JP2005281399A - 分子鋳型材料の製造方法、分子鋳型材料および標的物質の分離・精製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 標的物質を効果的に吸着する分子鋳型材料を、簡単な操作で効率よく製造する方法、および標的物質の吸着能に優れた分子鋳型材料を提供する。
【解決手段】 水膨潤状態の官能基を有するゲルに、分離対象となる物質を吸着させ、次いでそのゲルを乾燥処理したのち再膨潤させて、吸着した物質を脱着させることにより分子鋳型材料を製造する方法、およびセルロースにアリルアミン系重合体を導入したゲルからなり、特定の物質(標的物質)に対する吸着能を有する分子鋳型材料である。
【選択図】 なし
【解決手段】 水膨潤状態の官能基を有するゲルに、分離対象となる物質を吸着させ、次いでそのゲルを乾燥処理したのち再膨潤させて、吸着した物質を脱着させることにより分子鋳型材料を製造する方法、およびセルロースにアリルアミン系重合体を導入したゲルからなり、特定の物質(標的物質)に対する吸着能を有する分子鋳型材料である。
【選択図】 なし
Description
本発明は、分子鋳型材料の製造方法、分子鋳型材料および標的物質の分離・精製方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、官能基を有するゲルを用い、特定の物質を効果的に吸着する分子鋳型材料を効率よく製造する方法、セルロースにアリルアミン系重合体が導入されたゲルからなる分子鋳型材料、および分子鋳型材料を用いて、被処理液中の標的物質を効果的に吸着させ、分離・精製する方法に関するものである。
水に溶解した分子、あるいは分散しているコロイド粒子を、その化学構造と特性に基づいて分離することは、各種の産業プロセスや、化学・生物学研究に不可欠の技術である。分離技術の一つとして、アフィニティー分離法がある。
生物起源の物質には、酵素と基質、酵素と特異的インヒビター、抗原と抗体、レクチンと糖又は糖タンパク質、ホルモンとホルモン受容体のように、相互に特異的な親和性を示す相補的な物質の対が存在することが知られている。アフィニティー分離法は、前記の相補的な物質の対の一方の物質を用い、「対」の内の他方の物質(標的物質)を捕捉し、分離する方法である。
しかしながら、このようなアフィニティー分離法においては、標的物質によって、相補的な物質が見つからない、あるいは十分な量が得られないことがある。
しかしながら、このようなアフィニティー分離法においては、標的物質によって、相補的な物質が見つからない、あるいは十分な量が得られないことがある。
そこで、標的物質に対して特異的な親和性を有する分子またはマトリクスをテーラーメード的に合成する技術が提案されている。この技術は、一般に、標的物質に、その表面に露出している官能基と結合する官能基を有する重合性低分子物質を結合させ、その状態で該重合性低分子物質を重合させることにより、標的物質を固定したのち、該標的物質を脱着し、いわゆる分子鋳型材料を作製する技術である。
このようにして得られた分子鋳型材料は、標的物質と相互作用し得る官能基を有すると共に、標的物質が入り込める空間を有することから、標的物質を効果的に吸着する。
このようにして得られた分子鋳型材料は、標的物質と相互作用し得る官能基を有すると共に、標的物質が入り込める空間を有することから、標的物質を効果的に吸着する。
しかしながら、分子鋳型材料のこのような従来の製造方法においては、(1)標的物質ごとに適切な原料の低分子物質を選定し、その固定法を設計しなければならない、(2)重合性低分子物質を用いるために、重合反応が標的物質に対しても起こると、固定化後、標的物質の脱着が困難となる、(3)精密な反応制御を必要とするため、コストと手間がかかり、大量用途には不適である、などの問題がある。
一方、セルロースなどの隣接ジオール基を有する化合物とポリアミン類とを、共有結合で結合させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、セルロースなどの隣接ジオール基を有する化合物とポリアミン類とを、共有結合で結合させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
本発明は、分子鋳型材料におけるこのような従来の製造方法が有する問題を解決し、標的物質を効果的に吸着する分子鋳型材料を、簡単な操作で効率よく製造する方法、標的物質の吸着能に優れた分子鋳型材料、および分子鋳型材料を用いて、被処理液中の標的物質を分離・精製する方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、官能基を有するゲルを用い、水膨潤状態で分離対象となる物質を吸着させ、乾燥後、再膨潤させて吸着した物質を脱着させるという、簡単な操作で所望の分子鋳型材料が効率よく得られることを見出した。
また、前記特許文献1に記載の方法により、セルロースにアリルアミン系重合体を効率よく導入することができ、このゲルから製造した鋳型材料は、これまで知られていない新規な分子鋳型材料であって、これを用いることにより、被処理液中の標的物質を効果的に分離・精製し得ることを見出した。
また、前記特許文献1に記載の方法により、セルロースにアリルアミン系重合体を効率よく導入することができ、このゲルから製造した鋳型材料は、これまで知られていない新規な分子鋳型材料であって、これを用いることにより、被処理液中の標的物質を効果的に分離・精製し得ることを見出した。
本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)水膨潤状態の官能基を有するゲルに、分離対象となる物質を吸着させ、次いでそのゲルを乾燥処理したのち再膨潤させて、吸着した物質を脱着させることを特徴とする分子鋳型材料の製造方法、
(2)官能基を有するゲルが、アミノ基および水酸基を有するゲルである上記(1)項に記載の方法、
(3)官能基を有するゲルが、セルロースにアリルアミン系重合体が導入されたゲルである上記(2)項に記載の方法、
(4)分離対象となる物質がタンパク質である上記(1)、(2)または(3)項に記載の方法、
(5)吸着した物質の脱着を、界面活性剤を用いて行う上記(1)ないし(4)項のいずれか1項に記載の方法、
(6)セルロースにアリルアミン系重合体を導入したゲルからなり、特定の物質(標的物質)に対する吸着能を有することを特徴とする分子鋳型材料、
(7)セルロースに導入されたアリルアミン系重合体が、アミノ基の少なくとも一部がアセチル化されたものである上記(6)項に記載の分子鋳型材料、
(8)標的物質がタンパク質である上記(6)または(7)項に記載の分子鋳型材料、および
(9)上記(1)ないし(5)項のいずれか1項に記載の方法で製造された分子鋳型材料、あるいは上記(6)、(7)または(8)項に記載の分子鋳型材料に被処理液を接触させ、該被処理液中に存在する標的物質を、前記分子鋳型材料に吸着させることを特徴とする標的物質の分離・精製方法、
を提供するものである。
(1)水膨潤状態の官能基を有するゲルに、分離対象となる物質を吸着させ、次いでそのゲルを乾燥処理したのち再膨潤させて、吸着した物質を脱着させることを特徴とする分子鋳型材料の製造方法、
(2)官能基を有するゲルが、アミノ基および水酸基を有するゲルである上記(1)項に記載の方法、
(3)官能基を有するゲルが、セルロースにアリルアミン系重合体が導入されたゲルである上記(2)項に記載の方法、
(4)分離対象となる物質がタンパク質である上記(1)、(2)または(3)項に記載の方法、
(5)吸着した物質の脱着を、界面活性剤を用いて行う上記(1)ないし(4)項のいずれか1項に記載の方法、
(6)セルロースにアリルアミン系重合体を導入したゲルからなり、特定の物質(標的物質)に対する吸着能を有することを特徴とする分子鋳型材料、
(7)セルロースに導入されたアリルアミン系重合体が、アミノ基の少なくとも一部がアセチル化されたものである上記(6)項に記載の分子鋳型材料、
(8)標的物質がタンパク質である上記(6)または(7)項に記載の分子鋳型材料、および
(9)上記(1)ないし(5)項のいずれか1項に記載の方法で製造された分子鋳型材料、あるいは上記(6)、(7)または(8)項に記載の分子鋳型材料に被処理液を接触させ、該被処理液中に存在する標的物質を、前記分子鋳型材料に吸着させることを特徴とする標的物質の分離・精製方法、
を提供するものである。
本発明によれば、官能基を有するゲルを用い、特定の物質を効果的に吸着する分子鋳型材料を効率よく製造する方法、セルロースにアリルアミン系重合体が導入されたゲルからなる分子鋳型材料、および分子鋳型材料を用いて、被処理液中の標的物質を効果的に吸着させ、分離・精製する方法を提供することができる。
本発明の分子鋳型材料の製造方法においては、水膨潤状態の官能基を有するゲルに、分離対象となる物質を吸着させ、次いでそのゲルを乾燥処理したのち再膨潤させて、吸着した物質を脱着させることにより分子鋳型材料を製造する。
本発明において、前記ゲルの官能基としては、例えば水酸基、アミノ基のようなカチオン基、スルホン酸基のようなアニオン基、アミド基、アルキル基、芳香族基等が挙げられる。官能基は、選択的な分子鋳型材料を製造するために、例えば、アミノ基と水酸基等の2種類以上を含むことが好ましい。
官能基を含むゲルを製造する際の基本ゲルとしては、乾燥により不可逆的な収縮能を有するゲルであれば特に限定されないが、多糖ゲルのような有機高分子ゲルが好ましく、そのうち、セルロース、アガロース、カラゲナン等の水酸基を含む多糖ゲルがより好ましい。
官能基を含むゲルを製造する際の基本ゲルとしては、乾燥により不可逆的な収縮能を有するゲルであれば特に限定されないが、多糖ゲルのような有機高分子ゲルが好ましく、そのうち、セルロース、アガロース、カラゲナン等の水酸基を含む多糖ゲルがより好ましい。
本発明に用いる官能基を有するゲルを得る方法としては、例えば、多糖ゲルの水酸基を利用する方法がある。具体的には、(1)特開2003−119290号公報に記載されているように、セルロースを基本ゲルとして用いこれを酸化反応させ、得られるジアルデヒドセルロースに第一アミノ基を有する化合物を反応させてシッフベースをつくり、それを還元処理してアミノ基等の官能基を導入する方法、(2)多糖ゲルにエピクロロヒドリン、次いで、アンモニア水と反応させて3−アミノー2−ヒドロキシプロピル基を導入して官能基を含むゲルを製造する方法(このようなゲルは、生化学工業株式会社からアミノセルロファインとして入手することができる)などを例示することができる。
上記(1)の方法においては、基本ゲルとしてのセルロースは再生セルロースが好ましく、第一級アミノ基を有する化合物としては、アリルアミンをモノマーとして用いるアリルアミン系重合体(例えば、ポリアリルアミン、アミノ基の一部がアセチル化又はアルキル化されたポリアリルアミン)、ポリビニルアミン、ポリリジン、キトサン等の第一級アミノ基を複数有する高分子化合物が好ましい。さらに、本発明においては、複数の官能基が様々に作用して分離対象となる物質を吸着させる材料を得る目的から、アミノ基の一部がアセチル化やアルキル基等で修飾されたポリアリルアミン、すなわち、修飾ポリアリルアミンが特に好ましい。
本発明において、分離対象となる物質としては、有機高分子化合物が好適であり、そのうち、カチオン基、アニオン基、疎水基等の様々な官能基を有している点からタンパク質が特に好適である。
本発明において、官能基を有するゲルに分離対象となる物質を吸着させる場合には、そのゲルを水膨潤させ、それにタンパク質のような分離対象となる物質の水溶液を室温で加えることにより吸着させることが好ましい。
本発明において、官能基を有するゲルに分離対象となる物質を吸着させる場合には、そのゲルを水膨潤させ、それにタンパク質のような分離対象となる物質の水溶液を室温で加えることにより吸着させることが好ましい。
本発明において、分離対象となる物質としてタンパク質を用いる場合、タンパク質を吸着したゲルを乾燥させるには、タンパク質の安定性の点から、凍結乾燥することが好ましい。
本発明においては、ゲルを乾燥することにより、分離対象物質が結合したゲルを固体として得ることができる。ゲルを乾燥するには、凍結乾燥、室温又は加熱による普通乾燥、固着防止剤(エチレングリコール、無機塩など)を含浸させて乾燥する方法がある。その固体を、再膨潤させて吸着した物質を脱着させることにより、目的の分子鋳型材料を製造することができる。吸着したタンパク質を脱着させるには、界面活性剤、塩素系漂白剤、強アルカリ、タンパク分解酵素を含む溶液による脱着が好ましく、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)のような界面活性剤を含む水溶液で再膨潤させることがさらに好ましい。
脱着して得られる分子鋳型材料は、乾燥工程により不可逆的な収縮能を有するゲルであり、分離対象物質と相互作用できる官能基を有し、かつ、分離対象物質が入り込める空間を有する。したがって、例えば、複数のタンパク質を含む溶液を分子鋳型材料に接触させることにより、特定のタンパク質を選択的に吸着することも可能である。
脱着して得られる分子鋳型材料は、乾燥工程により不可逆的な収縮能を有するゲルであり、分離対象物質と相互作用できる官能基を有し、かつ、分離対象物質が入り込める空間を有する。したがって、例えば、複数のタンパク質を含む溶液を分子鋳型材料に接触させることにより、特定のタンパク質を選択的に吸着することも可能である。
本発明の方法で得られた分子鋳型材料を、分離対象物質吸着の用途に用いる場合、特に限定はしない。例えば、分子鋳型材料をカラムクロマトグラフィーの充填材として用いて、その充填材に分離対象物質を含む溶液を加えて特定の物質のみを分離することができる。また、分離対象物質を含む溶液に分子鋳型材料を加えて、ろ過またはデカントして、分離対象物質が吸着している分子鋳型材料を除去してその溶液から分離対象物質を分離することもできる。
本発明はまた、セルロースにアリルアミン系重合体を導入したゲルからなり、特定の物質(標的物質)に対する吸着能を有する分子鋳型材料をも提供する。この分子鋳型材料は、標的物質として、タンパク質を吸着するのに好ましく用いられる。また、上記アリルアミン系重合体としては、アミノ基の一部がアセチル化などで修飾されたポリアリルアミンが好適である。
この本発明の分子鋳型材料は、前述の本発明の方法により、製造することができる。
本発明は、さらに、前述の本発明の方法で製造された分子鋳型材料、あるいは前記本発明の分子鋳型材料に被処理液を接触させ、該被処理液中に存在する標的物質を、前記分子鋳型材料に吸着させることにより、標的物質を分離・精製する方法をも提供する。
本発明は、さらに、前述の本発明の方法で製造された分子鋳型材料、あるいは前記本発明の分子鋳型材料に被処理液を接触させ、該被処理液中に存在する標的物質を、前記分子鋳型材料に吸着させることにより、標的物質を分離・精製する方法をも提供する。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
実施例1 分子鋳型材料の製造
(1)セルロースの過ヨウ素酸酸化によるジアルデヒドセルロースの調製
多孔性セルロースゲル試料として、「セルロファインCPB−06sf」[商品名、チッソ(株)製、粒子径25〜53μm]を用い、乾燥重量で2g相当を60mLの蒸留水中で懸濁させ、5%の酸化度となるだけの量(それぞれグルコース100個につきアルデヒド基が10個導入されるだけの量)の過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)を加え全体を100mLとしてアルミホイルで全体を包み室温で24時間攪拌し処理した。24時間後に反応懸濁液の一部を取り出し遠心機にかけ上澄みをとりだし、その上澄み液の225nmの吸光度を分光光度計で測定し、あらかじめ作成しておいた検量線から過ヨウ素酸残存量を求め、過ヨウ素酸の消費量から酸化度を求めた。その後、デカンテーションによって水洗した。
実施例1 分子鋳型材料の製造
(1)セルロースの過ヨウ素酸酸化によるジアルデヒドセルロースの調製
多孔性セルロースゲル試料として、「セルロファインCPB−06sf」[商品名、チッソ(株)製、粒子径25〜53μm]を用い、乾燥重量で2g相当を60mLの蒸留水中で懸濁させ、5%の酸化度となるだけの量(それぞれグルコース100個につきアルデヒド基が10個導入されるだけの量)の過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)を加え全体を100mLとしてアルミホイルで全体を包み室温で24時間攪拌し処理した。24時間後に反応懸濁液の一部を取り出し遠心機にかけ上澄みをとりだし、その上澄み液の225nmの吸光度を分光光度計で測定し、あらかじめ作成しておいた検量線から過ヨウ素酸残存量を求め、過ヨウ素酸の消費量から酸化度を求めた。その後、デカンテーションによって水洗した。
(2)ジアルデヒドセルロースのアルデヒド基量の確認
得られたジアルデヒドセルロースの乾燥重量で0.1g相当と、酸化度10%のジアルデヒドセルロース0.1gのアルデヒド基と完全に反応できるだけの量のヒドロキシルアミンとをpH4.5の酢酸緩衝液中で室温にて攪拌し、シッフ塩基反応を行った。この反応によってジアルデヒドセルロースのアルデヒド基とヒドロキシルアミンとを結合させ、24時間後に蒸留水で水洗しろ過によって固形分を回収し105℃で一晩乾燥させ、元素分析を行い、その窒素含量から実際に達せられた酸化度(反応に関わることのできるアルデヒド基量)を求めた。
その結果、ほぼ計算値どおり酸化していることを確認した。
得られたジアルデヒドセルロースの乾燥重量で0.1g相当と、酸化度10%のジアルデヒドセルロース0.1gのアルデヒド基と完全に反応できるだけの量のヒドロキシルアミンとをpH4.5の酢酸緩衝液中で室温にて攪拌し、シッフ塩基反応を行った。この反応によってジアルデヒドセルロースのアルデヒド基とヒドロキシルアミンとを結合させ、24時間後に蒸留水で水洗しろ過によって固形分を回収し105℃で一晩乾燥させ、元素分析を行い、その窒素含量から実際に達せられた酸化度(反応に関わることのできるアルデヒド基量)を求めた。
その結果、ほぼ計算値どおり酸化していることを確認した。
(3)複合修飾セルロースの調製
pH5に調整した分子量5000のポリアリルアミン[PAA、日東紡績(株)製]またはPAAのアミノ基の50モル%がアセチル化された試料(PAA−50a)をそれぞれの乾燥重量でDAC(ジアルデヒドセルロース):PAA=1:2となるような条件で、全体を10mLとして室温で所定時間攪拌し、シッフ塩基反応によってジアルデヒドセルロースゲルのアルデヒド基にポリアリルアミン(あるいは部分アセチル化ポリアリルアミン)を導入した。その後、NaBH3CNで4時間還元し、デカンテーションにより十分に洗浄した。一部を元素分析によって窒素含量測定を行いアミノ基の導入量を算出した。以後、DACにPAAを結合させ、セルロースの水酸基を初め、アミノ基、アセチル基、アミドなどの官能基を持ち親水性、疎水性などの性質を複合的に備えたこのゲルを複合修飾セルロースゲルと呼ぶ。
元素分析により、窒素導入量測定から得られた複合修飾セルロース中の官能基量を求めた(ただし、窒素原子がアミノ基、アミド基のいずれかのみを構成していると仮定した場合、酸化度5%DAC)。PAA−50a結合セルロースは、アミノ基が0.29ミリモル/g、アセチル基が0.29ミリモル/gであり、PAA結合セルロースは、アミノ基が0.84ミリモル/gであった。
pH5に調整した分子量5000のポリアリルアミン[PAA、日東紡績(株)製]またはPAAのアミノ基の50モル%がアセチル化された試料(PAA−50a)をそれぞれの乾燥重量でDAC(ジアルデヒドセルロース):PAA=1:2となるような条件で、全体を10mLとして室温で所定時間攪拌し、シッフ塩基反応によってジアルデヒドセルロースゲルのアルデヒド基にポリアリルアミン(あるいは部分アセチル化ポリアリルアミン)を導入した。その後、NaBH3CNで4時間還元し、デカンテーションにより十分に洗浄した。一部を元素分析によって窒素含量測定を行いアミノ基の導入量を算出した。以後、DACにPAAを結合させ、セルロースの水酸基を初め、アミノ基、アセチル基、アミドなどの官能基を持ち親水性、疎水性などの性質を複合的に備えたこのゲルを複合修飾セルロースゲルと呼ぶ。
元素分析により、窒素導入量測定から得られた複合修飾セルロース中の官能基量を求めた(ただし、窒素原子がアミノ基、アミド基のいずれかのみを構成していると仮定した場合、酸化度5%DAC)。PAA−50a結合セルロースは、アミノ基が0.29ミリモル/g、アセチル基が0.29ミリモル/gであり、PAA結合セルロースは、アミノ基が0.84ミリモル/gであった。
(4)ヘモグロビンの吸着確認
タンパク質として赤色であり吸着、脱着が視覚的に分かりやすいヘモグロビンを使用した。緩衝液あるいは純水に溶解したタンパク質(ヘモグロビン)を複合修飾セルロース懸濁液中に一定量加え平衡に達するまで攪拌し上澄みの280nmの吸光度から得られるタンパク質濃度の変化から吸着量を評価した。
PAA、PAA−50aを5%酸化度DACにグラフトさせた複合修飾セルロースによるヘモグロビンの吸着挙動を、それぞれ図1、図2に示す。これらの図から、蒸留水、緩衝液中共に、ヘモグロビンが吸着されていることを確認した。
タンパク質として赤色であり吸着、脱着が視覚的に分かりやすいヘモグロビンを使用した。緩衝液あるいは純水に溶解したタンパク質(ヘモグロビン)を複合修飾セルロース懸濁液中に一定量加え平衡に達するまで攪拌し上澄みの280nmの吸光度から得られるタンパク質濃度の変化から吸着量を評価した。
PAA、PAA−50aを5%酸化度DACにグラフトさせた複合修飾セルロースによるヘモグロビンの吸着挙動を、それぞれ図1、図2に示す。これらの図から、蒸留水、緩衝液中共に、ヘモグロビンが吸着されていることを確認した。
(5)分子鋳型材料の製造
酸化度5%のDAC2gに対してPAA−50a 4gを用いて作製した複合修飾セルロースを蒸留水で十分に洗浄したのち、緩衝液に溶解させたヘモグロビン1gと混合し、全体を250mLとして一晩吸着させた。吸着が十分に行われる条件として、pH7の緩衝液を用いて吸着させ、その吸着量を吸光度から評価した。一部を取り出し、その脱着挙動も評価した。ヘモグロビンと複合修飾セルロースを相互作用させた状態のまま凍結乾燥を行い、5重量%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液中で再膨潤させた際のヘモグロビン脱着挙動を測定した。その結果、ヘモグロビンの約50%が脱着していることが判明した。
以上の方法により、ヘモグロビンを溶出させることにより、微粒状のヘモグロビン用分子鋳型材料を得た。
酸化度5%のDAC2gに対してPAA−50a 4gを用いて作製した複合修飾セルロースを蒸留水で十分に洗浄したのち、緩衝液に溶解させたヘモグロビン1gと混合し、全体を250mLとして一晩吸着させた。吸着が十分に行われる条件として、pH7の緩衝液を用いて吸着させ、その吸着量を吸光度から評価した。一部を取り出し、その脱着挙動も評価した。ヘモグロビンと複合修飾セルロースを相互作用させた状態のまま凍結乾燥を行い、5重量%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液中で再膨潤させた際のヘモグロビン脱着挙動を測定した。その結果、ヘモグロビンの約50%が脱着していることが判明した。
以上の方法により、ヘモグロビンを溶出させることにより、微粒状のヘモグロビン用分子鋳型材料を得た。
実施例2 ヘモグロビン用分子鋳型材料によるヘモグロビンの吸着試験I
実施例1で得られた微粒状のヘモグロビン用分子鋳型材料のヘモグロビン吸着能を、クロマトグラフィーによって評価した。
ステンレス鋼製カラム(径6mm、長さ100mm)に、上記微粒状のヘモグロビン用分子鋳型材料を充填し、ヘモグロビンおよびアルブミンの溶出挙動を、紫外吸収(280nm)で調べた(流速0.5mL/min、カラム温度25℃、グラジエント 1モル/LNaCl水溶液)。
図3は、ヘモグロビンの溶出挙動を示すクロマトグラムである。点線が、ヘモグロビン用分子鋳型材料を充填材として用いた場合であり、実線が、複合修飾セルロースを充填材として用いた場合である。この図3から、充填材にヘモグロビン用分子鋳型材料を用いると、ヘモグロビンが強力に結合され、ほとんど溶出されてこないことが観察された。
図4は、アルブミンの溶出挙動を示すクロマトグラムである。点線が、ヘモグロビン用分子鋳型材料を充填材として用いた場合であり、実線が、複合修飾セルロースを充填材として用いた場合である。この図4から、いずれの場合も、アルブミンが溶出されたことが分かるが、ヘモグロビン用分子鋳型材料では、アルブミンが短時間で溶出しており、ヘモグロビン用分子鋳型材料とすることにより、アルブミンとの相互作用が弱まっているものと思われる。
以上の結果から、ヘモグロビン用分子鋳型材料は、ヘモグロビンを選択的に吸着することが分かる。
また、複合修飾セルロースを調製する際に用いた50%アセチル化ポリアリルアミンの代わりに、アセチル化されていないポリアリルアミンを用いた場合も、選択性に関しては同様な結果が得られた。
実施例1で得られた微粒状のヘモグロビン用分子鋳型材料のヘモグロビン吸着能を、クロマトグラフィーによって評価した。
ステンレス鋼製カラム(径6mm、長さ100mm)に、上記微粒状のヘモグロビン用分子鋳型材料を充填し、ヘモグロビンおよびアルブミンの溶出挙動を、紫外吸収(280nm)で調べた(流速0.5mL/min、カラム温度25℃、グラジエント 1モル/LNaCl水溶液)。
図3は、ヘモグロビンの溶出挙動を示すクロマトグラムである。点線が、ヘモグロビン用分子鋳型材料を充填材として用いた場合であり、実線が、複合修飾セルロースを充填材として用いた場合である。この図3から、充填材にヘモグロビン用分子鋳型材料を用いると、ヘモグロビンが強力に結合され、ほとんど溶出されてこないことが観察された。
図4は、アルブミンの溶出挙動を示すクロマトグラムである。点線が、ヘモグロビン用分子鋳型材料を充填材として用いた場合であり、実線が、複合修飾セルロースを充填材として用いた場合である。この図4から、いずれの場合も、アルブミンが溶出されたことが分かるが、ヘモグロビン用分子鋳型材料では、アルブミンが短時間で溶出しており、ヘモグロビン用分子鋳型材料とすることにより、アルブミンとの相互作用が弱まっているものと思われる。
以上の結果から、ヘモグロビン用分子鋳型材料は、ヘモグロビンを選択的に吸着することが分かる。
また、複合修飾セルロースを調製する際に用いた50%アセチル化ポリアリルアミンの代わりに、アセチル化されていないポリアリルアミンを用いた場合も、選択性に関しては同様な結果が得られた。
実施例3 ヘモグロビン用分子鋳型材料によるヘモグロビンの吸着試験II
実施例1で得られた微粒状のヘモグロビン用分子鋳型材料のタンパク質吸着能を、バッチ試験によって評価した。
前記ヘモグロビン用分子鋳型材料を、乾燥重量10mgに相当する懸濁液とし、1g/L濃度のタンパク質水溶液(全体で10mL)中で3時間吸着させ、上澄みの吸光度から、種々のタンパク質の吸着量を評価した。
その結果、ヘモグロビンの吸着量は60%であるのに対し、パパイン10%、アルブミン0%であった。ヘモグロビン用分子鋳型材料は、バッチ式の吸着法でも、他のタンパク質に対し、選択的にヘモグロビンを吸着していることが判明した。
実施例1で得られた微粒状のヘモグロビン用分子鋳型材料のタンパク質吸着能を、バッチ試験によって評価した。
前記ヘモグロビン用分子鋳型材料を、乾燥重量10mgに相当する懸濁液とし、1g/L濃度のタンパク質水溶液(全体で10mL)中で3時間吸着させ、上澄みの吸光度から、種々のタンパク質の吸着量を評価した。
その結果、ヘモグロビンの吸着量は60%であるのに対し、パパイン10%、アルブミン0%であった。ヘモグロビン用分子鋳型材料は、バッチ式の吸着法でも、他のタンパク質に対し、選択的にヘモグロビンを吸着していることが判明した。
本発明の方法で得られた分子鋳型材料は、分離対象物質と相互作用できる官能基を有し、かつ、分離対象物質が入り込める空間を有することから、例えば、複数のタンパク質を含む溶液を分子鋳型材料に接触させることにより、特定のタンパク質を選択的に吸着することができる。
Claims (9)
- 水膨潤状態の官能基を有するゲルに、分離対象となる物質を吸着させ、次いでそのゲルを乾燥処理したのち再膨潤させて、吸着した物質を脱着させることを特徴とする分子鋳型材料の製造方法。
- 官能基を有するゲルが、アミノ基および水酸基を有するゲルである請求項1に記載の方法。
- 官能基を有するゲルが、セルロースにアリルアミン系重合体が導入されたゲルである請求項2に記載の方法。
- 分離対象となる物質がタンパク質である請求項1、2または3に記載の方法。
- 吸着した物質の脱着を、界面活性剤を用いて行う請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
- セルロースにアリルアミン系重合体を導入したゲルからなり、特定の物質(標的物質)に対する吸着能を有することを特徴とする分子鋳型材料。
- セルロースに導入されたアリルアミン系重合体が、アミノ基の少なくとも一部がアセチル化されたものである請求項6に記載の分子鋳型材料。
- 標的物質がタンパク質である請求項6または7に記載の分子鋳型材料。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法で製造された分子鋳型材料、あるいは請求項6、7または8に記載の分子鋳型材料に被処理液を接触させ、該被処理液中に存在する標的物質を、前記分子鋳型材料に吸着させることを特徴とする標的物質の分離・精製方法。
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JP2004094877A JP2005281399A (ja) | 2004-03-29 | 2004-03-29 | 分子鋳型材料の製造方法、分子鋳型材料および標的物質の分離・精製方法 |
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JP2016006410A (ja) * | 2014-05-27 | 2016-01-14 | Jnc株式会社 | クロマトグラフィー担体およびそれを用いたタンパク質精製方法 |
JP2017122596A (ja) * | 2016-01-05 | 2017-07-13 | 日立化成株式会社 | 分離材及びその製造方法、並びにカラム |
CN111974367A (zh) * | 2020-09-03 | 2020-11-24 | 天津科技大学 | 一种用于吸附铜离子的ε-聚赖氨酸改性纤维素材料的制备方法 |
-
2004
- 2004-03-29 JP JP2004094877A patent/JP2005281399A/ja active Pending
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