以下に、図面を参照しながら本発明による実施形態の液晶表示装置の構成を具体的に説明する。
(透過型液晶表示装置)
まず、本発明による実施形態の透過型液晶表示装置100の構成を図1を参照しながら説明する。図1(a)および(b)は、透過型液晶表示装置100の1つの画素の構成を模式的に示す図であり、図1(a)は、平面図であり、図1(b)は図1(a)中の1B−1B’線に沿った断面図である。図1(a)は、平面図であり、図1(b)は図1(a)中の1B−1B’線に沿った断面図である。また、図1(c)は、他の透過型液晶表示装置100’の1つの画素の構成を模式的に示す断面図である。
ここでは、1画素を2分割(N=2)した例を示すが、画素ピッチに応じて分割数(=N)は3以上に設定でき、この場合には第2基板側の分割領域の略中心部に設ける開口部の数(=n)も画素分割数(=N)と同一にすることが好ましい。なお、分割数(=N)が多くなると、実効開口率は低下する傾向にあるので、高精細な表示パネルに適用する場合は、分割数(=N)を小さくすることが好ましい。また、画素を分割しない(N=1と表現することもある。)場合にも本発明を適用することができる。また分割された領域を「サブ画素」ということもある。サブ画素には典型的には1つの液晶ドメインが形成される。
図1(a)および(b)に示す液晶表示装置100は、透明基板(例えばガラス基板)110aと、透明基板110aに対向するように設けられた透明基板110bと、透明基板110aと110bとの間に設けられた垂直配向型の液晶層120とを有する。基板110aおよび110b上の液晶層120に接する面には垂直配向膜(不図示)が設けられており、電圧無印加時には、液晶層120の液晶分子は、垂直配向膜の表面に対して略垂直に配向している。液晶層120は、誘電異方性が負のネマティック液晶材料を含み、必要に応じて、カイラル剤を更に含む。
液晶表示装置100は、透明基板110a上に形成された画素電極111と、透明基板110aに対向するように設けられた透明基板110b上に形成された対向電極131とを有し、画素電極111と対向電極131との間に設けられた液晶層120とが画素を規定する。ここでは、画素電極111および対向電極131のいずれも透明導電層(例えばITO層)で形成されている。なお、典型的には、透明基板110bの液晶層120側には、画素に対応して設けられるカラーフィルタ130(複数のカラーフィルタをまとめて全体をカラーフィルタ層130ということもある。)と、隣接するカラーフィルタ130の間に設けられるブラックマトリクス(遮光層)132とが形成され、これらの上に対向電極131が形成されるが、対向電極131上(液晶層120側)にカラーフィルタ層130やブラックマトリクス132を形成しても良い。
分割数(=N)が2の図1に示した液晶表示装置100においては、透明基板110a上の画素電極111の周囲の遮光領域上に後述する壁構造体115が形成されている。また、画素電極111は、画素内の所定の位置に分割数に応じた数(図1では、n=2)の第1開口部114aを有している。画素電極111は、さらに、所定の位置に4つの切欠き部113を有している。一方、対向側の透明基板110b上の対向電極131は、所定の位置に分割数に応じた数(図1では、n=2)の第2開口部114bを有している。
ここでは、第1開口部114aと第2開口部114bは液晶層120を介して互いに空間的に重なるような位置関係に配置されている。また、第1開口部114aおよび第2開口部114b(互いに対向する一対の開口部を開口部114ということがある。)は同じ大きさ(直径)を有しており、図1(a)においては互いに重なっている。
この液晶層120に所定の電圧を印加すると、それぞれが軸対称配向を呈する2つ(分割数Nと同数)の液晶ドメインが形成され、これら液晶ドメインのそれぞれの軸対称配向の中心軸は、第1開口部114aおよび第2開口部114b内またはこれらの近傍に形成される。一対の開口部114は軸対称配向ドメインの中心軸の位置を固定するように作用するとともに、軸対称配向を安定化するように作用する。ここで例示するように、第1開口部114aと第2開口部114bとが液晶層を介して互いに重なるように配置すると、一対の開口部114による実効開口率の低下を抑制することができる。第1開口部と第2開口部との作用によって1つの中心軸を固定・安定化するので、第1開口部114aまたは第2開口部114bが発現すべき作用は、1つの開口部で中心軸を固定・安定化する場合よりも小さくてよいので、第1開口部114aおよび第2開口部114bの直径を小さくでき、その結果、実効開口率の低下を抑制することができる。
本実施形態の液晶表示装置は、後に詳細に説明するように、行および列を有するマトリクス状に配置された画素に対して、各垂直走査期間内に、列および行のいずれにおいても、互いに隣接する画素の画素電極に印加される電圧が、対向電極131に印加される電圧を基準として逆極性となるように印加される(ドット反転駆動)。このように、ドット反転駆動を採用することで隣接画素間に発生する斜め電界による配向安定化効果を略矩形の画素の四辺について得られる。従って、隣接する画素の間に急峻な斜め電界が形成され、軸対称配向を形成するように作用する。
さらに、本実施形態の液晶表示装置においては、任意の一本の走査信号線に接続されたスイッチング素子は、当該走査信号線に隣接する一対の行に属する画素電極111の内の一方に接続されたスイッチング素子と他方に接続されたスイッチング素子を交互に有している。従って、従来の1ライン反転駆動(1H反転駆動)を行うことによって、結果的に、行方向および列方向に隣接する画素の液晶層に、対向電極131を基準として互いに逆極性の表示信号を印加することができる(1Hドット反転駆動)。
また、本実施形態の液晶表示装置は、上述したように開口部114内またはその近傍に軸対称配向の中心が固定・安定化される。これは、この開口部114によって形成される斜め電界の作用によって、開口部114を中心にその周辺の液晶分子が連続的な配向(軸対称配向)が形成されるためであり、この開口部114(少なくとも第1開口部114aおよび第2開口部114bの一方)の作用によって、特許文献7の図9に示されているような角部において不連続な配向が形成されることが抑制・防止される。また、開口部114の作用によって、電界が低い中間調表示状態においも十分に安定な軸対称配向を得ることができ、液晶表示パネルが押圧された際に生じる配向乱れが正常な配向に回復する時間を短くすることができる。
画素電極111および対向電極131の所定の位置に設ける第1開口部114aおよび第2開口部114bの形状は、軸対称配向ドメイン内の液晶分子の配向の連続性を得るためには、例示したように円形であるこが好ましいがこれに限られない。また、第1開口部114aおよび第2開口部114bの形状が異なっても良い。ただし、全方位的にほぼ等しい配向規制力を発揮させるためには、4角形以上の多角形であることが好ましく、正多角形であることが好ましい。
ここでは画素電極111および対向電極131の両方に開口部を設けた例を示したが、いずれか一方に開口部を設けても軸対称配向の中心軸を固定する効果が得られる。また、ここでは、画素電極111および対向電極131の両方に開口部を設ける場合において、同じ大きさの第1開口部114aと第2開口部114bとを互いに重なるように配置した構成を例示したが、第1開口部114aおよび第2開口部114bの構成および配置はこれに限られない。第1開口部114aと第2開口部114bは互いに重なら無くとも、それぞれが軸対称配向を固定・安定化する効果は得られる。但し、第1開口部114aによって、液晶ドメインの軸対称配向の中心軸の一端を固定し、第2開口部114bによって他端を固定するように配置すれば、軸対称配向の中心軸をさらに安定に固定することができる。さらに、第1開口部114aと第2開口部114bとが液晶層を介して互いに少なくとも一部が重なるように配置すると、開口部114による実効開口率の低下を抑制することができる。このとき、第1開口部と第2開口部との作用によって1つの中心軸を固定・安定化するので、第1開口部114aまたは第2開口部114bが発現すべき作用は、1つの開口部で中心軸を固定・安定化する場合よりも小さくてよく、ここで例示したように、同じ大きさの第1開口部114aと第2開口部114bとを互いに重なるように配置することによって、実効開口率の低下を最小限にすることができる。
さらに、液晶表示装置100は、隣接する画素の間に遮光領域を有し、この遮光領域内の透明基板110a上に壁構造体115を有している。ここで、遮光領域とは、透明基板110a上の画素電極111の周辺領域に形成される、例えばTFTやゲート信号配線、ソース信号配線、または、透明基板110b上に形成されるブラックマトリクスによって遮光される領域であり、この領域は表示に寄与しない。従って、遮光領域に形成された壁構造体115は表示に悪影響を及ぼすことが無い。
壁構造体115はその傾斜面効果で液晶分子が電圧印加時(電界発生時)に傾斜する方向を規定するように作用する。壁構造体115の傾斜した側面による配向規制力は、電圧無印加時にも作用し、液晶分子を傾斜させる。また、画素の間に形成される電界は、隣接する画素の間に存在する壁構造体115によってゆがめられ、壁構造体115の壁面で液晶分子が傾斜する方向を規定するように作用する。
壁構造体115を設けると、隣接する画素の間に形成される急峻な斜め電界および開口部114の周囲に形成される斜め電界による配向規制力に加えて、壁構造体115による配向規制力が協同的に作用し、軸対称配向がさらに安定に形成される。壁構造体115の壁面効果を併せて利用することで、斜め電界による配向規制力が小さい中間調表示状態における軸対称配向の安定性がさらに向上するとともに、液晶表示パネルが押圧された際に生じる配向乱れが正常な配向に回復する時間をさらに短くすることができる。
ここで例示した壁構造体115は、画素を包囲するように連続した壁として設けられているが、これに限らず複数の壁に分断されていても良い。この壁構造体115は液晶ドメインの画素の外延近傍に形成される境界を規定するように作用するので、ある程度の長さを有することが好ましい。例えば、壁構造体を複数の壁(壁部)で構成した場合、個々の壁の長さは、隣接する壁の間の長さよりも長いことが好ましい。
さらに、画素電極111に設けられる切欠き部113は、軸対称配向ドメインの境界付近に設けられ、液晶分子が電界によって倒れる方向を規定するので、軸対称配向ドメインをさらに安定に形成するように作用する。ここで例示するように壁構造体115と組み合わせて用いると、開口部114および切欠き部113の周辺に形成される斜め電界と壁構造体115によって歪んで形成される壁面での電界の作用で液晶分子が傾斜する方向が規定される結果、上述のように2つの軸対称配向が安定に形成される。また、ここでは、切欠き部113は、画素(ここでは全体が透過領域)に形成される液晶ドメインの中心軸に対応する開口部(ここでは図1中の右側の開口部)114を中心に点対称に配置された4つの切欠き部113を含んでいる。
上述のような切欠き部113を設けることによって、電圧印加時に液晶分子が倒れる方向が規定され、2つの液晶ドメインが形成される。なお、図1中、画素電極111の左側に切欠き部を設けていない理由は、図示した画素電極111の左側に位置する画素電極(不図示)の右端に設けた切欠き部によって同様の作用が得られるので、画素の実効開口率を低下する切欠き部を画素電極111の左端では省略している。さらに、ここでは、壁構造体115による配向規制力も得られるので、画素電極111の左端に切欠き部を設けなくとも、切欠き部を設けた場合と同様に安定した液晶ドメインが形成されるのに加え、実効開口率が向上するという効果が得られる。
液晶表示装置100では、4つの切欠き部113を形成したが、切欠き部は、隣接する液晶ドメインの間に少なくとも1つ設ければよく、例えば、ここでは、画素の中央部に細長い切欠き部を設けて、他を省略しても良い。
軸対称配向ドメイン内の液晶分子が電界によって倒れる方向を規定するように作用する切欠き部113の形状は、隣接する軸対称配向に対してほぼ等しい配向規制力を発揮するように設定され、例えば4角形が好ましい。なお、切欠き部は省略することもできる。
液晶層120の厚さ(セルギャップともいう)を規定するための支持体133を遮光領域(ここではブラックマトリクス132によって規定される領域)に形成すれば、表示品位を低下させることが無いので好ましい。支持体133は、透明基板110aおよび110bのどちらに形成しても良く、例示したように、遮光領域に設けられた壁構造体115上に設ける場合に限られない。壁構造体115上に支持体133を形成する場合は、壁構造体115の高さと支持体133の高さとの和が液晶層120の厚さとなるように設定される。壁構造体115が形成されていない領域に支持体133を設ける場合には、支持体133の高さが液晶層120の厚さとなるように設定される。支持体133は、例えば、感光性樹脂を用いてフォトリソグラフィ工程で形成することができる。
この液晶表示装置100においては、ドット反転駆動を行うことにより隣接する画素に形成される斜め電界の作用により、軸対称配向が形成され、2つの軸対称配向液晶ドメインの中心軸は、画素電極111および対向電極131の長手方向の中央部に設けた2対の開口部114内またはその近傍に固定・安定化される。さらに、壁構造体115の壁面で歪んだ電界および壁構造体の壁面効果により主に隣接する2つの液晶ドメイン内の液晶分子が電界で倒れる方向を規定し、一対の切欠き部による斜め電界の作用で隣接する2つの液晶ドメイン内の液晶分子が電界で倒れる方向が規定され、これらが協同的に作用し、中間調表示状態においても、液晶ドメインの軸対称配向を安定化する。
画素電極111および対向電極131の軸対称配向液晶ドメインの中心軸に対応する位置に開口部114を設けることによって、中心軸の位置が固定・安定化されるので、液晶表示パネル内の全面に亘って、軸対称配向液晶ドメインの中心軸が一定の位置に配置される結果、表示の均一性が向上する。また、軸対称配向が安定化される結果、中間調表示における応答時間を短くできるという効果も得られる。さらに、液晶表示パネルの押圧による残像を低減する(回復する時間を短くする)こともできる。壁構造体115を設けることによって軸対称配向がさらに安定化されるので、特に、押圧による残像を低減したい用途においては、壁構造体を設けることが好ましい。
なお、透明基板110aの液晶層120側には、例えばTFTなどのアクティブ素子およびTFTに接続されたゲート配線およびソース配線などの回路要素(いずれも不図示)が設けられる。また、透明基板110aと、透明基板110a上に形成された回路要素および上述した画素電極111、壁構造体115、支持体133(支持体はアクティブマトリクス基板およびカラーフィルタ基板のどちらに形成しても構わない)および配向膜などをまとめてアクティブマトリクス基板ということがある。一方、透明基板110bと透明基板110b上に形成されたカラーフィルタ層130、ブラックマトリクス132、対向電極131および配向膜などをまとめて対向基板またはカラーフィルタ基板ということがある。
図1(c)に示す液晶表示装置100’は、壁構造体を有しない点において図1(a)および(b)に示した液晶表示装置100と異なっている。図1(c)において、液晶表示装置100と共通の構成要素は図1(b)と同じ参照符号で示す。
液晶表示装置100’は、液晶表示装置100と同様に、ドット反転駆動されることによって形成される隣接画素間に急峻な斜め電界と、画素電極111および対向電極131に設けられた開口部114の周辺に形成される斜め電界とによって、開口部114(第1開口部114aおよび第2開口部114bの少なくとも一方)内またはその近傍に中心軸が固定・安定化された2つの軸対称配向ドメインが安定に形成される。また、画素電極111に設けられた切欠き部113が液晶ドメインの境界付近の液晶分子の配向方向を規制するので、2つの液晶ドメインの軸対称配向がさらに安定化される。
また、液晶表示装置100’は、液晶表示装置100と同様に、任意の一本の走査信号線に接続されたスイッチング素子は、当該走査信号線に隣接する一対の行に属する画素電極111の内の一方に接続されたスイッチング素子と他方に接続されたスイッチング素子を交互に有している。従って、従来の1H反転駆動を行うことによって、結果的に、行方向および列方向に隣接する画素の液晶層に、対向電極131を基準として互いに逆極性の表示信号を印加することができる(1Hドット反転駆動)。
なお、上記の説明では省略したが、液晶表示装置100および100’は、透明基板110aおよび110bを介して互いに対向するように配置された一対の偏光板をさらに有する。一対の偏光板は典型的には透過軸が互いに直交するように配置される。さらに、後述するように、2軸性光学異方性媒体層または1軸性光学異方性媒体層を設けても良い。
(半透過型液晶表示装置)
次に、図2を参照しながら、本発明による実施形態の半透過型液晶表示装置200の構成を説明する。
図2は、本発明による実施形態の透過型液晶表示装置200の1つの画素の構成を模式的に示す図であり、図2(a)は、平面図であり、図2(b)は図2(a)中の2B−2B’線に沿った断面図である。
ここでは、1画素を3分割(N=3、透過領域が2分割、反射領域が1分割)した例を示すが、画素ピッチに応じて分割数(=N)は少なくとも2つ以上(透過領域が最低1分割、反射領域が最低1分割)に設定できる。対向基板(第2基板)側の分割領域(軸対称配向ドメインが形成される領域)の略中心に設ける開口部の数(=n)も画素分割数(=N)と同一にすることが好ましい。但し、例えば後述するように、対向基板の反射領域の液晶層側に選択的に透明誘電体層を設ける場合には、対向電極(第2電極)の反射領域には開口部を設けなくても良い。また、分割数(=N)が多くなると、実効開口率は低下する傾向にあるので、高精細な表示パネルに適用する場合は、分割数(=N)を小さくすることが好ましい。
液晶表示装置200は、透明基板(例えばガラス基板)210aと、透明基板210aに対向するように設けられた透明基板210bと、透明基板210aと210bとの間に設けられた垂直配向型の液晶層220とを有する。両方の基板210aおよび210b上の液晶層220に接する面には垂直配向膜(不図示)が設けられており、電圧無印加時には、液晶層220の液晶分子は、垂直配向膜の表面に対して略垂直に配向している。液晶層220は、誘電異方性が負のネマティック液晶材料を含み、必要に応じて、カイラル剤を更に含む。
液晶表示装置200は、透明基板210a上に形成された画素電極211と、透明基板210b上に形成された対向電極231とを有し、画素電極211と対向電極231との間に設けられた液晶層220とが画素を規定する。透明基板210a上には、後述するようにTFTなどの回路要素が形成されている。透明基板210aおよびこの上に形成された構成要素をまとめてアクティブマトリクス基板210aということがある。
また、典型的には、透明基板210bの液晶層220側には、画素に対応して設けられるカラーフィルタ230(複数のカラーフィルタをまとめて全体をカラーフィルタ層230ということもある。)と、隣接するカラーフィルタ230の間に設けられるブラックマトリクス(遮光層)232とが形成され、これらの上に対向電極231が形成されるが、対向電極231上(液晶層220側)にカラーフィルタ層230やブラックマトリクス232を形成しても良い。透明基板210bおよびこの上に形成された構成要素をまとめて対向基板(カラーフィルタ基板)基板210bということがある。
画素電極211は、透明導電層(例えばITO層)から形成された透明電極211aと、金属層(例えば、Al層、Alを含む合金層、およびこれらのいずれかを含む積層膜)から形成された反射電極211bとを有する。その結果、画素は、透明電極211aによって規定される透明領域Aと、反射電極211bによって規定される反射領域Bとを含む。透明領域Aは透過モードで表示を行い、反射領域Bは反射モードで表示を行う。
画素分割数(=N)が3(透過領域が2分割、反射領域が1分割)の図2に示した液晶表示装置200においては、画素電極211の周囲の遮光領域上に後述する壁構造体215が形成されている。また、画素電極211は、画素内の所定の位置に分割数に応じた数(図2では、n=3)の第1開口部214aを有している。画素電極211は、さらに、所定の位置に4つの切欠き部213を有している。一方、対向側の透明基板210b上の対向電極231は、透過領域の分割数に応じた2つの第2開口部114bを有している。
この液晶層に所定の電圧を印加すると、それぞれが軸対称配向を呈する3つ(分割数Nと同数)の液晶ドメインが形成され、これら液晶ドメインのそれぞれの軸対称配向の中心軸は、第1開口部214aおよび第2開口部114b内またはその近傍に形成される。画素電極211および対向電極231の所定の位置に設けられた開口部214aおよび214bは軸対称配向の中心軸の位置を固定するように作用するとともに、軸対称配向を安定化するように作用する。ここで例示するように、透過領域において、第1開口部214aと第2開口部214bとが液晶層を介して互いに重なるように配置すると、一対の開口部214による実効開口率の低下を抑制することができる。第1開口部と第2開口部との作用によって1つの中心軸を固定・安定化するので、第1開口部114aまたは第2開口部114bが発現すべき作用は、1つの開口部で中心軸を固定・安定化する場合よりも小さくてよいので、第1開口部214aおよび第2開口部214bの直径を小さくでき、その結果、実効開口率の低下を抑制することができる。
本実施形態の液晶表示装置は、後に詳細に説明するように、行および列を有するマトリクス状に配置された画素に対して、各垂直走査期間内に、列および行のいずれにおいても、互いに隣接する画素の画素電極に印加される電圧が、対向電極231に印加される電圧を基準として逆極性となるように印加される(ドット反転駆動)。このように、ドット反転駆動を採用することで隣接画素間に発生する斜め電界による配向安定化効果を略矩形の画素の四辺について得られる。従って、隣接する画素の間に急峻な斜め電界が形成され、軸対称配向を安定化するように作用する。
さらに、本実施形態の液晶表示装置においては、任意の一本の走査信号線に接続されたスイッチング素子は、当該走査信号線に隣接する一対の行に属する画素電極211の内の一方に接続されたスイッチング素子と他方に接続されたスイッチング素子を交互に有している。従って、従来の1ライン反転駆動(1H反転駆動)を行うことによって、結果的に、行方向および列方向に隣接する画素の液晶層に、対向電極231を基準として互いに逆極性の表示信号を印加することができる(1Hドット反転駆動)。
また、本実施形態の液晶表示装置は、上述したように開口部214内またはその近傍に軸対称配向の中心が固定・安定化される。これは、この開口部214によって形成される斜め電界の作用によって、開口部214を中心にその周辺の液晶分子が連続的な配向(軸対称配向)が形成されるためであり、この開口部214(少なくとも第1開口部214aおよび第2開口部214bの一方)の作用によって、特許文献7の図9に示されているような角部において不連続な配向が形成されることが抑制・防止される。また、開口部214の作用によって、電界が低い中間調表示状態においも十分に安定な軸対称配向を得ることができ、液晶表示パネルが押圧された際に生じる配向乱れが正常な配向に回復する時間を短くすることができる。
さらに、液晶表示装置200は、隣接する画素の間に遮光領域を有し、この遮光領域の透明基板210a上に壁構造体215を有している。遮光領域は表示に寄与しないので、遮光領域に形成された壁構造体215は表示に悪影響を及ぼすことが無い。
壁構造体215はその傾斜面効果で液晶分子が電圧印加時(電界発生時)に傾斜する方向を規定するように作用する。壁構造体215の傾斜した側面による配向規制力は、電圧無印加時にも作用し、液晶分子を傾斜させる。また、画素の間に形成される電界は、隣接する画素の間に存在する壁構造体215によってゆがめられ、壁構造体215の壁面で液晶分子が傾斜する方向を規定するように作用する。
壁構造体215を設けると、隣接する画素の間に形成される急峻な斜め電界および開口部214の周囲に形成される斜め電界による配向規制力に加えて、壁構造体215による配向規制力が協同的に作用し、軸対称配向がさらに安定に形成される。壁構造体215の壁面効果を併せて利用することで、斜め電界による配向規制力が小さい中間調表示状態における軸対称配向の安定性がさらに向上するとともに、液晶表示パネルが押圧された際に生じる配向乱れが正常な配向に回復する時間をさらに短くすることができる。
ここで例示した壁構造体215は、画素を包囲するように連続した壁として設けられているが、これに限らず複数の壁に分断されていても良い。この壁構造体215は液晶ドメインの画素の外延近傍に形成される境界を規定するように作用するので、ある程度の長さを有することが好ましい。例えば、壁構造体215を複数の壁で構成した場合、個々の壁の長さは、隣接する壁の間の長さよりも長いことが好ましい。
さらに、必要に応じて配置する切欠き部213は軸対称配向ドメインの境界付近に設けられ、液晶分子が電界によって倒れる方向を規定し、軸対称配向ドメインを形成するように作用する。切欠き部213の周辺には、開口部214aおよび214bと同様に、画素電極211と対向電極213との間に印加される電圧によって、斜め電界が形成され、この斜め電界と壁構造体215によって歪んで形成される壁面での電界の作用で液晶分子が傾斜する方向が規定される結果、上述のように軸対称配向が形成される。
また、ここでは、切欠き部213は、画素の透過領域に形成される液晶ドメインの中心軸に対応する開口部(ここでは図2(a)中の右側の開口部)214aを中心に点対称に配置された4つの切欠き部213を含んでいる。こここで例示するように壁構造体215と組み合わせて用いると、開口部214および切欠き部213の周辺に形成される斜め電界と壁構造体215によって歪んで形成される壁面での電界の作用で液晶分子が傾斜する方向が規定される結果、上述のように3つの軸対称配向が安定に形成される。壁構造体215や開口部214や切欠き部213の配置およびこれらの好ましい形状については、上述した透過型液晶表示装置100の場合と同様である。図2には、透過領域Aに2つの液晶ドメインを形成し、反射領域Bに1つの液晶ドメインを形成する例を示したが、これに限定されない。なお、個々の液晶ドメインは略正方形の形状にすることが、視野角特性および配向の安定性の観点から好ましい。
液晶層220の厚さ(セルギャップともいう。)を規定するための支持体233を遮光領域(ここではブラックマトリクス232によって規定される領域)に形成すれば、表示品位を低下させることが無いので好ましい。支持体233は、透明基板210aおよび210bのどちらに形成しても良く、例示したように、遮光領域に設けられた壁構造体215上に設ける場合に限られない。壁構造体215上に支持体233を形成する場合は、壁構造体215の高さと支持体233の高さとの和が液晶層220の厚さとなるように設定される。壁構造体215が形成されていない領域に支持体233を設ける場合には、支持体233の高さが液晶層220の厚さとなるように設定される。
この液晶表示装置200においては、画素電極211および対向電極231に所定の電圧(閾値電圧以上の電圧)を印加すると、透過領域Aに2つの軸対称配向液晶ドメインと、反射領域Bに1つの軸対称配向ドメインが形成される。壁構造体215の壁面で歪んだ電界および壁構造体の壁面効果により主に隣接する3つの液晶ドメイン内(透過領域2つ、反射領域1つ)の液晶分子が電界で倒れる方向を規定し、4つの切欠き部による斜め電界作用で隣接する3つの液晶ドメイン内の液晶分子が電界で倒れる配向規制力が協同的に作用し、液晶ドメインの軸対称配向が安定化される。さらに透過領域Aに形成される2つの軸対称配向液晶ドメインの中心軸は、それぞれ一対の開口部214(互いに対向する214aおよび214b)内または近傍に固定され、安定化される。反射領域Bに形成される1つの軸対称液晶ドメインの中心軸は、開口部214aによって安定化される。
ここでは、壁構造体215を有する半透過型液晶表示装置200の好ましい構成の例を説明したが、図1(c)に示した透過型液晶表示装置100’と同様に、壁構造体215を省略してもよい。但し、壁構造体215を設けることによって軸対称配向がさらに安定化されるので、特に、押圧による残像を低減したい用途においては、壁構造体を設けることが好ましいことは上述の通りである。
次に、透過モードの表示と反射モードの表示の両方を行うことができる半透過型液晶表示装置200に特有の好ましい構成を説明する。
透過モードの表示では、表示に用いられる光は液晶層220を一回通過するだけであるのに対し、反射モードの表示では、表示に用いられる光は液晶層220を2回通過する。したがって、図2(b)に模式的に示したように、透過領域Aの液晶層220の厚さdtを反射領域Bの液晶層220の厚さdrの約2倍に設定することが好ましい。このように設定することによって、両表示モードの光に対して液晶層220が与えるリタデーションを略等しくすることができる。dt=0.5drが最も好ましいが、0.3dt<dr<0.7dtの範囲内にあれば両方の表示モードで良好な表示を実現できる。勿論、用途によっては、dt=drであってもよい。
液晶表示装置200においては、反射領域Bの液晶層220の厚さを透過領域Aの液晶層の厚さよりも小さくするために、ガラス基板210bの反射領域Bにのみ透明誘電体層234を設けている。透明誘電体層234は、例示したように、対向電極231の下側(液晶層と反対側)に設けることが好ましい。このような構成を採用すると、反射電極211bの下に絶縁膜などを用いて段差を設ける必要がないので、アクティブマトリクス基板210aの製造を簡略化できるという利点が得られる。さらに、液晶層220の厚さを調整するための段差を設けるための絶縁膜上に反射電極211bを設けると、絶縁膜の斜面(テーパ部)を覆う反射電極によって透過表示に用いられる光が遮られる、あるいは、絶縁膜の斜面に形成された反射電極で反射される光は、内部反射を繰り返すので、反射表示にも有効に利用されない、という問題が発生するが、上記構成を採用するとこれらの問題の発生が抑制され、光の利用効率を改善することができる。
さらに、この透明誘電体層234に光を散乱する機能(拡散反射機能)を有するものを用いると、反射電極211bに拡散反射機能を付与しなくても、良好なペーパーホワイトに近い白表示を実現できる。透明誘電体層234に光散乱能を付与しなくても、反射電極211bの表面に凹凸形状を付与することによって、ペーパーホワイトに近い白表示を実現することもできるが、凹凸の形状によっては軸対称配向の中心軸の位置が安定し無い場合がある。これに対し、光散乱能を有する透明誘電体層234と平坦な表面を有する反射電極211bとを用いれば、反射電極211bに形成する開口部214aによって中心軸の位置をより確実に安定化できるという利点が得られる。勿論、対向電極231の反射領域Bに開口部214bを設けることによって軸対称配向の中心軸をさらに安定化できる。なお、反射電極211bに拡散反射機能を付与するために、その表面に凹凸を形成する場合、凹凸形状は干渉色が発生しないように連続した波状とすることが好ましく、軸対称配向の中心軸を安定化できるように設定することが好ましい。
また、透過モードでは表示に用いられる光はカラーフィルタ層230を一回通過するだけであるのに対し、反射モードの表示では、表示に用いられる光はカラーフィルタ層230を2回通過する。従って、カラーフィルタ層230として、透過領域Aおよび反射領域Bに同じ光学濃度のカラーフィルタ層を用いると、反射モードにおける色純度および/または輝度が低下することがある。この問題の発生を抑制するために、反射領域のカラーフィルタ層の光学濃度を透過領域のカラーフィルタ層よりも小さくすることが好ましい。なお、ここでいう光学濃度は、カラーフィルタ層を特徴付ける特性値であり、カラーフィルタ層の厚さを小さくすれば、光学濃度を小さくできる。あるいは、カラーフィルタ層の厚さをそのままで、例えば添加する色素の濃度を低下させて、光学濃度を小さくすることもできる。このように透過領域Aと反射領域Bとで異なるカラーフィルタの色層を形成することは表示の色再現性を向上させる目的から極めて効果が大きい。
次に、図3および図4を参照しながら、半透過型液晶表示装置に好適に用いられるアクティブマトリクス基板の構造の一例を説明する。図3はアクティブマトリクス基板の部分拡大図であり、図4は、図3中のX−X’線に沿った断面図である。図3および図4に示したアクティブマトリクス基板は、透過領域Aに1つの液晶ドメインを形成する構成を有している点(すなわち、開口部214aおよび切欠き部213の数が少ない点)において、図2に示したアクティブマトリクス基板211aと異なるが、他の構成は同じであってよい。
図3および図4に示すアクティブマトリクス基板は、例えばガラス基板からなる透明基板1を有し、透明基板1上には、ゲート信号線2およびソース信号線3が互いに直交するように設けられている。これらの信号配線2および3の交差部の近傍にTFT4を設けられており、TFT4のドレイン電極5は画素電極6に接続されている。
画素電極6は、ITOなどの透明導電層から形成された透明電極7と、Alなどから形成された反射電極8とを有し、透明電極7が透過領域Aを規定し、反射電極8が反射領域Bを規定する。画素電極6の所定の領域には、上述したように軸対称配向ドメインの配向を制御するために切欠き部14および軸対称配向ドメインの軸位置固定を行うための第1の開口部214が設けられている。さらに軸対称配向ドメインの配向状態を規定するために画素外の非表示領域の信号線(遮光領域)の部分には画素領域を囲む壁構造体(不図示)が形成される。
画素電極6は次段のゲート信号線上にゲート絶縁膜9を介して重畳させており、補助容量が形成されている。また、TFT4はゲート信号線2から分岐したゲート電極10の上部にゲート絶縁膜9、半導体層12、チャネル保護層13およびn+−Si層11(ソース・ドレイン電極)が積層された構造を有している。
なお、ここではボトムゲート型のTFTの構成例を示したが、これに限られず、トップゲート型のTFTを用いることもできる。
上述したように、図2に示した構成を有する液晶表示装置200は液晶表示装置100と同様に、ドット反転駆動を行うことにより隣接する画素に形成される斜め電界の作用および開口部214の周囲に形成される斜め電界の作用により、軸対称配向が安定に形成される。さらに、画素電極および対向電極の略中央部に設けた各々1対の開口部214は画素内の軸対称状配向ドメインの中心軸を固定・安定化するので、中間調表示状態において斜めから表示を見た場合のざらつき感を低減するなどの効果を得ることができる。更に、遮光領域に設けられた壁構造体215および切欠き部213によって、中間調表示状態においても、安定した軸対称配向ドメインが形成される。
さらに、透明誘体層234および/またはカラーフィルタ層230を上述のように構成することによって、透過モードおよび反射モードでの表示の明るさや色純度を向上することができる。
(配向安定化駆動方法)
上述した実施形態の液晶表示装置は、行および列を有するマトリクス状に配置された画素に対して、各垂直走査期間内に、列および行のいずれにおいても、互いに隣接する画素の画素電極に印加される電圧が、対向電極に印加される電圧を基準として逆極性となるように印加される(ドット反転駆動)。ここでは、ドット反転駆動を行うことによって、得られる配向安定化効果を詳細に説明する。
図5に本発明による実施形態の液晶表示装置300の駆動回路および画素配置を模式的に示す。この液晶表示装置300は、上述の液晶表示装置100または200と同じ構成の表示領域を有している。
液晶表示装置300は、TFT型液晶表示装置であり、列方向に延びる互いに平行な複数のデータ信号線(ソース信号線)301と行方向に延びる互いに平行な複数の走査信号線(ゲート信号線)302を有し、それぞれ、ソース信号駆動回路303およびゲート信号駆動回路304に接続されている。液晶表示装置300は、画素毎に少なくとも1つのTFT305を有し、TFT305のゲート電極が走査信号線302に接続されており、ソース電極にデータ信号線301が接続されている。TFT305のドレイン電極は画素電極306に接続されており、ゲート電極に所定の電圧(走査信号電圧)が印加されたときにTFT305がON状態となり、画素電極306がデータ信号線と電気的に接続され、所定のデータ信号電圧が画素電極306に供給される。画素電極306に対向する対向電極(不図示:典型的には複数の画素電極に対向する)には、所定の共通電圧が供給される。対向電極に供給される共通電圧と、画素電極306に供給されるデータ信号電圧との差がそれぞれの画素の液晶層に印加される。
ここで、任意の一本の走査信号線302に接続されたTFT305は、当該走査線302に隣接する一対の行に属する画素電極306の一方(例えば上の行に属する画素電極306)に接続されたTFT305と他方(例えば下の行に属する画素電極306)に接続されたTFT305を交互に有するように配列されている。言い換えると、複数のデータ信号線301のうち、例えば、奇数番目のデータ信号線301に接続されたTFT306は走査信号線302の上側に配置されており(上の行の画素電極306に接続されており)、偶数番目のデータ信号線301に接続されたTFT305は走査信号線302の下側に配置されている(下の行の画素電極306に接続されている)。すなわち、ある走査信号線302に接続されたTFT305(および画素電極306)をデータ信号線301毎に上下方向に交互に千鳥状に配列している。
上述のような千鳥状配列のパネル構成に対して従来の1ライン反転駆動を行うことによって、画素電極306に供給される電圧を対向電極に供給される電圧を基準として、行方向および列方向に隣接する画素間で逆極性として、フレーム毎に切り替える。すなわち、ソース信号線駆動回路303およびゲート信号線駆動回路304は従来の1ライン反転駆動を行うだけで、結果的にドット反転駆動を実現することができる。
本実施形態では、1フレーム期間内に、マトリクス状に配置されて形成された任意の第1の画素と、当該第1の画素に隣接する同一行の第2の画素とに対して、対向電極を基準として互いに逆極性の電圧を印加するとともに、任意のn行目の走査線に接続された第1の画素と、当該第1の画素と同一列のデータ信号線に接続されたn+1行目(またはn−1行目)の走査信号線に接続された第3の画素に対しても、対向電極を基準として互いに逆極性の電圧を印加する(ドット反転駆動)。さらに、フレーム毎に全ての画素に印加される電圧の極性を反転させる(フレーム反転駆動)。例えば、図6に本実施形態の液晶表示装置300のあるフレーム期間における画素に印加されている電圧の極性パターンの一例を示す。図6示した次のフレームでは、全ての画素について、プラスとマイナスが逆転する。
図7(a)から(c)に液晶層に電圧を印加した際の等電位線の挙動と液晶配向ダイレクタのシミュレーション結果を示す。ここで、液晶層の駆動電圧は4Vと設定して、電界による等電位線の引き込み効果を確認するため、隣接する画素電極間の間隙の幅が3μmの場合と9μmの場合とのを比較する。また、従来のパネル構成に対して従来のライン反転駆動を行った場合などのように隣接画素電極間では同極性の電圧が印加された場合と、対向電極を基準にして隣接画素間で正負の極性を逆極性として印加された場合(本実施形態)について示す。
図7(a)は、本発明による実施形態の駆動方法で、隣接画素電極に逆極性の電圧を印加した場合(電極間の間隙3μm)、(b)従来の駆動方法で、隣接画素間で同極性の電圧を印加した場合(電極間隙3μm)、(c)従来の駆動方法で隣接画素間で同極性の電圧を印加した場合(電極間隙9μm)のシミュレーション結果である。
隣接画素間で逆極性の電圧を印加した場合には画素の境界で急峻な電位勾配が発生してより効果的に等電位線が引き込まれることが分かる。例えば、本実施形態の駆動方法では従来の隣接画素間で同極性で、かつ、電極間隙9μmの場合よりもより効果的に等電位線が引き込まれて、液晶分子が電界によって斜めに配向することがわかる。さらに、本実施形態の駆動方法では、電極間隙3μmの場合でも効果的に液晶分子が電界によって配向制御されていることがわかる。
以上のように、任意の走査信号線302に接続されたTFT305(および画素電極306)をデータ信号線301毎に上下方向に交互に千鳥状に配列した構成を有するパネルに対して従来の1ライン反転駆動を行い、行方向および列方向のいずれにおいても隣接する画素に印加する電圧の極性を対向電極に対して1フレーム毎に逆極性で印加することで、画素間で大きな電位勾配を形成させることが可能となり、この電位勾配を利用した配向規制力により、垂直配向型液晶層に形成される軸対称配向をより安定化することができる。
また、この配向安定化に適した駆動方法は液晶パネルのフリッカの低減にも極めて有効である。
すなわち、一般的なアクティブ型液晶パネルでは、画素毎に設けたTFT素子などのスイッチング素子の特性が十分でないためにソース信号駆動回路(列方向)303から出力されるデータ信号の正負が対称であっても、液晶層の透過率は正負のデータ電圧に対して完全に対称とならず、1フレーム毎に液晶層への印加電圧の正負極性を反転させる駆動方式(1フレーム反転駆動)では液晶パネルのフリッカが目立つことがある。
このようなフリッカ低減対策として、1水平走査線毎に正負極性を反転させ、かつ、1フレーム周期毎に正負極性を反転させる駆動方式(1H反転駆動)などが知られており、他にも画素を形成する液晶層への印加電圧の正負極性を1走査信号線毎かつ1データ線毎に反転させ、1フレーム周期毎にも反転させる駆動方式(ドット反転駆動)などが行われている。フリッカ抑制の効果は、本実施形態と同様のドット反転駆動で最も低減できるという特徴を有しているが、ドット反転駆動の場合には、同一の走査線上の画素電極に正あるいは負の極性の電圧が印加されるためにソース信号線駆動回路のIC耐圧を高く設定しなければならないという課題も指摘されている。これに対し、本実施形態では、任意の走査信号線に接続されたスイッチング素子(および画素電極)をデータ信号線毎に上下方向に交互に千鳥状に配列した構成を有するパネルに対して従来の1ライン反転駆動を行うことによって、結果的に、ドット反転駆動を実現できるので、従来のドット反転駆動のように高いIC耐圧が要求されることがない。
なお、本発明の実施形態の液晶表示装置において、壁構造体をさらに設けると、壁構造体による配向規制力をも利用して軸対称配向を安定化できるので、特に、十分な電界が得られない中間調においても、軸対称配向を安定化することが可能で、中間調での表示品位を改善することができる。さらに、液晶表示パネルが押圧された際に生じる配向乱れ(押圧による残像ということがある)が正常な配向に回復する時間を短くすることもできる。
〔動作原理〕
次に図8を参照しながら、垂直配向型液晶層を有する本発明の実施形態の液晶表示装置が優れた広視野角特性を有する理由を説明する。
図8は、アクティブマトリクス基板側に設けた壁構造体15および開口部14aと、カラーフィルタ基板側に設けた開口部14bによる配向規制力の作用を説明するための図であり、図6(a)は電圧無印加時、図8(b)は電圧印加時の液晶分子の配向状態を模式的に示している。図8(b)に示した状態は中間調を表示している状態である。
図8(a)および(b)に示した液晶表示装置は、透明基板1上に、絶縁膜16、所定の位置に開口部14aを有する画素電極6、壁構造体15を形成し、配向膜12をこの順に配置している。他方の透明基板17上には、カラーフィルタ層18と所定の位置に開口部14bを有する対向電極19および配向膜32がこの順で形成されている。両基板間に設けられた液晶層20は、負の誘電異方性を有する液晶分子21を含む。
図8(a)に示すように、電圧無印加時には、液晶分子21は垂直配向膜22および32の配向規制力により基板表面に対して略垂直に配向する。
一方、電圧印加時には、図8(b)に示すように、誘電異方性が負の液晶分子21は分子長軸が電気力線に対して垂直になろうとするので、一対の開口部14aおよび14bの周辺に形成される斜め電界および壁構造体15の側面(壁面)の電界歪みや配向規制力によって、液晶分子21が倒れる方向が規定されることになる。従って、例えば、開口部14aおよび14bを中心とする軸対称状に配向することになる。この軸対称配向ドメイン内では液晶ダイレクタは全方位(基板面内の方位)に配向しているため、視野角特性が優れる。
ここでは、開口部14aおよび14bの周りに形成される斜め電界の作用や壁構造体15での配向規制力について説明したが、画素電極6のエッジ部に形成される切欠き部の近傍においても同様に斜め電界が形成され、液晶分子21が電界によって傾く方向が規定される。特に、上述したドット反転駆動を行うことによって、隣接する画素電極間に生成される斜め電界が液晶分子の軸対称配向を安定に形成するように作用する。また、壁構造体15を省略しても、ドット反転駆動を行うことによって得られる急峻な斜め電界の作用および開口部14aおよび14bの周りに形成される斜め電界の作用によって軸対称配向を安定に形成することができる。
次に、本発明での液晶表示装置の構成に関して説明する。
図9に示す液晶表示装置は、バックライトと、半透過型液晶パネル50と、半透過型液晶パネル50を介して互いに対向するように設けられた一対の偏光板40および43と、偏光板40および43と液晶パネル50との間に設けられた1/4波長板41および44と、1/4波長板41および44と液晶パネル50との間に設けられた光学異方性が負の位相差板42および45とを有している。液晶パネル50は、透明基板(アクティブマトリクス基板)1と透明基板(対向基板)17との間に垂直配向型液晶層20とを有している。液晶パネル50として、ここでは、図2に示した液晶表示装置200と同様の構成を有するものを用いる。
図9に示した液晶表示装置の表示動作を以下に簡単に説明する。
反射モード表示については、上側からの入射光は偏光板43を通り、直線偏光となる。この直線偏光は、偏光板43の透過軸と1/4波長板44との遅相軸とが45°になるように1/4波長板44に入射すると円偏光となり、基板17上に形成したカラーフィルタ層(不図示)を透過する。なお、ここでは法線方向から入射する光に対して位相差を与えない位相差板45を用いている。
電圧無印加時には、液晶層20中の液晶分子は基板面に略垂直に配向しているために入射光は位相差がほぼ0で透過し、下側の基板1に形成した反射電極により反射される。反射された円偏光は再び液晶層20中を通過してカラーフィルタ層を通り、再度、光学異方性が負の位相差板45を円偏光で通り、1/4波長板44を経て、最初に入射して偏光板43を透過した際の偏光方向と直交する偏光方向の直線偏光に変換されて偏光板43に到達するために、光は偏光板43を透過できず黒表示となる。
一方、電圧印加時には、液晶層20中の液晶分子は基板面に垂直な方向から水平方向に傾くため、入射した円偏光は液晶層20の複屈折により楕円偏光となり、下側の基板1に形成した反射電極により反射される。反射された光は液晶層20で偏光状態がさらに崩され、再び液晶層20中を通過してカラーフィルタ層を通り、再度、光学異方性が負の位相差板45を通り、1/4波長板44に楕円偏光として入射するため、偏光板43に到達するときに全ての光が入射時の偏光方向と直交した直線偏光とはならず、一部の光が偏光板43を透過する。特に、印加電圧を調節することで液晶分子の傾く方向が制御できて、反射光が偏光板43を透過できる光量が変調され、階調表示が可能となる。
また、透過モードの表示については、上下2枚の偏光板43および偏光板40は各々その透過軸が直交するように配置されており、光源から出射された光は偏光板40で直線偏光となり、この直線偏光は、偏光板40の透過軸と1/4波長板41との遅相軸が45°になるように1/4波長板41に入射すると円偏光になり光学異方性が負の位相差板42を経て下側の基板1の透過領域Aに入射する。なお、ここでは法線方向から入射する光に対して位相差を与えない位相差板42を用いている。
電圧無印加時には、液晶層20中の液晶分子は基板面に略垂直に配向しているため、入射光は位相差がほぼ0で透過し、下側の基板1に円偏光の状態で入射し、円偏光の状態で液晶層20および上側の基板17を経て上側の光学異方性が負の位相差板45を透過して1/4波長板44に到る。ここで、下側の1/4波長板41と上側の1/4波長板44の遅相軸が90°交差して配置することで、上側の1/4波長板44からは偏光板40での直線偏光と直交した直線偏光となり、偏光板43で吸収されて黒表示となる。
一方、電圧印加時には、液晶層20中の液晶分子21は基板面に垂直な方向から水平方向に傾くために液晶表示装置への入射した円偏光は液晶層20の複屈折により楕円偏光となり、上側のCF基板16や上側の光学異方性が負の位相差板45および1/4波長板44を楕円偏光として偏光板43に到るために入射時の偏光成分と直交した直線偏光にはならず、偏光板43を通して光が透過する。特に、印加電圧を調節することで液晶分子の傾く方向が制御できて、反射光が偏光板43を透過できる光量が変調され、階調表示が可能となる。
光学異方性が負の位相差板は液晶分子が垂直配向状態での視野角を変化させた場合の位相差の変化量を最小に抑え、広視野角側での黒浮きを抑える。また、光学異方性が負の位相差板と1/4波長板を一体化させた2軸性位相差板を用いても良い。
本発明のように電圧無印加時に黒表示を行い、電圧印加時に白表示となるノーマリーブラックモードを軸対称配向ドメインで行った場合、液晶表示装置(パネル)の上下に一対の1/4波長板を設けることによって、偏光板に起因する消光模様を解消させて明るさを改善することも可能となる。また、上下の偏光板の透過軸を互いに直交して配置してノーマリーブラックモードを軸対称配向ドメインで行った場合には、原理的にはクロスニコルに配置した一対の偏光板と同程度の黒表示を実現できることから、極めて高いコントラスト比を実現できると共に、全方位的な配向に導かれた広い視野角特性が達成できる。
また、本発明で規定した透過領域の液晶層厚dtと反射領域の液晶層厚drの関係については、図10に透過領域と反射領域の電圧−反射率(透過率)の液晶厚の依存性に示すように、0.3dt<dr<0.7dtの条件を満足することが好ましく、0.4dt<dr<0.6dtの範囲であることがより好ましい。下限値よりも低い反射領域の液晶層厚では最大反射率の50%以下となり、十分な反射率が得られなくなる。一方、上限値よりも反射領域の液晶層厚drが大きい場合には電圧−反射率特性において透過表示時とは異なる駆動電圧で反射率が最大となる極大値が存在すると共に透過表示での最適な白表示電圧では相対反射率が低下する傾向が大きく、最大反射率の50%以下となるために十分な反射率が得られなくなる。しかしながら、反射領域Bでは液晶層の光路長が透過領域の2倍となることから、透過領域Aと同一の設計をする場合には、液晶材料の光学的な複屈折異方性(Δn)とパネルのセル厚設計が極めて重要となる。
本発明による実施形態による半透過型液晶表示装置の具体的な特性を以下に例示する。
ここでは、図9に示した構成を有する液晶表示装置を作製した。液晶セル50には、図2に示した液晶表示装置200と同様の構成の液晶セルを用いた。
TFT基板側の画素電極には、透過領域および反射領域の各々の所定の位置に直径5μmの開口部(第1開口部)を形成するとともに、画素の周囲の信号線上などの遮光部上に壁構造体を配置した。さらに、対向基板側の対向電極には、透過領域部および反射領域部の各々の所定の位置には直径5μmの軸対称配向ドメインの軸中心固定用の開口部(第2開口部)を配置した。なお、これら一対の第1および第2の開口部は液晶層を介して空間的に互いに重なるような位置関係とした。ここでは、切欠き部幅を3μm、隣接画素電極間の間隙を5μmとした。また、カラーフィルタ基板では透明誘電体層234に光散乱能を有しないものを用い、反射電極211bの下層部に表面に凹凸状の連続形状を施した樹脂層を形成して、反射表示時の拡散反射特性を調整した。
公知の配向膜材料を用いて、公知の方法で垂直配向膜を形成した。ラビン処理は行っていない。液晶材料としては、誘電率異方性が負の液晶材料(Δn;0.1、Δε;−4.5)を用いた。ここでは、透過領域の液晶層厚dtを4μm、反射領域の液晶層厚drを2.2μm(dr=0.55dt)とした。
本実施例の液晶表示装置の構成は、上から順に偏光板(観察側)、1/4波長板(位相差板1)、光学異方性が負の位相差板(位相差板2(NR板))、液晶層(上側;カラーフィルタ基板、下側;アクティブマトリクス基板)、光学異方性が負の位相差板(位相差板3(NR板))、1/4波長板(位相差板4)、偏光板(バックライト側)の積層構造とした。なお、液晶層の上下の1/4波長板(位相差板1と位相差板4)では互いの遅相軸を直交させ、各々の位相差を140nmとする。光学異方性が負の位相差板(位相差板2と位相差板3)は各々の位相差を135nmとした。また、2枚の偏光板(観察側、バックライト側)では、透過軸を直交させて配置した。
液晶表示装置に駆動信号を印加(液晶層に4V印加)して表示特性を評価した。特に、ここでは、上述したようにスイッチング素子を各データ信号線毎に上下方向に交互に千鳥状に配列させた構成をとり、1Hライン反転を行うことで液晶層に対して擬似的にドット反転と同様の駆動信号を印加し、対向電極を基準にして隣接画素間に+4Vおよび−4Vの信号を1フレーム内で印加し、次の1フレームでは極性反転を駆動にて液晶パネルの表示特性を評価した。
透過表示での視角−コントラストの特性結果を図11に示す。透過表示での視野角特性はほぼ、全方位的で対称な特性を示し、CR>10の領域は±80°と良好であり、透過コントラストも正面で300:1以上と高いものであった。また、隣接画素間に同極性の駆動信号を印加する従来のライン反転などの駆動方法を適用する場合に比べて、隣接画素電極間隙を狭くできたことから、従来比で15%程度の透過率改善効果が確認された。
一方、反射表示の特性は、分光測色計(ミノルタ社製CM2002)で評価し、標準拡散板を基準にして反射率約9.5%(開口率100%換算値)、反射表示のコントラスト値は25であり、従来の液晶表示装置に比べて高いコントラストを示し良好であった。
さらに、中間調(8階調分割時での階調レベル2)のグレースケールでの斜め方向からのざらつきの評価では、全くざらつき感は感じられなかった。
加えて、上下基板に一対の電極開口部を設けた場合の液晶表示装置での中間調応答時間(8階調分割時での階調レベル3から階調レベル5の変化に要する時間;m秒)は、35m秒であり、本発明の液晶パネル構成をとることで応答時間の改善効果が大きいことが確認できた。さらに、電圧4V印加(白表示)時に指先でパネル面を押した際の配向復元力については押圧部での残像がほとんど見られなかった。
本発明の液晶パネルを隣接画素間への印加電圧を同極性とした従来の1Hライン反転駆動方法で駆動させた場合、隣接画素電極間の間隙を3μmとした場合には、図7(b)でも示したように液晶分子の配向制御が十分に行えずに、液晶領域内でディスクリネーションが発生する現象が確認された。この場合にはさらに、表示コントラストや応答速度も十分でなく、表示品位の低下が顕著であった。