JP2005257939A - エンタングル光子対発生装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 導波路型非線形素子を用いて偏波エンタングル光子対を出力すること。
【解決手段】 非線形導波路22は、ポンプ光源21から発生したパルス光からシグナル光子とアイドラー光子とを所定の発生効率で発生する。偏波変調器23は、非線形導波路22が出力する光の偏波状態を変調する。第1の偏波ビームスプリッタ24aは、偏波分離機能を有し、偏波変調器23が出力する光を偏波状態に応じて2つの光経路に分岐する。第2の偏波ビームスプリッタ24bは、偏波合成機能を有し、第1の偏波ビームスプリッタ24aが2経路に分岐した光を同一経路に合波する。第1の偏波ビームスプリッタ24aと第2の偏波ビームスプリッタ24bとの間に2経路における光伝搬時間の差が、2つの連続するパルス光の時間間隔と等しくなるように設定されている。
【選択図】 図2
【解決手段】 非線形導波路22は、ポンプ光源21から発生したパルス光からシグナル光子とアイドラー光子とを所定の発生効率で発生する。偏波変調器23は、非線形導波路22が出力する光の偏波状態を変調する。第1の偏波ビームスプリッタ24aは、偏波分離機能を有し、偏波変調器23が出力する光を偏波状態に応じて2つの光経路に分岐する。第2の偏波ビームスプリッタ24bは、偏波合成機能を有し、第1の偏波ビームスプリッタ24aが2経路に分岐した光を同一経路に合波する。第1の偏波ビームスプリッタ24aと第2の偏波ビームスプリッタ24bとの間に2経路における光伝搬時間の差が、2つの連続するパルス光の時間間隔と等しくなるように設定されている。
【選択図】 図2
Description
本発明は、エンタングル光子対発生装置に関し、より詳細には、量子暗号通信における量子暗号鍵伝送技術に係るもので、量子相関を有する光子対を発生するエンタングル光子対発生装置に関し、特に、偏波状態の相関を有するエンタングル光子対を発生するエンタングル光子対発生装置に関する。
近年、量子力学的相関を有する光子対を利用する新しいタイプの情報通信システムが提案されている。より具体的には、量子相関を利用した量子暗号鍵配送や量子テレポーテーションなどが挙げられる。量子暗号鍵配送とは、離れた地点にいる2者に暗号通信を行うための暗号鍵を供給する暗号通信システムで、暗号鍵の安全性が量子力学の原理により保証された究極的に安全な暗号通信システムである。
量子暗号鍵配送にも各種方式があるが、量子相関を利用するものが最も長距離伝送に適している。量子テレポーテーションとは、量子状態を転送するシステムで、量子コンピューターなどの量子情報処理装置間の信号転送に利用される。これら量子情報通信システムにおいて用いられる量子相関のある光子対は、量子エンタングル光子対または単にエンタングル光子対と呼ばれている。量子相関といっても様々な物理量についての相関が考えられ、それに応じて様々な種類のエンタングル光子対が存在する。以下、本発明に即して、偏波状態についてのエンタングル光子対について説明する。
一般に、単一の光子の偏光状態は、横直線偏光状態(|H>:横偏光のモードに光子が1個あるとき、その状態を|H>と表記する)と縦直線偏光状態(|V>:縦偏光のモードに光子が1個あるとき、その状態を|V>と表記する)の重ね合わせの状態|Ψ>=α|H>+β|V>(α、βは|α|2+|β|2=1を満たす複素数)によって表わされる。ここで、|α|2および|β|2は、状態|Ψ>にある光子に対して横直線偏光状態か縦偏光状態かを判別する測定を行ったときに、それぞれ横偏光および縦偏光の測定結果を得る確率である。例えば、左回り偏光である光子状態は、
また、右回り円偏光である光子状態は、
と表わされる。この式(1a),(1b)は、円偏光の単一光子に対して横直線か縦直線かの偏光状態を判別する測定を行うと、その結果は確率50%で横偏光、確率50%で縦偏光となることを表わしている。右回りか左回りかは複素数の位相で区別されているが、このことは、円偏波の光電場を縦直線成分と横直線成分に分解したときに、両成分の位相関係によって右回りか左回りになることの量子的表示として理解できる。
以上は、1光子についての説明であるが、これを2光子状態に拡張すると、量子エンタングル光子対について説明することができる。いま、2つの光子を同時に発生する光源があったとする。この2光子をまとめて1つの量子状態とみなし、この光源からは、
と表わされる状態が出力されるものとする。ここで、2つの光子を識別するために、添え字a、bを用いた。式(2)は、この2光子に対して横直線偏光状態か縦偏光状態かを判別する測定を行うと、50%の確率で|H>a|H>bまたは|V>a|V>bという状態が観測されることを意味している。ここで、|H>a|H>bは、光子aが横偏波かつ光子bが横偏波という状態を表わし、|V>a|V>bは、光子aが縦偏波かつ光子bが縦偏波という状態をそれぞれ表わしている。
このことは、例えば、発生した2光子を離れた2者(アリスとボブという)にそれぞれ送り、両者がそれぞれの光子に対して測定を行ったとする。アリスが横偏光|H>という測定結果を得れば、それと対になる光子についてボブが得る測定結果は、必ず横偏光|H>となり、また、アリスが縦偏光|V>という測定結果を得ると、対になる光子についてボブが得る測定結果は必ず縦偏光|V>となることを意味している。このような相関を有する2つの光子を量子エンタングル光子対という。上述した例の場合は、偏波状態についての相関なので、特に偏波エンタングル光子対ともいう。
量子エンタングルの特徴は、測定系を変えても相関関係が成り立っているところにある。上述した説明では、2光子に対して横直線偏光状態か縦偏光状態かを判別する測定を行うものとしたが、右回り円偏波状態か左回り円偏波状態かを判別する測定を行っても同様の相関が得られる。その事情をみるために、式(1a),(1b)を使って式(2)を書き直すと、式(1a),(1b)より、
であり、これを式(2)代入すると、
となる。この式(4)は、2光子に対して右回り円偏波状態か左回り円偏波状態かを判別する測定を行うと、一方が右回りであれば他方は左回り、一方が左回りであれば他方は右回りすることを意味しており、相関関係が円偏波測定においても成り立っていることを表わしている。ここでは詳しく述べないが、このような性質を巧みに利用すると、究極的に安全な量子暗号システムや量子テレポーテーションを実施することができる。
上述した偏波エンタングル光子対を発生する手段としては、2次の光非線形効果を利用する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。2次の非線形光学結晶には、波長λpのポンプ光が入力されると、1/λp=1/λs+1/λiの関係を満たす波長λsのシグナル光子と波長λiのアンドラー光子を同時に発生する性質がある。この現象はパラメトリック・ダウン・コンバージョンとして知られている。
さらにこの時、ある種の結晶においては、結晶軸の向きを適当に設定すると、直線偏波のポンプ光入力に対して、シグナル光子、アイドラー光子ともに同じ直線偏波として発生させることができる。シグナル光子とアイドラー光子は、必ず対で発生するので、この発生状態は、|φ>=|H>s|H>i(または|V>s|V>i)と記述される。ここで、添え字s、iはそれぞれシグナル光子、アイドラー光子を表わしている。
パラメトリック・ダウン・コンバージョン現象により偏波エンタングル光子対を得るためには、ある特定の軸方向の直線偏波ポンプ光入力に対しては、ポンプ光と同一偏波のシグナル光子とアイドラー光子とを発生し、それと直交するポンプ光の入力に対しては、何も発生しないような非線形結晶を2つ用意する。
図1は、従来のエンタングル光子対発生方法を説明するための図で、2つの非線形結晶1a,1bを、結晶軸を互いに90°傾けて直列に配置する。第1の非線形結晶1aは、0°方向の直線偏波ポンプ光の入力に対しては、それと同一偏波のシグナル光子とアイドラー光子とを発生し、それと直交するポンプ光の入力に対しては何も発生しないように配置されているものとする。すると、第2の非線形結晶1bにおいては、その結晶軸が第1の非線形結晶1aとは90°ずれているため、90°方向の直線偏波ポンプ光の入力に対しては、それと同一偏波のシグナル光子とアイドラー光子とを発生することになる。この直列構成に対して、45°傾いた直線偏波のポンプ光を入力する。
このようなポンプ光は、垂直偏波成分と水平偏波成分に分けて考えることができ、第1の非線形結晶1aでは、垂直ポンプ光成分から垂直偏波のシグナル光子とアイドラー光子とが発生し、第2の非線形結晶1bでは、水平ポンプ光成分から水平成分のシグナル光子とアイドラー光子とがそれぞれ発生する。
ここで、1つの非線形結晶から1組のシグナル/アイドラー光子対が発生する効率をηとする。すると、直列配置された2つの非線形結晶のどちらからも光子対が発生する効率はη2となる。光子対の発生効率は、ポンプ光のパワーに依存する。そこで、ポンプ光のパワーを調節してη>>η2であるように設定すると、2つの非線形結晶のどちらからも光子対が発生する効率は無視できる程度に低くなり、直列配置からは1組の光子対が出力されるようにすることができる。
出力された光子対は、第1の非線形結晶1aで発生したものか、第2の非線形結晶1bで発生したものかは測定するまで不明である。このような光子対の状態は、第1の非線形結晶1aで発生する光子対状態と、第2の非線形結晶1bで発生する光子対状態との重ね合わせとして、次のように記述される。
この式(5)は、出力が偏波エンタングル状態となっていることを表わしている。すなわち、図1に示した構成により、偏波エンタングル光子対を得ることができる。なお、式(5)のエンタングル光子対状態としては、|H>s|H>iである確率と|V>s|V>iである確率が等しい必要がある。そのためには、第1の非線形結晶1aにおける光子対の発生効率と、第2の非線形結晶1bにおける光子対の発生効率が等しくなければならない。
Paul G Kwiat. et. al. "Ultrabright source of polarization - entangled photons, "Physical Review A. vol. 60. No.2 pp. R773-R776,1999
上述した従来のエンタングル光子対発生方法には、長波長帯(1.3μmまたは1.5μm)の光子対を得るのが困難であるという問題がある。エンタングル光子対を発生させるためには、非線形結晶内でポンプ光、シグナル光子、アイドラー光子の位相速度を整合させる必要がある(位相整合条件)。エンタングル光子対の応用を考えると、光ファイバの伝送損失が小さい長波長帯における光子対発生が望まれるが、従来のバルク型非線形結晶では、長波長帯において位相整合条件を満たすことが困難となっている。
これを解決する手段として、導波路型非線形素子によるエンタングル光子対発生が考えられる。これは、周期型光導波路構造における位相速度の性質を利用して長波長帯での位相整合条件を満たす方法であり、例えば、典型的な非線形結晶であるLiNbO3導波路の場合、TMモード(縦偏波)のポンプ光からTEモードのシグナル光子とアイドラー光子とを発生させることができる。そこで、2つのLiNbO3導波路を互いに90°傾けて直列に配置すれば、図1で説明したように、偏波エンタングル光子対を得ることができる。
しかしながら、このような従来のエンタングル光子対発生方法は、光導波路を利用することによる特殊性のため、実際に実施するのは困難である。光導波路内で光子対を発生させるためには、相互作用する光の電界分布がほぼ重なるように、ポンプ光、シグナル光子、アイドラー光子を基本導波モードとして伝搬させる必要がある。そのためには、光導波路構造は、3つの光に対して単一モード導波路となっていることが望ましいが、2次の光非線形を用いる場合、シグナル光子、アイドラー光子の波長が1.5μm帯であるとポンプ光波長は0.78μm近傍となり、シグナル光子・アイドラー光子に対し単一モード導波路とすると必然的にポンプ光に対してはマルチモードとなってしまう。
つまり、図1に示した構成でエンタングル光子対を得るためには、第1と第2の非線形素子における光子対発生効率が等しいことが必要である。直列に配置した2つの導波路素子においてこの条件を満たすには、両者ともにポンプ光を等しく基本導波モードとして入力しなければならないが、導波路へのポンプ光の結合状態をこのように設定することは実際上困難である。そのため、図1に示した構成に導波路型非線形素子を適用して長波長帯のエンタングル光子対を得ることは、原理的には可能であっても、実際には極めて困難である。
このように、従来のエンタングル光子対発生装置は、2次の非線形光学結晶にポンプ光(波長λp)を入力することにより同時生成される、1/λp=1/λs+1/λiを満たすシグナル光子(波長λs)とアイドラー光子(波長λi)とをエンタングル光子対として用いている。したがって、従来のエンタングル光子対発生装置は、2つの非線形光学結晶における光子対発生効率を等しくするために、非線形光学結晶中でポンプ光、シグナル光、アイドラー光の3つの位相速度が整合されること(位相整合条件)を要求する。
つまり、エンタングル光子対を発生させるためには、(1)非線形媒質でシグナル・アイドラー光子対を発生させること、(2)2つの非線形媒質を用意して、それぞれで発生するシグナル・アイドラー光子対の発生効率を等しくすること、が必要である。(1)のためには、非線形結晶内でポンプ光、シグナル光、アイドラー光の位相速度を整合させることが必要となる。これは従来のLiNbO3導波路により実現可能である。しかしながら、(2)のためには、第1の非線形結晶での光子対発生効率と、第2の非線形結晶での光子対発生効率が等しいことが必要となる。これは、従来の構成では単一モード条件の制約より実現が困難であった。
このように、従来のエンタングル光子対発生装置は、2つの非線形光学結晶における光子対発生効率を等しくするために、非線形光学結晶中でポンプ光、シグナル光、アイドラー光の3つの位相速度が整合されること(位相整合条件)が要求されている。
そのため、光ファイバ伝送により量子暗号通信応用では、光ファイバの伝送損失が小さい長波長帯の光子対が望まれますが、バルク型非線形結晶は、長波長帯では位相整合条件を満たすことが困難であるという問題があった。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、導波路型非線形素子を用いながらも、容易な構成で偏波エンタングル光子対を出力することができるエンタングル光子発生装置を提供することにある。
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、2つの連続するパルス光を発生するポンプ光源と、該ポンプ光源が発生したパルス光からシグナル光子とアイドラー光子とを所定の発生効率で発生する非線形光学結晶と、該非線形光学結晶が出力する光の偏波状態を変調する偏波変調手段と、該偏波変調手段が出力する光を偏波状態に応じて2つの光経路に分岐する偏波分離手段と、該偏波分離手段が2経路に分岐した光を同一経路に合波する偏波合成手段とを有し、前記偏波分離手段と前記偏波合成手段との間の2経路における光伝搬時間の差が、前記2つの連続するパルス光の時間間隔と等しくなるように設定されていることを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記非線形光学結晶からなる非線形導波路を用いたことを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記ポンプ光源から出力される2連続パルス光の波長をλpとし、前記シグナル光子の波長を波長λsとし、前記アイドラー光子の波長を波長λiとした時に、1/λp=1/λs+1/λiの関係を満たすことを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1,2又は3に記載の発明において、前記偏波分離手段が、第1の偏波ビームスプリッタであり、該偏波ビームスプリッタにおいて、縦偏波状態は反射ポートへ、横偏波状態は透過ポートへそれぞれ出力されることを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記偏波合成手段が、第2の偏波ビームスプリッタであり、該偏波ビームスプリッタの出力が偏波エンタングル光子対状態であることを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、請求項1,2又は3に記載の発明において、前記偏波分離手段の分離機能と前記偏波合成手段の合成機能とを有する偏波ビームスプリッタと、分岐された2つの経路に出力される前記偏波ビームスプリッタからの縦偏波状態及び横偏波状態を、各々異なる偏波状態に変換する変換手段とを備えたことを特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記変換手段は、前記経路中に設けられたλ/4波長板と反射部材からなることを特徴とする。
また、請求項8に記載の発明は、請求項6又は7に記載の発明において、前記経路のうち一方の経路の往復伝播時間が、他方の往復伝播時間よりも光パルスの時間間隔分だけ長くなるように設定されていることを特徴とする。
このように、本発明のエンタングル光子発生装置は、1つの非線形光学結晶(非線形導波路)を用い、非線形光学結晶に入力された2連続パルス光の出力光を、偏向を変調する偏波変調器と、この偏波変調器によって偏向された光と無偏向の光とを分岐する第1の偏波ビームスプリッタと、この第1の偏波ビームスプリッタによって分岐された2つの光を合波する第2の偏波ビームスプリッタと、2分岐された光の経路を各々の光が通過する時間の差が、2連続パルス光の時間間隔に等しく設定されていることを特徴としている。
また、偏波分離手段の分離機能と偏波合成手段の合成機能とを有する偏波ビームスプリッタと、分岐された2つの経路に出力される偏波ビームスプリッタからの縦偏波状態及び横偏波状態を、各々異なる偏波状態に変換する変換手段とを備え、分岐された2つの経路のうち一方の経路の往復伝播時間が、他方の往復伝播時間よりも光パルスの時間間隔分だけ長くなるように設定されていることを特徴としている。
本発明によれば、従来技術に比べ、容易に偏波エンタングル光子対を発生させることが可能となる。また、従来の位相条件を満たすことの困難さという問題点を解決する全く別のアプローチを提供し、簡便な構成で実施可能な偏波エンタングル光子対を発生できるという格別の効果を奏する。
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
図2は、本発明のエンタングル光子発生装置の実施例1を説明するための構成図で、図中符号21はポンプ光源、22は非線形光学結晶からなる非線形導波路(LN導波路)、23は偏波変調器、24aは第1の偏波ビームスプリッタ、24bは第2の偏波ビームスプリッタ、25は波長フィルタを示している。
本発明の実施例1に係るエンタングル光子発生装置において、ポンプ光源21は、2つの連続するパルス光を発生するものである。非線形導波路22は、ポンプ光源21から発生したパルス光からシグナル光子とアイドラー光子とを所定の発生効率で発生するもので、ポンプ光源21からのポンプ光パルスが直線偏波状態として入力され、このポンプ光パルスから2次の非線形効果により、1/λp=1/λs+1/λiの関係を満たす波長λsのシグナル光子と波長λiのアイドラー光子を、ポンプ光と同じ偏波状態として発生するものである。
また、偏波変調器23は、非線形導波路22が出力する光の偏波状態を変調するものである。第1の偏波ビームスプリッタ24aは、偏波分離機能を有し、偏波変調器23が出力する光を偏波状態に応じて2つの光経路に分岐するものである。第2の偏波ビームスプリッタ24bは、偏波合成機能を有し、第1の偏波ビームスプリッタ24aが2経路に分岐した光を同一経路に合波するものである。
このような構成において、第1の偏波ビームスプリッタ24aと第2の偏波ビームスプリッタ24bとの間に2経路における光伝搬時間の差が、2つの連続するパルス光の時間間隔と等しくなるように設定されている。
つまり、ポンプ光源21は、連続した2つのポンプ光パルスを出力する。2連続ポンプ光パルスの発生方法としては、CW光から光変調器により切り出す構成や、1つのポンプ光パルスを2つに分岐して一方に遅延を与えたのちに再び合波する構成などが利用可能である。
ポンプ光パルスは、TMモードとしてLN導波路22に入力される。このLN導波路22は、周期構造を有しており、TMモード(縦偏波)のポンプ光からTMモードのシグナル光子とアイドラー光子とを発生するように作製されているものとする。これにより、LN導波路22からはTMモードのシグナル光子とアイドラー光子とが出力される。
ここで、1つのポンプ光パルスから1組のシグナル/アイドラー光子対が発生する効率をηとする。すると、2連続ポンプ光パルスのどちらからも光子対が発生する効率はη2となる。光子対の発生効率はポンプ光パワーに依存する。そこで、ポンプ光の光パワーの設定によりη>>η2であるようにすると、2連続ポンプ光のパルスのどちらからも光子対が発生する効率は無視できる程度に低くなり、LN導波路22からは、1組の光子対が出力されることになる。出力される光子対は、測定を行うまでは、第1のポンプ光のパルスから発生したものか第2のポンプ光のパルスから発生したものか不明である。すなわち、2つの時間位置のうちの第1の時間位置に存在しているか第2の時間位置に存在しているかは不確定である。このような状態は、2つの状態の重ね合わせとして、
と表わすことができる。ここで、|V,t1>は、光子1個が第1の時間位置t1に縦偏波Vとして存在する状態を、|V,t2>は、光子1個が第2の時間位置t2に縦偏波Vとして存在する状態を、それぞれ表わすものとする。第1項が第1のポンプ光のパルスから光子対が発生した状態、第2項が第2のポンプ光のパルスから光子対が発生した状態、にそれぞれ対応する。
LN導波路22からの出力は、偏波変調器23に入力される。この偏波変調器23は、第1の時間位置の光子対に対しては無変調である一方、第2の時間位置の光子対に対してはその偏波状態を縦偏波Vから横偏波Hに変換するものとする。これにより、式(6)の状態は、
に変換される。次に、偏波変調器23からの出力は、第1の偏波ビームスプリッタ(PBS1)24aに入力される。この偏波ビームスプリッタ24aにおいては、縦偏波状態は反射ポートへ、横偏波状態は透過ポートへ、それぞれ出力される。これにより、縦偏波状態は経路aへ、横偏波状態は経路bへそれぞれ出力される。
2つの経路を通った状態は、第2の偏波ビームスプリッタ(PBS2)24bに入力される。ここで、経路aの光伝搬時間は、経路bのそれよりも、前述の2連続ポンプ光パルスの時間間隔分だけ長いものとする。これにより、2つの時間位置に分かれていた状態は、同時刻に第2のPBS24bに入力されることになる。第2のPBS24bへの入力状態は、式(7)より、
と書き表わすことができる。ここで、|V,R1>は、光子1個が経路aから縦偏波として入力される状態を、|H,R2>は、光子1個の経路bから横偏波として入力される状態を、それぞれ表わすものとする。これらは同時刻に入力されるので、時間に関する表示は省略した。
第2のPBS24bは、直交する直線偏波状態を合波してひとつのポートに出力する。これにより、経路による区別がなくなり、式(8)は、
と書き直される。この式(9)を見ると、第2のPBS24bからの出力は偏波エンタングル光子対状態となっていることがわかる。すなわち、図2に示した構成により、偏波エンタングル光子対を得ることができる。発生した光子対を別々に取り出したい時には、波長フィルタ25によりシグナル光子とアイドラー光子を振り分ければよい。
図2に示した構成においては、1つの非線形導波路を用いて光子対を発生しており、第1の時間位置と第2の時間位置に光子対が発生する効率は自動的に同一となる。したがって、従来例のように、2つの非線形導波路における発生効率を等しくするための困難に煩わされることなく、エンタングル光子対を得ることができる。
図3は、本発明のエンタングル光子発生装置の実施例2を説明するための構成図で、図中符号24は偏波ビームスプリッタ、26,27はλ/4波長板、28,29はミラーを示している。なお、図2と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付してある。
本発明の実施例2に係るエンタングル光子発生装置は、図2に示したエンタングル光子発生装置における、ポンプ光源21とLN導波路22と偏波変調器23により、上述した式(7)の状態を作るところまでは同じであるので、その後の構成について以下に説明する。
偏波ビームスプリッタ(PBS)24により縦偏波状態を反射ポート(経路a)、横偏波状態を透過ポート(経路b)へ出力する。経路aへ出力された光子はλ/4波長板26を通り、ミラー28で反射され、逆経路を辿って、再びPBS24へ入力される。この際、光子はλ/4波長板26を往復で2回通ることになり、これにより縦偏波状態だったものが横偏波状態に変換されてPBS24に入力されることになる。
一方、PBS24から経路bへ出力された光子は、同様にして、λ/4波長板27を通り、ミラー29で反射され、逆経路を辿って、再びPBS24へ入力される。この光子もλ/4波長板27を2回通るので、PBS24への入力状態は横偏波状態から縦偏波状態に変換されたものになっている。
経路aから横偏波状態としてPBS24に入力された光子は、透過ポート、すなわち、図3に示した下方のポートに出力される。経路bから縦偏波状態としてPBS24に入力された光子は、反射ポート、すなわち、図3に示した下方のポートに出力される。ここで、経路aの往復伝播時間は、経路bの往復伝播時間より、2連続ポンプ光パルスの時間間隔分だけ長いものとする。すると、2つの時間位置に分かれていた状態は、同時刻にPBS24の下方のポートに出力されることになる。したがって、PBS24の下方のポートからは、横偏波光子対と縦偏波光子対が足し合わさった状態が出力されることになり、偏波エンタングル光子対を得ることができる。
21 ポンプ光源
22 非線形光学結晶(非線形導波路)
23 偏波変調器
24 偏波ビームスプリッタ
24a 第1の偏波ビームスプリッタ
24b 第2の偏波ビームスプリッタ
25 波長フィルタ
26,27 λ/4波長板
28,29 ミラー
22 非線形光学結晶(非線形導波路)
23 偏波変調器
24 偏波ビームスプリッタ
24a 第1の偏波ビームスプリッタ
24b 第2の偏波ビームスプリッタ
25 波長フィルタ
26,27 λ/4波長板
28,29 ミラー
Claims (8)
- 2つの連続するパルス光を発生するポンプ光源と、
該ポンプ光源が発生したパルス光からシグナル光子とアイドラー光子とを所定の発生効率で発生する非線形光学結晶と、
該非線形光学結晶が出力する光の偏波状態を変調する偏波変調手段と、
該偏波変調手段が出力する光を偏波状態に応じて2つの光経路に分岐する偏波分離手段と、
該偏波分離手段が2経路に分岐した光を同一経路に合波する偏波合成手段とを有し、
前記偏波分離手段と前記偏波合成手段との間の2経路における光伝搬時間の差が、前記2つの連続するパルス光の時間間隔と等しくなるように設定されていることを特徴とするエンタングル光子対発生装置。 - 前記非線形光学結晶からなる非線形導波路を用いたことを特徴とする請求項1に記載のエンタングル光子対発生装置。
- 前記ポンプ光源から出力される2連続パルス光の波長をλpとし、前記シグナル光子の波長を波長λsとし、前記アイドラー光子の波長を波長λiとした時に、1/λp=1/λs+1/λiの関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載のエンタングル光子対発生装置。
- 前記偏波分離手段が、第1の偏波ビームスプリッタであり、該偏波ビームスプリッタにおいて、縦偏波状態は反射ポートへ、横偏波状態は透過ポートへそれぞれ出力されることを特徴とする請求項1,2又は3に記載のエンタングル光子対発生装置。
- 前記偏波合成手段が、第2の偏波ビームスプリッタであり、該偏波ビームスプリッタの出力が偏波エンタングル光子対状態であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエンタングル光子対発生装置。
- 前記偏波分離手段の分離機能と前記偏波合成手段の合成機能とを有する偏波ビームスプリッタと、分岐された2つの経路に出力される前記偏波ビームスプリッタからの縦偏波状態及び横偏波状態を、各々異なる偏波状態に変換する変換手段とを備えたことを特徴とする請求項1,2又は3に記載のエンタングル光子対発生装置。
- 前記変換手段は、前記経路中に設けられたλ/4波長板と反射部材からなることを特徴とする請求項6に記載のエンタングル光子対発生装置。
- 前記経路のうち一方の経路の往復伝播時間が、他方の往復伝播時間よりも光パルスの時間間隔分だけ長くなるように設定されていることを特徴とする請求項6又は7に記載のエンタングル光子対発生装置。
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2004
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