JP2005291161A - 圧縮着火式内燃機関及びその燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃焼の際に発生するスモークの増大を招くことなく排気温度を効率よく上昇させる。
【解決手段】低負荷運転時に排気温度を上昇させるために、ピストンが圧縮上死点近傍に位置するときから、加圧された燃料を噴射による筒内温度変動が抑えられるように複数回に分割して噴射させる制御が行われる。その際に、複数回の噴射による燃焼の各々が断続的に行われるように、複数回の噴射時期の各々、燃料の噴射圧力及び燃料の噴射量が制御される。この制御によって、複数回の噴射による燃料噴霧の各々について、新気が十分に導入された状態で燃焼を行うことができる。
【選択図】図6
【解決手段】低負荷運転時に排気温度を上昇させるために、ピストンが圧縮上死点近傍に位置するときから、加圧された燃料を噴射による筒内温度変動が抑えられるように複数回に分割して噴射させる制御が行われる。その際に、複数回の噴射による燃焼の各々が断続的に行われるように、複数回の噴射時期の各々、燃料の噴射圧力及び燃料の噴射量が制御される。この制御によって、複数回の噴射による燃料噴霧の各々について、新気が十分に導入された状態で燃焼を行うことができる。
【選択図】図6
Description
本発明は、筒内の吸気ガスをピストンにより圧縮して筒内へ加圧された燃料を直接噴射することで、噴射した燃料の着火を行う圧縮着火式内燃機関、及びその燃料噴射制御装置に関する。
圧縮着火式内燃機関の燃料噴射制御装置の従来例が特開2000−320386号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1においては、エンジンの要求トルクに対応する基本噴射量の燃料を、各気筒の圧縮上死点近傍で複数回に分割して筒内へ噴射させている。その際に、複数回の噴射による燃焼の各々が継続して行われるように、複数回の噴射時期の各々が制御される。この制御によって、先に噴出した燃料の油滴に、続いて噴出した燃料の油滴が追いついて再び結合するのを抑止することで、触媒を活性化させるための排気温度の上昇を図るとともに、燃料の微粒化の促進を図っている。
その他にも、特許文献2の圧縮着火式内燃機関の燃料噴射制御装置が開示されている。また、複数回の噴射による熱発生の各々が連続して行われるように、燃料を複数回に分割して筒内へ噴射する例が非特許文献1に開示されている。
特許文献1においては、排気温度を上昇させるために、複数回の噴射による燃焼の各々が継続するように、圧縮上死点近傍での複数回の噴射時期の各々を制御している。そのため、2回目以降に噴射された燃料噴霧については、新気の導入が不十分な状態で燃焼が行われることになるので、燃焼の際に発生するスモークが増大することになる。したがって、特許文献1においては、スモークの低減に負担がかかるという問題点がある。
本発明は、燃焼の際に発生するスモークの増大を招くことなく排気温度を効率よく上昇させることができる圧縮着火式内燃機関及びその燃料噴射制御装置を提供することを目的とする。
本発明に係る圧縮着火式内燃機関の燃料噴射制御装置は、筒内の吸気ガスをピストンにより圧縮して筒内へ加圧された燃料を直接噴射することで、噴射した燃料の着火を行う圧縮着火式内燃機関にて用いられる燃料噴射制御装置であって、ピストンが圧縮上死点近傍に位置するときから、加圧された燃料を、噴射による筒内温度変動が抑えられるように複数回に分割して筒内へ噴射させる噴射制御手段を有し、前記噴射制御手段は、複数回の噴射による燃焼の各々が断続的に行われるように、複数回の噴射時期の各々及び燃料の噴射圧力を制御することを要旨とする。
本発明においては、ピストンが圧縮上死点近傍に位置するときから、加圧された燃料を、噴射による筒内温度変動が抑えられるように複数回に分割して筒内へ噴射させる制御が行われる。この制御によって最初の噴射開始時から最終の噴射開始時までの筒内温度変動が抑えられることで、良好な着火特性を確保できる筒内温度を保ちながら各燃料噴射を行うことができ、かつ筒内の最高温度を低く抑えることができる。これによって、最終の噴射開始時期を遅らせてもHCの増加や失火を招くことなく良好な着火特性を確保することができ、かつ熱損失を少なくすることができるので、排気温度を効率よく上昇させることができる。さらに、本発明においては、複数回の噴射による燃焼の各々が断続的に行われるように複数回の噴射時期の各々及び燃料の噴射圧力が制御されることにより、複数回の噴射による燃料噴霧の各々について新気が十分に導入された状態で燃焼を行うことができるので、燃焼の際に発生するスモークを低減することができる。したがって、本発明によれば、燃焼の際に発生するスモークの増大を招くことなく排気温度を効率よく上昇させることができる。
本発明に係る圧縮着火式内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記噴射制御手段は、ピストン速度増大による筒内温度低下率の増大分が補償されるように、後の燃料噴射ほど噴射量を増加させるものとすることもできる。こうすれば、分割噴射の際にピストン速度増大による筒内温度の低下を抑制することができるので、排気温度をさらに効率よく上昇させることができる。
本発明に係る圧縮着火式内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記噴射制御手段は、各噴射間における休止期間がクランク角度で15度以下となるように、複数回の噴射時期の各々を制御することが好適である。こうすれば、最初の噴射開始時から最終の噴射開始時までにおける筒内温度変動を抑えることができるので、分割噴射の際の熱損失を少なくすることができる。
本発明に係る圧縮着火式内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記噴射制御手段は、最初の噴射開始時から最終の噴射開始時までにおける筒内温度の変動幅が250℃以下に抑えられるように、複数回の噴射時期の各々を制御することが好適である。こうすれば、分割噴射の際の熱損失を少なくすることができる。
また、本発明に係る圧縮着火式内燃機関は、筒内の吸気ガスをピストンにより圧縮して筒内へ加圧された燃料を直接噴射することで、噴射した燃料の着火を行う圧縮着火式内燃機関であって、加圧された燃料は、ピストンが圧縮上死点近傍に位置するときから、噴射による筒内温度変動が抑えられるように複数回に分割されて筒内へ噴射され、複数回の噴射による燃焼の各々が断続的に行われるように、複数回の噴射時期の各々及び燃料の噴射圧力が制御されることを要旨とする。
以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る燃料噴射制御装置をその制御対象となる圧縮着火式内燃機関の構成の概略とともに示す図である。本実施形態の圧縮着火式内燃機関は、筒内の吸気ガスをピストン12により圧縮して筒内へ加圧された燃料を直接噴射することで、噴射した燃料の着火を行うディーゼルエンジンとして構成される。
燃料ポンプ14は、燃料タンク16に貯溜されている燃料を汲み上げてコモンレール18に供給する。コモンレール18は、燃料ポンプ14から供給された燃料を設定圧力で蓄える。コモンレール18に蓄えられた燃料は、各気筒に対応して設けられた燃料噴射弁10に供給される。
コモンレール18にはレギュレートバルブ22が設けられており、レギュレートバルブ22はコモンレール18内における燃料の圧力を調整する。レール圧センサ20は、コモンレール18内における燃料の圧力を検出する。レール圧センサ20の検出値はコントローラ30に入力され、コモンレール18内における燃料の圧力が設定圧力となるようにレギュレートバルブ22の駆動制御がコントローラ30から出力されるレール圧制御信号によって行われる。なお、ここでの設定圧力は、例えば40〜140MPa程度の値であり、機関回転速度及び要求トルク(駆動負荷)が高いほど大きい値がコントローラ30内で設定される。
燃料噴射弁10は、前述の設定圧力に加圧された燃料を筒内に直接噴射することが可能である。燃料噴射弁10の駆動制御、すなわち燃料噴射制御は、例えばセンサにより検出した機関回転速度、アクセル開度及びクランク角度等に基づいてコントローラ30から出力される駆動制御信号によって行われる。また、燃料噴射弁10と燃料タンク16とを接続する配管には、燃料噴射弁10から燃料タンク16へ向かう方向のみの燃料の流れを許容するチェックバルブ24が設けられている。
燃料が燃料噴射弁10から燃焼室内へ直接噴射されることで、燃焼室内に混合気が形成される。そして、混合気の自着火が行われることで、混合気が燃焼してクランク軸(図示せず)に回転力が発生する。燃焼後の排気ガスは、排気行程にて排気管(図示せず)へ排出される。そして、排気管には、排気ガスを浄化するための触媒(図示せず)が設けられている。ここでの触媒としては、例えば尿素やアンモニアを利用する選択還元型、吸蔵還元型等が用いられる。
圧縮着火式内燃機関においては、低負荷運転時での排気ガスの温度が高負荷運転時と比較して低くなる傾向にある。排気ガスの温度が低下すると触媒の活性状態が低下するので、低負荷運転時に触媒の活性状態を高く保つためには、排気ガスの温度を高く保つ必要がある。典型的な例を挙げると、触媒へ到達するときの排気ガスの温度が250℃以上であることが好ましい。
そこで、本実施形態では、1サイクルにおいてピストンが圧縮上死点近傍に位置するときから、加圧された燃料を噴射による筒内温度変動が抑えられるように複数回に分割して筒内へ噴射させる制御がコントローラ30によって行われる。低負荷運転時には、この燃料噴射制御を行うことで、排気温度を上昇させる。その際に、1サイクルにおける最初の噴射開始時から最終の噴射開始時までの筒内温度変動が所定量以下に抑えられる(理想的には筒内温度がほぼ定常化される)ように、複数回の噴射時期の各々がコントローラ30によって制御される。
なお、排気ガスの温度を上昇させるために、単に噴射時期の遅延を行う場合、あるいはアフター噴射やポスト噴射と称される噴射を行う場合は、HCの増加や失火を招きやすくなる。また、圧縮上死点前20°近辺の早い時期にパイロット噴射を行う場合は、パイロット噴射による着火遅れ期間が長くなるため、特に低負荷運転時に過拡散によるオーバーリーンHCを生じやすくなる。
これに対して、本実施形態では、1サイクルにおける最初の噴射開始時から最終の噴射開始時までの筒内温度変動が抑えられるため、筒内の最高温度を低く抑えることができる。したがって、冷却水やオイルへの熱の逃げを少なくすることができ、熱損失を少なくすることができる。さらに、良好な着火特性を確保できる筒内温度を保ちながら各燃料噴射を行うことができるため、最終の噴射開始時期を遅らせてもHCの増加や失火を招くことなく良好な着火特性を確保することができる。したがって、排気温度を効果的に上昇させることができる。
また、特許文献1や非特許文献1のように複数回の噴射による燃焼の各々が継続して行われる場合は、2回目以降に噴射された燃料噴霧については、新気(酸素)の導入が不十分な状態で燃焼が行われることになる。その場合は、燃焼の際に発生するスモークが増大することになる。
そこで、本実施形態では、1サイクル中の複数回の噴射による燃焼の各々が断続的に行われるように、複数回の噴射時期の各々、燃料の噴射圧力、及び燃料の噴射量がコントローラ30によって制御される。この制御によって、2回目以降の噴射による燃焼は前噴射による燃焼が終了した後に開始されるので、2回目以降に噴射された燃料噴霧についても、新気(酸素)が十分に導入された状態で燃焼を行うことができる。これによって、燃焼の際に発生するスモークを低減することができる。
次に、本願発明者が行った実験の結果について、図2〜6を用いて説明する。
試験機関は、コモンレール噴射系を有する行程容積0.4988Lの単気筒直噴ディーゼル機関である。機関運転条件は、機関回転速度1200rpm、軸トルク5Nmの低負荷である。燃料噴射弁10からの燃料噴射量は燃費の違いにより若干の差があるが、1サイクルあたりの噴射量が約10.5〜12.5mm3である。
そして、以下に説明する実施例1,2及び比較例1〜3について、筒内圧力、筒内温度、熱発生率、図示燃費率、排気温度、スモーク発生量、HC発生量、及びNOx発生量を調べた。排気温度については、エンジンヘッド出口から約20cm下流の位置で測定した。また、筒内温度は、筒内圧力から気体の状態方程式を用いて算出した筒内の平均温度である。
コモンレール18内圧力(燃料噴射圧力)を45MPaに設定し、パイロット噴射を圧縮上死点前29°〜27°に行うとともにメイン噴射を圧縮上死点後2°〜8°に行った場合を比較例1とする。
コモンレール18内圧力(燃料噴射圧力)を45MPaに設定し、パイロット噴射を圧縮上死点前29°〜27°に行い、メイン噴射を圧縮上死点後2°〜7°に行い、さらにアフター噴射を圧縮上死点後30°〜32°に行った場合を比較例2とする。
コモンレール18内圧力(燃料噴射圧力)を45MPaに設定し、最初の噴射を圧縮上死点前5°〜3°に行い、2回目の噴射を圧縮上死点後10°〜15°に行い、最終(3回目)の噴射を圧縮上死点後30°〜32°に行った場合を本発明の実施例1とする。実施例1では、各噴射間における休止期間がクランク角度で13度以上かつ15度以下に設定される。
コモンレール18内圧力(燃料噴射圧力)を45MPaに設定し、最初の噴射を圧縮上死点前5°〜3°に行い、2回目の噴射を圧縮上死点後5°〜8°に行い、3回目の噴射を圧縮上死点後18°〜21°に行い、最終(4回目)の噴射を圧縮上死点後30°〜33°に行った場合を比較例3とする。
コモンレール18内圧力(燃料噴射圧力)を60MPaに設定し、最初の噴射を圧縮上死点前5°〜4°に行い、2回目の噴射を圧縮上死点後5°〜6.5°に行い、3回目の噴射を圧縮上死点後18°〜20°に行い、最終(4回目)の噴射を圧縮上死点後30°〜34°に行った場合を本発明の実施例2とする。実施例2では、各噴射間における休止期間がクランク角度で9度以上かつ11.5度以下に設定される。
なお、以下の説明では、熱損失の大きさの指標として、最初の噴射開始時から最終の噴射開始時までにおける筒内温度の最高値と最低値との差(筒内温度の変動幅)を用いる。ここで、燃焼室壁への熱損失は、1)筒内温度が高いほど大きい、2)気流の強い上死点近傍ほど大きい、という特徴がある。本実施形態では、最終の噴射開始時期を圧縮上死点後20°より遅く設定することから、最終の噴射による燃焼で筒内温度が高くなることは熱損失に大きく影響しない。そこで、最初の噴射開始時から最終の噴射開始時までにおける筒内温度の変動幅を熱損失の大きさの指標として用いることができる。
図2は、比較例1における筒内温度、筒内圧力、燃料噴射弁10のリフト量、及び熱発生率のクランク角度に対する波形を示す。比較例1における図示燃費率は232.2g/kWh、スモーク発生量は0.26FSN、HC発生量は142ppm、NOx発生量は300ppmである。そして、比較例1における排気温度は233℃であり、エンジン出口から触媒までの間に幾分かの温度低下が発生するため、触媒活性の目安である250℃には到底足りないことが分かる。また、比較例1における筒内の最高温度は約1330Kと高いため、燃焼室壁へ逃げる熱量も多い。
図3は、比較例2における筒内温度、筒内圧力、燃料噴射弁10のリフト量、及び熱発生率のクランク角度に対する波形を示す。比較例2における図示燃費率は236.4g/kWh、スモーク発生量は0.15FSN、HC発生量は185ppm、NOx発生量は255ppmである。そして、比較例2における排気温度は261℃であり、比較例1より28℃上昇する。しかし、排気温度をさらに上昇させるために、アフター噴射における噴射量をさらに増やしたりアフター噴射時期をさらに遅らせたりすると、HCの増加を招くことになり、最終的には失火に至ることになる。また、比較例2における筒内の最高温度は約1290Kと高く、最初の噴射開始時から最終の噴射開始時までにおける筒内温度の変動幅も538℃と高いため、燃焼室壁へ逃げる熱量が多く、熱損失も大きい。なお、比較例2における筒内の最高温度が比較例1よりやや低いのは、軸トルクを5Nmに揃えるために圧縮上死点後2°から行われるメイン噴射における噴射量を比較例1より減らしているためである。
図4は、実施例1における筒内温度、筒内圧力、燃料噴射弁10のリフト量、及び熱発生率のクランク角度に対する波形を示す。実施例1においては、最初の噴射による燃焼効率を向上させるために、最初の噴射開始時期を圧縮上死点前5°まで遅らせている。実施例1における図示燃費率は240.7g/kWh、スモーク発生量は0.21FSN、HC発生量は190ppm、NOx発生量は212ppmである。そして、実施例1における排気温度は276℃であり、比較例1より43℃上昇させることができ、エンジン出口から触媒までの温度低下分を考慮しても触媒活性の目安である250℃に十分足りていることが分かる。また、実施例1における筒内の最高温度は約1170Kであり、比較例2と比べて100K以上低い。さらに、最初の噴射開始時から最終の噴射開始時までにおける筒内温度の変動幅も234℃であり、比較例2と比べて変動幅が半分以下に抑えられて筒内温度が平滑化されている。したがって、実施例1においては、比較例2と比べて、燃焼室壁へ逃げる熱量を少なくして熱損失を少なくすることができるので、排気温度を効率よく上昇させることができる。さらに、比較例1,2と比べて、NOxを低減することもできている。
また、図4に示すように、2回目の噴射による熱発生は最初の噴射による熱発生が終了した後に開始されており、3回目の噴射による熱発生は2回目の噴射による熱発生が終了した後に開始されている。すなわち、3回の噴射による熱発生はすべて不連続で起こっている。したがって、実施例1においては、各燃焼の間に燃焼が中断される時期が存在し、3回の噴射による燃焼の各々が断続的に行われていることが分かる。
図5は、比較例3における筒内温度、筒内圧力、燃料噴射弁10のリフト量、及び熱発生率のクランク角度に対する波形を示す。比較例3においては、少量の燃料噴射を断続的に続けることで、筒内の最高温度を低く抑えつつ、次の噴射開始時の筒内温度を高く保ち、良好な着火特性の確保を図っている。比較例3における図示燃費率は249.8g/kWh、HC発生量は160ppm、NOx発生量は202.5ppmである。そして、比較例3における排気温度は305℃であり、比較例1より72℃上昇する。また、比較例3における筒内の最高温度は約1130Kであり、実施例1より約40K低い。さらに、最初の噴射開始時から最終の噴射開始時までにおける筒内温度の変動幅も193℃であり、実施例1より約40℃低い。
しかし、比較例3においては、図5の○部に示すように、4回目の噴射による熱発生は3回目の噴射による熱発生が終了する前に開始されている。すなわち、3回目の熱発生と4回目の熱発生とが継続して行われている。したがって、3回目の噴射による燃焼と4回目の噴射による燃焼とが継続して行われているため、4回目に噴射された燃料噴霧については、新気の導入が不十分な状態で燃焼が行われている。その結果、比較例3におけるスモーク発生量は0.76FSNと高くなり、比較例1,2及び実施例1と比べて大きく増大している。このように、比較例3においては、熱損失が少なく排気温度を効率よく上昇させることができるものの、スモーク発生量の増大を招くことになる。
図6は、実施例2における筒内温度、筒内圧力、燃料噴射弁10のリフト量、及び熱発生率のクランク角度に対する波形を示す。実施例2においては、少量の燃料噴射を断続的に続けることで、筒内の最高温度を低く抑えつつ、次の噴射開始時の筒内温度を高く保ち、良好な着火特性の確保を図っている。実施例2における図示燃費率は256.8g/kWh、HC発生量は270ppm、NOx発生量は180.5ppmである。そして、実施例2における排気温度は293℃であり、比較例1より60℃上昇させることができる。また、実施例2における筒内の最高温度は約1140Kであり、比較例2と比べて約150K低い。さらに、最初の噴射開始時から最終の噴射開始時までにおける筒内温度の変動幅も110℃であり、比較例2と比べて変動幅が約1/5に抑えられて筒内温度がさらに平滑化されている。したがって、実施例2においては、比較例2と比べて、燃焼室壁へ逃げる熱量を少なくして熱損失を少なくすることができるので、排気温度を効率よく上昇させることができる。さらに、比較例1,2と比べて、NOxを低減することもできている。
さらに、実施例2においては、比較例3と比べて、コモンレール18内圧力(燃料噴射圧力)を45MPaから60MPaへ増加させることで、燃焼速度を速めている。その結果、図6に示すように、4回の噴射による熱発生がすべて不連続で起こっている。したがって、実施例2においては、4回の噴射による燃焼の各々が断続的に行われているので、4回の噴射による燃料噴霧の各々について、新気(酸素)が十分に導入された状態で燃焼を行うことができる。その結果、実施例2におけるスモーク発生量は0.17FSNであり、比較例3と比べてスモーク発生量を低減することができる。
また、実施例2においては、4回の燃料噴射の中で、後の噴射による熱発生ほど発生量が増大するように、後の噴射ほど噴射量を増大させている。ここで、ピストンが上死点に位置するときからクランク角が進むにつれてピストン移動速度が増大するため、後の燃料噴射時期ほど、燃焼室内のガスの膨張(ピストン下降)による筒内温度低下率の増大への影響が大きくなる。そこで、コントローラ30は、ピストン移動速度増大による筒内温度低下率の増大分が補償されるように、後の燃料噴射ほど噴射量を増加させる制御を行う。この制御によって、ピストン移動速度増大による筒内温度低下率の増大を抑制することができるので、最終の噴射開始時期を遅らせても良好な着火特性を確保できる筒内温度を保ちながら各燃料噴射を行うことができる。したがって、排気温度をさらに効果的に上昇させることができる。
なお、実施例2における筒内の最高温度は約1140Kであり、比較例3とほぼ同等である。ただし、燃焼室壁への熱損失は気流の強い上死点近傍ほど大きく、上死点から離れるにつれて気流が弱くなって燃焼室壁への熱の流出は少なくなるため、圧縮上死点後40°付近で筒内温度が最高(約1140K)となる実施例2においては、筒内温度が最高となるときでも燃焼室壁へ逃げる熱量は少なく熱損失は少ない。したがって、以上に説明した比較例及び実施例の中では、実施例2が熱損失が最も少ないと判断される。
以上に説明した実験の結果から、最初の噴射開始時から最終の噴射開始時までにおける筒内温度の変動幅が抑えられて筒内温度が平滑化されることにより、分割噴射の際の熱損失を少なくすることができ、排気温度を効率よく上昇させることができる。そして、複数回の噴射による熱発生(燃焼)の各々が断続して行われることにより、燃焼の際に発生するスモークを低減することができる。
そして、以上に説明した実験の結果から、HCの増加や失火を招くことなく最終の噴射開始時期を遅らせて排気温度を効率よく上昇させるためには、特許文献1や非特許文献1のように複数回の噴射による燃焼の各々を連続して行うことが重要ではなく、最初の噴射開始時から最終の噴射開始時までの筒内温度変動を抑えることが重要である。すなわち、実施例1,2のように複数回の噴射による燃焼の各々が不連続で行われても、最初の噴射開始時から最終の噴射開始時までの筒内温度変動を抑えることができれば、排気温度を効率よく上昇させることができる。さらに、燃焼の際に発生するスモークを低減することができる。特許文献1や非特許文献1は、分割噴射の際の筒内温度履歴について何ら言及がないため、本実施形態と思想が異なり、燃焼の際に発生するスモークも増大することになる。
さらに、以上に説明した実験の結果から、排気温度を効率よく上昇させるための燃料噴射時期の典型的な例としては、最初の噴射開始が圧縮上死点前10°〜圧縮上死点後10°の範囲で行われ、最終の噴射開始が圧縮上死点後20°以降で行われることが好ましい。そして、低負荷運転時でも触媒の活性化を保つとともに燃焼の際の熱損失を少なくするためには、最初の噴射開始時から最終の噴射開始時までの筒内温度の変動幅が250℃以下に抑えられるように複数回の噴射時期の各々が制御されることが好ましく、各噴射間における休止期間がクランク角度で15度以下となるように複数回の噴射時期の各々が制御されることが好ましい。
以上説明したように、本実施形態における低負荷運転時の分割噴射によれば、最初の噴射開始時から最終の噴射開始時までにおける筒内温度変動が抑えられるため、良好な着火特性を確保できる筒内温度を保ちながら各燃料噴射を行うことができ、かつ筒内の最高温度を低く抑えることができる。これによって、低負荷運転時に最終の噴射開始時期を遅らせてもHCの増加や失火を招くことなく良好な着火特性を確保することができ、かつ熱損失を少なくすることができる。したがって、本実施形態によれば、低負荷運転時に排気温度を効率よく上昇させることができ、触媒の活性状態を高く保つことができる。
さらに、本実施形態における低負荷運転時の分割噴射によれば、2回目以降の燃料噴射による熱発生は前噴射による熱発生が終了した後に始まる。すなわち、複数回の噴射による燃焼の各々が断続的に行われる。これによって、複数回の噴射による燃料噴霧の各々について、新気(酸素)が十分に導入された状態で燃焼を行うことができるので、燃焼の際に発生するスモークを低減することができる。したがって、本実施形態によれば、低負荷運転時に燃焼の際に発生するスモークの増大を招くことなく排気温度を効率よく上昇させることができる。
また、本実施形態における低負荷運転時の分割噴射によれば、ピストン速度増大による筒内温度低下率の増大分が、後の燃料噴射ほど噴射量を増加させる制御によって補償される。これによって、最終の噴射開始時期を遅らせても、ピストン速度増大による筒内温度の低下を抑制することができ、良好な着火特性を確保できる筒内温度を保ちながら各燃料噴射を行うことができる。したがって、本実施形態によれば、低負荷運転時に排気温度をさらに効率よく上昇させることができる。
なお、実施例1,2においては、ピストンが圧縮上死点近傍に位置するときから加圧された燃料を3回以上に分割して噴射する場合について説明した。ただし、ピストンが圧縮上死点近傍に位置するときから加圧された燃料を複数回に分割して噴射する場合であれば本発明の適用が可能である。そして、燃料の噴射時期及び噴射圧力についても、実施例1,2で説明した場合に限られるものではなく、複数回の噴射による燃焼の各々が断続的に行われる場合であれば本発明の適用が可能である。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
10 燃料噴射弁、12 ピストン、14 燃料ポンプ、18 コモンレール、30 コントローラ。
Claims (5)
- 筒内の吸気ガスをピストンにより圧縮して筒内へ加圧された燃料を直接噴射することで、噴射した燃料の着火を行う圧縮着火式内燃機関にて用いられる燃料噴射制御装置であって、
ピストンが圧縮上死点近傍に位置するときから、加圧された燃料を、噴射による筒内温度変動が抑えられるように複数回に分割して筒内へ噴射させる噴射制御手段を有し、
前記噴射制御手段は、複数回の噴射による燃焼の各々が断続的に行われるように、複数回の噴射時期の各々及び燃料の噴射圧力を制御することを特徴とする圧縮着火式内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 請求項1に記載の圧縮着火式内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
前記噴射制御手段は、ピストン速度増大による筒内温度低下率の増大分が補償されるように、後の燃料噴射ほど噴射量を増加させることを特徴とする圧縮着火式内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 請求項1または2に記載の圧縮着火式内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
前記噴射制御手段は、各噴射間における休止期間がクランク角度で15度以下となるように、複数回の噴射時期の各々を制御することを特徴とする圧縮着火式内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 請求項1または2に記載の圧縮着火式内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
前記噴射制御手段は、最初の噴射開始時から最終の噴射開始時までにおける筒内温度の変動幅が250℃以下に抑えられるように、複数回の噴射時期の各々を制御することを特徴とする圧縮着火式内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 筒内の吸気ガスをピストンにより圧縮して筒内へ加圧された燃料を直接噴射することで、噴射した燃料の着火を行う圧縮着火式内燃機関であって、
加圧された燃料は、ピストンが圧縮上死点近傍に位置するときから、噴射による筒内温度変動が抑えられるように複数回に分割されて筒内へ噴射され、
複数回の噴射による燃焼の各々が断続的に行われるように、複数回の噴射時期の各々及び燃料の噴射圧力が制御されることを特徴とする圧縮着火式内燃機関。
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2004
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