JP2005249360A - 熱電ヒートポンプ - Google Patents

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Abstract

【課題】 吸熱側と放熱側との温度差を大きくすべく、ペルチェ素子の素子長を長くした場合でも、ジュール損失による吸熱量の低下を抑制することができるようにする。
【解決手段】 熱電モジュールMは、p形ペルチェ素子10及びn形ペルチェ素子20、低温側基板51及び高温側基板52、p形ペルチェ素子10及びn形ペルチェ素子20を電気的に直列接続するための低温側接合電極411、412、高温側接合電極42を備える。ペルチェ素子10、20は高温側と低温側とに分割された二分割のものとされ、低温側ペルチェ素子11、21と高温側ペルチェ素子12、22との間には、それぞれ導電性を備える中間熱だまり層31、32が設けられている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ペルチェ素子をアセンブリしてなる熱電モジュールを用いて熱移送を行うようにした熱電ヒートポンプに関するものである。
ペルチェ素子をアセンブリしてなる熱電モジュールを用いた熱電ヒートポンプは、各種の用途に用いられており、例えば可搬式冷蔵庫、保温庫、半導体プロセス用恒温プレート、CPUクーラー等への応用が拡大している。また特許文献1には、当該熱電ヒートポンプを宇宙ステーションの放熱システム等に供されるサーマルポンプに適用した例が開示されている。
図8は、一般的な熱電モジュールM0の構成を示す側面図である。この図例では、低温側熱源61から高温側熱源62へ熱移送する場合に適用される熱電モジュールM0を示している。この熱電モジュールM0は、p形半導体からなるp形ペルチェ素子100及びn形半導体からなるn形ペルチェ素子200と、低温側熱源61に一面が当接される低温側基板51及び高温側熱源62に一面が当接される高温側基板52と、これら基板51、52の他面側に配置され、p形ペルチェ素子100及びn形ペルチェ素子200を電気的に直列接続するための低温側接合電極411、412、及び高温側接合電極42と、該低温側接合電極411、412に直流電圧を印加する直流電源7とから構成されている。
このような熱電モジュールM0に直流電源7から直流電圧を印加すると、p形ペルチェ素子100とn形ペルチェ素子200とからなる直列回路に電流Iが流れ、ペルチェ効果によりモジュールの一方の面においては発熱し、他方の面においては吸熱するという特性がある。図8に示した熱電モジュールM0では、低温側基板51から吸熱がなされ(その熱流を矢印H1で示している)、高温側基板52から放熱がなされる(その熱流を矢印H2で示している)こととなる。すなわち、直流電圧の印加により熱流H1、H2が生じ、これにより熱電モジュールM0の一面側から他面側への熱移送が行われるものである。
特公平5−59344号公報
ところで、可搬式冷蔵庫等に上記のような熱電モジュールM0を適用する場合、冷蔵効果を得るために吸熱側と放熱側との温度差を大きくすることが求められる。このように大きな温度差を得ようとする場合にあっては、ペルチェ素子の素子長を長くし、透過熱損失を抑制する必要がある。図9は、ペルチェ素子長さと吸熱側の成績係数(消費したエネルギーに対する吸熱量の割合。C.O.Pとも言う。)との関係を示すグラフ図である。このグラフ図からも明らかな通り、ペルチェ素子長さが短いもの(素子長さ1.25mm,2.5mmのデータ参照)は、吸熱側と放熱側との温度差が大きくなるほど成績係数の低下度合いが著しくなるのに対し、ペルチェ素子長さが比較的長いもの(素子長さ5mmのデータ参照)は、温度差が大きくなっても成績係数の低下度合いは比較的僅少である。従って、比較的大きい温度差範囲までをカバーする必要がある冷却用途には、ペルチェ素子長さが長いものを用いることが効果的であることが分る。この効果は、素子の断面積を減少させることによっても同様に得ることができる。
しかし、成績係数の低下度合いのみに着目すれば上記の通りなのであるが、ペルチェ素子の素子長を長くすると、図9に示す通り、温度差が小さい領域において成績係数自体の値が、素子長さが短いものに比べてかなり低くなる傾向がある。これは半導体素子であるペルチェ素子への通電によるジュール損失が、ペルチェ素子長さが長くなる程に大きくなり、発生したジュール熱がペルチェ素子の吸熱性を阻害する(ジュール熱が低温側熱源61に流れ込む)ことに起因すると考えられる。このようなジュール熱の影響があることから、吸熱側と放熱側との温度差を大きくすることが求められる用途には、ペルチェ素子を用いた熱電ヒートポンプは効率が悪いとされてきた。
従って本発明は、吸熱側と放熱側との温度差を大きくすべく、ペルチェ素子の素子長を長くした場合でも、ジュール損失による吸熱量の低下を抑制することができる熱電ヒートポンプを提供することを目的とする。
本発明の請求項1にかかる熱電ヒートポンプは、低温側基板と高温側基板との間にp形及びn形のペルチェ素子を縦列配置し、これらペルチェ素子を前記基板上に配置された電極にて電気的に直列接続してなる熱電モジュールを有する熱電ヒートポンプにおいて、前記ペルチェ素子が高温側と低温側とに分割された二分割のものとされ、高温側ペルチェ素子と低温側ペルチェ素子との間に、導電性を備える中間熱だまり層が設けられていることを特徴とする。
この構成によれば、二分割されたペルチェ素子のうち、高温側ペルチェ素子が発するジュール熱であって低温側熱源方向へ向かうジュール熱は、前記中間熱だまり層に捕捉されることとなる。従って、低温側熱源方向へ流れ込むジュール熱は、低温側ペルチェ素子が発するジュール熱であって低温側熱源方向へ向かうジュール熱のみとなり、中間熱だまり層を設けない通常のペルチェ素子に比べ、ジュール損失による影響が半減されることとなる。
請求項2にかかる熱電ヒートポンプは、請求項1において、中間熱だまり層が、アルミニウム又は銅からなる金属片で構成されていることを特徴とする。中間熱だまり層としては、ジュール熱を吸熱できるよう吸熱性が良好であることが望ましい。また中間熱だまり層は、ペルチェ素子の電気的な直列回路の一部を担うこと、及び通電によりジュール熱の発生源とならないようにすること等の観点から、優れた導電性を有していることが望ましい。このように吸熱性、導電性に優れ、またペルチェ素子との接合部における接触抵抗を低くでき、さらに比較的安価であるとの条件を満たすよう、請求項2にかかる構成のように、アルミニウム又は銅からなる金属片で中間熱だまり層を構成することが好ましい。
請求項3にかかる熱電ヒートポンプは、請求項1又は2において、高温側ペルチェ素子及び低温側ペルチェ素子と、中間熱だまり層を構成する金属片とが、放電プラズマ焼結法(SPS;Spark Plasma Sintering)で一体成型されたものであることを特徴とする。この構成によれば、SPSにより高温側ペルチェ素子、低温側ペルチェ素子、及び中間熱だまり層からなる一体化された積層体を得ることが出来るので、ペルチェ素子と中間熱だまり層との接触抵抗を極小にすることができる。
請求項1にかかる熱電ヒートポンプによれば、中間熱だまり層を設けない通常のペルチェ素子に比べ、ジュール損失による影響を半減させることができるので、吸熱側と放熱側との温度差を大きくすべく、ペルチェ素子の素子長を長くした場合でも、ジュール損失による吸熱量の低下を抑制することができる。従って、大きな温度差を求められる用途に熱電ヒートポンプを適用する場合、ペルチェ素子長さを長くする必要があることから成績係数の低下は避けられないものの、中間熱だまり層を設けることで前記成績係数の低下を抑制することができ、冷却能力を向上させることができるという効果を奏する。
請求項2にかかる熱電ヒートポンプによれば、中間熱だまり層を、アルミニウム又は銅からなる金属片で構成するので、吸熱性が良好でジュール熱の捕捉性が良く、接触抵抗やジュール発熱も少ないことから、より高性能で高品質であって、しかも安価に、本発明にかかる熱電ヒートポンプを構築することができる。
請求項3にかかる熱電ヒートポンプによれば、ペルチェ素子と中間熱だまり層とを予め一体化した上で熱電モジュールのアセンブリを行えるので組み付け性が良好となり、また両者の接触抵抗を極小にできる(接合性を良好にできる)ので、一段と本発明にかかる熱電ヒートポンプの高性能化を図ることができるようになる。
以下、図面に基づいて本発明の実施形態につき詳細に説明する。
図1は、本発明にかかる熱電モジュールMの構成を示す側面図である。この図例では、低温側熱源61から高温側熱源62へ熱移送する場合に適用される熱電モジュールMを示している。この熱電モジュールMは、p形半導体からなるp形ペルチェ素子10及びn形半導体からなるn形ペルチェ素子20と、低温側熱源61に一面が当接される低温側基板51及び高温側熱源62に一面が当接される高温側基板52と、これら基板51、52の他面側に配置され、p形ペルチェ素子10及びn形ペルチェ素子20を電気的に直列接続するための低温側接合電極411、412、及び高温側接合電極42と、該低温側接合電極411、412間に直流電圧を印加する直流電源7とから構成されている。
本発明においては、p形ペルチェ素子10及びn形ペルチェ素子20は、低温側熱源61の側に位置するものと、高温側熱源62の側に位置するものとに分割された二分割のものとされる。すなわち、p形ペルチェ素子10は、低温側p形ペルチェ素子11と高温側p形ペルチェ素子12とからなる。そして、前記低温側p形ペルチェ素子11と高温側p形ペルチェ素子12との間には、導電性を備える中間熱だまり層31が設けられている。同様に、n形ペルチェ素子20は、低温側n形ペルチェ素子21と高温側n形ペルチェ素子22とからなり、その両者間には、導電性を備える中間熱だまり層32が設けられている。
p形ペルチェ素子10及びn形ペルチェ素子20としては、ゼーベック係数と導電率が大きく、熱伝導率の小さい、いわゆる性能指数の大きい材料が好適に用いられる。このような材料としてBi−Te系の熱電材料が例示できる。より具体的には、p形ペルチェ素子10としてはSb2Te3−Bi2Te3合金等、n形ペルチェ素子20としてはBi2Te3−Bi2Se3合金等を挙げることができる。これら熱電材料は、熱電特性の高い方向(Bi−Te系の場合、c軸に垂直な方向)が通電方向となるよう、低温側接合電極411、412と高温側電極42との間に配置される。
中間熱だまり層31、32は、前述の通り吸熱性、導電性に優れる材質であることが望ましく、例えばアルミニウム又は銅からなる金属片を用いることが好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば金や、銀等の導電体を用いるようにしても良い。
本発明においては、p形ペルチェ素子10としての低温側p形ペルチェ素子11、高温側p形ペルチェ素子12、及び中間熱だまり層31からなる積層体と、n形ペルチェ素子20としての低温側n形ペルチェ素子21、高温側n形ペルチェ素子22及び中間熱だまり層32からなる積層体とを準備する必要がある。この積層方法については特に限定はないが、接合性良く両者の積層体を形成するためには、放電プラズマ焼結法(SPS法)によりこれらを一体的に成型することが好ましい。放電プラズマ焼結法は、カーボン製のダイとパンチの間に試料(粉体原料)を詰め込み、パンチで加圧しつつ低電圧・大電流を与え、試料同士の間で放電プラズマを発生させることで試料を焼結する方法である。従って、ペルチェ素子材料としてのBi−Te系合金材料と、中間熱だまり層の材料としてのアルミニウム又は銅材料とを前記ダイとパンチの間に収納し、放電プラズマ焼結法にて焼結一体化することで、本発明にかかるp形ペルチェ素子10及びn形ペルチェ素子20を作成することが望ましい。
低温側基板51及び高温側基板52は、電気絶縁性を備えた薄板状の部材であれば良く、例えばセラミックス板(Al23 やTiAl等からなる板状体)を用いることができる。低温側基板51及び高温側基板52は対向配置され、低温側基板51の前記対抗面には低温側接合電極411、412が、高温側基板52の対抗面には高温側接合電極42がそれぞれ設けられる。これら接合電極411、412、42は、銅やアルミニウム或いは導電性接着剤等の導電体からなり、前記基板51、52の表面に、例えば溶射工法によって形成される。なお、接合電極411、412、42は、p形ペルチェ素子10及びn形ペルチェ素子20を直列接続するための電極であることから、基板51、52の表面全面に形成されるいわゆるベタ状電極ではなく、所定の絶縁部を備えている必要がある。このため図1に示す例では、低温側接合電極411、412との間に絶縁部410が設けられ、各々の接合電極411、412が分離独立する形態とされている。
p形ペルチェ素子10及びn形ペルチェ素子20は、低温側基板51と高温側基板52との間に縦列配置され、それぞれの端面に位置している接合電極411、412、42と固着されている。この固着方法としては、接合電極411、412、42とペルチェ素子10、20の端面との間に、半田もしくは金属ペースト等を介在させて溶着させる方法を例示することができる。
前述の通り、p形ペルチェ素子10及びn形ペルチェ素子20は、電気的に直列接続する必要があることから、p形ペルチェ素子10の低温側p形ペルチェ素子11が低温側接合電極411と、高温側p形ペルチェ素子12が高温側接合電極42とそれぞれ接合され、これと同じ高温側接合電極42にn形ペルチェ素子20の高温側n形ペルチェ素子22が接合されている。そして低温側n形ペルチェ素子21は、他方の低温側接合電極412と接合されている。つまりp形ペルチェ素子10及びn形ペルチェ素子20はπ型に順次接続され、電気的に直列に、一方熱的には並列に接続されるものである。
低温側基板51及び高温側基板52は、互いの対抗面の裏面側が、それぞれ低温側熱源61、高温側熱源62に当接される。低温側熱源61は、実際は当該熱電モジュールMの動作により吸熱される発熱体や被冷却物品であり、例えば保冷室や半導体発熱部品等が相当する。また高温側熱源62は、実際は当該熱電モジュールMの放熱側であり、放熱フィンや放熱スタック、熱交換用冷媒管等が相当する。
低温側接合電極411、412にはリード線71が接続されており、このリード線71は直流電源7に接続されている。これにより低温側接合電極411、412間に直流電源7による直流電圧が印加可能とされている。
なお図1に示す例では、p形ペルチェ素子10及びn形ペルチェ素子20の一ペアを低温側基板51及び高温側基板52に搭載した場合を例示しているが、実際は図2に示すように、多数のp形ペルチェ素子10及びn形ペルチェ素子20のペアが縦列配置されて熱電モジュールが構成される(図2では、低温側と高温側を、図1とは反転させた場合を示している)。この場合、低温側基板511にはp形ペルチェ素子10及びn形ペルチェ素子20のペア数に応じた低温側接合電極411〜414が設けられ、また高温側基板521にも同様に高温側接合電極421〜425が設けられ、これら接合電極411〜414、421〜425に、p形ペルチェ素子10及びn形ペルチェ素子20がπ型に順次接続されてモジュールが構成される。
このような熱電モジュールMに直流電源7から直流電圧を印加すると、p形ペルチェ素子10とn形ペルチェ素子20とからなる直列回路に電流Iが流れ、ペルチェ効果により低温側基板51を介して低温側熱源61から吸熱がなされ(その熱流を矢印H1で示している)、高温側基板52を介して高温側熱源62に放熱がなされる(その熱流を矢印H2で示している)こととなる。すなわち、直流電圧の印加により熱流H1、H2が生じ、これにより熱電モジュールMの一面側から他面側への熱移送が行われるものである。
このようにp形ペルチェ素子10とn形ペルチェ素子20からなる直列回路に電流Iが流れた場合の、ジュール熱の発生及び移動方向に関し、図1に示した本発明にかかる熱電モジュールMの場合と、図8に示した従来の熱電モジュールM0の場合とを比較しつつ説明する。
先ず従来の熱電モジュールM0の場合、p形ペルチェ素子100及びn形ペルチェ素子200への電流Iの通電により、これらペルチェ素子の素子抵抗によりジュール損失が生じ、p形ペルチェ素子100及びn形ペルチェ素子200のそれぞれの素子内部においてジュール熱が発生する。このジュール熱は、低温側熱源61及び高温側熱源62の方向に、それぞれ発生した熱量の半分ずつが移動すると考えることができる。すなわち、p形ペルチェ素子100内部で発生したジュール熱(J1+J2)は、その半分のジュール熱J1が低温側熱源61方向へ流れ込み、残り半分のジュール熱J2は高温側熱源62方向へ流れ込むこととなる。同様に、n形ペルチェ素子200内部で発生したジュール熱(J3+J4)は、その半分のジュール熱J3が低温側熱源61方向へ流れ込み、残り半分のジュール熱J4は高温側熱源62方向へ流れ込む。
従って、ペルチェ素子100、200の素子長さが長いほど発生するジュール熱も大きくなることから、その分低温側熱源61方向へ流れ込むジュール熱J1、J3も大きくなり、低温側熱源61からの吸熱性が阻害されることになる。
これに対し、本発明にかかる熱電モジュールMの場合、p形ペルチェ素子10は、低温側p形ペルチェ素子11と高温側p形ペルチェ素子12とに二分割され、その両者間には実質的にジュール損失が発生しない導電性の中間熱だまり層31が介在される構成とされている。それゆえ、二分割された低温側p形ペルチェ素子11及び高温側p形ペルチェ素子12それぞれの素子内部においてジュール熱が発生すると共に、低温側熱源61及び高温側熱源62に向けて、それぞれ発生した熱量の半分ずつが移動することになる。
すなわち、低温側p形ペルチェ素子11内部で発生したジュール熱(J11+J21)及び高温側p形ペルチェ素子12内部で発生したジュール熱(J12+J22)のうち、それぞれの半分のジュール熱J11、J12が低温側熱源61方向へ向かい、残り半分のジュール熱J21、J22が高温側熱源62方向へ向かうことになる。ここで、低温側p形ペルチェ素子11の低温方向ジュール熱J11が低温側熱源61へ流れ込む点は、従来の熱電モジュールM0の場合と同様である。しかし、高温側p形ペルチェ素子12の低温方向ジュール熱J12は、中間熱だまり層31に捕捉されることとなる。なお、低温側p形ペルチェ素子11の高温方向ジュール熱J21も中間熱だまり層31に捕捉される。一方、高温側p形ペルチェ素子12の高温方向ジュール熱J22は、高温側熱源62へ流れ込むこととなる。
仮に従来の熱電モジュールM0におけるp形ペルチェ素子100の素子長さと、低温側p形ペルチェ素子11及び高温側p形ペルチェ素子12の素子長さの和とが等しいものとし、また素子断面積も等しいとすれば、両者の素子内で発生するジュール熱の総量は同量となる。つまり、(J1+J2)=(J11+J21)+(J12+J22)となる。しかし、本発明にかかる熱電モジュールMにおいては、低温側熱源61へ流れ込むジュール熱は、低温側p形ペルチェ素子11が発する低温方向ジュール熱J11のみとなり、中間熱だまり層を設けない従来の熱電モジュールM0に比べ流入熱量は半減し、電流Iの通電によるジュール損失による影響、つまり低温側熱源61からの吸熱性に与える影響が半減されることとなる。
同様に、低温側n形ペルチェ素子21内部で発生したジュール熱(J31+J41)及び高温側n形ペルチェ素子22内部で発生したジュール熱(J32+J42)のうち、それぞれの半分のジュール熱J31、J32が低温側熱源61方向へ向かい、残り半分のジュール熱J41、J42が高温側熱源62方向へ向かうことになるが、低温側熱源61へ流れ込むジュール熱は、低温側n形ペルチェ素子21が発する低温方向ジュール熱J31のみとなり、従来の熱電モジュールM0に比べ流入熱量は半減する。
以上の点につき、低温側熱源61からの理論的吸熱量の比較として説明する。先ず、従来の熱電モジュールM0のp形ペルチェ素子100につき、熱移送状況を等価的に示すと図3のようになる。いまp形ペルチェ素子100による低温側熱源61からの吸熱量をQ、p形ペルチェ素子100の低温側の絶対温度をTc、素子を流れる電流をi、ゼーベック係数をαとすると、
Q=α・Tc・i
の吸熱が生じる。しかし、高温側から低温側への透過熱損失が発生する。この透過熱損失は、高温側の絶対温度をTh、熱コンダンタンスをKとすると、
透過熱損失=K・(Th−Tc)=K・ΔT
で表される。また、電流iの通電によるジュール損失が発生する。このジュール損失は、p形ペルチェ素子100の素子抵抗をRとすると
ジュール損失=i
で表される。このジュール損失の半分が低温側熱源61へ流れ込むことになる。従って、p形ペルチェ素子100による低温側熱源61からの吸熱量の実際の吸熱量Qcは、
Qc=α・Tc・i−K・(Th−Tc)−1/2・iR ・・・(1)
となる。
一方、本発明にかかる熱電モジュールMのp形ペルチェ素子10につき、熱移送状況を等価的に示すと図4のようになる。ここで、中間熱だまり層31の絶対温度をTm、低温側p形ペルチェ素子11及び高温側p形ペルチェ素子12の素子抵抗がそれぞれRnであるとすると、上記と同様にして、低温側p形ペルチェ素子11による低温側熱源61から実際の吸熱量Qc1は、
Qc1=α・Tc・i−K・(Tm−Tc)−1/2・iRn ・・・(2)
となる。
ここで、p形ペルチェ素子100の長さと、低温側p形ペルチェ素子11及び高温側p形ペルチェ素子12の素子長さの和とが等しいものとし、また素子断面積も等しいとすると、素子抵抗の関係はR=2Rnとなるので、これで上記(1)式を置換すると、
Qc=α・Tc・i−K・(Th−Tc)/2−iRn ・・・(3)
となる。
さらに、Tm=Tc+ΔT1、Th=Tc+ΔT1+ΔT2(但し、ΔT1=Tm−Tc、ΔT2=Th−Tm)として、上記(2)式及び(3)式を置換すると、
Qc1=α・Tc・i−K・ΔT1−1/2・iRn ・・・(4)
Qc=α・Tc・i−K・(ΔT1+ΔT2)/2−iRn ・・・(5)
となる。従って、(4)式と(5)式から、
Qc1−Qc=−K・ΔT1+K・(ΔT1+ΔT2)/2−iRn/2
となり、これを整理すると、
Qc1=Qc+K/2・(ΔT2−ΔT1)+iRn/2 ・・・(6)
という結果が得られる。
上記(6)式において、ΔT2>ΔT1のとき、透過熱損失分を表す式の第2項は「正」となるから、本発明にかかる熱電モジュールMの吸熱量Qc1は、従来の熱電モジュールM0による吸熱量Qcよりも大きくなることが分る。また、ΔT2=ΔT1のとき、式の第2項は「零」となるが、ジュール損失分である式の第3項のiRn/2だけQc1の方が大きくなる。
一方、ΔT2<ΔT1のとき、式の第2項は「負」となり、Qc1<Qcとなってしまう可能性は理論上存在することとなる。しかし、実際のモジュールにおいてはジュール熱による損失の方が割合的にかなり大きく、つまり仮に透過熱損失分が「負」となったとしてもジュール損失分の影響が大きく、実際上はこのようなケースでも結果的にはQc1>Qcとなる。
このように、中間熱だまり層31を設けたことにより、p形ペルチェ素子10の素子長さを長くした場合でもジュール損失による影響を抑制することができるようになる。このことは、n形ペルチェ素子20においても同様である。
図5に、従来の熱電モジュールM0(中間熱だまり層無し)と、本発明にかかる熱電モジュールM(中間熱だまり層有り)との吸収熱量の比較結果を示す。このグラフ図からも明らかな通り、本発明品では温度差が低い領域における吸熱量が改善されている。また図6に、従来の熱電モジュールM0(中間熱だまり層無し)と、本発明にかかる熱電モジュールM(中間熱だまり層有り)との成績係数の比較結果を示す。温度差が低い領域における吸熱量が改善されたことに伴い、温度差が低い領域の成績係数が向上していることが分る。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば図7に示すように、中間熱だまり層31、32に対し、熱だまり効果を向上させるために、保熱のための処理を施すようにしても良い。図7(a)は、中間熱だまり層31を、金属製の本体部311と、その外周部に配置された保温層312との2層構造とした場合を例示している。このような2層構造の中間熱だまり層31は、前述した放電プラズマ焼結法により作成することができる。
また図7(b)は、p形ペルチェ素子10及びn形ペルチェ素子20の周囲に、保熱用の充填材8を充填し、アウターケース81で密封した例を示している。かかる構成によっても、中間熱だまり層31の熱だまり効果を向上させることができる。
本発明の熱電ヒートポンプに用いられる熱電モジュールMの構成を簡略的に示す側面図である。 本発明にかかる熱電モジュールMにおいて、多数のペルチェ素子を縦列配列した場合を示す側面図である。 従来の熱電モジュールM0における熱移送状況を等価的に表した説明図である。 本発明にかかる熱電モジュールMにおける熱移送状況を等価的に表した説明図である。 本発明品と従来品との吸収熱量の比較結果を示すグラフ図である。 本発明品と従来品との成績係数の比較結果を示すグラフ図である。 中間熱だまり層の変形例を示す断面図である。 従来の熱電ヒートポンプに用いられている熱電モジュールM0の構成を簡略的に示す側面図である。 ペルチェ素子長さと吸熱成績係数の関係を示すグラフ図である。
符号の説明
10 p形ペルチェ素子
11 低温側p形ペルチェ素子10
12 高温側p形ペルチェ素子10
20 n形ペルチェ素子
21 低温側n形ペルチェ素子
22 高温側n形ペルチェ素子
31、32 中間熱だまり層
411〜414 低温側接合電極
42、421〜425 高温側接合電極
51、511 低温側基板
52、521 高温側基板
61 低温側熱源
62 高温側熱源
7 直流電源

Claims (3)

  1. 低温側基板と高温側基板との間にp形及びn形のペルチェ素子を縦列配置し、これらペルチェ素子を前記基板上に配置された電極にて電気的に直列接続してなる熱電モジュールを有する熱電ヒートポンプにおいて、
    前記ペルチェ素子が高温側と低温側とに分割された二分割のものとされ、高温側ペルチェ素子と低温側ペルチェ素子との間に、導電性を備える中間熱だまり層が設けられていることを特徴とする熱電ヒートポンプ。
  2. 中間熱だまり層が、アルミニウム又は銅からなる金属片で構成されていることを特徴とする請求項1記載の熱電ヒートポンプ。
  3. 高温側ペルチェ素子及び低温側ペルチェ素子と、中間熱だまり層を構成する金属片とが、放電プラズマ焼結法で一体成型されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の熱電ヒートポンプ。
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