JP2005283406A - 特定領域のキャラクタリゼーション方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 微小領域のキャラクタリゼーションを効率化し、分析情報を拡大する。
【解決手段】 走査型プローブ顕微鏡で物性情報を取得し、特定物性を示す領域からその部位をプローブで採取し、それを所望の情報が得られる分析方法で分析する。該物性情報は、高さ、摩擦、粘弾性、硬度、表面吸着力、表面電位、仕事関数、電子密度、抵抗値、誘電率、磁化率からなる群より選択される少なくとも一つである。該分析方法は、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、電子プローブマイクロアナリシス、オージエ電子分光、2次イオン質量分析、アトムプローブ、赤外分光、レーザーラマン分光、誘導結合プラズマ、液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフからなる群より選択される少なくとも一つの方法である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、試料表面のキャラクタリゼーション方法に関し、特に、特定領域を選択的にキャラクタリゼーションする方法に関する。
材料開発において、特異的な物性を示す部位を効率的にキャラクタリゼーションすることは、効率的な材料開発につながる。特にナノテクノロジーという言葉に代表されるように昨今のナノ領域を舞台とする様々な材料系の開発には、特定個所、それもナノ領域の特定個所を信頼性よく最小の手間でキャラクタリゼーションすることは益々重要となっている。
特定個所のキャラクタリゼーションには様々な方法があり、例えば、収束イオンビームを応用したマイクロサンプリング(特許文献1)という手法がある(図6参照)。これは、収束イオンビームを用いて試料の所望の小切片のみを切り出し(図6(a)〜(c))、別途用意した位置制御可能なプローブと該小切片を成膜によって接合し(図6(d)〜(e))、その切り出した試料を採取する(図6(f)〜(g))方法で、さらに薄片化することで透過型電子顕微鏡により観察や分析を行うことが可能である。
この方法は従来の透過型電子顕微鏡の試料作製方法と比較すると飛躍的な位置選択性と省力化・効率化を実現しているが、それでも小切片として切り出すまでの手間もかかるし、物性情報との結びつきが間接的であった。
また、走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)を応用した微小部の組成、化学状態、構造分析装置および方法が開示されている(特許文献2:走査プローブ顕微鏡、図7参照)。これは、走査プローブ顕微鏡とガス成分の質量分析機構を組み合わせたものである。図7において、走査プローブ22から電子30を試料表面28に向かって放出させ、それによって生じた試料からのガス成分31を、ガス採取管32を通して、ガス質量分析検出器33で分析するものである。また、類似した手法として、加熱手段機構およびガス採取管付きの走査プローブによって、微小部の組成、化学状態、構造分析装置および方法が開示されている(図8参照)。すなわち図8において試料表面49を加熱したプローブ42で部分的に加熱し、発生したガス51をプローブ内に設けたガス採取管44を通してガスクロマトMS55に導き、微小部の組成、化学状態、構造分析を知る装置である(特許文献3:ガスクロマトグラフ走査プローブ顕微鏡)。
これらの方法は、微小部の化学組成や状態、構造を知る手段として有効であるが、試料の各場所が示す物性値とキャラクタリゼーションした結果の結びつきと言う点では、間接的である。
特開平5−52721号公報 特開2003−004621号公報 特開2003−254886号公報
本発明は、特定個所のキャラクタリゼーションにおいて、従来の方法に比べ、
(1)さらに小さな領域からのサンプリング
(2)物性値情報に直接結びついた選択サンプリング
(3)試料加工など、手間の省力化
(4)幅広いキャラクタリゼーション内容
を可能にする手段を提供することを目的とする。
上記課題に対し、鋭意検討した結果、下記の発明に至った。すなわち、
走査型プローブ顕微鏡(SPM)で物性情報を取得し、特定領域から走査プローブで試料を採取、それを所望の情報が得られる分析方法で分析する。
ここで、SPMによって得られる物性情報は、高さ、摩擦、粘弾性、硬度、表面吸着力、表面電位、仕事関数、電子密度、抵抗値、誘電率、または磁化率である。
また、走査プローブを加振させた状態で物性情報を取得し、その加振を停止させた状態で試料を採取することを特徴とし、採取された試料を分析する手法が、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、電子プローブマイクロアナリシス、オージエ電子分光、2次イオン質量分析、アトムプローブ、赤外分光、レーザーラマン分光、または誘導結合プラズマであることを特徴とする。
微小領域の物性の違いと材料の組成、化学状態、結晶構造、化学構造を直接結びつけることができ、物性の発現要因を速やかに把握することができる。
本発明は、任意の物理量による物性マッピング、その情報に基づく特定個所のサンプリング、サンプリング試料の分析、という手順で実施される。
その実施の形態は、任意の物理量による物性マッピングでは、走査型プローブ顕微鏡としての代表的な、原子間力顕微鏡、トンネル顕微鏡、およびそれらを発展させた任意の物性を計測できるプローブ顕微鏡を用いることができる。例えば、高さ、摩擦、粘弾性、硬度、表面吸着力、表面電位、仕事関数、電子密度、抵抗値、誘電率、磁化率が挙げられる。
これらの物性値を得る走査プローブ顕微鏡の動作に制限はなく、プローブを常にコンタクトした状態でもよく、断続的に接触した状態でもよく、非接触な状態でもよい。
プローブの材料も特に制限はなく、原子間力顕微鏡の場合では、一般的に用いられているSi、Si単結晶プローブ、あるいはダイヤモンド製のものでもよい。トンネル顕微鏡の場合は、W、Pt主成分の先端を先鋭化したものが一般的である。
さらには、カーボンナノチューブに代表されるような結晶性のナノチューブを用いることも可能である。
サンプリングにおいては、所望の位置において、プローブの斥力を高め、プローブ先端を試料表面に押し付けることによって、プローブ先端に試料を付着させてもよいし、こすりつけるようにして試料を付着させてもよい。
サンプリングした試料は、プローブ先端に付着した状態で分析することになる。採取された試料を分析する手法は、微小部が観察・分析できる手法や微量成分まで検出できる分析手法が望ましい。例えば、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、電子プローブマイクロアナリシス、オージエ電子分光、2次イオン質量分析、アトムプローブ、赤外分光、レーザーラマン分光、誘導結合プラズマ、液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフ、などが挙げられる。
実施例を挙げ、本発明をさらに詳述する。
高さイメージで表面形態の観察を行い、その情報から選択的に特定部位をサンプリングし、そのサンプリング試料の元素分析を行い、定性分析を行った。図2を参照する。
清浄な金属W膜をAuと接触させ、再び離した面をタッピング(Tapping)−AFMにより観察したところ、数ナノオーダーの付着物がところどころに見られた。走査モードをコンタクトモードに変更し、この付着物の上でプローブの触圧を高め、押し込んだ。
次に、このプローブを透過型電子顕微鏡に導入し、STEMモードでプローブ先端を観察したところ、付着物が観察できた。この付着物をEDS分析したところ、Auであることが確認された。
なお、このような分析は付着物の大きさにもよるが、オージエ電子分光やアトムプローブによっても可能である。
ここでは、材料の機械的特性にてイメージングを行い、その特性情報から特定部位をサンプリングし、その材料の構造情報を質量分析にて得た。図3と図4を参照する。
ポリエステルとスチレンアクリルを130℃で加熱混練したバルク試料の一部をミクロトームで平坦化した(薄片化した試料でなくバルク試料の一部を平坦化した面を分析)。
この面について、カンチレバーを加振させながら断続的に試料表面に接触させるタッピング−AFMとカンチレバーホルダの固有振動数を用いて粘弾性の測定を行った。30μm領域の粘弾性イメージから数ミクロンオーダーの2種類の特性をもつ領域が観察された。
このうち、相対的に弾性の大きい領域に走査プローブを位置させ、コンタクトモードに切り替えた後、触圧を増加させ、プローブ先端を試料に押し込んだ。
このプローブを飛行時間型質量分析装置に導入し、プローブ先端の質量分析を行った。1次イオンはGa+(25kV)を用いた。先ずは2次イオンポジティブ(positive)で検出したところ、最も強度の大きい質量がM/e=45であった。これは、COに対応すると考えられた。この他にも、M/e=15、27、28、29、31などが検出され、それぞれCH、C、C、C、CHOに対応すると考えられた。一方、2次イオンの極性をネガティブ(negative)にすると、M/e=16、41、43、59などが強く検出された。これらは、それぞれO、CHO、CO、Cに対応すると考えられた。以上の分析結果から、相対的に弾性の大きい領域はポリエチレンであることが示唆された。
このことは、相対的に弾性の小さい領域を上記と同様な方法でサンプリングし、TOF−SIMSで質量分析してみた結果によって裏付けられた。すなわち、ポジティブ(positive)の2次イオンでは、M/e=24、27、91などが強い信号として検出され、これらはそれぞれ、C、C、Cに対応すると考えられた。一方、ネガティブ(negative)の2次イオンでは、M/e=12、13、24、25などが強く検出され、これらはそれぞれ、M/e=C、CH、C、CHに対応すると考えられた。
以上の結果は、相対的に弾性の小さい領域はポリスチレンであることを示唆している。
なお、今回は物性情報取得手段として、粘弾性という物性を選択したが、上記材料系においては、水平力を利用した、いわゆる摩擦力の検出や、タッピング−AFMにおけるカンチレバーの駆動位相と実際のカンチレバーの振動位相との差をコントラスト化する位相イメージング、コンタクトAFMにおけるフォースカーブによる凝着力、誘電率のイメージングによっても、材料の違いによる分布を可視化することが可能である。
図5を参照する。Siウエハー上にPtを用いて100nmスパッタ法にて成膜した後、レジストを塗布、電極のパターニングのため、マスクによる露光を行った。その後、Arプラズマ中でのドライエッチングによりパターニングを行い、さらに、酸素プラズマによるアッシングによりレジストを除去した。
パターニングされたPt膜表面を表面電位顕微鏡で高さイメージとともに測定した。測定範囲は10μm□である。形状はタッピングモードで行い、表面電位の測定は非接触モードで行った。その結果、一部に電位の高い部位が観察された。
この部位において、コンタクトモードに切り替え、走査プローブの触圧を挙げながら、数百ナノレベル範囲のスキャンを行った。
次にこのプローブの先端をTOF−SIMSにて分析したところ、清浄な測定前のプローブ先端に比べ、カーボンが多く検出され、硫黄の信号も検出された。
このことから、上記高電位領域には、レジストの残渣が存在していることがわかった。
本発明により物性の発現要因を速やかに把握することができ、材料開発が円滑に進むことが期待できる。
本発明の特定領域のキャラクタリゼーション方法を示す概念図である。 本発明による実施例を説明するための図である。 本発明による別の実施例を説明するための図である。 本発明による別の実施例を説明するための図である。 本発明による別の実施例を説明するための図である。 従来技術の工程を説明するための図である。 従来技術の工程を説明するための図である。 本発明の工程を説明するための図である。
符号の説明
1:タングステン(W)膜表面
2:付着した金(Au)の微粒子
3:加熱混練してブレンドしたバルクポリマー
4:ガラス基板
5:ミクロトームによって平坦化されたバルクポリマーの平坦部
6:粘弾性が大きい領域
7:粘弾性が小さい領域
8:Si基板の表面電位イメージ
9:Pt電極の表面電位イメージ
10:Pt電極上で周囲より電位の高いイメージ
11:集束イオンビーム
12:試料基板
13:角穴
14:底穴
15:切り欠き溝
16:ノズル
17:ガス
18:堆積膜
19:分離試料
20:プローブ
21:カンチレバー
22:走査プローブ
23:変位検出用レーザービーム発信器
24:フォトダイオード
25:入射レーザー光
26:反射レーザー光
27:試料ステージ
28:試料
29:プローブ走査部
30:電子線
31:発生ガス
32:ガス採取管
33:検出部
40:ホルダ
41:カンチレバー
42:プローブ
43:ガス導管(カンチレバー内)
44:ガス導管(プローブ内)
45:ヒーター
46:走査プローブ顕微鏡全体
47:ピエゾスキャナ
48:観察試料
49:観察試料の表面
50:輻射熱
51:観察試料の表面から放出されるガス
52:キャピラリー(ガス導管)
53:キャピラリーカラム
54:質量分析器
55:ガスクロマトグラフ質量分析器
56:ガスクロマトグラフ

Claims (4)

  1. 特定領域のキャラクタリゼーション方法において、走査型プローブ顕微鏡により試料表面の物性情報を取得し、その情報を位置の関数として記憶させ、その情報に基づき所望の物性を示す試料表面部位から走査プローブを用いて該部位を採取し、該採取した試料を所望の情報が得られる分析法によって分析することを特徴とする特定領域のキャラクタリゼーション方法。
  2. 前記走査型プローブ顕微鏡によって得られる物性情報が、高さ、摩擦、粘弾性、硬度、表面吸着力、表面電位、仕事関数、電子密度、抵抗値、誘電率、磁化率からなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載の特定領域のキャラクタリゼーション方法。
  3. 前記走査プローブを加振させた状態で前記物性情報を取得し、その加振を停止させた状態で前記試料を採取することを特徴とする請求項1または2に記載の特定領域のキャラクタリゼーション方法。
  4. 前記採取された試料を分析する手法が、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、電子プローブマイクロアナリシス、オージエ電子分光、2次イオン質量分析、アトムプローブ、赤外分光、レーザーラマン分光、誘導結合プラズマ、液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフからなる群より選択される少なくとも一つの方法であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の特定領域のキャラクタリゼーション方法。
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