JP2005255645A - 医薬品組成物及び飲食物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、これまで知られている歯の再石灰化促進物質を上回る優れた歯の再石灰化促進作用を有する医薬品組成物及び飲食物を提供することにある。
【解決手段】 ポリグルタミン酸を含有することを特徴とし、歯の再石灰化促進に有効な医薬品組成物及び飲食物;無機カルシウム及び/又は有機カルシウムを更に含有することを特徴とする前記医薬品組成物及び飲食物;非発酵性糖類を更に含有することを特徴とする前記医薬品組成物及び飲食物。
【選択図】 なし

Description

本発明は医薬品組成物及び飲食物に関し、詳しくは、ポリグルタミン酸を含有し、歯の再石灰化促進に有効な医薬品組成物及び飲食物に関する。
う蝕は、歯面への歯垢の堆積、及びそれに続く歯垢内の微生物(う蝕原因細菌)が産生する有機酸によって開始される。有機酸は、歯垢内、ひいては歯の表面のpHを5.5以下に低下させ酸性pH環境を誘導し、その結果、歯面表層下のヒドロキシアパタイトを構成するカルシウムイオンやリン酸イオンが溶出し、表層下脱灰が生じる。
歯の表面では、通常、表層の崩壊(脱灰)及び修復(再石灰化)が常に繰り返されているが、表層下脱灰が進むと、脱灰が再石灰化より優勢となり、表層が崩壊し歯面に修復不可能なう蝕が生じる。
従って、う蝕予防のためには、再石灰化が脱灰を上回る状態に持って行くことが重要である。
う蝕の原因である有機酸は、う蝕原因細菌が食物中の蔗糖や果糖などの糖質を分解して産生される。これに対し、甘味を呈するにもかかわらず、う蝕原因細菌により分解されない糖アルコール類が各種開発され、蔗糖や果糖などに代わりうるう蝕の原因とならない糖として認知されてきた。
しかしながら、これらの糖アルコール類のほとんどは、う蝕原因細菌のエネルギー源として利用されないものに過ぎず、再石灰化を促進する機能までは有していない。僅かにキシリトールについて、再石灰化が期待できると報告されているが(非特許文献1参照)、in situにおける実験の結果、再石灰化はキシリトール自体の効果ではなく、キシリトールの甘味により唾液が多く出ることによる間接的な効果であるとの報告もある(非特許文献2参照)。
歯の再石灰化促進作用を示す製品として、下記の3種のチューインガムが特定保健用食品としての表示許可(平成15年9月現在)を得ている。
(製品1)カゼインホスホペプチド(以下、「CPP」と言う。)と非晶質リン酸カルシウム(以下、「ACP」と言う。)の組み合わせを含有するチューインガム(特許文献1参照)。
(製品2)キシリトール、第二リン酸カルシウム、及びフクロノリ抽出物(硫酸化多糖の一種。以下、「フノラン」と言う。)の組み合わせを含有するチューインガム(非特許文献3及び非特許文献4参照)。
(製品3)リン酸化オリゴ糖カルシウム(以下、「ポスカ」と言う。)を含有するチューインガム(非特許文献5参照)。
上記各製品には、いずれもカルシウムを可溶化する成分が含まれており、具体的には(製品1)ではCPPが、(製品2)ではフノランが、(製品3)ではポスカが含まれている。いずれの成分も、カルシウムと結合する酸性基((製品1)及び(製品3)ではリン酸基、(製品2)では硫酸基)を有している。
カルシウムは、食品中のリン酸と結合すると、通常不溶性の燐酸カルシウムとなって析出し生体がカルシウムとして利用できなくなるが、上記各成分の酸性基はカルシウムと可逆的に結合することが可能であるので、各製品を食べると、カルシウムが口腔内で可溶化状態となり、歯の再石灰化に動員されることになる。
これらの製品は、ある程度の再石灰化効果を発揮することができるが、更に優れた歯の再石灰化促進作用を有する新たな有効成分の出現が待望されていた。
見明 康雄ら:エナメル質脱灰層の再石灰化に及ぼすキシリトールの効果に関する研究,歯科学報 Vol.99(5),393−399(1999) 飯島 洋一ら:砂糖代替甘味料のin situにおける再石灰化能,口腔衛生会誌 49(5),803−808(1999) 鵜澤 昌好:シリーズ「ヘルスクレームの科学的根拠」−7−『キシリトール+2』製品の再石灰化促進効果,ILSIイルシー No.76,5−12(2003) Thomas Imfeldら:フクロノリ抽出物およびリン酸一水素カルシウム配合キシリトールタブレットのう蝕誘発能の評価,健康・栄養食品研究 Vol.5,No.4,23−31(2002) 稲葉 大輔ら:リン酸化オリゴ糖カルシウム配合ガム「ポスカム」の再石灰化促進効果,デンタル・マンスリーレポートNo.207,株式会社モリタ編集・発行(2003) 国際公開第02/094204号パンフレット
本発明の目的は、これまで知られている歯の再石灰化促進物質を上回る優れた歯の再石灰化促進作用を有する医薬品組成物及び飲食物を提供することにある。
本発明者らは、カルシウムと酸性基との結合状態が、酸性基の種類、酸性基が結合している分子の構造等によってさまざまであり、これが歯の再石灰化促進作用にも影響する可能性が高いことに着目し、新たなカルシウム可溶化成分に関する研究を進め、その過程で、カルシウムと結合する部位がカルボキシル基である、ポリグルタミン酸に着目した。
ポリグルタミン酸は、グルタミン酸の重合体であり、納豆菌のネバネバの主成分として知られている。ポリグルタミン酸の分子量は、納豆菌の培養時間、精製法などにより数万〜数百万まで様々であるが、構成成分であるグルタミン酸の数だけカルボキシル基が存在している。
ポリグルタミン酸は、小腸において、カルシウムの可溶化に働きその吸収を促進することが知られており(特開平3−30648号公報や特開平5−95767号公報参照)、カルシウムの吸収を助けるサプリメントとして市販されてもいるが、口腔内におけるカルシウムの可溶化に関しては全く報告されていない。
そこで、本発明者らは、ポリグルタミン酸のカルシウム可溶化能が口腔内でも発揮されるか、ひいては歯の再石灰化に応用できるか否かを、歯のエナメル質表面へのポリグルタミン酸処理により実際に検討したところ、驚くべきことに、ポリグルタミン酸が脱灰と再石灰化の平衡を再石灰化に傾けることを見出した。
更に、唾液にはもともとカルシウムが含まれていること、及び、本発明者らの研究から明らかなようにポリグルタミン酸には唾液分泌促進作用があること(特願2003−388809号明細書参照)に鑑みると、ポリグルタミン酸は、それ自身がカルシウムを可溶化して再石灰化を直接促進するだけでなく、唾液分泌を促進して再石灰化を間接的に促進する相乗的な効果をも期待できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、請求項1記載の本発明は、ポリグルタミン酸を含有することを特徴とし、歯の再石灰化促進に有効な医薬品組成物である。
請求項2記載の本発明は、無機カルシウム及び/又は有機カルシウムを更に含有することを特徴とする請求項1記載の医薬品組成物である。
請求項3記載の本発明は、非発酵性糖類を更に含有することを特徴とする請求項1又は2記載の医薬品組成物である。
請求項4記載の本発明は、ポリグルタミン酸を含有することを特徴とし、歯の再石灰化促進に有効な飲食物である。
請求項5記載の本発明は、無機カルシウム及び/又は有機カルシウムを更に含有することを特徴とする請求項3記載の飲食物である。
請求項6記載の本発明は、非発酵性糖類を更に含有することを特徴とする請求項3又は4記載の飲食物である。
本発明によれば、歯の再石灰化促進に有効な医薬品組成物及び飲食物が提供される。すなわち、本発明の医薬品組成物及び飲食物を摂取することにより、有効成分であるポリグルタミン酸が脱灰と再石灰化の平衡を再石灰化に傾けるとともに、唾液分泌を促進して唾液中のカルシウムによる再石灰化をも促進することができる。
本発明の医薬品組成物及び飲食物は、請求項1及び4にそれぞれ記載するように、ポリグルタミン酸を含有することを特徴とする。このように、所定の分子量のポリグルタミン酸を有効成分とすることにより、ポリグルタミン酸のカルボキシル基がカルシウムを可逆的に補足するので、カルシウムの可溶化が促され、歯の再石灰化の促進に有効である。
ここで、ポリグルタミン酸は、前述したようにグルタミン酸の重合体である。本発明においては、グルタミン酸がα結合又はγ結合によって重合したものを用いることが好ましい。また、ポリグルタミン酸の分子量に関しても特に限定はないが、好ましくは平均分子量が1万〜200万のものを用いることが好ましい。また、構成分子であるグルタミン酸の立体化学についても、特に限定はなく、D型又はL型のグルタミン酸が任意の割合で混合されているものを用いることができる。
このようなポリグルタミン酸は、納豆菌などのポリグルタミン生産菌を利用して製造しても良いし、市販品を用いることもできる。純度に関しては、特に限定されず、必ずしも高い必要は無い。
ポリグルタミン酸の含有量は、歯の再石灰化促進効果が発揮される量とすることができ、一般に、乾燥形態の場合、0.1〜10%、特に0.5〜5%とすることが好ましく、飲料形態の場合、0.01〜5%、特に0.1〜3%とすることが好ましい。
本発明の医薬品組成物及び飲食物は、カルシウムを更に含有すると、ポリグルタミン酸がカルシウムを利用して効率良く歯の再石灰化を促進するので好ましく、具体的には請求項2及び5に記載するように、無機カルシウム及び/又は有機カルシウムを更に含有することが好ましい。
ここで、無機カルシウムとは、カルシウムが結合した無機化合物を意味し、具体的には炭酸カルシウム、ハイドロキシアパタイトなどを挙げることができる。
有機カルシウムとは、カルシウムが結合した有機化合物を意味し、具体的には乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウムなどを挙げることができる。
無機カルシウム及び/又は有機カルシウムの含有量は、歯の再石灰化促進効果が妨げられないことを条件に、通常医薬品組成物や飲食物に配合される量とすることができる。
また、本発明の医薬品組成物及び飲食物は、請求項3及び6に記載するように、非発酵性糖類を更に含有することが好ましい。非発酵性糖類を含有させることにより、虫歯原因菌により消化されないため有機酸が産生されず、歯垢もできにくくするといった効果も期待することができる。このような非発酵性糖類の具体例としては、キシリトール、還元パラチノースなどを挙げることができる。
非発酵性糖類の含有量は、歯の再石灰化促進効果が妨げられないことを条件に、通常医薬品組成物や飲食物に配合される量とすることができ、一般に、1〜10gとすることが好ましい。
本発明の医薬品組成物及び飲食物は、上記成分以外に、通常の医薬品組成物及び飲食物に含ませることのできる成分を配合することができる。また、その製法についても、上記成分を含有させることを除き、通常の医薬品組成物及び飲食物の製造と同様の条件及び手順にて製造することができる。
本発明の医薬品組成物及び飲食物の形態については、口から摂取する形態であれば、飲料形態、ゲル状形態、ガム状形態、固形状形態、分粒状形態などいずれの形態であっても良く、特に限定されない。具体的には、人工唾液、練歯磨、液状歯磨、口腔用軟膏、洗口液、うがい用錠剤、トローチ、キャンディ、チューインガム、ドリンク、グミなどとすることができる。
このような本発明の医薬品組成物及び飲食物は、歯の再石灰化促進に有効である。すなわち、有効成分であるポリグルタミン酸が脱灰と再石灰化の平衡を再石灰化に傾けるとともに、唾液分泌を促進して唾液中のカルシウムによる再石灰化をも促進することができる。このような歯の再石灰化促進効果を得るための摂取量の目安としては、医薬品組成物や飲食物の形態、歯の状態などにもよるが、本発明の医薬品組成物及び飲食物をポリグルタミン酸に換算して1日あたり10mg〜1gとなるように摂取することが望ましい。例えば、ポリグルタミン酸を0.5%含有するガム様食品(5g)を、毎食後及び就寝前(1日4回)に摂取することにより、適量を摂取することができる。
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
実施例1[ポリグルタミン酸のエナメル質に対する再結晶化促進能]
(試料調製)
白斑やクラックが無く、また保存・補綴処置の施されていないヒト抜去歯を用い、歯根部を切断除去後、エナメル質表面の汚れを除去する目的で歯磨剤を用いてエナメル質表面を刷掃した。さらに走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」と言う。)での観察に適した形状に切り出した。こうして切り出されたヒトエナメル質ブロックを、0.1N−HClを用いて60秒間エッチングした後、流水にて水洗を行い試料とした。
(処理溶液の調製)
1.0%のリン酸カルシウム懸濁溶液中に、ポリグルタミン酸を各々0.5、1.0、3.0wt%の濃度となるように調製し、3種類の処理溶液を作成した。
(浸漬処理)
上記試料を上記処理溶液に浸漬し、37℃インキュベータ中で2時間静置した。尚、静置中、処理溶液中のリン酸カルシウムが沈降しないように攪拌を行った。
(観察試料の作成及びSEMによる観察)
処理溶液に浸漬した後の試料をイオン交換水に浸漬し、超音波洗浄を行った。
その後、常法に従い、エタノール昇順脱水法にて試料の脱水を行い、t−ブチルアルコールにて溶液置換し凍結乾燥を行った。さらに観察のために、SEM観察台の試料を固定後、イオンスパッタリング装置を用いPt−Pdコートを行い、観察試料とした。
SEMとして日立製作所製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、加速電圧5kv、加速電流37mA、W.D.=5mmの条件にて、観察倍率1000倍、3000倍、及び10000倍において、観察試料のエナメル質表面の観察を行った。
(考察)
SEMによる観察の結果、いずれの処理溶液で浸漬処理した試料もエッチング表面にHAP粒子がコーティングされており、再結晶化促進効果が認められた。
試料のエッチング表面におけるハイドロキシアパタイト粒子のコーティングの程度は、処理溶液におけるポリグルタミン酸の濃度によって異なっていた。
まず、ポリグルタミン酸添加濃度0.5wt%の処理溶液で処理した試料の場合は、エッチング表面に特有の馬蹄形状が確認されたことから、ポリグルタミン酸添加濃度0.5%ではハイドロキシアパタイト粒子のコーティング層が形成されるものの、層が未だ薄く、表面を平滑化するに至らなかったと考えられる。
次に、ポリグルタミン酸添加濃度1.0wt%の処理溶液で処理した試料の場合は、部分的にコーティングの不均一性から生じる間隙が認められたが、表面の大半が均一にコーティングされた平滑な表面であった。
さらに、ポリグルタミン酸添加濃度3.0wt%の処理溶液で処理した試料の場合は、上記1.0wt%の処理溶液で処理した試料の場合よりもコーティングが進んでおり、その程度が部分的に異なるために結果的に凹凸のある表面が観察された
これらの結果から、ポリグルタミン酸が歯のエナメル質の再石灰化を促進することが証明された。
以下に処方例を示す。下記の医薬品組成物及び飲食物は、いずれも良好な歯の再石灰化促進効果を有する。
実施例2[人口唾液]
Figure 2005255645
実施例3[練歯磨]
Figure 2005255645
実施例4[練歯磨]
Figure 2005255645
実施例5[液状歯磨]
Figure 2005255645
実施例6[口腔用軟膏]
Figure 2005255645
実施例7[洗口液]
Figure 2005255645
実施例8[うがい用錠剤]
Figure 2005255645
実施例9[トローチ]
Figure 2005255645
実施例10[キャンディ]
Figure 2005255645
実施例11[チューインガム]
Figure 2005255645
実施例12[ドリンク]
Figure 2005255645
実施例13[グミ]
Figure 2005255645
本発明によれば、歯の再石灰化促進に有効な医薬品組成物及び飲食物が提供される。すなわち、本発明の医薬品組成物及び飲食物を摂取することにより、有効成分であるポリグルタミン酸が脱灰と再石灰化の平衡を再石灰化に傾けるとともに、唾液分泌を促進して唾液中のカルシウムによる再石灰化をも促進することができる。

Claims (6)

  1. ポリグルタミン酸を含有することを特徴とし、歯の再石灰化促進に有効な医薬品組成物。
  2. 無機カルシウム及び/又は有機カルシウムを更に含有することを特徴とする請求項1記載の医薬品組成物。
  3. 非発酵性糖類を更に含有することを特徴とする請求項1又は2記載の医薬品組成物。
  4. ポリグルタミン酸を含有することを特徴とし、歯の再石灰化促進に有効な飲食物。
  5. 無機カルシウム及び/又は有機カルシウムを更に含有することを特徴とする請求項3記載の飲食物。
  6. 非発酵性糖類を更に含有することを特徴とする請求項3又は4記載の飲食物。
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