JP2005289802A - 冷凍・冷蔵庫用ガラスと該ガラスを使用したガラス物品 - Google Patents

冷凍・冷蔵庫用ガラスと該ガラスを使用したガラス物品 Download PDF

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Abstract

【課題】 断熱性を確保すると共に、低コストでもって余分な電力エネルギを使用することなく結露発生を防止し、所望の透視性を確保することができるようにした。
【解決手段】 ガラス基板1の表面に酸化スズ膜2が形成され、該酸化スズ膜2の表面に酸化ケイ素膜3を形成し、該酸化ケイ素膜3の表面にはフッ素が添加された酸化スズ膜4、すなわち低放射層が形成されている。そして、低放射層が形成されている面側が冷凍・冷蔵庫の庫内側に面するように配されて冷凍・冷蔵庫のガラス窓として取り付けられる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、冷凍・冷蔵庫用ガラスと該ガラスを使用したガラス物品に関し、より詳しくは断熱性を保持しながら内部の状態を外方から透視するガラス窓として使用される冷凍・冷蔵庫用ガラスと、該ガラスを1枚以上使用することによりガラス窓としての断熱性を向上させた複層ガラス等のガラス物品に関する。
スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの商店で使用される冷凍・冷蔵庫は、商品を陳列する商品陳列機能と消費者が自由に商品を選び取るための商品選択機能を有することが要求されるため、断熱性を確保しつつ透視性を保持することのできる開閉機構付きガラス窓が使用されている。また、商品購入者が商品を容易に視認することができ、販売店主が容易に商品の出入をすることができる冷凍・冷蔵ショーケースや商品の在庫状況を消費者が即座に判断することができる所謂シースルー型の自動販売機にも上述と同様、断熱性を確保しながら透視性を保持することのできるガラス窓が提案されている。
そして、この種のガラス窓の中には、冷凍・冷蔵庫の庫内温度を保つための消費エネルギを極力低減する観点からガラス窓の断熱性を向上させた複層ガラスも知られている。斯かる複層ガラスとしては、複数枚のガラスを互いに対向状に配置しこれらのガラス間に中空層を設けた複層ガラス(例えば、特許文献1参照)や、前記複数のガラスの対向面側のガラス表面にプラスチックフィルムを貼着した複層ガラスが知られており、また、前記中空層に面するガラス表面に低放射層を形成したり、前記中空層を減圧にした複層ガラスも知られており、またアルゴンやクリプトンガス等の断熱ガスを中空層に供給して断熱性を高めた複層ガラスも知られている。(以下、「第1の従来技術」という)。
該第1の従来技術では、ガラスの断熱効果により庫外側ガラスの表面温度が庫外の雰囲気温度に近付くため、庫外側表面が結露しにくくなり、ガラス窓としての透視性を阻害したり、庫外側に結露水が流れ落ちて床が滑り易くなるの防止することができる。
また、これらの複層ガラスの中には、庫外側ガラス板の中空層側表面に透明ヒータとしての作用をなす透明導電性コーティングを施した樹脂フィルムを貼着したり、或いはガラス板表面に透明導電性コーティングを直接施し、該透明導電性コーティング(透明ヒータ)に通電を施して加熱することにより庫外側ガラス板の表面温度を高め、これにより庫外側表面をより一層結露しにくくするようにしたものも知られている(以下、「第2の技術」という)。
さらに、その他の従来技術としては、低放射層が形成されたプラスチックフィルムをガラス板の庫内側表面に貼着したガラス窓も知られている(以下、「第3の従来技術」という)。
該第3の従来技術では、ガラス板の庫内側表面に低放射層が形成されたプラスチックフィルムを貼着することによって、断熱性を高めると共にガラス窓の庫内側表面温度を上昇させ、これにより庫外温度が庫内に侵入してガラスの庫内表面に触れても結露が生じるのを防止している。
特開平8−208280号公報
しかしながら、上記第1の従来技術では、ガラス窓の断熱性が高まったために、ガラス窓の庫内側表面温度が庫内空間の雰囲気温度に近付く一方で、例えば、冷凍・冷蔵庫内の商品を取り出す場合や冷凍・冷蔵庫に商品を補充する場合には、庫外雰囲気が庫内に容易に侵入する。このため、庫内に侵入した庫外雰囲気がガラス窓の庫内側表面に接すると容易に結露し、長時間に亙ってガラス窓の透視性を妨げたり、或いはガラス窓の庫内側表面の結露水が庫内に流入して氷結することがあるという問題点があった。
また、第2の従来技術では、透明導電性コーティング(透明ヒータ)に通電を施すことにより庫外側ガラスの表面温度を高めることができ、この点では庫外表面での結露防止に有効であると考えられるが、透明導電性コーティングは導電性のため放射率が低く、このため庫内側へは熱伝導でしか熱が伝達せず、したがって庫内側ガラス表面は暖まりにくく、庫内側ガラス表面の上昇温度は極めて低いのが実状である。しかも、一方では透明導電性コーティングに通電して加熱することにエネルギを使用し、他方では冷凍・冷蔵庫内を冷却するためにエネルギを使用しているため、冷凍・冷蔵庫全体のエネルギ収支の観点からも極めて非効率的であるという問題点があった。
さらに、第3の従来技術では、ガラス窓の庫内側表面に低放射層を有するプラスチックフィルムを貼着することにより、上述したようにガラス窓の庫内側表面が結露するのを防止しているが、前記プラスチックフィルムは、一般に硬度が低いため、清掃時や商品出入時に低放射層を含むプラスチックフィルムを損傷させてしまう虞があるという問題点があった。すなわち、プラスチックフィルムは損傷し易いため、商品の出入時には該プラスチックフィルムに触れないように注意する必要があり、また清掃時には柔らかい布等で軽く拭き取るという注意が必要となる。このため、販売店側にとって使い勝手が悪く、しかも商品購入者がガラス窓の庫内表面に触れないように注意を喚起させることは事実上不可能に近く、したがって短期間で美観や透視性を損なってしまうという問題点があった。
その上、該第3の従来技術では、低放射層を形成したプラスチックフィルム自体が高価であり、しかもガラス板の表面への貼着作業に手間を要し、また美観を確保するためにはプラスチックフィルムの貼着仕上げ用に特殊な専用装置も必要になるという問題点があった。
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであって、断熱性を確保すると共に、低コストでもって余分な電力エネルギを使用することなく結露発生を防止して透視性を損なうのを回避することのできる冷凍・冷蔵庫用ガラスと該ガラスを使用したガラス物品を提供することを目的とする。
本発明者等は、断熱性を確保すると共に、商品の取り出し等を行っても結露が生じないような冷凍・冷蔵庫用ガラスを得るべく鋭意研究した結果、冷凍・冷蔵庫の庫内側に面するガラス板の表面に低放射層を膜形成することにより、ガラス窓の断熱性を確保することができると共に、ガラス板の庫内側表面温度を上げることができ、結露が生じにくくなって透視性を損なうのを回避することができるという知見を得た。
すなわち、庫内側に面するガラス板の表面に低放射層を膜形成することにより、冷凍・冷蔵庫内部の空間とガラスの庫内側表面との間では、輻射熱に対する放射率が低くなって放射熱伝達が抑制され、対流熱伝達が支配的となる。そしてその結果、ガラス窓の断熱性が向上するばかりか、ガラスの庫内側表面温度を上昇させ、これにより、冷凍・冷蔵庫内の商品取出時や商品補充時に庫外雰囲気が庫内に侵入してガラスの庫内側表面に触れたときであっても結露が生じにくくなり、また生じた場合でも短時間で透視性を回復することができることが判明した。
また、前記低放射層は、冷凍・冷蔵庫内の低温雰囲気に常に晒されるだけでなく、庫外の室温雰囲気の侵入によって急激な温度変化が生じる場合もあり、さらに冷凍・冷蔵庫内部を清掃するときには低放射層が擦られて摩耗してしまう虞がある。また、商品の出入や商品購入者が不用意に低放射層と接触してしまう虞もある。このため、低放射層を構成する物質としては、物理的・化学的な耐久性に優れていることが必要となり、斯かる観点から低放射層としては酸化物半導体膜を使用するのが最適である。
そこで、本発明に係る冷凍・冷蔵庫用ガラスは、室温雰囲気にある第1の空間と室温より低い低温雰囲気にある第2の空間とを仕切る冷凍・冷蔵庫用ガラスであって、前記第2の空間側のガラス板の表面に酸化物半導体膜からなる低放射層が形成されていることを特徴としている。
上記構成によれば、前記第2の空間(庫内)側に面するガラス板の表面に酸化物半導体膜からなる低放射層が形成されているので、輻射熱に対する放射率が低くなって優れた断熱性を確保することができると共に、放射熱伝達が抑制されるため低放射層の表面温度が庫外側のガラス板表面温度に近付くこととなって前記低放射層の表面温度が上昇し、これにより結露発生が防止されて透過性を損なうのを回避することができる。
また、上記構成によれば、低放射層の表面温度が上昇するため、第2の空間(庫内)における温度と低放射層の表面温度の差が大きくなって対流熱伝達が生じ易くなり、したがって低放射層表面の空気も入れ替わりやすくなり、一旦結露が生じても短時間で解消することができる。
さらに、酸化物半導体膜は、物理的・化学的な耐久性に優れているためプラスチックフィルムのように容易に損傷することはなく、優れた耐久性を得ることができる。
また、低放射層を構成する酸化物半導体膜としては、フロートガラス製造工程中で化学気相成長(chemical vapor deposition;以下「CVD」という)法で容易に作製することができ、大量生産に適し、しかもコスト的に安価に製造することのできるフッ素を含有した酸化スズ膜(以下、「SnO2:F膜」という)を使用するのが好ましい。
また、冷凍・冷蔵庫用ガラスは、頻繁に商品の出入等を行うため反射色調は自然な色調を呈する無彩色系、すなわちニュートラル系の反射色調であることが望ましいが、ガラス板の表面に酸化物半導体膜を形成したのみでは、反射色調の調整が困難であり、したがって低放射層の物理的耐久性を阻害しない無機物を前記低放射層とガラス板との間に介在させ、これにより反射色調を調整するのが好ましい。
そこで、本発明の冷凍・冷蔵庫用ガラスは、前記ガラス板と前記低放射層との間に1層以上の無機物からなる中間層が介在されているのが好ましい。
また、冷凍・冷蔵庫用ガラスは強度を向上させるため、又は曲げ加工するために所定の熱処理を行うことがあり、親水/光触媒活性を有する物質のコーティングや抗菌処理においても熱処理の必要な場合があるが、低放射層を形成した後に熱処理を施した場合は、工程全体を低コスト且つ迅速に行うことができ、しかも、低放射層を構成する半導体酸化物膜は熱処理に対して特性劣化が生じることはない。
そこで、本発明の冷凍・冷蔵庫用ガラスは、前記低放射層が形成された後に所定温度でもって所定の熱処理が施されてもよい。
また、本発明者等が更に鋭意研究を進めたところ、前記低放射層の表面に親水・保水機能を有する表面層を形成した場合は、水滴の接触角を小さくすることができるため、水分が表面層に凝結しても結露しにくく透視性が阻害されにくいという知見を得た。そして、表面層としては、化学的・物理的耐久性を高く保つ観点からは、ケイ素、アルミニウム、及びチタンのうちの1種以上の元素を含む複合酸化物又は混合酸化物を使用するのが好ましいことが判明した。
そこで、本発明の冷凍・冷蔵庫用ガラスは、ケイ素、アルミニウム、及びチタンのうちの1種以上の元素を含む複合酸化物又は混合酸化物を主成分とする表面層が前記低放射層の表面に形成されているのが好ましい。
また、前記表面層の膜厚は、低放射層の低放射率、すなわち高赤外反射性能を損なわないためには、所望の親水・保水機能を確保することを条件に可能な限り薄いのが好ましく、具体的には、0.5nm〜1000nm、最も好ましくは1nm〜300nmであることが望ましい。
さらに、冷凍・冷蔵庫の内部は蛍光灯等の照明器具で照明されることが多いことから、前記表面層に光触媒活性物質が含まれているとガラス表面の有機汚れを分解し、長期間に亙って親水・保水機能を保持することができる。
また、冷凍・冷蔵庫を食品の保存陳列用に使用する場合は、衛生上の観点から冷凍・冷蔵庫の庫内表面又は庫外表面のうちの少なくともいずれか一方に抗菌処理を施すのが好ましい。尚、抗菌処理として実施されることの多い銀系の処理の場合は、抗菌性は低温では発祥しにくく、ガラスの庫内表面温度を高く維持することのできる本発明のガラスは抗菌処理に適している。
また、室温雰囲気にある外部から冷凍・冷蔵庫内部の商品の視認性を十分確保するためには、可視光透過率が少なくとも60%以上、望ましくは70%以上、さらに望ましくは80%以上であることが好ましく、斯かる可視光透過率を有するガラス板を素材として選択する必要がある。
さらに、本発明の冷凍・冷蔵庫用ガラスは、ガラス窓としての高透視性を保持しつつ、冷凍・冷蔵庫内部と低放射層の表面との放射熱交換を極力低くして輻射熱に対する放射率を低くする必要があり、そのためには低放射層の垂直放射率が0.35以下、望ましくは0.25以下、さらに望ましくは0.15以下にすることが好ましい。
本冷蔵・冷蔵庫用ガラスは、庫内を下方から上方に覗き込むように設置した場合は、垂直に設置した場合に比べ、対流熱伝達の効果が大きくなるので、本発明の効果は小さくなるが、逆に、冷凍・冷蔵庫用ガラスを斜め上方、又は上方から庫内を覗き込めるように水平方向に対して所定の傾斜角度以内で取り付けた場合は、冷凍・冷蔵庫内部と低放射層表面との間では放射熱伝達のみならず対流熱伝達までもが生じにくくなり、低放射層の表面温度は更に上昇してガラス板に曇りが生じるのをより効果的に阻止することが可能となる。
すなわち、本発明の冷凍・冷蔵庫用ガラスは、ガラス面を水平とし且つ前記低放射層が鉛直方法下面に施されている状態を基準として傾斜角度が0〜135°となるように冷凍・冷蔵庫本体に取り付けられるのが好ましく、望ましくは、前記傾斜角度が0°〜60°であることが好ましい。
また、従来より複数のガラス基板間に空気層や断熱ガス層或いは減圧層等の中空層を介在させたガラス物品としての複層ガラスは、断熱性能に極めて優れた作用・効果を発揮することが知られているが、上述した本発明の冷凍・冷蔵庫用ガラスを複層ガラスに組み入れた場合は、結露の発生を防止しつつ、更なる断熱性能の向上を図ることができると考えられる。
そこで、本発明に係るガラス物品は、上記ガラスを1枚以上含む複数のガラスが前記低放射層側を室温よりも低い低温雰囲気の空間と面するようにして対向配置されると共に、これら複数のガラス間に中空層が形成されていることを特徴とし、また前記中空層は、空気層、断熱ガス層、又は減圧層のいずれかであることを特徴としている。
尚、減圧層を含むガラス物品を作製する場合は、減圧層の減圧状態を長期間保持するように150℃以上に加熱して脱ガス処理を施すことが望ましいが、その際にも低放射層を構成する酸化物半導体膜は特性劣化が生じず、好ましい。
さらに、互いに対向する前記複数のガラスの内、少なくとも1枚のガラスの前記中空層に面する表面に低放射層又は低放射物質を含有した透明フィルムが形成されることにより、或いは低放射層又は低放射物質を含有した透明フィルムが前記ガラスの表面と離間して前記中空層中に配されることにより、より一層の断熱性向上を図ることができる。
また、本発明のガラス物品は、上記冷凍・冷蔵庫用ガラスを含む複数のガラスが前記低放射層側を室温よりも低い低温雰囲気の空間と面するようにして透明樹脂層を介して互いに重ね合わせた所謂合わせガラスとするのも好ましい。
さらに、上述した複層ガラスの中から2枚の複層ガラスを選択し、透明樹脂層を介して前記2枚の複層ガラスを重ね合わせるのも好ましい。
また、上述した複層ガラス及び合わせガラスについても、上記冷凍・冷蔵庫用ガラスと同様、衛生上の観点から抗菌処理を施すのが好ましい。
以上詳述したように本発明に係る冷凍・冷蔵庫用ガラスは、室温より低い低温雰囲気にある空間側のガラス板の表面に酸化物半導体膜からなる低放射層が形成されているので、ガラス窓の断熱性を確保しながら、ガラスの庫内外表面温度を高く保つことができ、透視性を悪化させる庫内外の結露を発生しにくくすることができる。しかも、本発明の冷凍・冷蔵庫用ガラスは、従来のようなヒータ等の余分な電力を使用することもなく、また低放射層としての酸化物半導体膜は、物理的・化学的な耐久性にも優れているため、清掃作業等を容易に行うことができ、低コストでもって使い勝手の向上を図ることができる。
また、上述したように酸化物半導体膜は、物理的・化学的な耐久性の優れており、熱処理を施しても特性劣化が生じないため、成膜後に熱処理を行うことができ、これにより工程全体を簡素化して低コスト且つ迅速に熱処理加工を行うことができる。
また、低放射層とガラス板との間に無機物からなる中間層を介在させることにより、冷凍・冷蔵ショーケース又はシースルー型自動販売機に使用された場合であっても、ニュートラルな反射色調でもって高透視性を保持することができる。
さらに、ケイ素、アルミニウム、及びチタンの1種以上の元素を含む複合酸化物又は混合酸化物を主成分とする表面層が前記低放射層の表面に形成された場合は、表面層が親水・保水機能を有し、水滴が付着してもその接触角を小さくすることができ、したがって水分が表面層に凝結しても結露しにくく透視性が阻害されるのを極力回避することができる。特に、表面層に光触媒活性物質が含まれている場合は、表面の有機汚れを分解して長期間に亙って親水・保水機能を保持することができる。
さらに、本発明の冷凍・冷蔵庫用ガラスを使用した複層ガラス又は合わせガラスは、前記冷凍・冷蔵庫用ガラスが透視性に優れているため、所望の透視性を確保しつつ断熱性能のより一層の向上を図ることができる。
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳説する。
図1は本発明に係る冷凍・冷蔵庫用ガラスの一実施の形態(第1の実施の形態)を模式的に示した断面図である。
同図において、1は、フロート法により製造されたソーダ石灰ガラスを主成分とするガラス基板であって、該ガラス基板1の表面には酸化スズ膜「以下、SnO2膜」という)2が形成され、該SnO2膜2の表面には酸化ケイ素膜(「以下、SiO2膜」という)3が形成され、さらに該SiO2膜3の表面には低放射層としてのSnO2:F膜4が形成され、これらSnO2膜2とSiO2膜3とで中間層5を構成し、該中間層5とSnO2:F膜4とで積層膜6を構成している。
そして、本実施の形態では、膜形成のなされていない面側が室温雰囲気にある庫外(第1の空間)に面し、前記SnO2:F膜4が形成されている面側が室温よりも低温雰囲気にある庫内(第2の空間)に面するようにしてスーパーマーケットやコンビニエンスストア等の冷凍・冷蔵庫にガラス窓として取り付けられる。
上記冷凍・冷蔵庫用ガラスは、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等における冷凍・冷蔵庫に取り付けられて使用される場合は、商品の出入や商品の補充等が頻繁に行われるため、庫外から容易に視認できることが必要であり、そのためには可視光透過率が少なくとも60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上が望ましく、上記ガラス基板1は、少なくとも60%以上の可視光透過率を有する組成のものが選択されて使用される。
また、上記積層膜6の各膜厚は以下のように調整される。
(1)SnO2:F膜4の膜厚
SnO2:F膜4は酸化スズ中にフッ素をドープ(含有)した薄膜であり、酸化スズ中にフッ素をドープすることにより薄膜の導電性が高められ、これにより赤外波長域(5.5μm〜50μm)の光を効果的に反射して断熱性能の向上を図ることができる。また、冷凍・冷蔵庫内部との間での熱伝達においては、放射熱伝達と対流熱伝達とがあるが、SnO2:F膜4は、輻射熱に対する放射率を低下させて放射熱伝達を抑制し、その結果庫内側のガラス表面温度が上昇して結露の発生を防止する作用を有する。そして、低放射性能は、垂直放射率(JIS R3106)により評価することができ、所望の低放射性を確保するためには前記垂直放射率が0.35以下、好ましくは0.25以下、さらに好ましくは0.15以下とするのが望ましい。本実施の形態では、斯かる垂直放射率を得ることのできる範囲としてSnO2:F膜4の膜厚は100nm以上に設定する必要がある。一方、SnO2:F膜4の膜厚は、厚ければ厚いほど放射率を低くできるが、生産設備のコスト上の制約から1000nm以下、好ましくは500nm以下に設定するのが望ましい。
(2)SnO2膜2及びSiO2膜3の膜厚
冷凍・冷蔵庫用ガラスは、可視光透過率が高いだけでなく自然な反射色調を呈するニュートラル系であることが外観上望ましい。すなわち、ガラス窓等の物体の反射色調は、国際照明委員会(CIE)が規定するL*a*b*表色系のクロマティクネス指数a* 、b*により色度図上で定量的に表現することができる(JIS Z8729)。そして、ニュートラル系の反射色調を得るためには、クロマティクネス指数a* 、b*が|a*|≦10、|b*|≦10、より望ましくは|a*|≦5、|b*|≦5であることが好ましい。
しかしながら、SnO2:F膜4のみでは反射色調の調整に制限があり光の干渉によって虹色の反射色を呈する虞がある。
そこで、本実施の形態では、SnO2:F膜4の物理的耐久性を阻害しないような無機物としてのSnO2膜2及びSiO2膜3をガラス基板1とSnO2:F膜4との間に介在させて反射色調がニュートラル系となるように調整することとした。すなわち、ガラス基板1とSnO2:F膜4との間にSnO2膜2及びSiO2膜3を介在させると、該SnO2膜2及びSiO2膜3は屈折率調整層として作用し、これにより冷凍・冷蔵庫用ガラスの反射色調を容易にニュートラル系に調整することができる。
尚、本実施の形態では、中間層5をSnO2膜2及びSiO2膜3からなる二層構造としたが、該中間層5は上述の如く色調調整を行うことを目的として介在させたものであり、したがって、斯かる色調調整が可能であるならば前記二層構造に限定されることはなく、低放射性能を損なわない限り一層構造や三層以上の多層構造としてもよく、或いは特定の膜成分(例えば、SiやSn)を膜中に傾斜状に分布させた傾斜組成層であってもよい。
そして、このように本実施の形態においては、庫内側に面するガラス基板1の表面に低放射層であるSnO2:F膜4を形成しているので、冷凍・冷蔵庫内部の空間とガラスの庫内側表面との間では、輻射熱に対する放射率が低くなり、放射熱伝達が抑制されて対流熱伝達が支配的となり、その結果、ガラス窓の断熱性が向上するのみだけでなく、ガラスの庫内側表面温度が上昇し、これにより、冷凍・冷蔵庫内の商品取出時や商品補充時に庫外雰囲気が庫内に侵入してガラスの庫内側表面に触れたときであっても結露が生じにくくなり、また生じた場合でも短時間で透視性を回復することができる。
しかも、低放射層を構成するSnO2:F膜4は、物理的・化学的な耐久性に優れていることから、耐久性にも優れ且つ清掃作業も容易に行うことができる。
また、本実施の形態では、放射熱伝達が抑制されるため低放射層の表面温度が庫外側のガラス板表面温度に近付くこととなって前記低放射層の表面温度が上昇し、これによっても結露発生が防止され、透過性を損なうのを回避することができる。
また、SnO2:F膜4の表面温度が上昇するため、庫内空間の温度と低放射層の表面温度の差が大きくなって対流熱伝達が生じ易くなり、したがって低放射層表面の空気も入れ替わりやすくなり、一旦結露が生じても短時間で解消することができる。
さらに、本実施の形態では、ガラスの庫内側表面温度の上昇は庫外側の雰囲気温度の影響を受けて生じるものであるため、電力を必要とするヒータ等を使用することもなく経済的であり、省エネルギ化に寄与することができる。
また、本発明の冷凍・冷蔵庫用ガラスをアイスクリーム等のショーケース用ガラス窓として使用する場合は、本発明のガラス自体に開閉機構を付設して前記ショーケースに取り付けるのも好ましく、また本ガラスを窓枠に嵌める場合は、所謂引き違い機構、片引き機構、開き機構等の開閉機構を窓枠に設け、本ガラスを開閉自在にショーケースに取り付けるのも好ましい。
図2は本冷凍・冷蔵庫用ガラスを冷凍・冷蔵庫本体8に取り付けた場合の取付形態の一例を示した図であって、図中、X軸は水平方向、Y軸は鉛直方向を示している。
すなわち、ガラス7は水平であって且つ低放射層4が形成されている積層膜6が下方に向いている場合を基準とし、傾斜角度θで低放射層6が庫内と面するように冷凍・冷蔵庫本体8に取り付けられる。
そして、前記傾斜角度θとしては、図2(a)に示すように、庫外から庫内を見上げるようにガラス7が冷凍・冷蔵庫本体8に取り付けられていても135°以下が望ましく、好ましくは、図2(b)に示すように、60°以下が望ましく、最良の取り付け形態は、図2(c)に示すように、傾斜角度θを0°としてガラス7を水平となるように取り付けた場合である。
すなわち、本発明のガラスを冷凍・冷蔵庫本体8に対し、図2(b)(c)に示すように、斜め上方、又は上方から覗き込める形態で設置した場合は、低放射層であるSnO2:F膜4と冷凍・冷蔵庫内の空間との間では放射熱伝達のみならず対流熱伝達までもが生じにくくなってSnO2:F膜4の表面温度が庫外の室温雰囲気に近付き、これによりSnO2:F膜4の表面温度が高くなって結露の発生をより効果的に防止することができる。
次に、本冷凍・冷蔵庫用ガラスの製造方法を説明する。
上記積層膜6をガラス基板1上に形成して本冷凍・冷蔵庫用ガラスを製造する方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、塗布法等でも可能であるが、フロートガラス製造工程中で容易に成膜でき、大量生産に適し、コスト的にも安価なCVD法で製造のが最も好ましい。
図3はCVD成膜装置を模式的に示した概略構成図であって、該CVD成膜装置は、ガラス基板1を所定温度に加熱するヒータ9と、矢印A方向に搬送されてくるガラス基板1の幅方向を覆うように列設された複数の成膜原料供給部10(本実施の形態では第1〜第5の成膜原料供給部10a〜10e)とを備えている。
そして、該CVD成膜装置においては、所定形状に切断されたガラス基板1がヒータ9により所定の高温に加熱されてメッシュベルト上を搬送され、装置内を通過する間に成膜原料がガラス基板1の表面に供給され、ガラス基板1の有する熱エネルギを介して成膜原料が該ガラス基板1上で熱分解し、所望の薄膜がガラス基板1上に堆積される。例えば、上記図1に示すような積層膜6を作製する場合は、第1の成膜原料供給部10aからは、スズ化合物、酸素、水蒸気、及び窒素からなる混合ガスがガラス基板1の表面に供給されて第1層としてのSnO2膜2が形成され、第2の成膜原料供給部10bからは、ケイ素化合物、酸素、及び窒素がガラス基板1上に供給されて第2層としてのSiO2膜3が形成される。さらに第3の成膜原料供給部10c、必要に応じて第4及び第5の成膜原料供給部10d、10eからは、スズ化合物、酸素、水蒸気、窒素及びフッ素化合物からなる混合ガスが前記ガラス基板1上に供給されて第3層としてのSnO2:F膜4が形成される。すなわち、膜厚の厚い膜形成を行う場合は、上述のように必要に応じ、同一の成膜原料が複数段(例えば、第3〜第5の成膜原料供給部10c〜10eの3段)に分割されて前記ガラス基板1上に供給される。
また、SnO2膜2を成膜する場合のスズ原料としては、モノブチルスズトリクロライド、四塩化スズ、ジメチルスズジクロライド、ジブチルスズジクロライド、ジオクチルスズジクロライド、テトラメチルスズ、テトラブチルスズ、テトラオクチルスズ等のスズ化合物を使用することができ、また酸化原料としては、酸素、水蒸気、乾燥空気等を使用することができる。
さらに、SiO2膜3を成膜する場合のケイ素原料としては、モノシラン、ジシラン、トリシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、1,2−ジメチルシラン、1,1,2−トリメチルジシラン、1,1,2,2−テトラメチルジシラン等のシラン系化合物や、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケート等を使用することができ、また酸化原料としては酸素、水蒸気、乾燥空気、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化窒素、オゾン等を使用することができる。
さらに、SnO2:F膜4を成膜する場合のフッ素化合物としては、トリフルオロアセテート、フッ化水素、ブロモトリフルオロメタン、クロルジフルオロメタン、ジフルオロエタン等を使用することができる。
このように本発明の冷凍・冷蔵庫用ガラスは、フロートガラス製造工程中で容易に成膜することができ、低コストで大量生産することができる。
また、SnO2:F膜4は熱処理にも変質しにくく、強化処理や曲げ加工処理、脱ガス処理等をSnO2:F膜4の形成後に施すことができるので、全体の工程が簡素化され、低コスト且つ迅速に行うことができる。
例えば、熱強化炉等を通してガラスの強度を向上させる場合、低放射層であるSnO2:F膜4を形成した後に熱処理を施すことによりSnO2:F膜4の特性劣化を招来することなく、低コスト且つ迅速に行うことができる。
すなわち、強化ガラスは、一般にヒータ部と風冷部を有する熱強化炉を使用して得られるが、斯かる場合、まず、SnO2:F膜4が形成されたガラスをヒータ部で600℃以上に加熱した後、該風冷部に搬送し、該風冷部ではコンプレッサから常温の圧縮空気を吐出させて該圧縮空気をガラス表面に供給し、これによりガラス表面が冷却されて圧縮応力が発生する。そしてその結果、表面圧縮応力が60MN/m2以上であってJIS R3206に規定する破砕数が40個以上の強化ガラスを低コストでもって迅速に得ることができる。
また、同一の方法でガラスの風冷速度を調整することにより、JIS R3222で規定される表面圧縮応力が20〜60MN/m2の倍強度ガラスを得ることもできる。
同様に、曲げ加工処理を行う場合も、SnO2:F膜4を形成した後に600℃以上で熱処理を行うことにより、SnO2:F膜4の低放射層としての特性を劣化させることなく曲げ加工を行って曲面ガラスを得ることができる。
また、中空層を減圧層とする複層ガラスの作製時等で脱ガス処理を行う場合も、SnO2:F膜4を形成した後に150℃以上で熱処理を行うことにより、SnO2:F膜4の低放射層としての特性を劣化させることなく、所望の脱ガス処理を行うことができる。
また、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等における冷凍・冷蔵庫は、一般に食品の保存陳列用に使用されることが多く、衛生上の観点から大腸菌やO157等の病原菌の繁殖を防止すべく、銀コロイド分散液等の抗菌剤をガラス基板1及びSnO2:F膜4の表面に塗布して抗菌処理を施すのが好ましい。但し、この場合、SnO2:F膜4上の抗菌処理については該SnO2:F膜4の有する低放射機能を損なわないように抗菌処理を施す必要がある。
次に、図4は本発明に係る冷凍・冷蔵庫用ガラスの第2の実施の形態を模式的に示した断面図であって、該第2の実施の形態では上記第1の実施の形態と同様、ガラス基板1の表面にSnO2膜2、SiO2膜3及びSnO2:F膜4が順次形成されると共に、該SnO2:F膜4の表面には光触媒活性層であるTiO2膜11が形成され、該TiO2膜11の表面にはアルミニウム(Al)を含有したSiO2膜(以下、「SiO2:Al膜」という)12が形成され、これらTiO2膜11とSiO2:Al膜とで表面層13を形成し、該表面層13は親水・保水機能を有している。
すなわち、低放射層であるSnO2:F膜4の表面に親水・保水機能を有する表面層13が形成されると、該表面層13に水滴が付着してもその接触角を小さくする作用を有するため、表面層13上に水分が凝結しても結露しにくく、したがって透視性が阻害されるのを回避することができる。しかも、本第2の実施の形態では前記親水・保水機能を有する表面層13に光触媒活性層であるTiO2膜11の層が含まれているので、冷凍・冷凍庫内が蛍光灯等の照明器具で照明されている場合でも本冷凍・冷蔵庫用ガラスの表面の有機汚れを分解し、長期間に亙って親水・保水機能を保持することができる。
そして、斯かる表面層13は、低放射層の高赤外反射性能を損なわないように形成する必要があり、そのためには親水・保水機能と低放射性能のバランスを考慮して可能な限り薄いのが望ましく、表面層13の膜厚は総計で0.5〜1000nm以下、望ましくは0.5〜700nm以下、さらに望ましくは1〜500nm以下、もっと望ましくは1〜300nm以下であることが好ましい。
上記表面層13は、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、塗布法等で製造することができるが、光触媒物質を活性化するためには成膜中又は成膜後に加熱処理を施すのが有効である。
次に、上記スパッタリング法で表面層13を製造する場合について説明する。
図5はSnO2:F膜4の表面に表面層13を膜形成するためのロードロック式インライン型マグネトロンスパッタリング装置(以下、「スパッタリング装置」という)であって、該スパッタリング装置は、ロードロック室15と成膜室16とを有し、さらに該成膜室16には第1及び第2のカソード17、18とヒータ19とが備えられている。
そして、例えば、上記図4に示すような表面層13の膜形成を行う場合は、第1の実施の形態で積層膜6を表面に形成したガラス7がロードロック室15に搬送され、所定圧力まで減圧排気された後、矢印Bに示すように成膜室16に搬送される。そして、成膜室16にはガス供給口20からスパッタリングガスが供給されると共にガラス7は所定温度に加熱され、ターゲット物質であるチタンがセットされた第1のカソード17に所定電圧が印加され、これにより所定の高温下、酸素との間で反応性スパッタリングが引き起こされ、ガラス7が第1のカソード17下を往復運動することにより積層膜6の表面に第4層としてのTiO2膜11が形成される。また、第2のカソード18にはAlが添加されたケイ素がターゲットとしてセットされ、ガラス7はTiO2膜11が形成された後、矢印C方向に搬送され、上述と同様、第2のカソード18の下方を往復運動させ、反応性スパッタリングによりTiO2膜11の表面に第5層としてのSiO2:Al膜12が形成され、これにより表面層13を有する冷凍・冷蔵庫用ガラスを作製することができる。尚、これら表面層13の膜厚は、ガラス7の往復回数と移動速度を調整することにより制御される。
図6は上記冷凍・冷蔵庫用ガラスを使用したガラス物品としての複層ガラスの第1の実施の形態を示す要部断面図であって、該複層ガラスは、積層膜6が形成された冷凍・冷蔵庫用ガラス7とソーダ石灰ガラス等からなるガラス板単体としてのフロート板ガラス27とが、前記積層膜6が外気に晒されるように配置されると共に、その両端近傍には乾燥剤を含有したスペーサ部材21が介装され、さらにブチルゴム等の封着材22により両端が熱融着されて封止されている。そしてこれにより、中空層23が、冷凍・冷蔵庫用ガラス7、フロート板ガラス27、スペーサ部材21及び封着材22により囲繞されて画成されている。
この種の複層ガラスは、従来より、ガラス板単体に比べてより一層の断熱性能を向上させることができるとされており、本発明の冷凍・冷蔵庫用ガラス7を使用することにより、結露発生を防止すると共に、より一層の断熱性能向上を図ることができる。また、中空層23は、断熱性能を高める観点からは、空気層やアルゴンガス等を充満させた断熱ガス層とするのが好ましく、また結露防止の観点からは中空層23は乾燥状態にあることが好ましい。尚、中空層23が乾燥状態を保ち、且つ清浄状態を維持するためには、上述の如く両端が封着材22で完全に封止されるのが好ましいが、封止状態が不完全であったり、中空層23内の気体を置換する装置が付設されていても、複層ガラスの断熱性と透視性に悪影響を及ぼさなければよい。
また、中空層23は所望の断熱性能を確保する観点からは、冷凍・冷蔵庫用ガラス7とフロート板ガラス27との間隔tを4mm以上に設定するのが好ましい。
図7は複層ガラスの第2の実施の形態を示す要部断面図であって、該複層ガラスは、中空層23に接するガラス基板1に低放射コーティングを施し、又は低放射物質を含有した透明フィルムを貼着して低放射層24を形成し、さらに断熱性を高めたものである。
図8は複層ガラスの第3の実施の形態を示す要部断面図であって、該複層ガラスは、前記積層膜6が外気に晒されると共に、中空層23は間隔tが0.2mm〜1mmに設定されると共に所定の減圧状態とされ、さらに両端が低融点ガラス25で封止され、また前記中空層23の適所には冷凍・冷蔵庫用ガラス7とフロート板ガラス27との間隔を調整するための微小スペーサ部材26が配設されている。
このように中空層23を減圧層で構成することによっても、上述と同様の作用・効果を奏することができる。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、所謂合わせガラスについても同様に適用することができる。すなわち、上記冷凍・冷蔵庫用ガラスを1枚以上含む複数のガラスが前記低放射層側を室温よりも低い低温雰囲気の空間と面するようにしてポリビニルブチラール等の透明樹脂を介して互いにガラス同士を貼着し、ガラスが割れた場合の安全性を向上させるようにするのも好ましい。
また、本発明は、2個以上の中空層を有する複層ガラスや、互いに対向しているガラス表面と離間させて中空層中に透明フィルム(低放射物質を含有する場合も含む)を介在させるのも好ましく、更には、複層ガラスと合わせガラスとを組み合わせたガラス物品についても同様に適用することができるのはいうまでもない。
また、上記実施の形態では平面形状のガラス板について説明したが曲面形状のガラス板の場合も同様に適用することができる。
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
[第1の実施例]
本発明者は、厚さ3mmのフロート板ガラスを洗浄して乾燥し、該フロート板ガラスをガラス基板1として、CVD成膜装置(図3参照)を使用して該ガラス基板1に積層膜6を形成した。すなわち、ガラス基板1を大気開放型のメッシュベルトで搬送し、ヒータ9によりガラス基板1の表面温度を約650℃に加熱し、この後ガラス基板1が成膜原料供給部10の下方を通過する間に該成膜原料供給部10から所定の成膜原料をガラス基板1上に供給し、ガラス基板1上で化学反応を起こさせて固相を析出させ、SnO2膜2、SiO2膜3、及びSnO2:F膜4をガラス基板1上に順次積層し、これにより膜構成がガラス基板1/SnO2膜2/SiO2膜3/SnO2:F膜4(図1参照)の試験片(実施例1〜実施例3)を作製した。
具体的には、スズ原料としてモノブチルスズトリクロライド(以下、「MBTC」という)を使用し、該MBTCを150℃に加熱して該MBTCの蒸気を窒素1モル当たり0.001モルの濃度で窒素を搬送ガスとして搬送し、第1の成膜原料供給部10aに供給すると共に、該第1の成膜原料供給部10aに酸化ガスとしての酸素を別系統から供給し、ガラス基板1上で熱分解反応及び酸化反応を生じさせてガラス基板1上に膜厚25nmのSnO2膜2を積層し、第1層を形成した。次にケイ素原料としてモノシランを使用し、モノシランガスをボンベから直接第2の成膜原料供給部10bに供給し、酸化ガスとしての酸素を上記SnO2膜2の成膜と同様、別系統から成膜原料供給部10bに供給し、SnO2膜2上で熱分解反応及び酸化反応を生じさせて該SnO2膜2上に膜厚25nmのSiO2膜3を積層し、第2層を形成した。次いで、スズ原料としてMTBC、フッ素原料としてトリフルオロアセテートを使用し、第3〜第5の成膜原料供給部10c〜10eから成膜原料を噴射させてSiO2膜3上に膜厚350nmのSiO2:F膜4を積層し、第3層を形成した。すなわち、SiO2:F膜4の膜厚は350nmと厚いため、成膜原料のSiO2膜3上への供給を複数段に分割して行った。具体的には、MBTCを約150℃に加熱して該MBTCの蒸気を窒素1モル当たり0.01モルの濃度で窒素を搬送ガスとして搬送すると共に、MTBCの分解促進のために水蒸気を窒素1モル当たり5モルの濃度で窒素を搬送ガスとして搬送し、またトリフルオロアセテートを約150℃に加熱して該トリフルオロアセテートの蒸気を窒素を搬送ガスとして別系統から搬送し、MTBCの蒸気、水蒸気及びトリフルオロアセテートの蒸気を前記第3〜第5の成膜原料供給部10c〜10eに供給し、さらにこれら第3〜第5の成膜原料供給部10c〜10eには酸化ガスとしての酸素を別系統から供給した。そして、これらMTBCの蒸気、トリフルオロアセテートの蒸気、水蒸気、酸素をSiO2膜3上に供給して熱分解反応及び酸化反応を生じさせ、該SiO2膜3上にSiO2:F膜4を積層し、第3層を形成した(実施例1)。
次に、本発明者等は、SiO2:F膜4の膜厚のみが異なる本発明の冷凍・冷蔵庫用ガラスを作製した。
すなわち、上記実施例と同様の方法でガラス基板1上にSnO2膜2、SiO2膜3を順次積層した後、第3の成膜原料供給部10cからMTBCの蒸気、トリフルオロアセテートの蒸気、水蒸気、酸素をSiO2膜3上に供給して熱分解反応及び酸化反応を生じさせ、該SiO2膜3上に膜厚120nmのSiO2:F膜4を積層し、第3層を形成した(実施例2)。
同様に、ガラス基板1上にSnO2膜2、SiO2膜3を順次積層した後、第3及び第4の成膜原料供給部10c、10dからMTBCの蒸気、トリフルオロアセテートの蒸気、水蒸気、酸素をSiO2膜3上に供給して熱分解反応及び酸化反応を生じさせ、該SiO2膜3上に膜厚240nmのSiO2:F膜4を積層し、第3層を形成した(実施例3)。
次に、本発明者等は、上記試験片(実施例1〜実施例3)を開閉自在な垂直扉のガラス窓としてSiO2:F膜4を庫内側に面させて冷凍庫に取り付け、庫内温度−20℃、庫外温度20℃の下、SiO2:F膜4側の表面温度(以下、「庫内表面温度」という)及びガラス基板1側の表面温度(以下、「庫外表面温度」という)を測定し、さらに断熱性能の尺度となる熱貫流率をJIS A4710に準拠して測定した。但し、恒温室側加熱箱内及び低温室側共、気流撹拌装置を使用することなく、自然対流とした。
また、本発明者等は、フロート板ガラス単体を上記冷蔵庫に取り付けたものを比較例1とし、さらに上記実施例1の試験片についてSiO2:F膜4を庫外側に面させて冷凍庫に取り付けたものを比較例2とし、上述と同様、庫内温度−20℃、庫外温度20℃の下、庫内表面温度、庫外表面温度及び熱貫流率を測定した。
尚、表面温度は、ガラス面及び低放射層の放射率で補正した赤外放射温度を使用して測定した。
また、冷凍・冷蔵庫用ガラスは透視性の優れていることが必要とされることからJIS R3106に準拠して可視光透過率を測定し、さらに、低放射性能の尺度となる垂直放射率をJIS R3106に準拠して測定した。
表1は各実施例及び各比較例の測定結果を示している。
Figure 2005289802
この表1から明らかなように、比較例1はフロート板ガラス単体であるため、庫内表面温度が0.5℃、庫外表面温度が1.1℃と低く、また低放射層が形成されていないため、熱貫流率も4.6(W/m2・K)と高く、また、比較例2は低放射層(SiO2:F膜4)が形成されているため、熱貫流率は3.6(W/m2・K)と低くなって断熱性能は向上しているものの、庫内表面温度が−3.2℃、庫外表面温度が−2.7℃と低く、結露の生じ易い状況になっている。
これに対して、実施例1〜実施例3は庫内表面温度が2.6℃〜3.8℃、庫外表面温度が3.3℃〜4.3℃と比較例1、2に比べて庫内外の表面温度が高く、窓ガラスに曇りが生じたり結露が発生するのを生じにくくすることができ、外部から冷凍・冷蔵庫内部へ透視性を損なうのを回避することができることが確認された。しかも、熱貫流率も3.7〜4.0(W/m2・K)であり、所望の断熱性能を確保することもできる。
また、実施例1〜実施例3は可視光透過率も80%以上であり、充分な透視性を確保することができると共に、垂直放射率も0.35以下であり、したがって庫内との間での放射熱交換が抑制されて輻射熱に対する放射率が低くなり、表面温度の上昇に寄与していることが判る。
尚、反射色調はニュートラル系であることが好ましいとされることから、実施例1について、JIS R3106に準拠して薄膜面側からの反射率スペクトルを測定し、JIS Z8729に準拠してクロマティックネス指数a*、b*を算出し、反射色調を評価した。その結果、クロマティクネス指数a*、b*は夫々「−1.5」、「−1.0」であり、したがって|a*|≦5、|b*|≦5の範囲内にあり、ニュートラル系の反射色調を有することが確認された。
尚、表1から明らかなように、実施例1〜実施例3については、SiO2:F膜4の膜厚は厚い方がより一層輻射熱に対する放射率を低くすることができるため、結露防止に効果的であることが判った。
[第2の実施例]
次に、本発明者等は、上述した実施例1と同一膜構成の試験片を使用して熱処理を行い、強化ガラスを作製した。
具体的には、対流加熱を強化するために熱強化炉のヒータ部で上部流入エア量を調節して試験片を加熱温度640℃で加熱し、次いで風冷部ではコンプレッサから常温の圧縮空気を前記試験片に供給し、表面圧縮応力が80MN/m2の外観上も歪みの存在しない良好な強化ガラスを作製した。
尚、JIS R3206では、厚さ3mmのガラス板については強化ガラスの規定はないが、本実施例ではJIS R3206で規定する方法で破砕数が40個以上であり、強化ガラスとしての特質を有すると判断した。
そして、該強化ガラスの可視光透過率、及び垂直放射率を測定したところ、夫々83%、0.13であり、熱処理の前後で変化はなかった。
すなわち、本発明の冷凍・冷蔵庫用ガラスは、熱処理を施しても性能的に何ら損なわれることなく、したがって断熱性能に優れ透視性を損なうことのない強化ガラスを得ることができることが確認された。
尚、上記可視光透過率及び垂直放射率を算出するための測定器具は第1の実施例と同様の測定器具を使用した。
[第3の実施例]
次に、本発明者等は、上述した実施例1と同一膜構成の試験片を使用して抗菌処理を施した。
すなわち、本試験片を約300℃に加熱し、銀コロイドの分散液(濃度0.1%)を本試験片の両面に撒布して抗菌処理を施した。
そして、上述の如く抗菌処理された本第3の実施例の試験片について、抗菌製品技術協議会が提唱している抗菌力試験法I(1998年度版)のフィルム密着法を、ガラス向けにフィルム「無し」で滴下量0.1mlに変更して適用したところ試験片の両面共、抗菌性が認められた。
また、本第3の実施例の試験片について、可視光透過率、及び垂直放射率を測定したところ、夫々83%、0.13であり、また反射色調については、クロマティクネス指数a*、b*が夫々「−1.5」、「−1.0」であり、抗菌処理の前後で変化はなかった。
尚、上記可視光透過率、垂直放射率、及び反射色調を算出するための測定装置は第1の実施例と同様の測定装置を使用した。
次に、本発明者等は、該第3の実施例の試験片を開閉自在な垂直扉のガラス窓としてSiO2:F膜4を庫内側に面させて冷凍庫に取り付け、庫内温度−5℃、庫外温度20℃の下、庫内表面温度、庫外表面温度、熱貫流率を測定したところ、夫々10.1℃、10.4℃、3.4(W/m2・K)であり、充分な断熱性能を有すると共に、透視性を悪化させる庫内外の結露の発生を防止することができることが判った。
尚、庫内表面温度、庫外表面温度、及び熱貫流率の測定は、第1の実施例と同様の測定装置を使用した。
[第4の実施例]
次に、本発明者等は、図2(b)に示すように、水平方向に対し20°(=θ)傾斜した冷凍・冷蔵庫本体8の上面に上げ下げ扉用ガラスとして本発明のガラス及びフロート板ガラスを取り付けて透視性を確認した。
すなわち、上げ下げ扉用ガラスの一方のガラスに実施例1と同一膜構成を有する試験片を使用し、他方のガラスにフロート板ガラス単体を使用し、前記試験片についてはSiO2:F膜4を庫内側に面させて冷凍・冷蔵庫本体8に取り付けた。
そして、庫内温度を−30℃、庫外雰囲気温度を20℃に設定し、商品を庫内に入れて上げ下げ扉の開閉試験を行なったところ、上げ下げ扉の開閉によってフロート板ガラス単体には曇りが発生して内部の商品の視認性が悪化したのに対し、本発明の試験片は僅かな曇りしか発生せず、視認性に影響を及ぼさず、したがって透視性を損なわないことが確認された。
[第5の実施例]
次に、本発明者等は、スパッタリング装置(図5参照)を使用し、実施例1と同一膜構成の試験片の表面に表面層13を積層し、膜構成がガラス基板1/SnO2膜2/SiO2膜3/SnO2:F膜4/TiO2膜11/SiO2:Al膜12(図4参照)の試験片(実施例11)を作製した。
すなわち、実施例1と同一膜構成を有するガラス7を洗浄し、ロードロック室15で所定圧力まで減圧排気した後、矢印Bに示すように成膜室16に搬送した。そして、成膜室16の圧力が0.3Paとなるようにガス供給口20から酸素を供給すると共に、ガラス7をヒータ19で約350℃に加熱し、次いでターゲット物質であるチタンをセットした第1のカソード17に直流電圧440Vを印加し、これにより酸素との間で反応性スパッタリングを引き起こし、ガラス7が第1のカソード17下を往復運動することによってSnO2:F膜4の表面に膜厚250nmのTiO2膜11を積層し、第4層を形成した。次いで、ヒータ19の電源をオフした後、10wt%のAlが添加されたケイ素をターゲットとしてセットした第2のカソード18を使用し、上述と同様の反応性スパッタリングを引き起こし、試験片が第2のカソード18の下方を往復運動することにより、膜厚10nmのSiO2:Al膜12を積層し、第5層を形成した(実施例11)。
得られたガラスを、第1の実施例と同様の方法で垂直放射率を測定し、さらに水滴接触角の測定、及び光触媒活性試験を行った。
そしてその結果、垂直放射率は、実施例1と同様、0.13であり、したがって表面層13を形成したことによる性能劣化は認められなかった。また、水滴接触角も5°と小さな値であることができることが確認された。さらに、光触媒活性試験は、表面層13の表面にトリオレインを塗布して紫外線を照射することにより行ったが、良好な結果が得られた。
次に、本発明者等は、本試験片(実施例11)を冷凍庫の垂直方向に設置される両開き扉のガラス窓として使用した場合の透視性を確認した。
すなわち、両開き扉用ガラスの一方のガラス窓に実施例11の試験片を使用し、他方のガラス窓には比較例としてのフロート板ガラス単体を使用し(比較例11)、前記試験片については表面層13を庫内側に面させて冷凍庫本体に取り付けた。
そして、庫内温度を−20℃、庫外雰囲気温度を20℃に設定し、冷蔵庫内部は蛍光灯を9時から20時まで点灯し、30日間、扉の開閉を定期的に行うことにより扉の開閉試験を行なった。
表2は実施例11及び比較例11の測定結果である。
Figure 2005289802
この表2から明らかなように、扉の開閉によってフロート板ガラス単体には曇りが発生して透視性が低下し、開閉試験の結果が悪かったのに対し、実施例11は試験期間中(30日間)、全く曇りが発生せず、良好な結果を得た。
これにより冷凍・冷蔵庫内を蛍光灯等で照明しても表面の有機汚れを分解して長期間に亙って親水・保水機能を維持することができることが確認された。
[第6の実施例]
次に、本発明者は、実施例1の試験片を使用して3種類の異なる複層ガラス(実施例21〜実施例23)を作製した。
すなわち、上記図6に示すように、実施例1の試験片である本発明の冷凍・冷蔵庫用ガラス(以下、「本発明ガラス」という)7とソーダ石灰ガラスからなるフロート板ガラス27とを使用し、試験片の積層膜6の形成面が外方に位置するように本発明ガラス7とフロート板ガラス27とを対向配置し、中空層23に空気を充填した複層ガラスを作製した。尚、中空層23の間隔tはアルミニウム製のスペーサ部材21により12mmとなるように調整した(実施例21)。
次いで、上述と同様、本発明ガラス7とフロート板ガラス27とを使用し、中空層23に断熱ガスとしてのアルゴンガスを封入した複層ガラスを作製した。尚、アルゴンガスの導入は、アルミニウム製のスペーサ部材21に2個の孔を貫設し、一方の孔からボンベでアルゴンガスを中空層23に供給し、アルゴンガスの供給開始から1時間後に前記2個の孔を封止材で封止することにより中空層23内部の気体をアルゴンガスと置換した。また、中空層23の間隔tは前記スペーサ部材21により6mmとなるように調整した(実施例22)。
次に、上記図8に示すように、本発明ガラス7とフロート板ガラス27とを使用し、試験片の積層膜6の形成面が外方に位置するように本発明ガラス7とフロート板ガラス27とを対向配置すると共に、金属製の微小スペーサ部材26を本発明ガラス7とフロート板ガラス27との間に挟持させて中空層23の間隔tを0.2mmに調整し、低融点ガラス25で上下両端を封止した。すなわち、フロート板ガラス27に小孔を設け、約350℃に加熱して低融点ガラス25を融着させた後、本発明ガラス7とフロート板ガラス27とを約250℃に加熱し、中空層23を減圧状態とした後、封じ切り、中空層23を減圧層とした。尚、減圧層の圧力は1Pa以下であった(実施例23)。
次に、本発明者等は、上記各実施例の試験片の可視光透過率を測定した後、該試験片を開閉自在な垂直扉のガラス窓として本発明ガラス7を庫内側に面させて冷凍庫に取り付け、庫内温度−20℃、庫外温度20℃の下、庫内表面温度、庫外表面温度、及び熱貫流率を測定した。
また、2枚のフロート板ガラスを使用して上述と同様、中空層23を夫々空気層、アルゴンガス層、減圧層とした比較例を作製し(比較例21〜比較例23)、上述と同様、垂直扉のガラス窓として冷凍庫に取り付け、上記実施例21〜23と同様の測定を行った。尚、測定は、第1の実施例と同様の装置を使用して行った。
表3は、各実施例及び比較例の測定結果を示している。
Figure 2005289802
この表3から明らかなように、比較例21〜比較例23は可視光透過率は80%以上であり、熱貫流率も2.5(W/m2・K)以下であるため断熱性能には優れているが、低放射層が形成されていないため、庫内外の表面温度が低く、ガラスに曇りが生じたり結露が発生し易く、透視性を損なう。
これに対し、実施例21〜実施例23は、低放射層が形成されているため、比較例21〜比較例23と比べ、断熱性能に優れ、また庫内外の表面温度も高く、透視性が損なわれるのを極力回避することができることが確認された。
本発明に係る冷凍・冷蔵庫用ガラスの一実施の形態を模式的に示した断面図である。 本発明の冷凍・冷蔵庫用ガラスの冷凍・冷蔵庫本体への取付状態の一例を示す図である。 CVD成膜装置を模式的に示した概略構成図である。 本発明に係る冷凍・冷蔵庫用ガラスの第2の実施の形態を模式的に示した断面図である。 スパッタリング装置を模式的に示した概略構成図である。 本発明に係るガラス物品の第1の実施の形態を模式的に示した断面図である。 本発明に係るガラス物品の第2の実施の形態を模式的に示した断面図である。 本発明に係るガラス物品の第3の実施の形態を模式的に示した断面図である。
符号の説明
1 ガラス基板(ガラス板)
4 SnO2:F膜(酸化物半導体膜)
5 中間層
11 TiO2膜(光触媒活性層)
13 表面層
23 中空層

Claims (23)

  1. 室温雰囲気にある第1の空間と室温より低い低温雰囲気にある第2の空間とを仕切る冷凍・冷蔵庫用ガラスであって、
    前記第2の空間側のガラス板の表面に酸化物半導体膜からなる低放射層が形成されていることを特徴とする冷凍・冷蔵庫用ガラス。
  2. 前記酸化物半導体膜は、フッ素を含有した酸化スズ膜であることを特徴とする請求項1記載の冷凍・冷蔵庫用ガラス。
  3. 前記ガラス板と前記低放射層との間に1層以上の無機物からなる中間層が介在されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の冷凍・冷蔵庫用ガラス。
  4. 前記低放射層が形成された後に所定温度でもって所定の熱処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の冷凍・冷蔵庫用ガラス。
  5. ケイ素、アルミニウム、及びチタンのうちの1種以上の元素を含む複合酸化物又は混合酸化物を主成分とする表面層が前記低放射層の表面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の冷凍・冷蔵庫用ガラス。
  6. 前記表面層の膜厚は0.5nm〜1000nmであることを特徴とする請求項5記載の冷凍・冷蔵庫用ガラス。
  7. 前記表面層には光触媒活性物質が含まれていることを特徴とする請求項5又は請求項6記載の冷凍・冷蔵庫用ガラス。
  8. 前記第1の空間に対する面と前記第2の空間に対する面の少なくともいずれか一方の表面に所定の抗菌処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の冷凍・冷蔵庫用ガラス。
  9. 可視光透過率が60%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の冷凍・冷蔵庫用ガラス。
  10. 可視光透過率が70%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の冷凍・冷蔵庫用ガラス。
  11. 可視光透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の冷凍・冷蔵庫用ガラス。
  12. 前記低放射層の垂直放射率が0.35以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の冷凍・冷蔵庫用ガラス。
  13. 前記低放射層の垂直放射率が0.25以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の冷凍・冷蔵庫用ガラス。
  14. 前記低放射層の垂直放射率が0.15以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の冷凍・冷蔵庫用ガラス。
  15. ガラス面を水平とし且つ前記低放射層が鉛直方法下面に施されている状態を基準として傾斜角度が0〜135°となるように冷凍・冷蔵庫本体に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の冷凍・冷蔵庫用ガラス。
  16. 前記傾斜角度が0°〜60°であることを特徴とする請求項15記載の冷凍・冷蔵庫用ガラス。
  17. 請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の冷凍・冷蔵庫用ガラスを含む複数のガラスが前記低放射層側を室温よりも低い低温雰囲気の空間と面するようにして対向配置されると共に、これら複数のガラス間に中空層が形成されていることを特徴とするガラス物品。
  18. 前記中空層は、空気層、断熱ガス層、又は減圧層のいずれかであることを特徴とする請求項17記載のガラス物品。
  19. 互いに対向する前記複数のガラスの内、少なくとも1枚のガラスの前記中空層に面する表面に低放射層又は低放射物質を含有した透明フィルムが形成されていることを特徴とする請求項17又は請求項18記載のガラス物品。
  20. 低放射層又は低放射物質を含有した透明フィルムが前記ガラスの表面と離間して前記中空層中に配されていることを特徴とする請求項17乃至請求項19のいずれかに記載のガラス物品。
  21. 請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の冷凍・冷蔵庫用ガラスを含む複数のガラスが前記低放射層側を室温よりも低い低温雰囲気の空間と面するようにして透明樹脂層を介して互いに重ね合わせられていることを特徴とするガラス物品。
  22. 請求項17乃至請求項20のいずれかに記載の2枚のガラス物品が透明樹脂層を介して重ね合わせられていることを特徴とするガラス物品。
  23. 前記第1の空間に対する面と前記第2の空間に対する面の少なくともいずれか一方の表面に所定の抗菌処理が施されていることを特徴とする請求項17乃至請求項22のいずれかに記載のガラス物品。
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