JP2005288604A - 中ぐり加工装置 - Google Patents

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政治 鈴木
Takashi Seto
敬 瀬戸
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Abstract

【課題】 圧電素子を用いて工具を半径方向に往復移動させる中ぐり加工装置において、加工時の偏心質量を最小化することによってより精度の高い非真円加工を可能にする中ぐり加工装置を提供する。
【解決手段】 工具ホルダ20の内部には、中ぐり工具22を半径方向に往復移動させるための圧電素子24が、工具ホルダ20の内部に工具ホルダ20と同軸に配置される。圧電素子24の自由端部24bには、自由端部の軸方向の変位を中ぐり工具22の半径方向の変位に変換するキー28が取付けられる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、軸方向断面が非真円の中ぐり加工が可能な中ぐり加工装置に関する。
近年の中ぐり加工においては、軸方向断面が真円である一般的な孔加工に加え、軸方向断面が非真円であるか又はそれに加えてその断面が軸方向に一定でない孔加工が要求される場合がある。例えば、内燃機関用のシリンダーにおいては、動作時に生じる熱膨張のばらつきを考慮して、内燃機関の稼動時にシリンダーが真円筒となるように、軸方向断面が非真円でありかつその断面が軸方向に一定でないシリンダー形状が望ましいとされる。このような加工を行うためには、加工される孔の径方向に工具を変位させることが可能な偏心加工装置を用いることが一般的である。
上述のような偏心加工においては、工具又は工具ホルダが1回転する間に少なくとも1回工具を加工される孔の半径方向に変位(すなわち出し入れ)させる必要がある。一般的な偏心加工装置は、その出し入れを主軸と工具ホルダとの間に設けられた弾性変形体をばね又は油圧で変形させて行うが、これらの方法は応答性があまり高くなく、故に1000rpm以上の高速回転での加工には不適である。従って偏心加工装置を使用すると加工時間が長くなり、生産性やコスト面で不利であった。このような欠点を解消するものとして、例えば特許文献1には、電圧の印加により変形する圧電素子を用いた中ぐり加工装置が開示されている。この装置は、主軸に取付けられる弾性変形体と、弾性変形体の内部に設けられる圧電素子と、弾性変形体の先端に取付けられる工具ホルダと、工具ホルダに取付けられる中ぐり工具とを有し、加工中に圧電素子に短周期で電圧印加して圧電素子を変形させることにより、弾性変形体を変形させて工具ホルダ及び中ぐり工具を短周期で変位すなわち偏心往復移動させるものである。印加に対する圧電素子の変形は、偏心加工装置による工具の変位に比べ高精度でありかつ応答性も高いので、より高精度かつ高速な非真円の孔加工が可能になる。
特開平11−179605号公報
しかし特許文献1の装置においては、主軸高速回転時の回転部分の偏心質量が相当に大きくなる。すなわち、圧電素子が印加されているときは、比較的大きな構成要素である弾性変形体、圧電素子自体、工具ホルダ及び中ぐり工具の全てが半径方向に変形して偏心質量を有することになり、全体として大きな偏心質量となる。この大きな偏心質量は、中ぐり工具の変位の精度に悪影響を与える場合がある。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧電素子を用いて工具を偏心移動させる中ぐり加工装置において、加工時の偏心質量を最小化することによってより精度の高い非真円加工を可能にする中ぐり加工装置を提供することである。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、工具ホルダと、前記工具ホルダの軸方向に略垂直な半径方向に往復移動可能に保持される工具と、前記工具の半径方向位置を前記工具ホルダの回転位置に応じて変化させるための圧電素子とを有する中ぐり加工装置であって、前記圧電素子は、電圧の印加によって前記工具ホルダの軸方向に変形可能であるとともに、前記工具ホルダ内に前記工具ホルダと同軸に配置され、前記圧電素子の前記軸方向の変形を前記工具ホルダの半径方向の前記工具の移動に変換する伝達手段を有することを特徴とした中ぐり加工装置を提供する。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の中ぐり加工装置において、前記工具は、前記半径方向にのみ移動可能に保持されるとともに前記工具ホルダの中心軸に対して傾斜した方向に延びるキー溝を有し、前記伝達手段は、前記工具の前記キー溝内を遊びなく摺動する係合面を有するキーで成る中ぐり加工装置を提供する。
本発明に係る中ぐり加工装置により、圧電素子を用いた偏心加工において生じ得る偏心質量が極めて小さく、加工精度に実質的に影響しない中ぐり加工装置が提供される。
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明に係る中ぐり加工装置10が有する主軸頭12の主軸14及びそこに取付けられる工具ホルダ20の軸方向の部分断面図である。なお中ぐり加工装置10の図示されていない部分については、通常の中ぐり加工装置と同様であってよい。工具ホルダ20は、図示されるように、通常は工具ホルダ20の軸方向に略垂直な半径方向にのみ、工具ホルダ20に往復移動可能に保持される中ぐり工具22を有する。工具ホルダ20の内部には、中ぐり工具22を往復移動させるための圧電素子24が、工具ホルダ20と同軸に配置される。圧電素子24は、工具ホルダ20に取付けられた一般的なスリップリング26を介して、中ぐり加工装置10の主軸頭12に設けられたコネクタ16に電気的に接続される。この際、スリップリング26からコネクタ16への配線は、主軸頭12に係合して回り止めされるハウジング18内を通ることが好ましい。また工具ホルダ20は、図示しない自動工具交換装置によって、主軸14と工具マガジンとの間で自動交換される。
圧電素子24は、略円筒形状を有する種類のものが好ましく、工具ホルダ20と同軸、すなわちその中心軸が工具ホルダ20の中心軸に一致するように、工具ホルダ20の内部に配置される。圧電素子24の一方の端部すなわち固定端部24aは、ねじ止め等により工具ホルダ20の内部に固定される。圧電素子24の他方の端部すなわち自由端部24bは、自由端部24bの軸方向の変位を中ぐり工具22の半径方向の変位に変換する伝達手段すなわちキー28を有する。圧電素子24への電圧の印加は、上述のスリップリング26によって行うことができ、電圧印加時は圧電素子24が変形して、圧電素子24の自由端部24bが軸方向(図1の左右方向)に変位する。
圧電素子24の自由端部24bの変位に伴い、キー28も工具ホルダ20の軸方向に変位する。ここで図2(a)及び(b)に示されるように、中ぐり工具22は工具ホルダ20の中心軸に傾斜する方向に延びるキー溝22aを有し、さらにキー28は、中ぐり工具22のキー溝22aに密接に係合し、キー溝22a内を遊びなく摺動することができる係合面28a及び28bを備える。
上述のように中ぐり工具22は、半径方向すなわち工具ホルダ20の軸方向に垂直な一方向にのみ可動であるように工具ホルダ20に取付けられるので、図2(a)に示されるようにキー28が圧電素子24への印加によって中ぐり工具22側(図2(a)においては右側)に変位したときは、キー28の一方の係合面28aが中ぐり工具22のキー溝22a内を摺動しつつ溝22aを下方に押すように作用し、中ぐり工具22は工具ホルダ20の軸方向に垂直な方向であってその刃先が径方向外側(図1においては下方向)に向かう方向に変位する。次に、圧電素子24が印加されなくなったときは、図2(b)に示されるように、キー28が主軸14側(図2(b)においては左側)に変位し、キー28の他方の係合面28bが中ぐり工具22のキー溝22a内を摺動しつつ溝22aを上方に押すように作用するので、それに伴って中ぐり工具22は工具ホルダ20の軸方向に垂直な方向であってその刃先が径方向内側(図1においては上方向)に変位することができる。電圧印加に対する圧電素子の変形応答性は非常に高いので、圧電素子24への電圧印加の入り切り(すなわち図2(a)及び(b)の状態の切替)を主軸14の回転位置に応じて短周期で行うことにより、断面が非真円かつその断面が軸方向に一定でない孔加工を、例えば8,000〜12,000rpmの高速でかつ高精度に行うことができる。なお圧電素子24への電圧印加の入り切りは、例えば、図示されていない加工装置10の制御装置により行うことができる。主軸14の回転位置の検出は、主軸モータのロータリーエンコーダ等で行う。
中ぐり加工中は、工具ホルダ20と同軸に配置された圧電素子24は軸方向にのみ変形するので、偏心加工時に圧電素子24による偏心質量は生じない。また、圧電素子24への電圧印加によるキー28の移動方向も軸方向のみであるので、キー28も偏心質量を生じさせない。従って、偏心加工時に偏心質量を生じさせるものは中ぐり工具22のみである。しかし中ぐり工具22の変位量は、例えば、直径80mmの孔加工において多くとも0.2mm程度であることから、中ぐり工具22の変位による偏心質量すなわち回転不釣合量は極めて小さい。従って工具ホルダ20の回転による振動は小さく、この偏心質量は加工精度に実質的に影響せず、高速かつ高精度な偏心加工が可能になる。しかし、極めて高精度の加工等においてこの中ぐり工具22の僅かな偏心質量が問題となり得る場合は、中ぐり工具22が変位したときにその変位方向と半径方向逆方向に変位する部材(図示せず)を別途圧電素子24又はキー28に設けることにより、中ぐり工具22の偏心質量を打ち消す偏心質量を生じさせることもできる。
キー28は、中ぐり工具22の偏心をさらに高精度にする機能も有する。すなわち、キー28及び中ぐり工具22の係合面28a、28b及び22aの軸方向に対する傾斜角度を小さくすることにより、キー28の軸方向移動量に対する中ぐり工具22の径方向移動量の比率を小さくすることができる。このことにより、中ぐり工具22の偏心移動量のより高精度な制御が可能になる。このように、係合面28a、28b及び22aの軸方向に対する傾斜角度を変化させることにより、キー28の軸方向移動量に対する中ぐり工具22の径方向移動量の比率を適宜調節することができる。
本発明に係る中ぐり加工装置の部分図である。 (a)図1の中ぐり加工装置の工具ホルダ内に配置されるキー及び工具の係合状態を示す拡大図であって、工具が偏心している状態を示す図であり、(b)工具が偏心していない状態を示す図である。
符号の説明
10…中ぐり加工装置
12…主軸頭
14…主軸
16…コネクタ
18…ハウジング
20…工具ホルダ
22…中ぐり工具
22a…キー溝
24…圧電素子
26…スリップリング
28…キー
28a、28b…係合面

Claims (2)

  1. 工具ホルダと、前記工具ホルダの軸方向に略垂直な半径方向に往復移動可能に保持される工具と、前記工具の半径方向位置を前記工具ホルダの回転位置に応じて変化させるための圧電素子とを有する中ぐり加工装置であって、
    前記圧電素子は、電圧の印加によって前記工具ホルダの軸方向に変形可能であるとともに、前記工具ホルダ内に前記工具ホルダと同軸に配置され、前記圧電素子の前記軸方向の変形を前記工具ホルダの半径方向の前記工具の移動に変換する伝達手段を有することを特徴とした中ぐり加工装置。
  2. 前記工具は、前記半径方向にのみ移動可能に保持されるとともに前記工具ホルダの中心軸に対して傾斜した方向に延びるキー溝を有し、前記伝達手段は、前記工具の前記キー溝内を遊びなく摺動する係合面を有するキーで成る請求項1に記載の中ぐり加工装置。
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