JP2005276534A - 固体酸化物形燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高い発電出力を得ることができる固形酸化物形燃料電池を提供する。
【解決手段】 電解質1と、この電解質1の一方面に形成され燃料極3及び空気極5を有する少なくとも一つの電極体Eとを備えた固体酸化物形燃料電池において、燃料極3及び空気極5の膜厚が1〜300μmである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、固体電解質を用いた固体酸化物形燃料電池(SOFC)に関する。
従来より、固体酸化物形燃料電池のセルデザインとして、平板型(スタック型)、円筒型(チューブ型)などが提案されている。
平板型セルは、板状の電解質の表面及び裏面に燃料極及び空気極をそれぞれ配置したものであり、こうして形成されたセルはセパレーターを介して複数個積層された状態で使用される。セパレーターは各セルに供給される燃料ガスと酸化剤ガスとを完全に分離する役割を果たしており、各セルとセパレーターとの間にはガスシールが施されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、この平板型セルでは、セルに対して圧力をかけてガスシールを施すため、セルが振動や熱サイクルなどに対して脆弱であるなどの欠点があり、実用化に大きな課題を有している。
一方、円筒型セルは、円筒形の電解質の外周面及び内周面に燃料極及び空気極をそれぞれ配置したものであり、円筒縦縞型、円筒横縞型などが提案されている(例えば、特許文献2)。ところが、円筒型セルは、ガスシール性に優れるという利点を有する一方、平板型セルに比べて構造が複雑であるため、製造プロセスが複雑になり、製造コストが高くなるという欠点がある。
さらに、次の問題もある。平板型セル及び円筒型セルのいずれも、性能を向上させるためには電解質を薄膜化することによる内部抵抗の低減が必要となるが、電解質が薄すぎると振動や熱サイクルなどに対して脆弱化してしまい、耐振性や耐久性が低下するという問題があった。
このため、上述した平板型、円筒型に代わる燃料電池として、燃料極及び空気極を固体電解質からなる基板の同一面上に配置し、燃料ガスおよび酸化剤ガスの混合ガスを供給することにより発電が可能な非隔膜式固体酸化物形燃料電池が提案されている(例えば、特許文献3)。この燃料電池によれば、燃料ガスと酸化剤ガスとを分離する必要がないため、セパレーター及びガスシールが不要となり、構造及び製造工程の大幅な簡略化を図ることができる。
また、この非隔膜式固体酸化物形燃料電池では、酸素イオンの伝導が主に固体電解質の表層付近で起こると考えられており、燃料極と空気極とを固体電解質の同一面上で近接させると、電池性能が向上する。したがって、電解質の厚みを必要以上に薄膜化する必要がなく、電池性能を維持したまま電解質の脆弱性を改善することが可能となる。
特開平5−3045号公報(第1頁、第6図) 特開平5−94830号公報(第1頁、第1図) 特開平8−264195号公報(第2−3頁、第1図)
しかしながら、上記特許文献3に記載の燃料電池であっても、その出力は充分とは言えず、さらなる改良の余地があった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、さらに高い発電出力を得ることができる固形酸化物形燃料電池を提供することを目的とする。
本発明者は上記発明をさらに改良すべく研究を重ね、電極の膜厚を所定の厚さにすることで、燃料電池の出力が向上することを見出した。本発明は、以下の点を特徴とする。
1.電解質と、この電解質の一方面に形成され燃料極及び空気極を有する少なくとも一つの電極体とを備えた固体酸化物形燃料電池において、燃料極及び空気極の膜厚が1〜300μmである、固体酸化物形燃料電池。
2.前記燃料極及び空気極の膜厚が10〜65μmである、上記項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
3.燃料極の膜厚が10〜35μmである、上記項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池。
4.空気極の膜厚が10〜40μmである、上記項1から3のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池。
5.前記燃料極は、蛍石型構造又はペロブスカイト型構造を有する酸化物イオン導電体と金属触媒との混合物で形成されている、上記項1から4のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池。
6.前記空気極は、ペロブスカイト型構造を有する金属酸化物、及び貴金属の少なくとも一方を含む材料で形成されている、上記項1から5のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池。
また、上記固体酸化物形燃料電池において、燃料極の膜厚は、25〜35μmであることが特に好ましい。そして、空気極の膜厚は、25〜40μmであることが特に好ましい。
本発明に係る固形酸化物形燃料電池によれば、高い出力を得ることができる。
以下、本発明に係る固体酸化物形燃料電池の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る燃料電池の平面図(a)及びそのA−A線断面図(b)である。
図1に示すように、本実施形態に係る燃料電池は、板状の電解質1と、この電解質1の一方面に配置される電極体Eとを備えている。電極体Eは、帯状に形成された燃料極3及び空気極5を有しており、これらが所定間隔をおいて配置されている。この間隔は、例えば1〜1000μmであることが好ましく、10〜500μmであることがさらに好ましい。また、各電極3,5上の全面には、集電体31,51が形成されており、ここから電流が取り出されるようになっている。なお、集電体31,51は、上記のように各電極3,5の全面に形成することもできるし、電極3,5の端部に形成することもできる。
燃料極3の膜厚は、1〜300μmであることが好ましく、5〜100μmであることがさらに好ましい。これは、膜厚が小さすぎると三相界面長の低下により出力が低くなるからであり、膜厚が大きすぎると反応ガスの拡散不足によって過電圧が増大しやすくなるため、膜厚が大きくなっても、それに応じた出力が得られないからである。つまり、コストパフォーマンスが低くなるからである。また、電極のオーム損も一因である。一方、空気極5の膜厚も、同様に、1〜300μmであることが好ましく、5〜100μmであることがさらに好ましい。その理由は、燃料極の場合と同様である。
また、後述するように、燃料極3をセリア系酸化物を有する材料、空気極5をサマリウム(Sm)をベースとしてコバルトを含んだ材料、そして電解質1をガドリニウムをドープしたセリア系酸化物(GDC)からなる材料で形成した場合には、両電極3,5の膜厚は10〜65μmとすることが好ましく、特に、燃料極3の膜厚を10〜35μm、空気極5の膜厚を10〜40μmとすることが特性上好ましい。
また、各電極3,5について、これらが並ぶ方向の長さ、つまり電極幅に関しては、空気極5について、5〜1000μmであることが好ましく、10〜500μmであることがさらに好ましく、20〜200μmであることが特に好ましい。一方、燃料極3の電極幅は、5〜1000μmであることが好ましく、500〜700μmであることが好ましい。このとき、燃料極3の電極幅は、空気極5の電極幅よりも大きいことが好ましい。また、各電極3,5について、電極の端部に集電体を配置する場合には、上記幅と垂直な方向の長さは、次のように設定することが好ましい。すなわち、両電極3,5の電極長さL、つまり集電体とそこから最も離れた電極上の端部までの長さが、10000μm以下であることが好ましく、1000〜4000μmであることがさらに好ましい。また、燃料極3の場合は、上記電極長さLを空気極5と同じかそれよりも長くすることが可能である。
次に、上記のように構成された燃料電池の材質について説明する。電解質1の材料としては、固体酸化物形燃料電池の電解質として公知のものを使用することができ、例えば(Ce,Sm)O3,(Ce,Gd)O3等のセリア系酸化物,(La,Sr)(Ga,Mg)O3等のランタン・ガレード系酸化物,スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ),イットリア安定化ジルコニア(YSZ)等のジルコニア系酸化物などの酸素イオン伝導性セラミックス系材料を用いることができる。電解質1は、基板として用いられるため、ある程度の強度が必要であることから、その厚みは、例えば200〜1000μmであることが好ましい。
燃料極3及び空気極5は、セラミックス粉末材料により形成することができる。このとき用いられる粉末の平均粒径は、好ましくは10nm〜100μmであり、さらに好ましくは50nm〜50μmであり、特に好ましくは100nm〜10μmである。なお、平均粒径は、例えば、JISZ8901にしたがって計測することができる。
燃料極3は、例えば、金属触媒と酸化物イオン導電体からなるセラミックス粉末材料との混合物を用いることができる。このとき用いられる金属触媒としては、ニッケル、鉄、コバルトや、貴金属(白金、ルテニウム、パラジウム等)等の還元性雰囲気中で安定で、水素酸化活性を有する材料を用いることができる。また、酸化物イオン導電体としては、蛍石型構造又はペロブスカイト型構造を有するものを好ましく用いることができる。蛍石型構造を有するものとしては、例えば(Ce,Sm)O3,(Ce,Gd)O3などのセリア系酸化物、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)やイットリア安定化ジルコニア(YSZ)などのジルコニア系酸化物を挙げることができる。また、ペロブスカイト型構造を有するものとしては(La,Sr)(Ga,Mg)O3などのランタンガレード系酸化物を挙げることができる。上記材料の中では、酸化物イオン導電体とニッケルとの混合物で、燃料極5を形成することが好ましい。なお、酸化物イオン導電体からなるセラミックス材料とニッケルとの混合形態は、物理的な混合形態であってもよいし、ニッケルへの粉末修飾などの形態であってもよい。また、上述したセラミックス材料は、1種を単独で、或いは2種以上を混合して使用することができる。また、燃料極5は、金属触媒を単体で用いて構成することもできる。
空気極5を形成するセラミックス粉末材料としては、例えば、ペロブスカイト型構造を有する金属酸化物で形成することができる。具体的には(Sm,Sr)CoO3,(La,Sr)MnO3,(La,Sr)CoO3,(La,Sr)(Fe,Co)O3,(La,Sr)(Fe,Co,Ni)O3などを挙げることができる。これらセラミックス粉末は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を混合して使用することもできる。また、Pt,Pd,Au等の貴金属で空気極5を形成することもでき、さらにはこのような貴金属と上記金属酸化物との混合物で空気極5を形成することもできる。
また、集電体31,51は、Pt,Au,Ag,Ni,Cu,SUS等の導電性金属、或いは導電性金属系材料,又はLa(Cr,Mg)O3,(La,Ca)CrO3,(La,Sr)CrO3などのランタン・クロマイト系等の導電性セラミックス材料によって形成することができ、これらのうちの1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
上記燃料極3、及び空気極5は、上述した材料を主成分として、さらにバインダー樹脂、有機溶媒などが適量加えられることにより形成される。そして、これら燃料極3及び空気極5の膜厚は焼結後に上述した膜厚にする。また、集電体31,51も、上述した材料に上記添加物を加えることにより形成される。なお、集電体31,51は、導電性金属、或いは金属系材料からなるワイヤーやメッシュ状のもの等から形成されてもよい。
次に、上述した燃料電池の製造方法の一例を説明する。まず、上述した材料からなる板状の電解質1を準備する。続いて、上述した燃料極3、及び空気極5用の粉末材料を主成分として、これらそれぞれにバインダー樹脂、感光性高分子、有機溶媒などを適量加えて混練し、燃料極ペースト、空気極ペーストをそれぞれ作成する。各ペーストの粘度は、次に説明するスクリーン印刷法に適合するように103〜106mPa・s程度であることが好ましい。
続いて、電解質1上の図1(a)に示す位置に、燃料極ペーストをスクリーン印刷法により帯状に塗布した後、所定の時間及び温度で乾燥・焼結し、燃料極3を形成する。次に、電解質1上の燃料極3と対向する位置に、所定間隔をおいて帯状の空気極ペーストをスクリーン印刷法によって塗布し、所定時間及び温度で乾燥・焼結することにより、空気極5を形成する。そして、各燃料極3及び空気極5上に集電体31,51を配置する。以上の工程により、図1に示すような燃料電池が完成する。なお、感光性高分子を用いる場合には、ペーストの塗布後、乾燥・露光工程を経て、焼結する必要がある。
上記のように構成された燃料電池は、次のように発電が行われる。まず電極体Eが配置された電解質1の一方面上に、水素、又はメタン、エタンなどの炭化水素からなる燃料ガスと空気等の酸化剤ガスとの混合ガスを高温の状態(例えば、400〜1000℃)で供給する。これにより、各電極体Eにおける燃料極3と空気極5との間で、酸素イオン伝導が起こり発電が行われる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、各ペーストの塗布にスクリーン印刷法を用いているが、これに限定されるものではなく、ドクターブレード法、スプレーコート法、リソグラフィー法、泳動電着法、ロールコート法、ディスペンサーコート法、CVD,EVD,スパッタリング法、転写法等の印刷方法等、その他一般的な印刷法を用いることができる。また、印刷後の後工程として、静水圧プレス、油圧プレス、その他の一般的なプレス工程を用いることができる。
また、上記実施形態では電極体が1つの場合について説明したが、これに限定されるものではなく、複数個の電極体を電解質上に配置し、これらをインターコネクタで接続することもできる。また、上記燃料電池では、集電体やインターコネクタを必ずしも電解質上に配置する必要はなく、この燃料電池をセットする装置側に集電体等を形成しておき、燃料電池を装置にセットしたときに、各電極に対応する部分に集電体やインターコネクタが配置されるように構成することもできる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
ここでは、図1に示す構造を有する燃料電池を作成することとし、各電極の膜厚が以下の表1に示すものになるようにした。
Figure 2005276534
まず、上記9種類のサンプルに使用する材料について説明する。電解質材料としてはGDC(Ce0.9Gd0.11.9)からなる厚さ1mmの板体を使用した。また、燃料極材料としてNiO粉末(0.01〜100μm、平均0.1μm)、SDC(Ce0.8Sm0.21.9)粉末(粒径1〜100μm、平均5μm)を重量比で7:3となるように混合した後、セルロース系バインダー樹脂を混合し、燃料極ペーストを作製した。燃料極ペーストの粘度はスクリーン印刷に適した5×105mPa・sとした。空気極材料としてSSC(Sm0.5Sr0.5CoO3)粉末(0.1〜100μm、平均3μm)を使用し、セルロース系バインダー樹脂を混合し、空気極ペーストを作製した。空気極ペーストの粘度は、燃料極と同様にスクリーン印刷に適した5×105mPa・sとした。また、集電体の材料として、金メッシュを用いた。
次に、上記材料を用いて9つのサンプルを作成する。以下の説明は、各サンプルについて共通であり、電極の膜厚のみを相違させるようにする。上記燃料極材ペーストをスクリーン印刷法によって、幅500um、長さ7mmになるように塗布後、130℃で15分間乾燥した。その後、1450℃、1時間で焼結した。次いで、上記空気極材ペーストをスクリーン印刷法によって、線幅500um、長さ7mmになるように塗布した。このとき、両電極の間隔は、200μmにした。そして、130℃で15分間乾燥した後、1200℃1時間で焼結した。焼結後の各電極の膜厚は上記表1の通りである。最後に、金メッシュを各電極の全面に配置し、9種類の燃料電池を得た。
以上のような方法により作製した固体酸化物形燃料電池にメタン:酸素=2:1の混合ガスを800℃で導入し電流−電圧特性の評価を行った。結果を、図2及び図3に示す。図2はサンプル1〜5に関し、電流密度と電圧及び出力密度の関係を示す図であり、図3はサンプル6〜9に関し、電流密度と電圧及び出力密度の関係を示す図である。図2によれば、燃料極の膜厚が10〜35μmの場合は、電流密度が大きくなっても電圧があまり低下していないことが分かる。また、膜厚が20〜35μmのときに高い出力密度を示していることも分かる。一方、図3によれば、空気極の膜厚が25〜40μmの場合は、電流密度が大きくなっても電圧があまり低下しておらず、膜厚が10〜40μmの場合は、高い出力密度を示していることが分かる。
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の一実施形態の平面図(a)及びそのA−A線断面図(b)である。 実施例のサンプル1〜5に関し、燃料極の膜厚についての電流密度と電圧及び出力密度との関係を示すグラフである。 実施例のサンプル6〜9に関し、空気極の膜厚についての電流密度と電圧及び出力密度との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 電解質
3 燃料極
31 集電体
5 空気極
51 集電体

Claims (6)

  1. 電解質と、前記電解質の一方面に形成され燃料極及び空気極を有する少なくとも一つの電極体とを備えた固体酸化物形燃料電池において、
    前記燃料極及び空気極の膜厚が1〜300μmである、固体酸化物形燃料電池。
  2. 前記燃料極及び空気極の膜厚が10〜65μmである、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
  3. 前記燃料極の膜厚が10〜35μmである、請求項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池。
  4. 前記空気極の膜厚が10〜40μmである、請求項1から3のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池。
  5. 前記燃料極は、蛍石型構造又はペロブスカイト型構造を有する酸化物イオン導電体と金属触媒との混合物で形成されている、請求項1から4のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池。
  6. 前記空気極は、ペロブスカイト型構造を有する金属酸化物、及び貴金属の少なくとも一方を含む材料で形成されている、請求項1から5のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池。
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