JP2005256066A - 高速変形特性および伸び特性に優れた熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【要 約】
【課 題】 高速変形特性および加工性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 C、Si、Mn、P、S、Alを適正範囲含む組成の鋼素材に、加熱温度:1000〜1300℃、仕上圧延開始温度:900〜1200℃、仕上圧延終了温度:Ar変態点以上とする熱間仕上圧延を施したのち、30℃/s以上で650〜800℃未満の冷却停止温度まで冷却する一次冷却と、一次冷却停止温度から3〜10s間空冷する二次冷却と、ついでA={(FET)/(C+Mn/6)}/100(ここで、C、Mn:各元素の含有量(質量%)、FET:仕上圧延開始温度(℃))で定義されるA℃/s以上の平均冷却速度で、B={(C+Mn/6)×90000/(FET)}×10 (ここで、C、Mn:各元素の含有量(質量%)、FET:仕上圧延開始温度(℃))で定義されるB℃〜(B+50)℃の冷却停止温度まで冷却する三次冷却を施し、巻き取る。これにより、高速変形特性および伸び特性に優れた熱延鋼板となる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、自動車部材用として好適な熱延鋼板に係り、とくに高速変形特性および伸び特性に優れた熱延鋼板およびその製造方法に関する。なお、本発明でいう「高速変形特性に優れた」とは、高速変形時の引張強さTSまでの吸収エネルギーが高いことを指す。具体的には、歪速度:2000/sで高速引張試験を行なった場合のTSまでの吸収エネルギーが170MJ/m以上である場合をいうものとする。また、「伸び特性に優れた」とは強度の割りに伸びに優れる、すなわち引張強さTS−伸びElで表す強度−伸びバランスに優れることを指し、具体的にはTS×Elが25000MPa以上である場合をいうものとする。
最近では地球環境保全の観点から、自動車の排気ガス規制が強化されたことに伴い、車体重量の軽減が極めて重要な課題となっている。一方では、乗客の安全性確保も同様に重要な課題である。これらの課題をともに達成するために、使用する鋼板の強度の上昇はもちろんのこと、部品形状の工夫、剛性および耐衝突特性の向上などが試みられている。
乗客の安全性を確保する観点からは、自動車の衝突時の部材特性を知っておく必要がある。自動車の衝突時の部材特性は、素材である鋼板の衝突時の歪速度、すなわち高速変形での特性(高速変形特性)として把握しておくことが重要である。しかし、従来は、例えば、自動車のバンパーやドア、キャビン補強材等の使途に用いられる熱延鋼板に対しては、通常の引張試験における強度が高いことのみが要求されてきた。
このような状況から、最近では、とくにバンパーやドア、キャビン補強材等の自動車部材に使用する鋼板には、優れた成形性に加えてさらに優れた高速変形特性を有することが要求されている。
このような要求に対し、例えば、特許文献1には、C、Si、Mn、Sを適正量含み、さらにP、Cr、Moのうちから選ばれた1種または2種以上を適正量含有する組成を有し、平均粒径10μm以下のフェライト相を体積率で80〜97%、残部を平均粒径がフェライト平均粒径の0.2〜1.5倍であるマルテンサイトを主体とする第二相からなる組織を有する成形性と耐衝撃特性に優れる熱延高張力鋼板が提案されている。特許文献1に記載された技術では、かかる熱延高張力鋼板は、Ar変態点以上で熱間圧延を終了し、その後0.1〜5.0秒の間に冷却を開始し620〜800℃まで冷却し、0.5〜15秒間空冷し、ついで30℃/s以上の冷却速度で300〜600℃まで冷却し巻き取ることにより製造できるとしている。しかしながら、特許文献1に記載された熱延鋼板では、歪速度:2000/sにおける真歪:0.3までの吸収エネルギーが250MJ/m以上の高い高速変形特性を有するとしているが、近年、要求が厳しくなっている加工性に対しては依然として不十分であるという問題があった。
また、特許文献2には、フェライトを主相として、ベイナイトと体積率で3%以上の残留オーステナイト、またはマルテンサイトを含む複合組織を有する加工性と疲労特性に優れた高強度鋼板が提案されている。特許文献2に記載された技術では、かかる高強度鋼板は、(Ar−50℃)〜(Ar+140℃)の範囲で熱間圧延を終了し、その後冷却して300〜500℃の温度範囲で巻き取ることにより製造できるとしている。しかしながら、特許文献2に記載された技術で得られる熱延鋼板は、良好な加工性を有していても、本発明が目標とするような高速変形特性を十分に満足するまでには至っていない。
また、特許文献3には、耐衝撃特性に優れた高強度高加工性熱延鋼板が提案されている。特許文献3に記載された技術により得られる熱延鋼板は、C、Si、Mn、Crを適正量含有する組成を基本組成として、必要に応じ、P、Al、Nb、Tiの1種以上を含有し、初析フェライトを主相とし、マルテンサイト、針状フェライトおよび残留オーステナイトからなる第二相を有する熱延鋼板である。特許文献3に記載された技術では、0.35以上の高い動的n値を有する熱延鋼板となるとしている。しかし、特許文献3に記載された熱延鋼板では、高速変形時の伸び10%における瞬間n値(動的n値)は向上するが、高速変形時のTSまでの吸収エネルギーを大きくするというような、大変形時の特性向上については何の指針も与えておらず、本発明が目標とするような高速変形特性を十分に満足するまでには至っていない。
特開平10−195588号公報 特開平7−62485号公報 特開平11−43740号公報
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みて成されたものであり、高速変形特性、すなわち高速変形時の引張強さTSまでの吸収エネルギーが高くかつ伸び特性に優れる、熱延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した課題を解決するために、伸び特性、高速変形特性に及ぼす組織、熱間圧延条件、冷却条件等の各種要因について、鋭意検討した。その結果、以下の知見を得るに至った。
すなわち、ベイニティックフェライト、残留オーステナイト、ベイナイト、マルテンサイトおよびポリゴナルフェライトの組織分率を緻密に調整することにより、高速変形時の引張強さTSまでの吸収エネルギーが上昇し、かつ伸び特性も向上した熱延鋼板になることを見出した。
とくに、ベイナイトおよびベイニティックフェライトの組織分率の調整が最も重要であり、この組織分率の調整は、成分組成の調整および仕上圧延開始温度、冷却条件、巻取り温度を適切に制御することにより可能となることを見出した。所望のベイナイトおよびベイニティックフェライトの組織分率を得るためには、パーライト変態を回避し、かつベイナイト変態における炭化物析出を適度にコントロールして、ベイニティックフェライトを促進させることが重要であり、そのためにはパーライト変態およびベイナイト変態に大きく関与するC、Mn量と仕上圧延開始温度(FET)に着目し、最終冷却における冷却速度を次(1)式
A={(FET)/(C+Mn/6)}/100 ・・・(1)
で定義されるA℃/s以上の冷却速度とし、冷却停止温度を次(2)式
B={(C+Mn/6)×90000/(FET)}×10 ・・・(2)
で定義されるB℃以上(B+50)℃以下とすることがよいことを見出した。
(1)式は、C、Mnを多量に添加するとパーライト変態が遅延する効果と、低FETになるとフェライト変態が促進されて未変態オーステナイト中のC濃度が高まりパーライト変態を抑制する効果に着目し、種々実験の結果、見出したものである。
(2)式は、C、Mn量を多くするとMs点が低下して、マルテンサイト変態を抑制し、かつベイナイト変態での炭化物析出を抑制してベイニティックフェライトの形成を促進させる効果と低FETにすると2相分離が進んでベイナイト変態において適度に炭化物が析出しやすくなる効果に着目して種々実験の結果、見出したものである。
この組織分率の調整により、具体的には、歪速度:2000/sという高速変形下での引張強さTSまでの吸収エネルギーが170MJ/m以上、伸び特性、すなわち強度−伸びバランスTS×Elが25000MPa%以上という高速変形特性および伸び特性に優れた熱延鋼板が得られることを見出した。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)質量%で、C:0.05%以上0.3%以下、Si:0.5%以上3.0%以下、Mn:0.5%以上3.0%以下、P:0.030%以下、S:0.01%以下、Al:0.06%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、ベイニティックフェライトをベイナイトに対する面積率で30%以上60%以下含むベイナイトを組織全体に対する面積率で25%以上50%以下、残留オーステナイトを組織全体に対する面積率で3%以上20%以下、マルテンサイトを組織全体に対する面積率で5%以下、含み、残部がポリゴナルフェライトからなる組織を有することを特徴とする高速変形特性および伸び特性に優れた熱延鋼板。
(2)(1)において、前記組成に加えさらに、質量%で、Cr:2.0%以下を含むことを特徴とする熱延鋼板。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えさらに、質量%で、Ti:0.05%以下を含むことを特徴とする熱延鋼板。
(4)質量%で、C:0.05%以上0.3%以下、Si:0.5%以上3.0%以下、Mn:0.5%以上3.0%以下、P:0.030%以下、S:0.01%以下、Al:0.06%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を、1000℃以上1300℃以下に加熱し、仕上圧延開始温度:900℃以上1200℃以下、仕上圧延終了温度:Ar変態点以上とする熱間仕上圧延を施したのち、平均冷却速度:30℃/s以上で650℃以上800℃未満の範囲の冷却停止温度まで冷却する一次冷却を施し、ついで該一次冷却の冷却停止温度から平均冷却速度:10℃/s以下の冷却速度で冷却する二次冷却を3〜10s間施し、ついで次(1)式
A={(FET)/(C+Mn/6)}/100 ・・・(1)
(ここで、C、Mn:各元素の含有量(質量%)、FET:仕上圧延開始温度(℃))
で定義されるA℃/s以上の平均冷却速度で、次(2)式
B={(C+Mn/6)×90000/(FET)}×10 ・・・(2)
(ここで、C、Mn:各元素の含有量(質量%)、FET:仕上圧延開始温度(℃))
で定義されるB℃以上(B+50)℃以下の範囲の冷却停止温度まで冷却する三次冷却を施し、巻き取ることを特徴とする高速変形特性および伸び特性に優れた熱延鋼板の製造方法。
(5)(4)において、前記鋼素材がさらに、質量%で、Cr:2.0%以下を含む組成を有することを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
(6)(4)または(5)において、前記鋼素材がさらに、質量%で、Ti:0.05%以下を含む組成を有することを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
本発明によれば、高速変形(歪速度:2000/s)時の引張強さまでの吸収エネルギーが170MJ/m3以上と高く高速変形特性に優れ、かつTS×Elが25000MPa%以上と伸び特性に優れる熱延鋼板を安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、自動車用部品の板厚低減および自動車の衝突安全性向上を可能とし、自動車車体の高性能化に大きく寄与するという効果もある。
まず、本発明鋼板の組成限定理由について説明する。以下、質量%は単に%で記す。
C:0.05%以上0.3%以下
Cは、強度を増加させ、オーステナイトを安定化する作用を有する元素であり、所望の引張強さを確保し、さらに適正量の残留オーステナイトを生成させるためには0.05%以上の含有を必要とする。一方、0.3%を超える含有は、加工性や溶接性を著しく劣化させる。このため、Cは0.05%以上0.3%以下の範囲に限定した。なお、好ましくは0.12〜0.20%である。
Si:0.5%以上3.0%以下
Siは、炭化物の生成や、ベイニティックフェライトおよび残留オーステナイトの生成をコントロールするために重要な元素である。3面積%以上の残留オーステナイトを生成させるために、Si:0.5%以上の含有を必要とする。一方、3.0%を超えて多量に含有すると、延性や表面性状を劣化させる。このため、Siは0.5%以上3.0%以下の範囲に限定した。なお、好ましくは1.2%〜2.0%である。
Mn:0.5%以上3.0%以下
Mnは、強度を増加させる元素であり、所望の強度を確保するために本発明では0.5%以上の含有を必要とする。一方、3.0%を超える過剰な含有は、加工性や溶接性を著しく劣化させる。このため、Mnは0.5%以上3.0%以下に限定した。なお、好ましくは0.8%〜2.3%である。
P:0.030%以下
Pは、強度を上昇させる元素であるが粒界に偏析するため、過剰な含有は脆化の原因となる。このため、Pは0.030%以下に限定した。なお、好ましくは0.020%以下である。
S:0.01%以下
Sは、鋼中で非金属介在物として存在して、加工性を劣化させるため、できるだけ低減することが望ましいが、0.01%までは許容できる。このため、Sは0.01%以下に限定した。なお、好ましくは0.003%以下である。
Al:0.06%以下
Alは、脱酸剤として作用し、鋼の清浄度を向上させる有効な元素であり、0.01%以上含有することが望ましいが、0.06%を超える含有は、上記した効果が飽和するとともに、加工性や表面性状が劣化する。このため、Alは0.06%以下に限定した。
本発明では、上記した基本組成に加えてさらに、Cr:2.0%以下、および/または、Ti:0.05%以下を含有できる。
Cr:2.0%以下
Crは、残留オーステナイトを生成させるために有用な元素であり、必要に応じ、好ましくは0.05%以上含有できる。一方、2.0%を超える過剰な含有は、粗大なCr炭化物が生成して延性が劣化する。このため、Crは2.0%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.5%以下である。
Ti:0.05%以下
Tiは、炭窒化物を形成し、フェライトを細粒化させる作用を有し、強度上昇に有用な元素であり、必要に応じ好ましくは0.005%以上含有することができる。一方、0.05%を超える過度の含有は延性を劣化させる。このため、Tiは0.05%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.01〜0.03%である。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としては、N:0.01%以下、O:0.01%以下、が許容できる。
つぎに、本発明鋼板の組織限定理由について説明する。
本発明鋼板の組織は、組織全体に対する面積率で、ベイナイトを25〜50%、残留オーステナイト(残留γともいう)を3〜20%、マルテンサイトを5%以下、を含み、残部がポリゴナルフェライトからなる組織である。
ベイナイト:組織全体に対する面積率で、25%以上50%以下
ベイナイトが、組織全体に対する面積率で25%未満では、ベイナイト変態の進行にともなう未変態オーステナイト(γ)へのCの濃化が十分でなく、残留γ量が低くなり、伸び特性が低下する。一方、ベイナイトが面積率で50%を超えると、炭化物が過剰に析出し、残留γ量が低下する。このため、ベイナイトは面積率で25%以上50%以下に限定した。なお、好ましくは面積率で30%以上50%以下である。
なお、ここでいうベイナイトとは、ベイニティックフェライトをベイナイト全体に対する面積率で30〜60%含む相をいうものとする。ベイナイト中のベイニティックフェライトの面積率が30%未満では高速変形時の引張強さTSまでの吸収エネルギーが低下する。一方、ベイナイト中のベイニティックフェライトの面積率が60%を超えると、伸び特性が低下する。このため、ベイナイト中のベイニティックフェライトはベイナイト全体の面積率で30%以上60%以下に限定した。なお、好ましくは30%以上50%以下である。
ベイナイトとベイニティックフェライトは、ナイタール液(2%硝酸+エタノール)にて腐食した後の鋼板を260℃で4時間加熱後、光学顕微鏡で観察することにより区別できる(例えば、Proc. Int. Conf. on TRIP-Aided Strength Ferrous Alloys、2002年6月19〜21日、Technologisch Institut 他主催、 p153参照)。この処理により、光学顕微鏡の下では、ベイナイトは緑青色に、ベイニティックフェライトは薄茶色に着色されて観察できる。なお、本発明では、組織の観察は、鋼板のL断面(圧延方向に平行な断面)で、板厚の1/4位置で行なうものとする。
残留オーステナイト:組織全体に対する面積率で、3%以上20%以下
残留オーステナイトは、伸び特性を向上させ、強度−延性バランスTS×Elを25000MPa%以上とするために、組織全体に対する面積率で、3%以上の含有を必要とする。一方、20%を超えると、強度の低下が著しくなる。このため、残留オーステナイトは組織全体に対する面積率で、3%以上20%以下に限定した。なお、好ましくは5%以上15%未満である。
マルテンサイト:組織全体に対する面積率で、5%以下
マルテンサイトは、高速変形特性を向上させるが、残留オーステナイトほど伸び特性を効率的に上昇させないため、本発明では、マルテンサイトは極力低減させる必要があるものの、5%までは許容できる。5%を超えて含有すると、強度−伸びバランスTS×Elが25000MPa%以上を確保することが困難となる。このため、マルテンサイトは、組織全体に対する面積率で、5%以下に限定した。
なお、上記した相以外の残部は、ポリゴナルフェライトである。
次に、本発明鋼板の製造条件について説明する。
本発明では、上記した組成の鋼素材を、1000℃以上1300℃以下に加熱し、仕上圧延開始温度:900℃以上1200℃以下、仕上圧延終了温度:Ar変態点以上とする熱間仕上圧延を施し、熱延鋼板とする。
鋼素材の加熱温度:1000℃以上1300℃以下
仕上圧延終了温度をAr変態点以上とするためには、鋼素材の加熱温度が1000℃以上とする必要がある。一方、1300℃を超えて加熱するとオーステナイト粒が粗大化しすぎ、伸び特性が劣化する。このため、鋼素材の加熱温度は1000℃以上1300℃以下に限定することが好ましい。
上記の温度に加熱した鋼素材(スラブやブルームなどの鋼片)は常法により粗圧延してシートバーとし、ひきつづき仕上圧延を行う。
仕上圧延開始温度:900℃以上1200℃以下
仕上圧延開始温度が900℃未満では、仕上圧延中にフェライト変態が生じ、熱延鋼板中に加工組織が残存し、延性の低下を招く。一方、仕上圧延開始温度が1200℃を超えると、オーステナイト粒が粗大化しフェライト変態が遅延することに起因して、伸び特性、成形性の劣化を招く。このため、仕上圧延開始温度は900℃以上1200℃以下に限定した。
仕上圧延終了温度:Ar変態点以上
仕上圧延の終了温度が、Ar変態点未満ではフェライト+オーステナイトの二相状態で圧延されるため、フェライト中の歪が開放されにくく、伸び特性が劣化する。このため、仕上圧延終了温度はAr変態点以上に限定した。なお、Ar3変態点は、例えば次式にて求めることができる。
Ar=910−310×C+44.7×Si−60×Mn−15×Cr
(式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)である。)
熱間圧延終了後、熱延鋼板は一次から三次までの三段階の冷却を順次施されて巻き取られる。
一次冷却:平均冷却速度:30℃/s以上で650℃以上800℃未満の範囲の冷却停止温度まで冷却
一次冷却では、30℃/s以上の平均冷却速度で、冷却停止温度:650℃以上800℃未満の範囲の温度まで冷却する。なお、一次冷却での、平均冷却速度は、仕上圧延終了温度から冷却停止温度までの平均冷却速度である。冷却速度が30℃/s未満では、冷却途中でパーライト変態が生じ、高速変形特性が低下する。このため、一次冷却の平均冷却速度は30℃/s以上に限定した。また、一次冷却の冷却停止温度が650℃未満では、パーライト変態が生じて、高速変形特性が劣化する。一方、800℃以上では、フェライト相の析出が十分でなく伸び特性が低下する。
二次冷却:一次冷却の冷却停止温度から3〜10s間、平均冷却速度:10℃/s以下の冷却速度で冷却する
二次冷却は、フェライト相を十分析出させる目的で行なう。冷却は空冷などにより行い、平均冷却速度:10℃/s以下の冷却速度とする。この平均冷却速度が10℃/sを超えるとフェライト相が十分に析出しない。また、冷却時間が3s未満では、フェライトが十分に析出しないため、目的の組織が得られない。一方、冷却時間が10sを超えて長くなっても、得られる組織に大きな変化がなく、却って生産性が低下する。このため、二次冷却の冷却時間は3〜10sに限定した。
三次冷却:二次冷却後、(1)式で定義されるA℃/s以上の平均冷却速度で、(2)式で定義されるB℃以上(B+50)℃以下の範囲の冷却停止温度まで冷却
三次冷却は、ベイナイトおよびベイニティックフェライトを所望の組織分率に調整するために重要となる。
所望のベイナイトおよびベイニティックフェライトの組織分率を得るためには、パーライト変態を回避し、かつベイナイト変態における炭化物析出を適度にコントロールしなければならない。
三次冷却における冷却速度は、次(1)式
A={(FET)/(C+Mn/6)}/100 ・・・(1)
(ここで、C、Mn:各元素の含有量(質量%)、FET:仕上圧延開始温度(℃))
で定義されるA℃/s以上の平均冷却速度とする。平均冷却速度(℃/s)がA値未満では、パーライトが過剰に生成して伸び特性が劣化する。(1)式は、C、Mnを多量に添加するとパーライト変態が遅延する効果と、低FETになるとフェライト変態が促進されて未変態オーステナイト中のC濃度が高まりパーライト変態を抑制する効果の両者に着目して得られたものである。
また、三次冷却の冷却停止温度が、次(2)式
B={(C+Mn/6)×90000/(FET)}×10 ・・・(2)
(ここで、C、Mn:各元素の含有量(質量%)、FET:仕上圧延開始温度(℃))
で定義されるB℃未満では、マルテンサイトが過剰に生成してベイニティックフェライト量が低下し、高速変形特性および伸び特性が劣化する。一方、三次冷却の冷却停止温度が、(B+50)℃を超えると、炭化物が過剰に析出して所望のベイニティックフェライト量が確保できなくなり、高速変形特性が劣化する。(2)式は、C、Mn量を多くするとMs点が低下して、マルテンサイト変態を抑制し、かつベイナイト変態での炭化物析出を抑制してベイニティックフェライトの形成を促進させる効果および低FETにすると2相分離が進んでベイナイト変態において適度に炭化物が析出しやすくなる効果に着目して得られたものである。
なお、本発明では、上記三次冷却の冷却温度まで冷却して、巻き取る。ここで、いわゆる巻取り温度は、三次冷却の冷却停止温度となる。
表1に示す組成の溶鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法によりスラブ(板厚:260mm)となし、鋼素材とした。これら鋼素材に、表2に示す条件の加熱、仕上圧延の熱間圧延および表2に示す一次〜三次冷却を施し、巻き取り、板厚2.0mmの熱延鋼板とした。
得られた熱延鋼板について、ミクロ組織、引張特性、高速変形特性を調査した。
なお、表1のAr3変態点は、下記式により求めた。
Ar3(℃)=910−310×C+44.7×Si−60×Mn−15×Cr
(式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)である。)
(1)ミクロ組織
得られた熱延鋼板のL断面(圧延方向に平行な断面)から試験片を採取しミクロ組織を観察した。各鋼板の板厚1/4位置をナイタール液(2%硝酸+エタノール)にて腐食した後、260℃で4時間加熱後、光学顕微鏡で観察した。なお、ベイナイトは緑青色に着色された領域、ベイニティックフェライトはベイナイト中に存在する薄茶色に着色されたラス状の領域、フェライトはベイナイト中以外に存在する薄茶色に着色された領域、マルテンサイト、残留オーステナイトは、白色に着色された領域として分別した。
上記のように分別したのち、画像解析装置により、ベイナイト、ベイニティックフェライトおよびフェライトの組織分率を定量化した。なお、残留オーステナイト量は、板厚の1/4位置で、X線源にMoを使用したX線回析装置により、α−Feの(200)、(211)、(220)面、γ−Feの(200)、(220)、(311)面を測定して、各回析ピークの積分強度より算出した。また、マルテンサイトの分率は上記の白色に着色された面積から残留オーステナイト量を差引いた値として求めた。
(2)引張特性
得られた熱延鋼板からJIS5号試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して、引張強さTSおよび伸びElを求めた。
(3)高速変形特性
高速変形は、歪速度:2000/sで高速引張試験を実施し、得られた応力−歪曲線より引張強さTSまでの吸収エネルギーを求めた。なお、高速引張試験は、鉄と鋼、vol.83(1997)p.748に記載された方法に準じて行なった。
得られた結果を表3に示す。
Figure 2005256066
Figure 2005256066
Figure 2005256066
本発明例は、いずれも伸び特性に優れ、強度−伸びバランスTS×Elが25000MPa%以上を有し、かつ歪速度:2000/sでのTSまでの吸収エネルギーが170MJ/m以上と、高速変形特性に優れている。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、伸び特性が低下し強度−伸びバランスTS×Elが25000MPa%未満か、あるいは高速変形特性が低下しているか、あるいは伸び特性と高速変形特性のいずれも低下している。

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C:0.05%以上0.3%以下、 Si:0.5%以上3.0%以下
    Mn:0.5%以上3.0%以下、 P:0.030%以下、
    S:0.01%以下、 Al:0.06%以下
    を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、ベイニティックフェライトをベイナイトに対する面積率で30%以上60%以下含むベイナイトを組織全体に対する面積率で25%以上50%以下、残留オーステナイトを組織全体に対する面積率で3%以上20%以下、マルテンサイトを組織全体に対する面積率で5%以下、含み、残部がポリゴナルフェライトからなる組織を有することを特徴とする高速変形特性および伸び特性に優れた熱延鋼板。
  2. 前記組成に加えさらに、質量%で、Cr:2.0%以下を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼板。
  3. 前記組成に加えさらに、質量%で、Ti:0.05%以下を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の熱延鋼板。
  4. 質量%で、
    C:0.05%以上0.3%以下、 Si:0.5%以上3.0%以下、
    Mn:0.5%以上3.0%以下、 P:0.030%以下、
    S:0.01%以下、 Al:0.06%以下
    を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を、1000℃以上1300℃以下に加熱し、仕上圧延開始温度:900℃以上1200℃以下、仕上圧延終了温度:Ar変態点以上とする熱間仕上圧延を施したのち、平均冷却速度:30℃/s以上で650℃以上800℃未満の範囲の冷却停止温度まで冷却する一次冷却を施し、ついで該一次冷却の冷却停止温度から平均冷却速度:10℃/s以下の冷却速度で冷却する二次冷却を3〜10s間施し、ついで下記(1)式で定義されるA℃/s以上の平均冷却速度で、下記(2)式で定義されるB℃以上(B+50)℃以下の範囲の冷却停止温度まで冷却する三次冷却を施し、巻き取ることを特徴とする高速変形特性および伸び特性に優れた熱延鋼板の製造方法。

    A={(FET)/(C+Mn/6)}/100 ・・・(1)
    B={(C+Mn/6)×90000/(FET)}×10 ・・・(2)
    ここで、C、Mn:各元素の含有量(質量%)
    FET:仕上圧延開始温度(℃)
  5. 前記鋼素材がさらに、質量%で、Cr:2.0%以下を含む組成を有することを特徴とする請求項4に記載の熱延鋼板の製造方法。
  6. 前記鋼素材がさらに、質量%で、Ti:0.05%以下を含む組成を有することを特徴とする請求項4または5に記載の熱延鋼板の製造方法。
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