JP2005264068A - 熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】硬度と機械強度のバランスに優れ、広い温度範囲にわたる、ゴム弾性、高温クリープ性能に優れ、かつ熱可塑性エラストマーでありながら、成型加工性、耐油性、耐熱性に優れる新規な熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【解決手段】(A)(メタ)アクリル系ブロック共重合体、(B)1分子中に2個以上のアミノ基を含む化合物および(C)熱可塑性樹脂からなる熱可塑性エラストマー組成物であって、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)が、(A1)(メタ)アクリル系重合体ブロックおよび(A2)アクリル系重合体ブロックからなり、少なくとも一方の重合体ブロックの主鎖中に、酸無水物基を少なくとも1つ有し、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)を、化合物(B)により、熱可塑性樹脂(C)中で動的に架橋した後に、さらに熱可塑性樹脂(D)を添加して混練することにより得られる熱可塑性エラストマー組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性エラストマーに関するものであり、良好な物性を有し、広い温度範囲にわたる、ゴム弾性、高温クリープ性能、成形加工性に優れ、かつ熱可塑性エラストマーでありながら、耐油性、耐熱性に優れる新規な熱可塑性エラストマー組成物に関する。
加硫ゴムは、優れた柔軟性とゴム弾性を備えているが、成形時、ゴムに添加剤を配合し、加硫する必要があるため、成形サイクル時間が長く、かつ工程が煩雑であり、成形性に問題がある。また、加硫ゴムはいったん成形加硫した後は再加熱しても溶融しないため、接合するなどの後加工ができず、使用後にリサイクルすることが困難という問題もある。
このような点から近年、熱可塑性エラストマーが加硫ゴムに代わって使用されるようになってきている。たとえば、自動車の車両においては、ガラスランチャンネル、ウェザーストリップ、各種ブーツ、水切りモールなど様々なシール部品が使用されており、そのうちの大部分は加硫型のゴムが用いられていた。近年、燃費向上、環境問題の観点から、そのシール部品の一部に軽量でリサイクル可能なオレフィン系熱可塑性エラストマーが用いられ始めている。
このような熱可塑性エラストマーは、共重合体鎖中にハードセグメントおよびソフトセグメントを交互に含有している種類のものがある(たとえば、特許文献1参照)。これらは各セグメントの割合を変えることにより柔軟性に富むものから、剛性のあるものまで製造が可能である。さらに、モノオレフィン共重合体ゴムとポリオレフィン樹脂に架橋剤を用いて溶融混練を行ない、部分架橋した組成物、すなわち動的に熱処理(動的架橋)することにより、圧縮永久歪みを改良した材料も知られている(たとえば、特許文献2参照)。
しかしながら、前者の共重合体鎖中にハードセグメントおよびソフトセグメントを交互に含有している構造を持つ熱可塑性エラストマーの場合、柔軟性のある熱可塑性エラストマーとするためにはソフトセグメントを多量に含むことが必要となる。また、拘束成分がハードセグメントであるため、高温では流動するが、耐熱性(この場合の耐熱性は高温での物性を意味する)や圧縮永久歪みに劣るといった欠点を有する。また、ソフトセグメントは引張強度が弱く、耐熱性、耐油性が悪いことからこのようなソフトセグメントを多量に含む柔軟性のある熱可塑性エラストマー組成物はやはり、引張強度が弱く、耐熱性、耐油性が悪いといった欠点を持ち、広範囲にわたっての各種用途に用いることができない。従来のスチレン系エラストマーとして開示されている技術は、この範疇に属しているため、成形加工性は非常に良好であるが、上記課題のため、工業用機構部品のような広範囲の用途には用いることができない。他方、耐油性に優れる熱可塑性エラストマーとして、近年、メタアクリル系共重合ブロックとアクリル系共重合ブロックを有するアクリル系ブロック共重合体が開示されているが、これらもスチレン系エラストマー同様、成形加工性は非常に良好であるが、耐熱性や圧縮永久歪みに劣るといった欠点を有する(たとえば、特許文献3参照)。
後者のポリオレフィン中で、オレフィン共重合体ゴムに部分架橋を施した構造の熱可塑性エラストマーの場合は、高温での良好な圧縮永久歪みなど、熱可塑性エラストマー単体では充分な性能が得られない場合に性能を向上させるための手法として試みられている。
しかしながら、ポリエチレンやポリプロピレンのような結晶性ポリオレフィンは、比較的低い融点のため耐油性に劣るという欠点を有するために、得られた組成物は耐油性、耐熱性が不必要な部位のみなど、その使用が制限されてきた。近年、前記問題を解決するものとして、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドのような種々の熱可塑性樹脂とアクリルゴム、エチレン−アクリル酸エステル共重合体ゴム、ニトリルゴムなどの種々の極性ゴムとの組み合わせによる、部分架橋型の熱可塑性エラストマーが検討されているが(たとえば、特許文献4、5、6参照)、耐熱性を有する熱可塑性樹脂を用いた場合、溶融温度が高いために、架橋をコントロールしにくく良好な組成物が得られないという欠点や、極性ゴム用の従来の架橋剤は、硬化プロセス中に熱可塑性樹脂を劣化させることから、得られる組成物の物性を低下させるなどの欠点を有している。また、高温での溶融反応における熱劣化、成型性悪化を防ぐために、比較的低融点の熱可塑性樹脂とゴムとをあらかじめ混練しゴム組成物を十分に分散させた後、高融点の熱可塑性樹脂を添加し、架橋反応させることで、耐熱性、強度および耐久性を改善した熱可塑エラストマーが検討されたが、多段階の混練操作が必要であるといった問題があった(たとえば、特許文献7参照)。そこで、充分な成型性を有し、硬化プロセスが容易でかつ、耐油性、耐熱性に優れる熱可塑性エラストマーの開発が求められていた。
特開昭61−34050号公報 特公昭53−21021号公報 特許第2553134号公報 特開平10−53697号公報 特開平11−349734号公報 特開2000−26720号公報 特開2003−064262号公報
本発明は、熱可塑性エラストマーに関するものであり、良好な物性を有し、広い温度範囲にわたる、ゴム弾性、高温クリープ性能、成形加工性に優れ、かつ熱可塑性エラストマーでありながら、耐油性、耐熱性に優れる新規な熱可塑性エラストマー組成物に関する。
本発明者らは、(A1)(メタ)アクリル系重合体ブロックおよび(A2)アクリル系重合体ブロックからなる(A)(メタ)アクリル系ブロック共重合体、(B)1分子中に2個以上のアミノ基を含む化合物および(C)熱可塑性樹脂からなる熱可塑性エラストマー組成物(D)を動的に熱処理した後、さらに熱可塑性樹脂を(D)を添加して混練することで、硬度と機械強度のバランスに優れ、広い温度範囲にわたるゴム弾性、高温クリープ性能、低温耐衝撃性、機械強度に優れ、かつ熱可塑性エラストマーでありながら、成型加工性、耐油性、耐熱性に優れることを見出し、本発明を完成するにいたった。
すなわち、本発明は(A)(メタ)アクリル系ブロック共重合体、(B)1分子中に2個以上のアミノ基を含む化合物および(C)熱可塑性樹脂からなる熱可塑性エラストマー組成物であって、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)が、(A1)(メタ)アクリル系重合体ブロックおよび(A2)アクリル系重合体ブロックからなり、少なくとも一方の重合体ブロックの主鎖中に、
一般式(1):
Figure 2005264068
(式中、Rは水素またはメチル基で、2つのRは互いに同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数、mは0または1の整数)で表わされる酸無水物基(a1)を少なくとも1つ有し、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)を、化合物(B)により、熱可塑性樹脂(C)中で動的に架橋した後に、さらに熱可塑性樹脂(D)を添加して混練することにより得られることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)が、一般式(A1−A2)で表わされる共重合体、一般式A2−(A1−A2)で表わされる共重合体および一般式(A1−A2)−A1で表わされる共重合体からなる群(nは1以上の整数)より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)が、(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)0.1〜60重量%、およびアクリル系重合体ブロック(A2)99.9〜40重量%からなることが好ましい。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)が、酸無水物基(a1)を有することが好ましい。
アクリル系重合体ブロック(A2)が、酸無水物基(a1)を有することが好ましい。
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)が、原子移動ラジカル重合による制御重合で得られたものであることが好ましい。
熱可塑性樹脂(C)および熱可塑性樹脂(D)が、ポリアミド系樹脂および/またはポリエステル系樹脂であることが好ましい。
熱可塑性樹脂(C)および熱可塑性樹脂(D)が、ポリアミド系樹脂であることが好ましい。
(A)(メタ)アクリル系ブロック共重合体、(B)1分子中に2個以上のアミノ基を含む化合物および(C)熱可塑性樹脂からなる熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、
(A1)(メタ)アクリル系重合体ブロックおよび(A2)アクリル系重合体ブロックからなり、少なくとも一方の重合体ブロックの主鎖中に、
一般式(1):
Figure 2005264068
(式中、Rは水素またはメチル基で、2つのRは互いに同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数、mは0または1の整数)で表わされる酸無水物基(a1)を少なくとも1つ有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)を、化合物(B)により、熱可塑性樹脂(C)中で動的に架橋した後に、さらに熱可塑性樹脂(D)を添加して混練することにより得られることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であることが好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、硬度と機械強度のバランスに優れ、広い温度範囲にわたる、ゴム弾性、高温クリープ性能、成形加工性に優れ、かつ熱可塑性エラストマーでありながら、耐油性、耐熱性に優れることから、各種密封容器、ガスケット、耐油性ホースおよび被覆シートなどとして好適に広く使用することができる。
本発明は、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)、1分子中に2個以上のアミノ基を含む化合物(B)および熱可塑性樹脂(C)からなる熱可塑性エラストマー組成物であって、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)が、(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)およびアクリル系重合体ブロック(A2)からなり、少なくとも一方の重合体ブロックの主鎖中に、
一般式(1):
Figure 2005264068
(式中、Rは水素またはメチル基で、2つのRは互いに同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数、mは0または1の整数)で表わされる酸無水物基(a1)を少なくとも1つ有し、
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)を、化合物(B)により、熱可塑性樹脂(C)中で動的に架橋した後に、さらに熱可塑性樹脂(D)を添加して混練することにより得られることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
ここで、動的に架橋するとは、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)、1分子中に2個以上のアミノ基を含む化合物(B)および熱可塑性樹脂(C)が存在する系を溶融混練することで、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)を、1分子中に2個以上のアミノ基を含む化合物(B)により、熱可塑性樹脂(C)中で架橋させることであり、物性の向上した熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。この熱可塑性エラストマーのモルフォロジーとしては、架橋した(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)が、連続相である熱可塑性樹脂(C)マトリックス中に分散していることがゴム弾性などの点で好ましく、また架橋した(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)と熱可塑性樹脂(C)が共連続構造をとることが、柔軟性などの点で好ましい。
<(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)>
本発明で使用する(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の構造は、線状ブロック共重合体または分岐状(星状)ブロック共重合体であり、これらの混合物であっても良い。このようなブロック共重合体の構造は、必要とされる(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の物性、熱可塑性樹脂との組成物に必要とされる加工特性や機械特性などの必要に応じて使い分けられるが、コスト面や重合容易性の点で、線状ブロック共重合体が好ましい。
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)、およびアクリル系重合体ブロック(A2)からなり、引張機械物性や圧縮永久歪といった組成物の物性の点から、一般式:(A1−A2)で表わされるブロック共重合体、一般式:A2−(A1−A2)で表わされるブロック共重合体および一般式:(A1−A2)−A1で表わされるブロック共重合体からなる群(nは1以上の整数)より選択される少なくとも1種の(メタ)アクリル系ブロック共重合体であることが好ましい。特に限定されないが、これらの中でも、加工時の取り扱い容易性や、組成物の物性の点からA1−A2型のジブロック共重合体、A1−A2−A1型またはA2−A1−A2型のトリブロック共重合体、またはこれらの混合物が好ましい。
また、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)を、1分子中に2個以上のアミノ基を含む化合物(B)により動的に架橋させる点から、
一般式(1):
Figure 2005264068
(式中、Rは水素またはメチル基で、互いに同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数、mは0または1の整数)で表わされる酸無水物基(a1)を少なくとも一つ有する。
一般式(1)で示される酸無水物基(a1)は、重合体ブロック当たり1つまたは2つ以上であることができ、その数が2つ以上である場合には、その単量体が重合されている様式はブロック共重合であることができる。x−y−x型のトリブロック共重合体を例にとって表わすと、(x/z)−y−x型、(x/z)−y−(x/z)型、z−x−y−x型、z−x−y−x−z型、x−(y/z)−x型、x−y−z−x型、x−z−y−x型、x−z−y−z−x型などのいずれであってもよい。ここでzとは、酸無水物基(a1)を含む単量体または重合体ブロックを表わし、(x/z)とは、ブロック体(x)に酸無水物基(a1)を含む単量体が共重合されていることを表わし、(y/z)は、ブロック体(y)に酸無水物基(a1)を含む単量体が共重合されていることを表わす。
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)とアクリル系重合体ブロック(A2)にそれぞれ必要とされる分子量から決めればよい。本発明においては、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。数平均分子量は(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)を直接測定することもできるが、酸無水物基の反応性や工程の簡便さなどの点で、酸無水物基の前駆体含有(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A’)の状態で測定するのが好ましい。必要であれば、後述する酸無水物基の含有量及び酸無水物基の前駆体含有(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A’)を測定して得られる数平均分子量をもとに換算することにより、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の数平均分子量を求めることもできる。
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の分子量が小さい場合には、エラストマーとして充分な機械特性を発現できず、逆に分子量が必要以上に大きい場合には、加工特性が低下することから、数平均分子量は、酸無水物基の前駆体含有(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A’)として、3000〜500000が好ましく、より好ましくは4000〜400000、さらに好ましくは5000〜300000である。
また、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)も、とくに限定はないが、1〜1.8であることが好ましく、1〜1.5であることがさらに好ましい。Mw/Mnが1.8をこえると(メタ)アクリル系ブロック共重合体の均一性が低下する場合がある。
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)を構成する(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)とアクリル系重合体ブロック(A2)の組成比は特に限定されず、使用する用途において要求される物性、組成物の加工時に要求される成形性、および(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)とアクリル系重合体ブロック(A2)にそれぞれ必要とされる分子量から決めればよい。好ましい(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)とアクリル系重合体ブロック(A2)の組成比の範囲を例示すると、(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)が、0.1〜80重量%、アクリル系重合体ブロック(A2)が、99.9〜20重量%であることが好ましい。より好ましくは、(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)が、0.1〜70重量%、アクリル系重合体ブロック(A2)が、99.9〜30重量%である。さらに好ましくは(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)が、0.1〜60重量%、アクリル系重合体ブロック(A2)が、99.9〜40重量%である。(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)の割合が、0.1重量%未満であると、高温でのゴム弾性が低下する場合があり、80重量%より多い場合には、エラストマーとしての機械特性、特に破断伸びが低下したり、熱可塑性樹脂との組成物の柔軟性が低下する場合がある。
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)を構成する(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)とアクリル系重合体ブロック(A2)のガラス転移温度の関係は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)のガラス転移温度をTgA1、アクリル系重合体ブロック(A2)のそれをTgA2として、下式の関係を満たすことが好ましい。
TgA1>TgA2
前記重合体((メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)、およびアクリル系重合体ブロック(A2))のガラス転移温度(Tg)の設定は、概略、下記のFox式にしたがい、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行なうことができる。
1/Tg=(W/Tg)+(W/Tg)+…+(W/Tg
+W+…+W=1
式中、Tgは重合体のガラス転移温度を表わし、Tg,Tg,…,Tgは各単量体のみからなる重合体のガラス転移温度を表わす。また、W,W,…,Wは各単量体の重量比率を表わす。
前記Fox式における各単量体のガラス転移温度は、たとえば、Polymer Handbook Third Edition(Wiley−Interscience 1989)記載の値を用いればよい。
前記一般式(1):
Figure 2005264068
(式中、Rは水素またはメチル基で、2つのRは互いに同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数、mは0または1の整数)で表わされる酸無水物基(a1)の(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)への導入方法は、特に限定されないが、導入容易性や導入後の精製の簡便性などの点で、酸無水物基(a1)の前駆体となる官能基の形でアクリル系ブロック共重合体に導入し、そののちに環化させることによって導入することが好ましい。
一般式(1)中のnは0〜3の整数であって、好ましくは0または1であり、より好ましくは1である。nが4以上の場合は、重合が煩雑になったり、酸無水物基の環化が困難になる傾向にある。
一般式(1)中のmは0または1の整数であって、nが0の場合はmも0であるのが好ましく、nが1〜3の場合は、mは1であることが好ましい。
酸無水物基(a1)は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)およびアクリル系重合体ブロック(A2)のどちらか一方のブロックのみが含有していてもよいし、両方のブロックに含有していてもよい。(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の反応点や、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)を構成するブロックの凝集力やガラス転移温度、さらには必要とされる(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の物性に応じてなど、目的に応じて酸無水物基を導入すべきブロックを決定することができる。たとえば、架橋点間分子量を制御する場合には、酸無水物基(a1)を(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)に導入すればよく、熱可塑性樹脂(C)との相溶性を制御する場合には酸無水物基(a1)をアクリル系重合体ブロック(A2)に導入すればよい。特に限定されないが、反応点の制御や、耐熱性、ゴム弾性などの点では、(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)、あるいはアクリル系重合体ブロック(A2)のどちらか一方のブロックにのみ(a1)を有することが好ましい。また、特に限定されないが、(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)に含む場合は、一般式(1)の2つのRはともにメチル基であることが好ましく、アクリル系重合体ブロック(A2)に含む場合は、一般式(1)の2つのRはともに水素であることが好ましい。(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)に含む場合にRが水素である場合や、アクリル系重合体ブロック(A2)に含む場合にRがメチル基である場合は、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の重合操作が煩雑になったり、(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)とアクリル系重合体ブロック(A2)のガラス転移温度の差が小さくなり、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)のゴム弾性が低下する場合がある。
前記酸無水物基(a1)の含有量の好ましい範囲は、酸無水物基(a1)の凝集力、反応性、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の構造および組成、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)を構成するブロックの数、ガラス転移温度、ならびに、酸無水物基(a1)の含有される部位および様式によって変化する。酸無水物基(a1)の含有量の好ましい範囲を例示すると、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)全体中の0.05〜50重量%が好ましく、0.1〜40重量%がより好ましい。酸無水物基(a1)の含有量が0.05重量%未満であると、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の反応性や熱可塑性樹脂との相溶性が不充分になる場合があり、50重量%を超えると、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)のゴム弾性が低下したり、(メタ)アクリル系ブロック共重合体を架橋するために多量の架橋剤(B)が必要であったり、熱可塑性樹脂(C)との反応により、得られる熱可塑性エラストマーの流動性が低下する場合がある。また、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の耐熱性向上を目的に、Tgの高い酸無水物基(a1)をハードセグメントである(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)に導入する場合、酸無水物基(a1)の含有量が0.05重量%未満であると、耐熱性の向上が不充分であり、高温におけるゴム弾性の発現が低下する場合がある。ここで、酸無水物基(a1)の含有量は、酸無水物基(a1)を元来有する単量体単位、または、一般式(1)で表される単量体単位の、全単量体単位に占める重量%で表わす。この含有量は、13C−NMR分析により算出することができる。具体的には、重アセトンや重クロロホルム等に樹脂を溶解し13C−NMR分析を行なう。この際、(メタ)アクリル系ブロック共重合体の骨格を(メタ)アクリル酸エステルとした時、174〜178ppmに(メタ)アクリル酸エステル単位に由来するカルボニル基のシグナルが観察され、171〜173ppmに(メタ)アクリル酸無水物骨格のカルボニル部位に由来するシグナルが観察される。これらの比を比較することで酸無水物基の定量を行なうことが可能である。共重合可能な他のビニル系単量体が導入された場合は、熱分解を利用したGCMSでのモノマー定量やNMR等での組成比較を行なう。
前記酸無水物基(a1)の含有ブロックや含有量は、必要とされる、反応性、反応点、凝集力、ガラス転移温度などに応じて、前記に従い適宜決めればよい。
<(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)>
(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)を構成する単量体は、所望する物性の(メタ)アクリル系ブロック共重合体を得やすい点、コストおよび入手しやすさの点から、(メタ)アクリル酸エステル(酸無水物基(a1)を有する単量体を(A1)に共重合する場合にはこれも含む)100〜50重量%、および、これと共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%からなるのが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル(酸無水物基(a1)を有する単量体を(A1)に共重合する場合にはこれも含む)100〜75重量%、および、これと共重合可能な他のビニル系単量体0〜25重量%からなるのがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル(酸無水物基(a1)を有する単量体が(A1)中に存在する場合にはこれを含む)の割合が50重量%より少ないと、(メタ)アクリル酸エステルの特徴である、耐候性、高いガラス転移点、樹脂との相溶性などが損なわれる場合がある。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)に必要とされる分子量は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)に必要とされる凝集力と、その重合に必要な時間などから決めればよい。
凝集力は、分子間の相互作用と絡み合いの度合いに依存するとされており、分子量を増やすほど絡み合い点が増加して凝集力を増加させる。すなわち、(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)に必要とされる分子量をMA1とし、(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)を構成する重合体の絡み合い点間分子量をMcA1としてMA1の範囲を例示すると、凝集力が必要な場合には、好ましくはMA1>McA1である。さらに例をあげると、さらなる凝集力が必要とされる場合には、好ましくはMA1>2×McA1であり、逆に、ある程度の凝集力とクリープ性を両立させたいときは、McA1<MA1<2×McA1が好ましい。絡み合い点間分子量は、Wuらの文献(ポリマーエンジニアリングアンドサイエンス(Polym.Eng.and Sci.、1990年、30巻、753頁)などを参照すればよい。たとえば、(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)がすべてメタアクリル酸メチルから構成されているとして、凝集力が必要とされる場合の(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)の数平均分子量の範囲を例示すると、100以上であることが好ましい。また、数平均分子量が大きいと重合時間が長くなる傾向にあるため、必要とする生産性に応じて設定すればよいが、好ましくは200000以下、さらに好ましくは100000以下である。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)を構成する(メタ)アクリル酸エステルとしてはメタアクリル酸エステルとアクリル酸エステルがあげられる。
メタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸n−ペンチル、メタアクリル酸n−ヘキシル、メタアクリル酸n−ヘプチル、メタアクリル酸n−オクチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸ステアリルなどのメタアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルキル)エステル;メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸イソボルニルなどのメタアクリル酸脂環式炭化水素エステル;メタアクリル酸ベンジルなどのメタアクリル酸アラルキルエステル;メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トリルなどのメタアクリル酸芳香族炭化水素エステル;メタアクリル酸2−メトキシエチル、メタアクリル酸3−メトキシブチルなどのメタアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;メタアクリル酸トリフルオロメチル、メタアクリル酸2−トリフルオロエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのメタアクリル酸フッ化アルキルエステルなどがあげられる。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)を構成するアクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルキル)エステル;アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸脂環式炭化水素エステル;アクリル酸フェニル、アクリル酸トリルなどのアクリル酸芳香族炭化水素エステル;アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸アラルキルエステル;アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸3−メトキシブチルなどのアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのアクリル酸フッ化アルキルエステルなどをあげることができる。
これらは少なくとも1種用いられる。上記メタアクリル酸エステル又はアクリル酸エステルの中でも、組み合わせる熱可塑性樹脂との相溶性、コストおよび入手しやすさの点で、メタアクリル酸エステルが好ましく、メタアクリル酸脂肪族炭化水素エステルがより好ましく、メタアクリル酸アルキルエステルがさらに好ましく、メタアクリル酸メチルが特に好ましい。
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)を構成する(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、カルボン酸含有不飽和化合物、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド化合物などをあげることができる。
カルボン酸含有不飽和化合物としては、メタクリル酸、アクリル酸などをあげることができる。芳香族アルケニル化合物としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。シアン化ビニル化合物としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。共役ジエン系化合物としては、たとえば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。ハロゲン含有不飽和化合物としては、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。ケイ素含有不飽和化合物としては、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどをあげることができる。不飽和ジカルボン酸化合物としては、たとえば、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどをあげることができる。ビニルエステル化合物としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどをあげることができる。マレイミド系化合物としては、たとえば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。これらは少なくとも1種用いられる。
これらのビニル系単量体は、熱可塑性樹脂(C)および/または熱可塑性樹脂(D)との相溶性によって好ましいものを選択することができる。また、メタアクリル酸メチルの重合体は、熱分解によりほぼ定量的に解重合するが、それを抑えるために、アクリル酸エステル、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−メトキシエチルもしくはそれらの混合物、または、スチレンなどを共重合することができる。また、さらなる耐油性の向上を目的として、アクリロニトリルを共重合することができる。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)のガラス転移温度は、好ましくは0℃以上、より好ましくは室温以上である。前記重合体((メタ)アクリル系重合体ブロック(A1))のガラス転移温度(Tg)の設定は、前記のFox式にしたがい、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行なうことができる。ここで、ガラス転移温度とは、各単量体のガラス転移温度としてPolymer Handbook Third Edition(Wiley−Interscience 1989)記載の値を用いて、Fox式にしたがって計算したものとする。
<アクリル系重合体ブロック(A2)>
アクリル系重合体ブロック(A2)を構成する単量体は、所望する物性の組成物を得やすい点、コストおよび入手しやすさの点から、アクリル酸エステル(酸無水物基(a1)を有する単量体を(A2)に共重合する場合にはこれも含む)100〜50重量%、これと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%からなるのが好ましく、アクリル酸エステル(酸無水物基(a1)を有する単量体を(A2)に共重合する場合にはこれも含む)100〜75重量%、および、これと共重合可能なビニル系単量体0〜25重量%とからなるのがより好ましい。アクリル酸エステルの割合が50重量%未満の場合、それらアクリル酸エステルを用いる場合の特徴である組成物の物性、とくに耐衝撃性が損なわれる場合がある。
アクリル系重合体ブロック(A2)に必要とされる分子量は、アクリル系重合体ブロック(A2)に必要とされる弾性率とゴム弾性、その重合に必要な時間などから決めればよい。
弾性率は、分子鎖の動き易さとその分子量に密接な関連があり、ある一定以上の分子量でないと本来の弾性率を示さない。ゴム弾性についても同様であるが、ゴム弾性の観点からは、分子量が大きい方が望ましい。すなわち、アクリル系重合体ブロック(A2)に必要とされる数平均分子量をMA2としてその範囲を例示すると、好ましくはMA2>3000、より好ましくはMA2>5000、さらに好ましくはMA2>10000、とくに好ましくはMA2>20000、最も好ましくはMA2>40000である。ただし、数平均分子量が大きいと重合時間が長くなる傾向があるため、必要とする生産性に応じて設定すればよいが、好ましくは500000以下であり、さらに好ましくは300000以下である。
アクリル系重合体ブロック(A2)を構成するアクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)に記載されたものをあげることができ、(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)と同じものでない限り特に限定されない。これらは少なくとも1種用いられる。
これらの中でも、アクリル酸脂肪族炭化水素エステルが好ましく、アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。熱可塑性エラストマー組成物の耐衝撃性、コスト、および入手しやすさの点で、アクリル酸n−ブチルが特に好ましい。また、組成物に耐油性が必要な場合は、アクリル酸エチルが好ましい。また、低温特性が必要な場合はアクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。さらに、耐油性と低温特性を両立させたいときには、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−メトキシエチルの混合物が好ましい。
アクリル系重合体ブロック(A2)を構成するアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができ、これらの具体例としては、(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)に記載されたものをあげることができる。これらは少なくとも1種用いられる。
これらのビニル系単量体は、アクリル系重合体ブロック(A2)に要求されるガラス転移温度、弾性率、極性、また、組成物に要求される物性、熱可塑性樹脂(C)および/または熱可塑性樹脂(D)との相溶性などによって好ましいものを選択することができる。たとえば、組成物の耐油性の向上を目的としてアクリロニトリルを共重合することができる。
アクリル系重合体ブロック(A2)のガラス転移温度は、好ましくは−100℃以上、50℃以下、より好ましくは−100℃以上、0℃以下である。ガラス転移温度が50℃より高いと、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)のゴム弾性が低下する場合があり、−100℃より低いと得られる(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の機械強度が低下する場合がある。
前記重合体(アクリル系重合体ブロック(A2))のガラス転移温度(Tg)の設定は、前記のFox式にしたがい、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行なうことができる。ここで、ガラス転移温度とは、各重合単量体のガラス転移温度としてPolymer Handbook Third Edition(Wiley−Interscience 1989)記載の値を用いて、Fox式にしたがって計算したものとする。
<酸無水物基(a1)>
一般式(1):
Figure 2005264068
(式中、Rは水素またはメチル基で、2つのRは互いに同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数、mは0または1の整数)で示される酸無水物基(a1)は、アミノ基、水酸基などを有する化合物との高い反応性を有することから、重合体を変性する場合の反応点として、熱可塑性樹脂とブレンドする場合の相溶性改良部位として用いることもできる。また、酸無水物基(a1)は、1分子中に2個以上のアミノ基を含む化合物(B)との反応により架橋点となり得る。また、アミノ基、水酸基などを有する化合物との高い反応性を有することから、熱可塑性樹脂とブレンドする場合の相溶性改良部位として用いることもできる。さらには、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の好みの部位へ酸無水物基(a1)を導入することで、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の好みの部位で架橋させることが可能となる。また、酸無水物基(a1)はガラス転移温度(Tg)が高いことから、ハードセグメントに導入した場合には、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の耐熱性を向上させる効果を有する。酸無水物基(a1)を有する重合体のガラス転移温度は、たとえば、ポリメタアクリル酸無水物が159℃と高く、これらを構成する単位を導入することで(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の耐熱性を向上させることができる。
前記酸無水物基(a1)の導入方法としては特に限定されないが、酸無水物基(a1)の前駆体となる形で(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)に導入し、そののちに環化させることが好ましい。たとえば、
一般式(2):
Figure 2005264068
(式中、Rは水素またはメチル基を表わす。Rは水素、メチル基またはフェニル基を表わし、3つのRは、メチル基および/またはフェニル基から選ばれる少なくとも2つを表すこと以外は、互いに同一でも異なっていてもよい。)で表わされる単量体単位を少なくとも1つ有することを特徴とする酸無水物基の前駆体含有アクリル系ブロック共重合体(A’)を、180〜300℃の温度で加熱することにより環化して酸無水物基を導入することが好ましい。
一般式(2)で表わされる単量体単位の導入は、前記前駆体であるアクリル酸エステル、またはメタクリル酸エステル単量体を共重合することによって行なうことができる。
一般式(2)で表わされる単位は、高温下で隣接するエステルユニットと脱離、環化し、酸無水物基を生成する(たとえば、畑田(Hatada)ら、J.M.S.−PURE APPL.CHEM.,A30(9&10),PP.645−667(1993)参照)。上記文献によると、一般的に、エステルユニットが嵩高く、β−水素を有する重合体は、高温下でエステルユニットが分解し、それに引き続き、環化が起こり酸無水物基が生成する。上記文献の方法を利用することで、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)中へ、容易に酸無水物基を重合体中に導入することができる。特に限定されないが、具体的にはこのような単量体として、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸α,α−ジメチルベンジル、アクリル酸α−メチルベンジル、メタアクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸α,α−ジメチルベンジル、メタアクリル酸α−メチルベンジルなどがあげられる。このなかでも、入手性や重合容易性、酸無水物基生成容易性などの点からアクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸t−ブチルが好ましい。
前記酸無水物基(a1)の形成は、酸無水物基の前駆体含有(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A’)を高温下で加熱することにより行なうのが好ましく、特に限定されないが、180〜300℃で加熱することが好ましい。180℃より低いと酸無水物基の生成が不充分となる場合があり、300℃より高くなると、酸無水物基の前駆体含有(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A’)自体が分解する場合がある。また、一般的に酸無水物基導入過程では、高温下でエステルユニットが分解してカルボキシル基を生成し、それに引き続き、環化が起こり酸無水物基が生成する環化経路を一部有するため、酸無水物基(a1)導入の際にカルボキシル基が一部残存されても良い。
<酸無水物基の前駆体含有(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A’)の製法>
前記酸無水物基の前駆体含有(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A’)を製造する方法としては、特に限定されないが、制御重合を用いることが好ましい。制御重合としては、リビングアニオン重合や連鎖移動剤を用いるラジカル重合、近年開発されたリビングラジカル重合があげられる。なかでも、リビングラジカル重合が、(メタ)アクリル系ブロック共重合体の分子量および構造の制御の点から好ましい。
リビングラジカル重合は、重合末端の活性が失われることなく維持されるラジカル重合である。リビング重合とは狭義においては、末端が常に活性をもち続ける重合のことを指すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれる。ここでの定義も後者である。リビングラジカル重合は、近年様々なグループで積極的に研究がなされている。
その例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの、コバルトポルフィリン錯体(ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)、1994年、116巻、7943頁)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1994年、27巻、7228頁)、有機ハロゲン化物などを開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などをあげることができる。本発明において、これらのうちどの方法を使用するかはとくに制約はないが、制御の容易さの点などから原子移動ラジカル重合が好ましい。
原子移動ラジカル重合は、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、周期律表第8族、9族、10族または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として重合される(たとえば、マティジャスツェウスキー(Matyjaszewski)ら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)、1995年、117巻、5614頁、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1995年、28巻、7901頁;サイエンス(Science)、1996年、272巻、866頁;または、澤本(Sawamoto)ら、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1995年、28巻、1721頁参照)。
これらの方法によると、一般的に、非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭い(Mw/Mn=1.1〜1.5)重合体が得られ、分子量を単量体と開始剤の仕込み比によって自由にコントロールすることができる。
原子移動ラジカル重合法において、開始剤として用いられる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物としては、1官能性、2官能性、または、多官能性の化合物が使用できる。これらは目的に応じて使い分ければよいが、ジブロック共重合体を製造する場合は、開始剤の入手のしやすさの点から1官能性化合物が好ましく、A1−A2−A1型のトリブロック共重合体、A2−A1−A2型のトリブロック共重合体を製造する場合は、反応工程数、時間の短縮の点から2官能性化合物を使用するのが好ましく、分岐状ブロック共重合体を製造する場合は、反応工程数、時間の短縮の点から多官能性化合物を使用するのが好ましい。
また、前記開始剤として高分子開始剤を用いることも可能である。高分子開始剤とは、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物のうち、分子鎖末端にハロゲン原子の結合した重合体からなる化合物である。このような高分子開始剤は、リビングラジカル重合法以外の制御重合法でも製造することが可能であるため、異なる重合法で得られる重合体を結合したブロック共重合体が得られるという特徴がある。
1官能性化合物としては、たとえば、
−CHX、
−C(H)(X)−CH
−C(X)(CH
−C(H)(X)−COOR
−C(CH)(X)−COOR
−C(H)(X)−CO−R
−C(CH)(X)−CO−R
−C−SO
で示される化合物などがあげられる。
式中、Cはフェニル基、Cはフェニレン基(オルト置換、メタ置換、パラ置換のいずれでもよい)を表わす。Rは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または、炭素数7〜20のアラルキル基を表わす。Xは、塩素、臭素またはヨウ素を表わす。Rは炭素数1〜20の一価の有機基を表わす。
として、炭素数1〜20のアルキル基(脂環式炭化水素基を含む)の具体例としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、イソボルニル基などがあげられる。炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、たとえば、フェニル基、トリル基、ナフチル基などがあげられる。炭素数7〜20のアラルキル基の具体例としては、たとえば、ベンジル基、フェネチル基などがあげられる。
1官能性化合物の具体例としては、たとえば、臭化トシル、2−臭化プロピオン酸メチル、2−臭化プロピオン酸エチル、2−臭化プロピオン酸ブチル、2−臭化イソ酪酸メチル、2−臭化イソ酪酸エチル、2−臭化イソ酪酸ブチルなどがあげられる。これらのうちでは、2−臭化プロピオン酸エチル、2−臭化プロピオン酸ブチルが、(メタ)アクリル酸エステル単量体の構造と類似しているために重合を制御しやすい点から好ましい。
2官能性化合物としては、たとえば、
X−CH−C−CH−X、
X−CH(CH)−C−CH(CH)−X、
X−C(CH−C−C(CH−X、
X−CH(COOR)−(CH−CH(COOR)−X、
X−C(CH)(COOR)−(CH−C(CH)(COOR)−X
X−CH(COR)−(CH−CH(COR)−X、
X−C(CH)(COR)−(CH−C(CH)(COR)−X、
X−CH−CO−CH−X、
X−CH(CH)−CO−CH(CH)−X、
X−C(CH−CO−C(CH−X、
X−CH(C)−CO−CH(C)−X、
X−CH−COO−(CH−OCO−CH−X、
X−CH(CH)−COO−(CH−OCO−CH(CH)−X、
X−C(CH−COO−(CH−OCO−C(CH−X、
X−CH−CO−CO−CH−X、
X−CH(CH)−CO−CO−CH(CH)−X、
X−C(CH−CO−CO−C(CH−X、
X−CH−COO−C−OCO−CH−X、
X−CH(CH)−COO−C−OCO−CH(CH)−X、
X−C(CH−COO−C−OCO−C(CH−X、
X−SO−C−SO−X
で示される化合物などがあげられる。
式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または、炭素数7〜20のアラルキル基を表わす。nは0〜20の整数を表わす。C、C、Xは、前記と同様である。
の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基の具体例は、Rの炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基の具体例と同じものが挙げられる。
2官能性化合物の具体例としては、たとえば、ビス(ブロモメチル)ベンゼン、ビス(1−ブロモエチル)ベンゼン、ビス(1−ブロモイソプロピル)ベンゼン、2,3−ジブロモコハク酸ジメチル、2,3−ジブロモコハク酸ジエチル、2,3−ジブロモコハク酸ジブチル、2,4−ジブロモグルタル酸ジメチル、2,4−ジブロモグルタル酸ジエチル、2,4−ジブロモグルタル酸ジブチル、2,5−ジブロモアジピン酸ジメチル、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル、2,5−ジブロモアジピン酸ジブチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジメチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジエチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジブチル、2,7−ジブロモスベリン酸ジメチル、2,7−ジブロモスベリン酸ジエチル、2,7−ジブロモスベリン酸ジブチルなどがあげられる。これらのうちでは、ビス(ブロモメチル)ベンゼン、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジエチルが、原料の入手性の点から好ましい。
多官能性化合物としては、たとえば、
−(CH−X)
−(CH(CH)−X)
−(C(CH−X)
−(OCO−CH−X)
−(OCO−CH(CH)−X)
−(OCO−C(CH−X)
−(SO−X)
で示される化合物などがあげられる。
式中、Cは三価のフェニル基(3つの結合手の位置は1〜6位のいずれにある組み合わせでもよい)であり、Xは前記と同じである。
多官能性化合物の具体例としては、たとえば、トリス(ブロモメチル)ベンゼン、トリス(1−ブロモエチル)ベンゼン、トリス(1−ブロモイソプロピル)ベンゼンなどがあげられる。これらのうちでは、トリス(ブロモメチル)ベンゼンが、原料の入手性の点から好ましい。
なお、重合を開始する基以外に、官能基をもつ有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を用いると、容易に末端または分子内に重合を開始する基以外の官能基が導入された重合体が得られる。このような重合を開始する基以外の官能基としては、アルケニル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シリル基などがあげられる。
前記開始剤として用いることができる有機ハロゲン化物は、ハロゲン基(ハロゲン原子)が結合している炭素がカルボニル基またはフェニル基などと結合しており、炭素−ハロゲン結合が活性化されて重合が開始する。使用する開始剤の量は、必要とするアクリル系ブロック共重合体の分子量に合わせて、単量体とのモル比から決定すればよい。すなわち、単量体1分子あたり、何分子の開始剤を使用するかによって、アクリル系ブロック共重合体の分子量を制御することができる。
前記原子移動ラジカル重合の触媒として用いられる遷移金属錯体としては、とくに限定はないが、好ましいものとして、1価および0価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄、ならびに、2価のニッケルの錯体があげられる。
これらの中でも、コストや反応制御の点から1価の銅の錯体が好ましい。1価の銅化合物としては、たとえば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅などがあげられる。その中でも塩化第一銅、臭化第一銅が、重合の制御の観点からより好ましい。1価の銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために、2,2′−ビピリジル、その誘導体(たとえば4,4′−ジノリル−2,2′−ビピリジル、4,4′−ジ(5−ノリル)−2,2′−ビピリジルなど)などの2,2′−ビピリジル系化合物;1,10−フェナントロリン、その誘導体(たとえば4,7−ジノリル−1,10−フェナントロリン、5,6−ジノリル−1,10−フェナントロリンなど)などの1,10−フェナントロリン系化合物;テトラメチルジエチレントリアミン(TMEDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2−アミノエチル)アミンなどのポリアミンなどを配位子として添加してもよい。
また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl(PPh)も触媒として好ましい。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類を添加してもよい。さらに、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl(PPh)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl(PPh)、および、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr(PBu)も、触媒として好ましい。
使用する触媒、配位子および活性化剤は、とくに限定されないが、使用する開始剤、単量体および溶媒と必要とする反応速度の関係から適宜決定すればよい。たとえば、アクリル酸エステルなどのアクリル系単量体の重合には、高分子鎖の成長末端が炭素−臭素結合をもつことが重合の制御の点から好ましいことから、使用する開始剤が有機臭化物または臭化スルホニル化合物であり、溶媒はアセトニトリルであることが好ましく、臭化銅、好ましくは臭化第一銅に含まれる銅を中心金属とする金属錯体触媒を用い、ペンタメチルジエチレントリアミンなどの配位子を用いることが好ましい。また、メタアクリル酸エステルなどのメタアクリル系単量体の重合には、高分子鎖の成長末端が炭素−塩素結合をもつことが重合の制御の点から好ましいことから、使用する開始剤が有機塩化物または塩化スルホニル化合物であり、溶媒はアセトニトリル、必要に応じてトルエンなどとの混合溶媒であることが好ましく、塩化銅、好ましくは塩化第一銅に含まれる銅を中心金属とする金属錯体触媒を用い、ペンタメチルジエチレントリアミンなどの配位子を用いることが好ましい。
使用する触媒、配位子の量は、使用する開始剤、単量体および溶媒の量と必要とする反応速度の関係から決定すればよい。たとえば、分子量の高い重合体を得ようとする場合には、分子量の低い重合体を得ようとする場合よりも、開始剤/単量体の比を小さくしなければならないが、そのような場合に、触媒、配位子を多くして、反応速度を増大させることができる。また、ガラス転移点が室温より高い重合体が生成する場合、系の粘度を下げて撹拌効率を上げるために適当な有機溶媒を添加した場合には、反応速度が低下する傾向があるが、そのような場合には、触媒、配位子を多くして、反応速度を増大させることができる。
前記原子移動ラジカル重合は、無溶媒中で(塊状重合)、または、各種の溶媒中で行なうことができる。また、塊状重合、各種の溶媒中で行なう重合において、重合を途中で停止させることもできる。前記溶媒としては、たとえば、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、ニトリル系溶媒、エステル系溶媒、カーボネート系溶媒などを用いることができる。
炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどをあげることができる。エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどをあげることができる。ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルムなどをあげることができる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどをあげることができる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどをあげることができる。ニトリル系溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどをあげることができる。エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチルなどをあげることができる。カーボネート系溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどをあげることができる。これらは、少なくとも1種用いてもよい。
溶媒を使用する場合、その使用量は、系全体の粘度と必要とする撹拌効率の関係から適宜決定すればよい。また、塊状重合、各種の溶媒中で行なう重合において重合を途中で停止させる場合においても、反応を停止させる点での単量体の転化率は、系全体の粘度と必要とする撹拌効率の関係から適宜決定すればよい。
前記重合は、23℃〜200℃の範囲、好ましくは50℃〜150℃の範囲で行なうことができる。前記重合により、(メタ)アクリル系ブロック共重合体を製造するには、単量体を逐次添加する方法、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤として次のブロックを重合する方法、別々に重合した重合体を反応により結合する方法などがあげられる。これらの方法はいずれによってもよく、目的に応じて使い分ければよい。製造工程の簡便性の点からは単量体の逐次添加による方法が好ましく、前のブロックの単量体が残存して次のブロックに共重合してしまうことを避けたい場合にはあらかじめ合成した重合体を高分子開始剤として次のブロックを重合する方法が好ましい。
以下に、単量体の逐次添加による場合、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤として次のブロックを重合する場合について詳細に説明するが、本発明の(メタ)アクリル系ブロック共重合体の製造方法を限定するものではない。
単量体の逐次添加による場合、先に重合させるべく仕込んだ単量体の転化率が80〜95%の時点で、つぎに重合させたい単量体を仕込むことが望ましい。転化率が95%を超えるまで(たとえば96〜100%まで)重合を進行させた場合には、高分子鎖の成長反応が確率的におさえられる。また、高分子ラジカル同士が反応しやすくなるために、不均化、カップリング、連鎖移動などの副反応が起こりやすくなる傾向がある。転化率が80%未満の時点(たとえば79%以下の時点)でつぎに重合させたい単量体を仕込んだ場合には、先に重合させるために仕込んだ単量体がつぎに重合させたい単量体と混合して共重合してしまうことが問題となる場合がある。
また、この場合、単量体の添加の順序として、まずアクリル系単量体を仕込んで重合させたのちにメタアクリル系単量体を仕込んで重合させる方法と、まずメタアクリル系単量体を仕込んで重合させたのちにアクリル系単量体を仕込んで重合させる方法とが考えられるが、まずアクリル系単量体を仕込んで重合させたのちにメタアクリル系単量体を仕込んで重合させる方法が、重合の制御の観点から好ましい。これは、アクリル系重合体ブロックの末端からメタクリル系重合体ブロックを成長させることが好ましいからである。
あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤として次のブロックを重合する方法として、たとえば、1つ目のブロックの重合の所望の時点で、リビング状態で一旦温度を下げ、重合を止めて、1つ目のブロックの単量体を減圧留去などしたのち、2つ目のブロックの単量体を添加する方法があげられる。3つ目以降のブロックを重合させたい場合にも、2つ目のブロックの場合と同様に操作すればよい。この方法では、2つ目以降のブロックの重合時に、残存した前のブロックの単量体が共重合してしまうことを避けることができる。
また、この場合、ブロックの重合の順序として、まずアクリル系ブロックを重合させたのちにメタアクリル系ブロックを重合させる方法と、まずメタアクリル系ブロックを重合させたのちにアクリル系ブロックを重合させる方法とが考えられるが、まずアクリル系ブロックを重合させたのちにメタアクリル系ブロックを重合させる方法が重合の制御の観点から好ましい。これは、アクリル系重合体ブロックの末端からメタクリル系重合体ブロックを成長させることが好ましいからである。
ここで、アクリル系単量体、メタアクリル系単量体などの転化率の求め方について説明する。転化率を求めるには、ガスクロマトグラフ(GC)法、重量法などが適用可能である。GC法は、重合系の反応液を反応開始前および反応途中で随時サンプリングしてGC測定し、単量体と重合系内にあらかじめ添加された内部標準物質との存在比から、単量体の消費率を求める方法である。この方法の利点は、複数の単量体が系内に存在している場合でも、それぞれの転化率を独立して求めることができることである。重量法は、重合系の反応液をサンプリングして、その乾燥前の重量と乾燥後の重量から固形分濃度を求め、単量体の全体しての転化率を求める方法である。この方法の利点は、簡単に転化率を求めることができることである。これらの方法のうち、複数の単量体が系内に存在する場合、たとえば、メタアクリル系単量体の共重合成分としてアクリル系単量体が含まれている場合などには、GC法が好ましい。
重合によって得られた反応液は、重合体と金属錯体の混合物を含んでおり、カルボン酸基、もしくは、スルホン酸基を含有する有機酸を添加して金属錯体と金属塩を生成させ、生成した金属錯体を濾過などにより、固形分を除去し、引き続き、塩基性活性アルミナ、塩基性吸着剤、固体無機酸、陰イオン交換樹脂、セルロース陰イオン交換体吸着処理により溶液中に残存する酸などの不純物を除去することで、(メタ)アクリル系ブロック共重合体樹脂溶液を得ることができる。
このようにして得られた重合体溶液は、引き続き、蒸発操作により重合溶媒および未反応モノマーを除去して、(メタ)アクリル系ブロック共重合体を単離する。蒸発方式としては薄膜蒸発方式、フラッシュ蒸発方式、押出しスクリューを備えた横形蒸発方式などを用いることができる。(メタ)アクリル系ブロック共重合体は粘着性を有するため、上記蒸発方式の中でも押出しスクリューを備えた横形蒸発方式単独、あるいは他の蒸発方式と組み合わせることにより効率的な蒸発が可能である。
<(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の製法>
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の製造は、前記で作製した酸無水物基の前駆体含有(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A’)を高温下180〜300℃で加熱する方法が好ましく用いられる。その際、酸無水物基の前駆体含有(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A’)を重合体溶液の状態で加圧下で加熱してもよく、重合体溶液から溶剤を蒸発、除去しながら加熱してもよく、酸無水物基の前駆体含有(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A’)を直接、加熱溶融してもよいが、酸無水物基への反応性や、製造の簡便さなどの点で、酸無水物基の前駆体含有(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A’)を直接、加熱溶融することが好ましい。さらには、酸無水物基の前駆体含有(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A’)を溶融混練することがより好ましい。
酸無水物基の前駆体含有(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A’)を重合体溶液の状態で加熱する方法としては、耐圧性の反応容器で行なうことができる。また、酸無水物基の前駆体含有(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A’)を重合体溶液から溶剤を蒸発、除去しながら加熱する方法としては、押し出しスクリューを備えた横型蒸発方式などを用いることができる。
酸無水物基の前駆体含有(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A’)を直接、加熱溶融する方法としては、プレス機や射出成形機などを用いることができる。
酸無水物基の前駆体含有(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A’)を溶融混練する方法としては、加熱と混練とを同時に行ない得る種々の装置中で行なうことが可能であって、たとえば通常のゴムの加工に用いられるバンバリーミキサー、ニーダー、単軸または多軸の押出機などがあげられる。特に限定されないが、酸無水物基への反応性や、製造の簡便さなどの点で、押し出し機が好適に用いられる。酸無水物基の前駆体含有(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A’)を溶融混練する際、溶融混練時間(押出し機を用いた場合は押出し機中での滞留時間)は、溶融混練する温度、スクリュー構成、L/D(スクリュー有効長さLとスクリュー径Dの比)、スクリュー回転数などに応じて適宜決めればよい。
<1分子中に2個以上のアミノ基を含む化合物(B)>
本発明で架橋剤として用いられる1分子中に2個以上のアミノ基を含む化合物(B)としては、1分子中に1級あるいは2級アミノ基を2個以上有する化合物であれば、特に限定されないが、酸無水物基との反応性の点から、1級アミノ基を有する化合物であることが好ましく、1級アミノ基を有するジアミンであることが好ましい。1分子中に2個以上のアミノ基を含む化合物(B)の具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、ポリオキシプロピレンポリアミン、1,2−ジアミノプロパン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、N,N’―ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジブチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ジエチル−2−ブテン−1,4−ジアミン、N,N’−ジエチル−1,4−ジアミノシクロヘキサン、分子量が200〜1000のポリエーテルポリアミン(両末端にアミノ基を有するポリオキシプロピレンジアミンなど)などの脂肪族ポリアミン、シクロヘキシレンジアミン、ピペラジン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノプロピルピペラジン、1,3−ビスアミノシクロヘキサン、ジ(アミノジシクロヘキシル)メタン、3,3’−ジメチルジ(アミノシクロヘキシル)メタン、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロペンタン、ジ(アミノシクロヘキシル)メタン、ジ(アミノシクロヘキシル)スルホン、1,3−ジ(アミノシクロヘキシル)プロパン、4−イソプロピル−1,2−ジアミノシクロヘキサン、2,4−ジアミノシクロヘキサン、N,N’−ジエチル−1,4−ジアミノシクロヘキサン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアミンなどの脂環族ポリアミン類、メラミン、ベンジジン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4−ジアミノジフェニルアミン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,4−ジアミノトルエンなどの芳香族ポリアミン化合物をあげることができる。
これらは少なくとも1種用いることができる。これらのなかでも、入手性やコストの点、反応時の取り扱いの点で沸点が100℃以上のものが好ましく、沸点が150℃以上のものがより好ましい。また、化合物(B)の炭素数は1〜20が好ましく、1〜10のものがより好ましい。また、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)との相溶性に優れたものを用いるのが好ましい。具体的には、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミンが好ましくが好ましく、脂肪族ポリアミンがより好ましく、特にヘキサメチレンジアミンが好ましい。
また用いる1分子中に2個以上のアミノ基を含む化合物(B)のアミノ基含有数は、得られるエラストマーの硬度と機械強度のバランス、圧縮永久歪みの特性に応じて、適宜決めれば良い。これら化合物(B)の配合量に関しては、(メタ)アクリル系共重合体(A)中の酸無水物基(a1)のモル数に対する化合物(B)中のアミノ基のモル数の比が、0.01〜10の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.05〜10の範囲となるようにする。これら1分子中に2個以上のアミノ基を含む化合物(B)の配合量が、10を超えると得られる熱可塑性エラストマーの機械強度が低下する傾向にあり、また0.01より小さくなると、得られる熱可塑性エラストマーの架橋反応性が低下する場合がある。
<熱可塑性樹脂(C)>
本発明に使用できる熱可塑性樹脂(C)としては、特に限定されないが、たとえば、ポリ塩化ビニル系樹脂,ポリエチレン系樹脂,ポリプロピレン系樹脂,環状オレフィン共重合樹脂,ポリメチルメタクリレート系樹脂,ポリスチレン系樹脂,ポリフェニレンエーテル系樹脂,ポリカーボネート系樹脂,ポリエステル系樹脂,ポリアミド系樹脂,ポリアセタール樹脂,ポリフェニレンスルフィド樹脂,ポリスルホン樹脂,ポリイミド樹脂,ポリエーテルイミド樹脂,ポリエーテルケトン樹脂,ポリエーテルエーテルケトン樹脂,ポリアミドイミド樹脂;および芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれた少なくとも1種のビニル系単量体70〜100重量%と、これらのビニル系単量体と共重合可能な、たとえば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどの他のビニル系単量体30〜0重量%とを重合して得られる単独重合体または共重合体などがあげられる。これらは少なくとも1種用いることができる。
より具体的には、ポリ塩化ビニル系樹脂としては、たとえば、様々な重合度のポリ塩化ビニル単独重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体などのポリ塩化ビニル共重合体;ポリ塩化ビニルとエチレン−酢酸ビニル共重合体とのアロイ、ポリ塩化ビニルと塩素化ポリエチレンとのアロイ、ポリ塩化ビニルとアクリル系共重合体とのアロイ、ポリ塩化ビニルとポリウレタンとのアロイなどのポリ塩化ビニル系アロイ;ポリ塩化ビニル/フィラー複合体、後塩素化ポリ塩化ビニルなどの機能化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン単独重合体、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン−アクリル酸エステル共重合体などのポリ塩化ビニリデン共重合体などがあげられる。
また、ポリエチレン系樹脂としては、たとえば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどのポリエチレン樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレンとアクリル酸またはメタアクリル酸の金属塩との共重合体、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ジメチルアミノメチルメタアクリレート共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレンオキサイド付加物などのエチレンと極性単量体との共重合体をあげることができる。
また、ポリプロピレン系樹脂としては、たとえば、ホモイソタクチックポリプロピレン、エチレンまたは1−ブテンを含むイソタクチックポリプロピレンランダム共重合体、エチレンプロピレンを含むイソタクチックポリプロピレンブロック共重合体、チーグラーナッタ触媒系イソタクチックポリプロピレン、メタロセン触媒系イソタクチックポリプロピレン、メタロセン触媒系シンジオタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレンなどのポリプロピレン;ポリプロピレン/フィラー複合体、塩素化ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレンなどの機能化ポリプロピレンがあげられる。
また、環状オレフィン共重合樹脂としては、環状オレフィン、たとえばシクロペンタジエン由来の単量体単位などを含有する樹脂であれば特に制限されないが、たとえば、ARTON(ジェイエスアール(株)製)、ZEONEX(日本ゼオン(株)製)、環状オレフィンとエチレンまたはプロピレンとの共重合体であることができる。
また、ポリメチルメタクリレート系樹脂としては、メタアクリル酸メチルを主成分とする樹脂であればとくに制限されず、α−メチルスチレンや無水マレイン酸などが共重合されたポリメチルメタクリレート樹脂であることができる。
また、ポリスチレン系樹脂としては、たとえば、ポリスチレン単独重合体、シンジオタクチックポリスチレンなどがあげられる。
また、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれた少なくとも1種のビニル系単量体70〜100重量%と、これらのビニル系単量体と共重合可能な、たとえば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどの他のビニル系単量体0〜30重量%とを重合して得られる単独重合体または共重合体としては、たとえば、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−アクリル酸ブチル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体などのアクリロニトリル−スチレン系共重合樹脂;メタアクリル酸メチル−スチレン共重合樹脂などがあげられる。
また、ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、ポリフェニレンエーテル単独重合体;ポリフェニレンエーテルとポリスチレンとのアロイ、ポリフェニレンエーテルとポリアミドとのアロイ、ポリフェニレンエーテルとポリブチレンテレフタレートとのアロイなどのポリフェニレンエーテル系アロイがあげられる。
また、ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールAタイプ芳香族ポリカーボネートなどのポリカーボネート;ポリカーボネートとポリブチレンテレフタレートとのアロイ、ポリカーボネートとポリアリレートとのアロイ、ポリカーボネートとポリメチルメタクリレートとのアロイなどのポリカーボネート系アロイがあげられる。
また、ポリエステル系樹脂としては、たとえば、ポリグルコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネートなどの脂肪族ポリエステル;ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート/シクロヘキサンジメチレンテレフタレート共重合体、サーモトロピック液晶重合体2型などの半芳香族ポリエステル;非晶性ポリアリレート、サーモトロピック液晶重合体1型、サーモトロピック液晶重合体2型などの全芳香族ポリエステル、エステル系エラストマーがあげられる。
また、ポリアミド系樹脂としては、たとえば、PA6(ポリカプロアミド)、PA12(ポリドデカンアミド)などの開環重合系脂肪族ポリアミド;PA66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、PA46(ポリテトラメチレンアジパミド)、PA610、PA612、PA11などの重縮合系ポリアミド;MXD6、PA6T、PA9T、PA6T/66、PA6T/6、アモルファスPAなどの半芳香族ポリアミド;ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(m−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)などの全芳香族ポリアミド、アミド系エラストマーなどがあげられる。
また、ポリアセタール樹脂としては、たとえば、ポリアセタール単独重合体、ホルムアルデヒドとトリオキサンとの共重合体があげられる。本発明において、熱可塑性樹脂(C)は、これらに限定されることがなく、種々の熱可塑性樹脂を広く用いることができ、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、ウレタン系エラストマー、などの熱可塑性エラストマーを用いることもできる。
これら各種の熱可塑性樹脂のうち、軟化温度が100℃以上で、かつ溶融温度が300℃以下のものが好ましく、なかでもポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が好ましく、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)との相溶性や、得られる熱可塑性エラストマーの耐油性、耐熱性などの点で、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂がより好ましく、特に(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)との相溶性の観点から、酸無水物基(a1)との反応性を有するポリアミド樹脂が好ましく、たとえば、PA6(ポリカプロアミド)、PA12(ポリドデカンアミド)、PA612があげられる。
これらの熱可塑性樹脂(C)の配合量は、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、5〜150重量部が好ましく、10〜100重量部がより好ましい。熱可塑性樹脂(C)の配合量が150重量部より大きいと得られる熱可塑性エラストマーのゴム弾性が低下する場合がある。熱可塑性樹脂(C)が、5重量部未満であると、得られる熱可塑性エラストマーの成形性や機械強度が低下する場合がある。
<熱可塑性樹脂(D)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、(A)(メタ)アクリル系ブロック共重合体を、(B)1分子中に2個以上のアミノ基を含む化合物により、(C)熱可塑性樹脂中で動的に架橋した後に、さらに熱可塑性樹脂(D)を添加することにより得られることを特徴とする。熱可塑性樹脂(D)を動的架橋後に添加することにより、成形性が向上した熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。
熱可塑性樹脂(D)としては、熱可塑性樹脂(C)と同様のものを用いることができるが、軟化温度が100℃以上で、かつ溶融温度が300℃以下のものが好ましい。なかでもポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が好ましく、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)との相溶性や、得られる熱可塑性エラストマーの耐油性、耐熱性などの点で、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂がより好ましい。特に(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)との相溶性の観点から、ポリアミド樹脂が好ましく、たとえば、PA6(ポリカプロアミド)、PA12(ポリドデカンアミド)、PA612があげられる。
熱可塑性樹脂(D)は、熱可塑性樹脂(C)と同じでもよく、また異なっていてもよい。
熱可塑性樹脂(D)の配合量は(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、1〜150重量部が好ましく、5〜100重量部がより好ましい。熱可塑性樹脂(D)の配合量が150重量部を超えると、ゴム弾性が低下する傾向があり、1重量部未満であると、成型性向上に寄与しない場合がある。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上記の(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)、1分子中に2個以上のアミノ基を含む化合物(B)、熱可塑性樹脂(C)および(D)の他に、必要に応じて、安定剤や滑剤、難燃剤、顔料、充填剤、補強剤、粘着性付与剤などを適宜配合することができる。具体的には、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ジブチル錫マレエートなどの安定剤;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、モンタン酸系ワックスなどの滑剤;デカブロモビフェニル、デカブロモビフェニルエーテルなどの難燃剤;酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛などの顔料;カーボンブラック、シリカ、ガラス繊維、アスベスト、ウォラストナイト、マイカ、タルク、炭酸カルシウムなどの充填剤、補強剤;クマロン・インデン樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂、ハイスチレン樹脂、石油系炭化水素(たとえばジシクロペンタジエン樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、不飽和炭化水素樹脂など)、ポリブテン、ロジン誘導体などの粘着性付与剤などがあげられる。
さらに(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)と熱可塑性樹脂(C)及び(D)との相溶性をさらに良好にするために、相溶化剤として種々のグラフトポリマーやブロックポリマーを添加してもよい。相溶化剤としては、クレイトンシリーズ(シェルジャパン社製)、タフテックシリーズ(旭化成工業(株)製)、ダイナロン(日本合成ゴム(株)製)、エポフレンド(ダイセル化学工業(株)製)、セプトン(クラレ(株)製)、ノフアロイ(日本油脂(株)製)、レクスパール(日本ポリオレフィン(株)製)、ボンドファースト(住友化学工業(株)製)、ボンダイン(住友化学工業(株)製)、アドマー(三井化学(株)製)、ユーメックス(三洋化成工業(株)製)、VMX(三菱化学(株)製)、モディーパー(日本油脂(株)製)、スタフィロイド(武田薬品工業(株)製)、カネエース(鐘淵化学工業(株)製)、レゼタ(東亜合成(株)製)などの市販品をあげることができる。これらは、用いる(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)と熱可塑性樹脂(C)に応じて適宜選択することができる。
<熱可塑性エラストマー組成物の製造方法>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、
(A)(メタ)アクリル系ブロック共重合体、(B)1分子中に2個以上のアミノ基を含む化合物、および(C)熱可塑性樹脂からなる熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、
(A1)(メタ)アクリル系重合体ブロックおよび(A2)アクリル系重合体ブロックからなり、少なくとも一方の重合体ブロックの主鎖中に、
一般式(1):
Figure 2005264068
(式中、Rは水素またはメチル基で、2つのRは互いに同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数、mは0または1の整数)で表わされる酸無水物基(a1)を少なくとも1つ有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)を、化合物(B)により、熱可塑性樹脂(C)中で混練することにより動的架橋させた後に、さらに熱可塑性樹脂(D)を添加して混練することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物の製造方法である。
前記動的架橋の方法としては、特に限定されないが、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)および熱可塑性樹脂(C)を含む組成物を高温下で溶融、混練しながら1分子中に2個以上のアミノ基を含む化合物(B)を添加して動的架橋させるのが好ましい。動的架橋を行なった後さらに熱可塑性樹脂(D)を添加して混練することにより上記熱可塑性エラストマー組成物を製造することができる。
さらに必要に応じて、安定剤、滑剤、難燃剤、顔料、充填剤、補強材、滑剤、粘着性付与剤、相溶化剤などの他の成分を添加して混練してもよい。これらの成分の添加方法等については特に限定されないが、動的架橋の後に添加して混練するのが好ましい。
本発明の製造方法において使用する混練機としては、加熱と混練とを同時に行ない得る種々の装置が使用可能であって、たとえば通常のゴムの加工に用いられるバンバリーミキサー、ニーダー、単軸または多軸の押出機などがあげられる。さらに必要に応じて、プレス機や射出成形機などを用いて該組成物を成形することができる。本発明の製造方法における混練温度は100〜300℃が好ましく、150〜250℃がより好ましい。
本発明で得られる(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)、1分子中に2個以上のアミノ基を含む化合物(B)および熱可塑性樹脂(C)を組み合わせた組成物を動的架橋した後、熱可塑性樹脂(D)を添加して混練することにより得られる熱可塑性エラストマー組成物は、(メタ)アクリル系ブロック共重合体が本来有する特性を維持しながら、耐油性、耐熱、機械特性などが改善されていることから、自動車、電気・電子部品としてより好適に用いることができる。具体的には、その種類はオイルシール、往復動用オイルシールなどの各種オイルシール、グランドパッキン、リップパッキン、スクィーズパッキンなどの各種パッキン、等速ジョイント用ブーツ、ストラットブーツ、ラック&ピニオン用ブーツ、ブレーキブースター用ブーツ、ステアリングボールジョイント用ブーツなどの各種ブーツ、フューエルホース、ガソリンホース、エアーコンディショニングホース、ブレーキホース、エアーホース、エアーダクトホース、エアークリーナーホース等の各種ホース、サスペンション用ダストカバー、サスペンション・タイロッド用ダストカバー、スタビライザ・ダイロッド用ダストカバーなどの各種ダストカバー、樹脂インテークマニホールドガスケット、スロットルボディ用ガスケット、パワーステアリングベーンポンプ用ガスケット、ヘッドカバー用ガスケット、給湯機自給式ポンプ用ガスケット、フィルタガスケット、配管継手(ABS&HBB)用ガスケット、HDD用トップカバーガスケット、HDD用コネクタガスケット、また金属と合わせたシリンダヘッドガスケット、カークーラーコンプレッサーガスケット、エンジン周りガスケット、ATセパレートプレート、汎用ガスケット(工業用ミシン、釘打ち機など)などの各種ガスケット、ニードルバルブ、プランジャーバルブ、水・ガス用バルブ、ブレーキ用バルブ、飲用バルブ、アルミ電解コンデンサ用安全バルブなどの各種バルブ、真空倍力装置用や水・ガス用のダイヤフラム、シールワッシャー、ボアプラグ、高精度ストッパなどの緩衝性能を主とした各種ストッパ、プラグチューブシール、インジェクションパイプシール、オイルレシーバ、ブレーキドラムシール、遮光シール、プラグシール、コネクタシール、キーレスエントリーカバーなどの精密シールゴムなどがある。その他、自動車用品のドアウェザストリップなどの各種ウェザストリップ、トランクシール、ガラスランチャンネルなどのシール製品があげられる。
前記製品の成形には、前記熱可塑性エラストマー組成物を、押出し成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形、発泡成形、射出成形、インジェクションブローなどの任意の成形加工法によって成形加工することができる。
前記(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)、1分子中に2個以上のアミノ基を含む化合物(B)および熱可塑性樹脂(C)を組み合わせた組成物を動的架橋した後、熱可塑性樹脂(D)を添加して混練することにより得られる熱可塑性エラストマー組成物は、自動車、電気・電子部品以外にも、包装材料、建築、土木材料、雑貨品などの分野でホース、シート、フィルム材料、制振剤、粘着剤のベースポリマー、樹脂改質剤などとして広く好適に用いることもできる。
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、実施例におけるBA、MMA、TBAは、それぞれ、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸t−ブチルを表わす。「co」はランダム共重合による結合を表し、略号「b」はブロック共重合による結合を表す。
<試験方法>
(分子量)
本実施例に示す分子量は以下に示すGPC分析装置で、クロロホルムを移動相として、ポリスチレンゲルカラムを使用したGPC測定を行ない、ポリスチレン換算の分子量を求めた。GPC測定はGPC分析装置(システム:ウォーターズ(Waters)社製のGPCシステム、カラム:昭和電工(株)製のShodex K−804(ポリスチレンゲル))で測定した。クロロホルムを移動相とし、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
(硬度)
JIS K6253に従い、23℃における硬度(直後、JIS A)をタイプAデュロメータにより測定した。
(機械強度)
JIS K7113に記載の方法に準用して、(株)島津製作所製のオートグラフAG−10TB形を用いて測定した。測定はn=3にて行ない、試験片が破断したときの強度(MPa)、伸び(%)、並びに、弾性率(MPa)の値の平均値を採用した。試験片は2(1/3)号形の形状にて、厚さが約2mm厚のものを用いた。試験は23℃にて500mm/分の試験速度で行なった。試験片は原則として、試験前に温度23±2℃、相対湿度50±5%において48時間以上状態調節したものを用いた。
(耐油性)
ASTM D638に準拠し、組成物の成形体を150℃に保持したASTMオイルNo.3中に72時間浸し、重量変化率(重量%)を求めた。また、試験後外観評価については、試験前後の成形体の形状を観察し、○:形状維持、×:変形 として判断した。
(耐熱性)
流動開始温度を比較することにより行なった。流動開始温度は(株)島津製作所製の高化式フローテスターCFT−500C型を用いて5℃/分の昇温速度で加熱された組成物を荷重60kgf/cmのもとで、内径1mm、長さ10mmのノズルから押出したときに、フローテスターの押出ピストンが明らかに降下し始める温度(本測定器においてはTfbと表示される)とした。成型性に関しては、高化式フローテスター試験結果のストランド流動温度幅(流動終了温度−流動開始温度)を測定し、○:温度幅25度以下、×25度以上とした。
製造例1
MMA−b−BA−b−MMA型ブロック共重合体(BA/MMA=70/30重量%)(以下MBAMと略称する)の合成
5Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、臭化銅11.3g(78.5ミリモル)を量り取り、アセトニトリル(モレキュラーシーブスで乾燥後窒素バブリングしたもの)180mLを加えた。5分間70℃で加熱攪拌した後、再び室温に冷却し、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.7g(15.7ミリモル)、アクリル酸n−ブチル804.6g(900.0mL)を加えた。80℃で加熱攪拌し、配位子ジエチレントリアミン1.6mL(7.9ミリモル)を加えて重合を開始した。重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約0.2mLを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりアクリル酸n−ブチルの転化率を決定した。トリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。アクリル酸n−ブチルの転化率が95%の時点で、メタアクリル酸メチル345.7g(369.3mL)、塩化銅7.8g(78.5ミリモル)、ジエチレントリアミン1.6mL(7.9ミリモル)、トルエン(モレキュラーシーブスで乾燥後窒素バブリングしたもの)1107.9mLを加えた。同様にして、メタアクリル酸メチルの転化率を決定した。メタアクリル酸メチルの転化率が85%、アクリル酸n−ブチルの転化率が98%の時点で、トルエン1500mLを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。反応中常に重合溶液は緑色であった。反応溶液をトルエン4000mLで希釈し、p−トルエンスルホン酸一水和物22.1gを加えて室温で3時間撹拌した。析出した不溶部を桐山漏斗で濾過して除いた後、ポリマー溶液に吸着剤キョーワード500SHを9.7g加えて室温でさらに3時間撹拌した。桐山漏斗で吸着剤を濾過し、無色透明のポリマー溶液を得た。この溶液を乾燥させて溶剤および残存モノマーを除き、目的のMBAMを得た。得られたMBAMのGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが119200、分子量分布Mw/Mnが1.51であった。またNMRによる組成分析を行なったところ、BA/MMA=72/28(重量%)であった。
製造例2
MMA−b−(BA−co−TBA)−b−MMA(BA/TBA=97.5/2.5mol%、(BA−co−TBA)/MMA=70/30重量%)型(メタ)アクリル系ブロック共重合体(以下2.5STBA7と記載する)の合成
5Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、臭化銅11.3g(78.4ミリモル)を量り取り、アセトニトリル(窒素バブリングしたもの)180mLを加えた。30分間70℃で加熱撹拌したのち、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.65g(15.7ミリモル)、BA877mL(6.12モル)、TBA22.9mL(0.16モル)を加えた。85℃で加熱撹拌し、配位子ジエチレントリアミン1.64mL(7.8ミリモル)を加えて重合を開始した。BAの転化率が95%、TBAの転化率が100%の時点でMMA369mL(3.45モル)を添加した。MMAの転化率が64%の時点で反応を終了させた。それ以外は製造例1と同様に製造し、目的とする(メタ)アクリル系ブロック共重合体2.5STBA7を得た。
得られた(メタ)アクリル系ブロック共重合体2.5STBA7のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが97900、分子量分布Mw/Mnが1.44であった。
製造例3
MMA−b−TBA−b−BA−b−TBA−b−MMA(BA/TBA=97.5/2.5mol%、(TBA−b−BA−b−TBA)/MMA=70/30重量%)型(メタ)アクリル系ブロック共重合体(以下2.5TBAT7と記載する)の合成
5Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、臭化銅7.50g(52.3ミリモル)を量り取り、アセトニトリル(窒素バブリングしたもの)120mLを加えた。30分間70℃で加熱撹拌したのち、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル3.77g(10.5ミリモル)、BA585mL(4.08モル)を加えた。85℃で加熱撹拌し、配位子ジエチレントリアミン1.09mL(5.2ミリモル)を加えて重合を開始した。BAの転化率が85%の時点でTBA15.3mL(0.10モル)を添加した。BAの転化率が98%、TBAの転化率が88%の時点で、MMA367mL(3.43モル)を添加した。MMAの転化率が63%の時点で反応を終了させた。それ以外は製造例1と同様に製造し、目的とする(メタ)アクリル系ブロック共重合体2.5TBAT7を得た。得られた(メタ)アクリル系ブロック共重合体2.5TBAT7のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが113500、分子量分布Mw/Mnが1.32であった。
実施例1
製造例2で製造した(メタ)アクリル系ブロック共重合体2.5STBA7を45gとイルガノックス1010(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製)0.23gを240℃で設定したラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて100rpmで20分溶融混練して、目的の酸無水物基含有(メタ)アクリル系ブロック共重合体(得られたポリマーを2.5SANBA7と記載する)を得た。得られた2.5SANBA7および、ポリアミド;PA(UBEナイロン3012U:宇部興産(株)製)、イルガノックス1010(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製)を表1に示した割合で190℃に設定したラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて溶融混練した。さらに表1に示した割合で、ヘキサメチレンジアミン(東京化成工業(株)製)を添加し溶融混練し、反応を進行させた(動的架橋)。その後、さらに表1に示した割合でPAを後添加し、190℃で溶融混練した。得られたサンプルについて耐熱性を測定した。また得られたサンプルを設定温度190℃で熱プレス成形し、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。これらの成形体について、硬度を測定した。また、同様に設定温度190℃で熱プレス成形し、厚さ2mmのシート状の成形体を得た。これらのシートにて機械強度、耐油性を測定した。
Figure 2005264068
実施例2
製造例3で製造したアクリル系ブロック共重合体2.5TBAT7を実施例1と同様の方法で、目的の酸無水物基含有アクリル系ブロック共重合体(得られたポリマーを2.5ANBAAN7と記載する)を得た。得られた2.5ANBAAN7および、ポリアミド;PA(UBEナイロン3012U:宇部興産(株)製)、イルガノックス1010(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製)を表1に示した割合で190℃に設定したラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて溶融混練した。さらに表1に示した割合で、ヘキサメチレンジアミン(東京化成工業(株)製)を添加し溶融混練し、反応を進行させた(動的架橋)。その後、さらに表1に示した割合でPAを後添加し、190℃で溶融混練した。得られたサンプルについて耐熱性を測定した。また得られたサンプルを設定温度190℃で熱プレス成形し、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。これらの成形体について、硬度を測定した。また、同様に設定温度190℃で熱プレス成形し、厚さ2mmのシート状の成形体を得た。これらのシートにて機械強度、耐油性を測定した。
比較例1
製造例1で製造したMBAMおよびイルガノックス1010(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製)を表1に示した割合でスクリュー回転数50rpmにて190℃に設定したラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて溶融混練してサンプルを得た。得られたサンプルについて耐熱性を測定した。また得られたサンプルを設定温度190℃で熱プレス成形し、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。これらの成形体について硬度を測定した。また、同様に設定温度190℃で熱プレス成形し、厚さ2mmのシート状の成形体を得た。これらのシートにて機械強度、耐油性を測定した。
MBAM単品では機械強度、耐油性および耐熱性が不十分である。
比較例2
製造例1で製造したMBAMおよびポリアミド;PA(UBEナイロン3012U:宇部興産(株)製)、イルガノックス1010(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製)を表1に示した割合でスクリュー回転数100rpmにて190℃に設定したラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて溶融混練した。得られたサンプルについて耐熱性を測定した。また得られたサンプルを設定温度190℃で熱プレス成形し、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。これらの成形体について硬度を測定した。また、同様に設定温度190℃で熱プレス成形し、厚さ2mmのシート状の成形体を得た。これらのシートにて機械強度、耐油性を測定した。
MBAMとPAを溶融混練することのみによって得たサンプルは、機械強度、耐油性、耐熱性および成型性が共に不十分であることがわかる。
比較例3
製造例2で製造した(メタ)アクリル系ブロック共重合体2.5STBA7を45gとイルガノックス1010(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製)0.23gを240℃で設定したラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて100rpmで20分溶融混練して、目的の酸無水物基含有(メタ)アクリル系ブロック共重合体(得られたポリマーを2.5SANBA7と記載する)を得た。得られた2.5SANBA7および、ポリアミド;PA(UBEナイロン3012U:宇部興産(株)製)、イルガノックス1010(チバガイギー(株)製)を表1に示した割合で190℃に設定したラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて溶融混練した。さらに表1に示した割合で、ヘキサメチレンジアミン(東京化成工業(株)製)を添加し溶融混練し、反応を進行させた(動的架橋)。得られたサンプルについて耐熱性を測定した。また得られたサンプルを設定温度190℃で熱プレス成形し、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。これらの成形体について、硬度を測定した。また、同様に設定温度190℃で熱プレス成形し、厚さ2mmのシート状の成形体を得た。これらのシートにて機械強度、耐油性を測定した。PAを後添加せずに得られたサンプルは、成型性が不十分であること判る。
比較例4
製造例3で製造した(メタ)アクリル系ブロック共重合体2.5TBAT7を実施例1と同様の方法で、目的の酸無水物基含有(メタ)アクリル系ブロック共重合体(得られたポリマーを2.5ANBAAN7と記載する)を得た。得られた2.5ANBAAN7および、ポリアミド;PA(UBEナイロン3012U:宇部興産(株)製)、イルガノックス1010(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製)を表1に示した割合で190℃に設定したラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて溶融混練した。さらに表1に示した割合で、ヘキサメチレンジアミン(東京化成工業(株)製)を添加し溶融混練し、反応を進行させた(動的架橋)。得られたサンプルについて耐熱性を測定した。また得られたサンプルを設定温度190℃で熱プレス成形し、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。これらの成形体について、硬度を測定した。また、同様に設定温度190℃で熱プレス成形し、厚さ2mmのシート状の成形体を得た。これらのシートにて機械強度、耐油性を測定した。PAを後添加せずに得られたサンプルは、成型性が不十分であること判る。
上記表1(実施例1〜2および比較例1〜4)から明らかなように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、機械強度が良好でありながら、耐油性および耐熱性、成型性が改善されていることがわかる。

Claims (9)

  1. (A)(メタ)アクリル系ブロック共重合体、(B)1分子中に2個以上のアミノ基を含む化合物および(C)熱可塑性樹脂からなる熱可塑性エラストマー組成物であって、
    (メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)が、(A1)(メタ)アクリル系重合体ブロックおよび(A2)アクリル系重合体ブロックからなり、少なくとも一方の重合体ブロックの主鎖中に、
    一般式(1):
    Figure 2005264068
    (式中、Rは水素またはメチル基で、2つのRは互いに同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数、mは0または1の整数)で表わされる酸無水物基(a1)を少なくとも1つ有し、
    (メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)を、化合物(B)により、熱可塑性樹脂(C)中で動的に架橋した後に、さらに熱可塑性樹脂(D)を添加して混練することにより得られることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
  2. (メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)が、一般式(A1−A2)で表されるブロック共重合体、一般式A2−(A1−A2)で表されるブロック共重合体および一般式(A1−A2)−A1で表されるブロック共重合体からなる群(nは1以上の整数)より選択される少なくとも1種である請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. (メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)が、(メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)0.1〜60重量%、およびアクリル系重合体ブロック(A2)99.9〜40重量%からなる請求項1または2記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. (メタ)アクリル系重合体ブロック(A1)が、酸無水物基(a1)を有する請求項1から3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  5. アクリル系重合体ブロック(A2)が、酸無水物基(a1)を有する請求項1から3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  6. (メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)が、原子移動ラジカル重合による制御重合で得られたものである請求項1から5のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  7. 熱可塑性樹脂(C)および熱可塑性樹脂(D)が、ポリアミド系樹脂および/またはポリエステル系樹脂である請求項1から6のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  8. 熱可塑性樹脂(C)および熱可塑性樹脂(D)が、ポリアミド系樹脂である請求項7記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  9. (A)(メタ)アクリル系ブロック共重合体、(B)1分子中に2個以上のアミノ基を含む化合物、および(C)熱可塑性樹脂からなる熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、
    (A1)(メタ)アクリル系重合体ブロックおよび(A2)アクリル系重合体ブロックからなり、少なくとも一方の重合体ブロックの主鎖中に、
    一般式(1):
    Figure 2005264068
    (式中、Rは水素またはメチル基で、2つのRは互いに同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数、mは0または1の整数)で表わされる酸無水物基(a1)を少なくとも1つ有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)を、化合物(B)により、熱可塑性樹脂(C)中で動的に架橋した後に、さらに熱可塑性樹脂(D)を添加して混練することにより得られることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。

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