JP2005278359A - スピンドルモータおよびスピンドルモータ装置 - Google Patents

スピンドルモータおよびスピンドルモータ装置 Download PDF

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Tadahiko Shinshi
忠彦 進士
Hitoshi Hashizume
等 橋詰
Kaiji Sato
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【課題】 スピンドルをZ軸方向およびZ軸回転方向に駆動可能であって、かつ精密な位置決め制御を容易に実現できるスピンドルモータを提供する。
【解決手段】 磁極が軸方向に沿って配置された永久磁石を備えるスピンドルと、前記スピンドルの外周に空隙を介して配置され、前記スピンドルを軸回転方向に駆動させるスピンドル回動手段と、前記スピンドルの外周に空隙を介して同心円状に配置され、前記スピンドルを非接触で軸支して前記スピンドルの軸方向および軸回転方向以外の変位を拘束する軸受と、前記スピンドルの外周に空隙を介して同心円状に配置され、軸方向に相互逆向きの磁束を形成する第1リングコイルおよび第2リングコイルと、前記スピンドル回動手段、前記軸受、前記第1リングコイルおよび前記第2リングコイルを収納するハウジングとを有し、
前記第1リングコイルおよび前記第2リングコイルの励磁によって、前記スピンドルが軸方向に駆動可能であることを特徴とするスピンドルモータ。
【選択図】 図1

Description

本発明は工作機械等に使用されるスピンドルモータについて、特にスピンドルの軸方向の精密移動を可能とするスピンドルモータに関する。
マイクロ金型や非球面レンズなどの加工に用いられる超精密加工機については、より一層の小型化と高精度の加工性能とが要望されている。ここで、スピンドルをZ軸方向およびZ軸回転方向に駆動させる場合には、スピンドルをZ軸回転方向にのみ駆動させるスピンドルモータを、送りねじ機構からなる移動テーブル上に固定して移動させる構成が一般的である。
しかし、上記構成の工作機械では以下の点で改善の余地があった。すなわち、(1)スピンドルモータと移動テーブルとを積み重ねるので装置が大型化する。(2)移動テーブルを精密に制御しても、スピンドルの先端位置は加工時の荷重や外乱力によって変位するので、スピンドルの位置決め精度を向上させることが困難である。(3)スピンドルの軸方向位置を計測して移動テーブルを制御する場合には、アッベの原理を満たさないため十分な制御性能を得ることが困難である。(4)駆動部の質量が大きくなるためアクチュエータの応答速度が遅く、またアクチュエータのサイズや発熱量も大きくなる。
また、非特許文献1には、スピンドルをZ軸方向およびZ軸回転方向に駆動させる他の構成として、Z軸方向に対向配置した電磁石の吸引力または反発力を利用したローカルアクチュエータが開示されている。
三宅 英孝 他;「ローカルアクチュエータによる微細穴放電加工」,2003年度精密工学会秋期大会学術講演会講演論文集,p590
しかし、上記の非特許文献1のようにレラクタンス力を利用した電磁アクチュエータでは、Z軸方向のストロークが1mm程度に制限されるのでその用途は著しく限定される。また、上記非特許文献1の電磁アクチュエータは、電流および発生力の関係が非線形であって、アクチュエータの可動範囲全域で安定した位置決めを行うには非線形補償を考慮した複雑なコントローラが不可欠となる。しかも、上記非特許文献1の電磁アクチュエータは、スピンドルのZ軸方向の位置によっても発生力に大きなばらつきが生じるので、高精度の位置決め制御は極めて困難である。
本発明は上記従来技術の課題を解決するためにされたものであり、その目的はスピンドルをZ軸方向およびZ軸回転方向に駆動可能であって、コンパクトで汎用性が高く、かつ精密な位置決め制御を容易に実現できるスピンドルモータを提供することである。
請求項1の発明は、磁極が軸方向に沿って配置された永久磁石を備えるスピンドルと、前記スピンドルの外周に空隙を介して配置され、前記スピンドルを軸回転方向に駆動させるスピンドル回動手段と、前記スピンドルの外周に空隙を介して同心円状に配置され、前記スピンドルを非接触で軸支して前記スピンドルの軸方向および軸回転方向以外の変位を拘束する軸受と、前記スピンドルの外周に空隙を介して同心円状に配置され、軸方向に相互逆向きの磁束を形成する第1リングコイルおよび第2リングコイルと、前記スピンドル回動手段、前記軸受、前記第1リングコイルおよび前記第2リングコイルを収納するハウジングとを有し、前記第1リングコイルおよび前記第2リングコイルの励磁によって、前記スピンドルが軸方向に駆動可能であることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記スピンドルは、軸方向長さが前記スピンドルのストロークより大きく設定された羽根を軸中心に対して回転対称に配置してなるインペラーを有し、前記スピンドル回動手段は、前記インペラーに流体を吹き付ける流体供給部と、前記流体をモータ外部に排出する流体排出部とを有することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記流体供給部は前記スピンドルの軸中心に対して回転対称に複数配置されてなることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3の発明において、前記軸受が静圧空気軸受であることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のスピンドルモータと、前記スピンドルの後端に固定されたターゲットミラーと、前記ターゲットミラーにレーザ光を照射して前記スピンドルの軸方向変位を検出する計測部と、前記軸方向変位に基づいて、前記第1リングコイルおよび前記第2リングコイルを制御する制御部と、を有することを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記制御部は、前記第1リングコイルおよび前記第2リングコイルの電流量を検出する電流量検出部と、前記軸方向変位および前記電流量に基づいて前記スピンドルの先端の荷重を推定するオブザーバと、を有することを特徴とする。
(作用)
請求項1の発明では、軸受に非接触支持されたスピンドルはスピンドル回動手段によって軸回転方向に駆動する。また、リングコイルを励磁すると、スピンドルの永久磁石の磁束とリングコイルに生じる磁束との磁気的作用でスピンドルが軸方向に駆動する。
ここで、リングコイルを励磁する電流とスピンドル軸方向の発生力との関係は線形性を有しており、かつスピンドルの軸方向位置による発生力のばらつきが極めて少ないので、軸方向に移動するスピンドルを精密な位置決め制御できる。なお、スピンドルの軸方向および軸回転方向以外の変位は非接触式の軸受によって拘束され、スピンドルの軸方向移動は軸受にガイドされて安定する。
請求項2の発明では、流体供給部がスピンドルのインペラーに流体を吹き付けることで、スピンドルのストローク全域で均一な回転力を発生できる。また、インペラーに吹き付けられた流体がリングコイルや軸受からの発熱を奪うので、スピンドルの回転に伴ってリングコイルや軸受の冷却も同時に行われる。
請求項3の発明では、回転対称に配置された複数の流体供給部からインペラーに流体を吹き付けることで、回転時におけるスピンドルの偏心が抑制される。
請求項4の発明では、スピンドルが軸受内周に形成される空気膜で非接触支持されることから、他の非接触式の軸受を採用した場合に比べて装置の小型化、軽量化を図ることができる。
請求項5の発明では、計測部でスピンドルの軸方向変位を測定し、この軸方向変位に基づいてスピンドルの軸方向移動が制御される。したがって、スピンドルの軸方向移動について、アッベの原理を満足した精密な位置決め制御が可能となる。
請求項6の発明では、スピンドルの軸方向変位とリングコイルの電流量に基づいて、オブザーバがスピンドルの先端の荷重を推定する。したがって、マイクロ部品の精密加工等で不可欠となるワークとツールの高精度な接触の検知や、スピンドル先端の加工力推定が可能となる。
本発明によれば、移動テーブル等を別途必要とすることなくスピンドルを軸方向および軸回転方向の2自由度に駆動させることができ、工作機械等の小型軽量化を実現できる。また、本発明では、軸方向に移動するスピンドルの精密な位置決め制御を容易に実現できる。
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する(請求項1〜4のスピンドルモータと、請求項5、6のスピンドルモータ装置に対応する)。
(スピンドルモータの構成)
図1、図2は本実施形態のスピンドルモータ1を示す図である。本実施形態のスピンドルモータ1は、スピンドル2と、スピンドル2を軸方向および軸回転方向に駆動させる固定部3とから構成されている。
スピンドル2は、セラミックス製のスピンドル本体4と、永久磁石5と、インペラー6(羽根車)と、バランサーリング7,8と、ターゲットミラー9とを有している。なお、本実施形態のスピンドル2の全長は156mm、質量は259gであって、軸方向のストロークが10mm(±5mm)に設定されている。
スピンドル本体4は太径部4aと細径部4bとを有しており、細径部4bの後端は太径部4aの先端と同心状に接続されている。細径部4bの先端側には図示しない工具などが取り付けられる。
また、太径部4aの中間部には、軸方向の両端に磁極を有する円筒形状の永久磁石5が配置されている。この永久磁石5の外径は太径部4aの外径とほぼ等しく設定され、磁極をなす両端面はそれぞれ太径部4aと接続されてスピンドル本体4と一体化している。すなわち、永久磁石5の磁極はスピンドル2の軸方向に沿って配置されている。
永久磁石5の後端側付近には、複数の羽根を備えたアルミ製のインペラー6が取り付けられている。インペラー6の羽根の軸方向長さは16mmであって、スピンドル2のストロークより大きく設定されている。また、各羽根の配置はスピンドル2の軸中心に対して回転対称をなし、インペラー6が太径部4aの外径に収まるように設定されている。
また、太径部4aの後端には大径のバランサーリング7が取り付けられている。このバランサーリング7の後端側にはターゲットミラー9が固定されている。一方、太径部4aの先端には、細径部4bの先端側から嵌め込まれた小径のバランサーリング8が固定されている。バランサーリング7,8には、軸方向に刻設された複数のねじ穴7a,8aが軸中心から同心円をなすようにそれぞれ配置されており、ねじ穴7a,8aに螺合される雄ねじ(図示を省略する)の微調整によってスピンドル2のバランス調整を行えるようになっている。
固定部3にはスピンドル本体4の太径部4aよりやや太径の筒状空間が軸方向に沿って形成され、この筒状空間内にスピンドル2が配置される。固定部3は、2つの静圧空気軸受10と、スピンドル回動手段としてのエアガイドブロック11と、第1リングコイル12および第2リングコイル13と、これらを収納する円筒形状のハウジング14とを有している。
2つの静圧空気軸受10はそれぞれハウジング14内部の両端に配置されて、固定部3の中心軸に沿って配置されるスピンドル2を回転可能に支持している。静圧空気軸受10の内周には多孔質セラミックがリング状に配置されており、圧縮空気を供給することで軸受内周面に空気膜が形成され、スピンドル2が軸受内周と非接触状態で支持される。また、ハウジング14の両端に配置された静圧空気軸受10はスピンドル2の軸方向の動きを許容する一方で、軸方向および軸回転方向以外の変位を拘束する。そのため、静圧空気軸受10はスピンドル2の軸方向移動を案内する機能を有している。
なお、本発明の軸受として磁気軸受や静圧油軸受などの非接触式の軸受を用いることもできる。しかし、磁気軸受の場合には軸受の複数のコイルを制御するアンプ等が別途必要となり、また静圧油軸受の場合には潤滑油の供給機構が複雑となるので、静圧空気軸受10の使用が特に好ましい。
エアガイドブロック11は、太径部4aの外径よりもやや大きい内径の中空部を中心に有するリング状部材であって、エア供給路15およびエア排出路16がそれぞれ2つずつ形成されている。エアガイドブロック11は、スピンドル2のインペラー6に対応する位置でハウジング14に固定される。
各エア供給路15の一端は中空部内壁面に形成された吹き出し口15aに連絡し、エア供給路15の他端から供給される圧縮空気は吹き出し口15aからインペラー6に吹き付けられる。また、各エア排出路16は中空部内壁面に形成された排気口16aからモータ外部に連絡している。排気口16aは吹き出し口15aに対してインペラー回転方向の位置に形成されており、インペラー6に吹き付けられた圧縮空気がインペラー6の回転に伴って排気口16aから排出されるようになっている。
さらに、図3に示すように、エアガイドブロック11に形成される吹き出し口15aおよび排気口16aは、圧縮空気の吹き出しによってスピンドル2の偏心が発生しないように、スピンドル2の軸中心に対して180°回転対称をなすように配置されている。
第1リングコイル12および第2リングコイル13は、太径部4aの外径よりもやや大きい内径の中空部が形成されたリング状の空芯コイルアレイであって、ハウジング14にはスピンドル2の永久磁石5に対応する位置で固定される。第1リングコイル12および第2リングコイル13はそれぞれ相互に逆方向の電流が流れるように結線され、通電時には軸方向に相互逆向きの磁束を形成する。
また、ハウジング14の内部には静圧空気軸受10と連絡する流路(図示を省略する)が形成されて、この流路は軸受用エアプラグ17に接続されている。また、ハウジング14には、エア供給路15の他端と連絡する吸気用プラグ18と、エア排出路16に対応する開口14aと、コイル用プラグ19がそれぞれ配置されている。なお、軸受用エアプラグ17および吸気用プラグ18は図示しないコンプレッサに接続されている。
(制御装置の構成)
図4に示すように、制御装置は、計測部としてのレーザー干渉計20と、コイル用アンプユニット21と、コントローラ22とから構成されている。
レーザー干渉計20は、スピンドル2のターゲットミラー9にレーザー光を照射し、ターゲットミラー9からの反射光を測定することでスピンドル2の軸方向変位を検出する。レーザー干渉計20が検出した軸方向変位はコントローラ22に入力される。
コイル用アンプユニット21はコイル用プラグ19を介して第1リングコイル12および第2リングコイル13と接続され、コントローラ22の出力に従って各リングコイル12,13に流す電流を変化させる。また、コイル用アンプユニット21は、各リングコイル12,13の電流量を検出して、電流量の情報をコントローラ22に出力する電流量検出部の機能を有する。
コントローラ22は、DSP(Digital Signal Processor)やD/A変換回路等から構成される。コントローラ22は入力された軸方向変位に基づいて各リングコイル12,13の電流を変化させ、スピンドル2の軸方向位置の閉ループ制御を行う。また、コントローラ22は、軸方向変位および電流量の情報に基づいてスピンドルの先端の荷重を推定するオブザーバ23を有している。
図5は本実施形態の制御装置のブロック図である。本実施形態のスピンドルモータ1の制御において、目標値特性は式(1)の関係を満たしている。
Figure 2005278359
ここで、Zはスピンドルの軸方向変位、Zrは目標値、mはスピンドルの質量、cは減衰係数、Kampはアンプユニットのゲイン、Kiはリングコイルの電流力係数、Vは電圧、Iはリングコイルの電流量、a1,b0,b1,b2は制御パラメータである。なお、制御パラメータ(a1,b0,b1,b2)は、閉ループ伝達関数の特性方程式の解が複素平面上で実軸上の安定な一点に重根となるようにαを決定することで、自ずと決定される。
また、本実施形態のスピンドルモータ2の外乱特性を式(2)に示す。
Figure 2005278359
ここで、wはスピンドルに作用する外乱力(スピンドルの先端の荷重)である。
さらに、オブザーバ23による外乱力の推定について詳細に説明する。本実施形態のスピンドルモータはスピンドルが静圧空気軸受で非接触で支持されており、軸方向の摩擦力は無視できる。また、後述するようにリングコイルの電流とスピンドル軸方向の発生力とがほぼ線形に比例する。したがって、スピンドルに外乱wが働いたときのスピンドルのZ方向の運動方程式は式(3)となる。
Figure 2005278359
ここで、zはスピンドルの軸方向変位である。
また、リングコイルとスピンドル軸方向の発生力とは式(4)の関係を満たす。
Figure 2005278359
ここで、iはリングコイルの電流量である。
状態変数として主軸の変位、速度、外乱力を式(5)とおく。
Figure 2005278359
上記の式(5)においてα0は未知の定数であり、式(3)、式(4)、式(5)の関係から式(6)の状態方程式が導出される。
Figure 2005278359
ここで、
Figure 2005278359
とする。
実際の観測対象とそのモデルとの出力偏差をモデルにフィードバックすると、式(8)のように表される。
Figure 2005278359
ここでLはオブザーバのゲイン行列であり、
Figure 2005278359
となる。したがって、オブザーバのゲイン行列Lの値を変えることによって(A−LC)の極を自由に設定できる。(A−LC)を安定行列にできれば、任意の初期誤差に対して
Figure 2005278359
となる。以上のようにしてオブザーバ23が外乱力を推定する。
(実施形態の作用、効果)
本実施形態のスピンドルモータ1および制御装置は上記のように構成され、以下、その作用、効果を説明する。
スピンドル2の軸方向の駆動は、第1リングコイル12および第2リングコイル13の励磁によって行われる。コイル用アンプユニット21が所定方向に電流を流すことで、各リングコイル12,13には軸方向に相互逆向きの磁束が形成される。そして、第1リングコイル12の磁束と永久磁石5の磁束との間で吸引力が発生し、第2リングコイル13の磁束と永久磁石5の磁束との間で反発力が発生して、スピンドル2が軸方向の先端側に駆動する。
また、コイル用アンプユニット21が上記と逆方向へ電流を流すと上記の吸引力および反発力は逆向きとなり、スピンドル2が軸方向の後端側に復動する。したがって、リングコイル12,13に流す電流の向きを高速で切り換えることにより、スピンドル2の先端に固定される工具(図示を省略する)を高速で軸方向に移動させることができる。なお、2つの静圧空気軸受10によってスピンドルは軸方向に沿って案内されるため、スピンドル2と固定部3との軸線の間に傾きが生じることはない。
図6にリングコイル12,13の電流とスピンドル軸方向の発生力との関係を示す。図6の例では、スピンドル2をストローク範囲の中間位置(z=0mmと定義する)に固定し、リングコイル12,13の電流を0Aから3Aの範囲で変化させて発生力を測定した。リングコイル12,13の電流とスピンドル軸方向の発生力はほぼ線形に比例し、電流および発生力が良好な線形性を有することが確認できた。
図7にスピンドル2の軸方向位置と発生力との関係を示す。図7の例ではリングコイル12,13の電流を3Aに固定し、z=0mmからz=5mmの範囲でスピンドル2の軸方向位置を1mmごとに変化させてスピンドル軸方向の発生力を測定した。スピンドル軸方向の発生力は約11.6N(図中一点鎖線で示す)から約12.1N(図中二点鎖線で示す)の範囲で変化した。発生力の最小値(約11.6N)は最大値(約12.1N)の約96.2%に相当し、スピンドルモータ1のストローク全域に渡ってほぼ均一な発生力が得られることが確認できた。すなわち、従来技術のようにレラクタンス力を利用した電磁アクチュエータでは軸方向のストロークが1mm程度に制限されるが、本実施形態のスピンドルモータ1では10mmの範囲でスピンドルの位置決め制御が可能である。
一方、スピンドル2の軸回転方向の駆動は、固定部3の吸気用プラグ18から圧縮空気を供給することで行われる。圧縮空気はエア供給路15を経て吹き出し口15aからインペラー6に吹き付けられる。これによりインペラー6が回転方向に付勢され、インペラー6と一体化されているスピンドル2が回転する。圧縮空気はインペラー6の回転に伴って排気口16aを経てモータ外部に排出される。
ここで、インペラー6の軸方向長さはスピンドル2のストロークより大きく設定されているので、インペラー6はスピンドル2のストローク全域で吹き出し口15aの圧縮空気を受けることができる。したがって、スピンドル2が軸方向に移動しても均一な回転力を得ることができる。また、吹き出し口15aは軸中心に対して180°回転対称に2カ所配置されているので、回転時のスピンドル2の偏心が抑制される。さらに、スピンドル2の回転には電磁石を使用しないため、電磁加振力によるラジアル方向の振動がスピンドル2に発生することはない。
図8は半径方向の回転精度をリサージュ法を用いて示した図である。図8の例では、z=0mmの位置においてスピンドル2を15,000rpmで5回転させた。NRRO(Non-Repeatable Run-Out:軸振れのバラツキ成分)は0.21μmであった。
さらにまた、インペラー6に吹き付けられる圧縮空気は、リングコイル12,13や静圧空気軸受10からの発熱を奪ってモータ外部に排出される。そのため、スピンドル2の回転と同時にリングコイル12,13および静圧空気軸受10が空冷され、スピンドル2の熱膨張が抑制される。
図9にスピンドル2の回転時における表面の温度変化を示す。図9の例では、リングコイル12,13に1Aの電流を流し、スピンドル2の非回転時(0rpm)および5,000rpmでの回転時でスピンドル2の表面の温度変化を測定した。非回転時のスピンドル2の温度上昇が6.8Kであるのに対し、5,000rpmの回転時にはスピンドル2の温度上昇が4Kとなり、スピンドル2の回転時に冷却効果があることが確認できた。
ここで、本実施形態のスピンドルモータ1の軸方向移動の位置決め分解能を図10、図11に基づいて説明する。
図10(a)および(b)はスピンドル2の非回転時(0rpm)にz=0mm,5mmの位置を基準としてスピンドル2を軸方向に往復動させ、スピンドル2の軸方向変位をレーザ干渉計20で計測した結果である。図10(a)および(b)のいずれも分解能は2.5nmであり、z=0mmおよび5mmの位置で分解能にほとんど相違がみられないことが確認できた。
また、図11(a)および(b)では、z=0mmにおいてスピンドル2を15,000rpmで回転させ、上記と同様にスピンドル2の軸方向変位を計測した結果である。図11(a)は圧縮空気を供給している状態であり、図11(b)は圧縮空気の供給を停止して慣性で回転させている状態である。図11(a)での分解能は29.7nmであり、図11(b)での分解能は19.8nmであった。
また、本実施形態ではレーザー干渉計20でスピンドル2の軸方向変位を検出し、この軸方向変位に基づいてコントローラ22がスピンドル2の軸方向移動をフィードバック制御する。したがって、本実施形態では、アッベの原理を満足した精密なスピンドル2の位置決め制御が可能となる。
さらに、本実施形態ではオブザーバ23によってスピンドル2の先端の荷重が推定できるので、マイクロ部品の精密加工等で不可欠となるワークとツールの高精度な接触の検知や、スピンドル先端の加工力推定が可能となる。特に、本実施形態はスピンドル2が非接触で保持される無摩擦機構であって、かつアクチュエータの線形性が良好であるので、最小分解能2mNの高い精度で加工力の推定が可能となる。
(実施形態の補足事項)
以上、本発明を上記の実施形態によって説明してきたが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明のスピンドル回動手段は圧縮空気でスピンドルを回転させる構成に限定されず、永久磁石とコイルの磁束の磁気的作用でスピンドルを回転させる構成としてもよい。
また、エアガイドブロック11の吹き出し口15aの配置は上記実施形態の例に限定されず、3つ以上の吹き出し口を形成するようにしてもよい。例えば、3つの吹き出し口を120°の位相をもって回転対称に配置してもよく、4つの吹き出し口を90°の位相をもって回転対称に配置するようにしてもよい(いずれも図示を省略する)。
本発明は、例えば、超精密多軸加工機、超精密形状測定機器、細胞操作装置および半導体露光装置などに適用することができる。
本実施形態のスピンドルモータの横断面図である。 本実施形態のスピンドルモータの側面図である。 図2のA−A断面図である。 本実施形態のスピンドルモータおよび制御装置の概要図である。 本実施形態の制御装置のブロック図である。 リングコイルの電流とスピンドル軸方向の発生力との関係を示す図である。 スピンドルの軸方向位置と発生力との関係を示す図である。 スピンドルの半径方向の回転精度を示した図である。 スピンドルの回転時における表面の温度変化を示す図である。 スピンドルの非回転時におけるスピンドルモータの軸方向移動の位置決め分解能を示す図である。 スピンドルの回転時におけるスピンドルモータの軸方向移動の位置決め分解能を示す図である。
符号の説明
1 スピンドルモータ
2 スピンドル
3 固定部
4 スピンドル本体
4a 太径部
4b 細径部
5 永久磁石
6 インペラー
7,8 バランサーリング
7a,8a ねじ穴
9 ターゲットミラー
10 静圧空気軸受
11 エアガイドブロック
12 第1リングコイル
13 第2リングコイル
14 ハウジング
14a 開口
15 エア供給路
15a 吹き出し口
16 エア排出路
16a 排気口
17 軸受用エアプラグ
18 吸気用プラグ
19 コイル用プラグ
20 レーザー干渉計
21 コイル用アンプユニット
22 コントローラ
23 オブザーバ

Claims (6)

  1. 磁極が軸方向に沿って配置された永久磁石を備えるスピンドルと、
    前記スピンドルの外周に空隙を介して配置され、前記スピンドルを軸回転方向に駆動させるスピンドル回動手段と、
    前記スピンドルの外周に空隙を介して同心円状に配置され、前記スピンドルを非接触で軸支して前記スピンドルの軸方向および軸回転方向以外の変位を拘束する軸受と、
    前記スピンドルの外周に空隙を介して同心円状に配置され、軸方向に相互逆向きの磁束を形成する第1リングコイルおよび第2リングコイルと、
    前記スピンドル回動手段、前記軸受、前記第1リングコイルおよび前記第2リングコイルを収納するハウジングとを有し、
    前記第1リングコイルおよび前記第2リングコイルの励磁によって、前記スピンドルが軸方向に駆動可能であることを特徴とするスピンドルモータ。
  2. 前記スピンドルは、軸方向長さが前記スピンドルのストロークより大きく設定された羽根を軸中心に対して回転対称に配置してなるインペラーを有し、
    前記スピンドル回動手段は、前記インペラーに流体を吹き付ける流体供給部と、前記流体をモータ外部に排出する流体排出部とを有することを特徴とする請求項1に記載のスピンドルモータ。
  3. 前記流体供給部は前記スピンドルの軸中心に対して回転対称に複数配置されてなることを特徴とする請求項2に記載のスピンドルモータ。
  4. 前記軸受が静圧空気軸受であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のスピンドルモータ。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のスピンドルモータと、
    前記スピンドルの後端に固定されたターゲットミラーと、
    前記ターゲットミラーにレーザ光を照射して前記スピンドルの軸方向変位を検出する計測部と、
    前記軸方向変位に基づいて、前記第1リングコイルおよび前記第2リングコイルを制御する制御部と、を有することを特徴とするスピンドルモータ装置。
  6. 前記制御部は、前記第1リングコイルおよび前記第2リングコイルの電流量を検出する電流量検出部と、前記軸方向変位および前記電流量に基づいて前記スピンドルの先端の荷重を推定するオブザーバと、を有することを特徴とする請求項5に記載のスピンドルモータ装置。
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