JP2005249544A - 流量センサ - Google Patents
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Abstract
【課題】 高感度で、応答速度が速く、且つ信頼性が優れた流量センサを提供する。
【解決手段】 第1のアンドープダイヤモンド層1上にBドープダイヤモンド層2を形成する。また、Bドープダイヤモンド層2の電極部2a及び2b上には、夫々Bドープダイヤモンド層2よりも低抵抗の低抵抗Bドープダイヤモンド層3a及び3bを形成し、この低抵抗Bドープダイヤモンド層3a及び3b上には、夫々金属により信号取り出し用電極を形成する。一方、低抵抗Bドープダイヤモンド層3a及び3bが形成されていない流量センサ10の中央部分の第1のアンドープダイヤモンド層1上には、Bドープダイヤモンド層2の配線部2cを覆うように第2のアンドープダイヤモンド層4を形成して流量センサとする。
【選択図】 図1
【解決手段】 第1のアンドープダイヤモンド層1上にBドープダイヤモンド層2を形成する。また、Bドープダイヤモンド層2の電極部2a及び2b上には、夫々Bドープダイヤモンド層2よりも低抵抗の低抵抗Bドープダイヤモンド層3a及び3bを形成し、この低抵抗Bドープダイヤモンド層3a及び3b上には、夫々金属により信号取り出し用電極を形成する。一方、低抵抗Bドープダイヤモンド層3a及び3bが形成されていない流量センサ10の中央部分の第1のアンドープダイヤモンド層1上には、Bドープダイヤモンド層2の配線部2cを覆うように第2のアンドープダイヤモンド層4を形成して流量センサとする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、流体の流速又は流量を計測する流量センサに関し、特に、ダイヤモンド膜を使用した流量センサに関する。
従来、空気等の気体及び液体の流量を測定するセンサとして、温度変化に伴い材料の電気抵抗値が変化することを利用した感熱方式の流量センサが提案されている(例えば、特許文献1乃至8参照)。この感熱方式の流量センサにより流体の流量を測定する場合、一般に、加熱した材料を流体に接触させると共にこの材料の電気抵抗値を測定し、流体により冷却されて変化した電気抵抗値から計算により流体の流量を求めている。従来の感熱方式の流量センサの構造としては、特許文献1乃至7に記載の流量センサのように、サーミスタ等の温度変化により電気抵抗値が変化する材料により形成された検知部と、この検知部を加熱する発熱部とが夫々別々に設けられているものと、特許文献8に記載の流量センサのように、検知部及び発熱部が1つの素子で構成されているものとがある。
図9は特許文献3に記載の流量センサの構成を示す平面図である。図9に記載の流量センサ100は、高断熱材料からなる基板101上に、発熱抵抗体102が設けられており、この発熱抵抗体102を挟んで流体の流れる方向107に対して上流側及び下流側に夫々感温抵抗体103及び104が設けられている。そして、発熱抵抗体102には所定温度で保持される発熱部102aが形成されており、感温抵抗体103及び104には夫々流量検出部103a及び104aが形成されている。この発熱部102a並びに流量検出部103a及び104a上には保護膜105が形成されており、発熱抵抗体102並びに感温抵抗体103及び104の両端部には夫々配線106が接続されている。
また、図10は特許文献8に記載の流量センサの構成を示す断面図である。図10に示すように、特許文献8に記載の流量センサの感応素子110は、ダイヤモンド薄膜111の一方の面上に発熱部及び検知部となる白金薄膜112が形成されている。また、この白金薄膜112を囲うように、絶縁物からなる基体113が接着剤等により接合されている。この基体113上にはリードフレームとなる電極114が形成されており、白金薄膜112と電極114とは金ワイヤ115をワイヤボンディングすることにより接続されている。そして、この感応素子100は保持部材116に固定されており、電極114と保持部材116上に形成された電極118とが、金ワイヤ117をワイヤボンディングすることにより接続されている。この流量センサは、ダイヤモンド薄膜101の他方の面を流体に接触させることにより、流量を測定する。
特開2000−28411号公報
特開2000−213973号公報
特開2000−227352号広報
特開2001−4423号広報
特開2001−12987号広報
特開2002−5717号広報
特開2002−328053号公報
特開2003−142743号広報
しかしながら、前述の従来の技術には以下に示す問題点がある。即ち、前述の特許文献1乃至8に記載の流量センサは、いずれも検知部が基板上に形成されているか、又は検知部が形成された素子がセラミック材料等の保持部材に固定されているため、センサの一方の面しか流体に接触させることができない。また、一般に基板及び保持部材を構成する材料としては熱伝導率が低いものが使用されているが、基板及び保持部材から検知部への熱流による影響は避けられない。このため、流体の流量を検知する精度及び応答速度が低いという問題点がある。
また、特許文献1乃至7に記載の流量センサのように、発熱部と感応部とを夫々別々に設けると、複雑な微細加工が必要となると共に、早い周期で流量が変化する場合には、その変動に対する応答が大幅に遅れるか、又は流量の変化が検知できないという問題点がある。なお、感熱方式以外の方法で流量を検知する流量センサも提案されているが、それらは感熱方式の流量センサに比べて、信頼性が低く、また製造コストが高いという問題点がある。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、高感度で、応答速度が速く、且つ信頼性が優れた流量センサを提供することを目的とする。
本発明に係る流量センサは、第1の絶縁性ダイヤモンド層と、前記第1の絶縁性ダイヤモンド層上に形成されその少なくとも一部が検知部である第1の導電性ダイヤモンド層と、少なくとも前記第1の導電性ダイヤモンド層の前記検知部を覆うように形成された第2の絶縁性ダイヤモンド層と、を有し、前記検知部に外部電源から一定の電圧が印加されると共に前記第1及び第2の絶縁性ダイヤモンド層における前記検知部を覆っている部分の表面に接触するように流体が流されたときに、前記流体の流量の変化を前記第1の導電性ダイヤモンド層の抵抗値の変化として検出することを特徴とする。
本発明者等は上述の問題点を解決するために鋭意実験研究を行った結果、検知部を室温付近の温度における熱伝導率が他の物質よりも高いダイヤモンドにより形成することにより、高感度で且つ高速応答可能な流量センサを実現することができることを見出した。近時、ダイヤモンド膜の高速及び大面積成膜技術が開発され、100μm程度の膜厚のダイヤモンド膜がCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相蒸着)法により容易に、且つ安価に合成することができるようになっている。
また、通常、ダイヤモンドは電気的に高抵抗であるが、Bをドーピングすることによりp型半導体となり、また、Bのドーピング濃度を変えることにより、その電気抵抗値を調節することができる。更に、ダイヤモンドの半導体特性は、1000℃程度でも失われないことが知られている。更にまた、ダイヤモンドにBを高濃度にドーピングすると、金属と同程度の導電性を示すようになり、より低抵抗化することができる。そこで、本発明においては、上述の特性を利用し、検知部及び検知部の周囲に形成され流体と接触する部分の全てをダイヤモンドのみで形成している。これにより、センサの感度及び耐久性が向上し、高感度及び高速応答可能で、信頼性が優れた流量センサを実現することができる。
なお、特許文献8に記載の流量センサは、本発明と同様にダイヤモンド薄膜を使用しているが、前述したように、ダイヤモンド薄膜の一方の面に発熱部及び検知部が形成されているため、流体に接触するのは発熱部が形成されていない他方の面のみである。このため、本発明の流量センサに比べて感度及び応答性が低い。一方、本発明においては、検知部となる第1の導電性ダイヤモンド層の両面に絶縁性ダイヤモンド層が形成されているため、センサの両面を流体に接触させることができる。
前記流量センサは、例えば、前記第1及び第2の絶縁性ダイヤモンド層をアンドープダイヤモンドにより形成し、前記第1の導電性ダイヤモンド層をBがドープされたBドープダイヤモンドにより形成してもよい。この場合、前記第1導電性ダイヤモンド層中のB濃度を調節することにより、センサの感度を容易に制御することができる。
また、前記第1の絶縁性ダイヤモンド層の厚さと、前記第2の絶縁性ダイヤモンド層の厚さと、前記第1の導電性ダイヤモンド層の厚さとの和は、1乃至500μmであることが好ましい。更に、前記第1の導電性ダイヤモンド層の厚さは、1乃至100μmであることが好ましい。これにより、感度及び応答性低下させずに、センサの強度を向上させることができる。
更にまた、前記流量センサは、更に、前記第1の導電性ダイヤモンド層の表面における前記第2の絶縁性ダイヤモンド層が形成されていない領域に形成され前記第1の導電性ダイヤモンド層よりも低抵抗の第2の導電性ダイヤモンド層と、前記第2の導電性ダイヤモンド層上に形成された信号取り出し用電極と、を有していてもよく、この場合、前記第1の導電性ダイヤモンド層は、前記第2の導電性ダイヤモンド層及び前記信号取り出し用電極を介して前記外部電源に接続される。
更にまた、前記第1の絶縁性ダイヤモンド層表面の前記流体に接触する領域には、フィンが形成されていていることが好ましく、更に、前記第2の絶縁性ダイヤモンド層表面の前記流体に接触する領域にも、フィンが形成されていることがより好ましい。これにより、センサと流体と間の熱交換効率が向上し、センサの感度及び時間応答性が向上する。
前記第1及び第2の絶縁性ダイヤモンド層並びに前記第1の導電性ダイヤモンド層は、結晶粒子が厚さ方向に柱状に成長した多結晶ダイヤモンド膜であることが好ましい。また、前記第1及び第2の絶縁性ダイヤモンド層並びに前記第1の導電性ダイヤモンド層は、表面が(001)面で覆われ、結晶粒子が基板面に対して垂直な一軸方向に配向していると共に、結晶面が面内でも配向している高配向性ダイヤモンド層であることがより好ましい。これにより、熱伝導率が向上するため、センサの感度及び時間応答性が向上する。
本発明によれば、検知部を導電性ダイヤモンド層により形成し、更にこの検知部を絶縁性ダイヤモンド層により覆うことにより、センサの両面を流体に接触させることができるようになるため、感度及び応答速度が向上すると共に耐久性が向上する。
以下、本発明の第1の実施形態に係る流量センサについて添付の図面を参照して具体的に説明する。図1(a)は本実施形態の流量センサを示す平面図であり、図1(b)は図1(a)に示すA−A線による断面図である。図1(a)及び(b)に示すように、本実施形態の流量センサ10は、第1の絶縁性ダイヤモンド層である第1のアンドープダイヤモンド層1上には、第1の導電性ダイヤモンド層であるBドープダイヤモンド層2が形成されている。このBドープダイヤモンド層2は、第1のアンドープダイヤモンド層1の両端部に夫々形成された平面視で矩形状の電極部2a及び2bの間に、検知部となる複数回屈曲した形状の配線部2cが形成されており、この電極部2a及び2bと配線部2cとは相互に接続されている。
また、Bドープダイヤモンド層2の電極部2a及び2b上には、夫々Bドープダイヤモンド層2よりも低抵抗の第2の導電性ダイヤモンド層である低抵抗Bドープダイヤモンド層3a及び3bが形成されている。そして、この低抵抗Bドープダイヤモンド層3a及び3b上には、夫々金属により信号取り出し用電極(図示せず)が形成されている。一方、低抵抗Bドープダイヤモンド層3a及び3bが形成されていない部分、即ち、流量センサ10の中央部分の第1のアンドープダイヤモンド層1上には、Bドープダイヤモンド層2の配線部2cを覆うように第2の絶縁性ダイヤモンド層である第2のアンドープダイヤモンド層4が形成されている。
なお、Bドープダイヤモンド層2の形状は、目的及び必要とする感度に応じて適宜設計することができ、例えば、配線部2cを設けず、第1のアンドープダイヤモンド層1の全面にBドープダイヤモンド層2を形成し、その表面の両端部に低抵抗Bドープダイヤモンド層3a及び3bを形成してもよい。
このように、本実施形態の流量センサ10においては、流体に接触する感応部5が、検知部となるBドープダイヤモンド層2の配線部2cを、第1のアンドープダイヤモンド層1及び第2のアンドープダイヤモンド層4によって完全に被覆した構造になっている。この第1のアンドープダイヤモンド層1及び第2のアンドープダイヤモンド層4は共に電気的に絶縁性であるため、仮にセンサ表面に流体に含まれる導電性の粉塵が付着したとしても、Bドープダイヤモンド層2の電気抵抗値には影響しない。
また、ダイヤモンドは他の物質に比べて硬度が高いため、流体中に微小な粉塵が含まれていても、第1のアンドープダイヤモンド層1及び第2のアンドープダイヤモンド層4、即ち、センサ表面が傷つくことはない。更に、ダイヤモンドは、強酸、強アルカリ及び有機溶媒に浸食されないため、流体中にこのような物質が含まれている場合でも、本実施形態の流量センサ10は、破壊されることなく測定を行うことができる。更にまた、ダイヤモンドは、大気中では600℃程度までは安定であるため、高温の流体であっても安定して測定することができる。更にまた、ダイヤモンドは他の物質に比べて熱導電率が高い。従って、感応部5が全てダイヤモンドにより形成されている本実施形態の流量センサ10は、従来の流量センサに比べて応答速度が極めて速い。
一般に、B等の不純物がドープされたダイヤモンド膜は、ドーピングするBの濃度を変えることにより、その電気抵抗値の温度依存性を調節することができる。従って、本実施形態の流量センサ10においては、Bドープダイヤモンド層2のBドーピング濃度を変えることにより、感度を容易に調節することができる。
また、本実施形態の流量センサ10の厚さは、以下の2つの因子を考慮して設計される。先ず、第1の因子は力学的強度である。センサの厚さが薄いと力学的強度が低下するため、急速な流量変化が起こると破損する虞がある。また、第2の因子は時間応答速度である。この時間応答速度は、センサの厚さが薄い程速くなる。現実的には、本実施形態の流量センサ10のように3層構造の場合、第1のアンドープダイヤモンド層1、Bドープダイヤモンド層2及び第2のアンドープダイヤモンド層4の総厚は、少なくとも1μmは必要である。一方、第1のアンドープダイヤモンド層1、Bドープダイヤモンド層2及び第2のアンドープダイヤモンド層4は、CVD法等により形成することができるが、これらの総厚が500μmより厚くなると、ダイヤモンドを合成する際の成膜時間が長くなると共にセンサの時間応答速度も低下する。以上の理由から、本実施形態の流量センサ10における厚さ、即ち、第1のアンドープダイヤモンド層1、Bドープダイヤモンド層2及び第2のアンドープダイヤモンド層4の総厚は、1乃至500μmであることが好ましい。なお、本実施形態の流量センサ10の厚さは、前述の範囲に限定されるものではなく、用途に応じて適宜設定することができ、例えば、1μmよりも薄く、又は500μmよりも厚くすることもできる。
本実施形態の流量センサ10においては、Bドープダイヤモンド層2の配線部2cが検知部となり、Bドープダイヤモンド層2の電気抵抗値を基にして流体の流量を求める。このBドープダイヤモンド層2の膜厚は、前述のセンサ全体の厚さに依存するが、1乃至100μmであることが好ましい。Bドープダイヤモンド層2の膜厚が1μmよりも薄いと強度が低下する。また、Bドープダイヤモンド層2の厚さが100μmよりも厚いと、時間応答速度が低下する。なお、Bドープダイヤモンド層2の厚さは前述の範囲に限定されるものではなく、用途に応じて適宜その厚さを設定することができ、例えば、1μmよりも薄く、又は100μmよりも厚くすることもできる。
本実施形態の流量センサ10における第1のアンドープダイヤモンド層1、第2のダイヤモンド層4及びBドープダイヤモンド層2は、例えば、ダイヤモンド粒子が膜厚方向に柱状に成長した多結晶ダイヤモンド膜により形成される。このような多結晶ダイヤモンド膜は膜厚方向における熱導電性が高いため、センサの感度及び時間応答性が向上する。図2は多結晶ダイヤモンド膜の形成方法を模式的に示す断面図である。ダイヤモンド粒子12が膜厚方向に柱状に成長した多結晶ダイヤモンド膜は、例えば、図2に示すように、CVD法等により基板11上にダイヤモンドを合成した後、基板11側から面13が表面になるまで研磨し、ダイヤモンド粒子12のうち基板11近傍に形成され熱伝導率が劣る部分12aを除去することにより得られる。
また、第1のアンドープダイヤモンド層1、第2のダイヤモンド層4及びBドープダイヤモンド層2は、表面がダイヤモンドの(001)面により形成され、結晶粒子が基板面に垂直な一軸方向に配向していると共に、結晶面が面内でも配向している高配向性ダイヤモンド膜であることがより好ましい。図3は高配向性ダイヤモンド膜を示すSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)写真である(倍率:16000倍)。この高配向性ダイヤモンド膜は、広義には多結晶膜に分類されるが、結晶粒子の成長方向及び面内方向が共に一方向に配向し、図3に示すように、表面は平坦な(001)ファセットが並ぶ特徴的な表面形態をとっているため、通常の多結晶膜に比べて表面近傍における結晶欠陥密度が小さく、優れた感度が得られる。
本実施形態の流量センサ10は、感応部5の表面、即ち、第1のアンドープダイヤモンド層1及び第2のアンドープダイヤモンド層4におけるBドープダイヤモンド層2の配線部2cを覆っている部分の表面に、流体が接触するように配置される。図4は本実施形態の流量センサ10の使用時の状態を模式的に示す斜視図である。図4に示すように、本実施形態の流量センサ10は、信号取り出し用電極に信号線8が接続される。そして、流量センサ10の両端部、即ち、低抵抗Bドープダイヤモンド層3a及び3bが形成されている部分をセンサ保持部7によって保持し、流体の流れる方向9と低抵抗Bドープダイヤモンド層3a及び3bが対向する方向とが垂直になるようにして、流体がセンサの中央部分、即ち、感応部5の両面に接触するように配置される。
次に、本実施形態の流量センサ10の動作について説明する。本実施形態の流量センサ10により流体の流量を測定する際は、図4に示すように、流体の流れる方向9と低抵抗Bドープダイヤモンド層3a及び3bが対向する方向とが垂直になるように流量センサ10を配置し、感応部5の両面に流体に接触させる。そして、低抵抗Bドープダイヤモンド層3a及び3b及び金属電極を介して信号線6からBドープダイヤモンド層2に一定の電圧を印加する。このとき、流体の流量が一定であれば、Bドープダイヤモンド層2を流れる電流値も一定に保持されるが、流体の流量が変化すると、流体と第1のアンドープダイヤモンド層1及び第2のアンドープダイヤモンド層4との間の熱交換効率が変化し、第1のアンドープダイヤモンド層1及び第2のアンドープダイヤモンド層4の温度が変化する。これにより、Bドープダイヤモンド層2の温度も変化し、それに伴い、Bドープダイヤモンド層2の電気抵抗値が変化するため、Bドープダイヤモンド層2を流れる電流値が変化する。従って、本実施形態の流量センサ10においては、Bドープダイヤモンド層2の電気抵抗値の変化を測定し、この電気抵抗値の変化から計算により流体の流量の変化を求める。
このように、本実施形態の流量センサ10は、検知部であるBドープダイヤモンド層2の配線部2cを、第1のアンドープダイヤモンド層1及び第2のアンドープダイヤモンド層4により被覆しているため、従来の流量センサのように一方の面だけではなく、センサの両面を流体に接触させることができる。このため、従来の流量センサに比べて熱交換効率が向上するため、センサ感度が向上する。また、検出部であるBドープダイヤモンド層2の配線部2cを被覆している第1のアンドープダイヤモンド層1及び第2のアンドープダイヤモンド層4は、共に熱伝導率が高いダイヤモンド膜であるため、時間応答性が優れている。
次に、本実施形態の変形例の流量センサについて説明する。本実施形態の流量センサにおいては、その表面に流体が流れる方向に延びる複数個のフィンを設けることもできる。図5(a)は本実施形態の第1変形例の流量センサを示す断面図であり、図5(b)は第2変形例の流量センサを示す断面図であり、図5(c)は第3変形例の流量センサを示す断面図であり、図5(d)は第4変形例の流量センサを示す断面図である。なお、図5(a)乃至(d)は図1(a)に示すA−A線による断面図に相当する。図5(a)乃至(d)に示すように、本実施形態の第1乃至4変形例の流量センサは、アンドープダイヤモンド層の表面に、フィン6が形成されている。このフィン6の形状としては、例えば、長手方向に対して垂直な断面が、長方形又は三角形である形状にすることができる。図5(a)及び図5(c)に示す第1及び第3変形例の流量センサのように、フィン6は少なくとも第1のアンドープダイヤモンド層1上の流体が接触する部分に設けられていればよい。これにより、流体とセンサと間の熱交換効率が向上する。また、図5(b)及び図5(d)に示す第2及び第4変形例の流量センサのように、第1のアンドープダイヤモンド層1及び第2のアンドープダイヤモンド層4の両方にフィン6を設けると、センサ感度をより向上させることができる。このフィン6を形成する方法としては、例えば、第1のアンドープダイヤモンド層1及び第2のアンドープダイヤモンド層4の表面に、ダイヤモンドを選択的に成長させる方法又はモールド法等の公知の方法を適用することができ、フィン6はこれら公知の方法により容易に形成することができる。なお、前述の変形例1乃至4の流量センサにおけるフィン6以外の構成及び動作は、前述の流量センサ10と同様である。
次に、本発明の実施例の効果について説明する。本発明の実施例として、第1のアンドープダイヤモンド層1上に、図5(a)に示す流量センサと同様の構造の流量センサを作製した。先ず、シリコン基板上に、フォトリドグラフィ技術によりマスクを形成し、マスクのない部分のみをプラズマによりエッチングする等の公知の技術を利用して、深さが10μm程度、ピッチが10μm程度で、長手方向に対して垂直な断面が矩形であるフィン6用の溝を複数本形成した。この基板上に第1のアンドープダイヤモンド層1を、縦が50μm、横が150μm、厚さが50μmになるように、アンドープダイヤモンド層1を形成したい部分以外の部分にマスクを形成した状態で、ダイヤモンドを選択的に成長させた。次に、このアンドープダイヤモンド層1の表面に、選択的に図1(a)に示す形状のBドープダイヤモンド層2を20μmの厚さに形成し、更に、Bドープダイヤモンド層2の電極部2a及び2b上に、夫々選択的に低抵抗Bドープダイヤモンド層3a及び3bを10μm程度形成した。そして、低抵抗Bドープダイヤモンド層3a及び3bが形成されていない部分には、厚さが10μmの第2のアンドープダイヤモンド層4を選択的に成長させた。
次に、シリコン基板をフッ硝酸により溶解除去した。これにより、第1のアンドープダイヤモンド層1上に複数のフィン6が形成された。その後、低抵抗Bドープダイヤモンド層3a及び3b上にチタン、白金及び金をこの順に蒸着して3層構造の信号取り出し用電極を形成し、実施例1の流量センサとした。
次に、前述の方法で作製した実施例1の流量センサの金属電極に信号線8を接続した後、センサの両端部をセンサ保持部7に装着して金属電極を被覆した。そして、空気の流速を10m/秒から5m/秒に変化させたときの電気抵抗値の変化を測定した。図6は横軸に時間をとり、縦軸にBドープダイヤモンド層の電気抵抗値をとって、実施例1の流量センサの応答特性を示すグラフ図である。図6に示すように、流速(流量)が変化すると、Bドープダイヤモンド層2の電気抵抗値も変化した。これは、流体の流量が減少することによりセンサから奪われる熱が少なくなり、Bドープダイヤモンド層4の温度が上昇したためである。
次に、高回転のピストンで、流速が10kHz及び600kHzの周期で変化するパルス状の空気流を発生させ、この空気流に対する本実施例の流速センサの応答をフーリエ展開して評価した。図7は横軸に時間をとり、縦軸に電気抵抗値をとって、流速を10kHzで変化させたときの実施例1の流量センサの応答特性を示すグラフ図であり、図8は横軸に時間をとり、縦軸に電気抵抗値をとって、流速を600kHzの周期で変化させたときの実施例1の流速センサの応答特性を示すグラフ図である。図7及び図8に示すように、本実施例の流量センサは、空気の流速を10kHz及び600kHzで変化させても検出が可能であった。但し、空気の流速を10kHzで変化させた場合は良好な応答特性を示したが、流速を600kHzで変化させた場合では、若干ではあるが応答に遅れが見られた。
1、4;アンドープダイヤモンド層
2;Bドープダイヤモンド層
2a、2b;電極部
2b;配線部
3a、3b;低抵抗Bドープダイヤモンド層
5;感応部
6;フィン
7;保持部
8;信号線
9、107;流体の流れる方向
10、100;流量センサ
11、101;基板
12;ダイヤモンド粒子
13;面
102;発熱抵抗体
102a;発熱部
103、104;感温抵抗体
103a、104a;流量検出部
105;保護膜
106;配線
110;感応素子
111;ダイヤモンド薄膜
112;白金薄膜
113;基体
114、118;電極
115、117;ワイヤ
116;保持部材
2;Bドープダイヤモンド層
2a、2b;電極部
2b;配線部
3a、3b;低抵抗Bドープダイヤモンド層
5;感応部
6;フィン
7;保持部
8;信号線
9、107;流体の流れる方向
10、100;流量センサ
11、101;基板
12;ダイヤモンド粒子
13;面
102;発熱抵抗体
102a;発熱部
103、104;感温抵抗体
103a、104a;流量検出部
105;保護膜
106;配線
110;感応素子
111;ダイヤモンド薄膜
112;白金薄膜
113;基体
114、118;電極
115、117;ワイヤ
116;保持部材
Claims (10)
- 第1の絶縁性ダイヤモンド層と、前記第1の絶縁性ダイヤモンド層上に形成されその少なくとも一部が検知部である第1の導電性ダイヤモンド層と、少なくとも前記第1の導電性ダイヤモンド層の前記検知部を覆うように形成された第2の絶縁性ダイヤモンド層と、を有し、前記検知部に外部電源から一定の電圧が印加されると共に前記第1及び第2の絶縁性ダイヤモンド層における前記検知部を覆っている部分の表面に接触するように流体が流されたときに、前記流体の流量の変化を前記第1の導電性ダイヤモンド層の抵抗値の変化として検出することを特徴とする流量センサ。
- 前記第1及び第2の絶縁性ダイヤモンド層は、アンドープダイヤモンドにより形成され、前記第1の導電性ダイヤモンド層は、BがドープされたBドープダイヤモンドにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流量センサ。
- 前記第1導電性ダイヤモンド層中のB濃度を調節することにより感度を制御することを特徴とする請求項2に記載の流量センサ。
- 前記第1の絶縁性ダイヤモンド層の厚さと、前記第2の絶縁性ダイヤモンド層の厚さと、前記第1の導電性ダイヤモンド層の厚さとの和は、1乃至500μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の流量センサ。
- 前記第1の導電性ダイヤモンド層の厚さが1乃至100μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の流量センサ。
- 前記第1の導電性ダイヤモンド層の表面の前記第2の絶縁性ダイヤモンド層が形成されていない領域に形成され前記第1の導電性ダイヤモンド層よりも低抵抗の第2の導電性ダイヤモンド層と、前記第2の導電性ダイヤモンド層上に形成された信号取り出し用電極と、を有し、前記第1の導電性ダイヤモンド層は、前記第2の導電性ダイヤモンド層及び前記信号取り出し用電極を介して前記外部電源に接続されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の流量センサ。
- 前記第1の絶縁性ダイヤモンド層表面の前記流体が接触する領域には、フィンが形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の流量センサ。
- 前記第2の絶縁性ダイヤモンド層表面の前記流体が接触する領域には、フィンが形成されていることを特徴とする請求項7に記載の流量センサ。
- 前記第1及び第2の絶縁性ダイヤモンド層並びに前記第1の導電性ダイヤモンド層は、結晶粒子が厚さ方向に柱状に成長した多結晶ダイヤモンド膜であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の流量センサ。
- 前記第1及び第2の絶縁性ダイヤモンド層並びに前記第1の導電性ダイヤモンド層は、表面が(001)面で覆われ、結晶粒子が基板面に対して垂直な一軸方向に配向していると共に、結晶面が面内でも配向している高配向性ダイヤモンド層であることを特徴とする請求項9に記載の流量センサ。
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