JP2005245337A - ニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクターおよびこれを用いたニワトリ−ヒトキメラ抗体生産方法、並びにその利用 - Google Patents

ニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクターおよびこれを用いたニワトリ−ヒトキメラ抗体生産方法、並びにその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】 抗体フラグメントではなく、実用性の高いニワトリ−ヒトキメラ抗体を容易に生産する技術と、その代表的な利用方法を提供する。
【解決手段】 本発明にかかるニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクターは、少なくとも、CMVプロモーター、ニワトリ可変域遺伝子を組み込むための組込みサイト(H、AまたはB)、ニワトリイムノグロブリンのリーダー配列(V)、ヒトイムノグロブリン定常域遺伝子(Cκ、Cγ1またはCγ4)等を含んでいる。組込みサイトに任意のニワトリ可変域遺伝子を組み込んで哺乳動物細胞に導入することで、可変域がニワトリ由来、定常域がヒト由来のニワトリ−ヒトキメラ抗体を生産することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクターおよびこれを用いたニワトリ−ヒトキメラ抗体生産方法、並びにその利用に関するものであり、特に、哺乳動物細胞内で実用性の高いニワトリ−ヒトキメラ抗体を容易に生産することができるニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクター、これを用いて実用性の高いニワトリ−ヒトキメラ抗体を効率的に生産する生産方法、並びに、当該発現用ベクターや生産方法により得られる実用性の高いニワトリ−ヒトキメラ抗体等に関するものである。
モノクローナル抗体は、抗原の特定部分のみを認識する単一抗体であり、ポリクローナル抗体(抗血清)と比較して、抗原特異性が均一で抗体の力価が高いといった利点を有する。それゆえ、モノクローナル抗体は、バイオサイエンスの研究全般において広く汎用される研究試薬として重要であるが、近年では、研究開発レベルから、例えばヒトの各種疾患の診断薬や治療薬等のような実用化レベルにまでその技術が進歩している。
モノクローナル抗体は、一般的に、マウスを用いて作製される。ヒトの臨床にモノクローナル抗体を利用するための最初の技術として、マウス−ヒトキメラ抗体が1984年に報告されている(非特許文献1・2参照)。その後、技術の進歩により、簡単にキメラ抗体を発現させるための技術として、遺伝子組換え技術を利用した様々なマウス−ヒトキメラ抗体発現用ベクターが報告されている(非特許文献3〜6参照)。
現在では、マウス−ヒトキメラ抗体は治療薬として実用化されている。具体的には、例えば、B細胞リンパ腫の治療に用いられる抗体“Rituximab”(非特許文献7・8参照、難治療性慢性リウマチおよびクローン病の治療に用いられる抗体“Infliximab”(非特許文献9・10参照)等が挙げられる。
ところで、例えばプリオンタンパク質のように対象となる抗原が哺乳動物間で相同性の高い抗原である場合、当該抗原に対してマウス−ヒトキメラ抗体を作製することは、免疫寛容のために非常に難しい。一方、鳥類は、精緻な免疫機能を備えているが系統学的には哺乳動物から遠い。そのため、免疫動物として鳥類を選択すれば、免疫寛容により哺乳動物では抗体の生じにくい抗原についても、モノクローナル抗体を作製することが可能である。
鳥類を免疫動物として用いる場合、具体的な種としてニワトリ(Gallus gallus)を挙げることができる。ニワトリは食用家畜として古くから飼育されており、特に、鶏卵は、食用ではなくタンパク質という素材を生産するという観点から見れば、高い生産性を有する原料として用いることができる。それゆえ、ニワトリは、免疫動物としての信頼性を有し、かつ、抗体生産の効率性も有しているため、免疫動物として好適に用いることができる。
ニワトリを免疫動物としてモノクローナル抗体を生産する技術としては、まず、ニワトリハイブリドーマを用いた方法が本発明者らのグループによって報告されている(非特許文献11参照)。また、遺伝子組換えを利用した技術も種々提案されている。遺伝子組換えを利用したモノクローナル抗体の生産技術としては、組換え抗体をファージ表面に発現させるファージディスプレイを応用した方法が報告されている(非特許文献12・13参照)。本発明者らは、ニワトリCλ鎖(L鎖定常領域)をコードする遺伝子が導入されている発現用ベクターを用いる方法を提案している(特許文献1参照)。
また、ニワトリ−ヒトキメラ抗体の発現方法としては、上記ファージディスプレイを応用した技術がある。例えば、ニワトリV遺伝子とヒトCκ遺伝子、ニワトリVH遺伝子とヒトC遺伝子とをPCRにて連結し、ファージディスプレイ用のベクターであるpCob3に組み込んでFab型のニワトリ−ヒトキメラ抗体を発現させる方法が知られている(非特許文献14参照)。
特開2001−228676(平成13(2001)年9月4日公開) Boulianne et al., 1984. Nature 312, 643-646 Morrison et al., 1984. Proc Natl Acad Sci USA 81, 6851-6855 Walls et al., 1993. Nucleic Acid Research 21, 2921-2929 Norderhung et al., 1997. J Immunol Methods 204, 77-78 Persic et al., 1997. Gene 187, 9-18 McLean et al., 2000. Mol Immunol 37, 837-845 McLaughlin et al., 1998. J Clin Incol 16, 2825-2833 Tobinai et al., 1998. Ann Oncol 9, 527-534 Elliott et al., 1993. Arthritis Rheum 36, 1681-1690 Targan et al., 1997. N Engl J Med 337, 1029-1035 Nishinaka et al., 1989. Arch. Allergy Appl. Immunol., 89, 416-419 Davis et al., 1995. J. Immunol. Methods, 186, 125-135 Yamanaka et al., 1996. J. Immunol., 157, 1156-1162 Andris-Widhopf et al., 2000. J Immunol Methods 242, 159-181
しかしながら、ファージディスプレイを応用したニワトリモノクローナル抗体の生産技術は、実用性の高いニワトリ−ヒトキメラ抗体を有効に生産するには不十分な点を残している。
具体的には、上記Fab型のニワトリ−ヒトキメラ抗体の発現方法では、モノクローナル抗体のフラグメントを得ることはできるものの完全な抗体分子を発現させることはできない。完全な抗体分子は治療に有効なエフェクター機能を有しており、生体内での半減期が長いという利点がある。それゆえ、実用性の高いニワトリ−ヒトキメラ抗体を効率的に生産するために、抗体分子そのものを容易に生産できる技術の確立が求められていた。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、抗体フラグメントではなく、実用性の高いニワトリ−ヒトキメラ抗体を容易に生産する技術と、その代表的な利用方法を提供することにある。
本発明者は上記課題に鑑み鋭意検討した結果、ニワトリモノクローナル抗体における最も免疫原性の高い領域である定常域をニワトリ型からヒト型に置換させて哺乳動物細胞内で発現させることにより、完全なニワトリ−ヒトキメラ抗体分子を哺乳動物細胞内で容易に生産できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明にかかるニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクターは、哺乳動物細胞を宿主としてタンパク質を発現させることが可能なベクターであって、DNAセグメントとして、少なくとも、プロモーター、ニワトリ可変域遺伝子を組み込むための組込みサイト、ニワトリイムノグロブリンのリーダー配列、および、ヒトイムノグロブリン定常域遺伝子を含んでいることを特徴としている。
上記ニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクターは、上記ヒトイムノグロブリン定常域遺伝子が重鎖または軽鎖の定常域をコードする遺伝子である。このとき、ヒトイムノグロブリン重鎖定常域遺伝子として、例えば、配列番号1または2に示される塩基配列を有するポリヌクレオチドの少なくとも何れかが用いられ、ヒトイムノグロブリン軽鎖定常域遺伝子として、例えば、配列番号3に示される塩基配列を有するポリヌクレオチドが用いられる。
上記ニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクターでは、さらに、ニワトリイムノグロブリンのリーダー配列として、例えば、配列番号4に示される塩基配列を有するポリヌクレオチドが用いられる。
上記ニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクターでは、上記組込みサイトは、AscI、BamHIおよびHindIIIの少なくとも何れか一つの制限酵素により認識される制限酵素サイトを含んでいることが好ましい。この組込みサイトは、制限酵素サイトが複数つながったマルチクローニングサイトとなっていてもよい。
上記ニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクターでは、上記プロモーターとして、例えば、サイトメガロウイルス由来のプロモーターを用いることができる。
上記ニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクターは、さらに、哺乳動物細胞にベクターが導入されたか否かを判定するための選択マーカーを有していることが好ましく、上記選択マーカーとしては、例えば、ゼオシン耐性遺伝子またはネオマイシン耐性遺伝子を挙げることができる。
上記ニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクターは、さらに、複製開始点を有していることが好ましく、当該複製開始点がpUC由来およびSV40由来であることが好ましい。
上記ニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクターには、さらに、ポリ(A)付加シグナルが含まれることが好ましく、当該ポリ(A)付加シグナルとしては、例えば、ウシ成長ホルモン由来のものを挙げることができる。
本発明にかかるニワトリ−ヒトキメラ抗体の生産方法は、上記ニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクターを用いることを特徴としており、具体的には、まず、上記ニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクターとして、ヒトイムノグロブリン定常域遺伝子が重鎖の定常域をコードする遺伝子となっている重鎖用発現用ベクターと、ヒトイムノグロブリン定常域遺伝子が軽鎖の定常域をコードする遺伝子となっている軽鎖用発現用ベクターとを用い、上記重鎖用発現用ベクターにニワトリ重鎖の可変域遺伝子を導入するとともに、軽鎖発現用ベクターにニワトリ軽鎖の可変域遺伝子を導入するニワトリV域導入工程を含む方法を挙げることができる。さらに、この生産方法では、上記ニワトリ可変域遺伝子を導入した重鎖用発現用ベクターおよび軽鎖用発現用ベクターを哺乳動物細胞で共発現させる形質移入工程とを含むことが好ましい。
このとき用いられる哺乳動物細胞としては特に限定されるものではないが、例えばCHO細胞を好ましく用いることができる。また、上記形質移入工程で用いられる方法は、具体的には特に限定されるものではないが、リポフェクション法を好ましく用いることができる。
さらに、上記生産方法においては、重鎖用発現用ベクターおよび軽鎖用発現用ベクターを共発現させた哺乳動物細胞からニワトリ−ヒトキメラ抗体を回収する抗体回収工程を含むことが好ましく、さらに、哺乳動物細胞から回収したニワトリ−ヒトキメラ抗体を精製する抗体精製工程を含むことが好ましい。
なお、本発明には、上記ニワトリ−ヒトキメラ抗体の生産方法により得られ、ニワトリ由来の可変域およびヒト由来の定常域を有するニワトリ−ヒトキメラ抗体も含まれる。
本発明の代表的な利用方法としては、例えば、上記ニワトリ−ヒトキメラ抗体の生産方法を行うためのニワトリ−ヒトキメラ抗体生産キットを挙げることができる。こののニワトリ−ヒトキメラ抗体生産キットは、少なくとも、ヒトイムノグロブリン定常域遺伝子が重鎖の定常域をコードする遺伝子となっている重鎖用発現用ベクターと、ヒトイムノグロブリン定常域遺伝子が軽鎖の定常域をコードする遺伝子となっている軽鎖用発現用ベクターとを含んでおり、さらに、哺乳動物細胞に発現用ベクターを導入するための試薬群、および、発現用ベクターにニワトリ可変域遺伝子を組み込むための試薬群の少なくとも何れかを含むことが好ましい。さらに、哺乳動物細胞からニワトリ−ヒトキメラ抗体を回収するための試薬群、および、哺乳動物細胞から回収したニワトリ−ヒトキメラ抗体を精製する試薬群の少なくとも何れかを含むことがより好ましい。
また、本発明の代表的な応用技術としては、上記のようにして得られたニワトリ−ヒトキメラ抗体を用いてなる薬剤を挙げることができる。
以上のように、本発明では、ニワトリイムノグロブリンのリーダー配列、ヒト定常域遺伝子およびニワトリ可変域遺伝子を組込むための組込みサイト等を有しており、哺乳動物細胞で発現が可能である。さらに、発現用ベクターとして、軽鎖用および重鎖用を用いて哺乳動物細胞内で共発現させることにより機能的な抗体分子を生成することができる。また、これらの発現用ベクターは哺乳動物細胞に導入しても、一過性発現および安定発現の何れも可能となっている。
ニワトリは系統学的に哺乳動物より遠いため、免疫寛容によりマウス等では抗体を作成することが困難であったヒト抗原に対しても抗体を容易に作製することができる。そこで、本発明では、ニワトリを用いてモノクローナル抗体を作製し、これをキメラ化(ニワトリ−ヒトキメラ抗体)して哺乳動物細胞で発現させる。これにより、より広範囲のヒト抗原に対して臨床に有用なキメラ抗体を容易に作製することが可能となる。その結果、本発明により、抗体新薬開発の可能性をより高めることができるという効果を奏する。
本発明の一実施形態について、図1ないし3も参照して説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。本実施の形態では、本発明にかかるニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクター、本発明にかかるニワトリ−ヒトキメラ抗体生産方法、本発明にかかるニワトリ−ヒトキメラ抗体、並びに、本発明の利用の順で、本発明を詳細に説明する。
(I)本発明にかかるニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクター
本発明にかかるニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクター(以下、適宜発現用ベクターと略す)は、哺乳動物細胞を宿主とする発現用ベクターであり、DNAセグメントとして、少なくとも、プロモーター、ニワトリ可変域遺伝子を組み込むための組込みサイト、ニワトリイムノグロブリンのリーダー配列、および、ヒトイムノグロブリン定常域遺伝子を含んでいるものである。これを哺乳動物細胞に導入して発現させることにより、ニワトリ−ヒトキメラ抗体(以下、適宜キメラ抗体と略す)を発現させることができる。
<ニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクターの概要>
本発明にかかる発現用ベクターの具体的な構成は特に限定されるものではないが、例えば、後述する実施例で説明するが、図1(a)に示す軽鎖用発現用ベクターpcSLCκ、および図1(b)に示す重鎖用発現用ベクターpcSLCγ1またはpcLSCγ4を挙げることができる。
軽鎖用発現用ベクターpcSLCκは、プロモーターとしてサイトメガロウイルス(CMV)由来のプロモーター(図中pCMV)を含んでおり、組込みサイトとしてHindIIIサイト(図中H)、AscIサイト(図中A)、およびBamHIサイト(図中B)を有している。なお、制限酵素により認識され切断される制限酵素サイトについては、単に「制限酵素名」サイトと称するものとする。HindIIIサイトおよびAscIサイトの間にはリーダー配列(図中L)が位置している。さらに、pcSLCκには、ヒトイムノグロブリン定常域遺伝子としてヒト軽鎖定常域遺伝子(図中Cκ)が含まれている。
さらに、pcSLCκには、ウシ成長ホルモン由来のポリ(A)付加シグナル(図中BGApA)、SV40由来の複製開始点およびプロモーター(図中SV40ori/p)、ネオマイシン耐性遺伝子(図中Neo)、アンピシリン耐性遺伝子(図中Amp)が含まれている。ネオマイシン耐性遺伝子およびアンピシリン耐性遺伝子は宿主細胞に細胞にベクターが導入されたか否かを判定するための選択マーカーである。
軽鎖用発現用ベクターpcSLCκは6.3kbのサイズを有しており、上記各DNAセグメントの配列は、選択マーカーを除けば、プロモーター、組込みサイト/リーダー配列、ヒトイムノグロブリン定常域遺伝子、ポリ(A)付加シグナル、複製開始点(およびプロモーター)の順となっている。そして、ニワトリの軽鎖可変域遺伝子(図中V)を導入することができる。
重鎖発現用ベクターpcSLCγ1・pcLSCγ4は7.1kbのサイズを有しているが、ヒトイムノグロブリン定常域遺伝子として、ヒト軽鎖定常域遺伝子に代えてヒト重鎖定常域遺伝子(図中Cγ1/Cγ4)を、ネオマイシン耐性遺伝子に代えてゼオシン耐性遺伝子(図中Zeo)を導入している以外は、基本的にpcSLCκと同じ構成となっている。そして、ニワトリの重鎖可変域遺伝子(図中V)を導入することができる。
上記の構成から明らかなように、pcSLCκはキメラ抗体のうち軽鎖を発現させるための発現用ベクターであり、pcSLCγ1・pcLSCγ4はキメラ抗体のうち重鎖を発現させるための発現用ベクターであるが、基本的な構成は何れも同一となっている。したがって、本発明にかかる発現用ベクターにおいては、上述したように、プロモーター、組込みサイト、リーダー配列、および、ヒトイムノグロブリン定常域遺伝子を含んでいればよく、そのより具体的な構成は特に限定されるものではない。以下、各DNAセグメントについて具体的に説明する。
<ヒトイムノグロブリン定常域遺伝子>
本発明にかかる発現用ベクターにおいては、上記ヒトイムノグロブリン定常域遺伝子としては、上述したように、重鎖の定常域をコードする遺伝子であってもよいし、軽鎖の定常域をコードする遺伝子であってもよい。これら定常域遺伝子としては特に限定されるものではなく、ヒト抗体由来の定常域遺伝子であればどのような遺伝子でも用いることができる。
例えば、実施例で用いている定常域遺伝子としては、重鎖定常域遺伝子が、配列番号1に示される塩基配列を有するポリヌクレオチド(Cγ1遺伝子)、または、配列番号2に示される塩基配列を有するポリヌクレオチド(Cγ4遺伝子)となっている。また、軽鎖定常域遺伝子が、配列番号3に示される塩基配列を有するポリヌクレオチド(Cκ遺伝子)となっている。
また、ヒト抗体由来の定常域遺伝子の取得方法も特に限定されるものではなく、従来公知の方法を好適に用いることができる。例えば、後述する実施例では、ヒト血液から単離したヒト末梢血リンパ球からゲノムDNAを調製し、PCRにより目的の遺伝子を増幅している。
後述するように、本発明では、重鎖用発現用ベクターと軽鎖用発現用ベクターとの双方を宿主である哺乳動物細胞に導入し、共発現させることで、完全なキメラ抗体分子を生産することができる。したがって、本発明では、キメラ抗体の軽鎖のみ、あるいは重鎖のみを取得するような用途以外は、必ず重鎖定常域遺伝子および軽鎖定常域遺伝子を一組で取得し、これらをそれぞれ導入した重鎖用発現用ベクターおよび軽鎖用発現用ベクターを作製することが非常に好ましい。
<ニワトリイムノグロブリンのリーダー配列>
本発明にかかる発現用ベクターにおいては、ニワトリイムノグロブリンのリーダー配列についても特に限定されるものではなく、ニワトリ抗体のリーダー配列であればどのようなものでも用いることができる。例えば、実施例で用いているリーダー配列として、配列番号4に示される塩基配列を有するポリヌクレオチドが用いられる。また、このリーダー配列の取得方法も特に限定されるものではなく、従来公知の方法を好適に用いることができる。
<ニワトリ可変域遺伝子を組み込むための組込みサイト>
本発明にかかる発現用ベクターにおいては、上記組込みサイトについても特に限定されるものではない。本発明では、後述する実施例にも示すように、発現用ベクターの主骨格となるベクターを切断しない制限酵素について、ニワトリ可変域遺伝子を切断するか否かを調べることにより、具体的な制限酵素サイトを決定している。その結果、AscI、HindIIIおよびBamHIはデータベースに登録されているニワトリ可変域遺伝子を切断しないことが明らかとなったので、本発明にかかる発現用ベクターには、組込みサイトとしてこれら3種類の制限酵素サイトが選択されている。したがって、上記組込みサイトは、AscI、BamHIおよびHindIIIの少なくとも何れか一つの制限酵素により認識される制限酵素サイトを含んでいればよい。
つまり、本発明では、発現用ベクターの主骨格および導入した遺伝子(リーダー配列、定常域遺伝子)を切断せず、かつ、ニワトリ可変域遺伝子を切断しない制限酵素サイトであれば、上記3種類の制限酵素に限定されるものではない。換言すれば、主骨格として採用するベクター(便宜上、ベースベクターと称する)の種類に応じて、適切な制限酵素サイトを実施例に記載したような手法で探し出せばよい。
ここで、上記pcSLCκ、pcSLCγ1およびpcLSCγ4においては、HindIIIサイトおよびAscIサイトの間にはリーダー配列が位置する構成となっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、組込みサイトとして、制限酵素サイトが複数つながっており、他の遺伝子等が間に介在していないマルチクローニングサイトが用いられてもよい。もちろん組込みサイトは一つの制限酵素サイトからなっていてもよい。
組込みサイトのデザインは、用いられる発現用ベクターの種類、組み込もうとするニワトリ可変域遺伝子の種類、発現用ベクターの構築ストラテジー等に応じて適宜変更することができる。なお、組込みサイトは、制限酵素サイトを含むオリゴヌクレオチドを公知の方法で合成し、これをベクターに導入すればよい。
<プロモーター>
本発明にかかる発現用ベクターは、少なくとも哺乳動物細胞中でキメラ抗体を発現可能とすることを目的とするため、プロモーターは必須の構成となる。ただし、具体的なプロモーターとしては特に限定されるものではなく、宿主となる哺乳動物細胞の種類等に応じて公知のプロモーターを適宜用いることができる。具体的には、上記pcSLCκ、pcSLCγ1およびpcLSCγ4においては、プロモーターとして、サイトメガロウイルス由来のCMVプロモーターを用いている。
<選択マーカー>
本発明にかかる発現用ベクターには、さらに、哺乳動物細胞に当該発現用ベクターが導入されたか否かを判定するための選択マーカーが含まれていることが非常に好ましい。この選択マーカーとしては、通常、抗生物質耐性遺伝子が用いられる。具体的には、上記pcSLCκ、pcSLCγ1およびpcLSCγ4においては、選択マーカーとしてゼオシン耐性遺伝子またはネオマイシン耐性遺伝子を用いているがこれらに限定されるものではなく、宿主となる哺乳動物細胞の種類等に応じて公知の選択マーカーを適宜用いることができる。
また、本発明にかかる発現用ベクターのようなプラスミドは、遺伝子組換えのため、および、当該発現用ベクター増殖のために大腸菌中で増殖可能としておくことが一般的である。それゆえ、本発明にかかる発現用ベクターは、大腸菌にベクターが導入されたか否かを判定するための選択マーカーが含まれていることが非常に好ましい。この選択マーカーとしても、通常、抗生物質耐性遺伝子が用いられ、上記pcSLCκ、pcSLCγ1およびpcLSCγ4においては、選択マーカーとしてアンピシリン耐性遺伝子が用いられているが、もちろん本発明はこれに限定されるものではない。
<複製開始点>
本発明にかかる発現用ベクターは、宿主となる哺乳動物細胞中で一過性発現が可能なように複製開始点を有していることが非常に好ましい。複製開始点の具体的な種類は特に限定されるものではなく、宿主となる哺乳動物細胞の種類や、発現用ベクターの主骨格の種類等に応じて公知のものを適宜選択すればよい。具体的には、上記pcSLCκ、pcSLCγ1およびpcLSCγ4においては、複製開始点として、SV40由来のものを用いているが、もちろん本発明はこれに限定されるものではない。
また、本発明にかかる発現用ベクターは、大腸菌で安定して維持されるための複製開始点も有していることが好ましい。大腸菌用の複製開始点の具体的な種類は特に限定されるものではなく、宿主となる大腸菌の種類や発現用ベクターの主骨格の種類等に応じて公知のものを適宜選択すればよい。具体的には、上記pcSLCκ、pcSLCγ1およびpcLSCγ4においては、複製開始点として、pUC由来のものを用いているが、もちろん本発明はこれに限定されるものではない。
<その他のDNAセグメント>
本発明にかかる発現用ベクターにおいては、宿主内でのキメラ抗体の発現に寄与するものであれば、上述した以外の公知のDNAセグメントを含んでいてもよい。具体的には、例えば、ポリ(A)付加シグナルを挙げることができる。真核生物の転写後のmRNAは、3’末端側にポリ(A)が付加されているが、これによりmRNAの安定性が向上し、その結果、タンパク質(本発明ではキメラ抗体)の発現性を向上させることができる。このようなポリ(A)付加シグナルとしては特に限定されるものではないが、上記pcSLCκ、pcSLCγ1およびpcLSCγ4においては、ポリ(A)付加シグナルとしては、ウシ成長ホルモン由来のものが用いられている。
<発現用ベクターの作製方法・生産方法>
本発明にかかる発現用ベクターの作製方法については、特に限定されるものではなく、主骨格となるベクター(ベースベクター)に、上述した各DNAセグメントを所定の順序となるように導入すればよい。これらDNAセグメントを導入する際に用いられる試薬、すなわち制限酵素やライゲーション酵素等の種類についても特に限定されるものではなく、市販のものを適宜選択して用いればよい。
また、本発明にかかる発現用ベクターを作製するためのストラテジーについても特に限定されるものではなく、上記各DNAセグメントを、所定の順序で効率的に配列させることができるようなストラテジーであればよい。例えば、後述する実施例では、図2に示すように、プラスミドベクターを組み換えることにより3段階で発現用ベクターを作製している。
まず、重鎖用発現用ベクターpcSLCγ1またはpcLSCγ4の作製ストラテジーについてみると、図2に示すように、ヒトゲノムDNAからヒト重鎖定常域遺伝子(図中Human Cγ1/Cγ4)をクローニングし、任意のベクターに導入して定常域遺伝子ベクターを作製する。このとき用いられるベクターは特に限定されるものではない。後述する実施例では、pGEM−T Easy ベクター(Promega社製、図中pGEM)を用いており、定常域遺伝子ベクターとして、pGCγ1/Cγ4(サイズ4.8kb)が得られる。
次に、定常域遺伝子ベクターから適切な制限酵素を用いてヒト重鎖定常域遺伝子を切り出し、任意のベクターに導入して中間ベクターを作製する。このとき用いられるベクターは特に限定されるものではないが、本ストラテジーでは実質的に主骨格となるベクターを用いている。後述する実施例では、pcDNA4/myc-HisA(Invitrogen社製)を用いており、中間ベクターとして、pcDCγ1/Cγ4(サイズ6.9kb)が得られる。
これとは別に、ニワトリゲノムDNAからニワトリ重鎖リーダー配列(図中Leader)をクローニングし、これを任意のベクターの導入して、リーダー配列ベクターを作製する。後述する実施例では、pBluescript II SK(-)を用いており、リーダー配列ベクターとして、pBSL(サイズ3.2kb)が得られる。
上記リーダー配列ベクターから適切な制限酵素を用いてリーダー配列を切り出し、中間ベクターに導入することで、重鎖用発現用ベクターpcSLCγ1/Cγ4(サイズ7.1kb)が得られる。
また、軽鎖用発現用ベクターpcSLCκの作製ストラテジーについてみると、基本的には重鎖用発現用ベクターと同じ過程となっている。図2に示すように、ヒトゲノムDNAからヒト軽鎖定常域遺伝子をクローニングし、任意のベクター(この場合はpBluescript II SK(-)を使用)に導入して定常域遺伝子ベクター(pBCκ、サイズ3.6kb)を作製する。これからヒト軽鎖定常域遺伝子を切り出し、任意のベクター(この場合はpcDNA3/myc-HisA(Invitrogen社製))に導入して中間ベクター(pcDCκ、サイズ6.1kb)を作製する。
その後、上記リーダー配列ベクターからリーダー配列を切り出し、中間ベクターに導入することで、軽鎖用発現用ベクターpcSLCκ(サイズ6.3kb)が得られる。
このようにして構築された発現用ベクターの生産方法、すなわち、上記作製方法で作製された発現用ベクターを増殖させる方法についても特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。一般的には、大腸菌をホストとして当該大腸菌細胞内で増殖させればよい。このときベースベクターや作製された発現用ベクターの種類に応じて、好ましい大腸菌の種類を選択してもよい。また、大腸菌細胞から増殖した発現用ベクターを回収する方法も特に限定されるものではなく、公知の方法を用いればよい。
(II)本発明にかかるニワトリ−ヒトキメラ抗体の生産方法
本発明にかかるキメラ抗体の生産方法(以下、生産方法と略す)は、上述した発現用ベクターを用いる方法であり、その具体的な工程は特に限定されるものではないが、好ましくは、重鎖用発現用ベクターと軽鎖用発現用ベクターとを用い、これらにニワトリ抗体の可変域領域をそれぞれ導入して宿主となる哺乳動物細胞で発現させる方法を挙げることができる。
<宿主となる哺乳動物細胞>
本発明で宿主として用いられる哺乳動物細胞としては特に限定されるものではなく、公知の培養細胞(セルライン)を好適に用いることができる。具体的には、例えば、COS細胞株、CHO細胞株、SP2/0細胞株、NSO細胞株等を挙げることができる。後述する実施例では、COS細胞およびCHO細胞を用いている。特にCHO細胞は、遺伝子組換え技術によって、エリスロポエチンや血液凝固第VIII因子等の生産に実用化されているので、本発明でもより好ましく用いることができる。
上記哺乳動物細胞を培養する条件も特に限定されるものではなく、細胞株の種類に応じた公知の培地(培養液)や培養温度等を適宜選択して用いることができる。
なお、本発明で宿主として用いることのできる細胞は、公知のセルラインに限定されるものではなく、任意の哺乳動物から取得した細胞を培養して用いることもできる。換言すれば、本発明で用いられる宿主は、樹立培養細胞株であってもよいし、新規に作出される培養細胞であってもよい。
<ニワトリV域導入工程>
本発明にかかる生産方法で用いられる上記発現用ベクターは、組込みサイトを有しているので、目的の抗体に応じて任意のニワトリ可変域(V域)を導入することができる。それゆえ、本発明にかかる生産方法には、発現用ベクターにニワトリ可変域遺伝子を導入するニワトリV域導入工程が含まれていることが好ましい。
本発明にかかる発現用ベクターにニワトリ可変域遺伝子を導入する具体的な方法は特に限定されるものではなく、目的に応じたニワトリ可変域遺伝子を公知の方法等により取得し、これを発現用ベクターに導入すればよい。このとき、上記重鎖用発現用ベクターにはニワトリ重鎖の可変域遺伝子を導入し、軽鎖発現用ベクターにはニワトリ軽鎖の可変域遺伝子を導入する。後述する実施例では、抗原としてプリオンタンパク質を選択し、これに対するキメラ抗体を作製するために、ハイブリドーマまたはファージディスプレイからニワトリ可変域遺伝子を取得している。
<形質移入工程>
本発明にかかる生産方法では、上記ニワトリV域導入工程の後に、ニワトリ可変域遺伝子を導入した重鎖用発現用ベクターおよび軽鎖用発現用ベクターを哺乳動物細胞で共発現させる形質移入工程を行う。
このとき用いられる発現ベクターの導入方法、すなわち形質移入方法(トランスフェクション方法)は特に限定されるものではなく、リポフェクション法、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。後述する実施例では、Polyfect transfection reagent(Qiagen社製)法を用いたリポフェクション法を用いている。
上記形質移入工程では、発現用ベクターに含まれている選択マーカーにより、発現用ベクターが哺乳動物細胞に導入されたか否かを判定するようになっていることが好ましい。選択マーカーとしては、発現用ベクターの説明でも述べたように抗生物質耐性遺伝子を用いることが多いので、哺乳動物細胞の培地に抗生物質を添加しておけば、生育できた哺乳動物細胞がトランスフェクションに成功していることが確認できる。
<抗体回収工程・抗体精製工程>
本発明にかかる生産方法では、上記形質移入工程の後に、重鎖用発現用ベクターおよび軽鎖用発現用ベクターを共発現させた哺乳動物細胞からキメラ抗体を回収する抗体回収工程を行う。抗体回収工程で行われるキメラ抗体の回収方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。後述する実施例のように、キメラ抗体が培地上清に分泌されている場合には培地上清を回収すればよいが、培地成分を除去して純度の高いキメラ抗体分子するために精製を行ってもよい。したがって、本発明にかかる生産方法には、哺乳動物細胞から回収したキメラ抗体を精製する抗体精製工程を含んでいてもよい。抗体精製工程で行われるキメラ抗体の精製方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。
なお、本発明にかかる生産方法においては、上記各工程の全てが必須ではなく、また、本発明にかかる生産方法においては、上記各工程以外の工程が含まれていてもよい。
(III)本発明にかかるキメラ抗体
上述した本発明にかかる発現用ベクター、または本発明にかかる生産方法を用いれば、ニワトリ−ヒトキメラ抗体を容易に生産することができる。本発明で生産されるキメラ抗体の構造について具体的に説明すると、図3(a)に示すように、まず、軽鎖(L鎖)10は、N末端側のニワトリ由来の軽鎖可変域(ニワトリV)11と、これにつながりC末端側となるヒト由来の軽鎖定常域(ヒトC)12とを有した構成となっている。
また、図3(b)に示すように、重鎖(H鎖)20は、N末端側のニワトリ由来の重鎖可変域(ニワトリV)21と、これにつながるヒト由来の重鎖定常域(ヒトC)22aと、ヒンジ部23を介してつながるヒト由来の重鎖定常域(ヒトC)22b・22c(C末端側)とを有した構成となっている。
これら軽鎖10と重鎖20とがS−S結合により結合し、さらに重鎖20同士がS−S結合により結合することにより、図3(c)に示すように、互いに結合した2本のヒトC22b・22cからFc(crystallizable fragment)31が形成されるとともに、軽鎖10と重鎖20のニワトリV21およびヒトC22aとにより、ヒンジ部23を介してFcから分かれるように広がるFab(antigen binding fragment)32が形成され、キメラ抗体分子30が形成される。このように本発明で得られるキメラ抗体は、可変域(V域)がニワトリ由来、定常域(C域)がヒト由来の構成を有しているため、免疫寛容のために抗体を生成しにくい抗原に対しても有効に抗体を生成させることができる。
(IV)本発明の利用
<キメラ抗体生産キット>
本発明の代表的な利用の一例としては、上記生産方法を行うためのニワトリ−ヒトキメラ抗体生産キット(便宜上、生産キットと略す)を挙げることができる。
生産キットの具体的な構成は特に限定されるものではないが、例えば、次の各発現ベクターや試薬群を含む構成を挙げることができる。
(a)ヒトイムノグロブリン定常域遺伝子が重鎖の定常域をコードする遺伝子となっている重鎖用発現用ベクター
(b)ヒトイムノグロブリン定常域遺伝子が軽鎖の定常域をコードする遺伝子となっている軽鎖用発現用ベクター
(c)哺乳動物細胞に発現用ベクターを導入するための試薬群(形質移入工程用試薬群)
(d)発現用ベクターにニワトリ可変域遺伝子を組み込むための試薬群(ニワトリV域導入工程用試薬群)
(e)哺乳動物細胞からニワトリ−ヒトキメラ抗体を回収するための試薬群(抗体回収工程用試薬群)
(f)哺乳動物細胞から回収したニワトリ−ヒトキメラ抗体を精製する試薬群(抗体精製工程用試薬群)
なお、ここでいう「試薬群」には、酵素や塩類等の一般的な試薬の他に、一連の操作に使用される器具やベクター等の素材も含んでもよいものとする。また、本発明にかかる生産キットには、上記(a)〜(f)以外の試薬群が含まれていてもよい。
これら試薬群のうち、(a)・(b)は必須の構成であるが、他の試薬群は必要に応じて含まれていればよい。好ましくは、(a)・(b)に加えて(c)・(d)が含まれており、より好ましくは、さらに(e)・(f)が含まれているとよい。
上記(a)・(b)の試薬群は、前記(I)の項で説明した発現用ベクターであるため、その具体的な説明は省略する。上記(c)の試薬群は形質移入用の試薬群であり、採用される形質移入方法に応じた薬剤類やバッファー等を含んでいればよい。
上記(d)の試薬群としては、まず一般的な遺伝子組換え用の試薬類を挙げることができる。具体的には、発現用ベクターの組込みサイトに応じた制限酵素、ライゲーション酵素、バッファー、リンカーとなるオリゴヌクレオチド等を挙げることができる。また、この(d)の試薬群には、ニワトリ可変域遺伝子を取得するための試薬群を含めてもよい。例えば、可変域遺伝子を増幅するためのプライマーやPCR用の試薬等を挙げることができる。
上記(e)・(f)の試薬群は、採用されるキメラ抗体の回収方法や精製方法に応じた薬剤類や器具類を含んでいればよい。なお、抗体回収工程および抗体精製工程の内容から見れば回収方法と精製方法とが手法上で重なる場合も考えられる(例えば、カラムなどを用いて培地上清からキメラ抗体を回収する場合は、回収と精製とを同時に行うことになる)ので、(e)・(f)の試薬群は兼用されるような構成となっていても構わない。
<本発明の応用>
本発明によれば、哺乳動物細胞でニワトリ−ヒトキメラ抗体を容易に生産することができる。しかも、得られるキメラ抗体は完全な抗体分子となっている。完全な抗体分子は治療に有効なエフェクター機能を有しており、生体内での半減期が長いという利点がある。それゆえ、本発明にかかるキメラ抗体は、臨床分野への応用が期待される。
より具体的には、応用可能な技術・製品としては、抗体医薬品や診断薬を挙げることができる。抗体は特定の抗原に対して特異的に結合する能力を有する。そのため、例えば、抗体医薬品として用いる場合は、患部の特定細胞(がん細胞等)に生じている抗原に対する抗体を作製すれば、当該特定細胞のみを殺すことができるので、高い治療効果を発揮できるとともに、副作用も軽減することが可能となる。また、診断薬として用いる場合には、特定の疾患に特異的なタンパク質を抗原として、これに対する抗体を作製すれば、抗原抗体反応により検体中に抗原が存在するか否かを確認することができる。
本発明は、これまで免疫寛容により抗体を作製することが困難であった、哺乳動物間で相同性の高い抗原に対しても抗体を作製することができるので、上記抗体医薬品や診断薬として幅広い応用が期待される。
以下、本発明を実施例および図1、2、4〜6に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
〔実施例1:発現用ベクターの構築〕
(1−1)ヒト重鎖定常域遺伝子のクローニング
健康なボランティアのヘパリン処理した血液から単離したヒト末梢血単球細胞からゲノムDNAを調製した。ヒト重鎖定常域(CH領域)遺伝子は、EcoRIサイトを含むプライマーIgGF(配列番号5)と、IgGR(配列番号6)を用いてGCリッチバッファー中のLA Taq DNAポリメラーゼ(TaKaRa社製)を用いてPCRすることによりゲノムDNAから増幅した。これらプライマーは、それぞれCH1エキソンの5’イントロンおよびCH3エキソンの3’末端にハイブリダイズした。
精製したPCR産物は、pGEM−T Easy ベクター(Promega社製)につなげ、シークエンシングにより確認した。シークエンシングは、BigDye Terminator Cycle Sequencing KitおよびABI PRISM 3100 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)を用いて行った。Cγ1またはCγ4遺伝子を含みセンス変異の無いコンストラクトを選択し、これらをそれぞれpGCγ1またはpGCγ4とした(図2参照)。
(1−2)ヒト軽鎖定常域遺伝子のクローニング
ヒト軽鎖定常域領域(Cκ領域)遺伝子は、EcoRIサイトを含むプライマーIgKF(配列番号7)およびIgKR(配列番号8)を用いてKODプラスDNAポリメラーゼ(TOYOBO社製)を用いてPCRによりゲノムDNAから増幅した。これらプライマーは、それぞれCκエキソンの5’イントロンおよび3’末端にハイブリダイズした。精製したPCR産物は、EcoRIで消化し、pBluescript II SK(-)のEcoRI/HincII部位につなげた。正確なサイズの挿入コンストラクトをシークエンシングにより確認し、pBCκとした(図2参照)。
(1−3)ニワトリ重鎖リーダー配列のクローニング
ニワトリゲノムDNAは、ニワトリハイブリドーマHUC2−13(Matsuda et al., 1999. FEMS Immunol. Med. Microbiol. 23, 189-194参照)から調製した。ニワトリ重鎖リーダー配列は、HindIIIサイトおよびKozak配列を含むプライマーVH3F(配列番号9)、および、KpnIおよびAscIサイトを含むVH−LeR(配列番号10)を用いて、KODプラスDNAポリメラーゼ(TOYOBO社製)を用いてPCRによりゲノムDNAから増幅した。
これらプライマーは、それぞれ重鎖リーダーエキソンの5’末端、並びに、リーダーVイントロンおよび2ndエキソンのリーダー配列にハイブリダイズした。精製したPCR産物は、HindIIIおよびKpnIで消化し、pBluescript II SK(-)のHindIII/KpnIサイトにつなげた。正確なサイズの挿入コンストラクトをシークエンシングにより確認し、pBSLとした(図2参照)。
(1−4)ニワトリ可変域遺伝子組込みサイトの選択
ニワトリ可変域遺伝子を発現用ベクターに組み込むための制限酵素サイトを決定するために、発現用ベクター、pcSLCκ、pcSLCγ1、およびpcSLCγ4の何れも切断しない制限酵素について、ニワトリ可変域遺伝子を切断するか否かを調べた。その結果、AscI、HindIIIおよびBamHIはデータベースに登録されているニワトリ可変域遺伝子を切断しないことが明らかとなったので、これら3種の制限酵素サイトを組込みサイトとして選択した。
(1−5)発現用ベクターの構築1:pscSLCγ1
上記pGCγ1をEcoRIにより消化してCγ1遺伝子を切り出し、pcDNA4/myc-HisAのEcoRIサイトに挿入した。挿入の向きをシークエンシングにより確認し、正しい方向のものを得てpcDCγ1とした。また、上記pBSLをHindIIIおよびKpnIで消化してリーダー配列を切り出し、上記pcDCγ1のHindIII/KpnIサイトに導入した。これによって発現用ベクターとしてのpcSLCγ1を得た(図2参照)。
得られたpcSLCγ1は、図1(b)に示すように、7.1kbのサイズで、ニワトリイムノグロブリンのリーダー配列、ヒト定常域遺伝子(Cγ1)およびニワトリ可変域遺伝子組込みサイトを有しており、さらに選択マーカーとして、ゼオシン耐性遺伝子(哺乳動物細胞用)とアンピシリン耐性遺伝子(大腸菌用)を有している。また、CMVプロモーター、ウシ成長ホルモンのポリ(A)付加シグナル、SV40の複製開始点を有している。
(1−6)発現用ベクターの構築2:pscSCLγ4
上記pGCγ4をNotIにより消化してCγ4遺伝子を切り出し、pcDNA4/myc-HisA(Invitrogen社製)のNotIサイトに挿入した。挿入の向きをシークエンシングにより確認し、正しい方向のものを得てpcDCγ4とした。また、上記pBSLをHindIIIおよびKpnIで消化してリーダー配列を切り出し、上記pcDCγ4のHindIII/KpnIサイトに導入した。これによって発現用ベクターとしてのpcSLCγ4を得た(図2参照)。
得られたpcSLCγ4は、図1(b)に示すように、7.1kbのサイズで、ニワトリイムノグロブリンのリーダー配列、ヒト定常域遺伝子(Cγ4)およびニワトリ可変域遺伝子組込みサイトを有しており、さらに選択マーカーとして、ゼオシン耐性遺伝子(哺乳動物細胞用)とアンピシリン耐性遺伝子(大腸菌用)を有している。また、CMVプロモーター、ウシ成長ホルモンのポリ(A)付加シグナル、SV40の複製開始点を有している。
(1−7)発現用ベクターの構築3:pcSLCK
上記pBCκをEcoRIおよびXhoIにより消化してCκ遺伝子を切り出し、pcDNA3/myc-His(Invitorogen社製)のEcoRI/XhoIサイトに挿入した。挿入の向きをシークエンシングにより確認し、正しい方向のものを得てpcDCκとした。また、上記pBSLをHindIIIおよびKpnIで消化してリーダー配列を切り出し、上記pcDCκのHindIII/KpnIサイトに導入した。これによって発現用ベクターとしてのpcSLCκを得た(図2参照)。
得られたpcSLCκは、図1(a)に示すように、7.1kbのサイズで、ニワトリイムノグロブリンのリーダー配列、ヒト定常域遺伝子(Cκ)およびニワトリ可変域遺伝子組込みサイトを有しており、さらに選択マーカーとして、ネオマイシン耐性遺伝子(哺乳動物細胞用)とアンピシリン耐性遺伝子(大腸菌用)を有している。また、CMVプロモーター、ウシ成長ホルモンのポリ(A)付加シグナル、SV40の複製開始点を有している。
〔実施例2:発現用ベクターを用いたニワトリ−ヒトキメラ抗体の作製〕
(2−1)発現用ベクター中のニワトリ可変域遺伝子のクローニング
ニワトリ可変域遺伝子は、2つの異なる抗体からクローニングした。一つはニワトリハイブリドーマHUNN1由来遺伝子、もう一つはファージディスプレイライブラリーから選択されたscFV、phAb3−15の遺伝子である。
全RNAは、ISOGEN-LS(ニッポンジーン社製)によりHUNN1から抽出した。第1のcDNAストランドは、オリゴ(dT)12-18 プライマー(Roche Diagnostics社製)でプライムし、Superscript II Synthesis cDNA Kit(GIBCO BRL社製)で合成した。可変域遺伝子は、重鎖についてはセンスプライマーVH3F(配列番号9)およびアンチセンスプライマーVH4R(配列番号11)を用いて、軽鎖についてはVL3F(配列番号12)およびVL4R(配列番号13)を用いて、KODプラスDNAポリメラーゼを用いてPCRにより増幅した。双方のセンスプライマーは、HindIII制限サイト、Kozak配列を含む一方、アンチセンスプライマーは、BamHI制限サイト、スプライスドナーサイトを含んでいる。
テンプレートとしてphAb3−15を用い、重鎖についてはAscI制限サイトを含むVH5F(配列番号14)およびVH4R(配列番号11)を用いて、軽鎖については、AscI制限サイトを含むVL5F(配列番号15)およびVL4R(配列番号13)を用いてPCRを行った。増幅した可変域遺伝子は、まず、中間ベクターに導入してシークエンシングし、続いて発現用ベクターに導入した。導入には、HindIII/BamHIまたはAscI/BamHIサイトを用いた。
(2−2)発現用ベクターの哺乳動物細胞への導入および選択
COS−7およびCHO−K1セルラインをトランスフェクションに用いた。COS−7細胞は、10%胎仔ウシ血清(FBS)およびカナマイシン(60μg/ml)を添加したDMEM培地(Invitrogen社製)で維持した。CHO−K1細胞は、10%FBSを添加したF-12 Ham's培地(Invitrogen社製)で維持した。
抗体生産は、一過性発現および安定発現の双方でテストした。一過性発現では、軽鎖および重鎖の発現用ベクターは、Polyfect transfection reagent(Qiagen社製)を用いてCOS−7細胞にともに導入した。具体的には、150μlの血清フリー培地中に溶解した2.5μgのプラスミドDNAをPolyfect transfection reagent15μlと混合し、4×105 cellに添加した。72時間のインキュベート後、培養上清を回収し、定量的ELISAによりアッセイした。
安定発現では、同じ方法で両方の発現用ベクターをCHO−K1細胞に導入した。48時間のインキュベート後、細胞を回収し、ゼオチン(200μg/ml、Invitrogen社製)およびゼネティシン(400μg/ml、Sigma社製)を含む選択培地に再度懸濁した。細胞を2週間選択培地で培養し、3〜4日毎に培地を交換した。抵抗性を示した細胞を回収し、抗生物質の濃度を半分とした培地に再度懸濁し、96穴培養プレートに1ウェル1細胞以下となるようにプレーティングした。2週間後、ELISAにより抗体生産(産生)クローンを選択した。PrPと反応したポジティブクローンを選択し、さらに培養した。抗体生産の評価のため、24hr培養した106 cellから培養上清を回収し、定量的ELISAによりアッセイした。
(2−3)ELISA
ELISAプレートは、50μlの組換えマウスPrPまたはコントロール抗原としてのBSA(5μg/ml)を用いて4℃、オーバーナイトでコートした。プレートは、25%BlockAceを含む350μlのPBSにより37℃1時間でブロックした。移した細胞の培養上清をそれぞれのウェルに加え、37℃1時間インキュベートした。キメラ抗体の結合は、ペルオキシダーゼでラベルした抗ヒトIgG抗体(Cappel社製)を用いて検出した。
プレートを洗浄した後、o−フェニレンジアミンサルフェート(KATAYMA CHEMICAL社製)を加え、490nmの吸光度を測定した。抗体生産は、捕獲のために抗ヒトIgκ鎖抗体を用い、検出のためにペルオキシダーゼでラベルした抗ヒトIgG(Fc)抗体(Zymed社製)を用いた定量的ELISAにより測定した。精製したヒトIgG1 またはIgG4 (The Binding Site社製)をスタンダードとした。
一過性発現におけるELISAアッセイの結果、72時間(3日)培養後の抗体発現レベルは、1.5〜2.5μg/mlであった。
一方、安定発現におけるELISAアッセイの結果を図4に示す。同図の縦軸は抗体生産量を示し、単位はμg/106 cell/dayである。横軸は選択されたポジティブクローン名を示し、クローン名のうち、“C/H”はニワトリ−ヒトキメラ抗体を示し、“1”または“4”はIgG1 またはIgG4 を示し、“HU”はHUNN1抗体を示し、“ph”はファージ由来のphAb3−15抗体を示す。同図から明らかなように、抗体の生産レベルは3.5〜16.4μg/106 cell/dayの範囲内となっている。一般にCHO−K1細胞での抗体生産量は1〜10μg/106 cell/24hrとされている。図4に示すように、本実施例では、安定発現株においてこれらと同程度、あるいはそれ以上の抗体生産量を示したので、このベクターを用いることにより、高い発現量を得ることができると考えられる。
(2−4)ウェスタンブロッティング
標準的な手順を用いてキメラ抗体のサイズおよびIgGサブクラスを解析した。上記(2−2)の安定発現で得られたクローンについて、20ngの抗体を含む培養上清を還元条件下または非還元条件下でSDS−PAGEにかけた。ゲル濃度は還元条件下で10%、非還元条件下で12.5%とした。タンパク質は、3時間180mAの条件でImmun-BlotTM PVDFメンブレン(BIO RAD社製)に移した。ブロッティングは種々のモノクローナル抗体とともに1時間室温でインキュベートし、ECL−plus(Amersham Pharmacia Biotech社製)により検出した。モノクローナル抗体としては、抗ヒトIgγ鎖抗体(Sigma社製)、抗ヒトIgκ鎖抗体(Sigma社製)、抗ヒトIgG1 抗体(Biosciences社製)、抗ヒトIgG4 抗体(Biosciences社製)、ペルオキシダーゼラベルロバ抗ニワトリIgG抗体(Chemicon International社製)、ペルオキシダーゼラベルヤギ抗ヒトIgG抗体(Cappel社製)を最初の反応に用いた。ペルオキシダーゼラベルウサギ抗ヤギ抗体IgGおよびヤギ抗マウスIgG抗体(Southern Biotech社製)を次の反応に用いた。
上記(2−2)の培養上清から得られたキメラ抗体の構造の特徴をウェスタンブロッティングにより確認した。まず、発現したキメラ抗体が、アミノ酸配列により推定されるサイズを有するか否かを確認した。クローンC/H1−ph16およびC/H4−ph24についての非還元条件下での結果を図5Aに、還元条件下での結果を図5Bにそれぞれ示す。なお、図5Aのレーン1、図5Bのレーン1・3はC/H1−ph16の結果を示し、図5Aのレーン2、図5Bのレーン2・4はC/H1−ph24の結果を示す。また、図5Bのレーン1・2は重鎖の、レーン3・4は軽鎖の結果を示す。
非還元条件下では、レーン2において分子量約150kDa以上のバンド(H22)が検出されたとともに、C/H1−ph24についてはその下方(50〜100kDaの間)に弱いバンド(HL)が検出された。これにより、重鎖2分子、軽鎖2分子が会合して機能的な抗体分子を生成していることが推定される。ただし、非還元条件下では、立体構造によりゲル中での移動度が異なるため、バンドは分子量に応じた位置に移動しない。
一方、還元条件下では、重鎖は約50kDa(レーン1・2)、軽鎖は約25kDa(レーン3・4)の分子量を有することが明らかとなった。これはアミノ酸配列より推定される分子量とほぼ等しい大きさである。
次に、発現したキメラ抗体の抗原特異性について確認した。クローンC/H1−ph16およびC/H4−ph24についての結果を図6に示す。この結果から、(i)キメラ抗体は、抗ニワトリ抗体に反応するニワトリ部分と抗ヒト抗体に反応するヒト部分を有すること、並びに、(ii)ヒト部分についてはは、pcSLCγ1ベクターを導入した株が生産するキメラ抗体は抗IgG1抗体に反応し、pcSLCγ4ベクターを導入した株が生産するキメラ抗体は抗IgG4抗体に反応することが明らかとなった。
それゆえ、クローンC/H1−ph16は、phAb3−15の可変域とヒトCκ・Cγ1の定常域を有しており、クローンC/H4−ph24は、C/H1−ph16と同様に、Cγ1の代わりにCγ4の定常域を有していることがわかり、本発明で生産されるキメラ抗体は予想される特異性を示すことが明らかとなった。
以上のように、本発明によれば、完全なニワトリ−ヒトキメラ抗体分子の発現が可能となる。そのため、ニワトリモノクローナル抗体をヒト臨床に応用する道が開かれたことになる。したがって、本発明は、医薬品、特に、抗体医薬品や診断薬に関わる産業に広く用いることができる。
(a)は、本発明にかかるニワトリ−ヒトキメラ発現用ベクターのうち、軽鎖発現用ベクターの一例であるpcSLCκの構成を示す模式図であり、(b)は、重鎖発現用ベクターの一例であるpcSLCγ1またはpcSLCγ4の構成を示す模式図である。 図1(a)・(b)に示す発現用ベクターを作製する過程を示す模式図である。 (a)は、本発明にかかるニワトリ−ヒトキメラ抗体の軽鎖の構造を示す模式図であり、(b)は、重鎖の構造を示す模式図であり、(c)は、キメラ抗体分子の構造を示す模式図である。 実施例において宿主中で発現用ベクターを安定発現させた場合のELISAアッセイの結果を示すグラフである。 実施例において発現したキメラ抗体のウェスタンブロッティングの結果を示す図であり、AがSDS−PAGEを非還元条件下で行った場合の結果であり、BがSDS−PAGEを還元条件下で行った結果である。 実施例において発現したキメラ抗体の抗原特異性について検討したウェスタンブロッティングの結果を示す図である。
符号の説明
10 ニワトリ−ヒトキメラ抗体の軽鎖
11 ニワトリ由来軽鎖可変域
12 ヒト由来軽鎖定常域
20 ニワトリ−ヒトキメラ抗体の重鎖
21 ニワトリ由来重鎖可変域
22a・22b・22c ヒト由来重鎖定常域
30 ニワトリ−ヒトキメラ抗体
31 Fc
32 Fab

Claims (27)

  1. 哺乳動物細胞を宿主としてタンパク質を発現させることが可能なベクターであって、
    DNAセグメントとして、少なくとも、プロモーター、ニワトリ可変域遺伝子を組み込むための組込みサイト、ニワトリイムノグロブリンのリーダー配列、および、ヒトイムノグロブリン定常域遺伝子を含んでいることを特徴とするニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクター。
  2. 上記ヒトイムノグロブリン定常域遺伝子が重鎖または軽鎖の定常域をコードする遺伝子であることを特徴とする請求項1に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクター。
  3. ヒトイムノグロブリン重鎖定常域遺伝子として、配列番号1または2に示される塩基配列を有するポリヌクレオチドの少なくとも何れかが用いられることを特徴とする請求項2に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクター。
  4. ヒトイムノグロブリン軽鎖定常域遺伝子として、配列番号3に示される塩基配列を有するポリヌクレオチドが用いられることを特徴とする請求項2に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクター。
  5. ニワトリイムノグロブリンのリーダー配列として、配列番号4に示される塩基配列を有するポリヌクレオチドが用いられることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクター。
  6. 上記組込みサイトは、AscI、BamHIおよびHindIIIの少なくとも何れか一つの制限酵素により認識される制限酵素サイトを含んでいることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクター。
  7. 上記組込みサイトは、制限酵素サイトが複数つながったマルチクローニングサイトとなっていることを特徴とする請求項6に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクター。
  8. 上記プロモーターがサイトメガロウイルス由来のプロモーターであることを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクター。
  9. さらに、哺乳動物細胞にベクターが導入されたか否かを判定するための選択マーカーを有していることを特徴とする請求項1ないし8の何れか1項に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクター。
  10. 上記選択マーカーがゼオシン耐性遺伝子またはネオマイシン耐性遺伝子であることを特徴とする請求項9に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクター。
  11. さらに、複製開始点を有していることを特徴とする請求項1ないし10の何れか1項に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクター。
  12. 上記複製開始点がpUC由来およびSV40由来であることを特徴とする請求項11に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクター。
  13. さらに、ポリ(A)付加シグナルが含まれることを特徴とする請求項1ないし12の何れか1項に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクター。
  14. 上記ポリ(A)付加シグナルは、ウシ成長ホルモン由来であることを特徴とする請求項13に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクター。
  15. 請求項1ないし14の何れか1項に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクターを用いることを特徴とするニワトリ−ヒトキメラ抗体の生産方法。
  16. 上記ニワトリ−ヒトキメラ抗体発現用ベクターとして、ヒトイムノグロブリン定常域遺伝子が重鎖の定常域をコードする遺伝子となっている重鎖用発現用ベクターと、ヒトイムノグロブリン定常域遺伝子が軽鎖の定常域をコードする遺伝子となっている軽鎖用発現用ベクターとを用い、
    上記重鎖用発現用ベクターにニワトリ重鎖の可変域遺伝子を導入するとともに、軽鎖発現用ベクターにニワトリ軽鎖の可変域遺伝子を導入するニワトリV域導入工程と、
  17. 上記ニワトリ可変域遺伝子を導入した重鎖用発現用ベクターおよび軽鎖用発現用ベクターを哺乳動物細胞で共発現させる形質移入工程とを含むことを特徴とする請求項16に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体の生産方法。
  18. 用いられる哺乳動物細胞がCHO細胞であることを特徴とする請求項17に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体の生産方法。
  19. 上記形質移入工程では、リポフェクション法により発現用ベクターが導入されることを特徴とする請求項17または18に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体の生産方法。
  20. さらに、重鎖用発現用ベクターおよび軽鎖用発現用ベクターを共発現させた哺乳動物細胞からニワトリ−ヒトキメラ抗体を回収する抗体回収工程を含むことを特徴とする請求項15ないし19の何れか1項に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体の生産方法。
  21. さらに、哺乳動物細胞から回収したニワトリ−ヒトキメラ抗体を精製する抗体精製工程を含むことを特徴とする請求項20に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体の生産方法。
  22. 請求項15ないし21の何れか1項に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体の生産方法により得られ、ニワトリ由来の可変域およびヒト由来の定常域を有するニワトリ−ヒトキメラ抗体。
  23. 請求項15ないし21の何れか1項に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体の生産方法を行うためのニワトリ−ヒトキメラ抗体生産キット。
  24. ヒトイムノグロブリン定常域遺伝子が重鎖の定常域をコードする遺伝子となっている重鎖用発現用ベクターと、ヒトイムノグロブリン定常域遺伝子が軽鎖の定常域をコードする遺伝子となっている軽鎖用発現用ベクターとを含むことを特徴とする請求項23に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体生産キット。
  25. さらに、哺乳動物細胞に発現用ベクターを導入するための試薬群、および、発現用ベクターにニワトリ可変域遺伝子を組み込むための試薬群の少なくとも何れかを含むことを特徴とする請求項24または25に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体生産キット。
  26. さらに、哺乳動物細胞からニワトリ−ヒトキメラ抗体を回収するための試薬群、および、哺乳動物細胞から回収したニワトリ−ヒトキメラ抗体を精製する試薬群の少なくとも何れかを含むことを特徴とする請求項25に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体生産キット。
  27. 請求項22に記載のニワトリ−ヒトキメラ抗体を用いてなる薬剤。
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