しかしながら、このブラシロールを適用する場合においても、ブレードの場合と同様、そのブラシ毛の先端部に清掃対象のトナーや紙粉等が経時的に蓄積し始め、その清掃能力が次第に低下してしまう問題がある。また、この問題に加えて、ブラシロールは、そのブラシ毛の先端部が転写搬送ベルトに一定量食い込むように少し湾曲した状態で接触して回転しているため、ブラシ毛が一定の方向に曲がって倒れた状態となり、それが原因で清掃能力が次第に低下するという問題もある。
ちなみに、従来、転写ベルト(中間転写ベルト)に摺擦させて転写ベルト上の残留トナーを集める導電性ブラシロールと、そのブラシロールに接触させてトナーを回収する回収ロールとを備えたクリーナユニットを有するバイアスクリーニング装置の運転において、その転写ベルトの回転を停止し、所定時間、ブラシロールと回収ロールの移動方向を転写ベルト停止前のそれと逆方向とし、ブラシロールに溜まったトナー、紙粉等を取り除く期間を定期的に設ける技術的手段が知られている(特許文献3)。
しかし、この手段においては、そのブラシロール等を逆方向に移動させるためには転写ベルトが停止していることが必要であり、その転写ベルトを停止させるためには画像形成動作をしていないときや連続する画像形成時の合間などに独立した動作時期を別に設定する必要がある。しかも、その転写ベルトを停止させる時期には転写ベルトに接触する感光体等の像担持体も同時に停止させるように設定するか、あるいはその像担持体から転写ベルトを一時的に離間させる機構を設ける必要がある。この結果、上記の手段も、装置の複雑化や生産性の低下などの問題が生じることとなり、有効な解決手段にはなり得ないものであった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、転写搬送ベルトに付着するトナーを回転するブラシロールにより除去する場合、そのブラシロールにおけるトナー等の蓄積現象や毛倒れ現象等に起因した清掃能力の低下を、装置の複雑化や生産性の低下などを招くことなく簡易にかつ効率よく防止することができ、もってその清掃能力を維持し安定させることができる転写搬送装置を提供するものである。
また、上記ブラシロールに付着するトナーを回収する回収ロールと、その回収ロールの外周面に付着したトナーをかき落とす板状部材とを備える転写搬送装置として、そのブラシロールの清掃能力の低下に加えて回収ロールおよび板状部材による回収除去能力の低下も、装置の複雑化や生産性の低下などを招くことなく簡易にかつ効率よく防止することができ、もってその清掃能力をはじめ回収除去能力をも維持し安定させることができる転写搬送装置を提供するものである。
上記課題を解決し得る本発明の転写搬送装置1は、図1に例示するように、トナー像Tを担持して回転する像担持体2の転写位置TNにそのトナー像を転写させるための記録シートPを通過させるように保持して搬送する方向Bに回転する無端状の転写搬送ベルト3と、この転写搬送ベルト3の前記記録シートPを保持させる側の面に導電性のブラシ毛4aを接触させながら回転してそのベルト面を清掃するブラシロール4と、このブラシロール4を所定の方向に切り替えて回転させることが可能な回転駆動手段5とを備えた転写搬送装置であって、前記転写搬送ベルト3が前記搬送方向Bに回転している際に、前記ブラシロール4を平常時の回転方向C1(又はC2)とは逆の方向C2(又はC1)に前記回転駆動手段5により回転させる動作時期を有することを特徴とするものである。
ここで、像担持体2は、トナー像Tを担持してその転写位置TNまで回転して搬送し得るものであればよい。このような像担持体2としては、たとえば、そのトナー像Tの形成そのものも行われる感光体等のようなものや、トナー像Tの形成は別の構成部品(感光体など)で行われ、その別の構成部品で形成されたトナー像を一時的に転写により受けて搬送する中間転写体等のようなものが使用される。また、像担持体2は、ベルト状のもののほか、ドラム状のものであってもよい。トナー像Tの形成手段としては、電子写真方式、静電記録方式等を利用した公知の作像手段を適用することができる。記録シートPは、この転写搬送装置1を利用したトナー像の転写が可能なものであればよく、その材質、厚み、形態、サイズ等については特に制約されるものではない。
転写搬送ベルト3は、記録シートPの送り方向の幅全域を少なくとも保持できるものであればよい。このような転写搬送ベルト3としては、たとえば、ゴム材料等からなる基材に表面層を形成して全体の抵抗値(体積抵抗率)が所定の範囲内におさまるように調整したものが使用される。また、転写搬送ベルト3は、たとえばロール等の複数の支持部材に張架して回転可能に支持する。
ブラシロール4は、たとえば、軸の周りに導電性のブラシ毛4aを放射状に所定の密度で立設した形態のものであり、そのブラシ毛4aを転写搬送ベルト3の回転方向Bと直交する方向に沿うように接触させて回転し得るように支持される。このブラシロール4は、転写搬送ベルト3の回転方向に複数設置することも可能である。また、ブラシロール4は、好ましくは転写搬送ベルト3のうちの前記支持部材に支持されている範囲内で接触するように設置する。さらに、このブラシロール4には、必要に応じて、そのブラシ毛4aに接触させてそのブラシ毛4aに付着したトナーをかき落とすための部材を設けるとよい。
回転駆動手段5は、特に制約されるものではないが、たとえば、電動モータ等の回転駆動源のみでブラシロール4と直結されるものか、あるいは、その回転駆動源とその駆動源からの回転動力をブラシロール4に伝達するためのギヤ列、ベルト等の回転伝達部材で構成される駆動伝達機構とを備えたものである。また、回転駆動手段5によるブラシロール4の回転方向の切り替えは、たとえば回転駆動源そのものの回転方向を直接変更するか、あるいは、駆動伝達機構で伝達する駆動力の回転方向を変更することで行うことができる。ブラシロール4の所定の回転方向とは、転写搬送ベルト3の面を清掃するときの回転方向と、それとは逆の回転方向である。逆回転時の回転速度については任意に設定することができるが、転写搬送ベルト3との間で相対的な速度差が生じるような速度に設定すること(特に逆回転の回転方向がベルトの回転方向Bと同じ場合)が好ましい。また、逆回転時の回転速度については、回転駆動手段の構成を簡略化できる等の観点からすると、清掃するときの速度と同じに速度に設定するとよい。
ブラシロール4を平常時(清掃時に相当する)の回転方向とは逆の方向に回転させる動作時期は、任意の時期に設定することが可能である。たとえば、その動作時期は、画像形成時の開始前または完了後や、連続する画像形成動作(ジョブ)の合間(インターイメージ部の通過時)などに設定することができる。特にブラシロール4が逆回転しても、それに直接接しているわけではない像担持体2の回転状態には影響をおよぼすことがほとんどないため、その動作時期は画像形成動作時(動作中)に設定することも可能である。また、この動作時期(ブラシロール4の逆回転時)は、転写搬送ベルト3を記録シートPの搬送方向Bに回転させておく必要があるため、その転写搬送ベルト3を搬送方向Bに回転させる時期の中から選んで設定することが合理的である。つまり、停止している転写搬送ベルト3を当該動作時期のためだけに独立して搬送方向Bに回転させる専用の時期を設定することが生産性の低下を招くことになる。このブラシロール4の回転方向の切り替え動作は、前記回転駆動手段5により行うが、その回転駆動手段5はその動作を制御する制御手段により行うように構成することができる。逆回転させる量(時間)は、適宜設定することができるが、少なくともブラシロール4が1回転する量以上の値に設定することが好ましい。
この転写搬送装置1においては、ブラシロール4に対してバイアスを前記逆方向に回転させる動作時期に印加するバイアス印加手段6を設けるとよい。バイアスは、所定の電圧からなる直流である。このバイアスを印加した場合には、その逆回転時にブラシ毛4aが静電的作用により転写搬送ベルト3に引き付けられることになり、これによりブラシ毛4aの毛倒れ現象等が回復されやすくなる。また、このバイアス印加手段6からは、ブラシロール4の清掃動作時においても清掃用のバイアスを印加し、これにより転写搬送ベルト3に付着するトナー等を静電気作用によってブラシロール4側に引き付けて取り除くように構成するとよい。
バイアス印加手段6からブラシロール4に逆回転動作時期に印加するバイアスの極性については、次の2つの態様のいずれかを採用することが可能である。
1つは、清掃時に印加するバイアスの極性と同じ極性に設定する場合である。この場合は、かかる同極性のバイアスの印加によりブラシの逆回転時においてブラシ毛4a側に清掃対象のトナーを引き付ける方向の静電的作用が発生することになるため、清掃時においてブラシ毛4aに捕獲されたトナーを保持したままでブラシの毛倒れ等を回復させることができる。
もう1つは、清掃時に印加するバイアスの極性と逆の極性に設定する場合である。この場合は、かかる逆極性のバイアスの印加によりブラシの逆回転時において清掃対象のトナーを引き離す方向の静電的作用が発生することになるため、清掃時においてブラシ毛4aに捕獲されたトナーを転写搬送ベルト3側に吐き出すことができる。この吐き出すトナーについては、転写搬送ベルトで像担持体の転写位置まで搬送し、その転写位置で像担持体側に逆転写させるようにすることで、その像担持体などに設置されるクリーニング装置によって回収するように構成する必要がある。また、この逆極性のバイアスを印加する場合は、ブラシロール4を逆回転させる動作時期は、画像形成に影響を及ぼさないようにする観点から画像形成動作時以外の時期に設定することが好ましい。
また、本発明の転写搬送装置は、上記転写搬送装置1において、さらに図1に例示するように、ブラシロール4のブラシ毛aに接触しながら回転してそのブラシ毛4aに付着するトナーを回収する回収ロール7と、この回収ロール7の外周面に当接してそのロール面に付着したトナーをかき落とす板状部材8と、ブラシロール4と回収ロール7とを所定の方向にそれぞれ切り替えて回転させることが可能な回転駆動手段5を装備させたうえで、転写搬送ベルト3が前記搬送方向Bに回転している際に、ブラシロール4および回収ロール5をその平常時における回転方向C1およびD1(又はC2およびD2)とはそれぞれ逆の方向C2およびD2(又はC1およびD1)に回転駆動手段5によりそれぞれ回転させる動作時期を有することを特徴とするものである。
ここで、回転駆動手段5は、通常、ブラシロール4と回収ロール7の双方を回転させるように構成した1つ回転駆動手段であればよいが、ブラシロール4と回収ロール7とを個々に回転させるように構成した2つの回転駆動手段としてもよい。回収ロール7は、たとえば合成樹脂等からなるロールである。板状部材8は、ゴム材料、合成樹脂、金属材料等により板状(ブレード形状等)に成形したものである。
また、この転写搬送装置1においては、ブラシロール4および回収ロール7に対してバイアスを前記逆方向に回転させる動作時期にそれぞれ印加するバイアス印加手段6を設けるとよい。このバイアスを印加した場合には、その逆回転時にブラシ毛4aが静電的作用により転写搬送ベルト3と回収ロール7の双方に引き付けられることになり、これによりブラシ毛4aの毛倒れ現象等が回復されやすくなる。
このバイアス手段6は、通常、ブラシロール4と回収ロール7との双方にバイアスを印加できるように構成した1つのものであるが、その両者の個々に分けてバイアスを別々に印加できるように構成した別個のものとしてもよい。また、このバイアス印加手段6からは、ブラシロール4の清掃動作時においてもブラシロール4に清掃用のバイアスを印加するとともに回収ロール7に回収用のバイアスを印加し、これにより転写搬送ベルト3に付着するトナー等を静電気作用によってブラシロール4側に引き付けて取り除くとともに、そのブラシロール4のブラシ毛4aに捕獲されて付着するトナー等を静電気作用によって回収ロール7側に引き付けて回収するように構成するとよい。
本発明の転写搬送装置によれば、ブラシロールが逆方向に回転させる動作時期に逆回転することにより、そのブラシロールのブラシ毛が転写搬送ベルトと平常時とは異なる回転状態(移動方向)で接触することとになるため、そのブラシ毛へのトナーの蓄積が防止されたり、そのブラシ毛の毛倒れが回復させるようになる。これにより、ブラシロールにおけるトナー等の蓄積現象や毛倒れ現象等に起因した清掃能力の低下が簡易にかつ効率よく防止される。
この結果、そのブラシロールの清掃能力を維持し安定させることができる。また、この装置では、ブラシロールを逆回転させる際に、転写搬送ベルトを平常時とは逆の方向に回転させたり、あるいは停止させたりすることがないため、そのベルトの逆回転や停止動作を行うための駆動系の採用や動作工程の確保をする必要がなくなり、装置の複雑化や生産性の低下などを招くことがない。
また、本発明の回収ロールや板状部材を追加して装備した転写搬送装置によれば、ブラシロールおよび回収ロールが逆方向に回転させる動作時期にそれぞれ逆回転することにより、前述したとおりそのブラシ毛へのトナーの蓄積が防止されたり、そのブラシ毛の毛倒れが回復させるようになる。これと同時に、回収ロールがブラシロール(のブラシ毛)と平常時とは異なる回転状態(移動方向)で接触することとになるため、そのブラシ毛へのトナーの蓄積が防止されたり、そのブラシ毛の毛倒れが回復させるようになることに加え、回収ロール面および板状部材の先端部側へのトナーの蓄積が防止されたり、その板状部材の先端部に固着したトナーが除去されるようになる。これにより、ブラシロールにおけるトナー等の蓄積現象や毛倒れ現象等に起因した清掃能力の低下と、回収ロールにおけるトナーの回収性能および板状部材のトナーかき落とし性能の低下とがいずれも簡易にかつ効率よく防止される。
この結果、回収ロールにおけるトナーの回収性能および板状部材のトナーかき落とし性能も維持できるため、ブラシロールの清掃能力をより一層維持して安定させることができる。
図2は本発明の実施形態1に係る転写搬送装置を適用した画像形成装置の要部を示す概略説明図、図3は図2における転写搬送装置とその周辺部を拡大して示す概略説明図である。
この画像形成装置100は、作像部120において所定の画像情報に応じたトナー像を形成した後、そのトナー像を複数の支持ロール131〜133に支持されて矢印方向Aに回転する中間転写ベルト130に対して一次転写して転写搬送装置10と対向する二次転写位置まで搬送する。一方で、そのトナー像を、作像タイミングに合わせてシート収容部140から中間転写ベルト130と転写搬送装置10の間に複数の搬送用ロール141〜143等により所定のタイミングで供給される記録シートPに対して二次転写する。しかる後、トナー像が転写された記録シートPを、搬送装置150等により定着装置160に送り込んでトナー像の記録シートPへの定着処理を行った後、装置外に排出等をすることにより、画像の形成を行うものである。図中の矢付き一点鎖線は、記録シートPの搬送経路を示す。
このうち作像部120は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー像を形成することができるものである。この実施形態1では、4つの感光ドラム121を中間転写ベルト130の回転方向Aにそって一定の間隔をあけて直列に並べてそれぞれ回転可能に配置するとともに、その各感光ドラム121の周囲に図示しない帯電装置、露光装置および現像装置(上記4色Y,M,C,Kのトナーのいずれか1色を収容し、その色のトナーによる現像を専用に行う)をこの順でそれぞれ設置して構成される、いわゆるタンデムタイプのカラー作像部を採用している。
このタンデムタイプのカラー作像部120では、その各感光ドラム121において帯電、露光および現像の電子写真プロセスをそれぞれ実行することにより、各感光ドラム121上に上記4色(Y,M,C,K)のトナー像を分配して形成する。また、その各トナー像については、各感光ドラム121と中間転写ベルト130を挟んで設置される静電転写装置により、回転する中間転写ベルト130の外周面に対して順次重ね合わせるように静電的に転写させるようにしている。なお、転写後の各感光ドラム121の外周面は図示しないクリーニング装置で清掃される。
中間転写ベルト130としては、ポリイミド、ポリアミド等の合成樹脂にカーボンブラック等の導電化剤を適用含有させたものを用いて、ベルト幅が約365mmで厚みが0.1mm程度の無端ベルト形状に成形したもの(体積抵抗率:1010〜1014Ω・cm程度)が使用される。この中間転写ベルト130は、駆動ロールとして兼用する支持ロール131により所定の速度で矢印A方向に回転させられる。また、支持ロール133は二次転写位置でのバックアップロールとして兼用され、図示しないバイアス電源からトナーの帯電極性と同極性の二次転写バイアスが給電部材134等を介して印加されるようになっている。さらに、二次転写後の中間転写ベルト130の表面はクリーニング装置138で清掃される。
また、転写搬送装置10は、記録シートPを転写搬送ベルト30により二次転写位置に通過させるように保持して搬送するものである。
この実施形態1では、転写搬送ベルト30を、二次転写位置でバックアップロール133に接する中間転写ベルト130部分に当接するように設置される第一支持ロール35とその第一支持ロール35から定着装置150側に所定の間隔をあけて平行状態に設置される第二支持ロール36とに張架して回転可能に支持したものを使用している。
転写搬送ベルト30は、クロロプレン、EPDM等のゴム材料に導電性カーボンブラック等の導電化剤を分散させたものを基材とし、その基材の表面にPTFE分散のウレタンエマルジョン等をコートした表面層を形成して、厚さが0.5mm程度、体積抵抗率が106〜1012Ω・cm程度からなる無端状ベルトである。第一支持ロール35は、導電性ロールからなるものであり、回転可能に支持されているとともに接地されている。第二支持ロール36は、導電性ロールからなるものであり、回転可能に支持されている。この転写搬送装置10においては特に装置の小型化を図るため、転写搬送ベルト30として内径が40mm程度のベルトを、第一支持ロール35としては抵抗値が106Ω・cm以下の発泡ゴムからなる弾性層を形成したロール径28mm程度の弾性ロールを、第二支持ロール36としてはロール径が15mm程度の金属ロールを使用している。また、転写搬送ベルト30は伸張率が2.2%程度となるように張架させており、第一支持ロール35を駆動ロールとして矢印B方向に回転駆動させている。ちなみに、第一支持ロール35と対向するバックアップロール133としては、そのロール径が28mm程度に設定したものを使用した。
このような転写搬送装置10では、記録シートPが、前記バックアップロール133に支持されて矢印A方向に回転する中間転写ベルト130と第一支持ロール35により支持されて矢印B方向に回転する転写搬送ベルト30との間(二次転写ニップ部)に導き入れられるとともに、その転写位置を通過するように転写搬送ベルト30に保持された状態で搬送される。この際、バックアップロール133側に印加される二次転写バイアスにより第一支持ロール35との間に転写電界が形成されるため、中間転写ベルト130上のトナー像Tが記録シートP側に静電的に転写される。そして、トナー像Tが転写された後の記録シートPは、第二支持ロール36において急激に曲がって走行する転写搬送ベルト30部分から剥離し、その進行方向下流側にある搬送装置150側に送られる。
また、この転写搬送装置10には、転写搬送ベルト30の外周面を清掃するためのクリーニング装置50が設けられている。
このクリーニング装置50は、図3に示すように、その転写搬送ベルト30の第一支持ロール41に支持されている領域内でそのベルト回転方向Bに前後してそれぞれ接して回転する2つのブラシロール51A,51Bと、この各ブラシロール51A,51Bのブラシ毛に付着するトナー等を回収するための回収ロール55A,55Bと、その各回収ロール55A,55Bの外周面に回収されたトナー像を取り除くスクレーパ56A,56Bと、各クリーニング装置50のハウジングも兼ねる共通の廃トナー貯留部59とでその主要部が構成されている。このクリーニング装置50においてブラシロール、回収ロール等などを2組使用しているのは、相反する極性にそれぞれ帯電して転写搬送ベルト30に併存するように付着しているトナーの双方を適切に取り除くためである。
また、クリーニング装置50は、図4に示すように、ブラシロール51A,51Bと回収ロール55A,55Bとを所定の方向にそれぞれ切り替えて回転駆動させる正逆回転可能な駆動装置(駆動部)60と、ブラシロール51A,51Bおよび回収ロール55A,55Bに対して所定のバイアスをそれぞれ印加するバイアス印加用の直流電源装置(電源部)65とを備えている。駆動装置60については、駆動モータと駆動伝達機構としてのギア列とで構成されており、また、その駆動モータの回転方向が正逆方向に切り替えられるようになっている。また、この駆動装置60と直流電源装置65とは、その各装置の動作を制御することができるマイクロコンピュータ等にて構成される制御装置(制御部)70に接続されている。
ブラシロール51A,51Bはいずれも、アルミウム、ステンレス鋼等の金属製ロール軸(シャフト)52と、このロール軸52の表面に放射状に立設されるブラシ毛53とで構成されている。ブラシ毛53は、帯状の布材片面に所定の密度で織り込むように固定されており、そのブラシ毛を有する布材を接着剤、両面粘着テープなどによりロール軸52に巻きつけて固着させたうえで放射状に起毛させたものである。ブラシ毛53としては、ナイロン、ポリプロピレン、レーヨン、アクリル等からなる合成繊維を使用できる。また、ブラシ毛53は、その合成繊維にカーボンブラック等の導電化剤を添加して導電性を付与される。
また、このブラシロール51A,51Bは、転写搬送ベルト30の回転方向Bに対して前後する各部位において、その各ブラシ毛53の先端が転写搬送ベルト30に所定の量だけ食い込んだ状態(ブラシ毛が撓むように曲がった状態)となって回転し得るようにそれぞれ支持されている。さらに、ブラシロール51A,51Bは、その各ロール軸52が駆動装置60と機械的に接続されており、通常の画像形成動作等が行われる平常時においてはその駆動装置60の回転動力により図中に示す矢印C1方向(転写搬送ベルト30の回転方向Bとはその接触部において反対側となる方向)に回転駆動する。しかも、ブラシロール51A,51Bは、その各ロール軸52が直流電源装置65と電気的に接続されており、平常時においては転写搬送ベルト30に付着する正極または負極の極性に帯電したトナー等をそれぞれ静電的に引き付ける極性のバイアスが印加される。ベルト30上に付着するトナー等は、二次転写部での放電履歴をうけて両極性のものが混在した状態にある。
また、回収ロール55A,55Bはいずれも、導電性を付与したフェノール樹脂等の合成樹脂製ロールが使用され、各ブラシロール51A,51Bのブラシ毛53にそれぞれ接触するように回転可能に支持される。この回収ロール55A,55Bも、ブラシロール51の場合と同様に、その回転軸が駆動装置60に機械的に接続されており、平常時においては駆動装置60の回転動力により図中に示す矢印D1方向(ブラシロール51A,51Bの回転方向C1とはその接触部において反対側となる方向)に回転駆動する。しかも、回収ロール55A,55Bは、その回転軸が直流電源装置65と電気的に接続されており、平常時においてはブラシロール51A,51Bに付着するトナー等を静電的に引き付ける極性のバイアスが印加される。
スクレーパ56A,56Bとしてはいずれも、ステンレス鋼等からなる0.1mm程度の板材を各回収ロール55A,55Bの外周面にそれぞれ所定の角度および食い込み量で押し当てられるように支持されている。
そして、この転写搬送装置10におけるクリーニング装置50では、図5に示すような条件にしたがってブラシロール51A,51B及び回収ロール55A,55Bの回転およびバイアス印加が実行されるように駆動装置60および直流電源装置65の動作が制御装置70により制御される。
図5中において平常回転時期とは、画像形成装置100による画像形成動作が実行されるときの動作時期(その開始前および終了時の一定時期を含む)である。また、同図中の逆回転動作時期時とは、ブラシロール51A,51B及び回収ロール55A,55Bを平常時と逆の方向に回転させるときの時期であり、この実施形態では具体的に用紙搬送枚数をカウントして管理し、その250枚目が転写搬送ベルト30を通過して平常回転時期が終了した直後の時期に設定した。また、その逆回転させる時間は1秒とした(ブラシロール51が約1.2回転する量に相当する)。
また参考までに、図5には、平常回転時期および逆回転時期における転写搬送ベルト30の回転方向とバックアップロール133に印加する二次転写バイアスの条件についても併せて示した。ちなみに、転写搬送ベルト30の回転速度は264mm/secに、平常回転時期におけるブラシロール51A,51Bの回転速度は62mm/secに、同じく回収ロール55A,55Bの回転速度は75mm/secにそれぞれ設定した。また、逆回転時におけるブラシロール51A,51Bの回転速度は62mm/secに、同じく回収ロール55A,55Bの回転速度は75mm/secにそれぞれ設定した。
このようなクリーニング装置50は次のように動作する。
まず、画像形成装置100により前記した画像形成動作が実行される(この際、転写搬送装置10では前述の二次転写動作も実行される)ときには、図5や図6の上部に示すように、クリーニング装置50におけるブラシロール51A,51Bがいずれも矢印C1方向に回転するとともに回収ロール55A,55Bがいずれも矢印D1方向に回転する。これと同時に、ブラシロール51Aには−400Vのバイアスが、ブラシロール51Bには+400Vのバイアスがそれぞれ印加される一方、回収ロール51Aには−800Vが、回収ロール55Bには+800Vがそれぞれ印加される。また、この際、転写搬送ベルト30は、記録シートPの搬送方向である矢印B方向に回転する。
そして、転写搬送装置10では、図6の上部に示すように、二次転写時等において中間転写ベルト130上に付着する不要なトナーTxが転写搬送ベルト30に転移して付着することがあるが、かかるトナーTxはその帯電極性に応じてクリーニング装置50における2つのブラシロール55A,55Bを通過する際にブラシ毛53によって静電的に捕獲されて取り除かれる。
すなわち、トナーの正常な帯電極性をマイナス極性とした場合、その逆極性(プラス極性)に帯電したトナーはマイナス極性のバイアスが印加されるブラシロール51Aによって取り除かれ、正常なマイナス極性に帯電したままのトナーはプラス極性のバイアスが印加されるブラシロール51Bによって取り除かれる。
また、この際、ブラシロール55A,55Bのブラシ毛53はいずれも、転写搬送ベルト30の回転移動方向Bに逆らう方向に移動することになるため、図6の上部に示すように転写搬送ベルト30に接するときにはブラシロールの回転方向C1とは反対方向に撓んで曲がった状態となる(図中のブラシ毛53a参照)。なお、このような状態で回転することより転写搬送ベルト30に付着するトナーを取り除きやすくなる一方で、このような状態が長く続くことによりブラシ毛53の次第にくせが付くように倒れた状態のままになる(毛倒れ現象)。
続いて、ブラシロール55A,55Bによってそれぞれ取り除かれたトナーTxは、その各ブラシロールに接触して矢印D1方向に回転する回収ロール55A,55Bにより静電的に引き寄せられてその各ロール面にそれぞれ付着するように回収された後、各スクレーパ56A,56Bを通過することによってその先端部で掻き落とされ、最後に廃トナー貯留部59に落下して収容される。
一方、逆回転時期が到来すると、図5や図6の下部に示すように、クリーニング装置50におけるブラシロール51A,51Bがいずれも矢印C2方向に回転するとともに回収ロール55A,55Bがいずれも矢印D2方向に回転する。すなわち、ブラシロールと回収ロールはいずれも逆回転する。この際、ブラシロール51A,51Bと回収ロール55A,55Bにはいずれも、平常回転時期と同じ極性および電圧からなるバイアスが印加される。また、転写搬送ベルト30は、平常回転時期と同様に記録シートPの搬送方向である矢印B方向に停止することなく回転し続ける。
この逆回転時期の動作により、ブラシロール51A,51Bのブラシ毛53はいずれも
、図6の下部に示すように転写搬送ベルト30の回転移動方向Bと同じ方向に移動することになる。そして、その逆回転するブラシロール51A,51Bのブラシ毛53が転写搬送ベルト30に接するときに当該ブラシ毛53に働く力の向きは、ブラシロール51A,51Bの回転速度と転写搬送ベルト30の回転速度との関係によって決まる。
つまり、ブラシロール51A,51Bの回転速度が転写搬送ベルト30の回転速度より大きい場合は、ブラシ毛53に働く力の向きは、平常回転時期のブラシロールの回転方向C1とは反対方向に撓んで曲がった状態となる(図中のブラシ毛53b参照)。特に、ブラシロール51A,51Bの逆回転時の速度が転写搬送ベルト30の回転速度よりも大きく、かつ転写搬送ベルト30の回転速度との相対速度差が大きい値に設定されるほど、その反対方向に撓んで曲がった状態は確実に形成されるようになる。反対に、この逆回転時期にブラシロール51A,51Bの回転速度が転写搬送ベルト30の回転速度より小さい場合は、ブラシ毛53に働く力の向きは平常回転時期の回転方向C1とときの撓んで曲がった状態と同じになるが、そのときの相対速度差を小さく設定することによりブラシ毛53の撓んで曲がった状態が平常回転時期に比べて軽減される。
このようにブラシロール55A,55Bのブラシ毛53はいずれも、平常回転時期とは異なった状態に置かれることになる。
これにより、ブラシ毛53に付着するトナーTxは衝撃を受けて剥がれやすい状態となる。この実施形態1では、この逆回転時期にブラシロール55A,55Bに印加されるバイアスの極性が正常回転時期に印加されるバイアスの極性と同じであるため、トナーTxがブラシ毛53から転写搬送ベルト30に静電的作用により転移して戻ってしまうことがなく保持される。それとともに、そのブラシ毛53aから離れやすくなったトナーTxは回収ロールによって回収されやすくなる。また、これと同時に、ブラシ毛53のうち毛倒れ状態になりそうなものが逆回転により回復される。このようにしてブラシロール55A,55Bのブラシ毛53へのトナーの蓄積が防止されたり、そのブラシ毛53の毛倒れが回復されるようになるため、ブラシロールにおけるトナー等の蓄積現象や毛倒れ現象等に起因した清掃能力の低下が防止されることとなる。
また、この逆回転時期の動作により、回収ロール55A,55Bも、図6の下部に示すように平常回転時期とは反対の方向に回転する。
これにより、ブラシロール55A,55Bのブラシ毛53と異なる回転状態(移動方向)で接触することとになるため、これによってもそのブラシ毛53へのトナーの蓄積が防止されたり、そのブラシ毛の毛倒れが回復されるようになる。これと同時に、回収ロール55A,55Bの各面とスクレーパ56A,56Bの先端部との接触状態が平常回転時期と異なる方向で接触しあうことになるため、スクレーパ56A,56Bの先端部に固着したまたは固着しそうなトナーTxが除去されるようになる。
このようにして、ブラシロール55A,55Bのブラシ毛53へのトナーの蓄積が防止されたりそのブラシ毛53の毛倒れが回復されることでブラシロールの清掃能力の低下が防止されるようになり、しかも回収ロール55A,55Bにおけるトナーの回収性能とスクレーパ56A,56Bのトナーかき落とし性能の低下とがいずれも防止されることとなる。また、実施形態1では、この逆回転時期に回収ロール55A,55Bに印加されるバイアスの極性が正常回転時期に印加されるバイアスの極性と同じであるため、回収ロール55上のトナーTxがブラシロール51側に静電的な作用で転移して戻ってしまうことがなく保持される。
以上より、クリーニング装置50は、逆転回転時期における動作を実行することによりそのクリーニング装置全体における清掃性能の低下が防止されるようになり、この結果、その清掃性能が維持されて安定するようになるため転写搬送ベルト30を長期にわたって良好に清掃することができる。また、その逆転回転時期においては、転写搬送ベルト30は正常回転時期と同じ方向に回転させ続ければよく、そのベルト30の回転を逆回転させることやそれを停止させることがないため、中間転写ベルト130などを逆回転させるための構成や転写搬送ベルト30を中間転写ベルト130から離間させるための機構を採用する必要がなく、その分、装置が複雑化したり、その生産性の低下してしまうという不具合が発生するおそれはない。
なお、実施形態1においては、転写搬送ベルト30に付着する不要なトナーTX等の極性などの条件に応じて、そのクリーニング装置50としてブラシロール55A,55B、回収ロール55A,55B及びスクレーパ56A,56Bのうちの一方の組(ブラシロール、回収ロールおよびスクレーパの組)のみを採用するクリーニング装置を使用してもよい。また、必要に応じて、平常回転時期および逆回転時期におけるブラシロール55A,55Bおよび回収ロール55A,55Bの回転方向について、図5に示す各方向(平常回転時期はC1,D1、逆回転時期はC2,D2)とは逆の関係(平常回転時期はC2,D2、逆回転時期はC1,D1)に設定することも可能である。
また、実施形態1においては、クリーニング装置50としてブラシロール51に対して回収ロール55及びスクレーパ56の補助部材を設置する場合について例示したが、ブラシロール51に対しては、その補助部材に代えて、そのブラシ毛53に接触してその毛53に付着するトナーを振り落とすためのフリッカバーのみを補助部材として固定設置する構成を適用してもよい。この場合、フリッカバーは、絶縁性または導電性の板状部材等にて構成されるものが使用される。導電性のものを使用する場合には、接地したりあるいは所定のバイアスを印加する。このフリッカバーを設置したクリーニング装置50では、回転するブラシロール51により転写搬送ベルト30から取り除いてブラシ毛53に付着するトナーが、その移動するブラシ毛53に接触するフリッカバーによって振り落とされた後、トナー回収部59に収容されるようになる。
さらに、実施形態1においては、転写搬送ベルト30におけるクリーニング装置50を第一支持ロール35に支持されている転写搬送ベルト30の領域内に設置する場合に限らず、その領域内に代えて又はその領域と併せて、第二支持ロール36に支持されている転写搬送ベルト30の領域内に別のクリーニング装置50を設置することも可能である。
また、実施形態1においては、画像形成装置100における作像部120としてタンデムタイプのカラー作像部を例示したが、その作像部120としては、以下に示す他のタイプのものを適用することも可能である。
たとえば、4サイクルタイプのカラー作像部を適用してもよい。4サイクルタイプのカラー作像部120とは、1つの感光ドラム121を使用し、その1つの感光ドラム121の周囲に帯電装置、露光装置、および前記4色(Y,M,C,K)のトナーを1色ずつ収容した4つの現像器を回転支持体の周面にそって等間隔で配置したロータリー式の現像装置を順次設置したうえで、感光ドラム121を4回転させる間に4色のトナー像を順次形成するものである。この場合、感光ドラム121上に形成される各トナー像は、その1回転ごとに中間転写ベルト130上に順次一次転写されて重ね合わせられる。
また、カラーのトナー像を形成するものに限らず、単色(特に黒色)のトナー像を1つ形成する単色タイプの作像部120を適用してもよい。この場合には、通常、その単色のトナー像を1つの感光ドラムに形成する一方、中間転写ベルト130による中間転写方式を採用せず、その感光ドラムの転写位置に対して転写搬送装置10(具体的には転写搬送ベルト30)を直接的に設置する。
1,10…転写搬送装置、2…像担持体、3,30…転写搬送ベルト、4,51…ブラシロール、5…回転駆動手段、6…バイアス印加手段、7,55…回収ロール、8…板状部材、50…クリーニング装置、56…スクレーパ(板状部材)、60…駆動装置(回転駆動手段)、65…直流電源装置(バイアス印加手段)、121…感光ドラム(像担持体)、130…中間転写ベルト(像担持体)、P…記録シート、T…トナー像、B…搬送方向、TN…転写位置。