JP2005288224A - 親水性活性炭、及びこれを用いた吸着ヒートポンプ - Google Patents

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昌信 架谷
Atsuyuki Kobayashi
敬幸 小林
Fujio Watanabe
藤雄 渡辺
Mitsuhiro Kubota
光宏 窪田
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Abstract

【課題】吸着機能を向上させた吸着材を提供し、より少ない吸着材で作動可能な吸着ヒートポンプを提供する。
【解決手段】ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、ポリイミドなどの樹脂をKOH、NaOHなどの低温薬品賦活(薬品の種類;水酸化カリウムなど、原料に対する薬品量(薬品の重量/原料プラスチックの重量(重量比R);1〜4、賦活温度;678〜873K)によって得られる活性炭は、相対水蒸気圧φが0.05〜0.40の範囲で優れた吸着性を示す。さらにこの活性炭に、酸(硝酸:濃度1〜13mol/l、過酸化水素;濃度20〜60wt%)処理を行い(処理時間:12〜24h)、水洗・乾燥工程を経て酸処理活性炭を得る。
【選択図】図1

Description

本発明は、親水性活性炭及びこれを用いた吸着ヒートポンプ並びにデシカント空調機に関するものである。
水蒸気を作動媒体とする吸着ヒートポンプ用の吸着材として、従来、シリカゲル、ゼオライトがその対象として考えられている。しかしそれらの場合、吸着ヒートポンプの代表的な動作条件である水蒸気相対圧φ0.1〜0.85の範囲の吸着容量△q値はシリカゲルで0.12kg/kg程度、ゼオライトでは0.03kg/kg程度である。最近、吸着ヒートポンプ用としてメソポーラスシリカが開発されており、その△qは最大0.2kg/kg程度であることが報告されている。しかし、さらにより高吸着性を示す吸着材が求められている。
吸着ヒートポンプは80℃程度以下の低温排熱を回収・高レベル変換できる熱機関である。作動媒体には水、アルコール、アンモニアなどを用い、吸着材としてシリカゲル、ゼオライト、活性炭など無害の化学物質を用いることができ、いわゆるノンフロン型の環境調和型低温熱エネルギー機器として機能する。しかし、とくに吸着材の汲み上げ熱量が小さいこと、つまり△qが小さいことが装置容積を大きくする最大の原因となり、汎用的実用化が遅れていた。
そこで、本願発明者の架谷らは、相対水蒸気圧が0.05〜0.40の範囲で優れた吸着性を示す炭素系の吸着材を開発した(特許文献1を参照されたい。)。これは、プラスチックを改質して作製した活性炭であり、プラスチックを原料とする低温薬品賦活法によって得られる活性炭はそれ自体疎水性であるが、小孔径の細孔を多量に有し、これによって吸着機能を顕著に向上させたものである。
特開2002−235965号(図1、段落0006−0007)
しかしながら、上述した架谷らによる活性炭は従来品に比べ吸着機能は大幅に向上したものではあるが、実用化するためにはさらに吸着材の吸着機能を向上させ、より少ない吸着材で作動可能な吸着ヒートポンプの開発、即ち吸着ヒートポンプ自体の小型化が求められている。そこで、本発明は、上述した諸課題を解決すべく、活性炭をさらに酸処理することによって親水性を向上させてさらに吸着機能を向上させた活性炭、及びこれを吸着材として用いた吸着ヒートポンプの提供を目的とする。
本発明による親水性活性炭は、
有機高分子樹脂10重量部を、賦活剤10〜40重量部で薬品賦活処理して活性炭を生成し、この活性炭を酸処理したことを特徴とする。
本発明によれば、有機高分子樹脂即ちプラスチックを原料とする低温薬品賦活法によって得られる活性炭はそれ自体疎水性であるが、小孔径の細孔を多量に有し、これによって吸着機能を顕著に向上させ、さらに、硝酸などで酸処理を行うことによって活性炭の親水性を顕著に増大せしめることで、活性炭の吸着性能を大幅に向上させることができる。従って、従来よりも高性能な吸着材を提供することが可能となる。また、従来品のシリカゲルやゼオライトは熱化学的に水蒸気を吸着するのに対して、本発明による親水性活性炭は物理的な吸着であることから、発明品の親水性活性炭は、従来品のシリカゲルなどよりも耐久性が優れているものと考えられる。
また、本発明による親水性活性炭は、
前記薬品賦活処理は、678〜873Kの温度範囲で行われる、ことを特徴とする。
さらにまた、本発明による親水性活性炭は、
前記賦活剤は、アルカリ金属の塩、アルカリ金属の水酸化物、または塩化亜鉛のうちの少なくとも1つである、ことを特徴とする。
さらにまた、本発明による親水性活性炭は、
前記酸処理は、1〜13mol/lの硝酸、または、20〜60wt%の過酸化水素水に前記活性炭を含浸することによって行われる、ことを特徴とする。
さらにまた、本発明による親水性活性炭は、
前記有機高分子樹脂は、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、及びポリイミドなどの熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする。
これらの物質は薬品賦活での活性炭収率が大きいため低コストで活性炭を提供することが可能となる。
さらにまた、本発明による親水性活性炭は、
水蒸気圧と飽和水蒸気圧との比(相対水蒸気圧)が、0.05〜0.40で水蒸気吸着性を有する、ことを特徴とする。
本発明による吸着ヒートポンプは、上述した親水性活性炭を吸着材として用いたことを特徴とする。
以降、図面を参照しつつ、本発明の原理及びその実施態様を詳細に説明する。
水蒸気系吸着ヒートポンプの作動相対圧P/P0(=φ)は0.05〜0.40の範囲にあり、この範囲の吸着性に優れた吸着材が求められている。吸着材の水蒸気吸着性は吸着材の親水性および吸着材の細孔径と密接な関係にあり、親水性が大きく小さい細孔径の細孔が多量に存在する吸着材においてより低相対水蒸気圧範囲で大容量の吸着性を示す。これは、吸着材の細孔内における水蒸気吸着が次式のケルビン式で表されることによる。
ln(P/P0)=(−2γ Vm/rRT)cosθ
ここで、P/P0(=φ)は吸着が起こる相対水蒸気圧(Pは水蒸気圧、P0は飽和水蒸気圧)、rは細孔半径、θは細孔壁と水の接触角、γは水の表面張力(表面自由エネルギー)、Vmは水のモル容積、Rは気体定数、Tは絶対温度である。本式は細孔半径r、接触角θが小さくなると吸着が起こる相対水蒸気圧P/P0(=φ)も小さくなることを示している。
そこで本発明では、
1)有機高分子樹脂即ちプラスチックを原料とする低温薬品賦活法によって得られる活性炭はそれ自体疎水性であるが、小孔径の細孔を多量に有するため水蒸気系吸着ヒートポンプの作動範囲となる相対水蒸気圧φが0.05〜0.40の範囲で優れた吸着性を示すこと、
2)1)の活性炭に親水性を付与することでφが0.05から0.40の範囲における吸着性能を大幅向上させ得ること、
の2項目に着目したあらたな高性能吸着ヒートポンプ用の活性炭ならびにこの活性炭を用いた吸着ヒートポンプを提供する。
活性炭原料の有機高分子樹脂(プラスチック)には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも適用できるが、とくに薬品賦活での活性炭収率が大きいポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、ポリイミドが好ましい。これらの樹脂をKOH,NaOHなどの低温薬品賦活(薬品の種類;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、塩化亜鉛、リン酸などのアルカリ金属の塩またはアルカリ金属の水酸化物または塩化亜鉛、原料に対する薬品量(薬品の重量・原料プラスチックの重量(重量比R);1〜4、賦活温度;673〜873K)によって得られる活性炭は、相対水蒸気圧0.05〜0.40の範囲で優れた吸着性を示す。さらにこの活性炭に酸(硝酸:濃度1〜13mol/l、過酸化水素;濃度20〜60wt%)処理を行い(処理時間:12〜24h)、水洗・乾燥工程を経て酸処理活性炭を得る。得られた親水性活性炭について、その水素気吸着等温線の測定結果に基く吸着ヒートポンプ用活性炭としての性能評価を行った。
その結果、ポリカーボネートを原料とする水酸化ナトリウム賦活炭(R=3.2,賦活温度773K、賦活時間10h)の吸着容量Δq値は、吸着ヒートポンプの代表的作動条件である相対水蒸気圧φ=0.1〜0.35の範囲で最大0.15kg/kgに達し、本法があらたな吸着ヒートポンプ用活性炭の高性能化法として有効であることを認めた。
ポリカーボネートを原料とし、R=3.2、賦活温度773Kの条件でKOH賦活することにより活性炭を製造し、この活性炭を硝酸濃度13mol/lで24h処理した活性炭の場合、吸着ヒートポンプの代表的な作動条件である相対蒸気圧0.1〜0.35の範囲の吸着容量Δq値は最大0.30kg/kgに達し、本法があらたな吸着ヒートホンプ用活性炭の高性能化法として有効であることを認めた。
図1は、本発明により製造された親水性活性炭の水蒸気吸着等温線を示すグラフである。比較として従来からのシリカゲルの吸着等温線を併示している。上図では、吸着ヒートポンプの代表的な操作条件である相対水蒸気圧0.1〜0.35を操作範囲と仮定し、本発明による活性炭シリカゲルの水蒸気吸着量を比較しており、本発明による親水性活性炭のそれは0.30kg/kgである。
上記の活性炭を使用し、従来提案されているシリカゲルモジュールとの熱出力評価を行った結果、本発明による親水性活性炭がシリカゲルと同程度の充填密度を有するとすればシリカゲルに比べて1.8倍以上の熱出力の増大が予測される。
吸着容量の増大は、同時に吸着の熱発生量の増大、脱着の有効供給熱量の増大につながり、発生熱の除去速度、供給熱の給熱速度を増大させることが不可欠となるが、活性炭は他のシリカゲル、ゼオライトなどに比べて熱伝導率がやや大きく、速やかな除熱速度、給熱速度の確保ができ、発明の活性炭使用の吸着ヒートポンプがシリカゲル充填の吸着ヒートポンプに比べて吸着器のコンパクト・小型化が可能になる。
本発明による親水性活性炭は、冷却、加熱されることにより吸着材に水が吸着、脱着されることを利用した吸着ヒートポンプの吸着材に利用可能である。この吸着ヒートポンプは80℃程度以下の低温排熱を回収・高レベル変換できる熱機関であり、環境調和型の低温排熱利用機器として機能する。
吸着容量の増大は、同時に吸着の熱発生量の増大、脱着の供給熱量の増大につながり、発生熱の除去速度、供給熱の給熱速度を増大させることが不可欠となるが、活性炭は他のシリカゲル、ゼオライトなどに比べて熱伝導率がやや大きく、速やかな除熱速度、給熱速度の確保ができ、発明品の活性炭使用の吸着ヒートポンプは、従来品のシリカゲル充填の吸着ヒートポンプに比べて吸着器の低コスト化、コンパクト・小型化が可能になる。
本発明を図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることを留意されたい。
本発明により製造されたシリカ添着活性炭の水蒸気吸着等温線(比較のためシリカゲルの吸着等温線併示)を示すグラフである。

Claims (7)

  1. 有機高分子樹脂10重量部を、賦活剤10〜40重量部で薬品賦活処理して活性炭を生成し、この活性炭を酸処理したことを特徴とする親水性活性炭。
  2. 請求項1に記載の親水性活性炭において、
    前記薬品賦活処理は、678〜873Kの温度範囲で行われる、
    ことを特徴とする親水性活性炭。
  3. 請求項1または2に記載の親水性活性炭において、
    前記賦活剤は、アルカリ金属の塩、アルカリ金属の水酸化物、または塩化亜鉛のうちの少なくとも1つである、
    ことを特徴とする親水性活性炭。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の親水性活性炭において、
    前記酸処理は、1〜13mol/lの硝酸、または、20〜60wt%の過酸化水素水に前記活性炭を含浸することによって行われる、
    ことを特徴とする親水性活性炭。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の親水性活性炭において、
    前記有機高分子樹脂は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のうちの少なくとも1つを含む、
    ことを特徴とする親水性活性炭。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の親水性活性炭において、
    水蒸気圧と飽和水蒸気圧との比(相対水蒸気圧)が、0.05〜0.40で水蒸気吸着性を有する、
    ことを特徴とする親水性活性炭。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の親水性活性炭を吸着材として用いた吸着ヒートポンプ。
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