JP2005274565A - 大気中の有機砒素化学剤の分析方法およびその装置 - Google Patents

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【課題】大気中に含有されるルイサイト、ジフェニルシアノアルシン、ジフェニルクロロアルシン等の有機砒素化学剤を、たとえごく低濃度であっても、迅速かつ高精度で検出することができる分析方法およびその装置を提供する。
【解決手段】大気採取管1で有機砒素化学剤を含有する大気を採取し、これを吸着管2内に充填した例えばジフェニルフェニレンオキサイド構造の耐熱性樹脂からなる吸着剤の層を通過させて有機砒素化学剤を選択的に捕捉した後、この吸着剤層に誘導体化剤注入管3から誘導体化剤として例えば1,2−エタンジチオールを添加して、熱に弱い有機砒素化学剤を熱安定性の高い誘導体に変換する。次いで吸着剤層を加熱器4で250℃以上に加熱して有機砒素化学剤の誘導体を吸着剤から熱脱離させ、これをGC−MS等のガス分析器5に導入し分析を行う。
【選択図】 図1

Description

本発明は、化学兵器用の化学剤として代表的なルイサイト(L)、ジフェニルシアノアルシン(DC)、ジフェニルクロロアルシン(DA)等の有機砒素化学剤で汚染された大気の分析技術に関する。
近年、地中に遺棄された化学兵器やガラス瓶入りの化学兵器用の化学剤が発見され、砲弾の腐食やガラス瓶の破損により漏れ出した化学剤によって周辺環境の汚染が懸念される。このため、これら化学剤の早急な除去回収が要請されている。化学剤の除去回収作業は、汚染地域をテント等で密閉し、内部を負圧にして外界への化学剤の漏洩を防止しつつ行うのが一般的である。
ここで、化学剤のうち、有機砒素化学剤の一種で、びらん剤(通称:きい剤)として知られるルイサイト(略称L,CHClCHAsCl2,分子量207.35,融点−2℃〜−45℃,蒸気圧0.394mmHg[≒52.5Pa](20℃))は室温では液体であるが、揮発性を有する。このため、除去回収作業の際に化学剤入りのガラス瓶が破損するなどして液体のルイサイトが大気に露出するとその一部が気化して大気中に放出され、作業環境が悪化するおそれがある。したがって、ルイサイトによる大気の汚染を監視する必要がある。
ところが、ルイサイトは極端に熱に弱い物質であるため、大気中に含まれるルイサイトを検知しようとして大気をそのまま分析装置に導入すると、分析装置内での加熱操作によりルイサイトが直ちに分解して別の物質に変質してしまい、信頼性の高い検知ができなかった。
また、他の有機砒素化学剤で、くしゃみ剤(通称:あか剤)として知られるジフェニルシアノアルシン(略称DC,(C652AsCN,分子量255.0,融点31.5℃〜35℃,蒸気圧0.0002mmHg[≒0.027Pa](20℃))およびジフェニルクロロアルシン(略称DA,(C652AsCl,分子量264.5,融点38℃,蒸気圧0.0036mmHg[≒0.48Pa](45℃)))は室温では通常固体であるものの、いずれも蒸気圧を有するので、ルイサイトと同様、気化による大気の汚染を監視する必要がある。しかしながら、これらDCおよびDAもルイサイトと同じく極端に熱に弱い物質であるため、従来の分析方法では信頼性の高い検知ができなかった。
そこで、有機砒素化学剤のうちルイサイトの分析に関しては、分析装置への導入前にルイサイトを誘導体化して熱安定性の高い物質に変換した上で分析装置に導入し、この誘導体を分析することにより大気中のルイサイトを定量分析する方法が採用されている。この方法は、ルイサイトを含有する大気を溶剤中に通気させてルイサイトを抽出し、この溶剤に誘導体化剤を添加してルイサイトを誘導体化して熱安定性を付与した後、このルイサイトの誘導体を含有する溶剤の一部をLC/MS(液体クロマトグラフ−質量分析計)等の液体分析装置で分析する方法である(非特許文献1参照)。
ウイリアム・フォーラーら(William Fowler,et al),「ガスクロマトグラフィック・デターミネイション・オブ・ザ・ルイサイト・ハイドロリセイト,2−クロロビニラーソナス・アシッド,アフター・デリバタイゼイション・ウィズ・1,2−エタンジチオール (Gas chromatographic determination of the lewisite hydrolysate, 2-chlorovinylarsonous acid, after derivatization with 1,2-ethanedithiol)」,ジャーナル・オブ・クロマトグラフィ(journal of chromatography), エルセビア・サイエンス・パブリッシャーズ・ビー・ブイ(Elsevier Science Publishers B.V.), 1991年, 第558巻, p.235-246
上記従来の分析方法では、大気を通気した溶剤の一部を分析装置に注入して分析を行う。したがって、採取した有機砒素化学剤の一部分しか分析装置に導入できないため、高い分析感度を確保するには溶剤中に大気を長時間通気させて有機砒素化学剤の採取量を増加させるか、有機砒素化学剤を採取した後の溶剤を濃縮して有機砒素化学剤の誘導体の濃度を高くする必要があった。
一方、有機砒素化学剤は微量でも極めて毒性が高いため、上述したように回収作業等の際に何らかの理由で有機砒素化学剤の蒸気が大気中に放出された場合は、ごく低濃度であっても速やかに検知して対策を講ずる必要がある。
しかしながら、上記従来の分析方法では、分析感度を重視すると、溶剤中への大気の通気操作や溶剤の濃縮操作およびこれらの操作のための段取りに時間がかかり速報性に欠け、他方、速報性を重視すると分析感度が良くないという問題があった。
そこで、本発明は、大気中に含有されるルイサイト、DC、DA等の有機砒素化学剤を、たとえごく低濃度であっても、迅速かつ高精度で検出することができる分析方法およびその装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、吸着剤の層に、有機砒素化学剤を含有する大気を導入するとともに誘導体化剤を添加して当該吸着剤上で有機砒素化学剤の誘導体を形成させた後、前記吸着剤の層を加熱して前記誘導体を当該吸着剤から熱脱離させ、この熱脱離した誘導体をガス分析器で分析することを特徴とする大気中の有機砒素化学剤の分析方法である。
請求項2に記載の発明は、前記有機砒素化学剤が、ルイサイト(L)、ジフェニルシアノアルシン(DC)およびジフェニルクロロアルシン(DA)よりなる群から選ばれた1種または2種以上の物質を含むものである請求項1に記載の分析方法である。
請求項3に記載の発明は、有機砒素化学剤を含有する大気を採取する大気採取管と、吸着剤が充填され、前記採取された大気が導入される吸着管と、この吸着管に誘導体化剤を添加する誘導体化剤注入管と、前記吸着管を加熱して前記吸着剤上に形成された有機砒素化学剤の誘導体を当該吸着剤から熱脱離させる加熱器と、前記熱脱離された有機砒素化学剤の誘導体を分析するガス分析器とを備えたことを特徴とする大気中の有機砒素化学剤の分析装置である。
請求項4に記載の発明は、前記有機砒素化学剤が、ルイサイト(L)、ジフェニルシアノアルシン(DC)およびジフェニルクロロアルシン(DA)よりなる群から選ばれた1種または2種以上の物質を含むものである請求項1に記載分析装置である。
本発明によれば、大気中に含有されるルイサイト、DC、DA等の有機砒素化学剤を吸着剤で採取し、この吸着剤上で誘導体化して熱安定性を付与した後この誘導体を熱脱離させて分析を行うので、大気中の有機砒素化学剤を迅速かつ高精度で検知することが実現できる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施形態では、有機砒素化学剤としてルイサイトのみを含むものを代表例として説明を行う。
〔分析装置の構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る大気中のルイサイトの分析装置を示す概略説明図である。本例の分析装置は、ルイサイトを含有する大気を採取する大気採取管1と、吸着剤が充填され、大気採取管1により採取された空気がストップバルブ11を介して導入される吸着管2と、この吸着管2に誘導体化剤を添加する誘導体化剤注入管3と、吸着管2を加熱して吸着剤上に形成されたルイサイトの誘導体を吸着剤から熱脱離させる加熱器4と、この熱脱離されたルイサイトの誘導体を分析するガス分析器5とを備えている。
また、ガス分析器5の下流側にはガス分析器5に分析対象ガスを導入するための吸引ポンプ6を設けている。さらに、吸着管2と吸引ポンプ5との間を、ガス分析器5を迂回させて直接接続するバイパス配管7を設け、三方バルブ8の切り替えによりガス分析器5を経由させるか、またはガス分析器4を迂回させるかを選択できるようになっている。
また、誘導体化剤注入管3には、誘導体化剤をガス状にして供給する誘導体化剤ボンベ9をストップバルブ12を介して接続している。さらに、キャリアガスボンベ10を、三方バルブ13,16、接続配管15およびバイパス配管14を介して、吸着管2の入口、ガス分析器5の入口またはバイパス配管7に接続している。このキャリアガスボンベ10からのキャリアガスは、誘導体化後のルイサイトを熱脱離させる際に吸着管2に導入されるほか、一般のガス分析と同様、ガス分析器5内をパージするのに用いられる。そして、ストップバルブ11,12および三方バルブ8,13,16の操作により、大気採取管1からの大気の採取と、ガスボンベ9からの誘導体化剤の注入と、ガスボンベ10から吸着管2へのキャリアガスの供給とを適宜切り替えられるようにしている。
吸着管2としては、内部に充填した吸着剤の層を、採取した大気を通過させることにより、圧力損失を過度に上昇させることなく、大気中に含まれる目的成分(ルイサイト)をできるだけ完全に捕捉できるように、内径2〜10mm、長さ50〜200m程度のカラムを用いることが好ましい。ガス分析器5としてはガス状混合物の分離性・定量性に優れるGC−MS(ガスクロマトグラフ−質量分析計)を用いるのが推奨される。また、加熱器4としては、できるだけ短時間で熱脱離の速度を定常状態に到達させて分析精度を確保するために、吸着管3内の吸着剤を常温から、誘導体を熱脱離させることができる約250℃以上の温度まで数秒程度で加熱できる能力を有することが望ましいが、市販の加熱脱離装置で通常採用されている電気ヒータを用いれば十分である。
吸着管3内に充填する吸着剤としてはルイサイトを選択的に吸着する例えばジフェニルフェニレンオキサイド構造の耐熱性樹脂を用いるのが好ましい。また、また、誘導体化剤としてはルイサイトと反応して誘導体を形成する例えば1,2−エタンジチオール(HS−CH2−CH2−SH)を用い、これをN2ガス等の不活性ガスで例えば1〜1000ppm程度に希釈してガス状で添加するのが好ましい。
〔分析方法〕
次に上記分析装置を用いて大気中のルイサイトを分析する方法を説明する。まず、ストップバルブ11を開に、ストップバルブ12を閉にし、三方バルブ8をバイパス配管7側(すなわち、ガス分析器5を迂回させる側)にセットし、吸引ポンプ6を一定時間運転して大気採取管1を介して所定量の大気を吸引し、これを吸着管3に導入する。(なお、この間、三方バルブ13はバイパス配管14側にセットし、パージのためキャリアガスをガス分析器5に流しておく。)これにより、吸引された大気が吸着管3内に充填された吸着剤の層を通過する間に大気中のルイサイトが吸着剤によって選択的に捕捉される。次いで、ストップバルブ11を閉にして大気の吸引を中止したのちストップバルブ12を開にしてガスボンベ9から誘導体化剤を誘導体化剤注入管3を介して吸着管3内に導入し、吸着剤に捕捉されたルイサイトを誘導体に変換する。なお、誘導体化剤の添加量は、分析精度を高めるためルイサイト全量をできるだけ完全に誘導体化できるよう、ルイサイト全量を誘導体に変換するのに必要な化学当量相当分よりも過剰とするのが好ましく、例えば化学当量相当分の102〜107倍程度とするのが望ましい。その後、三方バルブ8をガス分析器5側(すなわち、ガス分析器5を経由させる側)に切り替え、ストップバルブ12を閉にして誘導体化剤の添加を中止し、三方バルブ13を接続管15側(すなわち、吸着管4を経由する側)に切り替えてキャリアガスとして例えばHeガスを供給しつつ、加熱器4に通電して吸着管3内の吸着剤を約250℃以上の温度に加熱しその温度に維持する。このような加熱操作によって、吸着剤上で形成されたルイサイトの誘導体は吸着剤から熱脱離し気化するが、この気化した誘導体は熱安定性が高いためこのような温度においても分解することなくそのままキャリアガスによりガス分析器5内に導入されるので、高精度での検出が可能となる。また、予めルイサイト濃度が既知の標準ガス(または標準液)を用いて本発明の分析方法(標準液を用いる場合は後記変形例の液状で添加する方法)により分析して検量線を作成しておけば、大気中のルイサイト濃度を高精度で定量できる。
したがって、本発明の分析方法を用いれば、採取したルイサイトを熱安定性の高い誘導体に変換した後その全量を分析装置に導入できるので、高精度の検出を確保しつつ、上記従来の分析方法より格段に短い時間で分析を行うことができる。
(変形例)
上記施形態では、有機砒素化学剤としてはルイサイトのみを含むものを例示したが、DCのみを含むものでも良いし、DAのみを含むものでも良いし、ルイサイト、DCおよびDAの3種の物質のうち、いずれか2種を含むものでも良いし、3種とも含むものでも良い。さらに、大気中に有機砒素化学剤とともにマスタードガス(HD)等他の化学剤が含まれていても良い。HD等他の化学剤は、吸着剤に吸着し濃縮されるが誘導体化剤と反応しないため、本発明方法および装置によりHD等他の化学剤も同時に分析できる。
また、ガス検知器としてはGC−MSを例示したが、ルイサイトおよびDAの誘導体はその分子の構成元素として塩素および硫黄を有しているため、塩素を高感度に検出できる電子捕獲型検出器を備えたガスクロマトグラフや硫黄を高感度に検出できるフレーム光度検出器を備えたガスクロマトグラフを用いても良い。なお、DCの誘導体は、その分子の構成元素として塩素は有しないものの硫黄を有しているため、フレーム光度検出器を備えたガスクロマトグラフを用いることができる。
また、吸着剤としてはジフェニルフェニレンオキサイド構造の耐熱性樹脂を例示したが、グラファイトカーボン、シリカゲル等を用いても良い。
また、誘導体化剤の添加方法としては、誘導体化剤をN2ガス等の不活性ガスで希釈してガス状で添加する例を示したが、誘導体化剤をヘキサン等の有機溶剤で希釈し、注射器等により液状で添加しても良い。
また、大気の採取と誘導体化剤の添加の順序としては、大気の採取後に誘導体化剤の添加を行う例を示したが、ルイサイト(有機砒素化学剤)および誘導体化剤とも吸着剤により捕捉されるので添加の順序に制約はなく、誘導体化剤を先に添加しておいてから大気を採取しても良く、あるいは大気の採取と誘導体化剤の添加を同時に行っても良い。
本発明の効果を確認するため、以下の模擬実験を実施した。
〔その1:ルイサイトの分析実験〕
吸着剤としては、ジフェニルフェニレンオキサイド構造の耐熱性樹脂(スペルコ社製Tenax TA)を選定し、吸着管としてのガラスカラム(内径4mm×長さ117mm)に充填して用いた。誘導体化剤としては1,2−エタンジチオールを選定し、これをヘキサンで1質量%の濃度に希釈して液状で用いた。ガス分析器としては市販のGC−MS分析装置(アジレント社製、型式:6890N+5973N)に組み込まれているGC−MSを用いた。なお、加熱器としてはダイナサーモ社製ACEM900を、吸引ポンプとしてはダイヤフラム型のものを用いた。
そして、ルイサイトを含有する大気の代わりに、ヘキサンにルイサイトを添加してルイサイト濃度0.5ng/μL(ここに、Lはリットルを意味する。)とした溶液を模擬的に分析対象物として用いた。
先ず、吸着剤を充填したガラスカラムに、キャリアガスとしてHeガスを流通させつつ、上記ルイサイトを含有するヘキサン溶液8μLを注射器により誘導体化剤注入管から注入した。この結果、ヘキサンは吸着剤に吸着しないため揮発して除去されるが、ルイサイトは吸着剤に吸着し残留する。この注入操作により吸着剤で採取されるルイサイトの量は0.5ng/μL×8μL=4ngである。この4ngという量は、ルイサイトを0.0007mg/m3の濃度で含む大気を吸引ポンプにより通常の吸引速度0.6L/minで10分間採取した量にほぼ相当する。なお、0.0007mg/m3というルイサイト濃度は、大気中のルイサイト濃度の安全基準値0.003mg/m3より1桁程度低い濃度である。
次に、ヘキサンで希釈した誘導体化剤を注射器により誘導体化剤注入管から直接ガラスカラムに注入した。誘導体化剤の注入量は、上記吸着剤で採取されたルイサイトの全量を誘導体に変換できる化学当量相当分の約107倍とした。この結果、上記と同様にヘキサンは揮発して除去されるが、吸着剤上でルイサイト全量が誘導体化剤と反応して誘導体に変換される。
次いで、キャリアガスとしてHeガスを流通させつつ、ガラスカラムの周りに設けられている加熱器で吸着剤を270℃に加熱して吸着剤に吸着していた物質をガス化して追い出し、GC−MSで分析を行った。
分析結果を図2に示す。図に見られるようにルイサイト誘導体のピークが明瞭に現れており、大気中のルイサイト濃度の安全基準値0.003mg/m3より1桁程度低いごく低濃度においてもルイサイト(誘導体)の検出が可能であり、高精度で定量ができることが分かった。
〔その2:DCの分析実験〕
吸着剤、吸着管、誘導体化剤、ガス分析器、加熱器および吸引ポンプは、上記ルイサイトの分析実験で用いたものと同じものを用いた。
そして、上記ルイサイトの分析実験と同様、DCを含有する大気の代わりに、ヘキサンにDCを添加してDC濃度0.38ng/μLとした溶液を模擬的に分析対象物として用いた。
以下、上記ルイサイトの分析実験と同様の操作でDCの分析を行った。すなわち、吸着剤を充填したガラスカラムに、キャリアガスとしてHeガスを流通させつつ、上記DCを含有するヘキサン溶液2μLを注射器により誘導体化剤注入管から注入した。この結果、上記ルイサイトの分析実験と同様、ヘキサンは吸着剤に吸着しないため揮発して除去されるが、DCは吸着剤に吸着し残留する。この注入操作により吸着剤で採取されるDCの量は0.38ng/μL×2μL=0.76ngである。この0.76ngという量は、DCを0.0002mg/m3の濃度で含む大気を吸引ポンプにより通常の吸引速度0.6L/minで7分間採取した量にほぼ相当する。なお、0.0002mg/m3というDC濃度は、大気中のDC濃度の安全基準値は現段階では定められていないものの、同じ砒素を含むルイサイトの安全基準値0.003mg/m3と比較しても1桁程度低い濃度である。
次に、ヘキサンで希釈した誘導体化剤を注射器により誘導体化剤注入管から直接ガラスカラムに注入した。誘導体化剤の注入量は、上記ルイサイトの分析実験と同様、上記吸着剤で採取されたDCの全量を誘導体に変換できる化学当量相当分の約107倍とした。この結果、上記と同様にヘキサンは揮発して除去されるが、吸着剤上でDC全量が誘導体化剤と反応して誘導体に変換される。
次いで、キャリアガスとしてHeガスを流通させつつ、ガラスカラムの周りに設けられている加熱器で吸着剤を270℃に加熱して吸着剤に吸着していた物質をガス化して追い出し、GC−MSで分析を行った。分析は、DCのチオール誘導体の分子量として通常用いられている227、261および290を測定した。
分析結果を図3に示す。図に見られるようにDC誘導体のピークが明瞭に現れており、同じ砒素を含むルイサイトの安全基準値0.003mg/m3と比較して1桁程度低いごく低濃度においてもDC(誘導体)の検出が可能であり、高精度で定量ができることが分かった。
なお、DAの誘導体は上記DCの誘導体とほぼ同じ形態を有する化合物であることから、DAもDCと同様、本発明方法および装置により分析が可能と判断できる。
実施形態に係る大気中のルイサイト(有機砒素化学剤)の分析装置の構成を示す概略説明図である。 実施例における吸着剤から熱離脱したルイサイト誘導体のGC−MSスペクトル図である。 実施例における吸着剤から熱離脱したDC誘導体のGC−MSスペクトル図である。
符号の説明
1:大気採取管
2:吸着管
3:誘導体化剤注入管
4:加熱器
5:ガス分析器
6:吸引ポンプ
7,14:バイパス配管
8,13,16:三方バルブ
9:誘導体化剤ボンベ
10:キャリアガスボンベ
11,12:ストップバルブ
15:接続配管

Claims (4)

  1. 吸着剤の層に、有機砒素化学剤を含有する大気を導入するとともに誘導体化剤を添加して当該吸着剤上で有機砒素化学剤の誘導体を形成させた後、前記吸着剤の層を加熱して前記誘導体を当該吸着剤から熱脱離させ、この熱脱離した誘導体をガス分析器で分析することを特徴とする大気中の有機砒素化学剤の分析方法。
  2. 前記有機砒素化学剤が、ルイサイト、ジフェニルシアノアルシンおよびジフェニルクロロアルシンよりなる群から選ばれた1種または2種以上の物質を含むものである請求項1に記載の分析方法。
  3. 有機砒素化学剤を含有する大気を採取する大気採取管と、吸着剤が充填され、前記採取された大気が導入される吸着管と、この吸着管に誘導体化剤を添加する誘導体化剤注入管と、前記吸着管を加熱して前記吸着剤上に形成された有機砒素化学剤の誘導体を当該吸着剤から熱脱離させる加熱器と、前記熱脱離された有機砒素化学剤の誘導体を分析するガス分析器とを備えたことを特徴とする大気中の有機砒素化学剤の分析装置。
  4. 前記有機砒素化学剤が、ルイサイト、ジフェニルシアノアルシンおよびジフェニルクロロアルシンよりなる群から選ばれた1種または2種以上の物質を含むものである請求項3に記載の分析装置。

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