分泌性にもかかわらず、細胞内に局在し、且つ細胞内において形成されるPHB顆粒を加水分解する活性を有することが示されている。なお、細胞外PHBヒドロラーゼ遺伝子の塩基配列及びその対応するアミノ酸配列は、上記に示す登録番号で登録されている細胞外PHBヒドロラーゼ遺伝子の塩基配列及びその対応するアミノ酸配列に限定されず、上記1-1〜1-2の方法を適用した場合に、細胞内に局在し、且つ細胞内において形成されるPHB顆粒を加水分解する活性を有するタンパク質をコードするものであればよい。
一方、上記1-1〜1-2の方法において、対象となる3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素は、細胞内局在性又は細胞外分泌性のいずれのものであってよいが、上記1-1〜1-2の方法を適用した場合に、細胞内に局在し、且つ細胞内において形成される3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマーを3-ヒドロキシアルカン酸に加水分解する活性を有するものであればよい。3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素としては、例えば、ラルストニア・ユートロファ、パラコッカス・デニトリフィカンス及びメチロバクテリウム・エクストークエンス由来の細胞内局在性3-ヒドロキシ酪酸オリゴマーヒドロラーゼが挙げられる。
さらに、上記1-1〜1-2の方法において、対象となるPHA生合成酵素としては、例えば、図1に示すPHB生合成酵素、すなわち、β-ケトチオラーゼ、アセトアセチルCoAリダクターゼ及びPHBシンターゼが挙げられる。なお、本発明において、PHB生合成酵素は、いずれの生物由来のものでも使用し得るが、例えば、ラルストニア・ユートロファ由来のものが挙げられる。
PHB生合成酵素をコードする遺伝子(以下、「PHB生合成酵素遺伝子」という)としては、例えば、ゲノムデータベースDDBJにそれぞれAccession No.J04987(phbA及びphbB遺伝子)及びAccession No.J05003(phbC遺伝子)として登録されているラルストニア・ユートロファ由来のβ-ケトチオラーゼをコードする遺伝子(以下、「phbA遺伝子」という)、アセトアセチル-CoAリダクターゼをコードする遺伝子(以下、「phbB遺伝子」という)及びPHBシンターゼをコードする遺伝子(以下、「phbC遺伝子」という)が挙げられる。その他のPHB生合成酵素遺伝子としては、例えば、それぞれゲノムデータベースDDBJに登録されている、シュードモナス属細菌に由来する遺伝子(Accession No.AB014757、AB085816及びAF422801)、シノリゾビウム(Sinorhizobium)属細菌に由来する遺伝子(Accession No.AF031938及びAF080217)、ロドバクター(Rhodobacter)属細菌に由来する遺伝子(Accession No.AF098459)及びアゾトバクター(Azotobacter)属細菌に由来する遺伝子(Accession No.AF267243)が挙げられる。なお、PHB生合成酵素遺伝子の塩基配列及びその対応するアミノ酸配列は、上記に示す登録番号で登録されているPHB生合成酵素遺伝子の塩基配列及びその対応するアミノ酸配列に限定されず、PHB生合成酵素活性を有するタンパク質をコードするものであればよい。
〔本発明に係る製造方法の第2方法〕
本発明に係る製造方法の第2方法においては、3-ヒドロキシアルカン酸及び/又はそのオリゴマーの代謝分解活性の弱い細胞を培養するか、又は前記代謝分解活性を低下させる条件下で細胞を培養する。ここで、3-ヒドロキシアルカン酸及び/又はそのオリゴマーの代謝分解活性の弱い細胞とは、3-ヒドロキシアルカン酸及び/又はそのオリゴマーの代謝分解に関与する3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素等の酵素の活性が低いために、他の細胞と比べて上記代謝分解活性が低い細胞を意味する。上記代謝分解活性の弱い細胞としては、特に限定されるものではないが、例えば大腸菌(Escherichia coli)などのエシェリキア(Escherichia)属に属する細菌が挙げられる。
一方、3-ヒドロキシアルカン酸の生産性を向上すべく、3-ヒドロキシアルカン酸の代謝分解活性を低下させる方法としては、
2-1.3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素をコードする遺伝子(以下、「3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素遺伝子」という)を欠損した細胞株(以下、「3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素欠損株」という)を用いる、
2-2.3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素遺伝子の発現を低下させる、
方法が挙げられる。
ここで、「3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素」とは、3-ヒドロキシアルカン酸の脱水素反応を触媒する酵素を意味する。
2-1.3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素欠損株を用いる方法
本発明において、3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素欠損株とは、本来的には複数の3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素遺伝子を有するが、これらのうち少なくとも1種の3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素遺伝子を破壊した株を意味する。例えば、ラルストニア・ユートロファは、本来的に、3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素と呼ばれる3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素を有している。従って、例えば、3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素欠損株としては、3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素をコードする遺伝子(以下、「3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素遺伝子」という)を破壊したラルストニア・ユートロファが挙げることができる。
3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素遺伝子を破壊する方法としては、遺伝子ターゲッティングにより3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素遺伝子に変異を導入する方法等が挙げられる。
3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素欠損株としては、既存の欠損株を用いてもよいし、野生型の菌株に対して新たに変異を導入して作出したものを用いてもよい。なお、本発明者らは、3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素遺伝子を破壊したラルストニア・ユートロファ(3HBDH-M株)を作製し、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1-1-1中央第6)に平成16年3月11日付で寄託されている。その受託番号はFERM P-19731である。
2-2.3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素遺伝子の発現を低下させる方法
3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素遺伝子の発現を低下させる方法としては、例えば、3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素遺伝子の発現を転写レベル又は翻訳レベルで低下させる方法が挙げられる。
3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素遺伝子の発現を転写レベルで低下させる方法としては、対象となる細胞における3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素遺伝子の転写プロモーター領域を転写抑制型プロモーターで置換してなる変異型細胞を調製し、当該変化型細胞を転写抑制条件で培養する方法が挙げられる。具体的には、転写抑制型プロモーターとして、GAL1遺伝子の転写プロモーターを使用することができ、この場合、グルコース含有培地で培養することで転写抑制条件とすることができる。また、細胞における3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素遺伝子の転写に関わる領域に転写抑制活性のある塩基配列を挿入してなる変異型細胞を調製し、当該細胞を培養してもよい。
一方、3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素遺伝子の発現を翻訳レベルで低下させる方法としては、いわゆるアンチセンスRNAを用いる方法が挙げられる。すなわち、3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素遺伝子のmRNAに対するアンチセンスRNAを転写する遺伝子を、細胞ゲノムに組み込み、当該アンチセンスRNAを過剰発現させることで、3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素遺伝子のmRNAの翻訳が抑制される。アンチセンスRNAに関する技術は、細菌である大腸菌だけでなく高等生物、例えば哺乳類(マウス)、昆虫(ドロソフィラ・メラノガスター(Drosophila melanogaster))や被子植物(トマト)を宿主とした場合でも知られている。
上記2-1〜2-2の方法において、対象となる3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素としては、例えば、3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素及び3-ヒドロキシ酸脱水素酵素等が挙げられるが、特に3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素が好ましい。
3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素遺伝子としては、例えば、GenbankにGenbank accession No. AF145230として登録されているラルストニア・ユートロファ由来の3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素遺伝子が挙げられる。なお、3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素遺伝子の塩基配列及びその対応するアミノ酸配列は、Genbank accession No. AF145230として登録されている3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素遺伝子の塩基配列及びその対応するアミノ酸配列に限定されず、3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするものであればよい。
一方、3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマーの生産性を向上すべく、3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマーの代謝分解活性を低下させる方法としては、3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素をコードする遺伝子に対して上記2-1〜2-2の方法を適用する方法が挙げられる。対象となる3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素としては、例えば、ラルストニア・ユートロファ、パラコッカス・デニトリフィカンス及びメチロバクテリウム・エクストークエンス由来の細胞内局在性3-ヒドロキシ酪酸オリゴマーヒドロラーゼが挙げられる。
以上に説明した本発明に係る製造方法の第1方法と第2方法を組み合わせることができる。すなわち、第1方法における細胞内のPHA加水分解酵素及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素の活性とPHA生合成酵素の活性とを向上させた細胞を、3-ヒドロキシアルカン酸及び/又はそのオリゴマーの代謝分解活性を低下させる条件下で培養することができる。また、第1方法における細胞内のPHA加水分解酵素及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素の活性とPHA生合成酵素の活性とを向上させた細胞として、3-ヒドロキシアルカン酸及び/若しくはそのオリゴマーの代謝分解活性の弱い細胞を用いる。さらに、第2方法における3-ヒドロキシアルカン酸及び/又はそのオリゴマーの代謝分解活性が弱いか低下させた細胞を、細胞内のPHA加水分解酵素及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素の活性とPHA生合成酵素の活性とを向上させる条件下で培養することができる。
本発明に係る製造方法において、対象となる細胞としては、特に限定されないが、例えば以下のものが挙げられる。
細菌:エシェリキア(Escherichia)属、ラルストニア(Ralstonia)属、バチルス(Bacillus)属、アゾトバクター(Azotobacter)属、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、パラコッカス(Paracoccus)属、ハイフォミクロビウム(Hyphomicrobium)属及びロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)属に属する細菌
酵母:サッカロミセス(Sacchararomyces)属及びカンジダ(Candida)属に属する酵母
動物細胞:COS-7、Vero、CHO細胞及びマウスL細胞
昆虫細胞:Sf9細胞
植物:ナス科、イネ科、アブラナ科、キク科、ゴマ科、モクセイ科、フトモモ科、バラ科、マメ科、ヤシ科及びアカネ科に属する植物
本発明に係る製造方法において、細胞を培養する培地としては、特に限定されず、上述した細胞の種類に応じて適宜選択すればよい。
また、培地に、炭素源として多糖、単糖、脂質、脂肪酸、アルコール、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、細菌が資化し得る炭化水素又はこれらの混合物を添加することで、PHA加水分解物又はその塩の生産効率をさらに高めることもできる。これらの各炭素源として、以下のものを例示できる。
多糖:澱粉、マンナン、可溶化セルロース・ヘミセルロース等
単糖:グルコース、フラクトース、ガラクトース
脂肪酸・脂質:酢酸、オレイン酸、ステアリン酸、パーム油、大豆油
アルコール:メタノール、エタノール、ブタノール
タンパク質:カゼイン、大豆蛋白質、肉エキス
ペプチド:ポリペプチド、肉エキス
アミノ酸:グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン
細菌が資化し得る炭化水素:メタン、ブタン、n-ヘキサン、n-オクタン
一方、培養条件は、上述した細胞の種類に応じて適宜選択すればよいが、通常、振盪培養又は通気攪拌培養などの好気又は微好気条件下、20〜60℃、好ましくは25〜45℃で行う。pHの調整は、無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて行う。さらに、培養時期に応じて培養条件を変更してもよい。
本発明に係る製造方法においては、細胞を培養し、得られる培養物からPHA加水分解物又はその塩を採取することができる。「培養物」とは、培養上清のほか、培養細胞若しくは培養菌体自体又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。本発明においては、培養物は培養上清であることが好ましい。培養物が培養上清である場合には、その後のPHA加水分解物又はその塩の精製が容易であり、またPHA加水分解物又はその塩をより高収率で生産することができる。
本発明に係る製造方法においては、PHA加水分解物又はその塩を高収率で生産することができる。なお、PHA加水分解物又はその塩を大量生産するには、大型培養装置等を用いることができる。培養後、PHA加水分解物又はその塩が菌体内又は細胞内に生産される場合には、ホモジナイザー処理などを施して菌体又は細胞を破砕することによりPHA加水分解物又はその塩を採取する。また、細胞を破砕せずに有機溶媒等で直接抽出してもよい。あるいは、PHA加水分解物又はその塩が菌体外又は細胞外に分泌される場合には、培養上清をそのまま使用するか、遠心分離又は中空糸膜等により菌体又は細胞を除去する。その後、有機溶媒による抽出、エステル化、蒸留、濃縮等により、菌体又は細胞を除去した培養上清中からPHA加水分解物又はその塩を採取し、必要に応じてさらに各種クロマトグラフィー等を用いて単離精製することができる。
本発明に係る製造方法によれば、細胞内に蓄積したPHA顆粒を加水分解し、PHA加水分解物として細胞外に分泌生産させることができることを実証した。本発明に係る製造方法においては、PHA加水分解物が培養上清中に存在することから、その後のPHA加水分解物の精製が容易であり、またPHA加水分解物をより高収率で生産することができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
以下の実施例1及び2において、3-ヒドロキシ酪酸及び3-ヒドロキシ酪酸オリゴマーの定量は、以下の(1)及び(2)に説明する方法により行った。
(1)3-ヒドロキシ酪酸の定量
定量原理
下記の反応液組成において、アシドボラクス・エスピー(Acidovorax sp.)SA1株より精製し、かつ下記の反応を触媒する3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素を用いて、3-ヒドロキシ酪酸を定量した(Takanashi M., Shibahara T., Shiraki M.,及びSaito T.,「アシドボラクス・エスピーSA1株由来のD(-)-3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素の生化学的及び遺伝学的な特性評価(Biochemical and Genetic Characterization of a D(-)-3-Hydroxybutyrate Dehydrogenase from Acidovorax sp. Strain SA1)」, J. Biosc. Bioeng., 97, No.1、78−81 (2004)参照)。
Figure 2005295894
上記反応で生成するNADHを、340nmにおける吸光度で測定した。なお、反応液中のヒドラジンはケトン捕捉体であり、生成するアセト酢酸を捕捉することにより平衡反応をNADH生成側にシフトさせた。また、反応は30℃に保温した反応液(酵素溶液を除く)に対し酵素溶液10μlを添加することで開始し、340nmにおける吸光度が一定となるまで行った(反応時間:約15分)。
(2)3-ヒドロキシ酪酸オリゴマーの定量
3-ヒドロキシ酪酸オリゴマーを含むサンプル溶液(75μl:H2O+サンプル)に対し、ラルストニア・ユートロファZ2の組換え体より精製した3-ヒドロキシ酪酸オリゴマー加水分解酵素5μl(12U/ml)を添加し、30℃、10分間インキュベートすることにより3-ヒドロキシ酪酸オリゴマーの加水分解を行った(Kobayashi T., Shiraki M., Abe T., Sugiyama A.,及びSaito T., 「ラルストニア・ユートロファH16における細胞内3-ヒドロキシ酪酸オリゴマー加水分解酵素(PhaZ2)の精製及び特性並びにその新規な細胞内ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)デポリメラーゼとしての同定(Purification and Properties of an Intracellular 3-Hydroxybutyrate-Oligomer Hydrolase (PhaZ2) in Ralstonia eutropha H16 and Its Identification as a Novel Intracellular Poly(3-Hydroxybutyrate) Depolymerase)」, J. Bacteriol., 185,3485-3490(2003)参照)。
加水分解により遊離した3-ヒドロキシ酪酸の定量を、上記(1)の3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素を用いる方法で行った。
〔実施例1〕 PHB生合成酵素遺伝子及び細胞外PHBヒドロラーゼ遺伝子により形質転換した大腸菌による3-ヒドロキシ酪酸及びそのオリゴマーの生産
(1) PHB生合成酵素遺伝子のクローニング
ラルストニア・ユートロファH16株由来のβ-ケトチオラーゼ、アセトアセチルCoAリダクターゼ及びPHBシンターゼをコードする遺伝子からなるPHB合成酵素遺伝子オペロン(以下、「phaCAB」という)を、下記の方法により取得した。
ラルストニア・ユートロファH16株由来のPHBシンターゼ遺伝子は、既にクローニングされており、遺伝子配列も決定されている(Oliver P. Peoples及びAnthony J. Sinskey,「アルカリゲネス・ユウトロファスH16中のポリ-β-ヒドロキシ酪酸生合成。PHBポリメラーゼ遺伝子(phbC)の同定と特性評価(Poly-beta-hydroxybutyrate (PHB) Biosynthesis in Alcaligenes eutrophus H16. Identification and characterization of the PHB polymerase gene (phbC))」, The journal of Biological Chemistry, 264,15298-15303(1989))。そこで、既に配列決定されたPHBシンターゼ遺伝子の配列を参考にして下記のプライマーを設計し、ラルストニア・ユートロファH16株の染色体DNAを鋳型として、PCRを行った。使用したプライマー、PCR条件及び反応液組成は下記の通りであった。
Figure 2005295894
次いで、PCR産物を1%アガロース電気泳動に供した。目的DNA断片をアガロースよりDEAEペーパーを使用して抽出し、フェノール処理及びエタノール沈澱を行い精製した。
さらに精製したDNA断片を用いて、サザンハイブリダイゼーションを行った。なお、サザンハイブリダイゼーション方法の標準操作は、J. Sambrook, E. F. Fritsch, T. Maniatis,「分子クローニング(Molecular Cloning)」 第2版; Cold Spring Harbar Laboratory Press, 1989に従って行われた。
まず、精製したDNA断片を、a-32PdCTP、Nick translation Kit (Amersham)を用いて放射標識してプローブとした。ラルストニア・ユートロファH16株の染色体DNAを制限酵素 EcoRIで完全消化し、アガロース電気泳動に供した後、ナイロンメンブレン(バイオダインBメンブレンBNBZF3RT 0.4mm、日本ジェネテイクス)に転写し、UV固定した。次いで、プラスチックバッグに、転写されたメンブレンとハイブリダイゼーション溶液(5xDenhalt solution (50xDenhalt solution (Wako))、5xSSC及び0.1%SDS)及びサケ精子DNA(100mg/ml)とを入れ、65℃で1時間反応させた(プレハイブリダイゼーション)。プレハイブリダイゼーション後、反応液を捨てた。100℃で10分処理し、急冷した上記プローブを、ハイブリダイゼーション溶液とともに上記メンブレンを含むプラスチックバッグに入れて、65℃で一晩反応させた(ハイブリダイゼーション)。一晩反応させた後、メンブレンを5xSSCでリンスし、さらに5xSSC+0.1%SDSで洗浄した後、オートラジオグラフィーに供した。
オートラジオグラフィーの結果に基づいて、プローブと反応した約19Kbase付近のDNA断片をアガロースゲルより抽出し、ファージベクターcharomid9-28(NIPPON GENE)のEcoRIサイトに連結し、パッケージングした。次いで、約19Kbase付近のDNA断片を含むファージベクターcharomid9-28を、大腸菌DH5に導入し、ナイロンメンブレン上にコロニーを作製させた。ナイロンメンブレンをアルカリ処理し、菌を落とした後、DNAをUV固定した後、サザンハイブリダイゼーションと同じ条件でコロニーハイブリダイゼーションを行った。
コロニーハイブリダイゼーション後、プローブと反応したコロニーを培養して、プラスミドを精製した。このプラスミドをEcoRI及びSmaIで消化することで切断し、再びアガロース電気泳動に供した。次いで、アガロースゲルから、phaCABを含む約5Kbaseの断片を抽出した。得られたDNA断片を、EcoRI及びSmaIで消化することで切断したクローニングベクターpUC19に連結し、phaCABを含む発現ベクターpAE100を作製した。
なお、pAE100の構造を示す模式図を図2に示す。図2において、phbCはphbC遺伝子、phbAはphbA遺伝子、そしてphbBはphbB遺伝子を意味する。
(2)細胞外PHBヒドロラーゼ遺伝子のクローニング
パウシモナス・レモイネイ(Paucimonas lemoignei)由来のゲノムDNAを鋳型とし、下記のプライマーを用いて、phaZ7遺伝子をPCRにより増幅した。使用したプライマー、PCR条件、及び反応液組成は下記の通りであった。
Figure 2005295894
次いで、得られたPCR産物を、制限酵素NdeI及びEcoRIで消化した後、発現ベクターpET23b(NdeI及びEcoRIで消化)に導入してpETZ7Bを作製した。このベクターを、制限酵素XbaI及びEcoRIで消化し、平滑末端処理をした後、クローニングベクターpSTV29のHincII切断部位に導入し、phaZ7遺伝子を含む発現ベクターpSTVZ7A(クロラムフェニコール耐性)を作製した。pSTVZ7Aの構造を示す模式図を図3に示す。図3において、phaZ7はphaZ7遺伝子を意味する。
(3)形質転換大腸菌の作製
大腸菌JM 109に対して、pAE100及びpSTVZ7Aを導入し、phaCAB及びphaZ7遺伝子を形質転換した大腸菌(Oligo-SecA株)を作製した。
(4)形質転換大腸菌の培養
大腸菌(Oligo-SecA株)を、LB培地(トリプトン10g、酵母エキス5g、NaCl 10g、H20 1000ml、pH7.2)25mlを含む100mlの坂口フラスコで振とう培養(37℃)した。600nmにおける吸光度が0.4に達した段階でIPTG(イソプロピル-β-D-チオ-ガラクトピラノシド)0.1mM及びグルコース又はフラクトースを2重量%添加し、更に培養温度を22℃に下げて、50又は100時間、培養を継続した。また、形質転換を行っていない大腸菌JM 108を陰性対照として同様に培養した。
(5)結果
上記形質転換大腸菌(Oligo-SecA株)を培養した後の培養液中の3-ヒドロキシ酪酸及びそのオリゴマーの濃度を表4に示す。さらに、形質転換を行っていない大腸菌JM 108を培養した後の培養液中の3-ヒドロキシ酪酸及びそのオリゴマーの濃度を表5に示す。
Figure 2005295894
Figure 2005295894
表4及び5に示されるように、形質転換を行っていない大腸菌JM 108では3-ヒドロキシ酪酸及びそのオリゴマーが細胞外に分泌生産されないのに対して、PHB生合成酵素遺伝子及び細胞外PHBヒドロラーゼ遺伝子を形質転換した大腸菌においては、3-ヒドロキシ酪酸及びそのオリゴマーが有意に細胞外に分泌生産されることが判った。
〔実施例2〕 3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素(以下、「3HBDH」という)欠損株による3-ヒドロキシ酪酸の生産
(1) 3HBDH欠損株の作製(3HBDHをコードする遺伝子の破壊)
ラルストニア・ユートロファH16株のゲノムDNAを鋳型として、下記のプライマーを用いて、3HBDHをコードする遺伝子(Genbank accession no. AF145230)をPCRにより増幅した。使用したプライマー、PCR条件及び反応液組成は、下記の通りであった。
Figure 2005295894
得られたPCR産物を、制限酵素SalI及びEcoRIで消化した後、クローニングベクターpUC19のSalIとEcoRIとの制限サイトにクローニングした。次いで、pUC19から該遺伝子を制限酵素AvaIで消化することで切断した後、得られた約240bpのフラグメントを、suicideベクターであるpJP5603(大腸菌中では複製可能であるが、ラルストニア・ユートロファ中では複製しない)のHincIIサイトに導入した。
さらに、3HBDHをコードする遺伝子を含むpJP5603を大腸菌S-17 lpirに形質転換した。次いで、接合プラスミドRP4を用いたコンジュゲーションにより形質転換大腸菌由来のpJP5603(3HBDH遺伝子断片含有)をラルストニア・ユートロファに移動させ、カナマイシン耐性株として取得した。
(2) 3HBDH活性の測定
得られた3HBDHをコードする遺伝子を欠損するラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)株(以下、「3HBDH-M株」という)及び野生株(H16株)の3HBDH活性を測定した。
3HBDH-M株及び野生株(H16株)を、LB培地(トリプトン10g、酵母エキス5g、NaCl 10g、H20 1000ml、pH7.2)25mlを含む100mlの坂口フラスコで振とう培養(37℃)した。600nmにおける吸光度が0.4に達した段階で集菌し、0.1M Tris-HCl(pH 8.5)で洗浄した後、0℃における超音波処理により細胞を破砕した。
次いで、上述した3-ヒドロキシ酪酸の定量方法を利用して、以下の反応液組成において、細胞破砕液中の3HBDH活性を測定した。
Figure 2005295894
反応液中のヒドラジンはケトン捕捉体であり、生成するアセト酢酸を捕捉することにより平衡反応をNADH生成側にシフトさせた。また、反応は30℃に保温した反応液(酵素溶液を除く)に対し3HBDH-M株又は野生株の細胞破砕液10μlを添加することで開始した(反応時間:約15分)。なお、生成するNADHを、340nmにおける吸光度で測定し、1U=1μmole NADH生成/分として換算して3HBDH活性を計算した。
測定の結果、3HBDH-M株及び野生株の3HBDH活性は、各々タンパク質1mgあたり0.0及び1.9Uであった。
(3) 3HBDH-M株及び野生株(H16株)の培養
上記3HBDH-M株及び野生株を、LB培地(トリプトン10g、酵母エキス5g、NaCl 10g、H20 1000ml、pH7.2)25mlを含む100mlの坂口フラスコで2日間、振とう培養(37℃)した。培養から2日間後、上記3HBDH-M株及び野生株を集菌し、生理食塩水で1回洗浄した後、フラクトース2重量%を含む50mM燐酸緩衝液(pH8.0)に懸濁し、インキュベーションを継続した。なお、本処理により菌体内にPHBが生産され、蓄積される。
次いで、インキュベーションから60時間後に、硫酸アンモニウム(5g/L)を培養物に添加し、更にインキュベーションを継続した。本処理により菌体内に生産され、蓄積されたPHBが3-ヒドロキシ酪酸に加水分解される。
〔結果〕
インキュベーションから70時間後に、培養物を6000rpm、10分の遠心分離により菌体を除去し、得られた培養上清中の3-ヒドロキシ酪酸の定量を行った。結果を表8に示す。
Figure 2005295894
表8に示されるように、野生株と比較して、3HBDH-M株において、3-ヒドロキシ酪酸が細胞外に有意に分泌生産されることが判った。従って、3HBDHの活性を阻害することで、3-ヒドロキシ酪酸が細胞外に分泌生産されることが示された。
細胞における、PHBを生合成する代謝経路、PHBを加水分解する代謝経路及び3-ヒドロキシ酪酸の脱水素反応を示す模式図である。 発現ベクターpAE100の構造を示す模式図である。 発現ベクターpSTVZ7Aの構造を示す模式図である。
配列番号1〜6は、プライマーである。

Claims (8)

  1. 細胞内のポリヒドロキシアルカン酸加水分解酵素及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素の活性とポリヒドロキシアルカン酸生合成酵素の活性とを向上させた、及び/又は、
    3-ヒドロキシアルカン酸及び/又はそのオリゴマーの代謝分解活性が弱いか低下させた細胞を培養し、
    培養物中からポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩を回収する、
    ポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
  2. ポリヒドロキシアルカン酸加水分解酵素及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素をコードする遺伝子とポリヒドロキシアルカン酸生合成酵素をコードする遺伝子とを導入した細胞を用いることを特徴とする、請求項1記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
  3. ポリヒドロキシアルカン酸加水分解酵素及び/又は3-ヒドロキシアルカン酸オリゴマー加水分解酵素をコードする遺伝子の発現とポリヒドロキシアルカン酸生合成酵素をコードする遺伝子の発現とを増加させることで、上記活性を向上させることを特徴とする、請求項1記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
  4. 上記ポリヒドロキシアルカン酸加水分解酵素が細胞内局在性を示す細胞外ポリヒドロキシアルカン酸ヒドロラーゼであることを特徴とする、請求項1記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
  5. 3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素をコードする遺伝子を破壊することで、3-ヒドロキシアルカン酸の代謝分解活性を低下させることを特徴とする、請求項1記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
  6. 3-ヒドロキシアルカン酸脱水素酵素をコードする遺伝子の発現を低下させることで、3-ヒドロキシアルカン酸の代謝分解活性を低下させることを特徴とする、請求項1記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
  7. 上記3-ヒドロキシアルカン酸の代謝分解活性を低下させた細胞が、受託番号FERM P-19731で特定されるラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)であることを特徴とする、請求項1記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
  8. 上記ポリヒドロキシアルカン酸加水分解物が3-ヒドロキシ酪酸又はそのオリゴマーであることを特徴とする、請求項1記載のポリヒドロキシアルカン酸加水分解物又はその塩の製造方法。
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JP2008193940A (ja) * 2007-02-13 2008-08-28 Honda Motor Co Ltd ポリヒドロキシ酪酸精製方法

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