JP2005251715A - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 一部又は全体に電気導電性を有する炭素質多孔体を基材10とし、該基材の表面に電極/電解質12/電極13の各層を形成した単位セル14を備え、上記基材10に液体燃料(メタノール液)30を浸透させると共に、基材10の外表面に形成される電極13面を空気に曝す構造を具備してなることを特徴とする燃料電池A。
【効果】 電気導電性を有する炭素質多孔体を電極・集電体、液体燃料又はガスの浸透媒体、及び電池支持体として共有することにより、セパレータを不要とすることができるので、この不要となった空間をガス又は液体燃料の対流・拡散の場に利用することで、燃料電池システムの小型化と高出力化を発揮することができる燃料電池が提供される。
【選択図】 図2
Description
このタイプの燃料電池にあっては、補機を要することによりシステムの小型化が困難なこと、電池出力の多くの部分を補機動力にとられること、ポンプやブロワーから騒音がでるなどの課題がある。
しかしながら、このタイプの燃料電池では、セパレータを用いることができないので、シート状の単位セルの接合体は二次元平面上に接続せざるを得ず、その結果3次元空間を有効に利用しての電池接合(スタック化)ができないという課題がある。
(1) 電気導電性を有する炭素質多孔体を基材とし、該基材の表面に電極/電解質/電極の各層を形成した単位セル又は該単位セルを2以上連結した連結体を備え、上記基材に液体燃料を浸透させると共に、基材の外表面に形成される電極面を空気に曝す構造を具備してなることを特徴とする燃料電池。
(2) 電気導電性を有する炭素質多孔体を基材とし、該基材の表面に電極/電解質/電極の各層を形成した単位セル又は該単位セルを2以上連結した連結体を備え、上記基材に空気を拡散又は対流させると共に、基材の外表面に形成される電極面を液体燃料に曝す構造を具備してなることを特徴とする燃料電池。
(3) 前記基材は、少なくとも一部に電気導電性を有する上記(1)又は(2)記載の燃料電池。
(4) 前記基材は、少なくとも一部が炭素質多孔体からなる上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の燃料電池。
(5) 前記基材となる炭素質多孔体が平均孔径1〜100μm、気孔率10〜85%であり、かつ、毛管現象により液浸透性を有する上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の燃料電池。
(6) 前記基材となる炭素質多孔体が、アモルファス炭素又はアモルファス炭素と炭素粉末との複合体からなる上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の燃料電池。
(7) 前記基材となる炭素質多孔体の形状が、板状、円柱状、角柱状及び筒状から選ばれる少なくとも1種である上記(1)〜(6)の何れか一つに記載の燃料電池。
(8) 前記基材となる炭素質多孔体の内部には、貫通孔を有する上記(1)〜(7)の何れか一つに記載の燃料電池。
(9) 単位セルには、電極層を有しない対向側に液体燃料の吸液及び空気拡散を調整する隔壁体が設けられる上記(1)〜(8)の何れか一つに記載の燃料電池。
(10) 単位セルを2以上連結した連結体は、各セル間が等間隔に連結される上記(1)〜(9)の何れか一つに記載の燃料電池。
(11) 単位セル同士の電気的接続が直列接続又は並列接続及びその組み合わせからなる請求項1〜10の何れか一つに記載の燃料電池。
(12) 液体燃料がメタノール液、エタノール液、ジメチルエーテル、ギ酸、ヒドラジン、アンモニア液から選ばれる上記(1)〜(11)の何れか一つに記載の燃料電池。
(13) 液体燃料がメタノール液であり、その濃度が0.5〜20M(mol/L)である上記(1)〜(11)の何れか一つに記載の燃料電池。
図1及び図2は、本発明の第1実施形態を示す燃料電池Aを示すものである。
この第1実施形態を示す燃料電池Aは、図1(a)に示すように、電気導電性を有する炭素質多孔体を基材10とし、該基材10の表面に電極11/電解質12/電極13の各層(MEA)を形成した単位セル(燃料電池セル)14を備えている。
アモルファス炭素は、焼成により5%以上の炭化収率を示すもので、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化塩化ビニル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル−ポリ酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、イミド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、セルロース、アラビアガムなどの天然高分子物質等から選ばれる少なくとも1種の原料を焼成することなどにより得られる。
また、炭素粉末としては、例えば、黒鉛、タール状物質を更に乾留して得られるピッチ、炭素繊維、カーボンナノチューブ、メソカーボンマイクロビーズから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
上記アモルファス炭素と炭素粉末との複合体は、全量に対して、粒径を調整したアモルファス炭素原料50〜100重量%と炭素粉末0〜50重量%とを混合したものを、例えば、不活性雰囲気中で700℃以上で炭素化することなどにより得られる。
更に好ましくは、平均孔径5〜70μm、気孔率20〜70%とし、かつ、毛管現象により液浸透性を有するものであることが特に望ましい。
なお、上記平均孔径(1〜100μm)、気孔率(10〜85%)などが上記各範囲外となる場合は、電気導電性、液体燃料及びガスの浸透媒体、並びに、電池支持体としての機能に不都合を生じることがあり、好ましくない。
また、液浸透性を向上させるためには、更に、得られた基材に、空気酸化、電気化学的な酸化などの処理を施してもよい。
また、本発明では、基材10は、少なくとも一部に電気導電性を有してもよく、及び/又は、少なくとも一部が炭素質多孔体からなるものであってもよいものである。
例えば、図1(c)に示すように、基材10の一部を非導電性多孔体10aとし、他方を導電性多孔体10bとしたものであってもよい。この場合、導電性多孔体10bの表面にMEAが形成される。
また、図1(d)に示すように、基材10の上部及び下部を非導電性多孔体10aとし、その他を導電性多孔体10bとしたものであってもよい。この場合、導電性多孔体10bの表面にMEAが形成される。
更に、図1(e)に示すように、基材10の一部を導電性又は非導電性となる非多孔体10cとし、他方を導電性多孔体10bとしたものであってもよい。この場合、導電性多孔体10bの表面にMEAが形成される。
電解質層12は、プロトン伝導性又は水酸化物イオン伝導性を有するイオン交換膜、例えば、ナフィオン112、同117(Nafion、以上、Du pont社製)等を用いたフッ素系イオン交換膜が用いられる他、耐熱性、メタノールクロスオーバーの抑制が良好なもの、例えば、無機化合物をプロトン伝導材料とし、ポリマーを膜材料としたコンポジット(複合)膜、具体的には、無機化合物としてゼオライトを用い、ポリマーとしてスチレン−ブタジエン系ラバーからなる複合膜、炭化水素系グラフト膜なども用いることができる。
また、電極13は、カーボンペーパーなどの多孔質構造からなるシート状炭素多孔体に白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等を塗布などにより担持させた空気極である。
得られた単位セル(燃料電池セル)14は、液体燃料を収容すると共に、該単位セル(燃料電池セル)14を保持するホルダー体20に保持されるものとなる。
ホルダー体20は、図2(a)及び(b)に示すように、一方側が開口した断面凹状の形状となって内部が液体燃料30を収容する液体燃料収容部21となっており、空気極13が外表面(大気側)となるように取付部材22,22で単位セル(燃料電池セル)14がホルダー体20内に取り付けられている。
このホルダー体20の材質としては、収容される液体燃料に対して保存安定性、耐久性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、ステンレスなどの金属製、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの合成樹脂が挙げられる。また、図示符号23は、蓋部を有する燃料供給孔であり、また、図示符号11a,13aはそれぞれ燃料極端子、空気極端子である。
好ましくは、コスト、供給性、反応活性の高さなどの点から、メタノール液が望ましく、その濃度は、0.5〜20M(mol/L)とすることが好ましく、更に好ましくは、5〜18Mとすることが望ましい。従来においては、通常1〜3Mのメタノール濃度に最適値が見られ、それ以上の濃度ではメタノールのクロスオーバーのため性能が低下しているものであったが、本発明では、上記各特性を有する基材を用いると、従来において使用されなかった5M以上、特に10M以上の高濃度のメタノール液も使用することができる。これは、未だ理由を明確にできていないが、恐らく多孔質基材が電解質膜でのメタノールのクロスオーバーを抑制する効果を持つこと、具体的には、電解質膜に接する多孔質基材の表面部分に反応生成物である二酸化炭素のガス相が形成、保持され、それによりメタノールのクロスオーバーが抑制されるものと推察される。高濃度のメタノール液の使用は、燃料のエネルギー密度を上げるため、少量の燃料での長時間の発電や、燃料槽の小型化に有利になるという優れた特性をもたらす。また、本発明では、後述する実施例等で示すように、メタノール1molと水1molを混合した液体のメタノール濃度(17.1M)も使用でき、効率よく、理想の濃度を利用できることとなる。
本実施形態では、基材10が上記特性、すなわち、電気導電性を有すると共に、液体燃料及びガスの浸透媒体、並びに、電池支持体として機能するので、液体燃料は外部に漏出することがなく、燃料電池Aを縦型配置〔図2(a)〕、横型配置〔図2(b)〕にされても、燃料収容部21から単位セル14に直接液体燃料が途絶えることなく安定的に、かつ、継続的に供給することができるものとなる。
更に、この実施形態では、燃料供給孔23より液体燃料を補充することで、燃料の補充が簡単にできると共に、液体燃料を安定的に供給することができる。
更にまた、本実施形態では、燃料電池セル14を1つ使用した形態を示したが、後述するように、燃料電池セル14を連結構造(直列又は並列、並びにこれらの組み合わせ)とすることにより所要の起電力(高出力化)等とすることができる。
この燃料電池セル15は、図3(a)及び(b)に示すように、上記各特性を有する板状となる炭素質多孔体を基材10とし、該基材10の表面(両面)に電極11/電解質12/電極13の各層(MEA)を形成したものであり、基材10の上部面にガス抜き及び液体燃料浸透促進のための通気通液孔16,16…を有する通気孔部材17が取り付けられたものである。なお、上記通気通液孔16には、液体燃料浸透促進のために液体浸透特性を有する吸水材等が詰められていてもよい。この吸水材等としては、例えば、フェルト、スポンジ、または、樹脂粒子焼結体、樹脂繊維焼結体などの焼結体等から構成される毛管力を有する多孔体や、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組合せからなる繊維束体からなるものが挙げられる。
このカートリッジ化した燃料電池セル15を用いることにより、燃料電池セル15の連結作業、電気的接続の効率化、電池(セル)間のスペースの空洞化による空気あるいは液体燃料の対流、拡散速度の増大による電池性能の向上を発揮することができる。
図4(a)では、上記各特性を有する平板状の炭素質多孔体10の外側の片面に電池層(電極/電解質/電極)を形成した燃料電池セル15,15を背中合わせに所定間隔おいて配置して、該燃料電池セル15,15間に、液体燃料あるいは空気を拡散、流通させる空隙部18を形成したものである。この燃料電池セル15,15の接続は、直列又は並列に電気的に接続される。この空隙部18により、液体燃料の対流、拡散の増大による電池性能の向上を発揮することができる。また、上記空隙部18には、液体燃料の浸透促進のために液体浸透特性を有する上述の吸水材等が詰められていてもよい。
更に、上記形態を1ユニットとして、単独で又は2ユニット以上を更に直列又は並列に電気的に接続して使用される。
図4(b)では、燃料電池セル15の電極層を有しない対向側に、上記と同様の機能を有する空隙部18を形成するように所定間隔おいて隔壁体19を設けたものである。この隔壁体19としては、燃料あるいは空気遮断できるものであれば特に限定されず、例えば、プラスチック板、金属板、ガラス板、セラミック板などから構成することができる。
更に、この2以上の燃料電池セル15,15を連結体とする場合〔及び上記図4(a)の燃料電池とする場合及び図4(b)の隔壁体19を設けた燃料電池とする場合〕、基材10の厚さ、各セル間又はセルと隔壁体の間隔は、燃料電池の用途、燃料電池セル15の大きさや形状、基材10の吸液性能、用いる液体燃料などにより変動するが、システムのコンパクト化の点から、基材10の厚さH、各セル間の間隔又はセルと隔壁体の間をKとした場合、Hは1〜20mm程度、Kは、1〜20mm程度とすることが好ましい。
また、基材(通気孔部材を含む)10の幅(W)は、燃料電池の用途、燃料電池セル15の大きさや形状、基材10の吸液性能、用いる液体燃料などにより変動するが1〜500mm程度、高さ(T)は5〜300mm程度とすることが望ましい。
この実施形態では、基材10の厚さHは2mm、間隔Kは2mm、基材(通気孔部材を含む)10の高さTは50mm、幅Wは50mmとなっている。
この燃料電池Bは、図8(a)に示すように、図3でカートリッジ化した燃料電池セル15,15…5つは、液体燃料30を収容する液体燃料タンク31と同様タンクの一部に生成気体の排出孔を有するホルダー体32の各取付部に取り付けられて、上記各セル間が等間隔に設定されたものである。
この構造の燃料電池Bは、各燃料電池セル15の炭素質多孔体で液体燃料30を浸透させると共に、外表面に形成される電極面を空気に曝す構造であり、図8(a)〜(c)に示すように、各燃料電池セルの長さ方向を水平にしても、垂直にしても又は斜めにしても、液体燃料30の浸透方向が上からでも、下からでも、横からでも浸透させることができので、液体燃料タンク31から各燃料電池セル15に直接液体燃料が途絶えることなく安定的に、かつ、継続的に供給することができ、各燃料電池セル15に液体燃料が導入されて発電するものである。
この構造の燃料電池Cは、上記空気チャンバー34,35により各燃料電池セル15,15…の基材に空気を拡散又は対流させると共に、基材の外表面に形成される電極面を液体燃料30に曝す構造となるものであり、液体燃料タンク33から各燃料電池セル15に直接液体燃料が途絶えることなく安定的に、かつ、継続的に供給することができ、各燃料電池セル15に液体燃料が導入されて発電するものである。
この燃料電池Dは、図10に示すように、下部から順次、液体燃料30を収容する燃料タンク40と、カートリッジ化した燃料電池セル15,15…を多数収容する収容部41と、液体燃料中の生成気体の排出口を有するホルダー部42とを備え、液体燃料30を収容する液体燃料タンク40とホルダー部42の各取付部に取り付けられて、上記各セル間が等間隔に設定されると共に、収容部41の外周面には、空気が通りやすい空気流通部材43、例えば、網状、スリット孔等となっている。また、各燃料電池セル15,15…は、直列に接続されており、図示符号44は電源端子である。
この構造の燃料電池Dは、各燃料電池セル15の炭素質多孔体で液体燃料30を浸透させると共に、外表面に形成される電極面を空気に曝す構造であり、液体燃料タンク40から各燃料電池セル15に直接液体燃料が途絶えることなく安定的に、かつ、継続的に供給することができ、各燃料電池セル15に液体燃料が導入されて発電するものである。なお、更なる出力増大の点から、ファン等で空気を送風してもよいものである。
この燃料電池Eは、上述の燃料電池Dと貫通孔を有して外観形状が円柱状となる点で異なるものであり、図11(a)に示すように、下部から順次、液体燃料30を収容する燃料タンク45と、円柱状の燃料電池セル16,16…を多数(本形態では4つ)収容する収容部46と、液体燃料中の生成気体の排出口を有するホルダー部47とを備え、液体燃料30を収容する液体燃料タンク44とホルダー部47の各取付部に取り付けられて、上記各セル間同士が夫々等間隔に設定されると共に、収容部46の外周面には、空気が通りやすい空気流通部材48、例えば、網状、スリット孔等となっている。また、各燃料電池セル16,16…の端部で電気的接続を直列又は並列にすることにより容易にスタック化が可能である。なお、図示符号49は電源端子である。
各燃料電池セル16,16…は、図11(b)及び(c)に示すように、中央部にガス抜き及び液体燃料浸透促進用の貫通孔16aが形成されると共に、円筒状の多孔質炭素基材10の該表面に電極11/電解質12/電極13の各層が形成された構造である。
この構造の燃料電池Eは、各燃料電池セル16の炭素質多孔体で液体燃料30を浸透させると共に、外表面に形成される電極面を空気に曝す構造であり、円柱状の立体空間を有効に利用でき、かつ、セパレーターが不要であり、しかも、外表面の空気極が空気と十分に接触できるだけの空間が確保でき、液体燃料タンク44から各円柱状の燃料電池セル16に直接液体燃料が途絶えることなく安定的に、かつ、継続的に供給することができ、各燃料電池セル16に液体燃料が導入されて発電するものである。
例えば、上記実施形態において前記基材となる炭素質多孔体の形状を、平板状又は円柱状としてが、角柱状、円筒状、方形筒状、波板状としてもよいものである。
また、炭素多孔体の一部が非導電性、非多孔体でもよい。
下記の製造法により下記構成の炭素質多孔体を基材とした。
(炭素質多孔体の製造方法)
塩素化塩化ビニル樹脂粉末(日本カーバイト社製、T−741)を50〜300μmの範囲で分級した塩素化塩化ビニル樹脂粉末97部と天然鱗状黒鉛(日本黒鉛工業社製、平均粒径5μm)3部とをヘンシェルミキサーでよく混合し、縦100mm、横100mm、深さ5mmの型に投入し、その後、不活性雰囲気下で1000℃まで焼成することで粉末粒子が融着し、連続気孔を有する炭素質多孔体(平均粒径20μm、気孔率55%)を得た。
得られた炭素素質多孔体を加工し、幅25mm×長さ65mm×厚み2mmの素質炭多孔体を得た。
得られた上記幅25mm×長さ65mm×厚み2mmの炭素質多孔体を基材10として用いた。
燃料極層は、白金/ルテニウムが1:1(原子比)の白金/ルテニウム微粒子をカーボン微粒子担体に65wt%分散担持した触媒粉末と、水、グリセロール、5wt%ナフィオン117アルコール水溶液(和光純薬工業社製)、イソプロピルアルコールとを重量比で1:1:3:3:3の割合で混合したスラリーを調整し、スラリー塗布法で基材の表面の厚さ約50μm塗布し、乾燥させ多孔質膜を形成し、燃料極11とした。
空気極層は、撥水処理したカーボンペーパー表面に、カーボン微粒子担体に50wt%の白金微粒子を担持した触媒粉末と、水、グリセロール、ナフィンオンアルコール水溶液の混合体からなるスラリーをカーボン微粒子担体に厚さ約50μm塗布し、乾燥させ多孔質膜に形成した。これを幅25mm×65mm長さに切り出した空気極13とした。
また、厚さ50μmのナフィオン112電解質膜を幅25mm×100mm長さに切り出し電解質膜12とした。
燃料極層、空気極層表面に5wt%のナフィオン117アルコール溶液を少量塗布、乾燥させた後、基材上の燃料極層と空気極層とで各電極層が重なるようにして電解質膜を中に入れて挟み、130℃の温度下で、約80kgf/cm2で加圧し、3分間保持して接合し、電池(MEA)を作製した。
液体燃料としてメタノール水溶液(メタノール濃度2M,10M(M=mol/L)20mlを用いた。
この燃料電池を縦型配置〔図2(a)参照〕として炭素質多孔体の基材下部のみメタノール水溶液を接触させ自己浸透させた場合、並びに、横型配置〔図2(b)〕にしてメタノール水溶液を浸透させた場合のそれぞれについて発電試験(電流−電圧曲線)を行った。空気極は流れのない常温(25℃)、常圧下の空気で行った。
これらの結果(電流−電圧曲線)を図12及び図13に示す。
図12(a)の横型配置の場合の結果及び(b)の縦型配置の場合の結果からも明らかなように、単セルから0.5V程度までの電圧範囲で電流を取り出すことができ、10mWを超える最大出力が得られ、それぞれ良好な作動をすることが判明した。
更に、図13(a)は、メタノール濃度が10Mのときの電流−電圧曲線、(b)は一定電圧(0.1V)での連続発電結果である。10Mのときも2Mの場合とほぼ同様の出力が得られ、広い濃度範囲で同様の発電特性が得られるという良好な作動をすることが判明した。また、8時間以上の連続発電の際にも大きな電圧の降下もなく安定に電流を取り出せ、良好な作動が安定して行えることが判明した。
上記で得られた2つの燃料電池セルを用いて、セル間隔10mmで図2(a)及び(b)並びに図4(a)に準拠する並列接続、直列接続の燃料電池を得た。
得られた燃料電池について、上記と同様にして発電試験(電流−電圧曲線)を行った。
これらの結果(電流−電圧曲線)を図14(a)及び(b)に示す。
図14(a)は、並列接続の場合の電流−電圧曲線であり、(b)は直列接続の場合の電流−電圧曲線である。並列接続では単位セルのほぼ2倍の大きさの電流値が、また、直列接続では単位セルのほぼ2倍の大きさの電流値が得られ、連結体にした場合も良好な作動をすることが判明した。
下記の製造法により下記構成の炭素質多孔体を基材とした。
(炭素質多孔体の製造方法)
乾留ピッチ(呉羽化学工業社製、KH−IP)15部、フラン樹脂(日立化成社製、VF303)35部、ポリメチルメタクリレート(積水化成品工業社製、平均粒径60μm)35部、天然鱗状黒鉛(日本黒鉛工業社製、平均粒径5μm)15部を分級、混合、混練後に粉砕し、分級後、縦100mm、横100mm、深さ5mmの型に投入した後、圧縮成形し、連続気孔を有する炭素質多孔体(平均粒径60μm、気孔率60%)を得た。
得られた炭素素質多孔体を加工し、幅25mm×長さ65mm×厚み2mmの炭素質多孔体を得た。
上記試験例1の電池(MEA)の作製と同様にして、ただし、電解質膜12として、厚さ50μmのナフィオン112、117の2種を用いて各電池(MEA)を作製した。
これらの燃料電池セルを用いて、図2(b)に準拠する燃料電池を得た。
液体燃料としてメタノール水溶液(メタノール液濃度2M,5M,10M,12M,15M,17M,20M(M=mol/L)20mlを用いた。
この燃料電池を横型配置〔図2(b)〕にしてメタノール水溶液を浸透させた場合について発電試験(電流密度−電池電圧曲線)を行った。空気極は流れのない常温(15〜18℃、18〜20℃)、常圧下の空気で行った。
これらの結果(電流−電圧曲線)を図15及び下記表1〔ナフィオン117使用〕、並びに、図16及び下記表2〔ナフィオン112使用〕に示す。
従来においては、通常1〜3Mのメタノール濃度に最適値が見られ、それ以上の濃度ではメタノールのクロスオーバーのため性能が低下しているものであったが、本発明では、上記各特性を有する基材を用いることによって、高濃度のメタノール液を利用できるようになり、その結果燃料の体積当たりのエネルギー密度が高くなるので、装置の更なるコンパクト化に最適である。
10 基材(炭素質多孔体)
11 電極(燃料極)
12 電解質層
13 電極(空気極)
Claims (13)
- 電気導電性を有する炭素質多孔体を基材とし、該基材の表面に電極/電解質/電極の各層を形成した単位セル又は該単位セルを2以上連結した連結体を備え、上記基材に液体燃料を浸透させると共に、基材の外表面に形成される電極面を空気に曝す構造を具備してなることを特徴とする燃料電池。
- 電気導電性を有する炭素質多孔体を基材とし、該基材の表面に電極/電解質/電極の各層を形成した単位セル又は該単位セルを2以上連結した連結体を備え、上記基材に空気を拡散又は対流させると共に、基材の外表面に形成される電極面を液体燃料に曝す構造を具備してなることを特徴とする燃料電池。
- 前記基材は、少なくとも一部に電気導電性を有する請求項1又は2記載の燃料電池。
- 前記基材は、少なくとも一部が炭素質多孔体からなる請求項1〜3の何れか一つに記載の燃料電池。
- 前記基材となる炭素質多孔体が平均孔径1〜100μm、気孔率10〜85%であり、かつ、毛管現象により液浸透性を有する請求項1〜4の何れか一つに記載の燃料電池。
- 前記基材となる炭素質多孔体が、アモルファス炭素又はアモルファス炭素と炭素粉末との複合体からなる請求項1〜5の何れか一つに記載の燃料電池。
- 前記基材となる炭素質多孔体の形状が、板状、円柱状、角柱状及び筒状から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6の何れか一つに記載の燃料電池。
- 前記基材となる炭素質多孔体の内部には、貫通孔を有する請求項1〜7の何れか一つに記載の燃料電池。
- 単位セルには、電極層を有しない対向側に液体燃料の吸液及び空気拡散を調整する隔壁体が設けられる請求項1〜8の何れか一つに記載の燃料電池。
- 単位セルを2以上連結した連結体は、各セル間が等間隔に連結される請求項1〜9の何れか一つに記載の燃料電池。
- 単位セル同士の電気的接続が直列接続又は並列接続及びその組み合わせからなる請求項1〜10の何れか一つに記載の燃料電池。
- 液体燃料がメタノール液、エタノール液、ジメチルエーテル、ギ酸、ヒドラジン、アンモニア液から選ばれる請求項1〜11の何れか一つに記載の燃料電池。
- 液体燃料がメタノール液であり、その濃度が0.5〜20M(mol/L)である請求項1〜11の何れか一つに記載の燃料電池。
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