JP2005286924A - 温度補償型水晶発振器 - Google Patents

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Abstract

【課題】広い温度範囲にわたって水晶振動子の温度特性を精度よく補償すること。
【解決手段】高温側補正関数発生回路33および低温側補正関数発生回路34により、近似2次関数で表される温度特性を有する複数の信号を適当な加算率で合成してゲート側補正信号S9とウェル側補正信号S10を生成する。第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bのゲート電極およびウェル電極に、それぞれゲート側補正信号S9およびウェル側補正信号S10を供給し、ATカット水晶振動子51の3次関数的な温度特性を補償するための近似3次関数で表される温度カーブに合う温度特性を有する補正電圧を得ることによって、広い温度範囲にわたってATカット水晶振動子51の3次関数的な温度特性を精度よく補償する。
【選択図】 図1


Description

この発明は、水晶振動子を用いた水晶発振器の温度特性を補償した温度補償型水晶発振器に関する。
水晶振動子を用いた水晶発振器は、周波数安定度は他の発振器に比べてより勝れているが、近年の移動体無線の基準発振器として使用する場合は、水晶振動子の温度特性に起因する発振周波数の変動が問題となる。この問題を解決するために、水晶振動子の温度特性を補償する、いわゆる温度補償型発振器が広く用いられている。水晶振動子の温度補償方式には、直接補償方式と間接補償方式がある。このうち、間接補償方式の温度補償型水晶発振器は、温度補償範囲の拡大が可能であり、また、近年の集積回路技術の発展に伴い、部品点数の削減と性能の向上が可能であるという利点を有する。
間接補償方式の温度補償型水晶発振器は、なんらかの回路を用いて温度補償信号を発生し、その信号で可変容量回路などを制御して、ATカット水晶振動子の温度補償を行うものである。その温度補償信号を発生する回路として、以前はディスクリート部品で構成する抵抗回路網などが採用されていたが、最近では半導体集積回路が使用されることが多くなってきている。
そして、その温度補償信号は電圧信号として発生することがほとんどである。そのため、可変容量回路には、電圧制御型の回路が採用されることが多い。また、携帯電話機に搭載する温度補償型水晶発振器の駆動電圧は、5Vから3Vに移行し、さらなる低電圧化が要求されている。これに伴って、可変容量回路に印加される信号の電圧幅は次第に狭まってきている。
そこで、間接補償方式の温度補償型水晶発振器において温度補償範囲を拡大するためには、狭い電圧範囲で容量変化率が大きい可変容量回路が必要である。また、温度補償と、外部信号によって発振周波数を制御する外部周波数制御との相互干渉を排除するために、温度補償信号と外部周波数制御信号とを合成し、この合成信号によって可変容量回路を制御するという方式も提案されている。
このような提案も、可変容量回路の容量変化率が大きく、少しの電圧変化によって水晶発振回路の発振周波数を大幅に変化させることができることが前提となっている。このようなことから、間接補償方式の温度補償型水晶発振器においては、可変容量回路が特に重要な構成要素となっている。可変容量回路は、少なくとも一つの可変容量素子を使用して構成される。本出願人は、先に、可変容量素子としてMIS(金属−絶縁膜−半導体)型可変容量コンデンサを用いた間接補償方式による温度補償型水晶発振器について出願している(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
図20は、特許文献1に開示された温度補償型水晶発振器の概略構成を示すブロック図である。図20に示す温度補償型水晶発振器では、温度センサー11は、ATカット水晶振動子21、オシレータ22、帰還抵抗23および抵抗素子24よりなるオシレータ回路の温度を検出して、温度に依存した電圧の信号を出力する。温度に対する温度センサー11の出力電圧の関係は、1次関数に近似される。以下、1次関数に近似される関係を近似1次関数と呼ぶ。2次関数および3次関数についても同様に、各関数に近似される関係をそれぞれ近似2次関数および近似3次関数と呼ぶ。
温度センサー11の出力信号は、第1の近似2次関数発生回路13および第2の近似2次関数発生回路14に供給される。第1の近似2次関数発生回路13は、PチャネルMOSトランジスタ(以下、PMOSトランジスタとする)よりなるソース接地アンプで構成されており、そのPMOSトランジスタのゲート電極に温度センサー11の出力電圧が印加される。第2の近似2次関数発生回路14は、NチャネルMOSトランジスタ(以下、NMOSトランジスタとする)よりなるソース接地アンプで構成されており、そのNMOSトランジスタのゲート電極に温度センサー11の出力電圧が印加される。
1次関数補正回路15は、複数のパターンの温度傾斜を有する近似1次関数を発生し、ATカット水晶振動子21の温度特性に最も近い近似1次関数に基づく信号を選択する。加算回路17は、第1の近似2次関数発生回路13、第2の近似2次関数発生回路14および1次関数補正回路15のそれぞれで発生した信号を合成して出力する。温度に対する加算回路17の出力電圧の関係は、第1の近似2次関数発生回路13で発生した近似2次関数の一部と第2の近似2次関数発生回路14で発生した近似2次関数の一部とを合成した近似3次関数と、1次関数補正回路15で発生した近似1次関数とを合成した関数となる。
レギュレータ回路12は、外部から供給される電源電圧の変動を抑制し、第1の近似2次関数発生回路13、第2の近似2次関数発生回路14および1次関数補正回路15に基準電圧を供給する。一方、周波数調整回路16は、外部から入力された周波数調整用の電圧に基づいて、温度補償型水晶発振器の発振周波数の調整および標準周波数合わせを行うための直流バイアス信号を発生する。
ATカット水晶振動子21には、固定コンデンサ26aと第1のMIS型可変容量コンデンサ27aと第2のMIS型可変容量コンデンサ27bと固定コンデンサ26bとが直列に接続されてなる直列接続体が、並列に接続されている。第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ27a,27bの接続ノードは、固定コンデンサ26cを介して交流的に接地されている。
前記加算回路17の出力信号は、バイアス抵抗28a,28bを介して第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ27a,27bの各ゲート電極に供給される。また、周波数調整回路16の出力信号は、バイアス抵抗28cを介して第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ27a,27bの各ウェル電極に供給される。それによって、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ27a,27bの両極に印加される電圧が温度変化に対して近似3次関数的に変化し、ATカット水晶振動子21の3次関数的な温度特性が打ち消され、温度変化に対して安定した周波数の発振信号が出力用バッファ回路25を介して出力される。
図21は、特許文献2に開示された温度補償型水晶発振器の概略構成を示すブロック図である。図21に示す温度補償型水晶発振器では、ATカット水晶振動子21として、15〜45℃付近での周波数に温度による変化がない、いわゆるフラット水晶と呼ばれる水晶振動子を用いている。また、第1の近似2次関数発生回路13および第2の近似2次関数発生回路14は、ともにNMOSトランジスタよりなるソース接地アンプで構成されている。
そして、第1の近似2次関数発生回路13の出力信号は、第1の加算回路18において1次関数補正回路15の出力信号と合成されて、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ27a,27bの各ゲート電極に供給される。一方、第2の近似2次関数発生回路14の出力信号は、第2の加算回路19において周波数調整回路16の出力信号と合成されて、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ27a,27bの各ウェル電極に供給される。
第1の加算回路18の出力電圧は、15℃よりも低温側の温度域において温度が下がるにつれて近似2次関数的に下がる。一方、第2の加算回路19の出力電圧は、45℃よりも高温側の温度域において温度が上がるにつれて近似2次関数的に下がる。従って、低温域では、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ27a,27bのゲート電極の電位がウェル電極の電位よりも低くなり、高温域ではその逆になる。つまり、15℃よりも低温域および45℃よりも高温域において、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ27a,27bの両極に印加される電圧が温度変化に対して近似3次関数的に変化し、ATカットのフラット水晶振動子21の温度特性が打ち消される。
国際公開第02/19514号パンフレット(第1図) 特開平11−88052号公報(図3、図12)
しかしながら、上記特許文献1または特許文献2に開示された温度補償型水晶発振器では、次のような問題点がある。すなわち、図22に、MOSトランジスタの低温時のI−Vカーブ1と高温時のI−Vカーブ2を模式的に示すように、MOSトランジスタでは、一般に、しきい値電圧Vthは、低温時に高くなり、高温時に低くなる。一方、キャリアの移動度は、低温時に下がり、高温時に上がる。
従って、MIS型可変容量コンデンサのゲート電極電位Vgおよびウェル電極電位Vwをそれぞれ単一のMOSトランジスタで生成することによって、ATカット水晶振動子の3次関数的な温度特性を補償するための補正信号[Vg−Vw]を生成したのでは、図23に示すように、その補正信号の近似3次関数で表される曲線3の形状が、3次関数の曲線4の形状から大きくずれてしまう。そのため、広い温度範囲にわたってATカット水晶振動子の温度特性を精度よく補償するのは困難である。
換言すれば、ATカット水晶振動子の温度特性を精度よく補償することができる温度範囲が制限されてしまう。この問題点は、ATカット水晶振動子に限らず、BTやCTやDTなどの他のカット角の水晶振動子においても同様である。
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、広い温度範囲にわたって水晶振動子の温度特性を精度よく補償することができる温度補償型水晶発振器を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる温度補償型水晶発振器は、水晶振動子と、複数のバイアス電位を発生するバイアス電位発生回路と、前記バイアス電位発生回路で発生した複数のバイアス電位のそれぞれに基づいて、温度変化に対して電位が2次関数的に変化する信号をそれぞれ発生する複数のMOSトランジスタを有し、各MOSトランジスタで発生した信号を合成して、温度変化に対して電位が2次関数的に変化する第1の補正信号を発生する第1の補正関数発生回路と、前記バイアス電位発生回路で発生した複数のバイアス電位のそれぞれに基づいて、温度変化に対して電位が2次関数的に変化する信号をそれぞれ発生する複数のMOSトランジスタを有し、各MOSトランジスタで発生した信号を合成して、温度変化に対して電位が2次関数的に変化する第2の補正信号を発生する第2の補正関数発生回路と、前記水晶振動子に接続され、前記第1の補正信号と前記第2の補正信号との電位差に基づいて容量が変化する発振周波数調整用の可変容量素子と、を備えることを特徴とする。
また、請求項2の発明にかかる温度補償型水晶発振器は、温度変化に対して発振周波数が3次関数的に変化する温度特性を有する水晶振動子と、温度変化に対して電位が1次関数的に変化する第1の入力信号を、前記水晶振動子の3次関数的な温度特性の偏曲点を中心に反転して、温度変化に対して電位が1次関数的に変化する第2の入力信号を生成する反転回路と、複数のバイアス電位を発生するバイアス電位発生回路と、前記第1の入力信号と、前記バイアス電位発生回路で発生した複数のバイアス電位のそれぞれとに基づいて、温度変化に対して電位が2次関数的に変化する信号をそれぞれ発生する複数のMOSトランジスタを有し、各MOSトランジスタで発生した信号を合成して、温度変化に対して電位が2次関数的に変化する第1の補正信号を発生する第1の補正関数発生回路と、前記第2の入力信号と、前記バイアス電位発生回路で発生した複数のバイアス電位のそれぞれとに基づいて、温度変化に対して電位が2次関数的に変化する信号をそれぞれ発生する複数のMOSトランジスタを有し、各MOSトランジスタで発生した信号を合成して、温度変化に対して電位が2次関数的に変化する第2の補正信号を発生する第2の補正関数発生回路と、前記水晶振動子に接続され、前記第1の補正信号と前記第2の補正信号との電位差に基づいて容量が変化する発振周波数調整用の可変容量素子と、を備えることを特徴とする。
また、請求項3の発明にかかる温度補償型水晶発振器は、請求項1または2に記載の発明において、前記第1の補正関数発生回路内の複数の前記MOSトランジスタの各ソースに抵抗素子が接続されており、複数の該抵抗素子のうち、少なくとも一つは抵抗値が他と異なり、かつ前記第2の補正関数発生回路内の複数の前記MOSトランジスタの各ソースに抵抗素子が接続されており、複数の該抵抗素子のうち、少なくとも一つは抵抗値が他と異なることを特徴とする。
また、請求項4の発明にかかる温度補償型水晶発振器は、請求項1または2に記載の発明において、前記第1の補正関数発生回路内の複数の前記MOSトランジスタの各バックゲート電位のうち、少なくとも一つは他と異なり、かつ前記第2の補正関数発生回路内の複数の前記MOSトランジスタの各バックゲート電位のうち、少なくとも一つは他と異なることを特徴とする。
また、請求項5の発明にかかる温度補償型水晶発振器は、請求項1または2に記載の発明において、前記第1の補正関数発生回路内の複数の前記MOSトランジスタの各ドレインに抵抗素子が接続されており、複数の該抵抗素子のうち、少なくとも一つは抵抗値が他と異なり、かつ前記第2の補正関数発生回路内の複数の前記MOSトランジスタの各ドレインに抵抗素子が接続されており、複数の該抵抗素子のうち、少なくとも一つは抵抗値が他と異なることを特徴とする。
また、請求項6の発明にかかる温度補償型水晶発振器は、請求項1または2に記載の発明において、前記第1の補正関数発生回路内の複数の前記MOSトランジスタの各しきい値電圧のうち、少なくとも一つは他と異なり、かつ前記第2の補正関数発生回路内の複数の前記MOSトランジスタの各しきい値電圧のうち、少なくとも一つは他と異なることを特徴とする。
また、請求項7の発明にかかる温度補償型水晶発振器は、請求項1〜6のいずれか一つに記載の発明において、前記バイアス電位発生回路は、抵抗分割により複数のバイアス電位を発生することを特徴とする。
また、請求項8の発明にかかる温度補償型水晶発振器は、請求項1〜6のいずれか一つに記載の発明において、前記バイアス電位発生回路は、ダイオード接続された複数のMOSトランジスタを有し、複数の該MOSトランジスタのバンドギャップ電位をバイアス電位として発生することを特徴とする。
また、請求項9の発明にかかる温度補償型水晶発振器は、請求項1〜8のいずれか一つに記載の発明において、前記第1の補正関数発生回路内の複数の前記MOSトランジスタおよび前記第2の補正関数発生回路内の複数の前記MOSトランジスタは、PチャネルMOSトランジスタであることを特徴とする。
また、請求項10の発明にかかる温度補償型水晶発振器は、請求項1〜9のいずれか一つに記載の発明において、前記可変容量素子は、前記第1の補正信号および前記第2の補正信号のいずれか一方の信号に基づいてゲート電極電位が印加され、かつ他方の信号に基づいてウェル電極電位が印加されるMIS型可変容量コンデンサであることを特徴とする。
本発明にかかる温度補償型水晶発振器によれば、第1の補正関数発生回路および第2の補正関数発生回路により、近似2次関数で表される温度特性を有する複数の信号を適当な加算率で合成して第1の補正信号と第2の補正信号を生成し、それら第1および第2の補正信号を可変容量素子に供給するので、水晶振動子の温度特性を補償するための温度カーブに合う温度特性を有する補正電圧が得られる。従って、広い温度範囲にわたって水晶振動子の温度特性を精度よく補償することができる温度補償型水晶発振器が得られる。また、MOSトランジスタのダイオード接続によるバンドギャップ電位に基づいて水晶振動子の温度特性を補償するための補正電圧を生成することによって、MOSトランジスタのしきい値電圧の製造ばらつきを補正することができるという効果が得られる。
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる温度補償型水晶発振器の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は、ATカット水晶振動子を用いた発振器に限るものではないが、実施の形態では、ATカット水晶振動子を用いた場合を例にして説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる温度補償型水晶発振器の要部の構成を示す回路図である。図1に示すように、温度補償型水晶発振器は、ATカット水晶振動子51に、例えばCMOSインバータ回路よりなるオシレータ52と帰還抵抗53とが並列に接続され、かつオシレータ52の出力端子とATカット水晶振動子51との間に抵抗素子54が接続されたオシレータ回路を有する。このオシレータ回路は、出力用バッファ回路55を介して出力端子50に接続されている。
そして、固定コンデンサ56aと可変容量素子である例えば第1のMIS型可変容量コンデンサ57aと固定コンデンサ56cとを直列に接続してなる直列接続体が、オシレータ52の入力側と接地点との間に接続されている。第1のMIS型可変容量コンデンサ57aは、固定コンデンサ56aによりオシレータ回路の直流成分から切り離されているとともに、固定コンデンサ56cにより接地点の直流成分から切り離されている。
また、固定コンデンサ56bと可変容量素子である例えば第2のMIS型可変容量コンデンサ57bと固定コンデンサ56dとを直列に接続してなる直列接続体が、オシレータ52の出力側と接地点との間に接続されている。第2のMIS型可変容量コンデンサ57bは、固定コンデンサ56bによりオシレータ回路の直流成分から切り離されているとともに、固定コンデンサ56dにより接地点の直流成分から切り離されている。
第1のMIS型可変容量コンデンサ57aおよび第2のMIS型可変容量コンデンサ57bの各容量は、それぞれのゲート電極に印加する電位Vgとウェル電極に印加する電位Vwとの電位差(Vg−Vw)に依存する。第1のMIS型可変容量コンデンサ57aのゲート電極は、バイアス抵抗58aを介して、第1の補正関数発生回路としての機能を有する高温側補正関数発生回路33に接続されている。第1のMIS型可変容量コンデンサ57aのウェル電極は、バイアス抵抗58cを介して、第2の補正関数発生回路としての機能を有する低温側補正関数発生回路34に接続されている。
同様に、第2のMIS型可変容量コンデンサ57bのゲート電極およびウェル電極は、それぞれバイアス抵抗58bおよびバイアス抵抗58dを介して、高温側補正関数発生回路33および低温側補正関数発生回路34に接続されている。高温側補正関数発生回路33を制御する信号と、低温側補正関数発生回路34を制御する信号は、対称な関係を有するアナログ電位である。高温側補正関数発生回路33および低温側補正関数発生回路34の構成と、これらを制御する信号については、後述する。
図2は、本発明の実施の形態1にかかる温度補償型水晶発振器の概略構成を示すブロック図である。図2に示すように、温度補償型水晶発振器は、温度センサー31、周波数調整回路36、レギュレータ回路32、バイアス電位発生回路としての機能を有するゲートバイアス制御回路35、反転回路40、第1のインピーダンス変換回路38、第2のインピーダンス変換回路39、前記高温側補正関数発生回路33および前記低温側補正関数発生回路34を備えている。
温度センサー31は、ATカット水晶振動子51、オシレータ52、帰還抵抗53および抵抗素子54よりなるオシレータ回路の温度を検出し、その検出した温度に依存する電圧の信号(以下、温度検出信号S1とする)を発生する。温度センサー31は、例えば拡散抵抗とポリシリコン抵抗などの温度特性の異なる異種抵抗素子が直列に接続された構成となっており、抵抗分割により温度検出信号S1を発生する。温度に対する温度センサー31の出力電圧の関係は、近似1次関数で表される。温度検出信号S1は、反転回路40、ゲートバイアス制御回路35および第2のインピーダンス変換回路39に供給される。
反転回路40は、温度検出信号S1を、ATカット水晶振動子51の3次関数で表される温度特性の偏曲点を中心にして反転し、その偏曲点を中心として温度検出信号S1と対称な信号(以下、反転信号S2とする)を発生する。反転回路40は、例えば反転増幅器により構成される。反転信号S2は、ゲートバイアス制御回路35および第1のインピーダンス変換回路38に供給される。
周波数調整回路36は、外部から入力された周波数調整用の電圧に基づいて、温度補償型水晶発振器の発振周波数の調整および標準周波数合わせを行うための直流バイアス信号(以下、周波数調整信号S3とする)を発生する。周波数調整信号S3は、第1のインピーダンス変換回路38および第2のインピーダンス変換回路39に供給される。周波数調整回路36としては、従来と同様の構成のものを用いることができる。
第1のインピーダンス変換回路38は、反転信号S2と周波数調整信号S3を合成し、インピーダンス変換する。第1のインピーダンス変換回路38でインピーダンス変換された信号(以下、高温側ドレイン信号S4とする)は、高温側補正関数発生回路33に供給される。第2のインピーダンス変換回路39は、温度検出信号S1と周波数調整信号S3を合成し、インピーダンス変換する。第2のインピーダンス変換回路39でインピーダンス変換された信号(以下、低温側ドレイン信号S5とする)は、低温側補正関数発生回路34に供給される。第1のインピーダンス変換回路38および第2のインピーダンス変換回路39としては、一般的に知られているインピーダンス変換回路を用いることができる。
レギュレータ回路32は、3次関数を補正するための補正量を調整する制御信号(以下、ソース信号S6とする)を発生する。ソース信号S6は、高温側補正関数発生回路33および低温側補正関数発生回路34に供給される。レギュレータ回路32としては、一般的な電圧発生回路を用いることができる。
ゲートバイアス制御回路35は、温度検出信号S1および反転信号S2に基づいて、温度変化に対して勾配を有する複数の線形信号(以下、ゲート信号S8a,S8b,・・・,S8nとする)を発生する。ゲート信号S8a,S8b,・・・,S8nは、高温側補正関数発生回路33および低温側補正関数発生回路34に供給される。ゲートバイアス制御回路35の詳細な構成については、後述する。
高温側補正関数発生回路33は、ソース信号S6、高温側ドレイン信号S4および複数のゲート信号S8a,S8b,・・・,S8nに基づいてゲート側補正信号S9を出力する。このゲート側補正信号S9は、前記バイアス抵抗58a,58bを介して第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bのゲート電極に供給される。高温側補正関数発生回路33の詳細な構成については、後述する。
低温側補正関数発生回路34は、ソース信号S6、低温側ドレイン信号S5および複数のゲート信号S8a,S8b,・・・,S8nに基づいてウェル側補正信号S10を出力する。このウェル側補正信号S10は、前記バイアス抵抗58c,58dを介して第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bのウェル電極に供給される。低温側補正関数発生回路34の詳細な構成については、後述する。
次に、ゲートバイアス制御回路35、高温側補正関数発生回路33および低温側補正関数発生回路34の詳細な構成について説明する。図3は、ゲートバイアス制御回路35の一例を示す回路図である。図3に示すように、ゲートバイアス制御回路35は、特に限定しないが、例えば5個の抵抗素子351a,351b,351c,351d,351eが直列に接続された、複数の直列接続体352a,352b,・・・,352nを有する。
各直列接続体352a,352b,・・・,352nにおいて、抵抗素子351a,351b,351c,351d,351e同士の接続ノードには、それぞれ一つずつトランスファーゲート353a,353b,353c,353dが接続されている。一つの直列接続体にトランスファーゲートが接続された構成を単位構成体として、ゲートバイアス制御回路35には、後述する高温側補正関数発生回路33の高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332n(または、低温側補正関数発生回路34の低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342n)の数だけ単位構成体が設けられている。
各直列接続体352a,352b,・・・,352nの一端には、温度センサー31から温度検出信号S1が供給され、他端には、反転回路40から反転信号S2が供給される。各直列接続体352a,352b,・・・,352nからは、それぞれ、温度検出信号S1と反転信号S2との電位差を、導通(オープン)状態となったトランスファーゲートが接続されている接続ノードで抵抗分割したゲート信号S8a,S8b,・・・,S8nが出力される。
高温側補正関数発生回路33は、図1に示すように、2以上の抵抗値を有する複数の抵抗素子331a,331b,・・・,331n、複数のPMOSトランジスタ(以下、高温側PMOSトランジスタとする)332a,332b,・・・,332nおよび定電流源333を備えている。複数の高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nのサイズやしきい値電圧Vthは、全て同じであってもよいし、一部または全部が異なっていてもよい。複数の抵抗素子331a,331b,・・・,331nは、複数の高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nのソース電極とレギュレータ回路32との間に一つずつ接続されている。
定電流源333は、複数の高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nの各ドレイン電極と第1のインピーダンス変換回路38との間に接続されている。定電流源333は、複数の高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nを流れるドレイン電流を合成し、電圧変換してゲート側補正信号S9として出力するものであり、例えば抵抗素子で構成されていてもよい。
複数の高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nの各ソース電位および各バックゲート電位は、ソース信号S6により制御される。また、それらの各ドレイン電位は、高温側ドレイン信号S4により制御される。そして、それらの各ゲート電極には、図3に示すゲートバイアス制御回路35から出力された複数のゲート信号S8a,S8b,・・・,S8nが一つずつ供給される。
例えば、第1の高温側PMOSトランジスタ332aのゲート電位は、ゲートバイアス制御回路35の第1の直列接続体352aから出力された第1のゲート信号S8aにより制御される。同様に、第nの高温側PMOSトランジスタ332nのゲート電位は、ゲートバイアス制御回路35の第nの直列接続体352nから出力された第nのゲート信号S8nにより制御される。
また、低温側補正関数発生回路34は、図1に示すように、高温側補正関数発生回路33と同じ構成となっており、2以上の抵抗値を有する複数の抵抗素子341a,341b,・・・,341n、複数のPMOSトランジスタ(以下、低温側PMOSトランジスタとする)342a,342b,・・・,342nおよび定電流源343を備えている。複数の低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342nのサイズやしきい値電圧Vthは、全て同じであってもよいし、一部または全部が異なっていてもよい。複数の抵抗素子341a,341b,・・・,341nは、複数の低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342nのソース電極とレギュレータ回路32との間に一つずつ接続されている。
定電流源343は、複数の低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342nの各ドレイン電極と第2のインピーダンス変換回路39との間に接続されている。定電流源343は、複数の低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342nを流れるドレイン電流を合成し、電圧変換してウェル側補正信号S10として出力するものであり、例えば抵抗素子で構成されていてもよい。
複数の低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342nの各ソース電位および各バックゲート電位は、ソース信号S6により制御される。また、それらの各ドレイン電位は、低温側ドレイン信号S5により制御される。そして、それらの各ゲート電極には、図3に示すゲートバイアス制御回路35から出力された複数のゲート信号S8a,S8b,・・・,S8nが一つずつ供給される。例えば、第1の低温側PMOSトランジスタ342aのゲート電位は、第1のゲート信号S8aにより制御される。同様に、第nの低温側PMOSトランジスタ342nのゲート電位は、第nのゲート信号S8nにより制御される。
図4は、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bの一例の概略を示す断面図である。図4に示すMIS型可変容量コンデンサは、MOS(金属−酸化物−半導体)型可変容量コンデンサ60であり、P型半導体基板61の表面層にN型ウェル領域62を形成し、そのN型ウェル領域62の表面上にゲート酸化膜63を介してゲート電極64を形成した構成となっている。N型ウェル領域62の電位は、N型ウェル領域62に設けられた高不純物濃度のN型ソース・ドレイン領域65より与えられる。図4において、符号66は、素子分離用のLOCOS酸化膜である。
MOS型可変容量コンデンサ60において、ゲート電極64の電位が正側に変位していく過程で、N型ウェル領域62は蓄積状態から空乏状態となり、やがて表面反転層が形成された状態となる。蓄積状態から表面反転層が形成されるまでの間、MOS型可変容量コンデンサ60の容量が変化する。その際、ゲート電極64の電位が高周波で制御されると、発生−再結合プロセスでは、小数キャリアが表面反転層に十分に供給されないため、一定の極小値に保たれ、図5に示すようなC−Vカーブ67を示す。実施の形態では、このC−Vカーブ67において、容量Cが変化する領域を利用する。なお、図5において、縦軸は、MOS型可変容量コンデンサ60の容量Cであり、横軸は、MOS型可変容量コンデンサ60のゲート電極電位Vgとウェル電極電位Vwとの差である、いわゆるゲート電圧である。
次に、実施の形態1にかかる温度補償型発振器の作用とともに、ATカット水晶振動子の温度補償方法について説明する。ゲートバイアス制御回路35の各直列接続体352a,352b,・・・,352nに対して、それぞれに接続されたトランスファーゲート353a,353b,353c,353dが、適宜、導通(オープン)状態となる。それによって、ゲートバイアス制御回路35から、複数のゲート信号S8a,S8b,・・・,S8nが出力される。
上述したように、各ゲート信号S8a,S8b,・・・,S8nは、近似1次関数で表される温度特性を有する温度検出信号S1と、これを反転した反転信号S2との電位差を抵抗分割した信号である。従って、図6に示す温度特性図のように、各ゲート信号S8a,S8b,・・・,S8nの電位は、いずれも温度変化に対して異なる勾配で1次関数的に変化する。
いずれのトランスファーゲート353a,353b,353c,353dが導通(オープン)状態となるかということは、補正電圧の波形が所望の温度カーブに合うように、予め設定されている。ここで、補正電圧とは、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bのゲート電極とウェル電極との電位差(Vg−Vw)、すなわちゲート側補正信号S9とウェル側補正信号S10との電位差のことである。また、所望の温度カーブとは、ATカット水晶振動子51の3次関数的な温度特性を補償するための近似3次関数で表される温度カーブのことである。
高温側補正関数発生回路33の各高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nのソース電極、ドレイン電極およびゲート電極には、ソース信号S6、高温側ドレイン信号S4およびそれぞれに対応したゲート信号S8a,S8b,・・・,S8nが供給される。それによって、各高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nに、各ゲート信号S8a,S8b,・・・,S8nおよび各抵抗素子331a,331b,・・・,331nに応じたドレイン電流が流れる。
各高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nに流れるドレイン電流は、図7にそれぞれのI−Vカーブ71a,71b,・・・,71nを示すように、いずれもゲート電圧に対して近似2次関数的に変化する。ただし、各高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nのしきい値電圧Vthは異なる。上述したように、このゲート電圧は、ゲートバイアス制御回路35により温度検出信号S1に基づいて生成されている。
従って、各ドレイン電流を電圧変換すると、図8に示すように、各高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nのドレイン電位は、温度に対して近似2次関数的に変化することになる。しかも、各高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nで、近似2次関数的な曲線72a,72b,・・・,72n(および72c,72d,72e)の形状が異なる。そして、図6に示すように、各ゲート信号S8a,S8b,・・・,S8nが温度に対して異なる勾配を有しているので、高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nの各ドレイン電位の加算比率が変わり、その加算比率に応じて各ドレイン電位を合成したゲート側補正信号S9が得られる。
図8に示すように、このゲート側補正信号S9の温度特性を示す曲線73の形状は、各高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nのドレイン電位の温度特性を示す曲線72a,72b,・・・,72n(および72c,72d,72e)を前記加算比率に応じて合成した近似2次関数的な形状となる。従って、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bのゲート電極電位Vgと温度との関係も、近似2次関数で表される。
低温側補正関数発生回路34についても同様であり、各低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342nのソース電極、ドレイン電極およびゲート電極には、ソース信号S6、低温側ドレイン信号S5およびそれぞれに対応したゲート信号S8a,S8b,・・・,S8nが供給される。それによって、各低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342nに、各ゲート信号S8a,S8b,・・・,S8nおよび各抵抗素子341a,341b,・・・,341nに応じたドレイン電流が流れる。
高温側補正関数発生回路33と同様に、各低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342nに流れるドレイン電流の特性は、図7に示す通りとなり、また、それを電圧変換したドレイン電位の温度特性は、図8に示す通りとなる。そして、各ゲート信号S8a,S8b,・・・,S8nの温度勾配に応じた加算比率でもって、各低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342nのドレイン電位を合成したウェル側補正信号S10が得られる。従って、ウェル側補正信号S10の温度特性を示す曲線も、図8に示す曲線73と同じ形状となる。つまり、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bのウェル電極電位Vwと温度との関係も、近似2次関数で表される。
なお、特に限定するものではないが、図8では、高温側補正関数発生回路33および低温側補正関数発生回路34にそれぞれ6個のPMOSトランジスタが設けられている場合を想定しているため、6個のPMOSトランジスタの温度に対するドレイン電位の変化を示す曲線72a,72b,72c,72d,72e,・・・,72nが示されている。
ところで、上述したように、反転信号S2は、ATカット水晶振動子51の3次関数で表される温度特性の偏曲点を中心にして、温度検出信号S1を反転した信号であるから、温度検出信号S1と反転信号S2は、その偏曲点となる温度(以下、偏曲点温度とする)で交差する。従って、図6に示すように、各ゲート信号S8a,S8b,・・・,S8nも偏曲点温度で交わることになるので、偏曲点温度では、各ゲート信号S8a,S8b,・・・,S8nの電位は等しくなる。
そのような場合でも、高温側補正関数発生回路33では、複数の抵抗素子331a,331b,・・・,331nが2以上の抵抗値を有するため、複数の高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nは、仮想的に2以上のしきい値電圧Vthを有することになる。それによって、高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nから複数の異なるドレイン電位が得られるので、それらを前記加算比率に応じて合成したゲート側補正信号S9が得られる。低温側補正関数発生回路34についても同様であり、偏曲点温度においても、各低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342nの異なるドレイン電位を前記加算比率に応じて合成したウェル電極電位Vwが得られる。
そして、上述した温度検出信号S1と反転信号S2の関係から、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bのゲート電極電位Vgとウェル電極電位Vwは、ATカット水晶振動子51の3次関数で表される温度特性の偏曲点を中心にして反転した関係となる。従って、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bの容量を決めるゲート電圧、すなわちゲート電極電位Vgとウェル電極電位Vwとの電位差(Vg−Vw)は、図9〜図11に示すように、温度に対して近似3次関数で表されることになる。
図9には、ATカット水晶振動子51の温度特性の1次成分の係数、すなわち温度勾配が正である場合のゲート電圧(Vg−Vw)の温度特性を示す曲線78aが示されている。図10には、温度勾配がゼロである場合のゲート電圧(Vg−Vw)の温度特性を示す曲線78bが示されている。図11には、温度勾配が負である場合のゲート電圧(Vg−Vw)の温度特性を示す曲線78cが示されている。
図9〜図11のいずれにおいても、ゲート電極電位Vgは、係数が負である初期勾配75を有する。一方、ウェル電極電位Vwは、係数が正である初期勾配74を有する。係数が負である初期勾配75は、高温側ドレイン信号S4により生じる。係数が正である初期勾配74は、係数が負である初期勾配75を、ATカット水晶振動子51の3次関数で表される温度特性の偏曲点を中心にして反転したものであり、低温側ドレイン信号S5により生じる。
そして、ゲート電極電位Vgを示す曲線77とウェル電極電位Vwを示す曲線76は、偏曲点温度で交差する。これは、上述したように、偏曲点温度において、各ゲート信号S8a,S8b,・・・,S8nの電位が等しいからである(図6参照)。これによって、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bのゲート電圧(Vg−Vw)が大きくても小さくても、偏曲点温度での第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bの容量値は変動しない。
第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bの容量は、図5に示すC−Vカーブ67の容量Cが変化する領域において、印加されるゲート電圧(Vg−Vw)が高くなるのに伴って増大する。従って、温度勾配が正またはゼロである場合には、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bの容量は、高温になると大きくなり、低温になると小さくなる。温度勾配が負である場合には、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bの容量は、高温になると一旦小さくなってから大きくなり、低温になると一旦大きくなってから小さくなる。
図1に示す構成において、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bの容量が大きくなると、ATカット水晶振動子51の発振周波数を下げるような作用が生じる。逆に、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bの容量が小さくなると、ATカット水晶振動子51の発振周波数を上げるような作用が生じる。従って、温度勾配が正またはゼロである場合には、温度の上昇に対してATカット水晶振動子51の発振周波数を下げるような作用が生じ、温度の下降に対してATカット水晶振動子51の発振周波数を上げるような作用が生じる。
温度勾配が負である場合には、温度の上昇に対してATカット水晶振動子51の発振周波数を一旦上げた後に下げるような作用が生じ、温度の下降に対してATカット水晶振動子51の発振周波数を一旦下げた後に上げるような作用が生じる。これらの作用は、ATカット水晶振動子51の発振周波数の3次関数的な温度特性を打ち消すものである。従って、本実施の形態によって、ATカット水晶振動子51の発振周波数の3次関数的な温度特性を打ち消すことができる。
次に、ATカット水晶振動子51の温度特性の1次成分を補正する方法の原理について説明する。図12に、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bのゲート電極電位Vgとウェル電極電位Vwとの関係を示す。図12の各図において、縦軸および横軸は、それぞれ電位および温度である。
また、符号81および符号82は、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bのゲート電極電位Vgおよびウェル電極電位Vwをそれぞれ示す曲線であり、符号83および符号84を付した各矢印は、それぞれゲート電極電位Vgを示す曲線81およびウェル電極電位Vwを示す曲線82の非線形スプラインの開始点を示している。符号85は、ウェル電極電位Vwを示す曲線82の極性を反転した電位、すなわち−Vwを示す曲線である。符号86は、ATカット水晶振動子51の温度特性の1次補正分(温度勾配)を示す直線である。
図12(a)、(b)および(c)は、ATカット水晶振動子51の温度特性の1次成分の係数、すなわち温度勾配がそれぞれ正の場合、ゼロの場合および負の場合である。また、図12(a)、(b)および(c)において、左側の各図は、ゲート電極電位Vgを示す曲線81とウェル電極電位Vwを示す曲線82を、判別しやすいように、別々の温度−電位軸に表したものである。そして、右側の各図は、ゲート電極電位Vgを示す曲線81とウェル電極電位Vwの反転電位−Vwを示す曲線85を同一の温度−電位軸に表したものである。
図12(a)に示すように、温度勾配が正である場合には、ゲート電極電位Vgを示す曲線の非線形スプラインの開始点83とウェル電極電位Vwを示す曲線の非線形スプラインの開始点84とが近づく向き(矢印87で示す)に、ゲート電極電位Vgを示す曲線81とウェル電極電位Vwを示す曲線82を温度軸方向に対称に移動させた曲線が生成されるようにする。逆に、図12(c)に示すように、温度勾配が負である場合には、ゲート電極電位Vgを示す曲線81とウェル電極電位Vwを示す曲線82を、それらの非線形スプラインの開始点83,84が遠ざかる向き(矢印88で示す)に対称に移動させた曲線が生成されるようにする。図12(b)に示すように、温度勾配がゼロである場合には、ゲート電極電位Vgを示す曲線81とウェル電極電位Vwを示す曲線82は移動させなくてよい。
そして、偏曲点温度においてゲート電極電位Vgを示す曲線81およびウェル電極電位Vwの反転電位−Vwを示す曲線85に接する接線が、ATカット水晶振動子51の温度特性の1次補正分を示す直線86となる。このように、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bのゲート電極電位Vgおよびウェル電極電位Vwの非線形スプラインの開始点83,84と、3次関数の偏曲点との相対関係により、ATカット水晶振動子51の温度特性の1次成分を補正することができる。
次に、ATカット水晶振動子51の標準周波数を調整する方法の原理について説明する。図13に、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bのゲート電極電位Vgとウェル電極電位Vwとの関係を示す。図12と同様に、図13の各図において、縦軸および横軸は、それぞれ電位および温度である。また、符号91および符号92は、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bのゲート電極電位Vgおよびウェル電極電位Vwをそれぞれ示す曲線である。符号93は、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bのゲート電圧(Vg−Vw)を示す曲線である。
周波数調整等により第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bの容量値を変える場合には、ゲート電極電位Vgを示す曲線91とウェル電極電位Vwを示す曲線92を電位軸方向に移動させた曲線が生成されるようにする。例えば、図13(b)に示すように、ゲート電極電位Vgを示す曲線91を、矢印95で示すように低電位側に移動させた曲線と、ウェル電極電位Vwを示す曲線92を、矢印96で示すように高電位側に移動させた曲線を生成させる。この場合には、ゲート電圧(Vg−Vw)を示す曲線93は、図13(a)に示す曲線93よりも低電位側へ移動する。従って、Vg−Vw=0となる基準線94から見て、容量値が全体的に低くなる。
一方、例えば、図13(c)に示すように、ゲート電極電位Vgを示す曲線91を、矢印97で示すように高電位側に移動させた曲線と、ウェル電極電位Vwを示す曲線92を、矢印98で示すように低電位側に移動させた曲線を生成させる。この場合には、ゲート電圧(Vg−Vw)を示す曲線93は、図13(a)に示す曲線93よりも高電位側へ移動する。つまり、Vg−Vw=0となる基準線94から見て、容量値が全体的に高くなる。このようにして、ATカット水晶振動子51の標準周波数を調整することができる。
図14は、実施の形態1にかかる温度補償型水晶発振器における補正電圧(Vg−Vw)の波形と3次関数との比較をシミュレーションした結果を示す特性図である。図14より、−30℃付近から80℃までの全温度範囲で、補正信号の近似3次関数で表される曲線5が、3次関数の曲線6に一致していることがわかる。
ところで、高温側補正関数発生回路33および低温側補正関数発生回路34を次のような構成としてもよい。例えば図15に示すように、抵抗素子331a,331b,・・・,331n,341a,341b,・・・,341nを設ける代わりに、各高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nおよび各低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342nのバックゲートに、異なるバックゲート電位を供給するようにしてもよい。
この場合には、図示しないPMOSバックゲート電位発生回路を設け、このPMOSバックゲート電位発生回路により複数の異なるバックゲート電位を発生させる。このようにしても、各高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nおよび各低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342nのしきい値電圧Vthを異ならせることができるので、同様の効果が得られる。
また、ゲートバイアス制御回路35を次のような構成としてもよい。例えば図16に示すように、複数、特に限定しないが、例えば5個の抵抗素子351a,351b,351c,351d,351eが直列に接続された直列接続体352aを一つ設け、抵抗素子351a,351b,351c,351d,351e同士の接続ノードに、それぞれ高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332n(または、低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342n)の数だけトランスファーゲート354a,354b,・・・,354nを並列に接続した構成としてもよい。
この場合には、直列接続体352aの両端に、温度検出信号S1と反転信号S2とが供給され、その電位差を、抵抗素子351a,351b,351c,351d,351e同士の各接続ノードで抵抗分割して複数のゲート信号S8a,S8b,・・・,S8nが生成される。生成されたゲート信号S8a,S8b,・・・,S8nは、導通(オープン)状態となったトランスファーゲートを介して出力される。このようにしても、複数の異なる電位のゲート信号S8a,S8b,・・・,S8nが得られる。また、この構成では、電流経路、すなわち抵抗素子の直列接続体352aが一つであるので、消費電流の低減を図ることができる。
実施の形態2.
図17は、本発明の実施の形態2にかかる温度補償型水晶発振器の概略構成を示すブロック図である。図17に示すように、実施の形態2は、実施の形態1において、ゲートバイアス制御回路35に代えて、複数のMOSトランジスタをダイオード接続して複数の異なるバンドギャップ電位をゲート信号S80a,S80b,・・・,S80n,S81a,S81b,・・・,S81nとして出力するゲートバイアス制御回路45を設けたものである。ゲートバイアス制御回路45は、バイアス電位発生回路としての機能を有する。
実施の形態2では、ゲートバイアス制御回路45から出力される第1群のゲート信号S80a,S80b,・・・,S80nは、図1または図15に示す回路において高温側補正関数発生回路33の各高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nのゲート電極に供給される。そして、ゲート信号S80a,S80b,・・・,S80nに基づいて、複数の高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nの各出力が適当な加算率でもって合成されて、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bのゲート電極電位Vgが得られる。
また、ゲートバイアス制御回路45から出力される第2群のゲート信号S81a,S81b,・・・,S81nは、図1または図15に示す回路において低温側補正関数発生回路34の各低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342nのゲート電極に供給される。そして、ゲート信号S81a,S81b,・・・,S81nに基づいて、複数の低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342nの各出力が適当な加算率でもって合成されて、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bのウェル電極電位Vwが得られる。
また、実施の形態2では、実施の形態1のレギュレータ回路32に代えて、第1のレギュレータ回路42aと第2のレギュレータ回路42bが設けられている。第1のレギュレータ回路42aは、温度検出信号S1に基づいて、3次関数を補正するための補正量を調整する第1のレギュレータ電圧信号S60を発生し、高温側補正関数発生回路33内の高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nのソース電極およびゲートバイアス制御回路45に供給する。第2のレギュレータ回路42bは、反転信号S2に基づいて、3次関数を補正するための補正量を調整する第2のレギュレータ電圧信号S70を発生し、低温側補正関数発生回路34内の低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342nのソース電極およびゲートバイアス制御回路45に供給する。
図18は、ゲートバイアス制御回路45の一例を示す回路図である。図18に示すように、ゲートバイアス制御回路45は、低温側ゲートバイアス制御回路450と高温側ゲートバイアス制御回路460を有する。低温側ゲートバイアス制御回路450は、複数のPMOSトランジスタ451a,451b,・・・,451nを有する。これらPMOSトランジスタ451a,451b,・・・,451nの各ドレイン電極は、それぞれ、少なくとも一つは抵抗値が異なる抵抗素子452a,452b,・・・,452nを介して、電流源453a,453b,・・・,453nに接続されている。各電流源453a,453b,・・・,453nは、接地されている。
また、PMOSトランジスタ451a,451b,・・・,451nの各ゲート電極は、それぞれ抵抗素子452a,452b,・・・,452nを介して自己のドレイン電極に接続されている。このようにダイオード接続された一つのPMOSトランジスタに重み付け回路の抵抗素子と電流源が接続された構成を単位構成として、低温側ゲートバイアス制御回路450には、低温側補正関数発生回路34の低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342nの数だけ単位構成が設けられている。
PMOSトランジスタ451a,451b,・・・,451nの各ソース電位および各バックゲート電位は、第1のレギュレータ電圧信号S60で与えられる。抵抗素子452a,452b,・・・,452nと電流源453a,453b,・・・,453nとの各接続ノードからは、前記第2群に含まれる複数のゲート信号S81a,S81b,・・・,S81nとして、MOSトランジスタのダイオード接続によるバンドギャップ電位が出力される。
高温側ゲートバイアス制御回路460は、低温側ゲートバイアス制御回路450と同じ回路構成であり、複数のPMOSトランジスタ461a,461b,・・・,461nを有する。これらPMOSトランジスタ461a,461b,・・・,461nの各ドレイン電極は、それぞれ、少なくとも一つは抵抗値が異なる抵抗素子462a,462b,・・・,462nを介して、電流源463a,463b,・・・,463nに接続されている。各電流源463a,463b,・・・,463nは、接地されている。
また、PMOSトランジスタ461a,461b,・・・,461nの各ゲート電極は、それぞれ抵抗素子462a,462b,・・・,462nを介して自己のドレイン電極に接続されている。このようにダイオード接続された一つのPMOSトランジスタに重み付け回路の抵抗素子と電流源が接続された構成を単位構成として、高温側ゲートバイアス制御回路460には、高温側補正関数発生回路33の高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nの数だけ単位構成が設けられている。
PMOSトランジスタ461a,461b,・・・,461nの各ソース電位および各バックゲート電位は、第2のレギュレータ電圧信号S70で与えられる。抵抗素子462a,462b,・・・,462nと電流源463a,463b,・・・,463nとの各接続ノードからは、前記第1群に含まれる複数のゲート信号S80a,S80b,・・・,S80nとして、MOSトランジスタのダイオード接続によるバンドギャップ電位が出力される。
上述したように、低温側ゲートバイアス制御回路450の各PMOSトランジスタ451a,451b,・・・,451nのソース電位と、高温側補正関数発生回路33の各高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nのソース電位は、ともに第1のレギュレータ電圧信号S60により与えられる。また、高温側ゲートバイアス制御回路460の各PMOSトランジスタ461a,461b,・・・,461nのソース電位と、低温側補正関数発生回路34の各低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342nのソース電位は、ともに第2のレギュレータ電圧信号S70により与えられる。
従って、実施の形態2では、高温側補正関数発生回路33から出力されるゲート側補正信号S9を調整すると、それに応じて低温側補正関数発生回路34から出力されるウェル側補正信号S10も調整される。逆に、低温側補正関数発生回路34から出力されるウェル側補正信号S10を調整すると、それに応じて高温側補正関数発生回路33から出力されるゲート側補正信号S9も調整される。つまり、実施の形態2には、ATカット水晶振動子51の3次関数で表される温度特性を補正するための補正電圧(Vg−Vw)の高温側と低温側の調整を同時に行うことができるという利点がある。
しかし、高温側の調整と低温側の調整を個別に行う必要がある場合、あるいは高温側の調整と低温側の調整を個別に行えた方が好ましい場合には、第2のレギュレータ回路42bから出力される第2のレギュレータ電圧信号S70を変えることができる構成とするか、ゲートバイアス制御回路45から出力されるゲート信号S80a,S80b,・・・,S80n,S81a,S81b,・・・,S81nを変えることができる構成とすればよい。
第2のレギュレータ電圧信号S70を変えるには、例えば、反転回路40において、反転の基準となる電位に温度勾配を付加する構成とすればよい。あるいは、特に図示しないが、第2のレギュレータ回路42bは、差動回路に、その出力信号である第2のレギュレータ電圧信号S70を抵抗分割したフィードバック信号を供給することにより、第2のレギュレータ電圧信号S70の電位を制御する構成となっている。この構成において、第2のレギュレータ電圧信号S70を抵抗分割する2以上の抵抗素子を2種以上の異種抵抗素子で構成することによって、その抵抗分割比が温度特性を有するようにすることもできる。
また、ゲート信号S80a,S80b,・・・,S80n,S81a,S81b,・・・,S81nを変えるには、ゲートバイアス制御回路45内の電流源453a,453b,・・・,453n,463a,463b,・・・,463nをNMOSトランジスタで構成し、そのドレイン電流を調整することによって、ゲート信号S80a,S80b,・・・,S80n,S81a,S81b,・・・,S81nの電位を制御すればよい。
実施の形態2の変形例として、低温側ゲートバイアス制御回路450の抵抗素子452a,452b,・・・,452nおよび高温側ゲートバイアス制御回路460の抵抗素子462a,462b,・・・,462nの抵抗値を変える代わりに、PMOSトランジスタ451a,451b,・・・,451n,461a,461b,・・・,461nを作製する際にチャネルドープ時の不純物濃度を調整し、それによってPMOSトランジスタ451a,451b,・・・,451n,461a,461b,・・・,461nのしきい値電圧Vthを異ならせるようにしてもよい。実施の形態2のその他の構成および作用等は、おおよそ実施の形態1と同じであるので、説明を省略する。
なお、上述したように、ゲートバイアス制御回路45から、温度変化に対する勾配が等しく、かつ電位が異なる複数のゲート信号S80a,S80b,・・・,S80n,S81a,S81b,・・・,S81nが出力される。従って、高温側補正関数発生回路33および低温側補正関数発生回路34において、必ずしも、抵抗素子331a,331b,・・・,331n,341a,341b,・・・,341nの抵抗値や各PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332n,342a,342b,・・・,342nのバックゲート電位が異なるようにする必要はない。
実施の形態3.
図19は、本発明の実施の形態3にかかる温度補償型水晶発振器の要部の構成を示す回路図である。図19に示すように、実施の形態3は、高温側補正関数発生回路33および低温側補正関数発生回路34において、各PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332n,342a,342b,・・・,342nの電流経路に重み付け回路を設けて、各PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332n,342a,342b,・・・,342nを流れる電流量を制御するようにしたものである。
高温側補正関数発生回路33の重み付け回路は、少なくとも一つは抵抗値が異なる複数の抵抗素子334a,334b,・・・,334nにより構成されている。各抵抗素子334a,334b,・・・,334nは、複数の高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nの各ドレイン電極と定電流源333との間に一つずつ接続されている。低温側補正関数発生回路34の重み付け回路は、少なくとも一つは抵抗値が異なる複数の抵抗素子344a,344b,・・・,344nにより構成されている。各抵抗素子344a,344b,・・・,344nは、複数の低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342nの各ドレイン電極と定電流源343との間に一つずつ接続されている。
実施の形態3では、複数の高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nの各出力が、重み付け回路により決まる適当な加算率でもって合成されて、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bのゲート電極電位Vgが得られる。また、複数の低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342nの各出力が、重み付け回路により決まる適当な加算率でもって合成されて、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bのウェル電極電位Vwが得られる。
以上説明したように、実施の形態1にかかる温度補償型水晶発振器によれば、高温側補正関数発生回路33および低温側補正関数発生回路34により、近似2次関数で表される温度特性を有する複数の信号を適当な加算率で合成してゲート側補正信号S9とウェル側補正信号S10を生成し、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bのゲート電極およびウェル電極にそれぞれゲート側補正信号S9およびウェル側補正信号S10を供給するので、ATカット水晶振動子51の3次関数的な温度特性を補償するための近似3次関数で表される温度カーブに合う温度特性を有する補正電圧が得られる。従って、広い温度範囲にわたってATカット水晶振動子51の3次関数的な温度特性を精度よく補償することができる温度補償型水晶発振器が得られる。
また、実施の形態2のように、MOSトランジスタのダイオード接続によるバンドギャップ電位をゲート信号S80a,S80b,・・・,S80n,S81a,S81b,・・・,S81nとして用いる構成にすれば、MOSトランジスタのしきい値電圧Vthの製造ばらつきを補正することができる。さらに、高温側補正関数発生回路33と低温側補正関数発生回路34が同じ回路構成であり、また、高温側補正関数発生回路33への入力信号と低温側補正関数発生回路34への入力信号が偏曲点温度を中心にして対称であるので、全温度域にわたって線形領域を含まない3次関数的な温度特性を有するATカット水晶振動子51の高温側および低温側の両方の温度特性を完全に補償することができる。また、高温側補正関数発生回路33と低温側補正関数発生回路34の構成が同じであることによって、高温側補正関数発生回路33および低温側補正関数発生回路34の温度補正を同様に行うことができる。また、高温側の調整と低温側の調整を個別に行うことができる構成とすれば、高温側と低温側を個別に微調整することができるので、ATカット水晶振動子51の高温側および低温側の両方の温度特性をより完全に補償することができる。
以上において、本発明は、上述した各実施の形態に限らず、種々変更可能である。例えば、添付図面では、高温側補正関数発生回路33および低温側補正関数発生回路34を構成するPMOSトランジスタを3個ずつ示したが、高温側補正関数発生回路33および低温側補正関数発生回路34のPMOSトランジスタの数は2個ずつでもよいし、4個以上ずつでもよい。そして、高温側補正関数発生回路33および低温側補正関数発生回路34のPMOSトランジスタの数に合わせて、ゲートバイアス制御回路35,45における単位構成の数も増減する。
また、可変容量素子として、半導体基板にnウェルを形成し、さらにそのnウェルの中にpウェルを形成することによって、バルク側の電位を任意に設定することができるようにしたバリキャップダイオードを用いることもできる。また、高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nおよび低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342nに代えて、NMOSトランジスタを用いて高温側補正関数発生回路33および低温側補正関数発生回路34を構成することもできる。その場合には、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bのゲート電極に、低温側補正関数発生回路34のNMOSトランジスタのドレイン電位を印加し、第1および第2のMIS型可変容量コンデンサ57a,57bのウェル電極に、高温側補正関数発生回路33のNMOSトランジスタのドレイン電位を印加するようにすればよい。
また、高温側補正関数発生回路33および低温側補正関数発生回路34において、高温側PMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332nおよび低温側PMOSトランジスタ342a,342b,・・・,342nを作製する際にチャネルドープ時の不純物濃度を調整することによって、それらPMOSトランジスタ332a,332b,・・・,332n,342a,342b,・・・,342nのしきい値電圧Vthを異ならせるようにしてもよい。さらに、このようなチャネルドープによるしきい値電圧の調整法、上述した実施の形態1、実施の形態2および実施の形態3を適宜、組み合わせてもよい。また、本発明は、ATカット水晶振動子に限らず、BTやCTやDTなどの他のカット角の水晶振動子を用いた温度補償型水晶発振器にも適用することができる。
以上のように、本発明にかかる温度補償型水晶発振器は、通信機器に搭載する発振器に有用であり、特に、携帯電話機に搭載する発振器に適している。
本発明の実施の形態1にかかる温度補償型水晶発振器の要部の構成を示す回路図である。 本発明の実施の形態1にかかる温度補償型水晶発振器の概略構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態1にかかる温度補償型水晶発振器を構成するゲートバイアス制御回路の一例を示す回路図である。 本発明の実施の形態1にかかる温度補償型水晶発振器を構成するMIS型可変容量コンデンサの一例の概略を示す断面図である。 図4に示すMIS型可変容量コンデンサのC−Vカーブを示す特性図である。 本発明の実施の形態1にかかる温度補償型水晶発振器を構成するゲートバイアス制御回路から出力されるゲート信号の温度特性を示す特性図である。 本発明の実施の形態1にかかる温度補償型水晶発振器を構成する複数のMOSトランジスタのドレイン電流−ゲート電圧の関係を模式的に示す特性図である。 本発明の実施の形態1にかかる温度補償型水晶発振器を構成する複数のMOSトランジスタのドレイン電位とそれらを合成した補正電位の温度特性を示す特性図である。 本発明の実施の形態1にかかる温度補償型水晶発振器を構成するMIS型可変容量コンデンサのゲート電圧の温度特性を示す特性図である。 本発明の実施の形態1にかかる温度補償型水晶発振器を構成するMIS型可変容量コンデンサのゲート電圧の温度特性を示す特性図である。 本発明の実施の形態1にかかる温度補償型水晶発振器を構成するMIS型可変容量コンデンサのゲート電圧の温度特性を示す特性図である。 本発明の実施の形態1にかかる温度補償型水晶発振器における1次成分の補正方法の原理を説明するための説明図である。 本発明の実施の形態1にかかる温度補償型水晶発振器における標準周波数の調整方法の原理を説明するための説明図である。 本発明の実施の形態1にかかる温度補償型水晶発振器における補正電圧の波形と3次関数との比較を示す特性図である。 本発明の実施の形態1にかかる温度補償型水晶発振器の変形例の要部構成を示す回路図である。 本発明の実施の形態1にかかる温度補償型水晶発振器の変形例の要部構成を示す回路図である。 本発明の実施の形態2にかかる温度補償型水晶発振器の概略構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態2にかかる温度補償型水晶発振器を構成するゲートバイアス制御回路の一例を示す回路図である。 本発明の実施の形態3にかかる温度補償型水晶発振器の要部の構成を示す回路図である。 従来の温度補償型水晶発振器の概略構成を示すブロック図である。 従来の温度補償型水晶発振器の概略構成を示すブロック図である。 MOSトランジスタのドレイン電流−ゲート電圧の関係を模式的に示す特性図である。 従来の温度補償型水晶発振器における補正電圧の波形と3次関数との比較を示す特性図である。
符号の説明
33 第1の補正関数発生回路(高温側補正関数発生回路)
34 第2の補正関数発生回路(低温側補正関数発生回路)
35,45 バイアス電位発生回路(ゲートバイアス制御回路)
40 反転回路
51 水晶振動子
57a,57b 可変容量素子
331a〜331n,341a〜341n,334a〜334n,344a〜344n 抵抗素子
332a〜332n,342a〜342n,451a〜451n,461a〜461n MOSトランジスタ



Claims (10)

  1. 水晶振動子と、
    複数のバイアス電位を発生するバイアス電位発生回路と、
    前記バイアス電位発生回路で発生した複数のバイアス電位のそれぞれに基づいて、温度変化に対して電位が2次関数的に変化する信号をそれぞれ発生する複数のMOSトランジスタを有し、各MOSトランジスタで発生した信号を合成して、温度変化に対して電位が2次関数的に変化する第1の補正信号を発生する第1の補正関数発生回路と、
    前記バイアス電位発生回路で発生した複数のバイアス電位のそれぞれに基づいて、温度変化に対して電位が2次関数的に変化する信号をそれぞれ発生する複数のMOSトランジスタを有し、各MOSトランジスタで発生した信号を合成して、温度変化に対して電位が2次関数的に変化する第2の補正信号を発生する第2の補正関数発生回路と、
    前記水晶振動子に接続され、前記第1の補正信号と前記第2の補正信号との電位差に基づいて容量が変化する発振周波数調整用の可変容量素子と、
    を備えることを特徴とする温度補償型水晶発振器。
  2. 温度変化に対して発振周波数が3次関数的に変化する温度特性を有する水晶振動子と、
    温度変化に対して電位が1次関数的に変化する第1の入力信号を、前記水晶振動子の3次関数的な温度特性の偏曲点を中心に反転して、温度変化に対して電位が1次関数的に変化する第2の入力信号を生成する反転回路と、
    複数のバイアス電位を発生するバイアス電位発生回路と、
    前記第1の入力信号と、前記バイアス電位発生回路で発生した複数のバイアス電位のそれぞれとに基づいて、温度変化に対して電位が2次関数的に変化する信号をそれぞれ発生する複数のMOSトランジスタを有し、各MOSトランジスタで発生した信号を合成して、温度変化に対して電位が2次関数的に変化する第1の補正信号を発生する第1の補正関数発生回路と、
    前記第2の入力信号と、前記バイアス電位発生回路で発生した複数のバイアス電位のそれぞれとに基づいて、温度変化に対して電位が2次関数的に変化する信号をそれぞれ発生する複数のMOSトランジスタを有し、各MOSトランジスタで発生した信号を合成して、温度変化に対して電位が2次関数的に変化する第2の補正信号を発生する第2の補正関数発生回路と、
    前記水晶振動子に接続され、前記第1の補正信号と前記第2の補正信号との電位差に基づいて容量が変化する発振周波数調整用の可変容量素子と、
    を備えることを特徴とする温度補償型水晶発振器。
  3. 前記第1の補正関数発生回路内の複数の前記MOSトランジスタの各ソースに抵抗素子が接続されており、複数の該抵抗素子のうち、少なくとも一つは抵抗値が他と異なり、かつ前記第2の補正関数発生回路内の複数の前記MOSトランジスタの各ソースに抵抗素子が接続されており、複数の該抵抗素子のうち、少なくとも一つは抵抗値が他と異なることを特徴とする請求項1または2に記載の温度補償型水晶発振器。
  4. 前記第1の補正関数発生回路内の複数の前記MOSトランジスタの各バックゲート電位のうち、少なくとも一つは他と異なり、かつ前記第2の補正関数発生回路内の複数の前記MOSトランジスタの各バックゲート電位のうち、少なくとも一つは他と異なることを特徴とする請求項1または2に記載の温度補償型水晶発振器。
  5. 前記第1の補正関数発生回路内の複数の前記MOSトランジスタの各ドレインに抵抗素子が接続されており、複数の該抵抗素子のうち、少なくとも一つは抵抗値が他と異なり、かつ前記第2の補正関数発生回路内の複数の前記MOSトランジスタの各ドレインに抵抗素子が接続されており、複数の該抵抗素子のうち、少なくとも一つは抵抗値が他と異なることを特徴とする請求項1または2に記載の温度補償型水晶発振器。
  6. 前記第1の補正関数発生回路内の複数の前記MOSトランジスタの各しきい値電圧のうち、少なくとも一つは他と異なり、かつ前記第2の補正関数発生回路内の複数の前記MOSトランジスタの各しきい値電圧のうち、少なくとも一つは他と異なることを特徴とする請求項1または2に記載の温度補償型水晶発振器。
  7. 前記バイアス電位発生回路は、抵抗分割により複数のバイアス電位を発生することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の温度補償型水晶発振器。
  8. 前記バイアス電位発生回路は、ダイオード接続された複数のMOSトランジスタを有し、複数の該MOSトランジスタのバンドギャップ電位をバイアス電位として発生することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の温度補償型水晶発振器。
  9. 前記第1の補正関数発生回路内の複数の前記MOSトランジスタおよび前記第2の補正関数発生回路内の複数の前記MOSトランジスタは、PチャネルMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の温度補償型水晶発振器。
  10. 前記可変容量素子は、前記第1の補正信号および前記第2の補正信号のいずれか一方の信号に基づいてゲート電極電位が印加され、かつ他方の信号に基づいてウェル電極電位が印加されるMIS型可変容量コンデンサであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の温度補償型水晶発振器。

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