JP2005240970A - ねじ装置 - Google Patents

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JP2005240970A JP2004054774A JP2004054774A JP2005240970A JP 2005240970 A JP2005240970 A JP 2005240970A JP 2004054774 A JP2004054774 A JP 2004054774A JP 2004054774 A JP2004054774 A JP 2004054774A JP 2005240970 A JP2005240970 A JP 2005240970A
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Abstract

【課題】高荷重且つ異物混入潤滑下で好適に使用できる長寿命のねじ装置を提供する。
【解決手段】ねじ軸の外周面およびナットの内周面は、表層部の残留オーステナイト量が20体積%以上45体積%以下であり、表層部のビッカース硬さ(Hv)が前記残留オーステナイト量(γR 、単位:体積%)との関係で下記の(1)式を満たす。また、ねじ軸の径方向に沿う断面積とナットの径方向に沿う断面積をほぼ同じにする。さらに、ねじ軸の外周面での表層部の残留オーステナイト量と、ナットの内周面での表層部の残留オーステナイト量との差を11体積%以下にする。
−4.7・γR +800≦Hv≦−4.7・γR +1020…(1)
【選択図】 図1

Description

この発明は、ボールねじ又はローラねじからなる「ねじ装置」に関する。
例えば、電動射出成形機やメカニカルプレス装置用のボールねじ及びローラねじは、比較的大型で高荷重を受けるため、使用中に潤滑油に異物(金属の切粉、削り屑、バリ、および摩耗粉等)が混入すると、ねじ軸とナットとの間に異物が噛み込んで圧痕が生じ、この圧痕が表面剥離の起点となる。そのため、上記用途のボールねじ及びローラねじには、異物混入潤滑下での寿命向上が求められている。
下記の特許文献1には、転がり軸受の異物混入潤滑下での寿命向上についての記載がある。ここでは、軌道輪及び転動体の少なくとも一つの表面層を、残留オーステナイト量が20体積%以上45体積%以下で、表層部のビッカース硬さ(Hv)が前記残留オーステナイト量(γ、単位:体積%)との関係で下記の(3)式を満たすようにしている。
−4.7γ+920≦Hv≦−4.7+1020…(3)
また、使用する合金鋼のC含有率を0.1〜1.2重量%(質量%)、Cr含有率を1〜3重量%(質量%)、Mo含有率を2.0重量%(質量%)以下且つCr含有率の1/3以上として、浸炭または浸炭窒化を施すことにより、最大粒径が2.3μm以下の微細炭化物または窒化物を前記表面層に析出させている。
下記の特許文献2には、特に耐摩耗性が要求される用途に好適な転がり軸受およびボールねじ装置についての記載がある。ここでは、転がり軸受またはボールねじ装置の転動部材の少なくとも一つを、重量%(質量%)で、C;0.1〜0.7%、Si;0.1〜1.5%、Mn;0.1〜1.5%、Cr;0.5〜3.0%、V;0.6〜2.0%、Mo;3.0%以下、Ni;2.0%以下で含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる合金鋼で形成し、これに920℃以上の温度で浸炭窒化を施して完成品表面の炭素濃度を0.7〜1.3重量%、窒素濃度を0.15〜0.3重量%とすることにより、その表面に粒径0.1μm以下の炭化物、窒化物、および炭窒化物を少なくとも400個/100μm2 析出させている。
下記の特許文献3には、電動射出成形機やメカニカルプレス装置用のボールねじのように、瞬間的な高負荷が加わり、短ストロークで使用されるボールねじでも、ボール表面の損傷を防止して、十分な耐久寿命を確保できるようにするための技術が記載されている。ここでは、少なくともボールを、重量比(質量比)にして、C:0.8〜1.5%、Si:0.4〜1.2%、Mn:0.8〜1.5%およびCr:0.8〜1.8%を含有する鋼を素材とし、この素材を浸炭窒化処理した後、焼入れ、焼戻し処理し、表層部の残留オーステナイト量を20〜40体積%としている。
下記の特許文献4には、射出成形機やプレス成形機の可動盤からナットに高荷重が加わり、ナットが軸方向(荷重方向)に弾性変形することに伴う問題点等が記載されている。すなわち、前記ナットの弾性変形に伴い、ナットとねじ軸とでねじ溝のリードが一致しなくなることによりボールに加わる荷重が軸方向で不均一になり、その結果、ボール同士に競り合いが生じて作動性の低下や耐久性の低下を招く。そして、「ねじ軸の径方向に沿う断面積をAs、前記ナットの径方向に沿う断面積をAnとしたとき、前記AnとAsとの比を0.9≦An/As≦1.1の範囲内に設定すること」により、前記問題点が解決できると記載されている。
下記の特許文献5には、ボールねじの各ボール間に、ボールの半径より曲率半径の大きい凹球面に形成された円盤形状のセパレータを配置することが記載されている。
特許2541160号公報 特開2000−212721号公報 特開2000−346163号公報 特開2003−247621号公報 特開平11−315835号公報
しかしながら、上記各特許文献に記載された技術を単に組み合わせただけでは、高荷重且つ異物混入潤滑下で使用されるねじ装置(ボールねじ及びローラねじ)の寿命を十分に向上させることができない。
すなわち、ねじ装置では、ねじ軸とナットのねじ溝同士が高い精度で位置決めされる必要があるため、現状では、残留オーステナイトの分解による時効変形を抑える目的でサブゼロ処理等を行って、ねじ軸およびナットの表層部の残留オーステナイト量を5体積%程度にしている。
したがって、上記特許文献1の技術をねじ装置に適用すると、残留オーステナイトの分解による時効変形量が大きくなって、ねじ軸とナットのねじ溝同士の位置決め精度が低下するという問題点がある。また、時効変形量が大きくなることに伴って、ねじ軸とナットのリード差が大きくなることから、ボールに加わる荷重が軸方向で不均一となり、ボール同士に競り合いが生じて作動性の低下や耐久性の低下を招くという問題点もある。
本発明の課題は、このような問題点が生じず、高荷重且つ異物混入潤滑下で好適に使用できる長寿命のねじ装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は、外周面に螺旋状の溝(ねじ溝)が形成されたねじ軸と、内周面に螺旋状の溝(ねじ溝)が形成されたナットと、ねじ軸の溝とナットの溝が互いに対向して形成される軌道と、この軌道の終点と始点を連結する戻し路と、この戻し路内および前記軌道内に配置された複数の転動体と、を備えたボールねじ又はローラねじからなる「ねじ装置」において、ねじ軸の外周面およびナットの内周面は、表層部の残留オーステナイト量が20体積%以上45体積%以下であり、表層部(表面から1.0mm〜2.5mmの深さまでの部分であり、軸径によって異なる。)のビッカース硬さ(Hv)が前記残留オーステナイト量(γR 、単位:体積%)との関係で下記の(1)式を満たし、ねじ軸とナットの時効変形量がほぼ一致していることを特徴とするねじ装置を提供する。
−4.7・γR +800≦Hv≦−4.7・γR +1020…(1)
本発明は、また、外周面に螺旋状の溝(ねじ溝)が形成されたねじ軸と、内周面に螺旋状の溝(ねじ溝)が形成されたナットと、ねじ軸の溝とナットの溝が互いに対向して形成される軌道と、この軌道の終点と始点を連結する戻し路と、この戻し路内および前記軌道内に配置された複数の転動体と、を備えたボールねじ又はローラねじからなる「ねじ装置」において、ねじ軸の外周面およびナットの内周面は、表層部の残留オーステナイト量が20体積%以上45体積%以下であり、表層部(表面から1.0mm〜2.5mmの深さまでの部分であり、軸径によって異なる。)のビッカース硬さ(Hv)が前記残留オーステナイト量(γR 、単位:体積%)との関係で下記の(1)式を満たし、ねじ軸の径方向に沿う断面積(As)とナットの径方向に沿う断面積(An)はほぼ同じ(例えば、その比「An/As」が0.9以上1.1以下)であり、ねじ軸の外周面での表層部の残留オーステナイト量と、ナットの内周面での表層部の残留オーステナイト量との差が11体積%以下であることを特徴とするねじ装置を提供する。
−4.7・γR +800≦Hv≦−4.7・γR +1020…(1)
本発明のねじ装置によれば、ねじ軸の外周面およびナットの内周面について、表層部の残留オーステナイト量を20体積%以上45体積%以下とするとともに、表層部のビッカース硬さ(Hv)が前記残留オーステナイト量(γ、単位:体積%)との関係で上記(1)式を満たすようにすることにより、前記表層部(ねじ溝面)の靱性が良好になるため、異物の噛み込みよる圧痕が生じ難くなる。これにより、表面剥離が生じ難くなるため、異物混入潤滑下での寿命が向上する。
また、表層部の残留オーステナイト量を20体積%以上45体積%以下とすることで、残留オーステナイトの分解による時効変形は大きくなるが、ねじ軸の径方向に沿う断面積(As)とナットの径方向に沿う断面積(An)をほぼ同じ(例えば、その比「An/As」が0.9以上1.1以下)とし、ねじ軸の外周面での表層部の残留オーステナイト量と、ナットの内周面での表層部の残留オーステナイト量との差を11体積%以下とすることで、ねじ軸とナットの時効変形量の差を許容範囲内とすることができる。
ねじ軸の径方向に沿う断面積とナットの径方向に沿う断面積が同じで、ねじ軸の外周面での表層部の残留オーステナイト量と、ナットの内周面での表層部の残留オーステナイト量とが同じであれば、ねじ軸とナットで平均残留オーステナイト量が同じになる。
ねじ軸およびナットが軸方向に均一な組織になっていると仮定すると、平均残留オーステナイト量は下記の(4)式で表すことができる。
γave =Aγ/(Aγ+Af )…(4)
(式中、γave :平均残留オーステナイト量、Aγ:ねじ軸またはナットの軸方向に垂直な断面で残留オーステナイトが占める面積、Af :前記断面で残留オーステナイト以外の組織が占める面積。)
そのため、前記各面積Aγ,Af を測定し、各測定値から(4)式を用いて計算することより、平均残留オーステナイト量を求めることができる。
ここで、時効変形量と平均残留オーステナイト量との関係について説明する。
ねじ軸およびナットの軸方向に垂直な断面で、一方向について考えた場合、部材の残留オーステナイト部とそれ以外の部分(組織が残留オーステナイト以外である部分)との応力のつりあいから、下記の(5)〜(7)式が得られる。
f ・σf =Aγ・σγ…(5)
σγ=E(εγ−ε)…(6)
σf =E(ε−εf )…(7)
(式中、Aγ:ねじ軸またはナットの軸方向に垂直な断面で残留オーステナイトが占める面積、Af :前記断面で残留オーステナイト以外の組織が占める面積、ε:部材全体の単位長さ当りの時効変形量、εγ:単位長さ当りの残留オーステナイト部の分解時膨張量、σγ:残留オーステナイト部の内部応力、εf :組織が残留オーステナイト以外である部分の単位長さ当りの膨張量、σf :組織が残留オーステナイト以外である部分の内部応力、E:ヤング率。)
これらの(5)〜(7)式から下記の(8)式が得られる。
f (ε−εf )=Aγ(εγ−ε)…(8)
これを変形して下記の(9)式が得られる。
ε=Aγ・εγ/(Aγ+Af )+Af ・εf /(Aγ+Af )…(9)
この(9)式から、前記(4)式を用いて下記の(10)式が得られる。
ε=γave ・εγ+(1−γave )・εf …(10)
この式(10)において、εγとεf は定数であるため、この(10)式から、時効変形量(ε)が平均残留オーステナイト量(γave )に依存することが分かる。
また、ねじ軸の径方向に沿う(軸方向に垂直な)断面積とナットの径方向に沿う断面積を同じにし、且つ、ねじ軸とナットを同じ条件で同じ深さまで浸炭窒化することにより、ねじ軸とナットで平均残留オーステナイト量(γave )を同じにすることができる。
本発明のねじ装置は、ねじ軸の外周面での表層部の残留オーステナイト量と、ナットの内周面での表層部の残留オーステナイト量との差が、10体積%以下であることが好ましく、5体積%以下であることがさらに好ましい。
本発明のねじ装置において、前記ねじ軸およびナットは、質量比で、Cの含有率が0.1%以上0.7%以下、Siの含有率が0.1%以上1.5%以下、Mnの含有率が0.1%以上1.5%以下、Crの含有率が0.5%以上3.0%以下、Vの含有率が0.6%以上2.0%以下、Moの含有率が3.0%以下、Niの含有率が2.0%以下で、残部Feおよび不可避不純物からなる合金鋼で所定形状に形成した後、920℃以上の温度で浸炭窒化を行い、次いで、焼入れと焼戻しを施して、前記各表層部の炭素含有率を0.7質量%以上1.3質量%以下、窒素含有率を0.15質量%以上0.3重量%以下とすることにより得られ、前記各表層部に粒径0.1μm以下の炭化物、窒化物、および炭窒化物からなる析出物を面積率で「400個/100μm2 」以上含有するものであることが好ましい。これにより、耐摩耗性が良好になるため、高荷重且つ異物混入潤滑下での寿命をさらに長くできる。
本発明のねじ装置は、隣接する転動体間に、転動体の転動面を受ける凹面を有するセパレータが配置されていることが好ましい。
本発明のねじ装置によれば、ねじ軸とナットの時効変形量の差を小さく抑えながら、ねじ溝面の靱性が強化されるため、高荷重且つ異物混入潤滑下での寿命を長くすることができる。
すなわち、本発明によれば、ねじ軸とナットのねじ溝同士の位置決め精度が高く保持でき、転動体同士の競り合いが防止された、高荷重且つ異物混入潤滑下で好適に使用できる長寿命のねじ装置が提供される。
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1および2は、本発明の「ねじ装置」の一実施形態であるボールねじを示す斜視図および断面図である。
このボールねじは、ねじ軸1とナット2とボール(転動体)3とチューブ(戻し路)4とからなるチューブ式ボールねじである。図1の符号6は、チューブ4をナット2に固定するチューブ押えであり、図2ではこのチューブ押え6が省略されている。
ねじ軸1の外周面とナット2の内周面には螺旋状の溝(ねじ溝)11,21が形成されており、これらのねじ溝11,21でボール3の軌道が形成されている。そして、ボール3がこの軌道を負荷状態で転動することにより、ナット2はねじ軸1に対して相対的に直線移動する。
チューブ4は略門形に形成され、その両端部が、ナット2をなす円筒に設けた貫通穴22内に挿入され、軌道の始点と終点を連結するように、ねじ軸1を挟んで斜向かいに配置されている。したがって、軌道の終点に達したボール3はこのチューブ4を通って軌道の始点に戻される。この例では、ボール循環経路(軌道+戻し路)を2つ有するため、チューブ4を2本備えている。
このようなボールねじのねじ軸とナットを、材質と熱処理条件を変化させて作製することにより、表層部の残留オーステナイト量(γR )とビッカース硬さ(Hv)が、表1に示す値となっているものを得た。そして、ボールおよびその他の部材は全て同じとし、下記の表1に示す組み合わせで同じ型番のボールねじを組み立てた。
なお、ボールは標準品(SUJ2製で通常の焼入れ、焼戻しがなされたもの)を使用した。また、組み立てたボールねじの型番はNSK「BS3610」であり、その諸元は、有効巻き数:2.5巻き、ねじ軸外径:36mm、リード:10mm、ボール径:6.35mmである。また、ねじ軸とナットの径方向の断面積を同じに形成した。よって、ねじ軸とナットとの表層部の残留オーステナイト量の差は、ねじ軸とナットとの平均残留オーステナイト量の差に比例した値となる。
ねじ軸およびナット用の素材としては、一般的なSCM420Hからなる素材と、下記の合金鋼Aからなる素材を用意した。合金鋼Aは、質量比で、Cの含有率が0.10%、Siの含有率が0.40%、Mnの含有率が0.75%、Crの含有率が1.45%、Vの含有率が0.98%で、残部Feおよび不可避不純物からなる。
各素材をねじ軸およびナットの形状に加工した後、920℃以上の温度で浸炭窒化を行い、次いで、焼入れと焼戻しを施して、前記各表層部の炭素含有率を0.7質量%以上1.3質量%以下、窒素含有率を0.15質量%以上0.3重量%以下とした。これにより、ねじ軸およびナットの全ての表層部に粒径0.1μm以下の炭化物、窒化物、および炭窒化物を、面積率で「400個/100μm2 」以上析出させた。
セパレータとしては図3に示すものを使用した。図3(a)はその正面図であり、図3(b)は図3(a)のA−A断面図である。このセパレータ7は略円柱状であって、円柱の2つの底面にボール3を受ける凹面71が形成されている。また、このセパレータ7には、円柱の中心軸に沿った貫通穴72が設けてある。この貫通穴72は油溜まりとして機能する。このセパレータ7はプラスチック製である。
得られたボールねじを日本精工(株)製のボールねじ耐久寿命試験機にかけて、試験荷重:8820N、ストローク:60mm、回転速度:1500rpm、温度:130℃、潤滑剤:グリース「ルベールYS−2」、異物混入潤滑下とするために使用する異物:鋼粉(硬さHv870、径74〜147μmのFe3 C)の条件で、ボールねじを往復運動させる耐久寿命試験を行った。
この試験は、異物を潤滑剤に入れないクリーンな状態と、異物を潤滑剤に入れた異物混入状態(異物混入潤滑下)の両方で行い、ねじ軸またはナットのねじ溝、あるいはボールのいずれかに剥離が生じるまでの総運動距離を測定した。次に、各サンプルで得られた測定値を、クリーンな状態で行った試験でのNo. 15の測定値で除算して、寿命の相対値を算出した。
また、この試験前後にねじ軸およびナットの寸法を測定することにより、それぞれの時効変形量を算出し、両者の比(ねじ軸の時効変形量/ナットの時効変形量)を「リード比」として算出した。
これらの結果も表1に併せて示す。表中、本発明の範囲から外れている部分に下線を施した。また、表1のデータを「表層部の残留オーステナイト量」と「表層部の硬さ(表面硬さ)」との関係で図4のグラフにまとめた。
Figure 2005240970
この表の結果から以下のことが分かる。
No. 1〜9のボールねじは、表層部の残留オーステナイト量およびこれと硬さとの関係を示す(1)式を満たし、さらに、ねじ軸とナットとの表層部の残留オーステナイト量(γR )の差が11以下であるため、本発明の実施例に相当する。これに対して、No. 10〜16のボールねじは、これらのいずれかの条件を満たさないため、本発明の比較例に相当する。そして、No. 1〜9のボールねじはNo. 10〜16のボールねじよりも寿命試験の結果が良好であった。
No. 1〜3のボールねじとNo. 10〜12のボールねじを比較すると、両者はともに、ねじ軸とナットの表層部での残留オーステナイト量の差が±1以下であるが、No. 1〜3では表層部の残留オーステナイト量およびこれと硬さとの関係を示す(1)式を満たすため、これらのいずれも満たさないNo. 10〜12と比較して、異物混入潤滑下での寿命が長かった。
No. 4,5のボールねじは、No. 1〜3のボールねじよりも、ねじ軸とナットとの表層部の残留オーステナイト量の差が大きい分だけ、リード比の「1」からのずれ量が大きいが、異物混入潤滑下での寿命はNo. 15のボールねじより長かった。
No. 1〜5のボールねじにおいて、ねじ軸とナットとの表層部での残留オーステナイト量の差は、No. 1〜4のボールねじで10体積%以下であり、No. 5のボールねじで10体積%を超えている。そして、この差が10体積%以下であるNo. 1〜4のボールねじの方が、10体積%を超えているNo. 5のボールねじよりも寿命が長かった。
No. 6〜8のボールねじは、ねじ軸とナットの少なくともいずれかをSCM420Hからなる素材で形成しており、異物混入なしでの寿命はNo. 15のボールねじと同等であるが、異物混入潤滑下での寿命が長かった。特に、No. 6のボールねじでは、面圧がより高くなるねじ軸の方に合金鋼Aを用いて、ねじ軸の溝面の硬さを硬くすることにより、異物混入潤滑下での寿命を長くすることができた。
No. 9とNo. 16のボールねじではセパレータを入れていないが、本発明の範囲であるNo. 9のボールねじは本発明の範囲外であるNo. 16のボールねじと比較して、異物混入潤滑下での寿命が長かった。
また、No. 1〜16の全てのボールねじは、ねじ軸とナットの径方向に沿う断面積を同じにしてあるため、ナットの軸方向での弾性変形に伴うリード差は生じない。
なお、本発明のねじ装置は、ねじ軸およびナットの全ての表層部について、「残留オーステナイト量が20体積%以上45体積%以下で、ビッカース硬さと残留オーステナイト量との関係が下記の(1)式を満たしている」構成に限定されず、ねじ軸の外周面およびナットの内周面について前記構成を有していればよい。
また、この実施形態では、転動体がボールであるボールねじについて説明しているが、本発明は、転動体が「ころ」であるローラねじについても適用できる。
本発明の実施形態に相当するボールねじを示す斜視図である。 本発明の実施形態に相当するボールねじを示す断面図である。 実施形態で使用したセパレータを示す正面図(a)と、そのA−A断面図(b)である。 表1のデータを「表層部の残留オーステナイト量」と「表層部の硬さ(表面硬さ)」との関係でプロットして得られたグラフである。
符号の説明
1 ねじ軸
11 ねじ軸のねじ溝(螺旋状の溝)
2 ナット
21 ナットのねじ溝(螺旋状の溝)
3 ボール(転動体)
4 チューブ(戻し路)
6 チューブ押え
7 セパレータ
71 凹面
72 貫通穴

Claims (5)

  1. 外周面に螺旋状の溝が形成されたねじ軸と、内周面に螺旋状の溝が形成されたナットと、ねじ軸の溝とナットの溝が互いに対向して形成される軌道と、この軌道の終点と始点を連結する戻し路と、この戻し路内および前記軌道内に配置された複数の転動体と、を備えたボールねじ又はローラねじからなる「ねじ装置」において、
    ねじ軸の外周面およびナットの内周面は、表層部の残留オーステナイト量が20体積%以上45体積%以下であり、表層部のビッカース硬さ(Hv)が前記残留オーステナイト量(γR 、単位:体積%)との関係で下記の(1)式を満たし、
    ねじ軸とナットの時効変形量がほぼ一致していることを特徴とするねじ装置。
    −4.7・γR +800≦Hv≦−4.7・γR +1020…(1)
  2. 外周面に螺旋状の溝が形成されたねじ軸と、内周面に螺旋状の溝が形成されたナットと、ねじ軸の溝とナットの溝が互いに対向して形成される軌道と、この軌道の終点と始点を連結する戻し路と、この戻し路内および前記軌道内に配置された複数の転動体と、を備えたボールねじ又はローラねじからなる「ねじ装置」において、
    ねじ軸の外周面およびナットの内周面は、表層部の残留オーステナイト量が20体積%以上45体積%以下であり、表層部のビッカース硬さ(Hv)が前記残留オーステナイト量(γR 、単位:体積%)との関係で下記の(1)式を満たし、
    ねじ軸の径方向に沿う断面積とナットの径方向に沿う断面積はほぼ同じであり、
    ねじ軸の外周面での表層部の残留オーステナイト量と、ナットの内周面での表層部の残留オーステナイト量との差が11体積%以下であることを特徴とするねじ装置。
    −4.7・γR +800≦Hv≦−4.7・γR +1020…(1)
  3. ねじ軸の外周面での表層部の残留オーステナイト量と、ナットの内周面での表層部の残留オーステナイト量との差が10体積%以下である請求項1または2記載のねじ装置。
  4. 前記ねじ軸およびナットは、質量比で、Cの含有率が0.1%以上0.7%以下、Siの含有率が0.1%以上1.5%以下、Mnの含有率が0.1%以上1.5%以下、Crの含有率が0.5%以上3.0%以下、Vの含有率が0.6%以上2.0%以下、Moの含有率が3.0%以下、Niの含有率が2.0%以下で、残部Feおよび不可避不純物からなる合金鋼で所定形状に形成した後、920℃以上の温度で浸炭窒化を行い、次いで、焼入れと焼戻しを施して、前記各表層部の炭素含有率を0.7質量%以上1.3質量%以下、窒素含有率を0.15質量%以上0.3重量%以下とすることにより得られ、前記各表層部に粒径0.1μm以下の炭化物、窒化物、および炭窒化物からなる析出物を面積率で「400個/100μm2 」以上含有する請求項1または2記載のねじ装置。
  5. 隣接する転動体間に、転動体の転動面を受ける凹面を有するセパレータが配置されている請求項1、2、3、または4記載のねじ装置。
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