JP2005272553A - ポリカルボン酸マクロモノマー組成物の製造方法 - Google Patents

ポリカルボン酸マクロモノマー組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 マイケル付加反応や脱炭酸反応に起因する酸濃度の低下が小さく、着色が少なく、カルボキシル基を有するビニル重合体からなるマクロモノマーの含有割合の大きい、すなわち末端エチレン性不飽和の含有率が大きい、マクロモノマー組成物を生産性よく製造する方法を提供する
【解決手段】 エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体(a−1)20〜100質量%、エチレン性不飽和ジカルボン酸単量体(a−2)0〜30質量%およびその他のエチレン性不飽和単量体(a−3)0〜80質量%からなる単量体混合物を、水性媒体中でpH3.8〜12の範囲、温度130〜240℃の範囲において、全単量体を基準として0〜3mol%のラジカル重合開始剤を添加して重合させるポリカルボン酸マクロモノマー組成物の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、カルボキシル基を有し、末端にエチレン性不飽和結合を有するビニル重合体からなるマクロモノマーを水性媒体中で製造する方法に関するものである。
特許文献1には、t−ブトキシ基をアルコール残基とするエステル構造を有するマクロモノマーを一旦合成した後、該エステルを分解させることにより、カルボキシル基を有するマクロモノマーを製造する方法が提案されている。しかし、該エステルの分解の際にカルボキシル基と共に生成するイソブチレン等の副生物を処理せねばならない問題や分解工程に多大な時間が必要であるという欠点を有する。
特許文献2には、重合体骨格を製造する際のラジカル重合において、連鎖移動剤としてコバルト錯体を使う方法が提案されている。本方法ではコバルト錯体の毒性が強く、また着色も著しいことから工業化が困難であるという問題があった。特許文献2には水性媒体中での重合は開示されておらず、当然、反応液のpHを制御することも開示されていない。
特許文献3には、220℃以上の高温下でアクリル酸をラジカル重合すると重合体末端に不飽和結合が導入されるという方法が提案されている。しかし、特許文献3には反応液のpHを制御することは開示されておらず、特許文献3に具体的に開示されている方法により得られる重合体は、マイケル付加反応や脱炭酸反応が起き易いために酸の濃度が低下したものとなる場合があり、また著しく着色したものとなる場合もある。
特許文献4には、水酸基を有するマクロモノマーに無水カルボン酸を反応させ、マクロモノマー骨格にカルボシル基を導入する方法が提案されている。しかしながら、本方法では、マクロモノマーの合成後さらに無水カルボン酸の付加反応工程を必要とするので経済的に問題があった。また本法では高い酸価を得るのに限界がある。
特許文献5には、モノアルコキシポリアルキレングリコール存在下にアクリル酸を180〜270℃でラジカル重合を行うという方法が提案されているが、マクロモノマーの存在については記載されていない。また、特許文献5には反応液のpHを制御することは開示されておらず、特許文献5に具体的に開示されている方法により得られる重合体は、末端不飽和基の導入率はきわめて小さく、マクロモノマーが含まれていたとしても純度が低いものにすぎない。
特許文献6には、連続攪拌槽型プロセスを使用して、3.5以下のpHおよび20〜90℃の温度において、アクリル酸を水溶液重合させるというアクリル酸重合体の製造方法が提案されているが、マクロモノマーの存在については記載されていない。特許文献6に開示されている方法により得られる重合体には、末端に不飽和基はほとんど導入されず、マクロモノマーが含まれていたとしても純度が低いものにすぎない。
特許文献7には、pHを6〜9の範囲に調整し、95〜100℃の温度においてアクリル酸を水溶液重合させるというアクリル酸重合体の製造方法が提案されている。しかし、特許文献7には末端不飽和結合の存在は全く示唆されておらずマクロモノマーとしての利用概念は示されていない。特許文献7に開示されている方法により得られる重合体は、末端不飽和基の導入率はきわめて小さく、マクロモノマーが含まれていたとしても純度が低いものにすぎない。
特許文献8には、130〜240℃の温度においてアクリル酸を水溶液重合させるというアクリル酸重合体の製造方法が提案されている。しかし、特許文献8には、末端不飽和結合の存在は全く示唆されておらずマクロモノマーとしての利用概念は開示されていない。また、特許文献8には反応液のpHを制御することは開示されておらず、特許文献8に具体的に開示されている方法すなわち重合開始剤を多量に使用して得られる重合体は、末端不飽和基の導入率はきわめて小さく、マクロモノマーが含まれていたとしても純度が低いものにすぎない。さらに、マイケル付加反応や脱炭酸反応が起き易いために酸の濃度が低下したものとなる場合があり、また著しく着色したものとなる場合もある。
特許文献9、特許文献10、特許文献11には、マレイン酸などのエチレン性不飽和ジカルボン酸をアクリル酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸と円滑に共重合させるために、pHを制御する方法が開示されている。しかし、これらの公知文献では、末端不飽和結合の存在は全く示唆されておらずマクロモノマーとしての利用についても示唆されていない。また、実施例に具体的に開示された技術は、重合温度が100〜120℃であり、得られる重合体は、末端不飽和基の導入率はきわめて小さく、マクロモノマーが含まれていたとしても純度が低いものにすぎない。
特開平1−268709号公報 特開平9−176256号公報 特開平8−3256号公報 特開平11−181021号公報 特開2003−40924号公報 特開2003−2909号公報 特開平5−86125公報 特開平6−41206公報 特開昭59−66407号公報 特開昭59−64613号公報 特開平8−193101号公報
上記公知文献を整理する。
特許文献1〜4には、カルボキシル基を有し、末端にエチレン性不飽和を有するビニル重合体からなるマクロモノマーが開示されている。
特許文献1および4に記載されているマクロモノマーは、製造方法が本願発明により得られるマクロモノマーとは大きく異なり、生産性が悪いものである。また、マクロモノマーの構造も本願発明により得られるマクロモノマーとは異なる。
特許文献2に記載されているマクロモノマーは、製造方法が本願発明により得られるマクロモノマーとは大きく異なる。また、マクロモノマーが夾雑物を含有し、着色しやすいものである点も本願発明により得られるマクロモノマーとは異なる。
特許文献3に記載されているマクロモノマーの製造方法は、上位概念として本願発明のマクロモノマーの製造方法を開示している。しかし、具体的に開示されている方法により得られる重合体は、酸の濃度が低下したものとなる場合があり、著しく着色したものとなる場合もある点で、本願発明とは異なる。
特許文献5〜11には、カルボキシル基を有するビニル重合体の製造方法が開示されているが、末端にエチレン性不飽和を有するビニル重合体からなるマクロモノマーについては何ら記載されていない。個々の発明の目的に応じて、反応液のpHや反応温度が種々規定されているが、具体的に開示された方法により得られる重合体は、末端不飽和基の導入率はきわめて小さく、実質的にマクロモノマーが含まれていないか、もしマクロモノマーが含まれていたとしても純度が低いものとなりやい点で本願発明とは異なる。
本発明の第1の目的は、マイケル付加反応や脱炭酸反応に起因する酸濃度の低下が小さく、着色が少なく、カルボキシル基を有するビニル重合体からなるマクロモノマーの含有割合の大きい、すなわち末端エチレン性不飽和の含有率が大きい、マクロモノマー組成物を生産性よく(低コストで)製造する方法を提供することである。本発明の第2の目的は、上記マクロモノマー組成物に含まれるカルボキシル基を有するビニル重合体からなるマクロモノマーおよびエチレン性不飽和単量体を共重合させてグラフト共重合体またはブロック共重合体を効率よく製造する方法を提供することである。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明のポリカルボン酸マクロモノマー組成物の製造方法は、エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体(a−1)20〜100質量%、エチレン性不飽和ジカルボン酸単量体(a−2)0〜30質量%およびその他のエチレン性不飽和単量体(a−3)0〜80質量%からなる単量体混合物を、水性媒体中でpH3.8〜12の範囲、温度130〜240℃の範囲において、全単量体を基準として0〜3mol%のラジカル重合開始剤を添加して重合させることを特徴とする。
請求項2に記載の発明のポリカルボン酸マクロモノマー組成物の製造方法は、連続撹拌槽式反応器を使用して、エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体(a−1)20〜100質量%、エチレン性不飽和ジカルボン酸単量体(a−2)0〜30質量%およびその他のエチレン性不飽和単量体(a−3)0〜80質量%からなる単量体混合物を、水性媒体中でpH3.8〜12の範囲、温度110〜240℃の範囲において、全単量体を基準として0〜3mol%のラジカル重合開始剤を添加し、平均滞留時間5〜120分の条件で重合させることを特徴とする。
請求項3に記載の発明のポリカルボン酸マクロモノマー組成物の製造方法は、請求項1または2に記載の発明において、エチレン性不飽和ジカルボン酸単量体(a−2)の割合が0〜10質量%であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明のポリカルボン酸マクロモノマー組成物の製造方法は、請求項1または2に記載の発明において、ラジカル重合開始剤の添加量が全単量体を基準として0〜1mol%であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明のポリカルボン酸マクロモノマー組成物の製造方法は、請求項1または2に記載の発明において、pH4.5〜11の範囲、温度130℃〜215℃の範囲で上記単量体混合物を重合させることを特徴とする。
請求項6に記載の発明のポリカルボン酸マクロモノマー組成物は、請求項1〜5のいずれかに記載の方法により得られ、下記式(1)に示す構造を有するポリカルボン酸マクロモノマーを含有することを特徴とする。
Figure 2005272553
式(1)において、Mは単量体単位を意味し、nは重合度を表す自然数であり、Xは−COOR、−CONR2、−OR、−OCOR、−OCOOR、−NCOOR、ハロゲン原子、−CN又は置換基を有していてもよいフェニル基若しくはアリール基である。Rはアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、その他の置換基を有していてもよいアルキル基、フェニル基、ベンジル基、ポリアルキレングリコール基、ジアルキルアミノアルキル基、トリアルコキシシリルアルキル基又は水素原子である。
請求項7に記載の共重合体の製造方法は、請求項6に記載のポリカルボン酸マクロモノマー組成物とエチレン性不飽和単量体(b)とをラジカル反応させることを特徴とする。
請求項8に記載の共重合体の製造方法は、エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体(a−1)20〜100質量%、エチレン性不飽和ジカルボン酸単量体(a−2)0〜30質量%およびその他のエチレン性不飽和単量体(a−3)0〜80質量%からなる単量体混合物を、水性媒体中でpH3.8〜12の範囲、温度110〜240℃の範囲において、全単量体を基準として0〜3mol%のラジカル重合開始剤を添加して重合させて得られるポリカルボン酸マクロモノマー組成物とエチレン性不飽和単量体(b)とをラジカル反応させることを特徴とする。
マイケル付加反応や脱炭酸反応に起因する酸濃度の低下が小さく、着色が少なく、カルボキシル基を有するビニル重合体からなるマクロモノマーの含有割合の大きい、すなわち末端エチレン性不飽和の含有率が大きい、マクロモノマー組成物を生産性よく(低コストで)製造することができた。
上記マクロモノマー組成物に含まれるカルボキシル基を有するビニル重合体からなるマクロモノマーおよびビニル単量体を共重合させてグラフト共重合体またはブロック共重合体を効率よく製造することができた。
上記マクロモノマーすなわちポリカルボン酸マクロモノマーならびにポリカルボン酸重合体単位を有するグラフト重合体およびブロック重合体は、様々な用途に有用である。例えば有機顔料分散剤、無機顔料分散剤、増粘剤、会合性増粘剤、凝集剤、紙用ザイズ剤や紙力増強剤などの紙用薬剤、洗剤ビルダー、高分子乳化剤、反応性高分子乳化剤、コーティング、インキバインダー、ニス、相溶化剤などに利用できる。
本明細書において、アクリルとメタクリルを合わせて(メタ)アクリルともいう。
エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体(a−1)は、分子内にエチレン性不飽和結合および1個のカルボキシル基を有する単量体である。具体例としてはメタクリル酸、アクリル酸などが挙げられる。これらは、一種または二種以上を用いることができる。
エチレン性不飽和ジカルボン酸単量体(a−2)は、分子内にエチレン性不飽和結合および2個のカルボキシル基を有する単量体である。具体例としてはマレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられる。これらは、一種または二種以上を用いることができる。
その他のエチレン性不飽和単量体(a−3)は、エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体(a−1)およびエチレン性不飽和ジカルボン酸単量体(a−2)以外のエチレン性不飽和単量体である。具体例としては、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルジアルキルアミド、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパン-スルホン酸、ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステルおよびその4級塩等の水溶性あるいは高親水性のエチレン性不飽和単量体が好ましいものとして挙げられる。しかし、疎水性エチレン性不飽和単量体でも水性媒体中での重合を阻害しないかぎり用いることが出来る。疎水性エチレン性不飽和単量体の具体例としては炭素数が1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基は直鎖、分岐鎖でもよい)、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸フェノキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシシリルアルキルエステル、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、(メタ)アリルエーテル類、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。これらは一種または二種以上を併用できる。
本発明のポリカルボン酸マクロモノマーの製造方法は、エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体(a−1)20〜100質量%、エチレン性不飽和ジカルボン酸単量体(a−2)0〜30質量%およびその他のエチレン性不飽和単量体(a−3)0〜80質量%からなる単量体混合物をラジカル重合させて得られる。(a−1)、(a−2)および(a−3)の合計は100質量%である。
(a−1)の割合が20質量%より小さいと酸価が小さくなりすぎる。また末端エチレン性不飽和結合導入率が低下する。(a−2)が30質量%より多いとβ切断が起こりにくくなり末端エチレン性不飽和結合の導入率が低下する。
エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体(a−1)、エチレン性不飽和ジカルボン酸単量体(a−2)およびその他のエチレン性不飽和単量体(a−3)の好ましい割合は、それぞれ50〜100質量%、0〜20質量%および0〜50質量%であり、より好ましい割合は、70〜100質量%、0〜10質量%および0〜30質量%である。
単量体混合物のラジカル重合は水性媒体中でおこなわれる。水性媒体は、水そのものかまたは水および水と混和性を有する有機溶剤との混合液である。水性媒体は水を50質量%以上含むものであることが好ましく、70質量%以上含むものであることがより好ましく、90質量%以上含むものであることがさらに好ましい。水と混和性を有する有機溶剤の例としては、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、グリセリン、ジオキサン、アセトニトリルなどがあげられるがこの限りではない。好ましくは連鎖移動能の小さいアセトン、メタノールなどである。エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールやイソプロピルアルコールなどの連鎖移動能の高い溶剤は、ポリマー末端に連鎖移動剤が導入され、末端へのエチレン性不飽和結合導入率が低くなるため、使用を避けるのが好ましい。
単量体混合物は、単量体混合物および水性媒体の合計量100質量%を基準として、5〜65質量%の濃度であることが好ましい。より好ましい濃度は15〜55質量%であり、さらに好ましい濃度は25〜45質量%である。濃度が低すぎると生産性が悪い場合がある。濃度が高すぎると分子量制御が困難となり、ゲル化にいたる場合がある。また、生成する重合体が高分子量化するにともない、粘度が増大し均一な反応ができなくなる場合がある。
単量体混合物の重合は、110〜240℃の温度で行われる。
重合温度が低すぎると、生成した重合体の主鎖において起こるβ切断の頻度が低くなるために、重合体の末端にエチレン性不飽和基が導入される割合が小さくなる。また、重合温度が低すぎると、重合体が分岐を有するものとなりやすいため、高分子量化による粘度上昇が起きたりゲル化したりする。重合が連続撹拌槽式反応器を使用して行われる場合には、上記の問題が緩和されるため、重合温度の下限は110℃であり、120℃が好ましく、130℃がより好ましい。重合が連続撹拌槽式反応器を使用せずに行われる場合には、重合温度の下限は130℃が好ましく、140℃がより好ましく、150℃がさらに好ましい。
重合温度の上限は215℃が好ましく、205℃がより好ましい。重合温度が高すぎると、カルボキシル基の分解反応である脱炭酸反応が起こり酸価が小さくなる。また着色も著しくなる。
単量体混合物の重合は、pH3.8〜12の範囲で行われる。好ましい範囲はpH4.5〜11であり、より好ましい範囲はpH5.5〜10である。重合前と重合後のpHが異なる場合は、重合前のpHを対象とする。
pHが3.8より小さいと、重合体の末端にエチレン性不飽和基が導入される割合が小さくなる。また、pHが3.8より小さいと、重合体が分岐を有するものとなりやすいため、高分子量化による粘度上昇が起きたりゲル化したりする。さらにマイケル付加生成物が増えて酸の濃度が低下する場合もあり、着色が著しくなる場合もある。
pHが12より大きいと設備が腐食しやすくなる場合がある。
カルボン酸の中和のために使用される中和剤には特に制限は無く、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、有機アミンなどがあげられる。
重合温度およびpHが上記範囲に制御されることが特に重要なポイントであり、その結果、重合体の末端にエチレン性不飽和基が導入される割合が大きくなることがわかった。その理由は、上記条件において、生成した重合体の主鎖中の3級炭素原子に結合した水素原子が水素ラジカルとして引き抜かれる反応が高い頻度で起こるためと考えている。すなわち、エチレン性不飽和モノカルボン酸(a−1)単位またはその他のエチレン性不飽和単量体(a−3)単位に由来するα位炭素原子に結合した水素原子が水素ラジカルとして引き抜かれる反応が高い頻度で起こり、該水素ラジカル引き抜き反応に続いて起こるβ切断反応の頻度も高くなるためと考えている。
重合温度およびpHが上記範囲に制御されることにより、連鎖移動剤や多量のラジカル重合開始剤を使用しなくても、分子量が低、末端にβ切断に伴うエチレン性不飽和基が多く導入された重合体すなわちマクロモノマーが効率よく得られる。
重合温度およびpHが上記範囲に制御されることにより、マイケル付加反応や脱炭酸反応に起因する酸濃度の低下が小さく、着色が少なく、カルボキシル基を有するビニル重合体からなるマクロモノマーの含有割合の大きい、すなわち末端エチレン性不飽和の含有率が大きい、マクロモノマー組成物を生産性よく(低コストで)製造することが可能となる。
単量体混合物をラジカル重合させるにあたり、水性媒体中でラジカル重合開始能のあるラジカル重合開始剤を使用することができる。例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムや水溶性アゾ系開始剤等を挙げることができる。好ましくはt−ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素である。ラジカル重合開始剤の使用割合は、全単量体を基準として0〜3mol%であり、好ましくは0.001〜2mol%であり、より好ましくは0.01〜1mol%である。ラジカル重合開始剤の使用量が多すぎると、開始剤断片がポリマー末端に多く導入されるので、マクロモノマーの末端不飽和基の導入率が低くなる。ラジカル重合開始剤の使用量の下限を0mol%としているのは、ラジカル重合開始剤を使用しなくてもラジカル重合が起こる場合もあるためである。
単量体混合物をラジカル重合させるにあたり、連鎖移動剤を使用することもできるが、連鎖移動剤の使用割合は全単量体を基準として、0〜10mol%にとどめるべきである。好ましくは0〜5mol%であり、より好ましくは0〜1mol%であり、最も好ましくは実質的に使用しないことである。連鎖移動剤の使用量が多すぎると、連鎖移動剤に由来する基が末端に導入された重合体の割合が増えて、末端にエチレン性不飽和基を有する重合体すなわちマクロモノマーの収率が小さくなる。
ここでいう連鎖移動剤とは、Polymer Handbook 4th Editionなどで定義される連鎖移動定数(C=生長反応速度定数kp/連鎖移動反応速度定数kf)の値が10-4以上のものである。具体的にはイソプロピルアルコール、sec-ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、カルビトール、ポリアルキレングリコール、クメン等の有機溶剤、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸等のメルカプタン系化合物、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、次亜リン酸塩、次亜リン酸、ギ酸アンモニウム、硫酸ヒドロキシアンモニウム、ホルムアルデヒド等があげられる。
単量体混合物のラジカル重合は、バッチ重合、セミバッチ重合、管式反応器を使用する重合、連続攪拌槽式反応器(CSTR)を使用する重合およびこれらを組み合わせた多段重合など、公知の重合方法により実施できる。好ましい重合方法は連続攪拌槽式反応器(CSTR)を使用する重合方法である。たとえば特表昭57−502171号、特開昭59−6207号、特開昭60−215007号等に開示された連続攪拌槽式反応器(CSTR)を使用した重合方法などを参考に行えばよい。CSTRを使用する重合方法は、他の重合方法と比べて生成する重合体の分子量分布、組成分布、滞留時間分布を狭くすることが出来るので、より均一なポリカルボン酸マクロモノマーを得ることが出来る。
単量体混合物をラジカル重合させる反応時間(滞留時間)は、特に制限はないが、5〜300分が好ましく、5〜120分がより好ましく、5〜60分がさらに好ましい。300分より長いと生成した末端不飽和結合が新たに発生した開始剤ラジカルによって消費され、マクロモノマーの末端不飽和基導入率を下げる場合がある。また生産性も悪く、着色や熱劣化が起こる場合がある。反応時間が5分に満たない場合は単量体が充分に反応しない恐れがあり、また重合熱が除熱困難となるなどの生産上の問題がおこる場合がある。
本発明により得られるポリカルボン酸マクロモノマー組成物は、重量平均分子量は300〜120000であることが好ましい。重量平均分子量が300より小さいとポリカルボン酸としての機能を発揮しない場合がある。すなわち、マクロモノマー組成物またはマクロモノマー単位を構成単位として有するグラフト重合体組成物もしくはブロック重合体組成物が、分散剤、増粘剤、凝集剤、紙用ザイズ剤、紙力増強剤、洗剤ビルダー、高分子乳化剤、コーティング剤、相溶化剤などに利用したときの性能が不充分なものとなる場合がある。
重量平均分子量が120000より大きいと、マクロモノマー組成物は末端不飽和基導入率が低くなりやすく、マクロモノマー組成物とエチレン性不飽和単量体(b)をラジカル反応させたときに、共重合体が収率よく得られない場合がある。
ポリカルボン酸マクロモノマー組成物の好ましい重量平均分子量は500〜80000であり、より好ましくは1000〜50000、さらに好ましくは1500〜20000である。
ポリカルボン酸マクロモノマー組成物は、下記式(1)に示す構造を有するポリカルボン酸マクロモノマーを含有する。
Figure 2005272553
式(1)において、Mは単量体単位を意味し、nは重合度を表す自然数であり、Xは−COOR、−CONR2、−OR、−OCOR、−OCOOR、−NCOOR、ハロゲン原子、−CN又は置換基を有していてもよいフェニル基若しくはアリール基である。Rはアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、その他の置換基を有していてもよいアルキル基、フェニル基、ベンジル基、ポリアルキレングリコール基、ジアルキルアミノアルキル基、トリアルコキシシリルアルキル基又は水素原子である。
Xがカルボキシル基である場合はアルカリにより中和されて、−COONa、−COOK、−COONH4などに例示される塩であるものも含む。
ポリカルボン酸マクロモノマー組成物における末端エチレン性不飽和結合の導入率(以下、単に末端不飽和結合導入率ともいう。)は次式で定義される。
末端不飽和結合導入率(f)=末端エチレン性不飽和結合モル濃度/高分子モル濃度
つまり末端不飽和結合導入率(f)とは高分子1分子が末端に有するエチレン性不飽和結合数の平均値である。本発明における末端不飽和結合導入率は、0.5〜2.5である。好ましくは0.7〜1.5であり、より好ましくは0.8〜1.2である。0.5より小さいと、マクロモノマー組成物とエチレン性不飽和単量体(b)をラジカル反応させるときに、共重合体が収率よく得られない。2.5より大きいと、マクロモノマー組成物とエチレン性不飽和単量体(b)をラジカル反応させるときに、ゲル化や分子量分布を増大させるなどの問題を生じる。
本発明のポリカルボン酸マクロモノマー組成物製造工程における末端エチレン性不飽和結合導入機構は、次のようなものではないかと推定している。ポリカルボン酸マクロモノマー組成物製造に供される単量体をCH2=CHXとして説明する。
重合体が、水素ラジカル引き抜きを受けてα炭素(Xが結合している炭素)上にラジカルを有するもの(式(2)に示す構造を有する重合体)となる。
Figure 2005272553
式(2)に示す構造を有する重合体のラジカルと単量体が付加反応すると、分岐を有する重合体(式(3)に示す構造を有する重合体)を生成する。
Figure 2005272553
式(2)に示す構造を有する重合体が、β開裂反応(β位の炭素とγ位の炭素の結合が切れる反応)を起こすと末端にエチレン性不飽和結合を有する重合体(式(4)に示す構造を有する重合体)すなわちマクロモノマーおよび重合体ラジカル(式(5)に示す構造を有する重合体)を生成する。
Figure 2005272553
式(3)に示す構造を有する重合体を生成する反応と、式(4)に示す構造を有する重合体すなわちマクロモノマーを生成する反応とは競争反応である。
本発明は、重合条件を上記のように制御することにより、式(3)に示す構造を有する重合体の生成割合を小さくし、マクロモノマーを効率的に得られることを見出したのである。
本発明のマクロモノマーは前述の機構によって生成されると推定されるので、十分にβ切断頻度が高い場合、理論的には末端不飽和結合導入率(f)は平均1.0になる。すなわち、高分子1本あたり平均1個の末端不飽和結合数である。しかしながら、確率的には末端不飽和結合数は分布をもち、両末端に不飽和結合が存在するマクロモノマー成分もいくらか存在する。そのため、グラフトポリマーの製造条件によってはゲル化などの問題を生じることもある。また、よく理由はわからないが、実験的には末端不飽和結合導入率(f)が1.0を上回ることも観察されている。
本発明のポリカルボン酸マクロモノマー組成物は、末端に不飽和結合を有するマクロモノマーの含有割合が大きいため、エチレン性不飽和単量体(b)とラジカル反応させて、効率的に共重合体を製造することができる。
上記共重合体の製造すなわちポリカルボン酸マクロモノマー組成物とエチレン性不飽和単量体(b)とのラジカル反応は、エマルション重合、水分散重合、水溶液重合、溶液重合、塊状重合、シート重合など公知のラジカル重合方法によって実施できる。ポリカルボン酸マクロモノマーは水溶液で製造されるので水性媒体中での重合が好ましい。
ポリカルボン酸マクロモノマー組成物とエチレン性不飽和単量体(b)とのラジカル反応によって得られる共重合体は、その反応条件によってグラフト共重合体が主成分となる場合、ブロック共重合体が主成分となる場合、グラフト共重合体とブロック共重合体の共存したものとなる場合などがある。
グラフト共重合体を主成分とする共重合体を得ることを意図する場合は、マクロモノマーの生成機構をよく考慮する必要がある。すなわち、マクロモノマーに生長ラジカルが付加した状態は3級ラジカルとなり、式(2)に示す構造を有する重合体と同様な構造をとると考えられる。マクロモノマーの製造に適した温度やpHの条件下では、分岐(グラフト)反応よりベータ切断が優先するためグラフトポリマーへの反応が進行しにくい。このような理由からグラフトポリマー製造条件として好ましい温度は50〜110℃、より好ましくは60〜100℃、最も好ましい温度は70〜95℃である。また、pHは3.5〜12の範囲が好ましく、pH4.5〜11がより好ましく、pH5.5〜10がさらに好ましい。pHが3.5より低いとゲル化が起こりやすく重合反応を制御することが困難になる場合がある。pHが12より高いと分解や着色などの問題を起こす場合がある。
エチレン性不飽和単量体(b)は、ラジカル重合性を有するものであればよく、特に制限はない。
グラフト共重合体を主成分とする共重合体を得ることを意図する場合は、エチレン性不飽和単量体(b)は、エチレン性不飽和単量体(b)全量を基準としてα位に水素を有する単量体を30mol%以上含有するものであることが好ましい。α位に水素を有する単量体を50mol%以上含有するものがより好ましく、70mol%以上含有するものがさらに好ましい。
α位に水素を有する単量体の割合が30mol%未満の場合、つまり、例えばα位にメチル基を有する単量体の割合が70mol%を超える場合、グラフト共重合率が著しく低下する。その理由は以下のように推察している。α位にメチル基を有する単量体がマクロモノマーに付加すると隣接するユニットにメチル基を有する3級ラジカルが生成し、メチル基の影響で3級ラジカルはβ切断を速やかに起こし分岐反応が進行しない。そのため、α位にメチル基を有する単量体の割合が多いとグラフト共重合反応が著しく遅くなると考えられる。
α位に水素を有する単量体としては、例えばアクリル酸、アクリルアミド、アクリルジアルキルアミド、アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル、アクリル酸アルコキシアルキルエステル、アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパン-スルホン酸、ビニルピロリドン、アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステルおよびその4級塩、アクリル酸アルキルエステル(アルキル基は直鎖、分岐鎖でもよい)、アクリル酸グリシジルエステル、アクリル酸ベンジルエステル、アクリル酸フェノキシアルキルエステル、アクリル酸シクロヘキシルエステル、アクリル酸イソボルニルエステル、アクリル酸アルコキシシリルアルキルエステルビニルエステル類、トリフルオロエチルアクリレート、パーフルオロアルキルエチルアクリレート、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、アリルエーテル類、アクリロニトリル、スチレン等が挙げられる。水溶性あるいは高親水性のビニル単量体が特に好ましい。
α位に水素以外の基を有する単量体の例としては、メタアクリル酸、メタアクリルアミド、メタアクリルジアルキルアミド、メタアクリル酸ポリアルキレングリコールエステル、メタアクリル酸アルコキシアルキルエステル、メタアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、メタアクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステルおよびその4級塩、イタコン酸、メタアクリル酸アルキルエステル(アルキル基は直鎖、分岐鎖でもよい)、メタアクリル酸グリシジルエステル、メタアクリル酸ベンジルエステル、メタアクリル酸フェノキシアルキルエステル、メタアクリル酸シクロヘキシルエステル、メタアクリル酸イソボルニルエステル、メタアクリル酸アルコキシシリルアルキルエステルビニルエステル類、トリフルオロエチルメタアクリレート、パーフルオロアルキルエチルメタアクリレート、メタクリロニトリル、α−メチルスチレンなどが挙げられる。水溶性あるいは高親水性のビニル単量体が特に好ましい。
実施例1(重合体1の製造)
アクリル酸ナトリウム(AA−Na)36g、水64g、t−ブチルハイドロパーオキサイド(TBHP)69%水溶液0.2gを混合した。その混合液は20℃でpH8.0であった。その混合液3gを外径10mmのSUS316製反応管に仕込んで密封した。予め200℃に保ったオイルバスに反応管を完全に浸して30分間後にとりだし、水で急速冷却した。反応管から得られた水溶液は薄黄色で、pH11.0であった。次にイオン交換樹脂でイオン交換を行いナトリウム塩を取り除き、真空乾燥を行い重合体1を得た。その重量から転化率はおよそ90%以上であることが分かった。乾燥したポリアクリル酸を水系GPCで分子量測定を行い、標準ポリアクリル酸で作られた校正曲線で分子量計算したところ重量平均分子量(以下Mw)は3400、数平均分子量(以下Mn)は1300、分子量分布Mw/Mnは2.6であった。また1H−NMR測定をおこない、5.6PPMと6.1PPMに末端エチレン性不飽和結合に由来するピークが観察された。しかし、4.2PPMのマイケル付加反応に伴うエステル由来のピークは全く観察されなかった。末端不飽和結合のピーク強度と1.2PPM〜2.8PPMの主鎖中のプロトンに由来するピーク強度比と数平均分子量から末端不飽和結合導入率(f)を計算した。fは1.5であった。
実施例2〜5および比較例1〜2(重合体2〜5および比較重合体1〜2の製造)
実施例1と同様な方法で、pHを変えて重合体2〜5、比較重合体1〜2を製造した。 全て重合率は90%以上であった。pH3.5以下では分子量分布が広がり、末端不飽和結合量もpH3.5を超えるものと比べて低くなり、着色も激しかった。結果を表1に示した。
Figure 2005272553
実施例6〜10および比較例3〜4(重合体6〜10および比較重合体3〜4の製造)
実施例1と同様な方法で、150℃でpHを変えて重合体6〜10、比較重合体3〜4を製造した。重合体6〜10は重合率は90%以上であった。pH3.5以下ではゲル化した。結果を表2に示した。
Figure 2005272553
比較例5〜9(比較重合体5〜9の製造)
開始剤に過硫酸ナトリウムを用いる点および反応温度を100℃に変える点以外は実施例1と同様な方法で、pHを変えて比較例6〜9を製造した。全てゲル化した。結果を表3に示した。
Figure 2005272553
実施例11(重合体11の製造)
アクリル酸ナトリウム(AA−Na)18g、メタクリル酸ナトリウム(MAA−Na)18g、水64g、t−ブチルハイドロパーオキサイド(TBHP)69%水溶液0.2gを混合した。その混合液は20℃でpH7.8であった。その混合液3gを外径10mmのSUS316製反応管に仕込んだ。予め200℃に保ったオイルバスに反応管を完全に浸して30分間後にとりだし、水で急速冷却した。反応管から得られた水溶液は薄黄色で、pH10.7であった。実施例1と同様に分析を行い、Mw2500、Mn1000、Mw/Mn=2.5、fは1.1であった。
実施例12(重合体12の製造)
オイルジャケット備えた容量1リットルの加圧式攪拌槽型反応器のオイルジャケット温度を、200℃に保った。次いで、アクリル酸ナトリウム(AA−Na)84重量部、アクリル酸(AA)16重量部、水169重量部からなる単量体混合液に、重合開始剤としてターシャリーブチルハイドロパーオキサイド(以下TBHP)0.5重量部を混合し原料タンクに仕込んだ。一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給し、反応器内の混合液重量が580g一定になるように重合物を反応機出口から連続的に抜き出した。抜き出した反応液のpHは6.5であった。その時の反応器内温は、所望の200℃に保たれた。
単量体混合物の供給開始後、反応器内部の温度が安定してからさらに36分後をほぼ平衡状態に達したと判断し、それから約2.9kgのポリアクリル酸ナトリウム水溶液を回収した。液の色は薄黄色であった。液体クロマトグラフィ−で残存AAを分析すると2.1wt%であった。その結果から重合率は94%であることがわかった。
実施例1と同様にイオン交換処理後、分子量、末端不飽和結合導入率(f)を測定した。Mwは7900、Mnは3100、分子量分布Mw/Mnは2.5であった。また末端不飽和結合導入率(f)は1.1であった。
実施例13(グラフト共重合体1の製造)
攪拌機、還流冷却機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器内に実施例12で製造したポリカルボン酸ナトリウムマクロモノマー水溶液(重合体12)を100重量部、水100重量部仕込み、窒素雰囲気下で90℃にした。別途調整したアクリル酸ナトリウム(AA−Na)36重量部、アクリル酸(AA)6.9重量部と過硫酸ナトリウム(NPS)0.8重量部、水20重量部からなる単量体溶液を4時間かけて連続的に滴下させた。滴下終了後、過硫酸ナトリウム(NPS)0.1重量部、水4重量部を添加し1時間反応を継続させた。この間反応温度は90℃を保った。
得られた共重合体の分子量はGPC測定からMw52000、Mn8200、Mw/Mn=6.3であった。残存AA−Naから求めた重合率は92%であった。NMRから求めたマクロモノマーの反応率は95%であり、ほとんどのマクロモノマーが反応したことが確認された。
実施例、比較例における諸物性は次の方法により測定した。
(1)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)はゲルパーミションクロマトグラフ(GPC)を用いて、溶離液に水+リン酸バッファーを使用し、アクリル酸標準ポリマーを用いてポリアクリル酸換算で測定した。
(2)pHはpHメーターを用いて測定された。実施例1〜11の重合後のpHは5倍に希釈して測定した。
(3)末端不飽和結合導入率(f)
実施例で得られた重合体水溶液は、残存モノマーの影響を取り除くためイオン交換樹脂でイオン交換し、真空乾燥機で乾燥して測定に使用された。1H−NMRで溶媒に重水を用いて測定をおこない、5.6PPMと6.1PPMに末端不飽和結合に由来するピーク強度と1.2PPM〜2.8PPMの主鎖中のプロトン(メチレンおよびメチンのプロトン)に由来するピーク強度比とGPCのMnから下式のとおり計算した。
f=(主鎖のピーク強度/3)/(末端不飽和の水素ピーク強度/2)× 72/Mn
(4)マイケル付加生成量
1H−NMRで溶媒に重水を用いて測定をおこない、4.2PPMのエステルに由来するピーク強度と1.2PPM〜2.8PPMの主鎖中のプロトンに由来するピーク強度比から下式のとおり計算した。
マイケル付加量=(エステルピーク強度/2)/(主鎖のピーク強度/3)×100
(5)着色は目視にて評価した。
(6)残存アクリル酸は、逆相液体クロマトグラフィーでODSカラムを用いて定量した。残存アクリル酸量から重合率を計算した。
表1、2に示す結果から明らかな通り、同じ温度、同じ開始剤量でもpHが低くなるにつれ分子量や分子量分布は増大、あるいはゲル化した。このことはpHが中性領域に近いほどβ切断が頻度高く起こっていることを示し、高い末端不飽和結合導入率になることを支持している。しかし、表3がしめす100℃での重合結果ではpHが中性領域に近くてもゲル化を起こし、100℃ではβ切断より分岐反応が優先して起こることを示している。
表1、2のpH3.5以下をみると150℃でゲル化し、分岐反応が優先して起こることを示し、200℃ではゲル化こそ回避されているが、Mw/Mnは23以上あり分岐反応が頻度高く起こっていることを示している。また、着色、マイケル付加物の量でもpH3.5以下で高い。これらのことからpH3.8〜pH12の領域かつ110℃〜240℃の温度範囲でポリカルボン酸マクロモノマーの製造が最適であることが示された。
実施例12では連続攪拌槽型反応器(CSTR)を使用して重合を行った例を示したが、実施例1〜11では重合の進行に伴いpHが変化しているのに対し、実施例12の方法ではpH6.5のほぼ一定のpHを維持したまま連続的に重合を行うこと可能であり、高い末端不飽和結合導入率および狭い分子量分布を達成できる。CSTRを使用する方法がポリカルボン酸マクロモノマーの製造に適したプロセスであることが示された。例えば、CSTRを使用する方法は、CSTRを使用しない方法よりも、より広い温度範囲で好適にポリカルボン酸マクロモノマーを製造することができる。
実施例13では、該ポリカルボン酸マクロモノマーをアクリル酸と共重合する例が示された。高いグラフト重合率が示され、本条件がグラフト共重合に適した条件であることが分かった。
本発明は、末端不飽和結合導入率が大きく、高酸価で、着色の少ないポリカルボン酸マクロモノマーを経済的に生産し、工業的に容易なラジカル重合によってポリカルボン酸単位を有する共重合体、特にポリカルボン酸単位を枝とするグラフトポリマ−の製造方法を提供するものである。本発明におけるポリカルボン酸マクロモノマー及びポリカルボン酸を枝とするグラフトポリマ−は、高い機能と品質をもち、様々な用途に有用である。用途の例としては、有機顔料または無機顔料分散剤、増粘剤、会合性増粘剤、凝集剤、紙用ザイズ剤や紙力増強剤などの紙用薬剤、洗剤ビルダー、高分子乳化剤、反応性高分子乳化剤、コーティング、インキバインダー、ニス、相溶化剤などが挙げられる。

Claims (8)

  1. エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体(a−1)20〜100質量%、エチレン性不飽和ジカルボン酸単量体(a−2)0〜30質量%およびその他のエチレン性不飽和単量体(a−3)0〜80質量%からなる単量体混合物を、水性媒体中でpH3.8〜12の範囲、温度130〜240℃の範囲において、全単量体を基準として0〜3mol%のラジカル重合開始剤を添加して重合させるポリカルボン酸マクロモノマー組成物の製造方法。
  2. 連続撹拌槽式反応器を使用して、エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体(a−1)20〜100質量%、エチレン性不飽和ジカルボン酸単量体(a−2)0〜30質量%およびその他のエチレン性不飽和単量体(a−3)0〜80質量%からなる単量体混合物を、水性媒体中でpH3.8〜12の範囲、温度110〜240℃の範囲において、全単量体を基準として0〜3mol%のラジカル重合開始剤を添加し、平均滞留時間5〜120分の条件で重合させるポリカルボン酸マクロモノマー組成物の製造方法。
  3. エチレン性不飽和ジカルボン酸単量体(a−2)の割合が0〜10質量%である請求項1または2に記載のポリカルボン酸マクロモノマー組成物の製造方法。
  4. ラジカル重合開始剤の添加量が全単量体を基準として0〜1mol%である請求項1または2に記載のポリカルボン酸マクロモノマー組成物の製造方法。
  5. pH4.5〜11の範囲、温度130℃〜215℃の範囲で上記単量体混合物を重合させる請求項1または2に記載のポリカルボン酸マクロモノマー組成物の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の方法により得られ、下記式(1)に示す構造を有するポリカルボン酸マクロモノマーを含有するポリカルボン酸マクロモノマー組成物。
    Figure 2005272553
    式(1)において、Mは単量体単位を意味し、nは重合度を表す自然数であり、Xは−COOR、−CONR2、−OR、−OCOR、−OCOOR、−NCOOR、ハロゲン原子、−CN又は置換基を有していてもよいフェニル基若しくはアリール基である。Rはアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、その他の置換基を有していてもよいアルキル基、フェニル基、ベンジル基、ポリアルキレングリコール基、ジアルキルアミノアルキル基、トリアルコキシシリルアルキル基又は水素原子である。
  7. 請求項6に記載のポリカルボン酸マクロモノマー組成物とエチレン性不飽和単量体(b)とをラジカル反応させる共重合体の製造方法。
  8. エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体(a−1)20〜100質量%、エチレン性不飽和ジカルボン酸単量体(a−2)0〜30質量%およびその他のエチレン性不飽和単量体(a−3)0〜80質量%からなる単量体混合物を、水性媒体中でpH3.8〜12の範囲、温度110〜240℃の範囲において、全単量体を基準として0〜3mol%のラジカル重合開始剤を添加して重合させて得られるポリカルボン酸マクロモノマー組成物とエチレン性不飽和単量体(b)とをラジカル反応させる共重合体の製造方法。
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