JP2005258406A - 光素子及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 2つ領域間で屈折率差を生み出す新たな手段を提供する。
【解決手段】 第1の多孔質領域と第2の多孔質領域間に非多孔質領域を備え、且つ、前記非多孔質領域の屈折率が前記第1の多孔質領域より高いことを特徴とする光素子。
【選択図】 図20

Description

本発明は、可視光、テラヘルツ波、マイクロ波、X線などを含む電磁波に適用され得る光素子とその製造方法に関する。また、本発明は、光通信および光を用いた情報処理装置に関連して使用される光素子およびその製造方法に関する。
近年、フォトニック結晶(PC)というジャンルの光素子が注目されつつある。
これは、例えば、光学材料周期構造を構成することにより、屈折率の違いで生じる周期的な屈折率分布を作り、この特定の屈折率分布の中での光の振舞いを有効活用する技術と、発光材料などが特定の屈折率分布の中に存在した場合に、発光状態が制御される現象を有効活用するという技術が中心となっている(参照:E.Yablonovitch:「Phys.Rev.Lett.」Vol.58、p.2059、1987年)。そして、これらの技術を用いた光素子への応用可能性が議論されている。
この光素子技術に関連して、従来、1次元の周期構造を半導体レーザーに有効活用した所謂DFB(distributed feedback)レーザーなどが既に実用化されており、これは1次元フォトニック結晶を応用した光素子と呼ぶことができる。
また、所謂、面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)というレーザ素子についても、近年目覚しい発展があるが、図18に示すように、この素子は、発光方向即ち基板面に垂直な方向への光閉じ込めは、エピタキシャル成長によって形成された多孔質化合物半導体の2つの多層膜ミラー1801,1802によって行われており、そして、面に水平方向への光閉じ込めは、円柱状の半導体全体が、光ファイバのコアのように、周りの物質(空気)よりも高い屈折率であるために、半導体と空気の境界での全反射による閉じ込め原理で閉じ込められている。
多層膜ミラーについての作製方法は、一般的には蒸着やスパッタリングなどを用いる方法が広く知られているが、面発光レーザのように高品質かつ低損失そして活性層(発光物質層)との整合性のよいものが求められる場合には、結晶が多層に渡りモノリシック、あるいはモノリシックに近く構成可能な、エピタキシャル成長が必然的に用いられている。
一方、このような多層膜ミラーに関して、エピタキシャル成長とは別のモノリシックな作製方法も、知られている。例えば、Lehman Reece et.al.Applied Physics Letters,Vol.81(2002),pp.4895に開示されている技術であり、シリコン基板をHF溶液中で陽極化成し、その際に印加する電界の強度を時間に対して周期的に変調することで、2つの異なる空孔率を持つ層を交互に形成している。陽極化成によって多孔質化されたシリコンは、もともとの基板が単結晶であり、多孔質化されてもその結晶性は残っている。即ちモノリシックな品質を保っている。また,開示されているように低温で陽極化成を行うことにより、層と層の間の界面の構造をより乱れの少ないものにすることができ、従って、光学品質の多層膜が形成可能であることが示されている。
また、現在、「フォトニック結晶」として最も多く研究事例が発表されつつあるものは2次元の周期構造をスラブ状の半導体等に加工形成した2次元フォトニック結晶であり、特に、円柱孔の2次元構造を設けた2次元フォトニック結晶を光通信部品に応用する基礎検討などの試みが盛んに行われている。
そして、このような2次元フォトニック結晶では、光を閉じ込めて制御する上で、周期的でない一方向(通常は厚み方向)についての光制御の性能が、周期的な他の2方向の光制御の性能に比べて低いという場合もあり、これに対して、3次元(3D)フォトニック結晶と呼ばれる、3方向全てについて周期構造を構成する試みも、いくつか行われている。
現在までに開発されてきた3次元フォトニック結晶の例としては、例えば、井桁型或いはウッドパイル型と呼ばれる積層的な作製方法によって作製される素子がある(参照:野田:「フォトニック結晶技術とその応用」、p.128、2002年、CMC出版)。また、他の例には、例えば、マイクロメカニクス的な作製方法によって作製される素子がある(参照:平山他:「フォトニック結晶技術とその応用」、p.157、2002年、CMC出版)。さらには、その他の例として、例えば、自己クローニングと呼ばれる薄膜積層成長方法により作製される素子がある(特許第3325825号公報、あるいは佐藤:「フォトニック結晶技術とその応用」、p.229、2002年、CMC出版)。
特許第3325825号公報
本発明は、2つの領域における屈折率差を生み出す為の新たな手段を示すものである。
本発明においては、2つの領域間の屈折率差として、多孔質領域と非多孔質領域間の屈折率差を利用する。
具体的には、第1の本発明に係る光素子は、
第1の多孔質領域と第2の多孔質領域間に非多孔質領域を備え、且つ、前記非多孔質領域の屈折率が前記第1の多孔質領域より高いことを特徴とする。
また、本発明に係る光素子は、
第1の層が前記第1の多孔質領域を含み構成され、第2の層が前記第2の多孔質領域を含み構成され、第3の層が前記非多孔質領域を含み且つ前記第1の層及び第2の層間に位置するように構成されており、前記第3の層は、面内方向に前記非多孔質領域とは屈折率の異なる領域を有するようにすることもできる。
なお、前記第3の層に含まれ、且つ前記非多孔質領域とは屈折率の異なる領域は、多孔質構造であってもよい。
また、
前記非多孔質領域が光導波路として機能させ、前記第2の層と第3の層間に多孔質構造のスペーサ層を設けることもできる。
ここで、前記スペーサ層は、例えば、その面内方向に、屈折率の異なる複数の領域を含み構成することができる。
また、上記記載の光素子と、発光部を用いて、例えば、情報処理装置を提供することもできる。
また、上記課題を解決する本発明は、第1に、光波長より小さい孔径を有する多孔質層と、該多孔質層より屈折率の高い結晶層とが積層され、前記屈折率の高い結晶層が複数層に渡り単結晶状であり、かつ、前記高屈折率の結晶層を挟む2つの多孔質層が空孔によって連結していないことを特徴とするモノリシック光素子である。
また本発明は、第2に、結晶層の表面を多孔質化するステップと、多孔質表面から結晶層をエピタキシャル成長させるステップとを反復し、多孔質層と結晶層とを積層することを特徴とするモノリシック光素子の製造方法である。
また、上記した本発明の光素子の作製方法は、例えば、次の様な光素子の作製方法に適用され得る。
前記の積層構造中の所定の層にレーザー媒質を導入して構成することでレーザーを作製できる(後述の実施例5参照)。この積層構造中の所定の層において、所定の面内位置に非周期性パターンを含み、当該非周期性パターン位置とその近傍にレーザー媒質を導入することもできる。レーザ媒質を導入してレーザを構成することと同様に、非線形光学媒質を導入して、高効率な光スイッチを構成することも可能である。
また、本発明は、多孔質領域間に非多孔質領域を挟むことにより光導波路を提供することができる。
また本発明は、陽極化成による多孔質化と多孔質パターニングおよびエピタキシャル成長を繰り返し用いることにより、細線導波路やマイクロリング共振器の立体交差を高屈折率差を持つコアとクラッドで実現することができる。
また、本発明に係るモノリシック導波路光素子は、
基板上に、光波長より小さい孔径を有する多孔質層と、該多孔質層より屈折率の高い結晶層とが合わせて3層以上積層されている光素子において、
光を伝搬するための光導波路を備え、導波路の異なる方向への伝搬において光の伝搬路を選択的に結合する導波路結合部位を具備する導波路結合光素子であって、
当該導波路のコアが前記屈折率の高い結晶層によって構成され、かつ、前記導波路のクラッドが多孔質物質で構成されており,
前記屈折率の高い結晶層が複数層に渡り単結晶状である
ことを特徴とする。
ここで、前記導波路結合部位とは、たとえば共振器である。
また、前記導波路結合は、例えば前記導波路と前記共振器の間に配置されたスペーサ層をはさむ構成である。
前記スペーサ層が多孔質物質で形成され、該多孔質物質の空孔率を制御することもできる。
また、本発明に係る光素子の製造方法は、基板上に光波長より小さい孔径を有する多孔質層を形成する工程、該多孔質層の上に該多孔質層より屈折率の大きい結晶層をエピタキシャル成長させて形成する工程、該エピタキシャル成長によって成長された結晶層の表面の一部または全部を多孔質化する工程を有することを特徴とする。
本発明における「単結晶状」という言葉の意味する性質について以下、説明する。
本発明における単結晶状とは「現実的な単結晶」であるとも言える、即ち、現実的には不可避な欠陥、即ち結晶性の乱れ、結晶方位の狂いなどが局所的には混じっていても、結晶成長方法やその条件が単結晶を意図して制御された作製方法によって作製されたものであれば、単結晶状の結晶と呼ぶことができるとする。
また、多孔質結晶であっても、多孔質の孔以外の部分が結晶性を保っていれば、これは単結晶状であると言え、例えば、単結晶を陽極化成によって多孔質化したものは単結晶状であると言えるし、その表面から連続的に非多孔質結晶をエピタキシャル成長させた場合には、多孔質層と非多孔質層を合わせて(連続的に)単結晶であると言える。
また、本発明における「モノリシック」については、複数の屈折率分布を持つ光素子構造体が全域で単結晶状である場合はもちろんのこと、さらに、単結晶状である構造体の一部が酸化によってアモルファス化されている場合などの構造体についてもこれをモノリシックという。
そのような場合に、当該構造体が単結晶状であるかどうかについて述べると、アモルファス化された部分以外を除いた結晶部分の全域は、多少の全体的な並進ずれや角度ずれを伴ったとしても、もとの結晶性や方位を失うわけではなく、この場合には単結晶状であり続けるといえる。なお、アモルファス化された部分は結晶ではないので、当然、単結晶状ではない。
上記についてさらに例示すれば、例えば、シリコン結晶層と多孔質シリコン結晶層で構成されたモノリシックでかつ全体が単結晶状の多層膜の多孔質シリコン部分を熱酸化してアモルファス化(多孔質SiO化)した場合に、シリコン結晶が多層膜の異なる層間でアモルファス層を介して分離されてしまった場合でも、これらはもともと単結晶状であるため、シリコン結晶層については多少の全体的な並進や角度ずれを伴ったとしても、多層膜の全域で単結晶状であると言える。
一方、モノリシックでない例について言及すれば、例えば、単結晶状の薄膜や多層膜を別々に形成した後、これらをウエハ接合などによって貼り合わせて積層した場合には、これはモノリシックとは呼ばない。また、このような場合、接合面をまたいだ結晶領域については、当然、単結晶状ではない。
上述したように本発明によれば、2つの領域における屈折率差を生み出す為の新たな手段の提供が可能となる。
(第1の実施形態)
本発明に係る光素子について、図20を用いて説明する。
図20において、2002は第1の多孔質領域、2003は非多孔質領域、2004は第2の多孔質領域である。
そして、非多孔質領域2003の屈折率は、第1の多孔質領域より高くなっている。
このように本発明においては、多孔質構造と非多孔質構造といった構造の違い利用して、2つの領域間に屈折率差を生みだしている。
なお、図20において、2102は、第1の多孔質領域2002を含み構成される第1の層である。2103は、非多孔質領域2003を含み構成される第3の層であり、2104は、第2の多孔質領域を含み構成される第2の層である。
第1の層2102内における領域2002の両側の領域2202と2302は、多孔質領域2002と同じ構造であってもよいし、非多孔質構造であってもよい。即ち、第1の層2102の面内方向に、多孔質構造と非多孔質構造とで構成される屈折率分布のパターンや、面内方向に周期構造を形成してもよい。
第2の層2104内における領域2004の両側の領域2204と2304は、多孔質領域2004と同じ構造であってもよいし、非多孔質構造であってもよい。即ち、第2の層2104の面内方向に、多孔質構造と非多孔質構造とで構成される屈折率分布のパターンや、面内方向に周期構造を形成してもよい。
第3の層2103内における領域2003の両側の領域2203と2303は、非多孔質領域2003と同じ構造であってもよいし、多孔質構造であってもよい。即ち、第3の層2103は、面内方向に非多孔質領域2003とは屈折率の異なる領域を有していてもよい。また、第3の層2103の面内方向に、多孔質構造と非多孔質構造とで構成される屈折率分布のパターンや、面内方向に周期構造を形成してもよい。
また、第1の層2102と第3の層2103間、あるいは第3の層2103と第2の層2104間に別な層が含まれていてもよい。
また、第3の層2103を複数層で構成することも可能である。
なお、非多孔質領域2003の屈折率を、第1の多孔質領域2002の屈折率及び第2の多孔質領域2004の屈折率よりも高くしておくことも好ましいものである。
また第1の層2102及び/又は第2の層2104の層厚を、第3の層2103の層厚より薄くしたり、あるいは逆に厚くすることもできる。
更にまた、図20においては、2つの多孔質領域2002、2004及び、1つの非多孔質領域2003の3領域を用いて説明したが、更に、多孔質領域2004の上に、非多孔質領域と多孔質領域を複数積層することもできる。
(第2の実施形態)
多孔質領域と非多孔質領域との屈折率差を利用した光導波路として、細線導波路とマイクロリング共振器が光結合するように構成した光素子について実施例7及び8において説明する。
(実施例)
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本実施例は、本発明の陽極化成とエピタキシャル成長(以下エピ成長)を反復する方法を用いたフォトニック結晶及びナノフォトニック素子の作製方法を実施して1次元フォトニック結晶(多層膜構造)を作製したものであり、特に材料として、シリコンを用いたものである。
図1を用いて本実施例の多層膜構造作製方法について説明する。
第一のステップでは、図1(1)に示すように、シリコン基板101(チョクラルスキー法などによって成長された単結晶基板)の表面に、(2)陽極化成により多孔質シリコン層102を形成する。なお、以下、本発明における陽極化成は、電解液を0度C以下、例えば約−20度C等の低温で行うことが望ましい。これは、陽極化成によって生じる多孔質の境界面の面をスムーズにし、光学的な損失、即ち散乱等を抑えるためである。また、本発明中の多孔質とは、その孔径が使用する光の波長の約100分の1以下であり、例えば、1.5μmの波長の光に対しては、10nm以下の所謂Mesoporous−Si、Microporous−Siを構成する。
図13は、ウエハ表面を陽極化成により多孔質層にするための装置構成の一例を示した模式図である。図13中、ウエハ1301は、HF溶液1302にその表面が浸かるように保持されている。保持は、Oリング1303とPt製面電極1304を介して下部支持体1305及び上部支持体1306によって行われる。上部支持体1306には、ウエハ1301へ通じるHF用液槽が構成されており、HF溶液1302で満たされている。HF溶液1302中にはPt製メッシュ電極1308が配置されている。Pt製面電極1304とPt製メッシュ電極1308は、それぞれ、陽極1307、陰極1309に接続されており、陰極1309側はHF溶液1302を通じて、陽極1307側は基板を通じて、ウエハ1301表面に所定の電界を印加し、キャリア注入を行う構成となっている。
なお、陽極化成を行うための構成は、本実施例の形態に限らず、一般的な各種手法を適宜用いることができる。
陽極化成条件
出発ウエーハ:P+(100)Si 0.01Ω−cm
溶液:HF、COH、H
化成電流:150 mA/cm
また、陽極化成の方法については、さらに、図14に示すような装置構成により、複数のウエハを一括で処理することも可能であるため、この工程は安価に行うことができる。
例えば、図14に示すような装置を用いて、複数枚のウエハ1401を一括で陽極化成することも可能である。図14において、1402はウエハ用ホルダ、1403はOリング、1404は吸引部、1405はHF溶液、1406a、1406bは白金電極、1408は陽極化成槽、1409はホルダ溝である。さらに、陽極化成を行うための構成は、本実施例の形態に限らず、一般的な各種手法を適宜用いることができる。
また、多孔質シリコン層の孔の径、密度、厚みはその陽極化成液の組成、化成電流、基板の伝導型ならびに電導率によって広範に制御が可能である。又、電極にはフッ酸耐性が極めて高い白金あるいは白金を表面に被覆した金属が使用される。複数枚を一括に陽極化成して多孔質層を形成する場合には、図14に示したようにウェーハ両表面に接触する化成溶液自身が電極として作用し、均一な接触が可能となり作成される多孔質層の制御性が高まる。
次のステップの図1(3)においては、(2)で形成された多孔質シリコン層102の表面のシリコン面を開始面として、シリコンのエピ成長を行いエピシリコン層103を形成する。当該エピシリコン層103の厚みは多孔質層の略2倍程度であるが、後に述べるように、多層膜中のシリコン層と多孔質シリコン層の厚みの比(デューティー)に依存してその厚みは精密に制御される。
エピタキシャル成長においては、上記の方法にて形成された多孔質層では、単結晶基板の結晶方位を保存しており、その上部に孔のない均一な単結晶層をエピタキシャル成長させることが可能であることが知られている。
多孔質Si層202上にエピタキシャル成長により、エピSi層203を化学気相法(CVD)等で形成する条件について述べる。まずエピタキシャル成長は水素雰囲気で行うことが重要であり、多孔質層の表面の孔の封しを促進し、その上部に良質なエピタキシャル層を形成することができる。(米原他、応用物理2002年総合報告9月号)
エピタキシャル成長条件
気相成長
温度:1000℃
ガス:SiH /H
圧力:700Torr
次のステップの図1(4)においては、ステップ(3)で形成されたエピシリコン層103の表面を陽極化成により多孔質シリコン化する。ただし、この陽極化成は表面から所定の厚みまでで止めることとし、即ち、エピシリコン層が残るものとする。エピシリコン層と多孔質層の層厚については、目的とする光素子および光波長や光入射角分布に応じてこれを設計し、層毎に変えることができ、また、シリコン層の屈折率と、多孔質シリコン層の空孔密度の応じた屈折率を考慮して当該設計はなされるとする。例えば、代表的な層厚としては、シリコンの屈折率を3.5、多孔質シリコンの実効屈折率を2.5、使用する光波長を1.5μmとしたとき、各層の光路長、即ち屈折率に層厚を乗じた長さが波長の四分の一となる厚さとして、シリコン層が0.1μm、多孔質シリコン層が0.15μmとなる。
次のステップとして、このようにしてできたステップ(4)までの構造に対して、さらにステップ(3)と(4)を繰り返し、1サイクルでエピシリコン層と多孔質シリコン層を1層ずつ追加していけば、多層構造105が得られる(図1(5))。
この多層構造105はシリコンと多孔質シリコンの多層膜であり、従来の多孔質シリコンの空孔率を変調した多層膜に比べて、層間での屈折率差がより大きくとれるという利点があり、そのため、このような多層膜を用いた高反射率ミラーやファブリペロー共振器を作製する際に、層数を減らすことができ、素子の小サイズ化や、エピ成長などのコストの高い積層構造におけるコスト削減を果たすことが可能となる。また、この多層構造105は本発明の作製方法によれば、多孔質シリコンにおいて結晶方位などの結晶性が保たれてエピ成長シリコンにつながっているため、全体でモノリシック状になっている。このことは光素子として機能する際に、多結晶シリコンやアモルファスシリコンと異なり、粒界等の影響で光が散乱して、光学素子としての高品質化の妨げになるという問題点を解決するものである。
例えば、上記背景技術に記載の技術を用いて、多層膜ミラーをエピタキシャル成長で積層して作製する場合、基本的にエピタキシャル成長で整合する程度の組成比の違いしか許されないため、比較的高い屈折率差が層間で望まれる光素子の場合には、屈折率差を大きくし難く、したがって、必然的に層数を増やす必要がある。しかしながら、本実施例で示したように、多孔質構造と非多孔質構造という構造上の差異を利用すれば、用途にもよるが、上記背景技術ほど層数増やす必要は無くなる。
本発明の第2の実施例を、以下、図2を用いて説明する。
本実施例は、モノリシックなシリコンと多孔質SiOの多層膜構造(一次元フォトニック結晶)、および、その作製方法である。
図2を用いて本実施例の多層膜構造作製方法について説明する。第一のステップでは、図2(1)に示すように、Si基板201(チョクラルスキー法などによって成長された単結晶基板)の表面に、(2)陽極化成により多孔質シリコン層202を形成する。
次のステップの図2(4)においては、HOやOなどのガスを供給しながら加熱し、即ち、熱酸化することで、多孔質シリコン層を多孔質SiO層203に変化させる。
本発明の10nm以下の孔径を持つ多孔質シリコンにおいては、多孔質内部の熱酸化を表面に比べてより早く進行することが可能であり、表面にシリコン層が薄く残った状態で、熱酸化を停止することで、次の工程である、シリコンのエピタキシャル成長の開始点を残すことができる。場合によっては、多孔質シリコン層の内部が完全に酸化されなくてもよい。これは、本発明の多孔質構造が、光学的に光を散乱しないミクロ構造体であるため、その内部のSiOとシリコンは平均的に光学特性に影響を与えるのみであるため、目的とするSiO化による屈折率低下、即ち、エピ成長シリコン層との屈折率差向上は、この多孔質構造が完全にSiOにならずに一部シリコンが残っていても充分達成されるからである。
次のステップの図2(4)においては、(3)で形成された多孔質SiO層の表面のSiOをHF等でエッチングすることにより、前述したように、熱酸化されずに残ったシリコン層を表面に露出させた後、当該表面のシリコン面を開始面として、シリコンのエピ成長を行い、エピシリコン層204を形成する。当該エピシリコン層204の厚みは多孔質層の略2倍程度であるが、後に述べるように、多層膜中のシリコン層と多孔質シリコン層の厚みの比(デューティー)に依存してその厚みは精密に制御される。
次のステップの図2(5)においては、ステップ(4)で形成されたエピシリコン層204の表面を陽極化成により多孔質シリコン化する(205)。ただし、この陽極化成は表面から所定の厚みまでで止めることとし、即ち、エピシリコン層が残るものとする。エピシリコン層と多孔質層の層厚については、目的とする光素子および光波長や光入射角分布に応じてこれを設計し、層毎に変えることができ、また、シリコン層の屈折率と、多孔質シリコン層の空孔密度の応じた屈折率を考慮して当該設計はなされるとする。例えば、代表的な層厚としては、シリコンの屈折率を3.5、多孔質シリコンの実効屈折率を2.5、使用する光波長を1.5μmとしたとき、各層の光路長、即ち屈折率に層厚を乗じた長さが波長の四分の一となる厚さとして、シリコン層が0.1μm、多孔質シリコン層が0.15μmとなる。
次のステップの図2(6)においては、ステップ(3)と同様に、熱酸化により多孔質化されたエピシリコン層205を多孔質SiO層206へと変化させる。
次のステップとして、このようにしてできたステップ(6)までの構造に対して、さらにステップ(4)〜(6)を繰り返し、1サイクルでエピシリコン層と多孔質シリコン層を1層ずつ追加していけば、多孔質SiO層とエピ成長シリコン層の多層構造207が得られる(図2(7))。
この多層構造207はシリコンと多孔質SiOの多層膜であり、従来の多孔質シリコンの空孔率を変調した多層膜に比べて、空孔率を上げること無しに層間での屈折率差をより大きくすることが可能になるという利点があり、そのため、このような多層膜を用いた高反射率ミラーやファブリペロー共振器を作製する際に、層数を減らすことができ、素子の小サイズ化や、エピ成長などのコストの高い積層構造におけるコスト削減を果たすことが可能となる。
本発明の第3の実施例を、以下、図3を用いて説明する。
本実施例は、モノリシックなシリコンと多孔質シリコンまたは多孔質SiOの多層膜構造に面内方向のパターニングが施された3次元構造(3次元的フォトニック結晶)、および、その作製方法である。
本実施例は、本発明の方法を用いて作製された、例えば前記実施例1の方法により作製された多層膜構造(図1中の105)を出発点として用いる。図3中ステップ(1)に断面図と上面図が模式的に示されているように、多層膜構造の膜の面垂直方向に三角格子などのフォトニック結晶パターンを光リソグラフィーとICPドライエッチングによって、多層膜の複数層を貫通するように形成する。
貫通孔パターン作製のためのパターニングには、光リソグラフィーの他にも、EB(電子線)リソグラフィー、近接場光リソグラフィー、X線リソグラフィー、イオンビームリソグラフィーなど、各種の手法を適宜用いることができる。また、エッチングには、ICPのほかにもECRやその他、種々の条件に合わせて最適なエッチング手法を用いることが可能であることは言うまでもない。
このステップ(1)により、1次元的であった周期構造に面内パターンを加えることで、3次元的なフォトニック結晶が実現する。即ち、面垂直方向には、エピ成長シリコン層と多孔質シリコン層の屈折率差による周期構造、そして、面内方向には、貫通孔の空気とシリコン層または多孔質シリコン層の屈折率差による周期構造が形成されている。
この3次元周期構造の屈折率差を高めるために、さらに、図3に示す次のステップ(2)を行うことが可能である。
ステップ(2)では、ステップ(1)で形成された貫通孔を通じてH2OやO2などの酸素原子を供給するガスを流しながら、加熱することで、熱酸化を行う。熱酸化は多孔質シリコン層で多孔質の効果により、所謂、増速酸化となり、エピ成長シリコン層に比べて百倍程度早く酸化されるため、エピ成長シリコン層のほんの表面が酸化される間に多孔質層全体を酸化することが可能である。これにより、本実施例の3次元構造は、厚み方向がエピ成長シリコンと多孔質SiOとなり、厚み方向の屈折率差を上げることが可能となる。これにより、同じ効果を得るための層数を減らすことができ、素子の小サイズ化や、エピ成長などのコストの高い積層構造におけるコスト削減を果たすことが可能となる。
本発明の第4の実施例を、以下、図4を用いて説明する。
本実施例は、モノリシックなシリコンと多孔質シリコンまたは多孔質SiOの多層膜構造に層毎に異なる面内パターンが施された3次元構造(3次元フォトニック結晶)、および、その作製方法である。
図4中、先ず、シリコン基板401を用意し、ステップ(2)において、陽極化成によって面内に所定のパターンで多孔質シリコン部分を形成する。
陽極化成で多孔質シリコン層をパターニングする方法の例について、図5を用いて説明する。
まず例Aとして、シリコン基板を準備し(A1)、ステップ(A2)として、シリコン表面にレジストを塗布し、光リソグラフィの手法によってレジストをパターニングする。パターンは、陽極化成する部分を抜くように構成する。ステップ(A3)において、このレジストパターンをつけたまま、HF液中で電界を印加し、陽極化成を行うと、レジストのついているシリコン表面は、絶縁され、キャリアが注入されないこと、HFが侵入しないことから、陽極化成による多孔質化が生じない。従って、レジストのない部分にのみ多孔質化が生じ、ステップ(A4)でレジストを除去すれば、多孔質化された部分がパターニングされたシリコン基板が得られる。
次に例Bとしては、(B1)用意したシリコン基板に対して、HF中の陽極化成を行うステップ(B2)において、通常のように図13のような基板から離れた位置にメッシュ電極を配置し、基板面内方向に一様に電界を印加する方法と異なり、基板の極近傍にミクロな電極を設けて面内方向に電界が異なるような構成を用いる。即ち、電界が強い部分のみ陽極化成が進行し、多孔質化される。このような局所的な電界印加によるパターンニングに加えて、さらに光を局所的に照射して、フォトキャリアを生じさせ、当該フォトキャリアによって局所的に陽極化成が進行するようにしてもよい。
陽極化成のためのレジストパターニングには、光リソグラフィーの他にも、EB(電子線)リソグラフィー、近接場光リソグラフィー、X線リソグラフィー、イオンビームリソグラフィーなど、各種の手法を適宜用いることができる。
本実施例におけるの多孔質シリコンのパターンは、図6に示すパターンAとした。例えば、図6(A)中で、多孔質化された部分を601で示した。パターンAのサイズは、使用する光波長を1.5μmとして、層の厚みを約0.25μm、パターンの周期を約0.7μmとした。なお、このサイズは、例えば可視光を用いる場合には、これらの数値の1/2から1/4程度になるが、構造はそのまま用いることができる。
次に、図4中、ステップ(3)により、多孔質シリコンとシリコンで構成された面を開始面として、エピタキシャル成長によりシリコン層403を形成する。シリコン層の厚みは、ステップ(2)で形成した多孔質シリコン層の厚みと同じサイズ(約0.25μm)であるが、これについては、種々、目的や、空孔率、面内パターンなどと合わせて最適な厚みを選択できる。
次に、図4中、ステップ(4)により、ステップ(3)で形成したエピ成長シリコン層に陽極化成で面内にパターニングされた多孔質シリコン層を形成する。ただし、本ステップ(4)のパターニングについては、図6に示したパターンBを形成し、ステップ(2)とは異なるパターンとする。前記のパターンAと同様に多孔質化された部分を603で示した。
次に、図4中(5)で示すように、ステップ(2)から(4)を同様に繰り返すことで、面内に多孔質シリコン部分のパターンを持つ、層が多層に積層された構造が得られ、例えば、フォトニック結晶として光学的に必要な所定の層数まで積層することで、3次元フォトニック結晶構造が実現する。ただし、繰り返すときの各エピ成長シリコン層のパターンは、例えば図7に従って、A、B、C、D、A、Bというように図6A−Dのパターンが順に積層される。
通常、フォトニックバンドギャップを利用した光制止制御に必要な層数は例えば8層程度であり、例えば、中心に欠陥を構成して、光閉じ込め制御する場合などは、欠陥の両面に8層が必要であるとして、16層程度の積層構造が必要となる。
さらに、各層のパターンは独立に指定することが可能であり、2種類の屈折率周期のフォトニック結晶を混在させることなど、容易に自由度の高い構成の積層構造を実現でき、3次元的に、光素子、光システムを高機能化できる。
なお、本実施例で用いた図6の各層パターン群A−Dは、適宜、目的や材料、パターニング装置などを考慮して種々変更することが可能である。例えば、図8に示したようなA−Dの各層を図9に示す積層構成として直方体四角格子としたダイヤモンド状構造、図10のA−Cのパターンを図11に示したように積層して円柱三角格子とした周期構造など、様々な積層構造を作製することができる。さらに、パターンの孔の位置を周期的位置からずらしたり、サイズを変更したり、孔自身を局所的に無くしたりするなどして、周期的屈折率分布パターンに欠陥構造を3次元的に位置指定して作り込むことも容易にできる。
また、上記説明中では積層する近接層同士は異なるパターンを形成するとしたが、実際には各層は並進ずれのみ異なるパターンである場合も多い。また、用途と設計によっては、面内パターンを含まない層を積層してもよい。
さらに、本発明の方法では、各層の厚みを1nm〜10nmレベルまで薄くすることできるため、これを活かして、例えば、フォトニック結晶の屈折率分布の積層方向の一単位を複数のエピ成長層を使って構成し、屈折率分布の一単位内でも層厚方向の構造を変調することができる。図12にこの例を示す。ここでは、左側の部分に示す1層内のパターン構造を、パターニング変調した複数層を積層して右側の部分に示すように構成している。すなわち、例えば、球や円柱状の構造を作製する場合、図12の右側の部分のようにこれを近似的な多層構造に置き換えることが可能である。こうして、各薄膜層に所定のパターンを形成して積層することで近似形状を作製することできる。薄膜の厚みは上記のごとく1nm〜10nmのものも可能であり、例えば、直径200nmの球を多層形状で近似する場合、10nm厚の薄膜20層で精度良く近似して形成できる。
また、本実施例で構成された多孔質シリコンや多孔質SiOと、エピ成長シリコンで構成された3次元フォトニック結晶について、さらに、多孔質シリコンを前記実施例で説明した増速酸化により、多孔質SiO化することが可能であり、従って、多孔質SiOとエピ成長シリコンの3次元フォトニック結晶を作製することも可能である。(図19の(1’))
さらに、本実施例で構成された多孔質シリコンや多孔質SiOとエピ成長シリコンで構成された3次元フォトニック結晶について、さらに、多孔質シリコンまたは多孔質SiOについて、これらをエピ成長シリコンに対して選択的にエッチングすることで、空気とエピシリコンで構成される3次元フォトニック結晶を作製することも可能である。
(図19の(2))例えば多孔質層の選択エッチング条件は以下である。
エッチング条件:
溶液:HF/H
エッチング選択比:結晶層:多孔質層=1:10万
この場合、図16に示すように、エッチングをした後にさらに、水素アニールを行うこともでき、これによって、エッチング後のエピ成長シリコンの表面を原子レベルまで平滑化することができるため、光学素子としての性能が向上される。例えばアニールの条件は以下である。
アニール条件
ガス:100%H
温度:1050℃
本発明の第5の実施例(PCレーザー)を、以下、図面を用いて説明する。本実施例は、本発明の方法で作製した1次元又は3次元のフォトニック結晶を用いて、レーザーデバイスを構成する例である。
図15(a)は、面状にレーザー媒質層1503を配置したフォトニック結晶レーザーを示す模式図である。図中、下部3次元フォトニック結晶1501と上部3次元フォトニック結晶1502の間にレーザー媒質層1503が挟まれて配置されている。
このような配置を行う手順としては、2通りが可能である。即ち、1)下部フォトニック結晶から順に、前記実施例4に示した方法により積層していき、レーザー媒質層1503も順にエピタキシャル成長等により積層する手順である。或いは、2)上部と下部のフォトニック結晶を予め実施例4の方法により作製しておき、その後、レーザー媒質層1503と融合する手順である。この際、レーザー媒質層1503自身にパターニングを行い、周期構造、或いは周期構造と欠陥構造を作り込むことも容易に実現できる。
レーザー媒質層1503に関しては、不図示の電流注入用配線、または光励起用光学系が配置されており、レーザーの原理に従って、上下のフォトニック結晶1501、1502を共振器、即ち、狭帯域化素子として、レーザー発振する。レーザー発振のモードについては、上下のフォトニック結晶1501、1502が欠陥を導入していない周期構造であれば、DFBタイプの発振、即ち、所謂フォトニックバンドエッジタイプの発振モードとなり、モードの面積的拡がりは比較的大きなもの、つまり、フォトニック結晶の複数周期にまたがるものとなる。また、上下のフォトニック結晶1501、1502のレーザー媒質層1503に接する近接層において、図15(b)のように、欠陥1504を導入することもできる。この場合は、全体として、レーザー共振器が局所的なモード、つまり、フォトニック結晶の1周期程度の拡がりを持った発振モードで発光する。
レーザー媒質層1503としては、クマリン、ローダミン、DCM、Alq3等の有機色素、或いは色素を含むホスト材料で構成することができる。また、GaAs、InP、InGaN、InGaAs、InGaAlPなどの三元系、四元系混晶材料を含む化合物半導体を目的に応じて使うこともできる。そして、レーザー媒質層内を、適宜、多重量子井戸構造や量子ドット構造などの各種構造にすることもできる。
また、Erイオンをレーザ媒質とすることもでき、この場合には、Erを常温でも失活しにくくなるように、予め、Erを導入する部分を局所的に多孔質シリコン化しておいたり、あるいは、レーザ照射によりアモルファス化しておくことも可能である。
一方、励起源としては、所謂有機EL素子で広く使われているようなAlq3やTPDなどの電子、正孔輸送材料や、ITO、MgAg等の電極を介した電流注入や、N2ガスレーザー、Nd:YAG高調波、青色/紫外半導体レーザーを用いた光励起などを適宜用いることができる。本実施例では、その他に、図16に示すように、3次元フォトニック結晶1601内に、点状にレーザー媒質1602を配置し、さらには点欠陥共振器を構成してもよい。なお、この図16は、レーザー媒質1602を配置した位置における紙面内方向の断面を示した模式図である。
以上のように、本発明の陽極化成とエピ成長を反復して周期構造を作製する技術を用いた3次元フォトニック結晶レーザーが実現され、高性能で損失の少ない3次元フォトニック結晶共振器により、従来は発振が困難であった波長(例えば、半導体レーザーにおいて困難だった緑色など)や、微小モードでの発振ができる発光素子の実現が可能となる。
以上の例では3次元フォトニック結晶を用いた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図17に示すように、本発明の実施例1の1次元フォトニック結晶の多層膜(1701,1702)を用いて、活性層1703を挟み込むように接合して成る面発光レーザなど、様々な形態が可能であることは言うまでもない。
さらに、本実施例のレーザの構成は、レーザ媒質自身が非線形光学材料であることからも容易に分かるように、レーザ素子としてだけでなく、本発明のフォトニック結晶構造による光と非線形光学材料との相互作用の増強効果による高効率の光スイッチにも用いることができるのはいうまでもない。
本発明は以上に説明した実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、シーケンスの流れなどは種々に変更することが可能である。
特に、本発明は、前述したシリコン系の材料に限定されるものでなく、例えばGaAs、Ge、GaP、AlGaAs、InGaAs、InAs、GaInNAs、InGaP、InPなどのIII−V族の化合物半導体や、ZnSe、ZnS、CdSe、CdSなどのII−VI族、その他、例えばGaAsとGeなど、格子定数及び/または線膨張係数が近いエピ成長材料および基板材料との組み合わせなどで、同様に実施することができる。
また、本発明の原理はその適用範囲が広く、屈折率分布パターンがほぼ周期的なものに限られず、非周期的或いはランダムな屈折率分布パターンを有する3次元構造体の光素子の作製にも適用され得る。
以上、実施例1から5に示したように、これら実施例に拠れば以下の効果が期待できる。
第1に、陽極化成による多孔質化とエピタキシャル成長を反復するモノリシックな光素子の作製方法によって、従来よりも高品質なフォトニック結晶などのナノフォトニック素子を大面積で多数層積層された形で得ることができる。また、積層構造体全体あるいは、一部の層に、面内方向のパターニングを行うことにより、3次元的光学的周期構造や、3次元的周期構造に対する欠陥を自由に配置したりすることが可能となる。
また、上の方法によって得られる光学素子は、空孔の比率に依存して比較的屈折率の小さい多孔質層またはそれを酸化してさらに屈折率を小さくした層と、屈折率を最大限に大きくした結晶層との積層で構成されるので、層間の屈折率の差が大きく、その結果、比較的少ない層数でも所定の特性を得ることが出来る。また、層内に光導波路を設けた光素子としても、導波路内に光を閉じ込めることが容易である。さらに、多孔質層の孔が層間で連結しないので、結晶層が光学的に比較的均一で光損失の少ない素子が得られる。
以下、図21を用いて本実施例の光素子について説明する。
図21中、シリコン基板21101上にその境界で結晶性(結晶方位)を保った多孔質シリコンのクラッド層21102が積層されている。クラッド層21102の上部には互いに交差するエピ成長シリコン導波路21104、21105をその層内に含む多孔質シリコンの導波路層21103が積層されている。
次に、この上部には導波路と共振器の結合の強さを調整する多孔質シリコンのスペーサ層21106が積層され、さらに、その上部にエピ成長シリコンのマイクロリング共振器21108を層内に含む多孔質シリコンの共振器層21107が積層された立体的な素子構造となっている。
次に、本光素子の機能について説明する。本光素子は波長フィルタを導波路回路にて構成したものであり、即ち、2つの導波路21104、導波路21105における光の選択的結合が行われる素子である。この場合の選択的結合とは、即ち、波長による選択性であり、例えば、導波路21104に複数の波長の光が導入された場合に、ある波長の光のみが導波路21105へ結合し、光のエネルギーが導波路21104から導波路21105へ移動する結果、当該特定の波長の光のみが導波路21105から出力され、それ以外の波長の光は導波路21105へは結合しないため、そのまま導波路21104を伝わって出力されるものである。
この波長選択性を担っているのが、マイクロリング共振器である。マイクロリング共振器は光が周回するように導波され、そして、N周回した光とN+1周回した光との位相が合い、強めあう条件の波長の光がこの共振器と強く結合する性質を持つ(ここでNは整数である)。
実際の導波路21104、21105と共振器21108の結合条件、そして波長選択条件は、スペーサ層の厚みを含む共振器と導波路の立体配置(距離)、また、スペーサ層の屈折率、さらに、導波路や共振器の伝搬光のクラッドに染み出す光の振幅分布を含む空間的閉じ込めモードなど、種々のパラメータによって決まる。
また、このような共振器を介して導波路が結合される素子においては、共振器の損失が少なければ少ないほど、共振器の波長選択性が高まり、従って、狭帯域な波長選択フィルタを実現することが可能となること、また一方、共振器の直径を小さくすることにより、共振器の透過バンド間隔が広がり、広義の波長選択性も高まるといった特徴がある。
次にそれぞれの層について、その構造パラメータおよび物性について説明する。
まず、シリコン基板21101はチョクラルスキー法などによって成長された単結晶状のシリコンであり、例えば1.5μmの波長の光に対する屈折率は約3.5程度である。
次にクラッド層は、約1μmの厚さで形成されている。クラッド層は多孔質シリコンで構成されており、その孔径が使用する光波長よりも充分小さく、例えば、使用する光波長の約1/100程度の孔径を持つように構成され、この構造によって光を露わに非等方的散乱や露わな回折をせず、平均的な光学物性にのみ影響するように構成してある。本実施例では光波長1.5μm用に作製してあり、孔径は約2nmとした。一方、本実施例での空孔率は約80%であり、即ち体積比でシリコンと空気が約2:8になるように構成してある。
この場合に多孔質シリコン層の平均的な有効屈折率は下記の式(1)で概算され、約1.5である。
eff=nair×xair+nsi×xsi (1)
ただし、neffは有効屈折率、nairは空孔を満たす空気の屈折率、xairは空孔率、nsiはシリコンの屈折率、xsiはシリコンの体積比率であり、1−xairに等しい。そして、
eff=1.0×0.8+3.5×0.2=1.5
である。
この値は、従来用いられていたSOIウエハのBOX層(埋め込み酸化層buried oxide)のSiO2と同程度であり、コア層である導波路層のエピ成長シリコンの屈折率約3.5との差△nが約2であるため、強い閉じ込めが可能である。強い閉じ込めが可能であることは、光導波路や、共振器として使用した場合に、より小さな体積に光を局在化可能であることにつながり、光素子の微小化、高集積化をもたらす。
次に、導波路層21103はその厚みが約0.2μmで形成されており、そのうち導波路21104、21105はその幅が約0.2μmで形成されている。この導波路は1)下面を上述したクラッド層、2)側面を導波路層、3)上面を以下に記述するスペーサ層の3つの多孔質シリコン層によって、その屈折率差約△n=2で光閉じ込めされることで、それぞれ直線方向に導波するものである。そして、高い屈折率差であるために、1μm以下の細線でも低損失で光が導波する仕組みとなっている。
次に、スペーサ層21106は厚みが約0.1μmで構成されている。この厚みは上部の直線導波路21104、21105と共振器21108の結合の強さを制御するパラメータであり、光素子の所望性能に合わせて、決定される。また、多孔質シリコンの空孔率は本実施例では約80%としたが、この空孔率も上記の実効屈折率を通じて前記導波路と共振器の結合の強さを制御するパラメータであり、同様に所望性能を元にして層厚と合わせて決定される。
次に、共振器層21107は厚みが約0.2μmで構成されている。マイクロリング共振器の直径は本実施例では約2μmとした。
このような微小な共振器、および微細な導波路を実現できるのが本発明の特長であり、これにより、前述したような高い波長選択性の利点以外にも、例えば、本光素子を単位とした多数の光素子を含む回路網を構築する際に、非常に高密度な集積化が果たされることとなる。
続いて、以上述べた微小な光素子を実現する本発明の作製方法について図22を用いて説明する。まず、図22中ステップ(1)は用意したシリコン基板22101を表す。ステップ(2)として、このシリコン基板22101の表面に陽極化成により、多孔質構造のシリコン層22102を形成する。なお、以下、本発明における陽極化成は、電解液を0度C以下、例えば約−20度C等の低温で行うことが望ましい。これは、陽極化成によって生じる多孔質の境界面の面をスムーズにし、光学的な損失、即ち散乱等を抑えるためである。また、本発明中の多孔質とは、その孔径が使用する光の波長の約100分の1以下であり、例えば、1.5μmの波長の光に対しては、10nm以下の所謂Mesoporous−Si、Microporous−Siを構成する。陽極化成については、例えば、図23に示すような装置構成により、これを実施することが可能である。
図23中、シリコンウエハ(基板)23301は、HF溶液23302にそのエピSi層を浸かるように保持されている。保持は、Oリング23303とPt製面電極23304を介して下部支持体23305および、上部支持体23306によって行われる。上部支持体23306には、Siウエハ23301へ通じるHF用液槽が構成されており、HF溶液23302で満たされている。HF溶液23302中にはPt製メッシュ電極23308が配置されている。Pt製面電極23304とPt製メッシュ電極23308はそれぞれ、陽極23307、陰極23309に接続されており、陰極側はHF溶液23302を通じて、陽極側はSi基板裏面を通じて、Siに所定の電界を印加し、キャリア注入を行う構成となっている。なお、陽極化成を行うための構成は、本実施例の形態に限らず、一般的な各種手法を適宜用いることができる。
陽極化成条件
出発ウエーハ:p+(100)Si 0.01Ωcm
溶液:HF、COH、H
化成電流:150 mA/cm
また、陽極化成の方法については、さらに、図4に示すような装置構成により、複数のウエハを一括で処理することも可能であるため、この工程は安価に行うことができる。
また、多孔質シリコン層の孔の径、密度、厚みはその陽極化成液の組成、化成電流、基板の伝導型ならびに電導率によって広範に制御が可能である。又、電極にはフッ酸耐性が極めて高い白金あるいは白金を表面に被覆した金属が使用される。複数枚を一括に陽極化成して多孔質層を形成する場合には、図24に示したようにウェーハ両表面に接触する化成溶液自身が電極として作用し、均一な接触が可能となり作成される多孔質層の制御性が高まる。
以上述べたように、陽極化成により、多孔質シリコンのクラッド層が形成される。
次にステップ(3)ではクラッド層の表面のシリコン面を開始面としてエピタキシャル成長によりシリコン層22201を成長させる。エピタキシャル成長においては、上記の方法にて形成された多孔質層では、単結晶基板の結晶方位を保存しており、その上部に孔のない均一な単結晶層をエピタキシャル成長させることが可能であることが知られている。
多孔質Si層22202上にエピタキシャル成長により、エピSi層22203を化学気相法(CVD)等で形成する条件について述べる。まずエピタキシャル成長は水素雰囲気で行うことが重要であり、多孔質層の表面の孔の封しを促進し、その上部に良質なエピタキシャル層を形成することができる。(米原他、応用物理2002年総合報告9月号)
エピタキシャル成長条件
気相成長
温度:1000℃
ガス:SiH /H
圧力:700Torr
次に、ステップ(4)では、ステップ(3)形成したエピ成長シリコン膜に対して陽極化成による多孔質化を行うが、この時に、面内の一部、即ち導波路22104および22105については多孔質化せず、エピ成長シリコンのまま残すようにパターニングをする。
図25はこのような所望の位置にのみ多孔質化をする陽極化成パターニングを実現する方法の例を2つ示したものである。なお、以下の例では、一般的な、複数箇所をパターニングする場合について示すものである。
まず例Aとして、シリコン基板を準備し(A1)、まずステップ(A2)として、シリコン表面にレジストを塗布し、光リソグラフィの手法によってレジストをパターニングする。パターンは、陽極化成する部分を抜くように構成する。ステップ(A3)において、このレジストパターンをつけたまま、HF液中で電界を印加し、陽極化成を行うと、レジストのついているシリコン表面は、絶縁され、キャリアが注入されないこと、HFが侵入しないことから、陽極化成による多孔質化が生じない。従って、レジストのない部分にのみ多孔質化が生じ、ステップ(A4)でレジストを除去すれば、多孔質化された部分がパターニングされたシリコン基板が得られる。
なお陽極化成のためのレジストパターニングには、光リソグラフィーの他にも、EB(電子線)リソグラフィー、近接場光リソグラフィー、X線リソグラフィー、イオンビームリソグラフィーなど、各種の手法を適宜用いることができる。
次に例Bとしては、(B1)用意したシリコン基板に対して、HF中の陽極化成を行うステップ(B2)において、通常のように図5のような基板から離れた位置にメッシュ電極を配置し、基板面内方向に一様に電界を印加する方法と異なり、基板の極近傍に所望のパターンとほぼ同じ大きさの電極を設けて面内方向に電界が異なるような構成を用いる。即ち、電極に近く、電界が強い部分のみ陽極化成が進行し、多孔質化される。さらには、局所的な電界印加によるパターニングに加えて、光を局所的に照射して、フォトキャリアを生じさせ、当該フォトキャリアによって陽極化成の進行が加速されるようにしてもよい。
素子作製の次のステップとして、図22中、ステップ(5)により、ステップ(3)と同様にシリコンのエピタキシャル成長が行われ、続くステップ(6)の陽極化成により多孔質化され、スペーサ層22106となる。
次に、再度エピタキシャル成長により、共振器を形成するためのシリコン層が積層され、続いてステップ(4)で説明したのと同様に、今度はマイクロリング共振器部分のみを残して陽極化成により多孔質化が行われる。
以上、図2に示したステップ(1)〜(8)を行うことで、本実施例の波長選択光回路としての光素子が、モノリシックなシリコン構造体として形成される。
さらに、本実施例において多孔質シリコンに関しては、非多孔質のシリコン部分に比べて百倍程度熱酸化される速度が速く(増速酸化)、これを用いて、クラッド層や導波路、共振器のクラッド部分の多孔質シリコンを熱酸化により、多孔質SiO化して,より屈折率を下げることも可能である。
なお、補足説明として、簡単に背景技術に関して述べる。
近年、SOIウエハを2Dスラブ型光素子への利用する研究が加速している。2次元スラブ型とは、周期構造を有しない方向への光閉じ込めが、低屈折率のクラッド層で高屈折率のコア層を挟み、高屈折率のコア層に光を閉じ込めて伝播させるタイプのことを指す。
SOIウエハを用いる場合には、SOI構造に以下の機能を持たせている:まず、Si基板上に形成されたSiO(BOX層:Burried Oxide)をクラッドに用い、その上に形成されたSi(SOI層:Silicon on Insulator)をコアに用いる(参照:納富「応用物理」第72巻、第7号、2003年、「SOIスラブを用いたフォトニック結晶スラブ」)。
この場合のスラブ厚、即ちコア層の厚みは厚み方向に光の電磁波モードが存在する条件と関わり、特に、単一モードのみ存在可能な場合には、スラブ厚に屈折率を乗じた光路長が波長の略半分となる。これは即ち、1往復の光路長が略1波長となるものであり、1往復した光が数往復した光と干渉して強め合う厚みの中で最薄の条件である。実際には、クラッド層への光のしみ出し等を考慮して、計算される(参照:小柴「光導波路解析」1990年、朝倉書店、1990年)。
このようなSi系の材料である場合、1.SOIウエハの作製技術が実用レベルに達しており、精度が確保されている。2.コア層であるSOI層に周期パターンをパターニングする技術にSiプロセスの高度な技術を用いることができること.が利点として挙げられている。
SOIを用いた2次元スラブ型素子の中では、2次元スラブフォトニック結晶がその最も知られた研究対象の一つであるが(非特許文献4参照)、このフォトニック結晶と同様な効果が期待されるものに、Si細線導波路がある。この場合にも、2Dスラブ型フォトニック結晶と同様に、SiとSiOの高い屈折率差を利用して、1μm以下の微細な導波路への光閉込めや、小曲率半径の曲げ導波路素子などのデバイスの研究開発が進んでいる(参照:川上、他「フォトニック結晶技術とその応用」、p.252,257,258、2002年、CMC出版)。
また、従来から検討が進められているリング型共振器と直線導波路を組み合わせたルーティング素子(参照:国分「応用物理」第72巻、第11号、2003年、「マイクロリング共振器型光ルーティング素子」)を、前述したSOIウエハを用いた高屈折差の導波路系を用いて、微小化する試みも最近提唱されるようになってきている。
このようなSOIウエハを2Dスラブ型フォトニック結晶や細線導波路に用いる場合には、BOX層の厚みとして、比較的厚いものが要求される。例えば、1μm以上のものが望まれる。その理由は、光閉じ込め条件に起因している。即ち、コア層に光を閉じ込める場合、前述したように、クラッド層へのしみ出しがあり、クラッド層が薄い場合には、しみ出したエバネッセントモードが基板への放射モードと結合して、基板方向への放射損失が生じるためである。
許容損失を−40dBとした場合のBOX層の必要厚さに関する計算例は前述の川上らの文献に記載されている。
このような1μm以上の厚いBOX層を持つSOIを作製するには、所謂、貼り合せタイプの作製技術を用いる必要がある。このような貼り合せウエハには例えば、文献A(Celler and Yasuda「MEMS用SOIウエハの現状」2002.5、「電子技術」)および文献B(Iyer and Auberton−Herve“SILICON WAFER BONDING TECHNOLOGY for VLSI and MEMS applications”(EMIS PROCESSING−SERIES 1、ISBN 0 85296 039 5、2002、The Institution of Electrical Engineers)が存在し、実用化されている。
しかしながら、このような貼り合せウエハを作製するには、当然、貼り合せ工程を含み、そして、その他、種ウエハ切断や、そのためのHイオン打ち込み等の特殊な工程を含む複数の出発ウエハーと複雑な工程を経る必要があり、その結果、通常のSiウエハ等に比べて、そこへ作成される素子構造やプロセスが特殊化し、かつウェーハ自身も、高価となり、経済的に見合うCPUなどの高付加価値な半導体論理回路等に限定されて適応されてきた。という問題点があった。
さらに、リング型共振器と直線導波路を組み合わせたルーティング素子をSOI構造を用いて作製する場合には、素子としての効果が高いとされている2層以上のコア層を持つ立体的な導波路と共振器の回路構成の場合、SOIウエハでは、中間層のパターニングを行った後に、2つのSOIを貼り合わせる(ウエハ接合)必要があり、さらにコストが高くなるという問題点がある。
本実施例6を利用することで上記問題点が改善される。
本実施例は本発明により実現される、細線導波路とマイクロリング共振器が光結合した立体構造素子を、面内方向に複数組み合わせて形成した回路網であり、特に、回路の選択性を光共振器と導波路間の結合を担うスペーサ層の空孔率を素子毎(あるいはエリア毎)に変化させてパターニングしたことを特徴とするものである。以下、図26を用いて本実施例の光回路素子について説明する。
図26は本実施例の光回路素子の上面図である。ただし、符号26603〜26611は透視イメージである。
まず、本光回路素子は、実施例1の導波路2つとマイクロリング共振器1つからなる光選択素子が9つ、2次元的に3×3で配置されている。これらの各素子は図中縦横の3つずつの導波路に関して、その境界で接続されている。作製方法としても、これらの計6本の導波路、および9つのマイクロリング共振器については、前述した実施例1の方法に従って、各面内に一括でパターニングされて形成される。また、本実施例におけるマイクロリング共振器は全く同じサイズで、そして導波路との位置関係(距離)についても、同様に形成されている。
次に本実施例において、本発明を活かした部位について説明する。それは即ち、導波路層と共振器層の結合を担うスペーサ層である。当該スペーサ層は、導波路層、共振器層と同様に、同一面内にある9つの領域全てが一括で作製される。ただし、この時、各領域それぞれに、所定の空孔率となるように、各々陽極化成条件を異ならせて形成することが可能である。領域毎に異なる空孔率の陽極化成を行う方法は、図25を用いて前述したパターニング方法の例Bと同様であり、即ち、複数の電極を用いて陽極化成する方法であり、複数の電極毎に印加電界を異ならせることで実現される。
このようにして作製された、領域毎に異なる空孔率を持つスペーサ層により形成された9つの光選択素子は、マイクロリング共振器の大きさや位置が同一であっても、スペーサ層の実効的屈折率が異なるため、導波路と異なる結合の強さを持つ。これにより、導波路間を結合する光選択素子としては9つの部分で異なる特性を持たせることができる。
以上述べた本実施例における重要な効果としては以下のことが挙げられる。即ち、マイクロリング部分の位置や大きさといった微細加工プロセスに依存する部分を一つの条件だけで済ませることが出来る。もし、素子特性の違いをマイクロリング共振器の大きさや位置を微妙に異ならせて実現するとすれば、その大きさや位置の制御を精密に行う必要があるが、本実施例では、その条件は単一であり、より簡便で安定したものとすることができる。
本発明は以上に説明した実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、シーケンスの流れなどは種々に変更することが可能である。
例えば、実施例1において、2つの方向の導波路は同一層に連結されて配置されていたが、これを別の層にすることができ、例えば、図27の(a)に示すように、片方の導波路が共振器層に共存しても良いし、また,図中(b)のように、導波路2つと共振器が全て別々の層に配置され、それぞれをスペーサ層で隔て、光結合してもよい。
また、本発明は、前述したシリコン材料に限定されるものでなく、例えばGaAs、Ge、GaP、AlGaAs、InGaAs、InAs、GaInNAs、InGaP、InPなどのIII−V族の化合物半導体や、CdSe、CdSなどのII−VI族、その他、GaAsとGeのように格子定数及び/または線膨張係数が近いエピ成長材料や基板材料との組み合わせなどで、同様に実施することができる。
本発明の光素子は、陽極化成により形成された多孔質シリコン、多孔質SiOとエピタキシャル成長により形成されたシリコン層を面内パターニングした上で積層したモノリシックな光素子構造体を用いた高機能、高精度な光素子であり、光通信、光を用いた情報処理装置などに利用することができる。
本発明に係る光素子は、画像表示、画像転送、データ通信を含む光通信、また、光を用いた情報処理装置、さらには、画像情報、バイオ情報などの各種情報の高感度検出を行うセンサと検出システムなどにおいて広範囲で適用されるものである。
実施例1のSiでの1次元フォトニック結晶の作製方法を示す摸式図。 実施例2の多孔質SiOを含む1次元フォトニック結晶の作製方法を示す摸式図。 実施例3の3次元的フォトニック結晶の構成の一例を示す摸式図。 実施例4の3次元フォトニック結晶の構成の一例を示す摸式図。 実施例4の陽極化成を面内パターニングする方法の例を示す模式図。 実施例4の各層パターンの構成例(上面図)を示す摸式図。 実施例4の各層パターンの構成例(断面、鳥瞰図)を示す摸式図。 実施例4の各層パターンの他の構成例(上面図)を示す摸式図。 実施例4の各層パターンの他の構成例(断面、鳥瞰図)を示す摸式図。 実施例4の各層パターンその他の構成例(上面図)を示す摸式図。 実施例4の各層パターンその他の構成例(断面、鳥瞰図)を示す摸式図。 実施例4において曲面体を複数の薄膜構造で近似した例を示す模式図。 陽極化成方法の一例を示す断面摸式図。 複数ウエハの一括陽極化成方法の一例を示す断面摸式図。 実施例5のフォトニック結晶レーザーの構成の一例を示す摸式図。 実施例5のフォトニック結晶レーザーの構成の他の一例を示す摸式図。 実施例5のフォトニック結晶レーザーの構成のその他の例を示す摸式図。 従来の面発光レーザの構成を示す模式図。 実施例4の3次元フォトニック結晶の一例を示す模式図。 本発明を説明する為の模式的断面図である。 実施例6を示す摸式図である。 実施例6の光素子の作製方法を示す摸式図である。 実施例6の陽極化成による多孔質化の方法の一例を示す摸式図である。 実施例6の陽極化成による多孔質化の他の一例を示す摸式図である。 実施例6の陽極化成を面内パターニングする方法の例を示す模式図である。 実施例7の複数素子を面内に設けた光回路の例を示す模式図である。 実施例6の変形例を示す模式図である。
符号の説明
101、201、401、501、504 Si基板(単結晶基板)
102、202、402、503、507、601、603 多孔質シリコン層
103、204、403 エピ成長Si層
203、207、305 多孔質SiO
304 周期的配置貫通孔
502 レジストパターン
505 微小電極
506 配線
1201 近似される曲面構造
1202 多層近似された曲面構造の多孔質シリコン
1203 エピ成長シリコン
1301 フォトニック結晶作製用Si基板
1304 Pt製面電極
1305 下部支持体
1306 上部支持体
1307 陽極
1308 Pt製メッシュ電極
1309 陰極
1402 ホルダ
1403、1303 Oリング
1404 吸引部
1405、1302 HF溶液
1406a、1406b 白金電極
1408 HF溶液槽(陽極化成槽
1501 下部3次元フォトニック結晶
1502 上部3次元フォトニック結晶
1503 レーザー媒質層
1504 面内点欠陥
1601 3次元フォトニック結晶
1602 レーザー媒質
1701、1702 1次元フォトニック結晶
1703 共振器スペーサ層
1704 レーザ媒質活性物質
1801、1802 エピ成長多層膜ミラー
1803 共振器スペーサ層
1804 レーザ媒質活性層
1901 多孔質シリコン
1902 エピ成長シリコン
1903 多孔質SiO
1904 空気
21101 シリコン(単結晶)基板
21102 多孔質シリコンクラッド層
21103 多孔質シリコン導波路層
21104、701、704 シリコン導波路(コア)
21105、702、705 シリコン導波路(コア)
21106 多孔質シリコンスペーサ層
21107 多孔質シリコン共振器層
21108、21703、21706 シリコンマイクロリング共振器(コア)
21109 入射光
21110、21111 射出光
22201 エピ成長シリコン層(導波路層)
22202 エピ成長シリコン層(スペーサ層)
22203 エピ成長シリコン層(共振器層)
23301 Si基板
23302 HF溶液
23303 Oリング
23304 Pt製面電極
23305 下部支持体
23306 上部支持体
23307 陽極
23308 Pt製メッシュ電極
23309 陰極
24401 Si基板
24402 真空チャック用配管
24403 ウエハホルダ
24404 HF溶液槽
24405 HF溶液
24406 陽極
24407 陰極
25501 シリコン基板
25502 レジストパターン
25505 微小電極
25506 配線
26601 導波路
26602 マイクロリング共振器
26603 第1領域のスペーサ層(透視図)
26604 第2領域のスペーサ層(透視図)
26605〜26611 第3領域から第5領域のスペーサ層(透視図)

Claims (17)

  1. 第1の多孔質領域と第2の多孔質領域間に非多孔質領域を備え、且つ、前記非多孔質領域の屈折率が前記第1の多孔質領域より高いことを特徴とする光素子。
  2. 第1の層が前記第1の多孔質領域を含み構成され、第2の層が前記第2の多孔質領域を含み構成され、第3の層が前記非多孔質領域を含み且つ前記第1の層及び第2の層間に位置するように構成されており、前記第3の層は、面内方向に前記非多孔質領域とは屈折率の異なる領域を有することを特徴とする請求項1記載の光素子。
  3. 前記第3の層に含まれ、且つ前記非多孔質領域とは屈折率の異なる領域は、多孔質構造である請求項2記載の光素子。
  4. 光波長より小さい孔径を有する多孔質層と、該多孔質層より屈折率の高い結晶層とが積層され、前記屈折率の高い結晶層が複数層に渡り単結晶状であり、かつ、前記高屈折率の結晶層を挟む2つの多孔質層が空孔によって連結していないことを特徴とするモノリシック光素子。
  5. 前記屈折率の高い結晶層に面内の屈折率分布パターンが形成されていることを特徴とする請求項4記載のモノリシック光素子。
  6. 前記多孔質層の一部または全部がアモルファス酸化物層である請求項5記載のモノリシック光素子。
  7. 結晶層の表面を多孔質化するステップと、多孔質表面から結晶層をエピタキシャル成長させるステップとを反復し、多孔質層と結晶層とを積層することを特徴とするモノリシック光素子の製造方法。
  8. 結晶層の表面を多孔質化するステップが、結晶層を陽極化成するステップである請求項7に記載の光素子の製造方法。
  9. 結晶層の陽極化成ステップが、結晶層の表面の所望の領域にのみ局所的に陽極化成を行なうステップである請求項8記載の製造方法。
  10. 多孔質層または結晶層に面内の屈折率分布パターンを形成するパターニングステップを、複数のエピタキシャル成長ステップの間に含むことを特徴とする請求項7または8に記載の光素子の製造方法。
  11. 前記パターニングステップが、屈折率の高い結晶層と多孔質層とに貫通孔を形成する貫通孔形成ステップである請求項10に記載の光素子の製造方法。
  12. 前記貫通孔形成ステップの後、貫通孔を通じて酸素原子を含む物質を供給し、多孔質層を優先的に酸化する酸化ステップをさらに含むことを特徴とする請求項7記載の光素子の製造方法。
  13. 前記多孔質層の一部または全部を除去し、前記屈折率の高い結晶層に隣接して前記多孔質層の層厚と同程度の大きさの空隙を設けることを特徴とする請求項7記載の光素子の製造方法。
  14. 請求項1記載の前記光素子が光共振器であり、当該光共振器の内部および/または近傍に発光物質を備えていることを特徴とする発光素子。
  15. 前記非多孔質領域が光導波路として機能し、前記第2の層と第3の層間に多孔質構造のスペーサ層が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の光素子。
  16. 前記スペーサ層は、その面内方向に、屈折率の異なる複数の領域を含み構成されている請求項15に記載の光素子。
  17. 請求項1に記載の光素子と、発光部を有することを特徴とする情報処理装置。
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