JP2005260218A - SiC単結晶基材及びその製造方法、半導体膜形成基材 - Google Patents
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Abstract
【課題】 例えばSiC、GaNなどの半導体膜を気相から合成してエピタキシャル成長させていくときに、欠陥や異常成長が生じるのを抑制する。
【解決手段】 表面に、半導体膜が気相から合成されてエピタキシャル成長させられていくSiC単結晶基材において、表面に存在している200nm以下の波長を有する凹凸のP−Vを2nm以下に設定する。
【選択図】 なし
【解決手段】 表面に、半導体膜が気相から合成されてエピタキシャル成長させられていくSiC単結晶基材において、表面に存在している200nm以下の波長を有する凹凸のP−Vを2nm以下に設定する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、SiC単結晶基材に関し、とくに、SiCやGaNなどの半導体膜を気相から合成してエピタキシャル成長させていくときに用いられるSiC単結晶基材に関するものである。
SiC(炭化珪素)は、Si(シリコン)に比べて耐熱性、熱伝導率に優れ、バンドギャップが広く(Siの約3倍)、高温動作が可能で高い絶縁破壊耐性を有することから大電流化が可能なパワー半導体素子としての応用が期待されている。
また、光デバイス向けに開発が進められているGaN(窒化ガリウム)では、これをエピタキシャル成長させるための基材にサファイアが多く用いられるが、SiCはサファイアに比べGaNとの格子のミスフィットが小さく、GaN膜の下地として適することからGaN膜形成用基材としても注目を集めている。
また、光デバイス向けに開発が進められているGaN(窒化ガリウム)では、これをエピタキシャル成長させるための基材にサファイアが多く用いられるが、SiCはサファイアに比べGaNとの格子のミスフィットが小さく、GaN膜の下地として適することからGaN膜形成用基材としても注目を集めている。
ところで、パワー素子等に応用するための結晶性の良好なSiC、GaNエピタキシャル膜を成長させるためのSiC単結晶基材には、当然のように、無欠陥で、原子レベルで平坦な表面が要求されるので、通常ダイヤモンド砥粒を用いた機械研磨を施すことにより、SiC単結晶基材の表面を加工して平坦化するようにしている。
また、SiCの研磨方法として、上記ダイヤモンド砥粒を用いた機械研磨以外に、酸化クロム砥粒を用いた乾式研磨(いわゆるメカノケミカル研磨)が知られており、特許文献1には、このメカノケミカル研磨を用い、研磨定盤にマイクロビッカース硬さ(Hv)1000〜2000を使用することにより平坦度が向上することが開示されている。これは、表面を所望の平坦度に加工されたビッカース硬さ1000〜2000の研磨定盤を用いることで、砥粒と被加工面との接触が安定化し、固相反応で生成した反応層を、SiCウエハ表面の平坦度を維持しつつ除去するものである。
さらに、SiCの研磨方法として特許文献2には、SiO2粒子、いわゆるコロイダルシリカを用いた研磨方法が開示されている。これは、X線マスク用ブランクスのSiC膜の研磨に関するものであって、不織研磨布に粒径60nm〜80nmのコロイダルシリカを分散させ、SiC膜をこの研磨布にあてがって180〜200g/cm2の荷重をかけて研磨することで、SiC膜表面に存在する傷の幅を0.25μm以下に抑えるようにしたものである。
特開平7−80770号公報
特開平10−275758号公報
しかしながら、SiC単結晶基材の表面をダイヤモンド砥粒で研磨する加工方法は、SiCより高硬度のダイヤモンド粒子で機械的に表面を削る、つまり所定寸法以下の傷を導入していく加工方法であり、砥粒を段階的に微粒化することで傷の寸法を微細にしてゆき、表面粗さを向上させていくものであることから、表面の平坦化は進むものの砥粒により導入される加工傷(スクラッチ)及び砥粒が機械的に作用することで生じた表面変質層を回避することができない。
また、SiC単結晶基材の表面を酸化クロム砥粒で研磨する場合については、スクラッチがなく、平滑な表面が得られると特許文献1に記載されているが、加工時の面圧が900kgf/cm2と極めて高圧のため、砥粒接触部分で局所的に摩擦による高温が生じ、加工変質層の生成、加工時のウエハ破損等のおそれがある。
さらに、特許文献2に開示されたSiCの研磨技術はその研磨対象をX線用マスクブランクスとしたものであり、このようなマスク用ブランクスでは、パターンのL/S(配線幅と配線間のピッチ)にもよるが、膜強度を損なわず、欠陥検査で検出されない(換言すれば、マスク製作時及び露光時にパターンに悪影響を及ぼさない)加工傷ならば、膜表面に残留していても事実上問題はない。そのため、特許文献2に開示された研磨技術は、0.25μm以上の幅の傷を除去することを目的としており、さらに微細な加工傷を対象としていない。
一方、半導体や光学向け等、結晶性の良好な膜が要求される用途における基材では、基材上に存在する加工傷は、寸法の大小に拘らず成長時の欠陥生成要因となるため、極力排除されなければならず、理想的としてはスクラッチフリーの表面が求められる。しかしながら、上記の研磨方法では、コロイダルシリカの乾燥、凝集しやすい性質によって、研磨時、研磨布が局部的に乾燥することで発生したシリカ研磨粒子の凝集体が研磨布と基材との界面に侵入し、研磨面に作用するため、0.25μm以上の幅の傷は除去できるが、スクラッチフリーの研磨面を得ることはできない。
一方、半導体や光学向け等、結晶性の良好な膜が要求される用途における基材では、基材上に存在する加工傷は、寸法の大小に拘らず成長時の欠陥生成要因となるため、極力排除されなければならず、理想的としてはスクラッチフリーの表面が求められる。しかしながら、上記の研磨方法では、コロイダルシリカの乾燥、凝集しやすい性質によって、研磨時、研磨布が局部的に乾燥することで発生したシリカ研磨粒子の凝集体が研磨布と基材との界面に侵入し、研磨面に作用するため、0.25μm以上の幅の傷は除去できるが、スクラッチフリーの研磨面を得ることはできない。
以上のように、SiC単結晶基材の表面に対するダイヤモンド砥粒の機械的作用による研磨はもちろんだが、化学的な作用を併用した研磨方法においても、酸化クロム砥粒による研磨では、研磨後も加工面にスクラッチが残留する、砥粒との局所的な接触により加工損傷層を生じる恐れがあるといった問題がある。また、コロイダルシリカによる研磨でも0.25μm以下の幅の加工傷が残ることから、いずれの研磨方法でも欠陥や異常成長を十分に抑えることができず、結晶性のよい、SiC、GaNエピタキシャル膜を得るための大きな障害となっていた。
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく種々検討した結果、SiC、GaNなどの半導体膜のエピタキシャル成長に際し、欠陥や異常成長を生じさせる要因が、SiC単結晶基材の表面に存在している様々な波長を有する凹凸のうち、比較的長い波長を有する凹凸にあるのではなく、200nm以下の短い波長を有する凹凸(傷を含む)にあることに着目した。
すなわち、半導体膜のエピタキシャル成長の阻害要因となる200nm以下の短い波長の凹凸を、変質層を生じさせることなく除去する(あるいは小さくする)ことにより、微視的にほぼ平坦面と見なすことが可能となり、エピタキシャル成長を阻害する要因を減らすことができ、良質なSiC、GaN膜等が得られることを見出したのである。
すなわち、半導体膜のエピタキシャル成長の阻害要因となる200nm以下の短い波長の凹凸を、変質層を生じさせることなく除去する(あるいは小さくする)ことにより、微視的にほぼ平坦面と見なすことが可能となり、エピタキシャル成長を阻害する要因を減らすことができ、良質なSiC、GaN膜等が得られることを見出したのである。
そして、SiC単結晶基材の表面に存在している200nm以下の短い波長を有する凹凸をなくすための方法として、本発明者らが採用したのは、SiCとほぼ同硬度を有するSiO2スラリーを研磨液として用いた湿式研磨である。
コロイダルシリカなどのSiO2スラリーに含まれる粒子は、SiCとほぼ同硬度であるとともに球形であるため、ダイヤモンド砥粒を用いた機械研磨では不可避であったスクラッチを生じさせることなく、SiC単結晶基材の平坦化が可能である。
しかも、この研磨方法では、酸化クロム砥粒によるメカノケミカル研磨に比べ、はるかに低い面圧でSiC基材の平坦化が可能であり、1/1000以下の低負荷でSiCの平坦化が可能であるのに加えて、湿式研磨のためスラリー中の水分が放熱媒体として作用することが期待でき、研磨中の熱損傷を抑制することができる。
さらに、SiC単結晶基材の研磨面を常にSiO2スラリー中に浸漬した状態とすることにより、研磨クロスもスラリーに浸漬された状態となるため、スラリー固形分の乾燥、凝集がなくなり、通常のコロイダルシリカを用いた研磨では研磨面界面にシリカ粒子の凝集体が侵入することで発生していたスクラッチを回避して、スクラッチフリーと見なしてよい研磨加工面を得ることができる。
しかも、この研磨方法では、酸化クロム砥粒によるメカノケミカル研磨に比べ、はるかに低い面圧でSiC基材の平坦化が可能であり、1/1000以下の低負荷でSiCの平坦化が可能であるのに加えて、湿式研磨のためスラリー中の水分が放熱媒体として作用することが期待でき、研磨中の熱損傷を抑制することができる。
さらに、SiC単結晶基材の研磨面を常にSiO2スラリー中に浸漬した状態とすることにより、研磨クロスもスラリーに浸漬された状態となるため、スラリー固形分の乾燥、凝集がなくなり、通常のコロイダルシリカを用いた研磨では研磨面界面にシリカ粒子の凝集体が侵入することで発生していたスクラッチを回避して、スクラッチフリーと見なしてよい研磨加工面を得ることができる。
このようにしてなされた本発明のSiC単結晶基材は、表面に存在している200nm以下の波長を有する凹凸のP−Vが2nm以下に設定されていることを特徴とするものであり、とくに、前記表面に、SiCやGaNなどの半導体膜が気相から合成されてエピタキシャル成長させられていくことを特徴とするものである。
また、本発明のSiC単結晶基材の製造方法は、SiO2スラリーを研磨液として用い、SiC単結晶基材の表面が前記SiO2スラリーに浸漬された状態で前記SiC単結晶基材の表面に対して湿式研磨を施すことにより、前記表面に存在している200nm以下の波長を有する前記凹凸のP−Vを2nm以下に設定することを特徴とするものである。
また、本発明の半導体膜形成基材は、本発明のSiC単結晶基材の製造方法によって製造されたSiC単結晶基材の表面に、SiCやGaNなどの半導体膜が気相から合成されてエピタキシャル成長させられていることを特徴とするものである。
また、本発明のSiC単結晶基材の製造方法は、SiO2スラリーを研磨液として用い、SiC単結晶基材の表面が前記SiO2スラリーに浸漬された状態で前記SiC単結晶基材の表面に対して湿式研磨を施すことにより、前記表面に存在している200nm以下の波長を有する前記凹凸のP−Vを2nm以下に設定することを特徴とするものである。
また、本発明の半導体膜形成基材は、本発明のSiC単結晶基材の製造方法によって製造されたSiC単結晶基材の表面に、SiCやGaNなどの半導体膜が気相から合成されてエピタキシャル成長させられていることを特徴とするものである。
本発明において、小さくすべき凹凸を、200nm以下の波長を有するものに限定した理由は、これよりも長い波長を有する凹凸を小さくしたとしても、SiC、GaNなどの半導体膜をエピタキシャル成長させるときの主たる阻害要因をなくしたことにはならず、高品質のSiC、GaNなどの半導体膜を製造することができないおそれがあるからである。
ここで、凹凸とは、SiC単結晶基材の表面に存在している波状の溝山のことを示し、その波長とは、対象とする表面に存在している凹凸において、任意の凹部分底部(あるいは凸部分頂部)から、隣接する凹部分底部(あるいは凸部分頂部)までの平面上の距離のことを示しているのであり、波長が小さくなるほど、上記の凹凸は細かい波状の溝山となる。
なお、小さくすべき凹凸の対象としては、100nm以下の波長を有する凹凸であることがより好ましい。逆に、波長の下限については、波長の短い凹凸ほどSiC、GaNなどの半導体膜のエピタキシャル成長において、欠陥や転位の生成要因となることから、ないといっても差し支えない。
ここで、凹凸とは、SiC単結晶基材の表面に存在している波状の溝山のことを示し、その波長とは、対象とする表面に存在している凹凸において、任意の凹部分底部(あるいは凸部分頂部)から、隣接する凹部分底部(あるいは凸部分頂部)までの平面上の距離のことを示しているのであり、波長が小さくなるほど、上記の凹凸は細かい波状の溝山となる。
なお、小さくすべき凹凸の対象としては、100nm以下の波長を有する凹凸であることがより好ましい。逆に、波長の下限については、波長の短い凹凸ほどSiC、GaNなどの半導体膜のエピタキシャル成長において、欠陥や転位の生成要因となることから、ないといっても差し支えない。
また、本発明において、短い波長を有する凹凸のP−Vを2nm以下に限定した理由は、これよりもP−Vが大きくなってしまうと、短い波長を有する凹凸を十分に小さくできているとは言えなくなり、SiC、GaNなどの半導体膜をエピタキシャル成長させるときの主たる阻害要因をなくすことができなくなって、高品質のSiC、GaNなどの半導体膜を製造することができないおそれがあるからである。
ここで、凹凸のP−V(Peak To Valley)とは、対象とする表面の任意の10μm×10μm面内を測定した表面粗さデータをフーリエ変換して得られる、各波長の凹凸の高さの差の最大値を示している、つまり、対象とする表面に存在している各波長の凹凸において、最も高さが異なっている凹部分底部と隣接する凸部分頂部とについての、これらの高さの差のことを示しているのであり、P−Vが小さくなるほど、上記の凹凸は小さくなっていく。
なお、P−Vの下限としては、現時点での技術的な限界を考慮すると、0.5nm以上となる。
ここで、凹凸のP−V(Peak To Valley)とは、対象とする表面の任意の10μm×10μm面内を測定した表面粗さデータをフーリエ変換して得られる、各波長の凹凸の高さの差の最大値を示している、つまり、対象とする表面に存在している各波長の凹凸において、最も高さが異なっている凹部分底部と隣接する凸部分頂部とについての、これらの高さの差のことを示しているのであり、P−Vが小さくなるほど、上記の凹凸は小さくなっていく。
なお、P−Vの下限としては、現時点での技術的な限界を考慮すると、0.5nm以上となる。
さらに、本発明においては、200nm以下の短い波長を有する凹凸のP−Vを2nm以下に設定するだけでも十分な効果を発揮することができるのであるが、さらなる効果の増大を期待するのであれば、200nmより大きい比較的長い波長を有する凹凸についても、そのP−Vを小さく、例えば10nm以下に設定することがより好ましい。
加えて、湿式研磨を施した後の表面粗さについては、10μm×10μm面内で0.5nmRms以下(ただし、マイクロパイプと呼ばれる中空パイプ状の欠陥の影響を除く)に設定されていることが好ましい。
加えて、湿式研磨を施した後の表面粗さについては、10μm×10μm面内で0.5nmRms以下(ただし、マイクロパイプと呼ばれる中空パイプ状の欠陥の影響を除く)に設定されていることが好ましい。
なお、本発明は、200nm以下の波長を有する凹凸の全てについて、そのP−Vが2nm以下に設定されていることが厳密に必要となるのではなく、例えば、200nm以下の波長を有する凹凸の80%以上について、そのP−Vが2nm以下になっていれば、本発明の効果を十分に期待することができる。
本発明によれば、SiC単結晶基材の表面に存在している200nm以下の波長を有する凹凸のP−Vが2nm以下に設定されていることから、例えばその表面にSiC、GaNをエピタキシャル成長させていくときの阻害要因を減らすことができ、欠陥や異常成長が生じるのを抑制して、高品質のSiC、GaNエピタキシャル膜を得ることができる。
以下、本発明のSiC単結晶基材及びその製造方法、半導体膜形成基材について、実施の形態により具体的に説明する。
まず、例えばCVD法(昇華法)によって製造された4H−SiC単結晶基材(例えば、(0001)面、8°オフカット)を用意する。
次に、このSiC単結晶基材の表面に対して、ダイヤモンド砥粒を用いた機械研磨を施した。この状態では、SiC単結晶基材の表面は、表面粗さ3nmRms程度となり、この表面に存在している凹凸のうち、200nm以下の波長を有する凹凸のP−Vは、例えば30nmとなっている。
まず、例えばCVD法(昇華法)によって製造された4H−SiC単結晶基材(例えば、(0001)面、8°オフカット)を用意する。
次に、このSiC単結晶基材の表面に対して、ダイヤモンド砥粒を用いた機械研磨を施した。この状態では、SiC単結晶基材の表面は、表面粗さ3nmRms程度となり、この表面に存在している凹凸のうち、200nm以下の波長を有する凹凸のP−Vは、例えば30nmとなっている。
そして、ダイヤモンド砥粒を用いた機械研磨が施された後のSiC単結晶基材の表面に対して、SiO2スラリー(水系スラリー、平均粒径100nm以下、固形分濃度:10〜40%、PH:7〜10)を研磨液として用いて研磨パッド(Rodel社Suba800)で湿式研磨を施した。
ここで、研磨時のSiC単結晶基材は、例えば容器中でSiO2スラリーに浸漬された状態を維持できるようにし、研磨中にスラリー外に露出することがないように基材加工面とスラリーの液面高さとの差を10mmに設定した(研磨方法A)。比較として、ダイヤモンド砥粒による研磨のみを施したSiC単結晶基材(研磨方法B)と、研磨中、スラリーに浸漬させず、パッド上にSiO2スラリーを滴下しながら研磨したSiC単結晶基材とを作製した(研磨方法C)。
ここで、研磨時のSiC単結晶基材は、例えば容器中でSiO2スラリーに浸漬された状態を維持できるようにし、研磨中にスラリー外に露出することがないように基材加工面とスラリーの液面高さとの差を10mmに設定した(研磨方法A)。比較として、ダイヤモンド砥粒による研磨のみを施したSiC単結晶基材(研磨方法B)と、研磨中、スラリーに浸漬させず、パッド上にSiO2スラリーを滴下しながら研磨したSiC単結晶基材とを作製した(研磨方法C)。
なお、湿式研磨時の面圧は、いずれの研磨方法においても20〜300g/cm2とし、研磨時間は5〜60hrとした。ここで、湿式研磨時の面圧を20〜300g/cm2としたのは、面圧が20g/cm2よりも小さくなると、湿式研磨を施した後の表面粗さを上述した好ましい範囲である0.5nmRms以下に設定することが困難となるおそれがあり、逆に、面圧が300g/cm2よりも大きくなると、過負荷により加工中にSiC単結晶基材表面に損傷を与えるおそれがあり、また、研磨パッドの消耗が激しく、実質的に研磨加工を継続することが困難となるためである。
これにより、いずれの研磨方法でも、SiC単結晶基材の表面が、表面粗さ0.4nmRms〜1.0nmRms程度になった。
これにより、いずれの研磨方法でも、SiC単結晶基材の表面が、表面粗さ0.4nmRms〜1.0nmRms程度になった。
以下、上述のようにして製造されたSiC単結晶基材の表面に対し、CVD法によりSiCを気相から合成してエピタキシャル成長させる試験を行った。
ダイヤモンド砥粒による機械研磨とSiO2スラリーに浸漬させた状態での湿式研磨とを施すことによって得たSiC単結晶基材(試料A)、ダイヤモンド砥粒による機械研磨のみを施すことによって得たSiC単結晶基材(試料B)、及び、ダイヤモンド砥粒による機械研磨とSiO2スラリーに浸漬させない状態での湿式研磨とを施すことによって得たSiC単結晶基材(試料C)をそれぞれAFMによって観察し、その表面状態を比較した。測定には、SII社製SPI3700を使用し、測定エリアは10μm×10μmとした。
ダイヤモンド砥粒のみで研磨した試料Bでは、研磨後の表面から10μm×10μmの観察エリアにおいて多数のスクラッチが検出された。AFMの測定データをもとにこの表面に存在するスクラッチの周波数解析をしたところ、200nm以下の波長の凹凸が含まれることが分かり、各波長での凹凸の高さの差(P−V)は10nm以上となっていた。試料Cの観察では、10μm×10μmの観察エリアにおいて数個のスクラッチが検出され、周波数解析の結果、200nm以下の波長の凹凸が存在し、その凹凸の高さの差は5nm以上となっていた。これに対し、浸漬研磨を行った試料Aでは、研磨後の表面にスクラッチはなく、周波数解析からは数μmの長波長のうねりだけが検出された。このうねりの凹凸の高さの差は2nm以下であった。
この結果から、ダイヤモンド砥粒による研磨ではスクラッチの生成が不可避であること、スクラッチの発生は研磨時のスラリーの状態、具体的には基材がスラリーに浸漬しているか否かに大きく左右されることが分かる。また、試料Cにおけるスクラッチは、パッドの被加工領域に局部的に乾燥状態が生じ、そこで発生したスラリー固形分(SiO2)の凝集体が研磨中のSiC単結晶基材/パッド界面に侵入し、導入されたものと考えられる。
この結果から、ダイヤモンド砥粒による研磨ではスクラッチの生成が不可避であること、スクラッチの発生は研磨時のスラリーの状態、具体的には基材がスラリーに浸漬しているか否かに大きく左右されることが分かる。また、試料Cにおけるスクラッチは、パッドの被加工領域に局部的に乾燥状態が生じ、そこで発生したスラリー固形分(SiO2)の凝集体が研磨中のSiC単結晶基材/パッド界面に侵入し、導入されたものと考えられる。
そして、作製した試料A〜CのSiC単結晶基材の表面のそれぞれに、横型ホットウォール式CVD法によって、SiCを気相(ガス)から合成してエピタキシャル成長させていった。
使用した成膜装置は、石英製のチューブ内に黒鉛製のホットウォールが設置されたCVD炉であり、原料ガスはSi源にSiH4、C源にC3H8を用い、キャリアガスにはH2を用いた。H2流量は、30slmとし、ガス流れは横方向である。成長温度1550°C、チャンバ圧力250mbarとし、この条件でいずれの基材にも10μmのSiCエピタキシャル膜を合成した。
使用した成膜装置は、石英製のチューブ内に黒鉛製のホットウォールが設置されたCVD炉であり、原料ガスはSi源にSiH4、C源にC3H8を用い、キャリアガスにはH2を用いた。H2流量は、30slmとし、ガス流れは横方向である。成長温度1550°C、チャンバ圧力250mbarとし、この条件でいずれの基材にも10μmのSiCエピタキシャル膜を合成した。
エピタキシャル成長させられたSiCエピタキシャル膜の膜表面を光学顕微鏡で観察した。
ダイヤモンド砥粒による研磨だけで作製した試料Bで得られた膜では、エピタキシャル成長後のSiC膜表面に基材のスクラッチに起因するピットが基材のスクラッチに沿って多数並んでいるのが観察された。また、試料Cを基材としたエピタキシャル膜の表面でも同様の欠陥組織が観察された。しかし、試料Aを基材としてエピタキシャル成長させたSiC膜表面では、このスクラッチに起因する特徴的な欠陥は検出されなかった。
この結果から、SiO2スラリーによる湿式研磨及びSiO2スラリーに基材を浸漬した状態での研磨はSiCのエピタキシャル成長において欠陥生成の抑制効果があることが分かる。これは、スラリー浸漬研磨により、短波長の凹凸がなく、数μmの長い波長の凹凸(うねり)を含んだ、ほぼスクラッチフリーとみなせる表面が得られたことによると考えられる。
ダイヤモンド砥粒による研磨だけで作製した試料Bで得られた膜では、エピタキシャル成長後のSiC膜表面に基材のスクラッチに起因するピットが基材のスクラッチに沿って多数並んでいるのが観察された。また、試料Cを基材としたエピタキシャル膜の表面でも同様の欠陥組織が観察された。しかし、試料Aを基材としてエピタキシャル成長させたSiC膜表面では、このスクラッチに起因する特徴的な欠陥は検出されなかった。
この結果から、SiO2スラリーによる湿式研磨及びSiO2スラリーに基材を浸漬した状態での研磨はSiCのエピタキシャル成長において欠陥生成の抑制効果があることが分かる。これは、スラリー浸漬研磨により、短波長の凹凸がなく、数μmの長い波長の凹凸(うねり)を含んだ、ほぼスクラッチフリーとみなせる表面が得られたことによると考えられる。
なお、本発明のSiC単結晶基材は、とくにSiC、GaNをエピタキシャル成長させるのに用いられるSiC単結晶基材として説明されているが、これに限定されることはなく、例えば、欠陥の発生を極力抑えることを要求されるSiC材料に適用することも可能である。
Claims (5)
- 表面に存在している200nm以下の波長を有する凹凸のP−Vが2nm以下に設定されていることを特徴とするSiC単結晶基材。
- 請求項1に記載のSiC単結晶基材において、
前記200nm以下の波長を有する凹凸のうち、80%以上の凹凸のP−Vが2nm以下に設定されていることを特徴とするSiC単結晶基材。 - 請求項1または請求項2に記載のSiC単結晶基材において、
前記表面に、半導体膜が気相から合成されてエピタキシャル成長させられていくことを特徴とするSiC単結晶基材。 - 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のSiC単結晶基材の製造方法であって、
SiO2スラリーを研磨液として用い、SiC単結晶基材の表面が前記SiO2スラリーに浸漬された状態で前記SiC単結晶基材の表面に対して湿式研磨を施すことにより、
前記表面に存在している200nm以下の波長を有する前記凹凸のP−Vを2nm以下に設定することを特徴とするSiC単結晶基材の製造方法。 - 請求項4に記載のSiC単結晶基材の製造方法によって製造されたSiC単結晶基材の表面に、半導体膜が気相から合成されてエピタキシャル成長させられていることを特徴とする半導体膜形成基材。
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2005
- 2005-02-14 JP JP2005035789A patent/JP2005260218A/ja not_active Withdrawn
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