JP2005271033A - 高強度鋼板のスポット溶接方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 炭素当量が高い、あるいは板厚が厚い高強度鋼板をスポット溶接する際に、加圧力を高くせずに、鋼板間に適正な大きさ(径)のナゲットを形成させ、安定して継手強度を向上させるための高強度鋼板のスポット溶接方法を提供する。
【解決手段】 引張強さが420MPa以上で、かつ板厚が1.0〜3.6mmの高強度鋼板のスポット溶接方法において、片面からプラズマにより接合部に貫通穴を形成した後、該貫通孔内に炭素当量Ceqtが0.24以下で、かつ母材に対する硬さ比が1.0〜2.0である溶接金属を形成することにより溶接する高強度鋼板のスポット溶接方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、自動車分野における車体組立や部品の取付け時の接合に適用されるスポット溶接に関し、特に、炭素当量が高い、あるいは板厚が厚い高強度鋼板のスポット溶接方法に関するものである。
一般に、自動車分野における車体の組立や部品の取付けにおける接合では、抵抗スポット溶接が主に用いられている。抵抗スポット溶接では、例えば、図1に示すように、鋼板1同士を重ね合わせ、これらの上下に配置した二つの銅電極2により鋼板を加圧すると同時に通電し、鋼板1同士の接触部を抵抗発熱により溶融させた後、通電を止め、溶融部を冷却して凝固させ、ナゲット3を形成し接合する。なお、二つの銅電極2は、その内部が水冷されているため、通電後、加圧保持により溶融部の冷却速度を速める作用がある。
近年、自動車分野では、自動車の低燃費化、CO2排出量削減および衝突安全性向上等の観点から、車体や部品等の素材として、従来鋼板に比べて高い引張強さを有する高強度鋼板を使用するニーズが高まっている。
特に、自動車の衝突安全性向上の観点から、近年、引張強さ780MPa以上の高強度鋼板、あるいは板厚1.6mm以上の厚手高強度鋼板の使用が検討されつつある。
しかしながら、これらの高強度鋼板を、従来の抵抗スポット溶接法を用いて溶接する場合には、以下のような問題点が生じる。
先ず、上記の通り、抵抗スポット溶接法は、鋼板同士の接触部を溶融して溶接金属(ナゲット)を形成させるため、鋼板の高強度化に伴って焼き入れ性の高い成分の含有量が増加し、溶接金属の炭素当量も高くなる傾向になる。
例えば、溶接部の亀裂発生感受性、硬さに対応する炭素当量として、それぞれ、下記(1)、(2)式で示されるCeqt、Ceqhが用いられている。
Ceqt=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+2[P]+4[S]
・ ・ ・(1)
Ceqh=[C]+[Si]/40+[Cr]/20 ・ ・ ・(2)
ただし、[C]、[Si]、[Mn]、[P]、[S]、[Cr]は、それぞれ、鋼板中の炭素、珪素、マンガン、燐、硫黄、およびクロムの含有量(質量%)である。
上記(1)および(2)式で示される鋼板の炭素当量Ceqt、Ceqhが増加すると、溶接部(鋼板間に形成されたナゲット部とその周囲の熱影響部を示す。以下、同様とする。)の硬さが増加し、また、靭性が低下して亀裂発生感受性が高まるため、引張試験時に、ナゲット内で亀裂が発生しやすくなり、その結果、継手強度の低下を招くことになる。
一般に、抵抗スポット溶接で接合した継手の強度は、JIS Z3136の引張試験法に準じる継手の引張せん断強さ(TSS)、十字引張強さ(CTS)の測定値により評価される。
継手の引張せん断強さおよび十字引張強さは、鋼板の所定引張強さまでは、その引張強さの増加とともに増加する。しかし、鋼板の引張強さが590MPaを超えると、溶接部の炭素当量が高くなるため、継手の引張せん断強さは増加せずに飽和し、また、継手の十字引張強さは、特に炭素当量増加の影響が大きいため、逆に低下する結果となる。すなわち、上記(1)式で示される炭素当量Ceqtが0.24を越えると、炭素当量が低い場合にはナゲットの周囲で発生する亀裂が、ナゲット内でも起こるようになり、十字引張強さはCeqtの増加とともに低下する。
したがって、従来の抵抗スポット溶接法を用いる限り、その継手強度は、鋼板の引張強さが590MPaを超えるレベルまで増加させても向上せず、低強度の軟鋼板を用いた継手強度と同レベルとなり、鋼板強度向上による継手強度向上のメリットは享受できない。
この対策として、従来、鋼板の炭素当量Ceqtを0.24以下に制限し、他の特性を満たすように鋼板の成分設計が行われてきた。しかし、この成分設計は、引張強さが780MPa程度の鋼板のごく一部までが限界であり、それ以上の引張強さを有する高強度鋼板の成分設計においては、炭素当量が高くなるため、依然として炭素当量の増加に伴なう継手強度の低下が問題となっていた。
一方、鋼板の炭素当量Ceqtを0.24以下に制限する手法として、結晶粒の超微細化等の組織制御を利用した鋼板強度向上法が検討されてきた(例えば、非特許文献1参照)。
しかし、このような高強度鋼板では、引張強さの増加に伴い、延びや成形性の低下等、他の機械的特性の劣化が問題となり、また、溶接熱影響部での軟化が大きいため、それよる継手強度の低下が問題となっていた。
一方、抵抗スポット溶接では、上述のとおり、電極により鋼板に加圧力を付加しその接触部に通電して、溶融・凝固させてナゲットを形成させるが、鋼板の板厚または引張強さの増加により鋼板の剛性が増加すると、鋼板同士の接触面積を充分に確保できず、溶接時に散りが発生して適正な大きさ(径)のナゲット形成が困難になり、結果として、継手強度を増加させることができないという問題が生じる。
一般に、抵抗スポット溶接で適正な大きさ(径)のナゲットを形成させるための適正加圧力EFは、経験的に、鋼板の板厚tおよび引張強さTSを基に、下記(3)式から算出され、これに基づいて管理されている。
EF=2.45×t×(TS/300)1/2 ・・・(3)
ただし、EFは溶接時の加圧力(kN)、tは板厚(mm)、TSは鋼板の引張強さ(MPa)を示す。
上記(3)式から明らかなように、最適な大きさ(径)のナゲットを形成させるためには、鋼板の板厚tまたは引張強さTSの増加とともに加圧力を増加させる必要があり、例えば、板厚t=1.6mm、引張強さTS=780MPaの場合には、EF=6.32kNの高い加圧力が必要になる。
しかし、実ラインで用いられている通常の溶接機は、引張強さTS=440MPa以下の鋼板の溶接を前提にしており、その結果、最大加圧力は3.43kN程度であるため、上記のような厚手の高強度鋼板を抵抗スポット溶接する場合には、溶接機の増強が必要であり、設備改造または新設による設備コスト増大、または、溶接機の大型化に伴なう作業性の低下などの問題が生じる。
上記の問題の対策法として、抵抗スポット溶接前に予熱通電し、予め接合部の変形抵抗を低下させた後、加圧・通電して溶接することにより、溶接時の鋼板間の接触面積を十分に確保する方法が考えられる。
しかし、この予熱通電法を用いても、高強度鋼板の板厚または引張強さが高くなった場合には、十分な接触径が得られず、溶接時に散りが発生し、適正なナゲット径を維持することは困難であり、また、鋼板の炭素当量が高い場合には、溶接部の硬さ上昇、靭性低下、亀裂発生感受性の増大の問題は改善されず、その結果、継手強度の低下が生じる。
一方、従来から、軟鋼板の片面溶接の作業性向上を目的としプラズマを利用したスポット溶接方法が知られている(例えば、非特許文献2参照)。
また、軟鋼や引張強さが比較的低い鋼板を対象としたプラズマスポット溶接方法およびプラズマトーチが、提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。これらの文献で提案されるプラズマスポット溶接方法は、溶接材料を用いずにプラズマのみでスポット溶接する方法であるため、炭素当量が高い高強度鋼板を溶接する場合には、上述の溶接部の炭素当量増加に起因する硬さ上昇、靭性低下、亀裂発生感受性の増加の問題が生じ、継手強度の低下が生じる。
特開昭60−68156号公報 特開平07−303971号公報 溶接学会論文集 2003年 第21巻 第2号 243〜248頁 溶接技術2002年1月号 78〜83頁
従来のスポット溶接においては、炭素当量が高い高強度鋼板の場合には、溶接部の硬さが上昇し、また、靭性が低下して亀裂発生感受性が高まる結果、引張試験時にナゲット内で亀裂が発生しやすくなる。また、引張強さが高い、あるいは板厚が厚い高強度鋼板を溶接する場合には、鋼板の剛性増加により鋼板間で適正な接触面積を確保できず、その結果、溶接時に散りが発生して、適正な大きさ(径)のナゲットを形成させることが困難になる。その結果、鋼板の強度を増加させても、また、板厚を増加させても、継手強度を十分に向上させることができない、あるいは、継手強度が低下するという問題があり、これらを改善するための有効な方法が無かった。
本発明は、このような従来技術の現状に鑑みて、炭素当量が高い高強度鋼板、あるいは板厚が厚い高強度鋼板をスポット溶接する際に、加圧力を高く設定することがなく、鋼板間に適正な大きさ(径)のナゲットを形成させ、安定して高い継手強度を得るための高強度鋼板のスポット溶接方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するものであり、その要旨とするところは、以下の通りである。
(1)引張強さが420MPa以上で、かつ板厚が1.0〜3.6mmの高強度鋼板のスポット溶接方法において、片面からプラズマにより接合部に貫通穴を形成した後、該貫通孔内に下記(1)式で示される炭素当量Ceqtが0.24以下で、かつ母材に対する硬さ比が1.0〜2.0である溶接金属を形成することにより溶接することを特徴とする高強度鋼板のスポット溶接方法。
Ceqt=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+2×[P]+4×[S]
・ ・ ・(1)
ただし、[C]、[Si]、[Mn]、[P]、[S]は、それぞれ、溶接金属中の炭素、珪素、マンガン、燐、および硫黄の含有量(質量%)を示す。
本発明によれば、炭素当量が高い、あるいは板厚が厚い高強度鋼板をスポット溶接する際に、加圧力を高く設定せずに、鋼板間に適正な大きさ(径)のナゲットを形成させ、安定して高い継手強度を向上することが可能になる。
これにより、自動車分野における車体および部品などに用いられる高強度鋼板の機械的特性を十分に活用した溶接継手が実現可能となり、よって、車体の軽量化による低燃費化、炭酸ガス排出量の削減、さらには、衝突安全性の向上など、本発明による社会的貢献は多大なものと考えられる。
次に、図面に基づいて、本発明を具体的に説明する。
本発明の高強度鋼板のスポット溶接方法についての実施形態を図2に示す。
本発明の高強度鋼板のスポット溶接方法は、鋼板1同士を重ね合わせ、これらの片面側に設置したプラズマトーチ4から発生するプラズマ5を接合部に吹き付けて、貫通穴6を形成し(図2(a)参照)、引き続き、プラズマ5中に溶材7を供給しつつ貫通穴6内に溶融した溶接金属を形成し(図2(b))、その後、溶接金属を凝固させ、溶接部8を形成する(図2(c))ことで行なわれる。
この方法によれば、鋼板の炭素当量Ceqtが0.24を超える高強度鋼板でも、高い引張せん断強さ、十字引張強さを得ることが可能になる。また、板厚が1.6mm以上のような厚手の高強度鋼板でも、高い加圧力を付加する必要性がなく、高い引張せん断強さ、十字引張強さを得ることが可能である。さらに、溶接部の鋼板1、1間に隙間が存在する場合でも、溶材と一部鋼板が溶融してなる溶融金属が鋼板間の隙間を橋渡しするため、接合が可能となる(図2(d))。
本発明では、上記溶接金属を形成させる際に、下記(1)式で示される溶接金属の炭素当量Ceqtが0.24以下になるようにする。
Ceqt=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+2×[P]+4×[S]
・ ・ ・(1)
ただし、[C]、[Si]、[Mn]、[P]、[S]は、それぞれ、溶接金属中の炭素、珪素、マンガン、燐、および硫黄の含有量(質量%)を示す。
溶接金属の炭素当量Ceqtを0.24以下とするためには、溶材と鋼板の成分および溶融金属中の鋼板成分の溶出比率(希釈率)から上記(1)式で計算される炭素当量Ceqtが0.24以下となるように溶材の成分を調整すればよい。実際には、事前にプラズマによって鋼板に穴が開けられるため、溶接金属の主成分は溶材となり、鋼板による溶材の希釈は僅かになるものと考えられる。
上記(1)式で示される、溶接金属の炭素当量Ceqtが0.24を超えると、溶接金属の硬さが増加し、靭性が低下して溶接金属の亀裂発生に対する感受性が高まる結果、引張試験時にナゲット内で亀裂が発生しやすくなり、継手強度が低下することとなる。
本発明では、上記溶接金属の炭素当量Ceqtの規定に加えて、溶接金属の硬さが母材に対する硬さ比で1.0〜2.0となるようにする。
溶接金属の硬さを上記の範囲にするには、溶材と鋼板の成分および溶融金属中の鋼板成分の溶出率(希釈率)から溶接金属の硬さを予測するか、または、予め試験的に溶接して得た溶接金属の硬さを実測し、これらの溶接金属の硬さが、上記規定範囲になるように用いる溶材の成分を調整することにより行なうことができる。上記で述べたように、実際には、溶接部の成分はほぼ溶材の成分で決まるため、溶材の成分から溶接部の硬さを推測すれば良いが、母材である鋼板の溶融もあり得るため、正確には、予め試験的に溶接した試験片で溶接部の硬さを測定するのが良い。
溶接金属の硬さが、母材に対する硬さ比で1.0未満の場合には、継手強度のうち、特に引張せん断試験時に溶接部内でせん断的破断が起こりやすくなり、その結果、十分な引張せん断強さが得られない。
一方、溶接金属の硬さが、母材に対する硬さ比で2.0を越える場合には、ナゲット部の靭性が低下して亀裂発生感受性が増加するため、引張試験時にナゲット内で亀裂が発生しやすくなり、継手強度のうち、特に十字引張強さ(剥離方向の引張強さ)が低下する。
溶接金属の炭素当量Ceqtおよび溶接金属の母材に対する硬さ比を上記のように規定することにより、炭素当量が高い高強度鋼板、例えば、引張強さ780MPa以上の高強度鋼板をスポット溶接する際、鋼板の炭素当量の増加に起因する溶接金属の硬さ増加、靭性低下による亀裂発生感受性の増加による、引張試験時のナゲット内での発生を抑制できるとともに、溶接金属と母材との硬さバランスをとることができ、継手の引張せん断強さおよび十字引張強さの低下を最小限に抑え、継手強度を向上させることが可能になる。
また、本発明では、用いる溶材により溶接金属の成分を自由に調整することができるため、鋼板の諸特性、例えば、引張強さ、延び等の機械的特性も損なわずに、鋼板の成分設計を行うことが可能になる。その結果、継手として使用する鋼板の成分設計の自由度が増え、鋼板の延性、靭性などの機械的特性を充分に活した溶接継手を製造することが可能となる。
なお、溶材は、通常のアーク溶接で用いる溶接用ワイヤーで良く、直径は0.8〜1.8mm程度で良い。
本発明は、前記のように、引張強さが420MPa以上で、かつ板厚が1.0〜3.6mmの高強度鋼板のスポット溶接において有効である。炭素当量は、引張強さが780MPa以上の場合だけでなく、引張強さが440、590MPaクラスでも高い場合があり、このケースでも、当然ながら、十字引張強さが低い値を示すが、このような鋼板に対しても本発明を適用することは可能であり、本発明を用いれば、高い十字引張強さが得られる。
鋼板の引張強さを420MPa以上と規定した理由は、それより強度の低い鋼板では、炭素当量が高くなることがなく、継手強度低下の心配がないからである。すなわち、溶接金属の炭素当量が低いため、従来の抵抗スポット溶接、または、プラズマスポット溶接において、溶接部の硬さの増加や、靭性の低下、それによる亀裂発生感受性の増加が起こらないため、引張試験時にナゲット部で亀裂が発生しにくくなって、継手強度低下の問題が起こらないのである。鋼板の引張強さの上限は特に規定するものではないが、過度に引張強さが高くなる場合には、溶接金属は問題ないものの、熱影響部の硬さが増加し継手強度の向上が期待できないため、引張強さは1600MPa程度が上限となる。
板厚の下限を1.0mmとしたのは、それより板厚が薄い高強度鋼板では、従来のスポット溶接法でも、加圧力不足によって所望のナゲット径が得られないことがなく、継手強度低下が生じるためである。一方、板厚が3.6mmを超える場合には、プラズマにより鋼板に貫通孔を開けることが困難となり、また、溶材の溶融による溶接金属量が増加するため、溶接効率の低下または経済性の低下を招くため、好ましくない。また、板厚があまり厚いと、溶材の供給不足により溶融金属量が不十分となり、溶融金属の中心部での収縮による凝固割れが発生するため、好ましくない。
本発明では、鋼板の引張強さが420MPa以上、かつ板厚が1.0〜3.6mmと規定しているが、この中でも、特に、引張強さが590MPa以上で板厚が1.6mm以上の高強度鋼板の場合に顕著な効果が発揮できる。これは、従来の抵抗スポット溶接法で、この範囲の高強度鋼板を溶接する場合は、鋼板の剛性増加による加圧力不足で所定のナゲット径が得られず、また、ナゲット中心で収縮欠陥の発生が顕著になるからである。すなわち、引張強さが低く板厚が薄い高強度鋼板の場合には、従来の抵抗スポット溶接の加圧力範囲で溶接しても、所定のナゲット径が得られ、また、ナゲット中心での収縮欠陥の発生が起こらないため、所望の継手強度が得られるが、引張強さが高く板厚が厚い高強度鋼板の場合には、従来の抵抗スポット溶接の加圧力範囲で溶接しても、加圧力不足による鋼板間での接触径不足によって所定のナゲット径が得られず、また、ナゲット中心で収縮欠陥が発生しやすくなるため、所望の継手強度が得られないからである。
したがって、従来法を用いる限り、例えば、引張強さが590MPa以上で板厚が1.6mm以上の高強度鋼板をスポット溶接する場合には、鋼板の引張強さ、板厚増加による継手強度の向上は期待できず、逆に継手強度が低下する場合もある。
これに対して、本発明では、引張強さが高く、板厚が厚い高強度鋼板をスポット溶接する際にも、鋼板の引張強さ、板厚増加による効果を十分に活かすことが可能となり、従来に比べて高い継手強度を実現することができる。
また、従来、厚手の高強度鋼板を抵抗スポット溶接する場合には、十分な継手強度を得るためにナゲット径を大きく設定しなくてはならず、その場合には、先端径が大きな電極を使用しなくてはならないため、さらなる加圧力の増加が必要とされたが、本発明では、このような引張強さが高く板厚が厚い高強度鋼板のスポット溶接においても、プラズマと溶材を調整して、例えば、8mm以上のような大きなナゲット径を実現できるため、従来の抵抗スポット溶接で溶接した継手に比べて、高い継手強度を得ることが可能になる。
本発明のスポット溶接において、鋼板の種類については、特に限定する必要がなく、固溶型、析出型(例えば、Ti析出型、Nb析出型)、2相組織型(例えば、フェライト中にマルテンサイトを含む組織、フェライト中にベイナイトを含む組織)、加工誘起変態型(フェライト中に残留オーステナイトを含む組織)、微細結晶型(フェライト主体組織)など、いずれの型の鋼板を用いる場合でも、本発明のスポット溶接方法の適用により、鋼板の特性を損なうことなく、優れた強度の継手強度を実現することができる。
また、上記鋼板表層にめっきを施した、高強度めっき鋼板を本発明法によりスポット溶接する場合も、高強度めっき鋼板の特性を損なうことなく、優れた強度の継手強度を実現することができる。
特に、本発明法により高強度めっき鋼板をスポット溶接する場合は、プラズマによる貫通孔の形成時に鋼板メッキ層中のZn等の低融点メッキ成分は蒸発、離散し、その後、貫通孔内に溶材を供給しナゲットを形成するため、従来の抵抗スポット溶接で問題となる、溶接時に鋼板間の溶融金属中に閉じ込められたZn蒸気の内圧による溶融金属の爆飛や、ブローホール欠陥などの発生を抑制することができる。
なお、高強度めっき鋼板の表層に施されるめっき層の種類は、特に限定するものではなく、Zn系のものなら、例えば、Zn、Zn−Fe、Zn−Ni、Zn−Al、Sn−Znなどいずれのもので良く、これらのめっき層の目付量は両面で100/100g/m2以下のものが望ましい。
また、本発明の方法は、同種同厚鋼板組合せに限定されるものではなく、規定を満たしているのであれば、同種異厚、異種同厚、異種異厚組合せであっても良い。
以下に実施例により、本発明の効果を説明するが、本発明は、実施例で用いた条件に限定されるものではない。
(実施例1)
表1で示したように、供試材として、板厚が1.6および2.3mm、引張強さが590、780、980、1180MPaの各種高強度裸鋼板(590T:590MPa級TRIP型複合組織鋼板、780Y:780MPa級DP型複合組織鋼板、780T:780MPa級TRIP型複合組織鋼板、980Y:980MPa級DP型複合組織鋼板、1180Y:1180MPa級DP型複合組織鋼板)と板厚が2.3mm、引張強さが590、780、80MPaの各種高強度合金化亜鉛めっき鋼板(GA材、590Y:590MPa級DP型複合組織鋼板、780Y:780MPa級DP型複合組織鋼板、980Y:980MPa級DP型複合組織鋼板)を用いた。
溶材としては、溶接金属の炭素当量および硬さが異なる直径1.2mmの、490〜1080MPa級鋼板用のアーク溶接用ワイヤー(MAG溶接用ワイヤー、490A、490B:490MPa級鋼板用溶材、590A:590MPa級鋼板用溶材、780A、780B:780MPa級鋼板用溶材、980A、980B:980MPa級鋼板用溶材、1180A:1180MPa級鋼板用溶材)を用いた。
スポット溶接継手の引張試験方法(JIS Z3136)に基づいて、引張せん断試験片、十字引張試験片を切り出し、図2で示すように、試験片を重ね合わせ、プラズマスポット溶接装置を用いてスポット溶接して継手とし、引張せん断試験片、十字引張試験片を作製した。
なお、プラズマガスとしてはAr+H2組成のものを、また、シールドガスとしてAr+5%O2組成のものを用いた。
また、比較法として、図1で示したように、プラズマにより接合部に貫通穴を形成しない従来の抵抗スポット溶接も実施した。
表1で示した条件で、それぞれスポット溶接して得られた継手試験片について、スポット溶接継手の引張試験方法(JIS Z3136)に基づいて、継手の引張せん断強さ(TSS)、十字引張強さ(CTS)を測定した。また、継手試験片の一部を切り出し、溶接部の断面組織観察を実施して、収縮欠陥、ブローホールの有無を観察した。
本発明方法により板厚1.6mmおよび2.3mmの各鋼板を溶接して得られた継手(No.1〜No.13の発明例)の引張せん断強さTSS、十字引張強さCTSは、いずれも、それぞれ同じ板厚および鋼種の鋼板の継手で比較して、従来法により溶接して得られた継手(No.14〜No.26の比較例)に比べて高い値を示し、特に、炭素当量Ceqtの値が高い高強度鋼板においてその効果は顕著であった。
特に、板厚2.3mmの高強度鋼板を従来の抵抗スポット溶接法を用いて溶接したNo.19〜No.26の比較例では、最適ナゲット径が得られる加圧力(適正加圧力)が溶接機の最大加圧力(7.8kN)を超えたため、加圧力不足であったNo.20〜No.23、および、No.25〜No.26の比較例では、溶接時に散りが発生し、目標ナゲット径より小さな径のナゲットとなったため、継手強度が低下した。
また、これらのうち、No.21〜No.23の比較例では、特に、加圧力不足による溶接金属内部の収縮欠陥が発生し、No.24〜No.26の比較例では、めっき層の亜鉛蒸気に起因したブローホールが発生した。
これに対して、本発明方法により同じ板厚2.3mmの鋼板を溶接した条件No.6〜No.13の発明例では、いずれの継手でも目標ナゲット径のナゲットが得られ、また、溶接部の収縮欠陥やブローホールの発生もなく、継手強度は高い値であった。
また、板厚1.6または2.3mmの高強度鋼板をプラズマスポット溶接法で溶接したNo.27〜No.32の比較例では、溶接金属の炭素当量または硬さの何れかまたは両方が本発明範囲から外れた条件で溶接したため、同じ板厚及び鋼種の鋼板を溶接したNo.3、No.9の本発明例の継手強度に比べて低い値となった。
Figure 2005271033
従来の高強度鋼板の抵抗スポット溶接を説明するための断面図である。 本発明のプラズマスポット溶接を説明するための断面図である。
符号の説明
1 鋼板
2 銅電極
3 ナゲット
4 プラズマトーチ
5 プラズマ
6 貫通穴
7 溶材
8 溶接部

Claims (1)

  1. 引張強さが420MPa以上で、かつ板厚が1.0〜3.6mmの高強度鋼板のスポット溶接方法において、片面からプラズマにより接合部に貫通穴を形成した後、該貫通孔内に下記(1)式で示される炭素当量Ceqtが0.24以下で、かつ母材に対する硬さ比が1.0〜2.0である溶接金属を形成することにより溶接することを特徴とする高強度鋼板のスポット溶接方法。
    Ceqt=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+2×[P]+4×[S]
    ・ ・ ・(1)
    ただし、[C]、[Si]、[Mn]、[P]、[S]は、それぞれ、溶接金属中の炭素、珪素、マンガン、燐、および硫黄の含有量(質量%)を示す。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2023506388A (ja) * 2019-12-19 2023-02-16 アルセロールミタル 高靭性熱間圧延鋼板及びその製造方法

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